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特許7528822電子機器、アンテナ特性の調整方法及び電子機器の組立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電子機器、アンテナ特性の調整方法及び電子機器の組立て方法
(51)【国際特許分類】
   G04R 60/10 20130101AFI20240730BHJP
   G04G 21/04 20130101ALI20240730BHJP
   G04G 17/04 20060101ALI20240730BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G04R60/10
G04G21/04
G04G17/04
H01Q1/22 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021034889
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135225
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴司
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-66401(JP,A)
【文献】特開2014-187492(JP,A)
【文献】特開2006-20136(JP,A)
【文献】特開2001-339227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04R 60/00 ー 60/14
G04C 9/00
G04G 17/04
G04G 21/04
H01Q 1/22
H01Q 1/24
H01Q 1/38
H01Q 1/52
H01Q 7/00 - 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、
前記本体ケースに配置されたアンテナ素子と、
金属材料で形成され、一端側が前記アンテナ素子に接触又は近接して配置されるとともに他端側が前記本体ケース内に配置される第一の調整部材と、
前記本体ケースが有し、かつ金属材料で形成され、前記第一の調整部材の他端側が挿入される筒状部と、
誘電体で形成され、前記筒状部内に配置されて前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在する第二の調整部材と、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記アンテナ素子は前記本体ケースの上側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記筒状部はGNDと同電位であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記筒状部内における前記第一の調整部材と前記第二の調整部材とが重なり合う重なり範囲の広さを調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第一の調整部材は、金属製のビスであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第二の調整部材は、樹脂で形成され、前記第一の調整部材に対応する形状を有するナットであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記ナットはダブルナット構造を備えることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記第二の調整部材は、前記筒状部内に充填されて誘電体として機能する接着剤であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第一の調整部材は、その全体が前記アンテナ素子の非視認側に配置されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記本体ケースの内部を水密とするための第一封止手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項11】
前記第一封止手段は、前記筒状部又は前記第二の調整部材と前記第一の調整部材との間に設けられるガスケット又はOリングであることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記本体ケースは、金属材料で形成されており、
前記筒状部は、前記本体ケースに形成された孔部で構成されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項13】
前記アンテナ素子と前記本体ケースとの間に配置される誘電体部材を備えていることを特徴とする請求項12に記載の電子機器。
【請求項14】
前記誘電体部材は、前記本体ケースの内部を水密とするための第二封止手段として機能することを特徴とする請求項13に記載の電子機器。
【請求項15】
前記本体ケースは、樹脂で形成されており、
前記筒状部は、前記本体ケース内に設けられた金属製の筒状部材で構成されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項16】
本体ケースに配置されたアンテナ素子に接触又は近接して配置される金属製の第一の調整部材を、その他端側が、前記本体ケースに設けられ金属材料で形成された筒状部内に挿入されるように配置し、前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在するように誘電体で形成された第二の調整部材を配置する場合に、
前記筒状部内に挿入される前記第一の調整部材の長さを変えることで前記筒状部内における前記第一の調整部材と前記第二の調整部材とが重なり合う重なり範囲を調整することを特徴とするアンテナ特性の調整方法。
【請求項17】
本体ケースに配置されたアンテナ素子に接触又は近接して配置される金属製の第一の調整部材を、その他端側が、前記本体ケースに設けられ金属材料で形成された筒状部内に挿入されるように配置し、前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在するように誘電体で形成された第二の調整部材を配置する場合に、
前記第二の調整部材の高さを変えることで前記筒状部内における前記第一の調整部材と前記第二の調整部材とが重なり合う重なり範囲を調整することを特徴とするアンテナ特性の調整方法。
【請求項18】
本体ケースに配置されたアンテナ素子に接触又は近接して配置される金属製の第一の調整部材を、その他端側が、前記本体ケースに設けられ金属材料で形成された筒状部内に挿入されるように配置し、前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在するように誘電体で形成された第二の調整部材を配置する場合に、
前記筒状部内に挿入される前記第一の調整部材の長さ及び前記第二の調整部材の高さを変えることで前記筒状部内における前記第一の調整部材と前記第二の調整部材とが重なり合う重なり範囲を調整することを特徴とするアンテナ特性の調整方法。
【請求項19】
本体ケースにアンテナ素子を配置し、
金属材料で形成された第一の調整部材を、その一端側が前記アンテナ素子に接触又は近接して配置されるとともに他端側が前記本体ケース内に設けられた金属製の筒状部内に挿入されるように配置し、
誘電体で形成された第二の調整部材を、前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在するように前記筒状部内に配置することを特徴とする電子機器の組立て方法。
【請求項20】
前記第一の調整部材は金属製のビスであり、
前記第二の調整部材は樹脂製のナットであって、
前記本体ケースは、下側に開口部を有し、前記開口部を閉塞する蓋部材を備え、
前記蓋部材を、前記ナットを被覆するように配置した上で金属製のビスで前記本体ケースに固定することを特徴とする請求項19に記載の電子機器の組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、アンテナ特性の調整方法及び電子機器の組立て方法。
【背景技術】
【0002】
従来、腕時計等の電子機器において、正確な時刻情報や位置情報等を取得するために衛星電波を受信することのできるものが知られている。
