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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】減速機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20240730BHJP
   F16H 55/17 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F16H1/16 Z
F16H55/17 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021040271
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139757
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 真平
(72)【発明者】
【氏名】永田 俊顕
(72)【発明者】
【氏名】野口 雅生
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正太郎
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-231063(JP,A)
【文献】実開平03-017344(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第103807408(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0194387(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/16
F16H 55/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動不能に支持される第1ギヤと、
軸方向に移動可能に支持される第2ギヤと、を備え、
前記第1ギヤ及び前記第2ギヤは、食い違い軸歯車を構成し、
前記第2ギヤは、前記第2ギヤの軸方向に対して圧力角が次第に変化する
減速機構。
【請求項2】
前記第2ギヤは、前記第2ギヤの軸方向において、前記圧力角が小さくなるにつれて転位係数が大きくなる
請求項1に記載の減速機構。
【請求項3】
前記第1ギヤは、ウォームであり、
前記第2ギヤは、ウォームホイールである
請求項1又は請求項2に記載の減速機構。
【請求項4】
前記第2ギヤを付勢する付勢部材を備え、
前記付勢部材の付勢方向は、前記第2ギヤの軸方向に沿う方向であって、前記第2ギヤの前記圧力角が小さくなる方向である
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の減速機構。
【請求項5】
前記第2ギヤを付勢する付勢部材を備え、
前記付勢部材の付勢方向は、前記第2ギヤの軸方向に沿う方向であって、前記第2ギヤの前記圧力角が大きくなる方向である
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の減速機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減速機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、窓ガラスと、窓ガラスを駆動する減速機付モータと、を備えるパワーウインドウが記載されている。減速機付モータは、ウォーム及びウォームホイールを含んで構成される減速機構と、ウォームを駆動するモータと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/235292号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなパワーウインドウにおいて、窓ガラスを上昇させる場合には窓ガラスが重力方向の逆方向に移動し、窓ガラスを下降させる場合には窓ガラスが重力方向に移動する。このため、パワーウインドウは、窓ガラスを上昇させる場合には、窓ガラスを下降させる場合よりも、大きなトルクをモータに出力させる必要がある。言い換えれば、上記のようなパワーウインドウは、窓ガラスを上昇させるのに必要なトルクを出力できるモータを選定する必要がある。こうした実情は、窓ガラスを駆動する駆動装置に限らず、他の駆動対象を駆動する駆動装置においても概ね共通する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する減速機構は、軸方向に移動不能に支持される第1ギヤと、軸方向に移動可能に支持される第2ギヤと、を備え、前記第1ギヤ及び前記第2ギヤは、食い違い軸歯車を構成し、前記第2ギヤは、前記第2ギヤの軸方向に対して圧力角が次第に変化する。
