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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】サーバ、車両および電力管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240730BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240730BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240730BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20240730BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20240730BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240730BHJP
   G16Y 40/35 20200101ALI20240730BHJP
【FI】
G06Q50/10
H02J7/00 P
B60L58/12
B60W20/00 900
B60W20/00 ZHV
G06Q50/06
G16Y10/40
G16Y40/35
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021041174
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141044
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木野村 茂樹
【審査官】佐藤 光起
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-229276(JP,A)
【文献】特開2013-025432(JP,A)
【文献】特開2012-016185(JP,A)
【文献】特許第5561441(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 7/00
B60L 58/12
B60W 20/00
G16Y 10/40
G16Y 40/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電力情報を管理するサーバであって、
前記車両は、充電設備から供給される電力により充電される蓄電装置を含み、
温室効果ガスの排出原単位が規制値を超える電力を使用しての走行が規制される走行規制ゾーンが存在し、
前記サーバは、
前記充電設備から供給される電力の前記排出原単位を取得するインターフェースと、
前記充電設備から前記蓄電装置に充電された電力量を、前記インターフェースを介して取得された前記排出原単位に対応付けて管理するプロセッサとを備え、
前記プロセッサは、前記蓄電装置に蓄えられた電力量のうち前記排出原単位が前記規制値未満である電力量を、前記車両が前記走行規制ゾーン内を走行する場合に使用可能な電力量とし、その電力量に関連する情報を前記車両に通知する、サーバ。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記充電設備から前記蓄電装置に充電された電力量と前記排出原単位との対応関係を、前記蓄電装置の充電機会毎に区別し、
前記排出原単位が前記規制値未満である電力量の合計に関連する情報を前記車両に通知する、請求項1に記載のサーバ。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記充電設備から前記蓄電装置に充電された電力量を、前記排出原単位が前記規制値を超えるか、前記排出原単位が前記規制値未満であるかによって区別し、
前記排出原単位が前記規制値未満である電力量に関連する情報を前記車両に通知する、請求項1に記載のサーバ。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記充電設備から前記蓄電装置に充電された電力量に対応付けられた前記排出原単位について、所定期間中の平均値を算出し、
前記平均値が前記規制値未満である電力量に関連する情報を前記車両に通知する、請求項1に記載のサーバ。
【請求項5】
前記車両を含む複数の車両が存在し、
前記プロセッサは、
前記充電設備から前記蓄電装置に充電された電力量に対応付けられた前記排出原単位について、前記車両および前記複数の車両を対象とする平均値を算出し、
前記平均値が前記規制値未満である電力量に関連する情報を前記車両に通知する、請求項1に記載のサーバ。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記排出原単位が前記規制値未満である電力量に基づいて算出され、前記車両が前記走行規制ゾーン内を走行可能な距離を、前記車両が前記走行規制ゾーン内を走行するのに先立ち前記車両に通知する、請求項1~5のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記車両が前記走行規制ゾーン内を走行している場合に、前記車両が前記走行規制ゾーン内を走行可能な距離を更新して前記車両に通知する、請求項6に記載のサーバ。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記排出原単位が前記規制値未満である電力量に関連する情報を前記走行規制ゾーンの管理者にさらに通知する、請求項1~7のいずれか1項に記載のサーバ。
【請求項9】
車両であって、
充電設備から供給される電力により充電される蓄電装置と、
前記蓄電装置に蓄えられた電力量に関する情報処理を行う制御装置とを備え、
温室効果ガスの排出原単位が規制値を超える電力を使用しての走行が規制される走行規制ゾーンが存在し、
前記制御装置は、
前記蓄電装置の充電に際して前記充電設備から取得された前記排出原単位に関するデータに基づいて、前記蓄電装置に蓄えられた電力量を前記排出原単位に対応付けて管理し、
前記車両が前記走行規制ゾーン内を走行する場合、前記蓄電装置に蓄えられた電力量のうち前記排出原単位が前記規制値未満である電力量を使用する、車両。
【請求項10】
車両の電力情報を管理する電力管理方法であって、
前記車両は、充電設備から供給される電力により充電される蓄電装置を含み、
温室効果ガスの排出原単位が規制値を超える電力を使用しての走行が規制される走行規制ゾーンが存在し、
前記電力管理方法は、
前記充電設備から前記蓄電装置に充電された電力量を取得するステップと、
前記充電設備から供給される電力の前記排出原単位を取得するステップと、
前記充電設備から前記蓄電装置に充電された電力量を前記排出原単位に対応付けて管理するステップと、