例えば特許文献1には、本体ケース(特許文献1において「筐体外装」)の上部にリング状のアンテナ(特許文献1において「リングアンテナ」)が配置され、本体ケースの底面がグランドプレーンとして機能する構成が記載されている。
アンテナはその周辺に配置される部品やその部品の材料等によって特性(周波数、利得)に影響を受ける。このため、所望の周波数等の特性を得るためには、アンテナの配置位置や構造、周辺部品の形状等を調整することで周波数等を合わせ込む調整を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-183437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、一旦アンテナの配置位置や構造、周辺部品の形状等を決定した後に、電子機器のデザインが変更される場合もあり得る。
このような場合、改めてアンテナの周波数等の特性を調整する必要が生じ、場合によってはアンテナ設計のやり直しが必要となるため、手間やコスト増を招いてしまうとの問題があった。
【0005】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、デザイン変更等に容易に対応することのできるアンテナを有する電子機器、アンテナ特性の調整方法及び電子機器の組立て方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る電子機器は、
本体ケースと、
前記本体ケースに配置されたアンテナ素子と、
金属材料で形成され、一端側が前記アンテナ素子に接触又は近接して配置されるとともに他端側が前記本体ケース内に配置される第一の調整部材と、
前記本体ケースが有し、かつ金属材料で形成され、前記第一の調整部材の他端側が挿入される筒状部と、
誘電体で形成され、前記筒状部内に配置されて前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在する第二の調整部材と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、デザイン変更等に容易に対応することのできるアンテナを有する電子機器、アンテナ特性の調整方法及び電子機器の組立て方法を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態における電子機器である時計本体の要部を示す斜視図である。
図2図1に示す時計本体のII-II線に沿う断面図である。
図3図2に一点鎖線枠IIIで示す特性調整部周辺の拡大断面図である。
図4図2に一点鎖線枠IIIで示す特性調整部周辺の拡大断面図であり、図3よりもビスの長さが長い状態を示した図である。
図5】ビスの長さとアンテナの周波数との関係についてシミュレーションした結果の傾向を示すグラフである。
図6】第2の実施形態における電子機器である時計本体の要部断面図である。
図7図6に一点鎖線枠VIIで示す特性調整部周辺の拡大断面図である。
図8図6に一点鎖線枠VIIで示す特性調整部周辺の拡大断面図であり、図7よりもナットの高さが高い状態を示した図である。
図9】ナットの高さとアンテナの周波数との関係についてシミュレーションした結果の傾向を示すグラフである。
図10】第3の実施形態における特性調整部周辺の拡大断面図である。
図11】第3の実施形態における特性調整部周辺の拡大断面図であり、図10よりもビスの長さが長い状態を示した図である。
図12】第4の実施形態における特性調整部周辺の拡大断面図である。
図13】第4の実施形態における特性調整部周辺の拡大断面図であり、図12よりもナットの高さが高い状態を示した図である。
図14】第1の実施形態の一変形例における特性調整部周辺の拡大断面図である。
図15】第2の実施形態の一変形例における特性調整部周辺の拡大断面図である。
図16】特性調整部の一変形例の構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
図1から図5を参照しつつ、本発明に係る電子機器、アンテナ特性の調整方法及び電子機器の組立て方法の第1の実施形態について説明する。本実施形態では電子機器が時計本体である場合を例として説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、本実施形態における電子機器である時計本体の要部を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す時計本体のII-II線に沿う断面図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態における時計本体100は、厚み方向(図2においてZ軸方向)における上下(時計における表裏)に開口する中空の短柱形状に形成されたケース(以下、実施形態において「本体ケース1」とする。)を備えている。
【0011】
なお、図示例において本体ケース1は、上から平面視した場合にほぼ円形である円筒状に形成されている。なお、本体ケース1及びこれを備える時計本体100の形状は図示例に限定されない。例えば上方向からの平面視で楕円形状となっていてもよいし、多角形の柱状等であってもよい。
本実施形態において、本体ケース1は、例えばSUSやチタン等の金属材料で形成されている。なお、本体ケース1を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
【0012】
本体ケース1の表面側(時計における視認側、上側)の開口部11には、透明なガラス等で形成され、光透過性を有する風防部材2が開口部11を覆うように設けられている。また本体ケース1の裏面側(時計における非視認側、下側)には、開口部を閉塞する蓋部材としての裏蓋3が取り付けられている。
本実施形態において、裏蓋3は、例えばSUSやチタン等の各種金属材料等の導電体で形成されており、GND(グランドプレーン)として機能する。
なお、裏蓋3を形成する材料はここに例示したものに限定されない。裏蓋3は本体ケース1と同じ材料で形成されていてもよいが、異なる材料で形成されていてもよい。
【0013】
本体ケース1には、アンテナ(例えばパッチアンテナ)を構成するアンテナ素子4が配置されている。本実施形態におけるアンテナ素子4は、環状に形成されたベゼル部材であり、本体ケース1の上側(本体ケース1の表面側、時計における視認側)に配置されている。
なお、アンテナ素子4の形状は図示例に限定されない。
ここで環状とは平面視における円環状のほか、楕円形や矩形であって一繋がりの形状のものも広く含む。またここに言う環状は、完全に閉じたリング状に限定されず、例えばC字状等、一部に隙間があるようなものも広く含む。
【0014】
アンテナ素子4を形成する材料は、特に限定されないが、形成材料の導電率が低い場合(抵抗率が高い場合)には、十分なアンテナ利得が得られない可能性がある。
このため、アンテナ素子4を形成する材料は、導電率が一定程度以上(すなわち、抵抗率が一定程度以下)である金属材料を用いることが好ましく、例えばSUS(ステンレス鋼)やチタン等が好適に用いられる。また電子機器としての時計本体100があまり重くなることは好ましくないため、アンテナ素子4はできるだけ軽量な材料で形成されることが好ましい。
【0015】
裏蓋3上には、図示しない電気回路部等を備える基板6が配置されている。
アンテナ素子4にはコネクタ部材61が接続されており、アンテナ素子4はこのコネクタ部材61によって基板6の電気回路部と接続されている。
コネクタ部材61は給電用のコンタクト手段であり、アンテナ素子4はコネクタ部材61を介して例えば基板6上に搭載された電気回路部としてのLC回路等と接続される。
【0016】
また、アンテナ素子4と本体ケース1との間には、樹脂等の誘電体で形成された誘電体部材5が配置されている。誘電体部材5は、例えば環状に形成されたアンテナ素子4とほぼ同様の環状に形成され、アンテナ素子4と重なり合うように配置される。
【0017】
アンテナ素子4と金属製の本体ケース1との間に絶縁性を有する部材である誘電体部材5を介在させることで、アンテナ素子4と金属製の本体ケース1とが直接接触することを防ぎ、短絡が起こるのを回避することができる。
なお、誘電体部材5はアンテナ素子4が本体ケース1と接触しないようにアンテナ素子4を安定して支えられるだけの幅があればよく、必ずしもアンテナ素子4と同じ形状で重なり合っていなくてもよい。
なお、誘電体部材5は、アンテナ素子4と本体ケース1との間に設けられるOリング等であってもよく、この場合には誘電体部材5が、本体ケース1内部を水密とするための封止手段(第二封止手段)として機能してもよい。
