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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ステアリングハンドル
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/14 20060101AFI20240730BHJP
   F16H 25/12 20060101ALI20240730BHJP
   G05G 1/08 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B62D1/14
F16H25/12 D
G05G1/08 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021057760
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154639
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森田 文平
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 孝敏
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-161922(JP,A)
【文献】特開2004-034849(JP,A)
【文献】特開2014-043147(JP,A)
【文献】特開2005-246987(JP,A)
【文献】特開2020-049967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 - 1/14
F16H 19/00 - 31/00
F16H 35/10
F16H 37/00 - 37/16
G05G 1/00 - 13/02
G05G 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線を有し、かつ前記第1軸線を中心として正逆両方向へ回転するステアリングシャフトを備える乗物に適用されるものであり、前記ステアリングシャフトに一体回転可能に取付けられ、かつ軸受部を有するボス部と、前記軸受部により前記ボス部に対して支持されるとともにシャフト状に形成された一対のスポーク部と、各スポーク部に固定された把持部とを備えるステアリングハンドルであって、
前記乗物の直進時の前記ステアリングシャフトの状態において、運転者側から見て左右方向となる方向に沿って前記第1軸線から互いに反対方向へ延びるように配置された軸線を第2軸線とした場合、前記スポーク部は、前記第2軸線の周りの正逆両方向へ回転可能に前記軸受部に支持され、
前記ボス部と各スポーク部との間には回転制御機構が設けられており、
各回転制御機構は、前記第2軸線の周りでの前記スポーク部の回転に連動して前記第2軸線に沿う方向へスライドし得るように前記スポーク部上に配置されたスライド部材と、前記ボス部のうち前記スポーク部から前記第2軸線の放射方向へ離れた箇所に形成され、かつ前記第2軸線に面して開口する開口部を有するように前記第2軸線に沿う方向を長手方向として形成された溝部と、ゴム弾性を有する材料により形成され、かつ前記スライド部材に連結されるとともに、前記放射方向に圧縮変形させられた状態で、前記溝部に対し、前記第2軸線に沿う方向にスライド可能に嵌合された弾性体とを備え、
前記スライド部材は、前記スポーク部上にスライド可能に配置されたスライド本体部と、前記スライド本体部から前記放射方向へ延び、かつ前記開口部を介して前記溝部内に入り込む連結ピンとを備え、
前記連結ピンが前記弾性体に圧入されることにより、前記弾性体が前記スライド部材に連結されており、
前記弾性体は、前記放射方向に圧縮変形させられた状態からの弾性復元力により、前記連結ピン及び前記スライド本体部を介して前記スポーク部を前記軸受部の軸受面に押付けるステアリングハンドル。
【請求項2】
前記直進時における前記第2軸線の周りでの各把持部の位置を中立位置とした場合、各回転制御機構は、前記直進時に各把持部を前記中立位置に復帰させる機能を有し、
各回転制御機構は、前記スライド部材に加え、回転カム及び付勢部材を備え、
前記回転カムは、前記スポーク部上に一体回転可能に取付けられ、かつ前記第2軸線に沿う方向の一方の面にカム面を有しており、
前記スライド部材は、前記第2軸線に沿う方向の一方の面から突出して前記カム面に接触する接触部を備え、
前記付勢部材は、前記スライド部材を前記回転カム側へ付勢し、
前記回転カム毎の前記カム面は、前記第2軸線の周りに形成され、かつ前記第2軸線に直交する面に対し、それぞれ反対方向に傾斜する一対の傾斜面を有し、両傾斜面は境界部を介して互いに繋がっており、前記直進時には、前記接触部が前記境界部に接触する請求項に記載のステアリングハンドル。
【請求項3】
各回転制御機構は、前記スライド部材のスライドを規制することで、前記中立位置に位置する前記把持部の正逆各方向への最大回転角度を規定する規制部をさらに備えている請求項2に記載のステアリングハンドル。
【請求項4】
前記規制部は、前記ボス部に形成され、かつ前記第2軸線に対し交差するスライド規制面と、前記スライド部材に形成され、かつ前記第2軸線に対し交差する被スライド規制面とを備え、
前記規制部は、前記第2軸線に沿う方向への前記スライド部材の前記スライドに伴い、前記被スライド規制面が前記スライド規制面に接触することにより前記スライドを規制し、前記把持部が前記最大回転角度を越えて回転するのを規制する請求項に記載のステアリングハンドル。
【請求項5】
前記ボス部は、前記第2軸線に対し交差し、かつ前記軸受部が取付けられた支持壁部を備え、
前記スライド規制面は、前記支持壁部及び前記軸受部のうち、前記被スライド規制面に対向する面により構成されている請求項に記載のステアリングハンドル。
【請求項6】
前記規制部は、前記回転カムに形成され、かつ前記傾斜面の前記境界部とは反対側の端縁を起点とし、前記第2軸線に沿って前記接触部側へ延びる規制壁面を備え、
前記規制部は、前記回転カムの回転に伴い前記規制壁面が前記接触部に接触することにより、前記第2軸線の周りでの前記回転カムの回転を規制して、前記把持部が前記最大回転角度を越えて回転するのを規制する請求項3~5のいずれか1項に記載のステアリングハンドル。
【請求項7】
前記中立位置に位置する各把持部のうち、前記第2軸線よりも上方部分が運転者に近づく側へ回転する方向を手前方向とし、前記運転者から遠ざかる側へ回転する方向を奥方向とした場合、
前記規制部は、各把持部が前記中立位置から前記奥方向へ回転されたときの前記最大回転角度を、各把持部が前記中立位置から前記手前方向へ回転されたときの前記最大回転角度よりも大きくなるよう規定する請求項3~6のいずれか1項に記載のステアリングハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の乗物を操舵する際に運転者によって操作されるステアリングハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の乗物には、操舵装置の一部として、第1軸線を有し、かつ第1軸線を中心として、正逆両方向へ回転するステアリングシャフトが設けられている。このステアリングシャフトには、乗物の運転者が把持して操作するステアリングハンドルが取付けられる。
【0003】
特許文献1には、車両の直進時の位置から、第1軸線の周りに大きく、例えば90°以上回転された場合であっても、運転者の手首に負荷がかかりにくいステアリングハンドルが記載されている。
【0004】
このステアリングハンドルは、ボス部、一対のスポーク部及び一対の把持部を備えている。ボス部は、ステアリングシャフトに一体回転可能に取付けられ、かつ軸受部を有する。両スポーク部は、車両の直進時に、ボス部から、互いに左右方向における反対方向へ延びる第2軸線をそれぞれ有している。両スポーク部は、軸受部によりボス部に対し、第2軸線を中心として正逆両方向へ回転可能に支持されている。両把持部は、両スポーク部のボス部から遠い側の端部に固定されている。