前記蓄電装置に蓄えられた電力量のうち前記排出原単位が前記規制値未満である電力量を、前記車両が前記走行規制ゾーン内を走行する場合に使用可能な電力量とし、その電力量に関連する情報を前記車両に通知するステップとを含む、電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーバ、車両および電力管理方法に関し、より特定的には、車両の電力情報を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行用バッテリに蓄えられた電力量には、火力発電、原子力発電、水力発電、太陽光発電などの様々な発電態様に由来するものが含まれ得る。バッテリに蓄えられた電力量を、発電態様別(または発電時における温室効果ガスの発生量別)に区別する管理手法が知られている(たとえば特開2020-86911号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
また、排気ガスの排出の低減が求められたり、排気ガスの排出が禁止されたりするエリアが法規または政策などにより設定される場合がある。このようなエリアは「グリーンゾーン」または「ZEV(Zero Emission Vehicle)ゾーン」と呼ばれる(たとえば特開2019-85094号公報(特許文献2)参照)。グリーンゾーンまたはZEVゾーンなどの特定のゾーンにGPS(Global Positioning System)および無線通信技術を用いて仮想的な境界線を設ける「ジオフェンス(geofence)」と呼ばれる技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-86911号公報
【文献】特開2019-85094号公報
【文献】特開2012-16185号公報
【文献】特開2013-25432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在は、いわゆるEV(Electric Vehicle)走行(エンジンを駆動することなく、バッテリに蓄えられた電力量を消費する走行)を行なえばグリーンゾーン内での走行が許可されることが一般的である。しかしながら、将来、以下のような課題が発生し得ることに本発明者らは着目した。
【0006】
今後、電気自動車およびプラグインハイブリッド車の普及が進むと予想されている。一方で、各国の温室効果ガスの削減目標も一層高くなる可能性がある。そうすると、グリーンゾーン内を走行する条件として、車両のバッテリに蓄えられた電力量を発電する際に、どの程度の温室効果ガスが発生したのかが問われる可能性がある。その結果、単にEV走行を行うかどうかだけではグリーンゾーン内の走行可否を判断することができなくなり得る。
【0007】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、発電に伴う温室効果ガスの発生量に関する規制が設けられたゾーン内を車両が走行可能かどうかを適切に判断することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の第1の局面に係るサーバは、車両の電力情報を管理する。車両は、充電設備から供給される電力により充電される蓄電装置を含む。温室効果ガスの排出原単位が規制値を超える電力量を使用しての走行が規制される走行規制ゾーンが存在する。サーバは、充電設備から供給される電力の排出原単位を取得するインターフェースと、充電設備から蓄電装置に充電された電力量を、インターフェースを介して取得された排出原単位に対応付けて管理するプロセッサとを備える。プロセッサは、蓄電装置に蓄えられた電力量のうち排出原単位が規制値に満たない電力量を、車両が走行規制ゾーン内を走行する場合に使用可能な電力量とし、その電力量に関連する情報を車両に通知する。
【0009】
上記(1)の構成において、プロセッサは、充電設備から蓄電装置に充電された電力量を排出原単位に対応付けて管理する(電力カラーリング)。これにより、サーバは、蓄電装置に蓄えられた電力量のなかに排出原単位が規制値に満たない電力量(クリーン電力量)がどの程度で含まれているかを把握できる。よって、上記(1)の構成によれば、車両が走行規制ゾーン内を走行可能かどうかを適切に判断できる。
【0010】
(2)プロセッサは、充電設備から蓄電装置に充電された電力量と排出原単位との対応関係を、蓄電装置の充電機会毎に区別する。プロセッサは、排出原単位が規制値に満たない電力量の合計に関連する情報を車両に通知する。
【0011】
(3)プロセッサは、充電設備から蓄電装置に充電された電力量を、排出原単位が規制値を超えるか、排出原単位が規制値に満たないかによって区別する。排出原単位が規制値に満たない電力量に関連する情報を車両に通知する。
【0012】
上記(2),(3)の構成においては、充電機会毎の、または、排出原単位と規制値との比較による区別が行われる。これにより、蓄電装置に蓄えられた電力量のなかに排出原単位が規制値に満たない電力量がどの程度で含まれているかを好適に管理できる。
【0013】
(4)プロセッサは、充電設備から蓄電装置に充電された電力量に対応付けられた排出原単位について、所定期間中の平均値を算出する。プロセッサは、平均値が規制値に満たない電力量に関連する情報を車両に通知する。
【0014】
上記(4)の構成においては、排出原単位の所定期間中の平均値が電力量に対応付けられる。これにより、ある充電機会における排出原単位が規制値を超える場合であっても、別の機会を利用して排出原単位の平均値を低下させて規制値未満に抑えることができる。
【0015】
(5)上記車両を含む複数の車両が存在する。プロセッサは、充電設備から蓄電装置に充電された電力量に対応付けられた排出原単位について、車両および複数の車両を対象とする平均値を算出する。プロセッサは、平均値が規制値に満たない電力量に関連する情報を車両に通知する。
【0016】
上記(5)の構成においては、複数の車両についての排出原単位の平均値が電力量に対応付けられる。これにより、一部の車両に充電された電力量の排出原単位が規制値を超える場合であっても、残りの車両によって排出原単位の平均値を低下させて規制値未満に抑えることができる。
【0017】
(6)プロセッサは、排出原単位が規制値に満たない電力量に基づいて算出される、車両が走行規制ゾーン内を走行可能な距離を、車両が走行規制ゾーン内を走行するのに先立ち車両に通知する。
【0018】
(7)プロセッサは、車両が走行規制ゾーン内を走行している場合に、車両が走行規制ゾーン内を走行可能な距離を更新して車両に通知する。
【0019】
上記(6),(7)においては、車両が走行規制ゾーン内を走行するのに先立ち、または、車両が走行規制ゾーン内を走行している場合に、車両が走行規制ゾーン内を走行可能な距離が車両に通知される。これにより、通知を受けた車両は、当該距離が0になる前に走行規制ゾーンから退出するなど、適切な行動をとることが可能になる。
【0020】