【0018】
アンテナ素子4の下側(裏面側、非視認側)には、アンテナ特性を調整する特性調整部7が設けられている。
特性調整部7は、第一の調整部材と、筒状部と、第二の調整部材と、を有している。
図1に示すように、本実施形態では本体ケース1の周面に沿ってほぼ等間隔に4つの特性調整部7が配置されている。なお、特性調整部7の数は図示例に限定されず、3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0019】
図3及び図4は、図2において一点鎖線枠IIIで囲まれた特性調整部周辺部分の拡大断面図である。
図3及び図4に示すように、アンテナ素子4の下側面(裏面、非視認側の面)には、特性調整部7を設ける位置に対応して凹部41が形成されている。凹部41の内周面には雌ねじが切られている。
各凹部41には、凹部41の内周面に切られた雌ねじと螺合する雄ねじが少なくとも一端側に形成されたビス71(いわゆるイモネジ等)が螺着される。
【0020】
本実施形態においてビス71は、例えばSUS等の金属材料で形成され、一端側がアンテナ素子4に接触するとともに他端側が本体ケース1内に配置される第一の調整部材である。
なお、時計本体100の外観上、第一の調整部材としてのビス71は、その全体がアンテナ素子4の非視認側に配置されることが望ましい。
このため、例えば本実施形態では、アンテナ素子4の裏面側に形成された凹部41がアンテナ素子4の表面(視認側)に貫通しない深さとなっている。これにより、凹部41内に螺着されるビス71の先端は、アンテナ素子4の視認側に突出することなく、裏面側に止まり、外観に影響を与えない。
【0021】
なお、第一の調整部材としてのビス71は、アンテナ素子4と接触するように配置されていればよく、図示例のように螺着等によってアンテナ素子4に固定されている場合に限定されない。単に凹部41内に圧入等によって配置される、ねじ切りされていないピン等であってもよい。
また、第一の調整部材はアンテナ素子4と容量結合されているものでもよく、この場合にはその一端側がアンテナ素子4と接触していなくても、アンテナ素子4と容量結合される程度に近接して配置されていればよい。
【0022】
本体ケース1の周壁内であって特性調整部7が設けられている部分には、厚み方向(図2におけるZ軸方向)に貫通する孔部12が形成されている。
本実施形態において、金属製の本体ケース1に形成された孔部12は、金属材料で形成され、第一の調整部材(本実施形態ではビス71)の他端側が挿入される筒状部を構成する。
本実施形態の筒状部である孔部12は、GNDとしての裏蓋3と接する本体ケース1に形成されたものであり、GNDと同電位の導電体部である。
なお、図3及び図4に示すように、誘電体部材5にも孔部12に対応する位置に貫通孔51が設けられており、ビス71は貫通孔51を介して孔部12に挿入することが可能となっている。
【0023】
さらに、筒状部としての孔部12内には、樹脂等の誘電体で形成された第二の調整部材としてのナット72が、筒状部としての孔部12と第一の調整部材としてのビス71との間に介在するように配置される。
本実施形態のナット72は、本体ケース1の厚み(本体ケース1の高さ、図2におけるZ軸方向の高さ)とほぼ同じ高さを有している。
ビス71における孔部12への挿入側端部(図3及び図4において下側端部)はナット72に受け入れられており、ビス71を最も長い状態とした場合でも、本体ケース1(本体ケース1に形成された孔部12等)や金属製の裏蓋3と接触しないようになっている。
また、本実施形態では、ビス71が一端側から他端側まで外周面に雄ねじが形成されたイモネジとなっており、ナット72の内周面には、ビス71に形成された雄ねじと螺合する雌ねじが形成されている。
【0024】
本実施形態では、第一の調整部材としてのビス71と第二の調整部材としてのナット72とが螺合することで、本体ケース1内部を水密とすることができる。この場合、ビス71及びナット72のねじ切り部(すなわち、ビス71の雄ねじ及びナット72の雌ねじ)が本体ケース1内部を水密とするための封止手段として機能する。
なお、ビス71とナット72とが螺合する構成は必須ではなく、単なるピンのような第一の調整部材を孔部12内に嵌め込まれた第二の調整部材で受けるようにしてもよい。
この場合には、本体ケース1内部を水密とするための封止手段(第一封止手段)として、ビス71の軸周り等に、筒状部である孔部12又は第二の調整部材であるナット72と第一の調整部材であるビス71との間を封止するガスケットやOリング等を別途設けてもよい。
【0025】
次に、本実施形態における電子機器としての時計本体の組立て方法及びアンテナ特性の調整方法について説明する。なお、アンテナ特性の調整方法として、以下の本実施形態では、アンテナ周波数を調整する場合について説明するが、本構成によって調整可能なアンテナ特性は周波数に限定されない。
【0026】
時計本体100を組み立てる際は、金属製の本体ケース1の周壁の所定位置に厚み方向に貫通する孔部12を形成する。また、本体ケース1の内部に基板6その他の各種電子部品等を配置する。
一方、環状のアンテナ素子4の裏面側(下側、非視認側)であって、組付け状態において本体ケース1側の孔部12に対応する位置に凹部41を設け、凹部41の内周面に雌ねじを形成する。そして、第一の調整部材であり、外周面に雄ねじが形成されたビス71の一端側を凹部41内に螺着させる。
すべてのビス71(図1に示す例では4つ)をアンテナ素子4の凹部41に装着すると、本体ケース1の上側にアンテナ素子4を配置し、アンテナ素子4の裏面に取り付けられたビス71の他端側(自由端側)を本体ケース1の孔部12内にそれぞれ挿入する。
【0027】
さらに、貫通孔である孔部12に下方から第二の調整部材であるナット72を挿入し、ビス71の雄ねじとナット72の雌ねじとを螺合させる。これによってGNDと同電位の導電体部である筒状部としての孔部12と第一の調整部材であるビス71との間に、第二の調整部材であるナット72が介在している状態となる。すなわち、金属製のビス71及びその周りを囲う樹脂製のナット72の外周に円筒状のGND電位の導電体が配置された状態となる。
ナット72全体が孔部12内に入るまでねじ込んだら、この状態でのアンテナ特性(本実施形態では周波数)を検証する。
検証の結果、アンテナが所望の周波数の電波と共振状態となっている場合には、アンテナ特性の調整を終了する。
他方、検証の結果、所望の周波数の電波と共振状態となっていない場合には、さらにアンテナ特性の調整を行う。具体的には以下のように調整する。
【0028】
図5は、ビスの長さとアンテナの周波数(利得ピーク周波数)との関係についてシミュレーションした結果の傾向を示すグラフである。
本実施形態のようにナット72の高さ(長さ)が一定である場合(図3及び図4では、本体ケース1の高さ方向の全体に亘ってナット72を設ける場合を図示)には、図5に示すように、ビス71の長さ[mm]が長くなるに従ってアンテナの周波数[GHz]が低くなる傾向があることが分かる。
すなわち、本実施形態においてビス71はアンテナ素子4と接触する金属製の部材であるが、ビス71の長さ[mm]が長くなると、その分、GNDと同電位の導電体部である筒状部としての孔部12内における樹脂製のナット72と金属製のビス71との重なり合いが多くなる。このため、GNDとアンテナ素子4との間で形成される静電容量(いわばアンテナ素子4とGNDとの間で構成されるコンデンサの容量)が大きくなる。これによりアンテナの周波数は下がる傾向となる。
【0029】
そこで、検証の結果、現状のアンテナ周波数が所望の周波数よりも高い場合には、図4に示すように、第一の調整部材であるビス71の長さを長くする。これにより、アンテナ素子4とGND(裏蓋3)との間の静電容量が大きくなり、アンテナ周波数が低くなる。
また逆に、現状のアンテナ周波数が所望の周波数よりも低い場合には、第一の調整部材であるビス71の長さを短くする。これにより、アンテナ素子4とGND(裏蓋3)との間の静電容量が小さくなり、アンテナ周波数が高くなる。
このようにして、アンテナ周波数が所望のレベルとなるまで、ビス71の長さの調整を行う。
【0030】
なお、本実施形態では前述のように本体ケース1の周方向4か所に特性調整部7を設けているが、ビス71の長さの調整は、これら4つの特性調整部7の全てで行ってもよいし、このうちのいずれかで行ってもよい。