【0006】
上記構成の減速機構において、例えば、第1ギヤが駆動されるとき、第2ギヤには、第2ギヤの周方向の力だけでなく、第2ギヤの軸方向の力が作用する。このため、第2ギヤは、第1ギヤの回転方向に応じて、軸方向に移動する。したがって、減速機構は、第1ギヤが一方向に回転する場合、第1ギヤと第2ギヤの圧力角の小さい部分とが噛み合う状態で動力を伝達する。一方、減速機構は、第1ギヤが他方向に回転する場合、第1ギヤと第2ギヤの圧力角が大きい部分とが噛み合う状態で動力を伝達する。このように、減速機構は、第1ギヤが一方向に回転する場合には伝達効率が高くなり、第1ギヤが他方向に回転する場合には伝達効率が低くなる。
【0007】
以上より、減速機構は、駆動対象の移動方向に起因してモータの負荷が変化する駆動装置に適用される場合、次のような作用効果を得ることができる。すなわち、減速機構は、駆動対象の移動方向に起因してモータの負荷が高くなるときのモータの回転軸の回転方向を、伝達効率が高くなるときの第1ギヤの回転方向とすることができる。つまり、減速機構は、駆動対象の移動方向に起因してモータの負荷が高くなることを抑制できる。
【0008】
上記減速機構において、前記第2ギヤは、前記第2ギヤの軸方向において、前記圧力角が小さくなるにつれて転位係数が大きくなることが好ましい。
軸方向に対して、転位係数が変化しない第2ギヤを備える比較例を考えた場合、第1ギヤが第2ギヤの圧力角が大きい部分と噛み合う場合には、動力を円滑に伝達できるが、第1ギヤが第2ギヤの圧力角が小さい部分と噛み合う場合には、動力を円滑に伝達できなくなるおそれがある。この点、上記構成の減速機構は、第2ギヤの圧力角を小さくするとともに第2ギヤの転位係数を大きくする。このため、減速機構は、第1ギヤの噛み合う対象が、第2ギヤの圧力角が大きい部分であっても、第2ギヤの圧力角が小さい部分であっても、円滑に動力を伝達できる。
【0009】
上記減速機構において、前記第1ギヤは、ウォームであり、前記第2ギヤは、ウォームホイールであることが好ましい。
上記構成の減速機構によれば、第1ギヤは、第2ギヤによって駆動されにくくなる。
【0010】
上記減速機構において、前記第2ギヤを付勢する付勢部材を備え、前記付勢部材の付勢方向は、前記第2ギヤの軸方向に沿う方向であって、前記第2ギヤの前記圧力角が小さくなる方向であることが好ましい。
【0011】
上記構成の減速機構は、動力を伝達しないときに、第1ギヤが第2ギヤの圧力角が大きい部分と噛み合う状態を維持しやすくなる。
上記減速機構において、前記第2ギヤを付勢する付勢部材を備え、前記付勢部材の付勢方向は、前記第2ギヤの軸方向に沿う方向であって、前記第2ギヤの前記圧力角が大きくなる方向であることが好ましい。
【0012】
上記構成の減速機構は、第1ギヤが第2ギヤの圧力角が大きい部分と噛み合う状態から、第1ギヤが第2ギヤの圧力角が小さい部分と噛み合う状態に移行するとき、第2ギヤを軸方向に移動させやすくなる。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の減速機構は、駆動方向に応じて伝達効率に差を設けることができる。そして、減速機構は、駆動対象の移動方向に起因してモータの負荷が大きくなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る減速機構を備える駆動装置の正面図。
図2】上記減速機構の断面図。
図3】ウォームホイールの歯の形状を比較する模式図。
図4】上記減速機構の断面図。
図5】他の実施形態に係る減速機構の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態に係る減速機構を備える駆動装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、駆動装置10は、ケース20と、モータ30と、減速機構40と、を備える。
【0016】
ケース20は、駆動装置10の構成部品を収容する。図1に示すように、ケース20は、モータ30の回転軸31を回転可能に支持する2つの第1軸受21を有する。2つの第1軸受21は、モータ30の回転軸31の軸方向に間隔をあけて位置している。図2に示すように、ケース20は、後述する出力軸43を回転可能に支持する2つの第2軸受22と、2つの第2軸受22をそれぞれ支持する第1支持壁23及び第2支持壁24と、を有する。第1支持壁23及び第2支持壁24は、出力軸43の軸方向に間隔をあけて位置している。このため、2つの第2軸受22も、出力軸43の軸方向に間隔をあけて位置している。
【0017】