(8)プロセッサは、排出原単位が規制値に満たない電力量に関連する情報を走行規制ゾーンの管理者にさらに通知する。
【0021】
上記(8)の構成によれば、通知を受けた管理者が走行規制ゾーンを適切に管理できる。たとえば、走行不許可であるにも拘わらず車両が走行規制ゾーン内を走行している場合に、管理者が車両を取り締まることなどが可能になる。
【0022】
(9)本開示の第2の局面に係る車両は、充電設備から供給される電力により充電される蓄電装置と、蓄電装置に蓄えられた電力量に関する情報処理を行うプロセッサとを備える。温室効果ガスの排出原単位が規制値を超える電力量を使用しての走行が規制される走行規制ゾーンが存在する。プロセッサは、蓄電装置の充電に際して充電設備から取得された排出原単位に関するデータに基づいて、蓄電装置に蓄えられた電力量を排出原単位に対応付けて管理する。プロセッサは、車両が走行規制ゾーン内を走行する場合、蓄電装置に蓄えられた電力量のうち排出原単位が規制値に満たない電力量を使用する。
【0023】
上記(9)の構成によれば、上記(1)の構成と同様に、車両が走行規制ゾーン内を規制に違反することなく適切に走行できる。
【0024】
(10)本開示の第3の局面に係る電力管理方法は、車両の電力情報を管理する。車両は、充電設備から供給される電力により充電される蓄電装置を含む。温室効果ガスの排出原単位が規制値を超える電力量を使用しての走行が規制される走行規制ゾーンが存在する。電力管理方法は第1~第4のステップを含む。第1のステップは、充電設備から蓄電装置に充電された電力量を取得するステップである。第2のステップは、充電設備から供給される電力の排出原単位を取得するステップである。第3のステップは、充電設備から蓄電装置に充電された電力量を排出原単位に対応付けて管理するステップである。第4のステップは、蓄電装置に蓄えられた電力量のうち排出原単位が規制値に満たない電力量を、車両が走行規制ゾーン内を走行する場合に使用可能な電力量とし、その電力量に関連する情報を車両に通知するステップである。
【0025】
上記(10)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に、車両が走行規制ゾーン内を走行可能かどうかを適切に判断できる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、発電に伴う温室効果ガスの発生量に関する規制が設けられたゾーン内を車両が走行可能かどうかを適切に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示の実施の形態1に係る電力管理システムの概略的な構成を示す図である。
図2】車両がグリーンゾーンを出入りする様子の一例を説明するための図である。
図3】サーバの機能ブロック図である。
図4】排出原単位を説明するための図である。
図5】電力カラーリング処理の概念図である。
図6】実施の形態1における電力カラーリング処理を説明するための図である。
図7】グリーンゾーン管理処理を示すフローチャートである。
図8】実施の形態1における電力カラーリング処理を示すフローチャートである。
図9】実施の形態1の変形例における電力カラーリングを説明するための図である。
図10】実施の形態1の変形例における電力カラーリング処理を示すフローチャートである。
図11】実施の形態2における電力カラーリング処理を説明するための概念図である。
図12】実施の形態2における電力カラーリング処理を示すフローチャートである。
図13】実施の形態3における電力カラーリング処理を説明するための概念図である。
図14】実施の形態3における電力カラーリング処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0029】
[実施の形態1]
<システム全体構成>
図1は、本開示の実施の形態1に係る電力管理システムの概略的な構成を示す図である。電力管理システム100は、車両1と、充電設備(EVSE:Electric Vehicle Supply Equipment)2と、サーバ3と、電力系統4と、送電線5と、事業者サーバ6とを備える。
【0030】
車両1は、電動車両であり、より具体的には電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)などである。以下では簡単のため、車両1がEVであると想定する。車両1は、バッテリ11と、HMI(Human Machine Interface)12と、ECU(Electronic Control Unit)13とを含む。
【0031】
バッテリ11は、複数のセル(図示せず)を含む組電池である。各セルは、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池である。バッテリ11は、車両1の駆動力を発生させるための電力を供給する。また、バッテリ11は、車両1の回生制動時にモータジェネレータ(図示せず)により発電された電力を蓄える。なお、バッテリ11に代えて、電気二重層キャパシタなどのキャパシタも採用され得る。バッテリ11は、本開示に係る「蓄電装置」に相当する。
【0032】
車両1は、充電設備2から延びる充電ケーブルが車両1のインレット(図示せず)に接続されることによって、充電設備2から供給される電力によりバッテリ11が充電されるように構成されている。以下、この充電態様を「外部充電」とも称する。
【0033】
HMI12は、ユーザ(ドライバ)の操作を受け付けたり、様々な情報およびデータをユーザに提供したりする。HMI12は、たとえば、インストルメントパネル、ナビゲーションシステムのタッチパネル付きディスプレイ(ナビ画面)、HUD(Head-Up Display)、操作ボタンまたはスマートスピーカを含み得る。なお、車両1とサーバ3とは双方向通信が可能に構成されている。
【0034】
ECU13は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリと、入出力ポートとを含む。ECU13は、車両1を制御するため各種演算処理を実行するように構成されている。ECU13は、本開示に係る「制御装置」に相当する。
【0035】
充電設備2は、たとえば公共の充電スタンドまたは家庭用充電器である。充電設備2は、電力系統4からの電力を送電線5を介して受け、その電力を車両1に供給するように構成されている。充電設備2とサーバ3とも双方向通信が可能に構成されている。
【0036】
サーバ3は、電力管理システム100内の車両1および充電設備2を管理するコンピュータである。サーバ3は、プロセッサ31と、メモリ32と、入出力ポート33とを含む。プロセッサ31は、たとえばCPU(Central Processing Unit)であり、プログラムに記述された演算処理を実行するように構成されている。メモリ32は、プロセッサ31により実行されるプログラムが格納されたメモリを含み、そのプログラムで使用される各種データ(マップ、関係式、パラメータ等)を記憶している。また、メモリ32は、データベースを含み、電力管理システム100内の様々な機器の電力に関連するデータを記憶している。入出力ポート33は、サーバ3の外部との間で通知、指令、要求等を入出力するように構成されている。サーバ3は、通信モジュール(図示せず)を含み、車両1および充電設備2に加えて電力管理システム100の外部(事業者サーバ6等)とも通信するように構成されている。