【0005】
上記ステアリングハンドルでは、両把持部を第2軸線の周りで回転させることが可能である。そのため、運転者は、両把持部をそれぞれ第2軸線の周りで回転させながら、第1軸線の周りで回転させることで、手首を自然な角度に維持することができる。ステアリングハンドルを、第1軸線の周りで90°以上回転させる場合であっても、手首を不自然な角度で曲げなくてすみ、手首に負荷がかかりにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-34849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、スポーク部が軸受部により支持された状態では、同スポーク部と軸受部の内壁面(軸受面)との間に隙間が生ずる。この隙間は、第2軸線の周りをスポーク部が回転するうえで必要である。反面、この隙間が原因でガタが発生するおそれがある。
【0008】
しかし、上記特許文献1では、隙間に起因するガタを抑制する点について考慮されていない。そのため、運転者が把持部を把持して力を加えたときに、隙間分のガタを感じさせてしまい、不快感を運転者に与えるおそれがある。
【0009】
こうした問題は、上記従来のステアリングハンドルが設けられた乗物であれば、車両に限らず共通して起こり得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するステアリングハンドルは、第1軸線を有し、かつ前記第1軸線を中心として正逆両方向へ回転するステアリングシャフトを備える乗物に適用されるものであり、前記ステアリングシャフトに一体回転可能に取付けられ、かつ軸受部を有するボス部と、前記乗物の直進時に、前記ボス部から互いに左右方向における反対方向へ延びる第2軸線を有し、かつ前記軸受部により前記ボス部に対し、前記第2軸線の周りの正逆両方向へ回転可能に支持された一対のスポーク部と、各スポーク部に固定された把持部とを備えるステアリングハンドルであって、前記ボス部と各スポーク部との間には回転制御機構が設けられており、各回転制御機構は、前記第2軸線の周りでの前記スポーク部の回転に連動して前記第2軸線に沿う方向へスライドし得るように前記スポーク部上に配置されたスライド部材と、前記ボス部のうち前記スポーク部から前記第2軸線の放射方向へ離れた箇所に形成され、かつ前記第2軸線に沿う方向へ延びる溝部と、ゴム弾性を有する材料により形成され、かつ前記スライド部材に連結されるとともに、前記放射方向に圧縮変形させられた状態で、前記溝部に対し、前記第2軸線に沿う方向にスライド可能に嵌合された弾性体とを備えている。
【0011】
上記の構成によれば、乗物の直進時には、スポーク部及び把持部の組合わせが、ボス部の左右両側方に位置する。
運転者により各把持部に対し、第1軸線の周りの正逆いずれかの方向に回転させようとする力が加えられると、その力は、各スポーク部及びボス部を介してステアリングシャフトに伝達される。この伝達により、両スポーク部、ボス部及びステアリングシャフトが第1軸線の周りを回転する。操舵装置が作動し、乗物の操舵が行なわれ、乗物の進行方向が変更される。各スポーク部は、各把持部と一緒に、第2軸線の周りを回転可能である。第1軸線を中心とする各把持部の回転は、同把持部を把持した運転者の手首の構造から、第2軸線を中心とする各把持部の正逆回転を伴いながら行なわれる。
【0012】
各回転制御機構では、スライド部材が、第2軸線の周りでのスポーク部の回転に連動して同第2軸線に沿う方向へスライドする。このスライドの際、第2軸線の周りでのスライド部材の回転が、弾性体によって規制される。すなわち、弾性体は、ボス部の溝部に嵌合されていて、溝部の延びる方向である第2軸線に沿う方向へはスライド可能であるが、それ以外の方向への動きを規制される。上記「それ以外の方向への動き」には、弾性体が、第2軸線の周りで回転することが含まれる。従って、弾性体に連結されたスライド部材もまた、第2軸線の周りで回転することを規制される。
【0013】
ここで、弾性体が、ゴム弾性を有する材料によって形成されていることに加え、第2軸線の放射方向に圧縮変形させられている。この圧縮変形に伴い、弾性体には、第2軸線に向かい、かつ元の形状に戻ろうとする力(弾性復元力)が発生する。この弾性復元力が、スライド部材を介してスポーク部に作用する。運転者が把持部を把持しているが、第2軸線の周りで回転させないときには、上記弾性復元力により、スポーク部が軸受部の内壁面(軸受面)に押付けられる。また、運転者が把持部を把持して、第2軸線の周りで回転させるときには、上記弾性体の弾性復元力がスポーク部に作用している。そのため、上記いずれの場合にも、把持部を把持している運転者にガタを感じさせにくい。その結果、第2軸線の周りで把持部を回転させる操作の操作性が向上する。
【0014】
上記ステアリングハンドルにおいて、前記溝部は、前記第2軸線に面して開口する開口部を有しており、前記スライド部材は、前記スポーク部上にスライド可能に配置されたスライド本体部と、前記スライド本体部から前記放射方向へ延び、かつ前記開口部を介して前記溝部内に入り込む連結ピンとを備え、前記連結ピンが前記弾性体に圧入されることにより、前記弾性体が前記スライド部材に連結されていることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、連結ピンを、開口部を介して溝部内に入り込ませ、弾性体に圧入させるといった簡単な構造でありながら、弾性体をスライド部材に連結することが可能である。
【0016】
また、スライド部材がステアリングハンドルに組込まれた状態では、弾性体が第2軸線の放射方向に圧縮変形させられていることから、弾性体には、第2軸線に向かう弾性復元力が発生する。この弾性復元力は、連結ピン及びスライド本体部を介してスポーク部に作用する。ボス部の軸受部では、上記弾性復元力によりスポーク部が軸受部の内壁面(軸受面)に押付けられる。
【0017】
上記ステアリングハンドルにおいて、前記直進時における前記第2軸線の周りでの各把持部の位置を中立位置とした場合、各回転制御機構は、前記直進時に各把持部を前記中立位置に復帰させる機能を有し、各回転制御機構は、前記スライド部材に加え、回転カム及び付勢部材を備え、前記回転カムは、前記スポーク部上に一体回転可能に取付けられ、かつ前記第2軸線に沿う方向の一方の面にカム面を有しており、前記スライド部材は、前記第2軸線に沿う方向の一方の面から突出して前記カム面に接触する接触部を備え、前記付勢部材は、前記スライド部材を前記回転カム側へ付勢し、前記回転カム毎の前記カム面は、前記第2軸線の周りに形成され、かつ前記第2軸線に直交する面に対し、それぞれ反対方向に傾斜する一対の傾斜面を有し、両傾斜面は境界部を介して互いに繋がっており、前記直進時には、前記接触部が前記境界部に接触することが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、乗物の直進時には、各把持部は、第2軸線を中心とする回転方向には、中立位置に位置する。各回転制御機構では、付勢部材によって回転カム側へ付勢されたスライド部材の接触部がカム面の境界部に押付けられる。
【0019】
上記の状態から、運転者により把持部に対し、第1軸線の周りの正逆いずれかの方向に回転させようとする力が加えられると、各回転制御機構では、スポーク部が回転カムを伴い、把持部と一体となって回転する。回転カムの回転に伴いカム面が第2軸線の周りを回転する。カム面において、接触部に接触する箇所が変化する。この接触箇所が上記境界部から傾斜面に移ると、付勢部材を弾性変形(圧縮)させながらスライド部材を回転カムから遠ざけようとする力が発生する。この力は、回転カムの回転に伴い、傾斜面の接触部との接触箇所が、上記境界部から周方向へ遠ざかるに従い増加する。また、上記力は、各把持部を第2軸線の周りで回転させる際の操舵荷重として、各把持部を把持した手を通じて運転者に伝わる。
【0020】