図1及び図2に示すように、減速機構40は、ウォーム41と、ウォームホイール42と、出力軸43と、台座44と、スプリング45と、を有する。
図1に示すように、ウォーム41は、円筒状をなしている。ウォーム41は、モータ30の回転軸31に固定されている。ウォーム41は、ケース20により、軸線回りの回転が許容され、軸方向への移動が制限されている。つまり、ウォーム41は、軸方向に移動不能に支持されている。モータ30が回転する場合には、ウォーム41が同様に回転する。ウォーム41の条数は、「1」であってもよいし、「2」以上であってもよい。ここで、軸方向に移動不能とは、ウォーム41の軸方向への移動を一切許容しないことをいうのではない。例えば、ウォーム41の支持態様及びウォーム41が固定される回転軸31の支持態様によっては、ウォーム41が軸方向に僅かに移動することを許容してもよい。
【0018】
図2に示すように、ウォームホイール42は、円板状をなしている。ウォームホイール42は、歯筋が軸方向に対して傾いたヘリカルギヤである。ウォームホイール42は、軸方向に対して、歯の形状が次第に変化している。詳しくは、ウォームホイール42の軸方向における一端面を第1面S1とし、他端面を第2面S2としたとき、第1面S1から第2面S2に向かうにつれて、圧力角が次第に小さくなっている。また、第1面S1から第2面S2に向かうにつれて、転位係数が次第に大きくなっている。言い換えれば、ウォームホイール42は、圧力角が小さくなるにつれて、転位係数が大きくなっている。なお、ウォームホイール42の基準円直径、歯底円直径及び歯先円直径は、軸方向に対して一定である。
【0019】
図3は、第1面S1寄りのウォームホイール42の歯42Aの1つと、第2面S2寄りのウォームホイール42の歯42Bの1つと、を周方向における中心位置が合うように重ねて表示した図である。詳しくは、図3は、図2の3A-3A線矢視断面におけるウォームホイール42の歯42Aの1つと、図2の3B-3B線矢視断面におけるウォームホイール42の歯42Bの1つと、を周方向における中心位置が合うように重ねて表示した図である。図3に示すように、第1面S1寄りのウォームホイール42の歯42Aの圧力角αAは、第2面S2寄りのウォームホイール42の歯42Bの圧力角αBよりも大きくなっている。また、第1面S1寄りのウォームホイール42の歯42Aの転位係数は、第2面S2寄りのウォームホイール42の歯42Bの転位係数よりも小さくなっている。なお、図3において、歯底円及び歯先円の間に延びる円は、基準円PCである。
【0020】
図1及び図2に示すように、ウォーム41及びウォームホイール42は、食い違い軸歯車としてのウォームギヤを構成する。つまり、駆動側となるウォーム41にトルクが作用するとき、ウォームホイール42は従動回転しやすいが、従動側となるウォームホイール42にトルクが作用するとき、ウォーム41は従動回転しにくい。以降の説明では、ウォームホイール42にトルクが作用するときのウォーム41の回転しにくさを「耐逆転性」という。例えば、ウォームホイール42にトルクが作用しても、出力軸43が回転しない場合、言い換えれば、出力軸43がセルフロックする場合には、耐逆転性が高いといえる。なお、本実施形態において、ウォーム41は、駆動ギヤとしての「第1ギヤ」に相当し、ウォームホイール42は、従動ギヤとしての「第2ギヤ」に相当している。
【0021】
図2に示すように、出力軸43は、ウォームホイール42を支持している。出力軸43は、ウォームホイール42と一体回転可能であって、ウォームホイール42に対して軸方向に相対移動可能となっている。正確には、ウォームホイール42は、出力軸43に対して軸方向に移動可能となっている。例えば、出力軸43は、スプライン軸であればよい。この場合、ウォームホイール42は、スプライン軸に対応する孔を有することが好ましい。
【0022】
台座44は、ウォームホイール42と第1支持壁23との間に位置するように、出力軸43に固定されている。このため、出力軸43が回転する場合には、台座44も回転する。スプリング45は、「付勢部材」の一例に相当する。スプリング45は、例えば、コイルスプリングである。スプリング45は、圧縮された状態で、台座44とウォームホイール42との間に配置されている。こうして、スプリング45は、ウォームホイール42の第1面S1を軸方向に常時付勢している。言い換えれば、スプリング45は、ウォームホイール42の圧力角が小さくなる方向にウォームホイール42を付勢している。
【0023】
本実施形態の作用について説明する。
まず、駆動装置10の作用について説明する。
減速機構40は、上述したように、ウォームギヤを構成する。このため、ウォーム41が回転する場合、ウォームホイール42には、ウォームホイール42を周方向に回転させる力だけでなく、ウォームホイール42を軸方向に移動させる力が作用する。