【0037】
本実施の形態に係るサーバ3により実行される主要な処理として、「グリーンゾーン管理処理」と「電力カラーリング処理」とが挙げられる。グリーンゾーン管理処理とは、車両1グリーンゾーンへの進入およびグリーンゾーン内での走行を管理する処理である。電力カラーリング処理とは、バッテリ11に蓄えられた電力量をカラーリングする処理である。これらの処理については後に詳細に説明する。
【0038】
電力系統4は、発電所および送配電設備によって構築された電力網である。この実施の形態では、電力会社が発電事業者と送配電事業者とを兼ねる。電力会社は、一般送配電事業者に相当するとともに、電力系統4の管理者に相当し、電力系統4を保守および管理する。
【0039】
事業者サーバ6は、電力会社に帰属し、電力系統4の電力需給を管理するコンピュータである。事業者サーバ6は、発電所において温室効果ガスがどの程度発生したのか(排出原単位)に関するデータを有する。事業者サーバ6もサーバ3との間で双方向通信が可能に構成されている。
【0040】
なお、電力管理システム100に含まれる車両1および充電設備2の台数は、特に限定されない。図1に示す例では複数台の車両1および複数台の充電設備が含まれているが、車両1および充電設備2は1台だけであってもよい。
【0041】
<グリーンゾーン>
図2は、車両1がグリーンゾーンを出入りする様子の一例を説明するための図である。本実施の形態では、グリーンゾーン内における排気ガスの排出が禁止されているため、グリーンゾーン内では車両1はEV走行することが要求される。なお、グリーンゾーンは、本開示に係る「走行規制ゾーン」に相当する。
【0042】
図2に示す例では、グリーンゾーンの内と外との境界にゲート7が設けられている。車両1がゲート7の近くまで進むと、サーバ3は、車両1がグリーンゾーン内に進入することを許可するかどうかを判断する。車両1が所定の条件(後述)を満たしている場合、サーバ3は、車両1のグリーンゾーン内への進入を許可し、ゲート7を開放する。一方、車両1が上記条件を満たしていない場合には、サーバ3は、車両1のグリーンゾーン内への進入を許可せず、ゲート7を閉鎖したままに維持する。
【0043】
ただし、境界に設置されたゲート7は分かり易さのための例示に過ぎず、物理的なゲートに代えて、ジオフェンス(仮想的な境界線)が設定されていてもよい。ジオフェンスが設定されている場合には、上記の条件を満たさない車両がグリーンゾーン内に進入した場合にペナルティ(たとえば反則金)を課すようにすることができる。
【0044】
<温室効果ガスの削減>
化石燃料を燃やして発電された電力がバッテリ11に充電されている場合、車両1のEV走行中には温室効果ガスは発生しないものの、発電から電力消費まで全体でみると、一定程度の温室効果ガスが発生している。したがって、単にグリーンゾーン内でのEV走行を車両1に要求するだけでは、その要求が温室効果ガスの削減に寄与しておらず、温室効果ガスの高い削減目標を達成できない可能性がある。
【0045】
そこで、本実施の形態では、車両1がグリーンゾーンに進入したりグリーンゾーン内を走行したりすることを許可する条件として、バッテリ11に蓄えられた電力量が発電された際に温室効果ガスがどの程度発生したのかがさらに考慮される。より詳細には、単位発電電力量当たりの温室効果ガスの排出量である「排出原単位」(単位:g/kWh)が考慮される。
【0046】
サーバ3は、車両1の外部充電に際して排出原単位に関するデータを電力会社から取得し、バッテリ11に蓄えられた電力量を排出原単位に対応付けて管理する。言い換えると、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量を排出原単位に応じて概念的に色付けする「電力カラーリング処理」を行う。これにより、バッテリ11に蓄えられた電力量のなかに、クリーンな電力量がどの程度で含まれており、そうでない電力量がどの程度で含まれているのかをサーバ3が定量的に評価することが可能になる。
【0047】
サーバ3は、車両1がグリーンゾーンを走行する場合には、排出原単位が予め定められた規制値(Eregと記載する)未満であるクリーンな電力量が消費されるとする。以下、この電力量を簡単のため「クリーン電力量」とも称する。車両1のグリーンゾーン内での走行に伴いクリーン電力量が消費されて枯渇した場合には、サーバ3は、車両1がそれ以上、グリーンゾーン内を走行することを不許可とする。この処理について詳細に説明する。
【0048】
<電力カラーリング>
図3は、サーバ3の機能ブロック図である。サーバ3は、充電量取得部301と、排出原単位取得部302と、消費量取得部303と、電力カラーリング部304と、EV距離算出部305と、車両位置取得部306と、地図記憶部307と、位置判定部308と、走行許可部309とを含む。
【0049】
充電量取得部301は、充電設備2から車両1に供給され、バッテリ11に充電された電力量を車両1の外部充電時に取得する。充電量取得部301は、バッテリ11に充電された電力量を充電設備2との通信により取得できるが、車両1から取得してもよい。取得された電力量は電力カラーリング部304に出力される。
【0050】
排出原単位取得部302は、充電設備2から車両1へと供給された電力量の排出原単位を電力会社から取得する。
【0051】
図4は、排出原単位を説明するための図である。図4には火力発電、太陽光発電、風力発電、原子力発電、地熱発電および水力発電についての代表的な排出原単位が示されている。図4より、火力発電(石炭火力発電、石油火力発電および液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)火力発電)では他の発電態様と比べて、排出原単位が大きいことが分かる。
【0052】
図3に戻り、電力会社の事業者サーバ6は、電力系統4から送電線5を介して充電設備2に送電される電力について、その発電時における排出原単位に関するデータを有している。したがって、排出原単位取得部302は、充電設備2から車両1へと供給された電力量の排出原単位を事業者サーバ6から取得できる。取得された排出原単位は電力カラーリング部304に出力される。
【0053】
消費量取得部303は、車両1の走行中などにバッテリ11から消費(使用)された電力量を車両1から取得する。取得された電力量は電力カラーリング部304に出力される。
【0054】