複数の特性調整部7において調整を行う場合、調整量は一律でもよいし、特性調整部7によって調整量を変えてもよい。
調整は予めシミュレーションしておき、時計本体100の組立て時には、シミュレーション結果に基づいて設定された状態で各部材を組み付けてもよい。
【0031】
アンテナ周波数が所望の周波数となると、アンテナ特性の調整を終了し、本体ケース1の下側から裏蓋3を取り付けて、下側の開口部分を閉塞する。
このとき、図3及び図4に示すように樹脂製のナット72を被覆するように裏蓋3を配置することで、樹脂製のナット72が外部から見えないように目隠しすることができる。
さらに、金属製のビス等、外観性に優れた固定手段を用いて裏蓋3を本体ケース1側に固定してもよい。これにより、外観に優れた時計本体100とすることができる。
以上によって、時計本体100の組立てが完了する。
【0032】
このような構成では、ビス71の長さを微調整することによって、アンテナ特性(周波数等)を所望のレベルに合わせ込むことができる。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、電子機器としての時計本体100が、本体ケース1と、本体ケース1の上側に配置された環状のアンテナ素子4と、金属材料で形成され、一端側がアンテナ素子4に接触して配置されるとともに他端側が本体ケース1内に配置される第一の調整部材としてのビス71と、金属材料で形成され、ビス71の他端側が挿入される筒状部としての孔部12と、誘電体で形成され、孔部12内に配置されて孔部12とビス71との間に介在する第二の調整部材としてのナット72と、を有している。
このような構成とすることにより、一旦アンテナ(アンテナ素子4)の配置位置や構造、周辺部品の形状等が決定された後に、電子機器としての時計本体100のデザインが変更されたような場合でも、アンテナ設計からやり直す等の手間やコストをかけることなく、第一の調整部材としてのビス71及び第二の調整部材としてのナット72によって、容易にアンテナの周波数等の特性を調整することができる。
これにより、電子機器としての時計本体100の構造や各種のデザインが決定した後に各部に変更等が生じ場合でも、周波数等のアンテナ特性の調整が容易であり、かつ正確に合わせ込むことが可能となる。
そしてアンテナ特性を製品としての時計本体100(電子機器)において正確に合わせ込むことができるため、アンテナの性能を十分に引き出すことができ、高感度なアンテナを備える時計本体100(電子機器)を提供することができる。
なお、第一の調整部材(ビス71)は、一端側がアンテナ素子4に接触して配置される場合に限られない。第一の調整部材は、アンテナ素子4と容量結合可能な程度に、ある程度アンテナ素子4に近接して配置される構成となっていればよく、第一の調整部材として機能する部材の配置の自由度が広く認められる。
【0034】
また、本実施形態では筒状部である孔部12内における第一の調整部材としてのビス71と第二の調整部材としてのナット72との重なり合い具合(重なり合う重なり範囲の広さ)を調整可能となっている。
具体的には、筒状部である孔部12内に挿入される第一の調整部材としてのビス71の長さを変えることで孔部12内におけるビス71と第二の調整部材としてのナット72との重なり合い具合(重なり範囲の広さ)を調整することができる。
これによりアンテナが組み込まれる電子機器のデザインに応じて、アンテナ周波数等のアンテナ特性を容易に調整することが可能となる。
また本実施形態ではビス71の長さを変えることで調整を行うため、ナット72については、同じ形状、大きさのもので対応することができる。このため、量産性に優れている。
【0035】
また、本実施形態のように第一の調整部材が、金属製のビス71である場合には、比較的容易に製造、微修正等が可能であり、コスト増を防ぐことができる。
【0036】
また、本実施形態のように第二の調整部材が、樹脂で形成され、第一の調整部材(本実施形態では、ビス71)に対応する形状を有するナット72である場合には、比較的容易に製造等が可能であり、コスト増を防ぐことができる。
【0037】
また、本実施形態では第一の調整部材としてのビス71の全体がアンテナ素子4の非視認側に配置される。
このため、ビス71を設けることによる電子機器(時計本体100)の外観への影響を回避することができ、意匠性に優れた電子機器(時計本体100)とすることができる。
【0038】
また、本実施形態では第一の調整部材としてのビス71の雄ねじと第二の調整部材としてのナット72の雌ねじとが螺着される。
このため、雄ねじと雌ねじとの螺着部分が本体ケース1の内部を水密とするための封止手段として機能し、別途封止手段を設けなくても本体ケース1内部の水密を確保することができる。
【0039】
なお、本体ケース1の内部を水密とするための封止手段は、雄ねじと雌ねじとの螺着部分に限られない。例えば第一の調整部材としてのビス71の軸周り等に、筒状部である孔部12又は第二の調整部材であるナット72と第一の調整部材であるビス71との間を封止して本体ケース1の内部を水密とする封止手段(第一封止手段)として、ガスケットやOリング等を設けてもよい。
この場合には、本体ケース1内部の水密をより確実に確保することができる。
【0040】
また、本実施形態のように本体ケース1を金属材料で形成された金属ケースとした場合には、金属製の筒状部は、本体ケース1に形成された孔部12で構成することができる。
このため別部品を用意する必要がなく、簡易な構成とすることができる。
【0041】
また、本実施形態ではアンテナ素子4と本体ケース1との間に誘電体部材5を配置する。
これにより、金属製の本体ケース1の上にアンテナ素子4を配置した場合にも短絡を生じない。
またこのようにアンテナ素子4と本体ケース1との間に誘電体部材5を配置した場合には、誘電体部材を本体ケース1内部の水密を確保するための封止手段(第二封止手段)とすることもできる。
この場合には、別途封止手段を設ける必要がなく、部品点数を抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態では第二の調整部材として樹脂製のナット72を用いるが、本体ケース1の下側開口部を閉塞する蓋部材としての裏蓋3を、ナット72を被覆するように配置する。
このため、樹脂製のナット72が外観に現れるのを防いで、意匠性に優れた電気機器(時計本体100)を実現することができる。
さらに、裏蓋3を金属製のビスで本体ケース1に固定してもよく、この場合には、裏蓋3を強固に固定できるとともに、外観にも優れた時計本体100を実現することができる。
【0043】
[第2の実施形態]
次に、図6図9を参照しつつ、本発明に係る電子機器、アンテナ特性の調整方法及び電子機器の組立て方法の第2の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態では特性調整部が第一の調整部材であるビスの長さを変えることでアンテナ特性の調整を行う場合を例示したのに対して、本実施形態は、特性調整部が第二の調整部材であるナットの高さを変えることでアンテナ特性の調整を行う点で第1の実施形態と異なる。以下においては、特に第1の実施形態と異なる点について説明する。
なお、図6図9において、第1の実施形態と同様である部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
図6は、本実施形態における電子機器である時計本体の要部断面図である。
また、図7及び図8は、図6において一点鎖線枠VIIで囲まれた特性調整部周辺部分の拡大断面図である。
図7及び図8に示すように、本実施形態の電子機器である時計本体200に設けられる特性調整部8は、第一の調整部材であるビス81と、第二の調整部材としてのナット82と、筒状部としての孔部12と、を備えている。
【0045】
本実施形態において、第一の調整部材であるビス81の長さは一定であり、図示例では本体ケース1の厚み(本体ケース1の高さ、図6におけるZ軸方向の高さ)とほぼ同じ長さを有している。
なお、ビス81は、孔部12への挿入側端部(図7及び図8において下側端部)がナット82に受け入れられており、本体ケース1(本体ケース1に形成された孔部12等)や金属製の裏蓋3と接触しないようになっている。
【0046】
ナット82は、第1の実施形態と同様に樹脂等の誘電体で形成されており、筒状部としての孔部12と第一の調整部材としてのビス81との間に介在するように配置される。孔部12とビス81との間にナット82を配置することで、金属製のビス81及びその周りを囲う樹脂製のナット82の外周に円筒状のGND電位の導電体が配置された状態となる。