【0024】
図4に示すように、ウォーム41が第1回転方向R11に回転する場合、ウォームホイール42には、第1回転方向R21に力が作用する。このため、ウォームホイール42は、第1回転方向R21に回転する。また、ウォームホイール42には、軸方向に沿う第1方向A1に力が作用する。このため、ウォームホイール42は、第1方向A1に変位可能な場合、スプリング45を圧縮変形させつつ、第1方向A1に変位する。ウォームホイール42は、スプリング45が限界まで圧縮変形すると、第1方向A1に変位しなくなる。このとき、ウォーム41は、ウォームホイール42の圧力角が小さい部分と噛み合う。このため、減速機構40での動力の損失が小さく、伝達効率が高くなる。一方、ウォーム41がウォームホイール42の圧力角が小さい部分と噛み合う状態で、モータ30の駆動が停止されると、減速機構40の耐逆転性は低くなる。
【0025】
一方、図2に示すように、ウォーム41が第2回転方向R12に回転する場合、ウォームホイール42には、第1回転方向R21の逆方向である第2回転方向R22に力が作用する。このため、ウォームホイール42は、第2回転方向R22に回転する。また、ウォームホイール42には、第1方向A1の逆方向である第2方向A2に力が作用する。このため、ウォームホイール42は、第2方向A2に変位可能な場合、スプリング45の復元力を受けつつ、第2方向A2に変位する。ウォームホイール42は、ウォームホイール42が第2支持壁24に接触すると、第2方向A2に変位しなくなる。このとき、ウォーム41は、ウォームホイール42の圧力角が大きい部分と噛み合う。このため、減速機構40での動力の損失が大きくなり、伝達効率が低くなる。一方、ウォーム41がウォームホイール42の圧力角の大きい部分と噛み合う状態で、モータ30の駆動が停止されると、減速機構40の耐逆転性は高くなる。
【0026】
こうして、減速機構40は、ウォーム41の回転方向に応じて、伝達効率の高低を切り替えることができる。また、減速機構40は、ウォーム41をウォームホイール42の軸方向における何れの部位と噛み合わせた状態でモータ30の駆動を停止させるかによって、耐逆転性を調整できる。
【0027】
続いて、駆動装置10を車両のシートを昇降させるシート昇降装置として使用した場合の作用について説明する。この場合、車両のシートが駆動装置10の駆動対象に相当する。なお、駆動装置10は、モータ30の回転軸31が第1回転方向R11に回転するときにシートが上昇し、モータ30の回転軸31が第2回転方向R12に回転するときにシートが下降するように、車両に搭載される。
【0028】
駆動装置10は、シートを上昇させる場合、モータ30の回転軸31を第1回転方向R11に回転させる。シートを上昇させる場合、シート及びシートに着座する乗員を重力方向に逆らって移動させる必要がある。このため、シートを上昇させる場合には、シートを下降させる場合よりも、モータ30の負荷が大きくなりやすい。ただし、モータ30の回転軸31を第1回転方向R11に回転させる場合には、減速機構40の伝達効率が高い。このため、モータ30の負荷が過度に大きくなることが抑制される。
【0029】
シートが目的の位置まで上昇すると、駆動装置10は、モータ30の回転軸31を少しだけ逆転させる。言い換えれば、駆動装置10は、ウォーム41の噛合対象を、ウォームホイール42の圧力角が小さい部分から圧力角が大きい部分に変化させる。すると、耐逆転性が高くなり、出力軸43がセルフロックする。こうして、シートの高さが維持される。なお、モータ30の回転軸31を逆転し過ぎると、シートが目的の位置から下降する。このため、モータ30の回転軸31の逆転量はなるべく少ないことが好ましい。もしくは、モータ30の回転軸31の逆転に伴うシートの下降量を見越して、シートを目的の位置よりも上昇させておいてもよい。
【0030】
駆動装置10は、シートを下降させる場合、モータ30の回転軸31を第2回転方向R12に回転させる。モータ30の回転軸31を第2回転方向R12に回転させる場合には、モータ30の回転軸31を第1回転方向R11に回転させる場合よりも、減速機構40の伝達効率が低くなる。ただし、シートを下降させる場合には、シート及びシートに着座する乗員を重力方向に移動させればよい点で、モータ30の負荷が大きくなることはない。また、シートが目的の位置まで下降すると、駆動装置10は、モータ30の駆動を停止する。シートを下降させる場合には、ウォーム41がウォームホイール42の圧力角の大きい部分と噛み合っている。このため、モータ30の駆動を停止するだけで、出力軸43がセルフロックする。こうして、シートの高さが維持される。
【0031】
本実施形態の効果について説明する。