電力カラーリング部304は、バッテリ11に充電された電力量とバッテリ11から消費された電力量とに基づいて、バッテリ11に蓄えられた電力量の電力カラーリング処理を行う。
【0055】
図5は、電力カラーリング処理の概念図である。サーバ3は、バッテリ11に充電された電力量を、その電力量の発電時における排出原単位に対応付けて管理している。実施の形態1において、サーバ3は、バッテリ11に充電された電力量と排出原単位との間の対応関係を、外部充電の機会毎に区別して管理する。
【0056】
図5には外部充電の機会が4回であった場合の電力カラーリング処理の結果が例示されている。サーバ3は、1回目の充電機会について、バッテリ11に充電された電力量P1と排出原単位E1とを互いに対応付けて管理する。サーバ3は、2回目の充電機会について、バッテリ11に充電された電力量P2と排出原単位E2とを互いに対応付けて管理する。3回目および4回目の充電機会についても同様である。
【0057】
図6は、実施の形態1における電力カラーリング処理を説明するための概念図である。この例では、4回の充電機会を排出原単位が小さい順に並べると、1回目の充電機会、3回目の充電機会、2回目の充電機会、4回目の充電機会であるとする(E1<E3<E2<E4)。グリーンゾーン内での車両1の走行が認められる排出原単位の規制値Eregが法規または政策などにより定められている。4回の充電機会の排出原単位E1~E4のなかで、1回目および3回目の充電機会の排出原単位E1,E3は、規制値Eregよりも小さい。そのため、1回目および3回目の充電機会に充電された電力量P1,P3はクリーン電力量である。一方、2回目および4回目の充電機会の排出原単位E2,E4は、規制値Eregよりも大きい(E1<E3<Ereg<E2<E4)。2回目および4回目の充電機会に充電された電力量P2,P4はクリーン電力量ではない。
【0058】
サーバ3は、車両1がグリーンゾーン内に滞在している場合には、1回目および3回目の充電機会にバッテリ11に充電されたクリーン電力量が消費されると見なす。したがって、車両1がグリーンゾーンを走行した場合、走行前と走行後とを比較すると図6に示すように、1回目および3回目の充電機会にバッテリ11に充電されたクリーン電力量(P1+P3)が使用されて減少する。2回目および4回目の充電機会にバッテリ11に充電された電力量(P2+P4)は使用されずに残る。
【0059】
1回目および3回目の充電機会にバッテリ11に充電されたクリーン電力量(P1+P3)が基準量Prefを超えている場合、サーバ3(走行許可部309)は、車両1がグリーンゾーンに進入したりグリーンゾーン内を走行したりすることを許可する。その一方で、クリーン電力量(P1+P3)が基準量Pref以下である場合、サーバ3は、車両1がグリーンゾーンに進入することを不許可とする(禁止する)。
【0060】
また、車両1がグリーンゾーンに進入した際にはクリーン電力量(P1+P3)が基準量Prefを超えていたものの、車両1がグリーンゾーン内を走行している間にクリーン電力量(P1+P3)が基準量Pref以下になった場合には、サーバ3は、車両1がグリーンゾーンから速やかに退出することを要求する。
【0061】
図3を再び参照して、EV距離算出部305は、車両1がグリーンゾーン内をEV走行可能な距離(EV距離)を算出する。より具体的には、EV距離算出部305は、バッテリ11に蓄えられた電力量のうちのクリーン電力量(図5および図6の例ではP1+P3)を消費して車両1が走行可能な距離をEV距離として算出できる。EV距離の算出には、車両1の電費(車両1が単位電力量当たり走行可能な距離(単位:km/kWh)または車両1が単位距離を走行するのに消費する電力量(単位:kWh/km))を用いることができる。車両1の電費は、車両1の実績値であってもよいし、車両1の車種のカタログ値であってもよい。
【0062】
EV距離算出部305により算出されたEV距離は、通信モジュール(図示せず)により車両1へと通知され、HMI12に表示される。EV距離の通知先は、車両1のユーザの携帯端末(スマートホン等)であってもよい。
【0063】
EV距離に代えてまたは加えて、EV距離が基準距離よりも長い場合(クリーン電力量が基準量Prefよりも大きい場合)に「グリーンゾーン走行可能」とのメッセージをHMI12に表示させてもよい。一方、EV距離が基準距離以下である場合(クリーン電力量が基準量Pref以下である場合)に「グリーンゾーン走行不可」とのメッセージをHMI12に表示させてもよい。これにより、車両1がグリーンゾーン外である場合、車両1のグリーンゾーンへの進入が許可されるかどうかをユーザが事前に知ることができる。また、ユーザは、車両1グリーンゾーン内をどの程度走行可能であるかを把握できる。車両1がグリーンゾーン内に既に滞在している場合には、車両1がグリーンゾーン内を走行可能な残り距離をユーザが把握できる。
【0064】
車両位置取得部306は、車両1の位置情報(GPS情報)を車両1から取得する。取得された位置情報は位置判定部308に出力される。
【0065】
地図記憶部307は、電力管理システム100がカバーする地域の地図情報を記憶している。この地域には少なくとも1つのグリーンゾーンが含まれている。地図情報は位置判定部308に出力される。
【0066】
位置判定部308は、車両1の位置情報と地図情報とを比較することによって、車両1の位置がグリーンゾーンの内か外かを判定する。位置判定部308は、車両1からグリーンゾーンの境界までの距離を併せて判定し、当該距離が所定値を下回った場合に車両1がグリーンゾーンに接近したと判定してもよい。位置判定部308による判定結果は走行許可部309に出力される。
【0067】
走行許可部309は、車両1がグリーンゾーンに接近した場合または車両1がグリーンゾーン内を走行している場合に、電力カラーリング処理の結果に基づいて、車両1がグリーンゾーン内を走行する(あるいは走行を続ける)ことを許可するか許可しないかを判定する。この判定手法については図5および図6にて説明したため、ここでの説明は繰り返さない。走行許可/不許可は車両1に通知される。
【0068】
車両1の走行許可/走行不許可は、車両1の識別情報(たとえばナンバープレートに記載のナンバー)とともに、グリーンゾーンの管理者(規制当局)8にも通知することが好ましい。これにより、走行不許可であるにも拘わらず車両1がグリーンゾーン内を走行している場合に、管理者が車両1を取り締まったり車両1のユーザにペナルティを課したりすることが可能になる。
【0069】
<電力管理フロー>
図7は、グリーンゾーン管理処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、予め定められた条件が成立する度、または、予め定められた時間が経過する度に実行される。図7および後述する各フローチャートに記載された各ステップは、サーバ3によるソフトウェア処理により実現されるが、サーバ3内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。理解を容易にするため、処理開始時には車両1がグリーンゾーン外に位置している状況を想定する。