本実施形態において、第二の調整部材としてのナット82は、アンテナの周波数等の特性を調整するためにその高さが調整される部材である。
【0047】
なお、その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、同様である部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
次に、本実施形態におけるアンテナ特性の調整方法について説明する。なお、アンテナ特性の調整以外の時計本体200(電子機器)の組立て方法は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0049】
第1の実施形態と同様にアンテナ特性(本実施形態では周波数)を検証した結果、アンテナが所望の周波数の電波と共振状態となっている場合には、アンテナ特性の調整を終了する。
他方、検証の結果、所望の周波数の電波と共振状態となっていない場合には、さらにアンテナ特性の調整を行う。具体的には以下のように調整する。
【0050】
図9は、ナットの高さとアンテナの周波数(利得ピーク周波数)との関係についてシミュレーションした結果の傾向を示すグラフである。
本実施形態のようにビス81の長さが一定である場合(図7及び図8では、本体ケース1の高さ方向のほぼ全体に亘ってビス82を設ける場合を図示)には、図9に示すように、ナット82の高さ(長さ)[mm]が長くなるに従ってアンテナの周波数[GHz]が低くなる傾向があることが分かる。
すなわち、本実施形態においてビス81はアンテナ素子4と接触する金属製の部材であるが、ナット82の高さ(長さ)[mm]が高くなると、その分、GNDと同電位の導電体部である筒状部としての孔部12内における樹脂製のナット82と金属製のビス81との重なり合いが多くなる。このため、GNDとアンテナ素子4との間で形成される静電容量(いわばアンテナ素子4とGNDとの間で構成されるコンデンサの容量)が大きくなる。これによりアンテナの周波数は下がる傾向となる。
【0051】
そこで、アンテナ特性を検証した結果、現状のアンテナ周波数が所望の周波数よりも高い場合には、図8に示すように、第二の調整部材であるナット82の高さを高くする。これにより、アンテナ素子4とGND(裏蓋3)との間の静電容量が大きくなり、アンテナ周波数が低くなる。
また逆に、現状のアンテナ周波数が所望の周波数よりも低い場合には、第二の調整部材であるナット82の高さを低くする。これにより、アンテナ素子4とGND(裏蓋3)との間の静電容量が小さくなり、アンテナ周波数が高くなる。
このようにして、アンテナ周波数が所望のレベルとなるまで、ナット82の高さの調整を行う。
【0052】
なお、第1の実施形態と同様に、複数の特性調整部8を備える場合には、その全てで調整を行ってもよいし、そのうちのいずれかで行ってもよい。
複数の特性調整部8において調整を行う場合、調整量は一律でもよいし、特性調整部8によって調整量を変えてもよい。
なお、その他の点は第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0053】
このような構成では、ナット82の高さを微調整することによって、アンテナ特性(周波数等)を所望のレベルに合わせ込むことができる。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得られる他、以下の効果を得ることができる。
【0055】
すなわち、本実施形態では樹脂で形成された第二の調整部材としてのナット82の高さ(長さ)を変えることで筒状部である孔部12内における第一の調整部材としてのビス81と第二の調整部材としてのナット82との重なり合い具合(重なり合う重なり範囲の広さ)を調整する。
樹脂製のナット82は、比較的容易に製造等が可能であり、手間やコストを増大させることなく、アンテナが組み込まれる電子機器(時計本体200)のデザインに応じて、アンテナ周波数等のアンテナ特性を容易に調整することが可能となる。
またこの場合には、金属製のビス81については、同じ形状、大きさのもので対応することができるため、量産性に優れている。
【0056】
[第3の実施形態]
次に、図10及び図11を参照しつつ、本発明に係る電子機器、アンテナ特性の調整方法及び電子機器の組立て方法の第3の実施形態について説明する。なお、第3の実施形態は、特性調整部が第一の調整部材であるビスの長さを変えることでアンテナ特性の調整を行う点で上記第1の実施形態と共通するが、上記第1の実施形態では本体ケース1が金属材料で形成されている場合を例示したのに対して、本実施形態は、本体ケース1が樹脂材料等で形成されている点で第1の実施形態と異なる。以下においては、特に第1の実施形態と異なる点について説明する。
なお、図10及び図11において、第1の実施形態と同様である部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0057】
図10及び図11は、本実施形態における特性調整部周辺部分の拡大断面図である。
本実施形態において、本体ケース1は、例えばABS樹脂等の硬質樹脂で形成されている。
なお、本体ケース1を形成する材料は樹脂に限定されず、例えばセラミックその他各種の材料を適用することができる。また、各種樹脂にカーボンフィラーやガラス繊維等を混練させた各種の複合材料であってもよい。このような複合材料によって本体ケース1を形成することで、本体ケース1の強度を向上させることができる。
【0058】
本体ケース1の上にはアンテナ素子4が配置されている。
本実施形態のように本体ケース1が樹脂製である場合、本体ケース1の上に直接アンテナ素子4を配置しても短絡等を生じない。
このため、図10及び図11に示すように、本実施形態ではアンテナ素子4と本体ケース1との間に誘電体部材5のような絶縁性の部材を配置する必要がない。なお、本体ケース1内部の水密をより確実に確保する等のためにアンテナ素子4と本体ケース1との間に樹脂製の部材等を配置しても構わない。
アンテナ素子4の裏面側には、第1の実施形態等と同様に、第一の調整部材としてのビス91Aがアンテナ素子4に接触するように設けられている。
本実施形態において、第一の調整部材としてのビス91Aは、アンテナの周波数等の特性を調整するためにその長さが調整される部材である。
【0059】
本実施形態の電子機器(時計本体)は、第1の実施形態等と同様に、複数の特性調整部9Aを備えている。
本実施形態における特性調整部9Aは、第一の調整部材としてのビス91A、第二の調整部材としてのナット92Aの他、筒状部としての筒状部材13を有している。
【0060】
本体ケース1において、これら特性調整部9Aを構成する第一の調整部材であるビス91Aが設けられる位置に対応する周壁部分には、本体ケース1の厚み方向(高さ方向、図10及び図11において上下方向)に貫通する孔部12が形成されている。
孔部12内には、筒状部材13が配置されている。
【0061】
筒状部材13は上下に開口しており、図10及び図11に示すように、筒状部材13の下端部は裏蓋3と接触している。本実施形態において、裏蓋3は金属等の導電体で形成されてGNDとして機能するものであり、これと接触する筒状部としての筒状部材13は、GNDと同電位の導電体部である。金属製のビス91A及びその周りを囲う樹脂製のナット92Aの外周に筒状部材13が配置されることで、ビス91A及びナット92Aの周りに円筒状のGND電位の導電体が配置された状態となる。
なお、筒状部材13は、下端部が裏蓋3と接触し、上端部がアンテナ素子4からある程度(容量結合しない程度)離間していればよく、筒状部材13を孔部12内のどの高さまで設けるかは適宜設定される。
【0062】
筒状部材13内には、第二の調整部材としてのナット92Aが配置されている。本実施形態において、ナット92Aの高さ(長さ)は一定であり、例えば図示例では筒状部材13の高さと同程度の高さのナット92Aを設けている。
【0063】
なお、その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、同様である部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0064】
次に、本実施形態におけるアンテナ特性の調整方法について説明する。なお、アンテナ特性の調整以外の時計本体(電子機器)の組立て方法は第1の実施形態とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0065】
