(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
(21)【出願番号】P 2021066986
(22)【出願日】2021-04-12
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 修士
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-130201(JP,A)
【文献】特開2019-009851(JP,A)
【文献】特開2012-161221(JP,A)
【文献】特開2008-245509(JP,A)
【文献】特開2020-167923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するフレキシブル電極と、前記フレキシブル電極との対向面が絶縁層にて被覆されたベース電極とを有し、両電極間への電圧の印加によって前記フレキシブル電極が前記対向面に接近するよう変形するアクチュエータであって、
前記フレキシブル電極及び前記ベース電極を複数組有し、
前記複数組のそれぞれは、同一軸上に配置され、隣り合う組同士が連結されており、
前記軸は、前記複数組のそれぞれの前記ベース電極の前記対向面に交差し、
前記複数組のそれぞれの前記ベース電極は、互いに絶縁された複数の電極部に分割され、
前記複数の電極部には、前記電圧が独立して印加される
ことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記ベース電極は、前記フレキシブル電極と対向する位置に頂点部を有するドーム状に形成されており、
前記複数の電極部は、前記軸の周回方向に沿って配置され、
前記複数の電極部には、前記電圧が前記周回方向に沿って順次印加される
ことを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記隣り合う組同士の一方の組の前記フレキシブル電極と他方の組の前記ベース電極とは、連結部材によって連結され、
前記連結部材は、弾性体によって形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記隣り合う組同士の一方の組の前記フレキシブル電極と他方の組の前記ベース電極とは、連結部材によって連結され、
前記連結部材は、導電体によって形成される
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記隣り合う組同士の一方の組の前記フレキシブル電極と他方の組の前記フレキシブル電極とは、互いに対向して配置され、且つ、連結部材によって連結され、
前記連結部材は、絶縁体によって形成される
ことを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性を有する部材の変形を動力として機械的仕事を行うソフトアクチュエータが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、電気活性ポリマが一対の電極間に挟まれたアクチュエータが記載されている。特許文献1に記載のアクチュエータは、一対の電極間に電圧が印加されることにより蓄積された電荷のクーロン力によって、一対の電極が引き合い、電気活性ポリマが変形して、電極間に変位を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のアクチュエータは、電極間距離に沿った方向又は電極に沿った方向に直線的に動く単純な動作を実現できるに過ぎず、複雑な動作を実現することは難しい。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、複雑な動作を実現可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のアクチュエータは、可撓性を有するフレキシブル電極と、前記フレキシブル電極との対向面が絶縁層にて被覆されたベース電極とを有し、両電極間への電圧の印加によって前記フレキシブル電極が前記対向面に接近するよう変形するアクチュエータであって、前記フレキシブル電極及び前記ベース電極を複数組有し、前記複数組のそれぞれは、同一軸上に配置され、隣り合う組同士が連結されており、前記軸は、前記複数組のそれぞれの前記ベース電極の前記対向面に交差し、前記複数組のそれぞれの前記ベース電極は、互いに絶縁された複数の電極部に分割され、前記複数の電極部には、前記電圧が独立して印加されることを特徴とする。
【0008】