【0070】
S1において、サーバ3は、車両1の位置情報および地図情報に基づいて、車両1がグリーンゾーンに接近したかどうかを判定する。車両1がグリーンゾーンから離れている場合(S1においてNO)、以降の処理はスキップされる。車両1がグリーンゾーンに接近すると(S1においてYES)、サーバ3は処理をS2に進める。
【0071】
S2において、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられている電力量のうち、排出原単位が規制値Ereg以下であるクリーン電力量が所定の基準量Prefを超えているかどうかを判定する。クリーン電力量は後述する電力カラーリング処理により算出される。基準量Prefは、最も分かり易い例では0である。ただし、基準量Prefは、0よりも大きな値であってもよい。その値は、たとえば、典型的な車両が所定距離をEV走行する際に消費される電力量に基づいて定めることができる。クリーン電力量が基準量Pref以下である場合(S2においてNO)、サーバ3は、車両1のグリーンゾーンへの進入を不許可とする(S3)。一方、クリーン電力量が基準量Prefを超えている場合(S2においてYES)、サーバ3は、車両1のグリーンゾーンへの進入を許可する(S4)。これにより、車両1がグリーンゾーン内に進入したとする。
【0072】
S5において、サーバ3は、前回のS5~S8の処理の実行時から所定時間(たとえば数秒~数分)が経過したかどうかを判定する。所定時間が経過すると(S5においてYES)、サーバ3は処理をS6に進める。
【0073】
S6において、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量のうちクリーン電力量が基準量Prefを超えているかどうかを判定する。なお、S2の処理における基準量PrefとS6の処理における基準量Prefとは同一であってもよいが、互いに異なる値に設定されてもよい。より詳細には、車両1の走行に伴いクリーン電力量は次第に減少するため、車両1がグリーンゾーンに進入した時点でクリーン電力量にある程度の余裕がない場合、車両1のグリーンゾーン内での滞在中にクリーン電力量が枯渇する可能性が高い。したがって、S2の処理における基準量Prefは、S6の処理における基準量Prefに対してマージンを持たせた値であってもよい。
【0074】
クリーン電力量が基準量Prefを超えている場合(S6においてYES)、サーバ3は、車両1のグリーンゾーン内での走行を許可する(S7)。その後、サーバ3は、車両1が依然としてグリーンゾーン内に滞在中であるかを判定する(S8)。車両1がグリーンゾーン内に滞在中である場合(S8においてYES)、サーバ3は、処理をS5に戻す。これにより、車両1がグリーンゾーン内に滞在している間、S5~S8の処理が繰り返し実行される。車両1がグリーンゾーンから退出すると(S8においてNO)、サーバ3は一連の処理を終了する。
【0075】
S6にてクリーン電力量が基準量Pref以下である場合(S6においてNO)、サーバ3は、グリーンゾーンから退出するように車両1に通知する(S9)。サーバ3は、グリーンゾーンからの退出を促す警告を車両1に送ってもよい。通知または警告を受けた車両1がグリーンゾーンから速やかに退出しない場合(S10においてNO)、サーバ3は、通知または警告を繰り返してもよい。
【0076】
図示しないが、車両1がグリーンゾーンから退出せずに規定の時間(たとえば数時間)が経過した場合、サーバ3は、車両1の識別情報および位置情報をグリーンゾーンの管理者8に送信してもよい。これにより、管理者8が車両1を特定して強く警告したり、反則金等のペナルティを課したりすることが可能になる。車両1がグリーンゾーンから退出すると(S10においてYES)、サーバ3は一連の処理を終了する。
【0077】
図8は、実施の形態1における電力カラーリング処理を示すフローチャートである。電力カラーリング処理は所定周期毎に繰り返し実行される。
【0078】
S101において、サーバ3は、車両1が充電設備2により外部充電されたかどうかを判定する。車両1が外部充電された場合(S101においてYES)、サーバ3は、充電設備2から車両1に充電された電力量を充電設備2(または車両1)との通信により取得する(S102)。さらに、サーバ3は、電力系統4から充電設備2へと供給された電力量が発電された際の排出原単位に関するデータを事業者サーバ6との通信により取得する(S103)。
【0079】
S104において、サーバ3は、車両1の外部充電の機会毎に、S101にて取得された電力量と、S102にて取得された排出原単位とを対応付け、その対応関係をメモリ32に記憶する。これにより、サーバ3は、バッテリ11に充電された電力量と排出原単位との間の対応関係を外部充電の機会毎に区別して管理できる。
【0080】
一方、車両1が外部充電されていない場合(S101においてNO)、すなわち、車両1の走行中など、バッテリ11に蓄えられた電力量が消費される状況である場合、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量から消費された電力量を取得する(S105)。この電力量は車両1から取得される。
【0081】
S106において、サーバ3は、予め定められた演算手法に従って、バッテリ11に蓄えられた電力量から、S105にて取得された電力量を差し引くことで、バッテリ11に蓄えられた電力量と排出原単位との間の対応関係を更新する。この演算手法は特に限定されず、様々な手法が採用され得る。たとえば、図6に示した例では、走行前のクリーン電力量(P1+P3)のうち排出原単位が相対的に大きいP3から消費電力量が差し引かれている。しかし、逆に、排出原単位が相対的に小さいP3から消費電力量が差し引かれてもよい。あるいは、P1とP3との比率を維持したまま、クリーン電力量(P1+P3)全体から消費電力量が差し引かれるようにしてもよい。S104またはS106の処理の実行後、処理はS107に進む。
【0082】
S107において、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量のうちクリーン電力量の最新値算出する。そして、サーバ3は、クリーン電力量の最新値を車両1のEV距離に換算して車両1に通知する(S108)。ただし、サーバ3は、EV距離に換算前のクリーン電力量を車両1に通知してもよい。
【0083】
以上のように、実施の形態1において、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量の電力カラーリング処理を実行し、バッテリ11に蓄えられた電力量と排出原単位とを対応付けて管理する。これにより、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量のなかにクリーン電力量がどの程度で含まれているかを把握できる。よって、実施の形態1によれば、車両1がグリーンゾーンの走行を許可可能な車両かどうかを適切に判断できる。