第1の実施形態と同様にアンテナ特性(本実施形態では周波数)を検証した結果、アンテナが所望の周波数の電波と共振状態となっている場合には、アンテナ特性の調整を終了する。
他方、検証の結果、所望の周波数の電波と共振状態となっていない場合には、さらにアンテナ特性の調整を行う。具体的には以下のように調整する。
【0066】
本実施形態のようにナット92Aの高さ(長さ)が一定である場合(図10及び図11では、筒状部材13の高さ方向のほぼ全体に亘ってナット92Aを設ける場合を図示)には、ビス91Aの長さ[mm]が長くなるに従ってアンテナの周波数[GHz]が低くなる傾向がある。
すなわち、本実施形態においてビス91Aはアンテナ素子4と接触する金属製の部材であるが、ビス91Aの長さ[mm]が長くなると、その分、GNDと同電位の導電体部である筒状部としての筒状部材13内における樹脂製のナット92Aと金属製のビス91Aとの重なり合いが多くなる。このため、GNDとアンテナ素子4との間で形成される静電容量(いわばアンテナ素子4とGNDとの間で構成されるコンデンサの容量)が大きくなる。これによりアンテナの周波数は下がる傾向となる。
【0067】
そこで、検証の結果、現状のアンテナ周波数が所望の周波数よりも高い場合には、図11に示すように、第一の調整部材であるビス91Aの長さを長くする。これにより、アンテナ素子4とGND(裏蓋3)との間の静電容量が大きくなり、アンテナ周波数が低くなる。
また逆に、現状のアンテナ周波数が所望の周波数よりも低い場合には、第一の調整部材であるビス91Aの長さを短くする。これにより、アンテナ素子4とGND(裏蓋3)との間の静電容量が小さくなり、アンテナ周波数が高くなる。
このようにして、アンテナ周波数が所望のレベルとなるまで、ビス91Aの長さの調整を行う。
【0068】
なお、第1の実施形態等と同様に、複数の特性調整部9Aを備える場合には、その全てで調整を行ってもよいし、そのうちのいずれかで行ってもよい。
複数の特性調整部9Aにおいて調整を行う場合、調整量は一律でもよいし、特性調整部9Aによって調整量を変えてもよい。
なお、その他の点は第1の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0069】
このような構成では、ビス91Aの長さを微調整することによって、アンテナ特性(周波数等)を所望のレベルに合わせ込むことができる。
【0070】
以上のように、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得られる他、以下の効果を得ることができる。
【0071】
すなわち、本実施形態では本体ケース1が樹脂で形成されている場合に、本体ケース内に筒状部として金属製の筒状部材13を設け、本体ケース1の上側に配置された環状のアンテナ素子4に接触又は近接して配置される金属製の第一の調整部材であるビス91Aを、その他端側が筒状部材13内に挿入されるように配置し、筒状部材13とビス91Aとの間に介在するように誘電体で形成された第二の調整部材であるナット92Aを配置する場合に、筒状部材13内に挿入されるビス91Aの長さを変えることで筒状部材13内におけるビス91Aとナット92Aとの重なり合い具合(重なり合う重なり範囲の広さ)を調整し、これによって周波数等のアンテナ特性の調整を行う。
これにより、樹脂ケースを備える電子機器(時計本体)の場合にも、第一の調整部材であるビス91Aの長さを変えるだけで、他の構成、デザイン等を変更することなく、簡易に所望の特性(周波数等)のアンテナを得ることができる。
【0072】
[第4の実施形態]
次に、図12及び図13を参照しつつ、本発明に係る電子機器、アンテナ特性の調整方法及び電子機器の組立て方法の第4の実施形態について説明する。なお、第4の実施形態は、特性調整部が第二の調整部材であるナットの高さを変えることでアンテナ特性の調整を行う点で上記第2の実施形態と共通するが、上記第2の実施形態では本体ケース1が金属材料で形成されている場合を例示したのに対して、本実施形態は、第3の実施形態と同様に本体ケース1が樹脂材料等で形成されている点で第2の実施形態と異なる。以下においては、特に第2、第3の実施形態と異なる点について説明する。
なお、図12及び図13において、第2、第3の実施形態と同様である部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0073】
図12及び図13は、本実施形態における特性調整部周辺部分の拡大断面図である。
本実施形態の電子機器(時計本体)は、第1の実施形態等と同様に、本体ケース1、アンテナ素子4、複数の特性調整部9B等を備えている。
本体ケース1は、第3の実施形態と同様に各種の樹脂により形成された樹脂ケースとなっている。
また特性調整部9Bは、第3の実施形態と同様に第一の調整部材としてのビス91B、第二の調整部材としてのナット92Bの他、筒状部としての筒状部材13を有している。筒状部材13はGNDとして機能する裏蓋3と接触しており、GNDと同電位の導電体部である。
【0074】
図12及び図13に示すように、本実施形態において、第一の調整部材であるビス91Bの長さは一定であり、図示例では本体ケース1の厚み(本体ケース1の高さ)とほぼ同じ長さを有している。
なお、ビス91Bは、筒状部材13への挿入側端部(図12及び図13において下側端部)がナット92Bに受け入れられており、本体ケース1の孔部12内に設けられた筒状部材13等や金属製の裏蓋3と接触しないようになっている。
【0075】
ナット92Bは、第2、第3の実施形態と同様に樹脂等の誘電体で形成されており、筒状部としての筒状部材13と第一の調整部材としてのビス91Bとの間に介在するように配置される。金属製のビス91B及びその周りを囲う樹脂製のナット92Bの外周に筒状部材13が配置されることで、ビス91B及びナット92Bの周りに円筒状のGND電位の導電体が配置された状態となる。
本実施形態において、第二の調整部材としてのナット92Bは、アンテナの周波数等の特性を調整するためにその高さが調整される部材である。
【0076】
なお、その他の構成は、第2、第3の実施形態と同様であるため、同様である部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0077】
次に、本実施形態におけるアンテナ特性の調整方法について説明する。なお、アンテナ特性の調整以外の時計本体(電子機器)の組立て方法は第2、第3の実施形態等とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0078】
第2、第3の実施形態等と同様にアンテナ特性(本実施形態では周波数)を検証した結果、アンテナが所望の周波数の電波と共振状態となっている場合には、アンテナ特性の調整を終了する。
他方、検証の結果、所望の周波数の電波と共振状態となっていない場合には、さらにアンテナ特性の調整を行う。具体的には以下のように調整する。
【0079】
本実施形態のようにビス91Bの長さが一定である場合(図12及び図13では、本体ケース1の高さ方向のほぼ全体に亘ってビス91Bを設ける場合を図示)には、ナット92Bの高さ(長さ)[mm]が長くなるに従ってアンテナの周波数[GHz]が低くなる傾向がある。
すなわち、本実施形態においてビス91Bはアンテナ素子4と接触する金属製の部材であるが、ナット92Bの高さ(長さ)[mm]が高くなると、その分、GNDと同電位の導電体部である筒状部としての筒状部材13内における樹脂製のナット92Bと金属製のビス91Bとの重なり合いが多くなる。このため、GNDとアンテナ素子4との間で形成される静電容量(いわばアンテナ素子4とGNDとの間で構成されるコンデンサの容量)が大きくなる。これによりアンテナの周波数は下がる傾向となる。
【0080】
そこで、アンテナ特性を検証した結果、現状のアンテナ周波数が所望の周波数よりも高い場合には、図13に示すように、第二の調整部材であるナット92Bの高さを高くする。これにより、アンテナ素子4とGND(裏蓋3)との間の静電容量が大きくなり、アンテナ周波数が低くなる。
また逆に、現状のアンテナ周波数が所望の周波数よりも低い場合には、第二の調整部材であるナット92Bの高さを低くする。これにより、アンテナ素子4とGND(裏蓋3)との間の静電容量が小さくなり、アンテナ周波数が高くなる。
このようにして、アンテナ周波数が所望のレベルとなるまで、ナット92Bの高さの調整を行う。
【0081】