このような構成により、複数組のそれぞれのフレキシブル電極は、電圧が印加された電極部に応じて、様々な形態に変形することができる。アクチュエータの仕事を外部に出力する出力部材がフレキシブル電極に取り付けられた場合、出力部材には、フレキシブル電極の変形に応じて、様々な方向及び大きさを有するモーメントが作用する。出力部材は、様々な姿勢に変位することができる。よって、本発明のアクチュエータは、複雑な動作を実現することができる。
【0009】
更に好ましい態様として、前記ベース電極は、前記フレキシブル電極と対向する位置に頂点部を有するドーム状に形成されており、前記複数の電極部は、前記軸の周回方向に沿って配置され、前記複数の電極部には、前記電圧が前記周回方向に沿って順次印加される。
【0010】
このような態様により、出力部材がフレキシブル電極に取り付けられた場合、出力部材は、軸の周回方向に旋回するように変位する。アクチュエータは、旋回動作を実現することができる。よって、アクチュエータは、複雑な動作を実現することができる。
【0011】
更に好ましい態様として、前記隣り合う組同士の一方の組の前記フレキシブル電極と他方の組の前記ベース電極とは、連結部材によって連結され、前記連結部材は、弾性体によって形成される。
【0012】
このような態様により、出力部材がフレキシブル電極に取り付けられた場合、出力部材は、変位量が大きくなり得ると共に、初期位置に復元し易くなり得る。アクチュエータは、動作量を増大させることができると共に、動作速度を高速化することができる。よって、アクチュエータは、高出力化を図ることができる。
【0013】
更に好ましい態様として、前記隣り合う組同士の一方の組の前記フレキシブル電極と他方の組の前記ベース電極とは、連結部材によって連結され、前記連結部材は、導電体によって形成される。
【0014】
このような態様により、隣り合う組同士の一方の組のフレキシブル電極と、他方の組のベース電極とは、同電位になり得る。アクチュエータの駆動回路は簡素化し得る。よって、アクチュエータは、複雑な動作を容易に実現することができる。
【0015】
更に好ましい態様として、前記隣り合う組同士の一方の組の前記フレキシブル電極と他方の組の前記フレキシブル電極とは、互いに対向して配置され、且つ、連結部材によって連結され、前記連結部材は、絶縁体によって形成される。
【0016】
このような態様により、隣り合う組同士の一方の組のベース電極を構成する複数の電極部に対する電圧の印加順序と、隣り合う組同士の他方の組のベース電極を構成する複数の電極部に対する電圧の印加順序とが逆向きである場合、各フレキシブル電極は、軸を中心軸としてねじれるように変形する。アクチュエータは、軸を中心軸としたねじり動作を実現することができる。アクチュエータは、複雑な動作を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複雑な動作を実現可能なアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1のアクチュエータの構成を模式的に示す図。
【
図3】
図1に示すフレキシブル電極とベース電極との間に電圧が印加された場合のアクチュエータを示す図。
【
図4】
図3に示す場合の後に電圧の印加が停止された場合のアクチュエータを示す図。
【
図5】
図1に示すフレキシブル電極及びベース電極を支持する支持部材を模式的に示す図。
【
図6】
図5に示す支持部材の他の例を模式的に示す図。
【
図7】実施形態2のアクチュエータの構成を説明する図。
【
図8】実施形態3のアクチュエータの構成を説明する図。
【
図9】
図8に示すフレキシブル電極とベース電極との間に電圧が印加された場合のアクチュエータを説明する図。
【
図10】実施形態4のアクチュエータの構成を説明する図。
【
図11】
図10に示すフレキシブル電極とベース電極との間に電圧が印加された場合のアクチュエータを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0020】
本実施形態では、後述する、第1フレキシブル電極10、第2フレキシブル電極30及び第3フレキシブル電極50を総称して、「フレキシブル電極2」とも称する。本実施形態では、後述する、第1ベース電極20、第2ベース電極40及び第3ベース電極60を総称して、「ベース電極3」とも称する。
【0021】
[実施形態1]
図1~
図6を用いて、実施形態1のアクチュエータ1について説明する。
図1は、実施形態1のアクチュエータ1の構成を模式的に示す図である。
図2は、
図1に示すベース電極3の斜視図である。