上記の状態から、運転者により、各把持部に加えられる上記方向の力が弱められると、又は各把持部に対し上記直進時の位置に戻そうとする力が加えられると、スポーク部、ボス部及びステアリングシャフトが第1軸線の周りを上記とは逆方向へ回転する。乗物の進行方向が直進方向に戻される。上記第1軸線を中心とする各把持部の回転は、第2軸線を中心とする各把持部の上記とは逆方向の回転を伴いながら行なわれる。
【0021】
各回転制御機構では、スポーク部が回転カムを伴い、把持部と一体となって、上記とは逆方向へ回転する。回転カムの回転に伴いカム面が第2軸線の周りを上記とは逆方向へ回転する。傾斜面において接触部に接触する箇所が、境界部に近づく。これに伴い、付勢部材を弾性変形(圧縮)させながらスライド部材を回転カムから遠ざけようとする上記力が減少するとともに、操舵荷重が減少する。上記力及び操舵荷重は、乗物の直進時に、カム面の境界部が接触部に接触することで最小となる。
【0022】
このように、各把持部を第2軸線の周りで回転させる際の操舵荷重が、中立位置からの各把持部の回転量に応じて変化する。そのため、上記操舵荷重が回転量に拘らず一定である場合よりも操舵感が向上する。
【0023】
また、上記境界部が接触部に接触したときには、各把持部が中立位置に戻される。
上記ステアリングハンドルにおいて、各回転制御機構は、前記第2軸線の周りでの前記回転カムの回転を規制、又は前記スライド部材のスライドを規制することで、前記中立位置に位置する前記把持部の正逆各方向への最大回転角度を規定する規制部をさらに備えていることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、各回転制御機構の規制部により、第2軸線の周りでの回転カムの回転が規制される。又は、上記規制部により、スライド部材のスライドが規制される。これらの規制により、中立位置に位置する各把持部の正逆各方向への最大回転角度が規定される。
【0025】
上記ステアリングハンドルにおいて、前記規制部は、前記ボス部に形成され、かつ前記第2軸線に対し交差するスライド規制面と、前記スライド部材に形成され、かつ前記第2軸線に対し交差する被スライド規制面とを備え、前記規制部は、前記第2軸線に沿う方向への前記スライド部材の前記スライドに伴い、前記被スライド規制面が前記スライド規制面に接触することにより前記スライドを規制し、前記把持部が前記最大回転角度を越えて回転するのを規制することが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、スライド部材が第2軸線に沿う方向へスライドすることで、被スライド規制面がスライド規制面に対し、接近又は離間する。被スライド規制面及びスライド規制面のいずれも第2軸線に対し交差する方向へ延びている。そのため、スライド部材のスライドに伴い、被スライド規制面がスライド規制面に近づいて接触すると、スライド部材のそれ以上のスライドが規制される。把持部が最大回転角度を越えて回転することが規制される。
【0027】
上記ステアリングハンドルにおいて、前記ボス部は、前記第2軸線に対し交差し、かつ前記軸受部が取付けられた支持壁部を備え、前記スライド規制面は、前記支持壁部及び前記軸受部のうち、前記被スライド規制面に対向する面により構成されていることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、支持壁部及び軸受部のうち、被スライド規制面に対向する面がスライド規制面として利用される。そのため、支持壁部及び軸受部のうち、スライド規制面を有するものとは別に、スライド規制面を有する部材を新たに設けなくてもすむ。
【0029】
上記ステアリングハンドルにおいて、前記規制部は、前記回転カムに形成され、かつ前記傾斜面の前記境界部とは反対側の端縁を起点とし、前記第2軸線に沿って前記接触部側へ延びる規制壁面を備え、前記規制部は、前記回転カムの回転に伴い前記規制壁面が前記接触部に接触することにより、前記把持部が前記最大回転角度を越えて回転するのを規制することが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、第2軸線の周りでの把持部の回転に伴い、回転カムが最大回転角度回転すると、規制壁面が接触部に接触し、それ以上の回転カムの回転が規制される。これに伴い、把持部が最大回転角度を越えて回転することが規制される。
【0031】
上記ステアリングハンドルにおいて、前記中立位置に位置する各把持部のうち、前記第2軸線よりも上方部分が運転者に近づく側へ回転する方向を手前方向とし、前記運転者から遠ざかる側へ回転する方向を奥方向とした場合、前記規制部は、各把持部が前記中立位置から前記奥方向へ回転されたときの前記最大回転角度を、各把持部が前記中立位置から前記手前方向へ回転されたときの前記最大回転角度よりも大きくなるよう規定することが好ましい。
【0032】
ここで、運転者が、中立位置に位置する両把持部を第1軸線の周りで回転させる際、手首の構造上、各把持部を奥方向へ回転させた場合には、手前方向へ回転させた場合よりも多く回転させることが可能である。
【0033】
この点、上記の構成によれば、各把持部の中立位置から手前方向への最大回転角度と、奥方向への最大回転角度とが規制部によって規定される。しかも、奥方向への最大回転角度が、手前方向への最大回転角度よりも大きく規定される。そのため、各把持部が第1軸線の周りで大きく回転操作された場合に、各把持部を手前方向よりも奥方向へ多く回転させることが可能である。また、第2軸線の周りでの把持部の回転により、各把持部が第1軸線の周りで大きく回転操作された場合に、各把持部を把持した運転者の手首にかかる負荷が軽減され、操作性が向上する。
【発明の効果】
【0034】
上記ステアリングハンドルによれば、把持部の操作性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】ステアリングハンドルにおける骨格部分の斜視図。
図2図1の骨格部分の部分分解斜視図。
図3】同じく、図1の骨格部分の部分分解斜視図。
図4】回転カム、スライド部材、弾性体及び付勢部材を第1軸線側から見た分解斜視図。
図5】スライド部材及び弾性体を把持部側から見た分解斜視図。
図6】回転カムを第1軸線側から見た側面図。
図7】回転カムの正面図。
図8図11における回転制御機構を拡大して示す部分正面図。
図9図8の回転制御機構の部分断面図。
図10図8の回転制御機構の部分断面図。
図11】把持部が中立位置に位置するときのステアリングハンドルにおける骨格部分の部分正面図。
図12図11の骨格部分の側面図。
図13】把持部が中立位置から手前方向へ最大回転角度回転されたときのステアリングハンドルにおける骨格部分の部分正面図。
図14図13における回転カムを第1軸線側から見た側面図。
図15図13の骨格部分の側面図。
図16】把持部が中立位置から奥方向へ最大回転角度回転されたときのステアリングハンドルにおける骨格部分の部分正面図。
図17図16における回転カムを第1軸線側から見た側面図。
図18図16の骨格部分の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、ステアバイワイヤシステムが適用された車両の操舵装置に用いられるステアリングハンドルに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
ステアバイワイヤシステムとは、ステアリング操作を機械的な連結ではなく、電気信号でアクチュエータを介して操舵するシステムである。このシステムが適用された車両では、ステアリングハンドルを、ステアリングシャフトの周りで大きく、例えば最大で150度程度回転させることがあり得る。
【0037】
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。
【0038】