【0084】
なお、図7および図8では、すべてのステップがサーバ3により実行される例について説明した。しかし、各ステップは車両1のECU13により実行されてもよい。また、サーバ3とECU13とが処理を分担してもよい。つまり、一部の処理がサーバ3により実行され、他の一部の処理がECU13により実行されてもよい。
【0085】
[実施の形態1の変形例]
図9は、実施の形態1の変形例における電力カラーリングを説明するための図である。実施の形態1では、外部充電の機会毎に、バッテリ11に蓄えられた電力量と排出原単位との間の対応関係が管理されていると説明した(図6参照)。これに対し、実施の形態1の変形例においては、管理の単位をより大まかにし、排出原単位が規制値Eregを超えているかに否かに基づく管理が行われる。規制値Ereg以下の排出原単位をEaと記載し、規制値Ereg超の排出原単位をEbと記載する場合、バッテリ11に蓄えられた電力量は、排出原単位がEaであるかEbであるかによって管理される。
【0086】
図6にて説明した例を用いて、より詳細に説明する。4回の充電機会があり、1回目および3回目の充電機会の排出原単位E1,E3は規制値Eregよりも小さい一方で、2回目および4回目の充電機会の排出原単位E2,E4は規制値Eregよりも大きい(E1<E3<Ereg<E2<E4)。この場合、1回目の充電機会にバッテリ11に充電された電力量と、3回目の充電機会にバッテリ11に充電された電力量とは、区別されずに排出原単位Eaの電力量として管理される。また、2回目の充電機会にバッテリ11に充電された電力量と、4回目の充電機会にバッテリ11に充電された電力量とは、区別されずに排出原単位Ebの電力量として管理される。サーバ3は、車両1に対し、排出原単位がEaである電力量を用いてグリーンゾーン内を走行することは許可する一方で、排出原単位がEbである電力量を用いての走行は許可しない。
【0087】
図10は、実施の形態1の変形例における電力カラーリング処理を示すフローチャートである。車両1が外部充電された場合(S111においてYES)、サーバ3は、充電設備2から車両1に充電された電力量を充電設備2との通信により取得する(S112)。
【0088】
S113において、電力系統4から充電設備2に供給された電力量が発電された際の排出原単位に関するデータを事業者サーバ6との通信により取得する。そして、サーバ3は、取得された排出原単位が規制値Ereg超である場合、その排出原単位をEaとする一方で、取得された排出原単位が規制値Ereg以下である場合、その排出原単位をEbとする。
【0089】
S114において、サーバ3は、S112にて取得された電力量と、S113にて割り当てられた排出原単位EaまたはEbとを対応付け、その対応関係をメモリ32に記憶する。これにより、サーバ3は、バッテリ11に充電された電力量がEaに対応するのかEbに対応するのかを区別して管理できる。残るS115~S118の処理については、実施の形態1におけるS105~S108の処理(図8参照)と同様であるため、説明は繰り返さない。
【0090】
以上のように、実施の形態1の変形例において、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量と排出原単位との対応付けを、単純に排出原単位が規制値Ereg超であるか以下であるかによって管理する。これにより、上記の対応付けが車両1の外部充電の機会毎に区別して管理される実施の形態1と比べて、管理の煩雑さを低減できる。
【0091】
[実施の形態2]
実施の形態2,3では、電力カラーリング処理の様々なバリエーションについて説明する。実施の形態2,3に係る電力管理システムの全体構成は、図1に示した構成と同等である。また、実施の形態2,3に係る電力管理方法におけるグリーンゾーン管理処理も、図7に示した処理と同等である。よって、詳細な説明は繰り返さない。
【0092】
図11は、実施の形態2における電力カラーリング処理を説明するための概念図である。実施の形態2においては、バッテリ11に充電された電力量の排出原単位について、所定期間(1ヶ月、半年、1年など)中の平均値が算出される。
【0093】
図11には所定期間中に4回の外部充電が行われた例が示されている。この例では、1回目の充電機会に充電された電力量の排出原単位は規制値Ereg超であったものの、2~4回目の充電機会に充電された電力量の排出原単位は規制値Ereg未満であったとする。その結果、4回の排出原単位の平均値は規制値Ereg未満になる。
【0094】
このように排出原単位の所定期間中の平均値を電力量に対応付けることにより、ある充電機会(この例では1回目)における排出原単位が規制値Eregを超える場合であっても、所定期間中の別の機会(2~4回目)を利用して排出原単位の平均値を低下させて規制値Ereg未満に抑えることができる。言い換えると、排出原単位の過度の上昇を別の機会を利用して埋め合わせできる。したがって、車両1がグリーンゾーン内を走行できなくなる事態を回避すべく、外部充電の機会に排出原単位が規制値Ereg以下の電力量を充電可能な充電設備2を選択する動機付けをユーザに与えることができる。よって、温室効果ガス削減を促進できる。
【0095】
図12は、実施の形態2における電力カラーリング処理を示すフローチャートである。車両1が外部充電された場合(S201においてYES)、サーバ3は、充電設備2から車両1に充電された電力量を充電設備2との通信により取得する(S202)。
【0096】
S203において、電力系統4から充電設備2に供給された電力量が発電された際の排出原単位に関するデータを事業者サーバ6との通信により取得する。そして、サーバ3は、バッテリ11に充電された電力量について、所定期間中の排出原単位の平均値を算出する(S205)。具体的には、たとえばEave=(E×P+E×P)/(P+P)との計算式を用いて排出原単位の平均値Eaveを算出できる。元々バッテリ11に充電されていた電力量がP[kWh]であり、その電力量に関する排出原単位の平均値がE[g/kWh]である。今回、新たにバッテリ11に充電された電力量がP[kWh]であり、その電力量に関する排出原単位がE[g/kWh]である。
【0097】
S205において、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量と、S204にて算出された排出原単位の平均値との対応関係をメモリ32に記憶する。これにより、サーバ3は、車両1のバッテリ11に蓄えられた電力量を排出原単位に対応付けて管理できる。
【0098】