なお、第2、第3の実施形態等と同様に、複数の特性調整部9Bを備える場合には、その全てで調整を行ってもよいし、そのうちのいずれかで行ってもよい。
複数の特性調整部9Bにおいて調整を行う場合、調整量は一律でもよいし、特性調整部9Bによって調整量を変えてもよい。
なお、その他の点は第2、第3の実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
このような構成では、ナット92Bの高さを微調整することによって、アンテナ特性(周波数等)を所望のレベルに合わせ込むことができる。
【0083】
以上のように、本実施形態によれば、本体ケース1が樹脂で形成されている場合に、本体ケース内に筒状部として金属製の筒状部材13を設け、本体ケース1の上側に配置された環状のアンテナ素子4に接触又は近接して配置される金属製の第一の調整部材であるビス91Bを、その他端側が筒状部材13内に挿入されるように配置し、筒状部材13とビス91Bとの間に介在するように誘電体で形成された第二の調整部材であるナット92Bを配置する場合に、筒状部材13内に配置するナット92Bの高さを変えることで筒状部材13内におけるビス91Bとナット92Bとの重なり合い具合(重なり合う重なり範囲の広さ)を調整し、これによって周波数等のアンテナ特性の調整を行う。
これにより、樹脂ケースを備える電子機器(時計本体)の場合にも、第二の調整部材であるナット92Bの高さを変えるだけで、他の構成、デザイン等を変更することなく、簡易に所望の特性(周波数等)のアンテナを得ることができる。
ナット92Bは樹脂製の部材であり、比較的簡易に高さの変更、調整を行うことが可能である。
【0084】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0085】
例えば、上記各実施形態では、第一の調整部材としてのビスが、その周面全体に雄ねじが形成されているイモネジである場合を例示したが、ビスの構成はこれに限定されない。
例えば、ビスにおけるアンテナ素子4と接する部分(凹部41に挿入される部分)のみに雄ねじを設け、筒状部内に挿入される部分には雄ねじを設けない構成としてもよい。この場合には、樹脂製の第二の調整部材は雌ねじが形成されたナットでなく、単なる樹脂製の筒状部材等でもよい。
【0086】
なお、このように場合にはビスとナットとが螺合しない場合等では、第一の調整部材としてのビスと第二の調整部材としてのナットによってアンテナ素子4を本体ケースに固定することができない。
このため、この場合には、アンテナ素子4を圧入等の固定手段によって本体ケースに固定する。
第一の調整部材としてのビスがアンテナ素子4に固定されていない場合(例えば単にビスの一端側がアンテナ素子4に接触しているにすぎない場合や近接配置されて容量結合している場合)にも、同様に、アンテナ素子4は圧入等によって本体ケースに固定される。
【0087】
また、上記各実施形態では、第一の調整部材としてのビスがイモネジである場合を例示したが、第一の調整部材はイモネジに限定されない。
例えば図14及び図15に示すように、アンテナ素子4に、厚み方向に貫通する貫通孔42を設け、貫通孔42の内径よりも外径の大きなねじ頭911を有する皿ねじや鍋ねじ等の有頭ねじ91C,91Dを特性調整部9C,9Dの第一の調整部材として用いてもよい。
【0088】
なお、図14及び図15に示す有頭ねじ91C,91Dのように、第一の調整部材の軸周りに雄ねじが形成されていない場合には、これを受ける第二の調整部材はナットでなくてもよい。
すなわち、例えば図14及び図15に示すように、第二の調整部材は、第一の調整部材としての有頭ねじ91C,91D(又は第1から第4の実施形態に例示したようなビス)と筒状部との間に介在するように筒状部内に充填され誘電体として機能する接着剤92C,92D等であってもよい。
この場合、予め第二の調整部材をナット等の所定の形状に成型しておく必要がないため、より柔軟にデザイン変更等に対応することができる。
【0089】
このように第二の調整部材が接着剤92C,92D等である場合も、例えば第1の実施形態や第3の実施形態と同様に、接着剤92C,92Dの充填量を一定(例えば図14では本体ケース1の厚み方向と同じ高さの量)とし、この中に挿入される第一の調整部材(有頭ねじ91C,91Dやビス)の長さを変えることで第一の調整部材と第二の調整部材との重なり合う量を調整し、アンテナ特性の調整を行ってもよい。
【0090】
また同様に第二の調整部材が接着剤92C,92D等である場合に、例えば第2の実施形態や第4の実施形態と同様に、接着剤92C,92Dの中に挿入される第一の調整部材(有頭ねじ91C,91Dやビス)の長さを一定(例えば図15では本体ケース1の厚み方向の高さと同様の長さ)とし、第二の調整部材である接着剤92C,92Dの充填量を変えることで第二の調整部材の高さを変更し、第一の調整部材と第二の調整部材との重なり合う量を調整して、アンテナ特性の調整を行ってもよい。
【0091】
また、例えば本体ケース1が樹脂製であり、本体ケース1の上側に環状のアンテナ素子4が配置される場合に、金属材料で形成され、一端側がアンテナ素子4に接触又は近接して配置されるとともに他端側が本体ケース1内に配置される第三の調整部材(例えば、ねじ頭911を有するビス91E)と、金属材料で形成され、一端側がビス91Eの他端側から本体ケース1内に挿入され、ビス91Eの他端側との間に所定の距離をおいて配置される第四の調整部材(例えば、ねじ頭921を有するビス92E)と、を備えて特性調整部9Eが構成されていてもよい。
【0092】
この場合には、例えば図16に示すように、アンテナ素子4に貫通孔42を形成し、本体ケース1において、アンテナ素子4に貫通孔42に対応する位置に、下側に貫通しない第1の孔部14を設け、裏蓋3にもアンテナ素子4に貫通孔42にほぼ対応する位置に貫通孔31を形成し、本体ケース1において、この貫通孔31に対応する位置に、上側に貫通しない第2の孔部15を設ける。この場合、第四の調整部材(例えば、ねじ頭921を有するビス92E)は裏蓋3と接触するため、裏蓋3がGNDとして機能するものである場合には、GNDと同電位の導電体部となる。
そして貫通孔42を介して上方向から挿入するビス91Eと貫通孔31を介して下方向から挿入するビス92Eとの間のギャップGを調整することによって第三の調整部材(ビス91E)と第四の調整部材(ビス92E)との間隔を調整し、アンテナ特性の調整を行ってもよい。
【0093】
この構成では、第三の調整部材としてのビス91Eと第四の調整部材としてのビス92Eとを同じ形状とすることもでき、生産性を向上させつつアンテナ特性の調整を行うことができる。
また、アンテナ素子4及び裏蓋3をアンテナ特性の調整を行うためのビス91E,ビス92Eによって上下から本体ケース1に固定することができる。このため、部品点数を増やすことなく、アンテナ素子4及び裏蓋3の固定とアンテナ特性の調整とを行うことができる。
【0094】
また、上記各実施形態では、第二の調整部材であるナット72が一繋がりのものである場合を例示したが、ナットの形状等はこれに限定されない。
第二の調整部材としてのナットは、例えばダブルナット構造を備えるものであってもよい。この場合には、抜けにくく、強固に第一の調整部材としてのビスを止めることができる。
なお第二の調整部材としてのナットが複数に分割されたダブルナットである場合、各ナットをそれぞれ上下方向に間隔をあけた状態で配置してもよい。
第二の調整部材としてのナットが複数に分割されている場合には、各ナットを微調整することでより細かくアンテナ特性の調整を行うことが期待できる。
【0095】
また、上記第1、第3の実施形態では、筒状部内に挿入される第一の調整部材(ビス)の長さを変えることで筒状部内における第一の調整部材と第二の調整部材(ナット)との重なり合い具合(重なり合う重なり範囲の広さ)を調整する場合を例示し、第2、第4の実施形態では、第二の調整部材(ナット)の高さを変えることで筒状部内における第一の調整部材と第二の調整部材(ナット)との重なり合い具合(重なり範囲の広さ)を調整する場合を例示したが、アンテナ特性の調整方法はこれに限定されない。
例えば筒状部内に挿入される第一の調整部材(ビス)の長さ及び第二の調整部材(ナット)の高さの両方を変えることで筒状部内における第一の調整部材(ビス)と第二の調整部材(ナット)との重なり合い具合(重なり範囲の広さ)を調整し、アンテナ特性の調整を行う構成としてもよい。
この場合には、第一の調整部材(ビス)、第二の調整部材(ナット)をそれぞれ調整することができ、アンテナを搭載する電子機器の形状等に応じてより柔軟な調整を行うことが可能になる。