図1に示すように、車室内の運転席の前方には、車両を操舵する際に運転者(図示略)によって操作される操舵装置10が設けられている。操舵装置10は、第1軸線L1を有するステアリングシャフト11及びステアリングハンドル12を備えている。ステアリングシャフト11は、第1軸線L1を中心として正逆両方向へ回転可能である。ステアリングシャフト11は、後方ほど高くなるように車両の前後方向に対し傾斜した状態で配置されている。
【0039】
本実施形態では、ステアリングハンドル12の各部について説明する際には、第1軸線L1を基準とする。この第1軸線L1に沿う方向を単に「前後方向」という。また、第1軸線L1に沿う方向の前方を単に「前方」、「前」等といい、第1軸線L1に沿う方向の後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0040】
なお、図1では、ステアリングハンドル12の骨格部分のみが図示されている。
ステアリングハンドル12は、ボス部15、一対のスポーク部50及び一対の把持部75を備えている。次に、各部材について説明する。
【0041】
<ボス部15>
ボス部15は、筒状部16、板状部17、及び一対の支持部18を備えている。筒状部16は円筒状をなしており、ステアリングシャフト11の後端部に一体回転可能に取付けられる。板状部17は平板状をなしており、厚み方向を上記前後方向に合致させた状態で配置されている。板状部17は、上記筒状部16の後端部に固定されている。一対の支持部18は、板状部17よりも後方であって、第1軸線L1を挟んだ状態で、径方向に互いに対向する箇所に配置されている。
【0042】
図1及び図3に示すように、両支持部18は、第1軸線L1を挟んで互いに面対称の関係を有する形状をなしている。
各支持部18は基部19を備えている。各基部19は、一対の脚部21と、後板部22とを備えている。両脚部21及び後板部22は、それぞれ平板状をなしている。両脚部21は、第1軸線L1の周方向に互いに平行に離間した状態で前後方向に延びている。各脚部21は、自身の前端部において板状部17に固定されている。後板部22は、後述するスポーク部50の第2軸線L2に対し、平行又は平行に近い状態で配置されており、両脚部21の後端部に固定されている。後板部22には、同後板部22の第1軸線L1に近い側の面から把持部75に向けて延びる切欠き部23が形成されている。
【0043】
後板部22よりも後方には、中間部材25を介して、支持本体部31が配置されている。
中間部材25は、金属板等の板材によって形成されている。中間部材25は、一対の載置板部26を備えている。両載置板部26は、第1軸線L1の周方向に互いに平行に離間した状態で、第2軸線L2に沿う方向に延びている。両載置板部26は、後板部22上であって、上記切欠き部23を第1軸線L1の周方向における両側から挟み込む箇所に載置されている。
【0044】
図1図3に示すように、支持本体部31は、板状部32及び支持壁部33を備えている。板状部32は平板状をなしており、中間部材25の後側に重ねられた状態で配置されている。板状部32には、同板状部32の第1軸線L1に近い側の面から把持部75に向けて延びる切欠き部34が形成されている。
【0045】
支持壁部33は、板状部32の後面であって、切欠き部34よりも把持部75に近い箇所に配置されており、第2軸線L2に対し直交している。支持壁部33は、第2軸線L2に沿う方向へ延びる挿通孔35を有している。支持壁部33は、自身の前端部において板状部32に固定されている。
【0046】
そして、中間部材25及び支持本体部31は、ボルト36によって上記後板部22に締結されている。
各支持部18は、さらに、支持板部41を備えている。各支持板部41は、金属板等の板材によって形成されている。各支持板部41は、固定板部42及び支持壁部43を備えている。固定板部42は、第2軸線L2に沿う方向へ延びていて、ろう付け等の溶着手段によって、中間部材25に接合されている。支持壁部43は、固定板部42の第1軸線L1側の端縁部から後方へ延びており、第2軸線L2に対し直交している。両支持壁部33,43は、互いに平行の関係にある。
【0047】
支持壁部43において、上記支持壁部33の挿通孔35に対向する箇所には、第2軸線L2に沿う方向へ延びる挿通孔44が形成されている。
<スポーク部50>
図1及び図2に示すように、各スポーク部50は、第2軸線L2を有するシャフトによって構成されている。両スポーク部50は、ボス部15における筒状部16(第1軸線L1)の径方向外方であって、同筒状部16(第1軸線L1)を挟んで互いに対向する箇所に配置されている。両第2軸線L2は、車両の直進時に、筒状部16(第1軸線L1)から互いに左右方向における反対方向へ延びた状態となる。表現を変えると、両第2軸線L2は、ボス部15から左右方向における両側へ放射状に延びた状態となる。なお、ここでの「放射状に延びた状態」には、第1軸線L1に対し直交する面に沿って延びる状態が含まれるほか、第1軸線L1に対し直交に近い状態で交差する面に沿って延びる状態も含まれる。例えば、第1軸線L1から径方向外方へ遠ざかるに従い運転者に近づくように、第1軸線L1に対し直交に近い状態で交差する面に沿って延びる状態が、上記「放射状に延びた状態」に含まれる。
【0048】
一対のスポーク部50は、第1軸線L1を挟んで互いに面対称の関係を有する形状をなしている。そのため、ここでは右方のスポーク部50についてのみ説明する。
図2図9及び図10に示すように、スポーク部50の一部は、円柱状の一般部51によって構成されている。
【0049】
スポーク部50のうち、一般部51よりも第1軸線L1に近い部分は、それぞれ円柱状をなす複数(4つ)の軸部52,53,54,55によって構成されている。これらの軸部52~55は、第1軸線L1に近いものほど外径が小さくなるように形成されている。軸部52のうち、少なくとも第1軸線L1に近い端部の外周には、雄ねじ56が形成されている。軸部53の外周部には、第2軸線L2に沿って延びる平面部57が形成されている。本実施形態では、平面部57が、軸部53の外周部の第2軸線L2を挟む2箇所に形成されている。両平面部57は、互いに平行の関係を有している。なお、平面部57は、軸部53の外周部の1箇所に形成されてもよいし、3箇所以上の複数箇所に形成されてもよい。軸部55の外周には雄ねじ58が形成されている。
【0050】
スポーク部50は、第2軸線L2を中心として正逆両方向へ回転し得るように、第1軸線L1に近い端部において、両支持壁部33,43に支持されている。
支持壁部33によるスポーク部50の支持は、軸部52上に配置された複数の部品、例えば、ワッシャ61,62、滑りワッシャ63、カラー64、ブッシュ65等によってなされている。上記複数の部品は、ボス部15の一部を構成している。特に、滑りワッシャ63及びブッシュ65は、軸部52を支持壁部33に対し、正逆両方向への回転可能に支持する軸受部としての機能を有している。滑りワッシャ63の内壁面と、ブッシュ65の内壁面とは、軸部52を支える軸受面を構成している。ワッシャ62及び滑りワッシャ63は、軸部52の雄ねじ56に螺合されたナット66によって支持壁部33に押付けられている。
【0051】
支持壁部43によるスポーク部50の支持は、軸部54,55上に配置された複数の部品、例えば、軸受部67、滑りワッシャ68、ワッシャ69等によってなされている。上記複数の部品は、ボス部15の一部を構成している。特に、軸受部67は、支持壁部43に対し、軸部54を正逆両方向への回転可能に支持する機能を有している。軸受部67の内壁面は、軸部54を支える軸受面を構成している。
【0052】
滑りワッシャ68及びワッシャ69は、軸部55の雄ねじ58に螺合されたナット71によって支持壁部43に押付けられている。
<把持部75>
図1及び図2に示すように、一対の把持部75は、運転者によって把持される箇所であり、第1軸線L1を挟んで互いに面対称の関係を有する形状をなしている。各把持部75は、各スポーク部50の両端部のうち、第1軸線L1から遠い端部に固定されており、スポーク部50と一体で、第2軸線L2の周りを正逆両方向へ回転可能である。
【0053】