(1)減速機構40は、モータ30の負荷が高くなるときのモータ30の回転軸31の回転方向を、伝達効率が高くなるときのウォーム41の回転方向とすることができる。このため、減速機構40は、シートなどの駆動対象の移動方向に応じてモータ30の負荷に大きな差が生じることを抑制できる。
【0032】
(2)減速機構40は、シートが上昇される場合には、ウォーム41とウォームホイール42の圧力角が低い部分とが噛み合う状態で動力を伝達する。このため、減速機構40は、モータ30の負荷が増大することを抑制できる。さらに、シートが上昇された後は、ウォーム41とウォームホイール42の圧力角が高い部分とが噛み合う状態となる。このため、減速機構40は、出力軸43をセルフロックできる。
【0033】
(3)軸方向に対して、転位係数が変化しないウォームホイール42を備える比較例を考える。この比較例は、ウォーム41がウォームホイール42の圧力角が大きい部分と噛み合う場合には、動力を円滑に伝達できるが、ウォーム41がウォームホイール42の圧力角が小さい部分と噛み合う場合には、動力を円滑に伝達できなくなるおそれがある。この点、本実施形態の減速機構40は、ウォームホイール42の圧力角を小さくするとともに転位係数を大きくする。このため、減速機構40は、ウォーム41の噛み合う対象が、ウォームホイール42の圧力角が大きい部分であっても、ウォームホイール42の圧力角が小さい部分であっても、円滑に動力を伝達できる。
【0034】
(4)減速機構40は、ウォームホイール42の軸方向に沿う方向であって、ウォームホイール42の圧力角が小さくなる方向に、ウォームホイール42を付勢するスプリング45を備える。このため、減速機構40は、動力を伝達しないときに、ウォーム41がウォームホイール42の圧力角が大きい部分と噛み合う状態を維持しやすくなる。つまり、減速機構40は、耐逆転性が高い状態を維持しやすくなる。
【0035】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図5に示すように、変更例に係る駆動機構10Aの減速機構40Aにおいて、台座44は、ウォームホイール42と第2支持壁24との間に位置するように出力軸43に固定してもよい。この場合、スプリング45は、ウォームホイール42の第2面S2を軸方向に常時付勢する。つまり、スプリング45の付勢方向は、ウォームホイール42の軸方向に沿う方向であって、ウォームホイール42の圧力角が大きくなる方向である。減速機構40Aは、ウォーム41がウォームホイール42の圧力角が大きい部分と噛み合う状態から、ウォーム41がウォームホイール42の圧力角が小さい部分と噛み合う状態に移行するとき、ウォームホイール42を軸方向に速やかに移動させやすくなる。
【0036】
・減速機構40は、ウォーム41とウォームホイール42の圧力角が小さい部分とが噛み合う状態において、出力軸43がセルフロックするように構成してもよい。一方、減速機構40は、ウォーム41とウォームホイール42の圧力角が大きい部分とが噛み合う状態において、出力軸43がセルフロックしないように構成してもよい。つまり、減速機構40は、ウォーム41の回転方向に応じて、耐逆転性に差があればよい。
【0037】
・ウォーム41の圧力角及び転位係数を軸方向に変化させ、ウォームホイール42の圧力角及び転位係数を軸方向に変化させなくてもよい。この場合、ウォーム41が「第2ギヤ」に相当し、ウォームホイール42が「第1ギヤ」に相当する。なお、ウォーム41は軸方向に移動可能に支持され、ウォームホイール42は軸方向に移動不能に支持される。
【0038】
・ウォームホイール42は、圧力角を小さくするにつれて転位係数を大きくしなくてもよい。言い換えれば、ウォームホイール42は、圧力角だけを軸方向に変化させてもよい。
【0039】
・ウォームホイール42は、圧力角を小さくするにつれて、例えば、歯底円直径などの歯車のパラメータを変えてもよい。
・減速機構40は、スプリング45を有しなくてもよい。減速機構40は、スプリング45に代えて、ゴムなどを有してもよい。
【0040】
・減速機構40は、ヘリカルギヤ同士が噛み合う食い違い軸歯車であってもよい。
・駆動装置10は、例えば、車両の窓ガラスを昇降させる窓ガラス駆動装置に適用することもできるし、サンルーフを駆動するサンルーフ駆動装置に適用することもできる。さらに、駆動装置10は、車両以外に適用することもできる。
【符号の説明】
【0041】
10,10A…駆動機構
30…モータ
31…回転軸
40,40A…減速機構
41…ウォーム(第1ギヤの一例)
42…ウォームホイール(第2ギヤの一例)
42A,42B…歯
43…出力軸
44…台座
45…スプリング(付勢部材の一例)
αA,αB…圧力角
図1
図2
図3
図4
図5