【0096】
また、上記各実施形態では、裏蓋3がGNDとして機能し、筒状部が裏蓋3と接することでGNDと同電位となる場合を例示したが、GNDとして機能するのは裏蓋3に限定されない。
例えば、裏蓋3が樹脂等で形成されており、裏蓋3上に配置された基板等がGNDとして機能する場合には、筒状部を基板等、GNDとして機能する部材と接触させてGNDと同電位となるように構成する。
【0097】
また、上記各実施形態では、特性調整部が本体ケースの周壁内に埋設された状態であるものを例示したが、特性調整部は本体ケース内に設けられていればよく、図示したような本体ケースの周壁内に埋設されている構成に限定されない。
例えば本体ケースの周壁の内側に張り出すように特性調整部が設けられていてもよい。
【0098】
さらに、上記各実施形態では、電子機器が時計本体100である場合を例示して説明したが、電子機器はアンテナを備える機器であれば広く適用することが可能であり、時計(腕時計等)に限定されない。
例えば、歩数計、高度計、気圧計等の各種機器について、本発明の電子機器を適用してもよい。さらに、スマートフォン等の各種端末装置に本発明の電子機器が適用されてもよい。
【0099】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
本体ケースと、
前記本体ケースに配置されたアンテナ素子と、
金属材料で形成され、一端側が前記アンテナ素子に接触又は近接して配置されるとともに他端側が前記本体ケース内に配置される第一の調整部材と、
前記本体ケースが有し、かつ金属材料で形成され、前記第一の調整部材の他端側が挿入される筒状部と、
誘電体で形成され、前記筒状部内に配置されて前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在する第二の調整部材と、
を有することを特徴とする電子機器。
<請求項2>
前記アンテナ素子は前記本体ケースの上側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項3>
前記筒状部はGNDと同電位であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
<請求項4>
前記筒状部内における前記第一の調整部材と前記第二の調整部材とが重なり合う重なり範囲の広さを調整可能であることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
<請求項5>
前記第一の調整部材は、金属製のビスであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項6>
前記第二の調整部材は、樹脂で形成され、前記第一の調整部材に対応する形状を有するナットであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項7>
前記ナットはダブルナット構造を備えることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
<請求項8>
前記第二の調整部材は、前記筒状部内に充填されて誘電体として機能する接着剤であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項9>
前記第一の調整部材は、その全体が前記アンテナ素子の非視認側に配置されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項10>
前記本体ケースの内部を水密とするための第一封止手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項11>
前記第一封止手段は、前記筒状部又は前記第二の調整部材と前記第一の調整部材との間に設けられるガスケット又はOリングであることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
<請求項12>
前記本体ケースは、金属材料で形成されており、
前記筒状部は、前記本体ケースに形成された孔部で構成されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項13>
前記アンテナ素子と前記本体ケースとの間に配置される誘電体部材を備えていることを特徴とする請求項12に記載の電子機器。
<請求項14>
前記誘電体部材は、前記本体ケースの内部を水密とするための第二封止手段として機能することを特徴とする請求項13に記載の電子機器。
<請求項15>
前記本体ケースは、樹脂で形成されており、
前記筒状部は、前記本体ケース内に設けられた金属製の筒状部材で構成されることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の電子機器。
<請求項16>
樹脂で形成された本体ケースと、
前記本体ケースに配置された環状のアンテナ素子と、
金属材料で形成され、一端側が前記アンテナ素子に接触又は近接して配置されるとともに他端側が前記本体ケース内に配置される第三の調整部材と、
金属材料で形成され、一端側が前記第三の調整部材の他端側から前記本体ケース内に挿入され、前記第三の調整部材の他端側との間に所定の距離をおいて配置される第四の調整部材と、
を有することを特徴とする電子機器。
<請求項17>
本体ケースに配置されたアンテナ素子に接触又は近接して配置される金属製の第一の調整部材を、その他端側が、前記本体ケースに設けられ金属材料で形成された筒状部内に挿入されるように配置し、前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在するように誘電体で形成された第二の調整部材を配置する場合に、
前記筒状部内に挿入される前記第一の調整部材の長さを変えることで前記筒状部内における前記第一の調整部材と前記第二の調整部材とが重なり合う重なり範囲を調整することを特徴とするアンテナ特性の調整方法。
<請求項18>
本体ケースに配置されたアンテナ素子に接触又は近接して配置される金属製の第一の調整部材を、その他端側が、前記本体ケースに設けられ金属材料で形成された筒状部内に挿入されるように配置し、前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在するように誘電体で形成された第二の調整部材を配置する場合に、
前記第二の調整部材の高さを変えることで前記筒状部内における前記第一の調整部材と前記第二の調整部材とが重なり合う重なり範囲を調整することを特徴とするアンテナ特性の調整方法。
<請求項19>
本体ケースに配置されたアンテナ素子に接触又は近接して配置される金属製の第一の調整部材を、その他端側が、前記本体ケースに設けられ金属材料で形成された筒状部内に挿入されるように配置し、前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在するように誘電体で形成された第二の調整部材を配置する場合に、
前記筒状部内に挿入される前記第一の調整部材の長さ及び前記第二の調整部材の高さを変えることで前記筒状部内における前記第一の調整部材と前記第二の調整部材とが重なり合う重なり範囲を調整することを特徴とするアンテナ特性の調整方法。
<請求項20>
本体ケースにアンテナ素子を配置し、
金属材料で形成された第一の調整部材を、その一端側が前記アンテナ素子に接触又は近接して配置されるとともに他端側が前記本体ケース内に設けられた金属製の筒状部内に挿入されるように配置し、
誘電体で形成された第二の調整部材を、前記筒状部と前記第一の調整部材との間に介在するように前記筒状部内に配置することを特徴とする電子機器の組立て方法。
<請求項21>
前記第一の調整部材は金属製のビスであり、
前記第二の調整部材は樹脂製のナットであって、
前記本体ケースは、下側に開口部を有し、前記開口部を閉塞する蓋部材を備え、
前記蓋部材を、前記ナットを被覆するように配置した上で金属製のビスで前記本体ケースに固定することを特徴とする請求項20に記載の電子機器の組立て方法。
【符号の説明】
【0100】
1 本体ケース
2 風防部材
3 裏蓋
4 アンテナ素子
5 誘電体部材
6 基板
7 特性調整部
12 孔部(筒状部)
71 ビス(第一の調整部材)
72 ナット(第二の調整部材)
100 時計本体
図1
図2
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