ここで、図11及び図12に示すように、車両の直進時における各把持部75の第2軸線L2の周りにおける位置を「中立位置」とする。図1に示すように、各把持部75のうち、第2軸線L2よりも上方部分が、運転者に近づく側へ回転する方向を「手前方向」とする。各把持部75のうち、第2軸線L2よりも上方部分が、運転者から遠ざかる側へ回転する方向を「奥方向」とする。
【0054】
図1及び図2に示すように、ボス部15と各スポーク部50との間には、回転制御機構80が設けられている。両回転制御機構80の構造は、第1軸線L1を挟んで互いに面対称の関係を有している。そのため、ここでは、右方の回転制御機構80についてのみ説明する。
【0055】
<回転制御機構80>
回転制御機構80は、次の機能を有している(図6参照)。
・把持部75の中立位置から手前方向への最大回転角度θ2を規定する。
【0056】
・把持部75の中立位置から奥方向への最大回転角度θ1を規定する。
・車両の直進時に把持部75を中立位置に復帰させる。
図1図4に示すように、回転制御機構80は、回転カム81、スライド部材91、溝部27、弾性体98及び付勢部材103を備えている。次に、各部材及び各部について説明する。
【0057】
<回転カム81>
図4及び図6に示すように、回転カム81は第2軸線L2に沿う方向へ延びる挿通孔82を有していて、全体として円環状をなしている。回転カム81の内周部、すなわち、挿通孔82の周辺部分であって、軸部53の平面部57(図2参照)に対応する箇所には、第2軸線L2に沿って延びる平面部83が形成されている。本実施形態では、平面部83が、回転カム81の内周部の第2軸線L2を挟む2箇所に形成されている。両平面部83は、互いに平行の関係を有している。なお、平面部83は、回転カム81の内周部の1箇所に形成されてもよいし、3箇所以上の複数箇所に形成されてもよい。
【0058】
図8及び図9に示すように、軸部52上であって、ナット66に対し第1軸線L1側に隣接する箇所にはワッシャ72が配置されている。回転カム81は、軸部53上であって、ワッシャ72に対し第1軸線L1側に隣接する箇所に配置されている。そして、軸部53の平面部57が、挿通孔82の平面部83に対向するように、同軸部53が挿通孔82に挿通されている。この形態の挿通により、回転カム81がスポーク部50に対し一体回転可能に取付けられている。
【0059】
図4図6及び図7に示すように、回転カム81は、第2軸線L2に沿う方向の両方の面のうち、第1軸線L1に近い面にカム面84を有している。カム面84は、回転カム81の全周にわたって形成されている。
【0060】
カム面84は、傾斜面85,86の組合わせを2組有している。各組における傾斜面85,86は、第2軸線L2の周りの半分(180度)の領域に形成されている。傾斜面85,86は、それぞれ回転カム81の径方向における外方へ膨らむ円弧状をなしている。
【0061】
各組における傾斜面85は、把持部75が中立位置から手前方向へ回転されたときに、後述するスライド部材91の接触部101が接触する傾斜面である。各組における傾斜面86は、把持部75が中立位置から奥方向へ回転されたときに接触部101が接触する傾斜面である。
【0062】
各組における傾斜面85,86は、第2軸線L2に直交する面P1に対し、それぞれ反対方向に傾斜している。傾斜面85,86のそれぞれの傾斜角度は、第2軸線L2の周りの位置に拘らず同一に設定されている。表現を変えると、各傾斜面85,86は、面P1に対し単一の角度で傾斜している。各組における傾斜面85,86が、面P1に対しそれぞれなす傾斜角度は、互いに同一に設定されている。
【0063】
各組における傾斜面85,86は、第2軸線L2の周りに互いに隣り合っている。両傾斜面85,86は、把持部75に近い側の端部において互いに、境界部87を介して繋がっている。各境界部87は、第2軸線L2に沿う方向には、各傾斜面85,86において把持部75に最も近い箇所に位置する。各傾斜面85,86は、境界部87から第2軸線L2の周り(周方向)に遠ざかるに従い、把持部75から第2軸線L2に沿う方向に遠ざかる。
【0064】
一方の組における傾斜面85と、他方の組における傾斜面86とは、第2軸線L2の周りに互いに隣り合っている。
<スライド部材91>
図8及び図9に示すように、スライド部材91の骨格部分はスライド本体部92によって構成されている。スライド本体部92は、円板部93及び円筒部94を備えている。円板部93は、第2軸線L2に対し直交しており、上記回転カム81と同程度の外径を有している。円筒部94は、円板部93よりも小さな外径を有している。円筒部94は、円板部93よりも第1軸線L1側に配置されている。
【0065】
図4及び図5に示すように、スライド部材91は、上記スライド本体部92に加え、連結ピン95を備えている。連結ピン95は円板部93から第2軸線L2の放射方向、本実施形態では前方へ延びている。図10に示すように、連結ピン95は、上記切欠き部34を通り、切欠き部23内と、後述する溝部27内とに入り込んでいる。
【0066】
スライド本体部92は、第2軸線L2に沿う方向に延びる挿通孔96を有している。この挿通孔96にはスポーク部50の軸部54が挿通されている。スライド部材91は、第2軸線L2の周りでのスポーク部50の回転に連動して、同第2軸線L2に沿う方向へスライドし得るように、軸部54上に配置されている。
【0067】
図5及び図10に示すように、スライド部材91は、一対の接触部101を有している。両接触部101は、円板部93において、第2軸線L2を挟んで相対向する箇所に位置している。本実施形態では、両接触部101が、第2軸線L2を前後両側から挟み込む箇所に位置している。
【0068】
各接触部101は、第2軸線L2に沿って把持部75側へ突出している。各接触部101の先端面は球面によって構成されている。各接触部101は、上記球面においてカム面84に接触している。
【0069】
<溝部27>
図3及び図10に示すように、溝部27は、ボス部15のうち、スポーク部50(第2軸線L2)から上記放射方向、本実施形態では、前方へ離れた箇所に形成されている。より詳しくは、溝部27は、上述した中間部材25において、両載置板部26の間に形成されている。溝部27は、第2軸線L2に直交する面においてU字状をなしていて、同第2軸線L2に沿う方向に延びている。溝部27は、第2軸線L2に沿う方向には、両載置板部26のうち、第1軸線L1に近い箇所に位置している。溝部27は、第2軸線L2に面して開口する開口部28を自身の後端部に有している。溝部27は、両載置板部26に接続されている。そして、両載置板部26が後板部22上に載置された状態では、溝部27が切欠き部23を通って、両脚部21間に入り込んでいる。
【0070】
<弾性体98>
弾性体98は、ゴム弾性を有する材料によって形成されている。弾性体98には、前後方向に延び、かつ同弾性体98の後面において開口する挿入穴99が形成されている。そして、上述したように溝部27内に入り込んだ連結ピン95の前端部が、挿入穴99に圧入されている。この圧入により、弾性体98が連結ピン95を介してスライド本体部92に連結されている。弾性体98は、上記放射方向に圧縮変形させられた状態で、溝部27に対し第2軸線L2に沿う方向にスライド可能に嵌合されている。
【0071】
<付勢部材103>
図4図8図10に示すように、付勢部材103は、スライド部材91を回転カム81側へ付勢するためのものであり、本実施形態では、圧縮コイルばねが付勢部材103として用いられている。付勢部材103の多くの部分は、円筒部94の周りに配置されている。
【0072】
付勢部材103は、第2軸線L2に沿う方向については、円板部93と支持壁部43との間に、圧縮された状態で配置されている。そのため、スライド部材91は、付勢部材103から回転カム81に向かう方向の付勢力を常に受けている。
【0073】
回転制御機構80は、さらに、中立位置に位置する把持部75の正逆各方向への最大回転角度θ1,θ2を規定する規制部を備えている。規制部は、第1規制部105及び第2規制部106からなる。
【0074】
<第1規制部105>