図示しないが、後の平均値の算出に使用するため、S201にて取得された電力量と、S203にて取得された排出原単位とを対応付けも、車両1の外部充電の実行時刻とともにメモリ32に記憶される。残るS206~S209の処理については、実施の形態1におけるS105~S108の処理(図8参照)と同様であるため、説明は繰り返さない。
【0099】
以上のように、実施の形態2においても実施の形態1と同様に、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量の電力カラーリング処理を実行し、バッテリ11に蓄えられた電力量を排出原単位に対応付けて管理する。これにより、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量のなかにクリーン電力量がどの程度で含まれているかを把握できるので、車両1がグリーンゾーン内の走行を許可可能な車両かどうかを適切に判断できる。
【0100】
さらに、実施の形態2においては、排出原単位の所定期間中の平均値が電力量に対応付けられる。これにより、図11にて説明したように、たとえ排出原単位が一時的に規制値Eregを超過したとしても後の充電機会を利用して排出原単位の平均値を規制値Ereg以下に低下させることが可能になる。また、逆に、たとえば所定期間の前半は排出原単位が低くても所定期間の後半に排出原単位が高い電力量が繰り返し充電された場合、排出原単位の平均値が規制値Eregを超過する可能性もある。したがって、所定期間の後半にも、できるだけ排出原単位が低い電力量を選択する動機付けがユーザに与えられる。よって、実施の形態2によれば、温室効果ガス削減を効果的に促進できる。
【0101】
[実施の形態3]
排出原単位が規制値Ereg以下である電力量を充電可能な充電設備2がユーザの居住地域(自宅、勤務先などの近隣の地域)に存在しない可能性も考えられる。また、ユーザの居住地域によっては、排出原単位に関するデータが付加されていない電力量が充電される充電設備2しか選択肢がない可能性もある。このような状況であっても排出原単位が規制値Ereg以下の電力量の外部充電を要求した場合、遠方の充電設備2への移動をユーザに強いることになり、ユーザにとっての利便性が大きく低下し得る。
【0102】
図13は、実施の形態3における電力カラーリング処理を説明するための概念図である。実施の形態3において、サーバ3は、車両1(または車両1のユーザ)が属する組織(団体、コミュニティ等であってもよい)が管轄する複数の車両について、排出原単位の平均値を算出する。企業(たとえば宅配業者)が車両1を含む複数の車両を所有している場合には当該企業を「組織」とすることができる。より具体的には、車両1がレンタカー、タクシー、カーシェアリングされる車である場合には運営会社を組織とすることができる。あるいは、ユーザが車両1を個人で所有している場合には、車両1を製造した企業(自動車メーカー)を組織としてもよい。また、ユーザの居住地域の自治体を組織としてもよい。
【0103】
図13には組織が所有する3台の車両A~Cについて、排出原単位の平均値が算出される例が示されている。この例では、車両Aに充電された電力量の排出原単位は規制値Eregを超えるものの、車両B,Cに充電された電力量の排出原単位は規制値Eregに満たない。その結果、車両A~C全体で見ると、排出原単位の平均値は規制値Ereg未満になる。
【0104】
このように複数の車両についての排出原単位の平均値を電力量に対応付けることにより、組織内の一部の車両に充電された電力量の排出原単位が規制値Eregよりも大きい場合であっても、残りの車両によって排出原単位の平均値を規制値Ereg未満に抑えることができる。言い換えると、組織内の車両間(またはユーザ間)で排出原単位を埋め合わせできる。したがって、一部のユーザにとっての利便性低下を抑制しつつ、組織全体に対して、排出原単位が規制値Ereg以下の電力量を選択する動機付けが与えられる。よって、温室効果ガス削減を促進できる。
【0105】
図14は、実施の形態3における電力カラーリング処理を示すフローチャートである。車両1が外部充電された場合(S301においてYES)、サーバ3は、充電設備2から車両1に充電された電力量を充電設備2との通信により取得する(S302)。
【0106】
S303において、電力系統4から充電設備2に供給された電力量が発電された際の排出原単位に関するデータを事業者サーバ6との通信により取得する。そして、サーバ3は、バッテリ11に充電された電力量について、組織が管轄する複数の車両に関しての排出原単位の平均値を算出する(S304)。具体的には、たとえば図13のように3台の車両A~Cを対象とする場合、Eave=(E×P+E×P+E×P)/(P+P+P)との計算式を用いて排出原単位の平均値Eaveを算出できる。車両毎の電力量Pおよび排出原単位Eを添字A~Cを用いて区別している。
【0107】
S305において、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量と、S304にて算出された、組織が管轄する全車両についての排出原単位の平均値との対応関係をメモリ32に記憶する。これにより、サーバ3は、対象とする車両のバッテリ11に蓄えられた電力量を排出原単位に対応付けて管理できる。
【0108】
以上のように、実施の形態3においても実施の形態1と同様に、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量の電力カラーリング処理を実行し、バッテリ11に蓄えられた電力量を排出原単位に対応付けて管理する。これにより、サーバ3は、バッテリ11に蓄えられた電力量のなかにクリーン電力量がどの程度で含まれているかを把握できるので、車両1がグリーンゾーン内の走行を許可可能な車両かどうかを適切に判断できる。
【0109】
さらに、実施の形態3においては、組織が管轄する複数の車両についての排出原単位の平均値が電力量に対応付けられる。これにより、車両間またはユーザ間で排出原単位が低い電力量を融通し合うことが可能になる。したがって、できるだけ排出原単位が低い電力量を選択する動機付けを組織に対して与えつつ、一部のユーザの利便性が低下する状況を回避できる。よって、実施の形態3によれば、温室効果ガス削減を効果的に促進できる。
【0110】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
100 電力管理システム、1 車両、11 バッテリ、12 HMI、13 ECU、2 充電設備、3 サーバ、31 プロセッサ、32 メモリ、33 I/Oポート、301 充電量取得部、302 原単価取得部、303 消費量取得部、304 電力カラーリング部、305 走行可能距離算出部、306 車両位置取得部、307 地図記憶部、308 位置判定部、309 走行許可部、4 電力系統、5 送電線、6 事業者サーバ、7 ゲート、8 グリーンゾーンの管理者。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14