図8及び図9に示すように、第1規制部105は、把持部75が中立位置から奥方向へ回転されたときの最大回転角度θ1(図17図18参照)を規定する機能を有している。第1規制部105は、スライド部材91の第1軸線L1側へのスライドを規制することで、上記機能を実現している。
【0075】
第1規制部105は、上述した軸受部67に形成されたスライド規制面73と、スライド部材91に形成された被スライド規制面97とによって構成されている。スライド規制面73は、軸受部67の把持部75側の側面によって構成されている。
【0076】
被スライド規制面97は、円筒部94における円板部93とは反対側(第1軸線L1側)の側面によって構成されており、スライド規制面73に対向している。スライド規制面73及び被スライド規制面97は、いずれも第2軸線L2に対し交差、本実施形態では直交する平らな面によって構成されている。
【0077】
第1規制部105は、第2軸線L2に沿う方向のうち、第1軸線L1に近づく方向へのスライド部材91のスライドに伴い、被スライド規制面97がスライド規制面73に接触することにより、同方向へのスライドを規制する。第1規制部105は、このスライドの規制により、把持部75が最大回転角度θ1(図17参照)を越えて奥方向へ回転するのを間接的に規制する。
【0078】
<第2規制部106>
図4図7及び図14に示すように、第2規制部106は、把持部75が中立位置から手前方向へ回転されたときの最大回転角度θ2(図14図15参照)を規定する機能を有している。第2規制部106は、回転カム81の手前方向の回転を直接規制することによって、上記機能を実現している。
【0079】
第2規制部106は、回転カム81に形成された平らな2つの規制壁面88を備えている。各規制壁面88は、各組の傾斜面85のうち、上記境界部87とは反対側の端縁を起点とし、第2軸線L2に沿って接触部101側へ延びている。傾斜面85,86が2組設けられ、一方の組の傾斜面85と他方の組の傾斜面86とが隣り合っている本実施形態では、規制壁面88は、一方の組の傾斜面85と、他方の組の傾斜面86との間の面によって構成されている。
【0080】
第2規制部106は、回転カム81の回転に伴い、図7及び図14に示すように、各規制壁面88が、対応する接触部101に接触することにより、把持部75が最大回転角度θ2を越えて手前方向へ回転するのを規制する。
【0081】
さらに、図6に示すように、第1規制部105によって規制される奥方向の最大回転角度θ1は、第2規制部106によって規制される手前方向の最大回転角度θ2よりも大きく設定されている。本実施形態では、最大回転角度θ1が約130度に設定され、最大回転角度θ2が約50度に設定されているが、変更可能である。
【0082】
従って、第2軸線L2の周りにおける各傾斜面85,86の長さを周長とすると、傾斜面86の周長は傾斜面85の周長よりも長く設定されている。
図1及び図2に示すように、上記の構成を有する回転制御機構80のうち、ボス部15における支持部18、回転カム81、スライド部材91及び付勢部材103によって、回転トルク発生機構部107が構成されている。回転トルク発生機構部107は、把持部75が第2軸線L2の周りで正逆各方向へ回転されたときに回転トルクをそれぞれ発生して把持部75に作用させる機能を担っている。
【0083】
図6及び図7に示すように、回転トルク発生機構部107は、把持部75が中立位置に位置するとき、すなわち、各接触部101が境界部87に接触するときに回転トルクを最小にする。
【0084】
回転トルク発生機構部107は、把持部75が奥方向へ回転されたとき、中立位置からの回転角度が大きくなるに従い、すなわち、傾斜面86の接触部101との接触箇所が境界部87から遠ざかるに従い、回転トルクを徐々に増大させる。そして、図16図18に示すように、回転トルク発生機構部107は、把持部75が奥方向へ最大回転角度θ1回転されたとき、すなわち、第1規制部105によって回転が間接的に規制されたときに回転トルクを最大にする。
【0085】
図6に示すように、回転トルク発生機構部107は、把持部75が手前方向へ回転されたとき、中立位置からの回転角度が大きくなるに従い、すなわち、傾斜面85の接触部101との接触箇所が境界部87から遠ざかるに従い、回転トルクを徐々に増大させる。そして、図13図15に示すように、回転トルク発生機構部107は、把持部75が手前方向へ最大回転角度θ2回転されたとき、すなわち、第2規制部106によって回転が直接規制されたときに回転トルクを最大にする。
【0086】
なお、上記回転トルクは、把持部75が中立位置から手前方向へ回転されたときにも奥方向へ回転されたときにも、回転角度の増加とともに、0.1[N・m]~1.5[N・m]の範囲で増加する特性となるように設定されることが望ましい。回転トルクが上記の範囲にあると、把持部75が少しの力で回転することが起こりにくく、把持部75を安定して回転させることが可能である。また、把持部75を回転させるのに過大な力を加えなくてもよく、手首に過大な負荷がかかるのを抑制することが可能である。
【0087】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
車両の直進時には、スポーク部50及び把持部75の組合わせが、ボス部15の左右両側方に位置する。また、図6図8図12に示すように、各把持部75は、第2軸線L2を中心とする回転方向には、中立位置に位置する。各回転制御機構80では、付勢部材103によって回転カム81側へ付勢されたスライド部材91の各接触部101が、カム面84の対応する境界部87に押付けられる(図6図7の各二点鎖線参照)。
【0088】
このときには、各把持部75に作用する回転トルクは最小となる。この回転トルクは、各把持部75を第2軸線L2の周りで回転させる際の操舵荷重として、各把持部75を把持した手を通じて運転者に伝わる。運転者が感ずる操舵荷重は最小となる。
【0089】
上記の状態から、運転者により両把持部75に対し、上記回転トルクに抗し、第1軸線L1の周りの正逆いずれかの方向に回転させようとする力、すなわち、時計回り方向又は反時計回り方向へ向かう力が加えられると、各回転制御機構80が次のように作用する。
【0090】
図1に示すように、運転者が各把持部75に加えた上記力は、各スポーク部50及びボス部15を介してステアリングシャフト11に伝達される。この伝達により、両把持部75、両スポーク部50、ボス部15及びステアリングシャフト11が第1軸線L1の周りを回転する。操舵装置10が作動し、車両の操舵が行なわれ、車両の進行方向が変更される。両スポーク部50は、両把持部75と一緒に、第2軸線L2の周りを回転可能である。
【0091】
上記第1軸線L1を中心とする各把持部75の回転は、同把持部75を把持した運転者の手首の構造から、第2軸線L2を中心とする各把持部75の正逆両回転を伴いながら行なわれる。
【0092】
このように、各把持部75が第2軸線L2の周りで回転するため、回転しないものに比べ、運転者は、各把持部75を把持したままで、ステアリングハンドル12を第1軸線L1の周りで大きく(90度以上)回転させることができる。
【0093】
ここで、例えば、右側の把持部75について着目すると、同把持部75が第1軸線L1の周りを反時計回り方向へ回転されると、図13図15に示すように、同把持部75が上記回転トルクに抗して手前方向へ回転される。
【0094】
図8図10に示すように、回転制御機構80では、スポーク部50が回転カム81を伴い、把持部75と一体となって、同把持部75と同一方向である手前方向へ回転する。回転カム81の回転に伴い、カム面84が第2軸線L2の周りを手前方向へ回転する。カム面84において、スライド部材91の各接触部101に接触する箇所が変化する。各接触箇所が各境界部87から各傾斜面85に移ると、付勢部材103を弾性変形(圧縮)させながらスライド部材91を第1軸線L1側へ押し返す力が発生する。この力により、スライド部材91が弾性体98を伴い第2軸線L2に沿って第1軸線L1側へスライドする。
【0095】
上記力は、回転カム81の上記手前方向への回転に伴い、各傾斜面85の各接触部101との接触箇所が、各境界部87から周方向へ遠ざかるに従い増加する。また、回転カム81の上記手前方向への回転に伴い、付勢部材103の圧縮量が増加し、回転トルクが増加する。従って、回転トルクは、把持部75の回転角度に応じて変化する特性となる。中立位置から手前方向への把持部75の回転角度が大きくなるに従い、操舵荷重が増加する。
【0096】
第2軸線L2の周りにおける把持部75の回転に伴い、図13図15に示すように、回転カム81が最大回転角度θ2回転すると、各規制壁面88が、対応する接触部101に接触する(図14参照)。これらの接触により、回転カム81がそれ以上手前方向へ回転することが規制される。これに伴い、把持部75が中立位置から最大回転角度θ2を越えて回転することが規制される。また、このときには、付勢部材103の圧縮量が最大となり、回転トルク及び操舵荷重が最大となる。なお、スライド部材91の被スライド規制面97は、軸受部67のスライド規制面73に近づくが、同スライド規制面73から把持部75側へ僅かに離れている。
【0097】
これに対し、図1において、右側の把持部75が第1軸線L1の周りを時計回り方向へ回転されると、図16図18に示すように、同把持部75が、上記回転トルクに抗して奥方向へ回転する。
【0098】
図8図10に示すように、回転制御機構80では、スポーク部50が回転カム81を伴い、把持部75と一体となって、同把持部75と同一方向である奥方向へ回転する。回転カム81の回転に伴い、カム面84が第2軸線L2の周りを奥方向へ回転する。カム面84において、各接触部101に接触する箇所が変化する。各接触箇所が各境界部87から各傾斜面86に移ると、付勢部材103を弾性変形(圧縮)させながらスライド部材91を第1軸線L1側へ押し返す力が発生する。この力により、スライド部材91が弾性体98を伴い第2軸線L2に沿って第1軸線L1側へスライドする。
【0099】
上記力は、回転カム81の上記奥方向への回転に伴い、各傾斜面86の各接触部101との接触箇所が、各境界部87から周方向へ遠ざかるに従い増加する。また、回転カム81の上記奥方向への回転に伴い、付勢部材103の圧縮量が増加し、回転トルクが増加する。従って、回転トルクは、把持部75の回転角度に応じて変化する特性となる。中立位置から奥方向への把持部75の回転角度が大きくなるに従い、操舵荷重が増加する。
【0100】
把持部75の上記奥方向への回転に伴い、回転カム81が回転すると、スライド部材91が回転カム81によって押されて支持壁部43に接近する。図16図18に示すように、把持部75が回転カム81を伴い最大回転角度θ1回転すると、スライド部材91の被スライド規制面97が、図示はしないが、軸受部67のスライド規制面73に接触する。被スライド規制面97及びスライド規制面73のいずれも第2軸線L2に対し交差(直交)している。そのため、被スライド規制面97のスライド規制面73との接触により、スライド部材91がそれ以上第1軸線L1側へスライドすることが規制される。これに伴い、把持部75が最大回転角度θ1を越えて回転することが間接的に規制される。また、このときには、付勢部材103の圧縮量が最大となり、回転トルク及び操舵荷重が最大となる。
【0101】
このように、各把持部75が中立位置に位置するとき(図8図12)には、回転トルク(操舵荷重)が最小となる。各把持部75が中立位置から正逆いずれの方向へ回転したときにも、その回転角度に拘わらず、回転トルク(操舵荷重)が中立位置での回転トルク(操舵荷重)よりも大きくなる。そのため、本実施形態のステアリングハンドル12によれば、回転トルク及び操舵荷重について考慮されておらず、それらが回転量(回転角度)に拘わらず一定である場合に比べ、操舵感が向上する。
【0102】
また、回転角度が最大になる(図13図18)と、回転トルク(操舵荷重)が最大となる。このように、回転トルク(操舵荷重)が、第2軸線L2の周りにおける各把持部75の回転角度に対応したものとなるため、操舵感がさらに向上する。
【0103】
さらに、上記回転トルク(操舵荷重)は、中立位置からの各把持部75の回転角度が大きくなるに従い徐々に増加する特性となる。運転者が各把持部75を第2軸線L2の周りで大きく回転させていることを、各把持部75を把持した手を通じて運転者に直感的に感じさせることができ、操舵感をより一層向上させることができる。
【0104】
ここで、上述したように、運転者が、中立位置に位置する各把持部75を第1軸線L1の周りで回転させる際、各把持部75を奥方向へ回転させた場合には、手首の構造上、手前方向へ回転させた場合よりも多く回転させることが可能である。
【0105】
この点、本実施形態では、各把持部75の中立位置から奥方向への最大回転角度θ1が第1規制部105によって規制される(図8図10)。各把持部75の中立位置から手前方向への最大回転角度θ2が第2規制部106によって規定される(図14)。しかも、奥方向への最大回転角度θ1が、手前方向への最大回転角度θ2よりも大きく規定される(図6)。そのため、各把持部75が第1軸線L1の周りで大きく回転された場合に、各把持部75を手前方向よりも奥方向へ多く回転させることができる。
【0106】
また、各第2軸線L2の周りにおける各把持部75の回転により、各把持部75を把持した運転者の手首にかかる負荷を軽減することができ、両把持部75の操作性が向上する。また、各把持部75を奥方向へ多く回転させる途中で回転が規制されることが起こりにくく、回転規制に起因する底付きの発生が抑制される。そのため、各把持部75を、第2軸線L2の周りでスムーズに回転させ、ひいては、ステアリングハンドル12を第1軸線L1の周りでスムーズに回転させることができる。
【0107】
ここで、一般に、ステアバイワイヤシステムが適用された車両では、ステアリングハンドル12の操舵域が±約150度といわれている。本実施形態では、各把持部75を、中立位置から手前方向へ最大で約50度回転でき、奥方向へ最大で約130度回転できる。そのため、各把持部75を各第2軸線L2の周りで回転させることで、ステアリングハンドル12を第1軸線L1の周りで±約180度回転させることが可能である。従って、本実施形態のステアリングハンドル12は、ステアバイワイヤシステムが適用された車両の操舵に適している。
【0108】
上記の状態から、運転者により、各把持部75に加えられる上記方向の力が弱められると、両把持部75、両スポーク部50、ボス部15及びステアリングシャフト11が第1軸線L1の周りを上記とは逆方向へ回転する。各把持部75に対し上記直進時の位置に戻そうとする力が加えられた場合も同様である。車両の進行方向が直進方向に戻される。上記第1軸線L1を中心とする各把持部75の回転は、各第2軸線L2を中心とする各把持部75の上記とは逆方向の回転を伴いながら行なわれる。
【0109】
各回転制御機構80では、各スポーク部50が各回転カム81を伴い、各把持部75と一体となって上記とは逆方向へ回転する。各回転カム81の回転に伴いカム面84が第2軸線L2の周りを上記とは逆方向へ回転する。各カム面84の傾斜面85,86において、対応する接触部101に接触する箇所が変化し、各境界部87が、対応する接触部101に近づく。これに伴い、付勢部材103を弾性変形(圧縮)させながらスライド部材91を第1軸線L1側へ押し返す力が減少する。図6図8及び図10に示すように、この力は、カム面84毎の各境界部87が、対応する接触部101に接触したときに最小となる。
【0110】
このように、各把持部75を各第2軸線L2の周りで回転させる際の操舵荷重が、中立位置に近づくに従い減少する。そのため、上記操舵荷重が回転量に拘らず一定である場合よりも、両把持部75の操舵感が向上する。
【0111】
また、車両の進行方向を直進方向に戻すために、各把持部75が、ボス部15の左右両側方となる箇所まで、第1軸線L1の周りで回転されると、車両の直進時には、各境界部87が各接触部101に接触し、各把持部75が中立位置に戻される。
【0112】
従って、運転者は、各把持部75を第1軸線L1の周りで回転させるだけでよい。各把持部75を第1軸線L1の周りで回転させる操作とは別に、各把持部75を中立位置に復帰させる操作を行なわなくて済み、この点でも両把持部75の操作性が向上する。
【0113】
ところで、図3及び図10に示すように、本実施形態では、スポーク部50上に配置されたスライド部材91が、第2軸線L2の周りでの同スポーク部50の回転に連動して第2軸線L2に沿う方向へスライドする。このスライドの際、第2軸線L2の周りでのスライド部材91の回転が、同スライド部材91に連結された弾性体98によって規制される。すなわち、弾性体98は、溝部27に嵌合されていて、溝部27の延びる方向である第2軸線L2に沿う方向へはスライド可能であるが、それ以外の方向への動きを規制される。上記「それ以外の方向への動き」には、弾性体98が、第2軸線L2の周りで回転することが含まれる。従って、弾性体98に連結されたスライド部材91もまた、第2軸線L2の周りで回転することを規制される。
【0114】
ここで、弾性体98が、ゴム弾性を有する材料によって形成されていることに加え、第2軸線L2の放射方向に圧縮変形させられている。この圧縮変形に伴い、弾性体98には、第2軸線L2に向かい、かつ元の形状に戻ろうとする力(弾性復元力)が発生する。この弾性復元力が、連結ピン95及びスライド本体部92を介してスポーク部50に作用する。運転者が把持部75を把持しているが、第2軸線L2の周りで回転させないときには、ボス部15の軸受部では、上記弾性復元力によりスポーク部50が軸受部の内壁面(軸受面)に押付けられる。すなわち、スポーク部50の軸部52を支持する支持壁部33では、軸部52が、カラー64を介して、滑りワッシャ63及びブッシュ65の各内壁面(軸受面)に対し、間接的に押付けられる。また、スポーク部50の軸部54を支持する支持壁部43では、軸部54が軸受部67の内壁面(軸受面)に直接的に押付けられる。
【0115】
また、運転者が把持部75を把持して、第2軸線L2の周りで回転させるときには、上記弾性体98の弾性復元力がスポーク部50に作用している。
そのため、上記いずれの場合にも、把持部75を把持している運転者にガタを感じさせにくい。その結果、第2軸線L2の周りで把持部75を回転させる操作の操作性が向上する。
【0116】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・本実施形態では、スライド部材91の連結ピン95を、開口部28を介して溝部27内に入り込ませ、弾性体98の挿入穴99に圧入させるといった簡単な構造でありながら、弾性体98をスライド部材91に連結することができる。
【0117】
・本実施形態では、スポーク部50の軸部54を支持壁部43に対し回転可能に支持する軸受部67のうち、被スライド規制面97に対向する面を、スライド規制面73として利用している。そのため、軸受部67とは別に、スライド規制面73を有する部材を新たに設けなくてもすむ。
【0118】
・各第2軸線L2の周りにおける各把持部75の回転トルクは、各付勢部材103(圧縮コイルばね)の圧縮量と対応する。圧縮量が多くなるに従い回転トルクが増加する。
従って、例えば、各圧縮コイルばねを、ばね定数の異なる圧縮コイルばねに変えることによって、圧縮量を変更することができる。また、各第2軸線L2に直交する面P1(図7参照)に対する傾斜面85,86の傾斜角度を変えることによって、圧縮量を変更することができる。
【0119】
そのため、ばね定数及び傾斜角度の少なくとも一方を変えることで、各圧縮コイルばねの圧縮量を変え、各第2軸線L2の周りでの各把持部75の回転角度と回転トルクとの関係(特性)を低コストで変更することができる。
【0120】
・本実施形態では、スライド部材91毎に2つの接触部101を設けている。両接触部101を、第2軸線L2を挟んで対向する箇所に配置している(図6参照)。カム面84における傾斜面85,86の組合わせを2組設けている。組毎の境界部87を、第2軸線L2を挟んで対向する箇所に設定している。そして、各接触部101を、各組の傾斜面85,86に接触させている。
【0121】
そのため、スライド部材91に接触部101が1つのみ設けられ、傾斜面85,86の組合わせが回転カム81に1組のみ設けられる場合に比べ、接触部101をカム面84に安定した状態で押付けることができる。
【0122】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0123】
・各把持部75が、中立位置から奥方向へ回転されたときには、中立位置から手前方向へ回転されたときとは異なる特性で回転トルクを発生させてもよい。このようにすると、各把持部75を、第1軸線L1の周りで回転させる際、回転の方向に応じて操作荷重及び操舵感を異ならせることができる。
【0124】
・スライド部材91における接触部101の数が1又は3以上に変更されてもよい。この場合、傾斜面85,86の組合わせの数が、接触部101の数と同じ数となるように変更される。
【0125】
・傾斜面85,86の傾斜角度は、第2軸線L2の周りの位置に応じて異なっていてもよい。例えば、傾斜面85,86は、上記面P1に傾斜することを条件に、第2軸線L2に沿う方向に膨らむように湾曲する湾曲面、又は凹むように湾曲する湾曲面によって構成されてもよい。
【0126】
上記変形例によると、把持部75の回転に伴い変化する操舵荷重の特性を変えることができる。
・付勢部材103として、圧縮コイルばねとは異なる種類のばねが用いられてもよい。
【0127】
また、付勢部材103として、スライド部材91を回転カム81側へ付勢できるものであることを条件として、ばねとは異なる部材が用いられてもよい。
・被スライド規制面97及びスライド規制面73は、第2軸線L2に対し、直交とは異なる角度で交差してもよい。
【0128】
・軸受部67に代え、支持壁部43のうち、スライド部材91の被スライド規制面97に対向する面によってスライド規制面73が構成されてもよい。
・回転カム81におけるカム面84が上記実施形態とは反対側の面、すなわち、把持部75側の面に形成されてもよい。この場合には、スライド部材91及び付勢部材103が回転カム81よりも把持部75側に配置される。スライド部材91は、付勢部材103により第1軸線L1側へ付勢されて、接触部101がカム面84に押付けられる。
【0129】
・カム面84における傾斜面85,86が境界部87を挟んで周方向へ離れていて、その境界部87が上記面P1に対し平行な面(第2軸線L2に対し直交する面)によって構成されてもよい。
【0130】
・回転制御機構80は、中立位置に位置する把持部75の手前方向の最大回転角度θ2を規定するために、第2軸線L2の周りでの回転カム81の回転を直接規制する代わりに、スライド部材91のスライドを規制してもよい。
【0131】
・回転制御機構80は、中立位置に位置する把持部75の奥方向の最大回転角度θ1を規定するために、スライド部材91のスライドを規制する代わりに、第2軸線L2の周りでの回転カム81の回転を直接規制してもよい。
【0132】
・上記ステアリングハンドルは、車両以外の乗物、例えば、航空機、船舶等における操舵装置のステアリングハンドルに適用することもできる。
【符号の説明】
【0133】
11…ステアリングシャフト
12…ステアリングハンドル
15…ボス部
27…溝部
28…開口部
43…支持壁部
50…スポーク部
67…軸受部
73…スライド規制面
75…把持部
80…回転制御機構
81…回転カム
84…カム面
85,86…傾斜面
87…境界部
88…規制壁面
91…スライド部材
92…スライド本体部
95…連結ピン
97…被スライド規制面
98…弾性体
101…接触部
103…付勢部材
105…第1規制部(規制部)
106…第2規制部(規制部)
L1…第1軸線
L2…第2軸線
P1…面
θ1,θ2…最大回転角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16
図17
図18