図2には、ベース電極3の1つである第1ベース電極20が代表して図示されている。
図2では、絶縁層22の図示が省略されている。
【0022】
アクチュエータ1は、可撓性を有するフレキシブル電極2の変形を動力として機械的仕事を行うソフトアクチュエータである。アクチュエータ1は、一対の電極間に挟持された誘電エラストマの変形を動力とする従来のソフトアクチュエータとは異なり、フレキシブル電極2自体が変形する。アクチュエータ1は、各種ロボット、ユーザの身体的負担を軽減するアシストスーツ、人工筋肉又は人口関節等に使用される各種アクチュエータに適用可能である。
【0023】
実施形態1のアクチュエータ1は、フレキシブル電極2及びベース電極3の両電極間への電圧の印加により発生するクーロン力によって、ベース電極3のフレキシブル電極2との対向面にフレキシブル電極2が接近するようフレキシブル電極2を変形させる(
図3を参照)。その後、アクチュエータ1は、両電極間への電圧の印加を停止して、フレキシブル電極2を原形に復元させる(
図4を参照)。このように電圧の印加と停止とを繰り返すことによって、アクチュエータ1は、揺動動作を実現することができる。
【0024】
アクチュエータ1は、フレキシブル電極2及びベース電極3を一組として、複数組有する。この組の数は、任意である。本実施形態のアクチュエータ1は、第1フレキシブル電極10及び第1ベース電極20を一組とする第1組C1と、第2フレキシブル電極30及び第2ベース電極40を一組とする第2組C2と、第3フレキシブル電極50及び第3ベース電極60を一組とする第3組C3とを備える。本実施形態のアクチュエータ1では、複数組C1~C3のそれぞれの組を構成するフレキシブル電極2とベース電極3との間に電圧が印加される。
【0025】
複数組C1~C3のそれぞれは、同一軸上に配置され、隣り合う組同士が連結されている。具体的には、複数組C1~C3のそれぞれは、軸A上に直列的に配置される。隣り合う第1組C1と第2組C2とは、連結部材111によって連結される。隣り合う第2組C2と第3組C3とは、連結部材112によって連結される。
【0026】
軸Aは、複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3のフレキシブル電極2との対向面21,41,61に交差する。具体的には、軸Aは、第1ベース電極20の第1フレキシブル電極10との対向面21、第2ベース電極40の第2フレキシブル電極30との対向面41、及び、第3ベース電極60の第3フレキシブル電極50との対向面61に直交する。
【0027】
第1フレキシブル電極10は、可撓性を有する導電体によって形成される。第1フレキシブル電極10の可撓性は、第1ベース電極20との間に電圧が印加されることにより発生するクーロン力の作用によって変形し、当該電圧の印加が停止されると、原形(変形前の形状、すなわち当該電圧が印加される前の形状)に復元するような可撓性である。
【0028】
第1フレキシブル電極10は、導電ゴム又は導電ゲル等を用いて形成されてもよい。この導電ゴムとしては、例えば、導電材を混ぜ合わせて成形されたエラストマが挙げられる。この導電材としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック若しくはカーボンナノチューブの微粉末、銀若しくは銅の金属微粉末、又は、シリカ若しくはアルミナ等の絶縁体にスパッタ等によって金属をコートしたコアシェル構造の導電体微粉末等が挙げられる。上記の導電ゲルとしては、例えば、3次元ポリマーマトリックスの中に、水若しくは保湿剤等の溶媒、電解質及び添加剤等を保持させた機能性ゲル材料等が挙げられる。この機能性ゲル材料としては、例えば、積水化成品工業株式会社のテクノゲル(登録商標)が挙げられる。
【0029】
第1フレキシブル電極10は、立体的形状に形成される。本実施形態では、第1フレキシブル電極10は、多面体の形状、例えば六面体の形状に形成される。第1フレキシブル電極10は、軸Aが延びる方向の端面である一端面11と他端面12とを有する。第1フレキシブル電極10の一端面11は、第1ベース電極20に対向する面である。第1フレキシブル電極10の他端面12は、軸Aが延びる方向において一端面11とは反対側の面である。第1フレキシブル電極10の他端面12は、第2組C2の第2ベース電極40に対向する。第1フレキシブル電極10の他端面12は、連結部材111によって第2ベース電極40に連結される。
【0030】
第1ベース電極20は、剛性を有する導電体によって形成される。第1ベース電極20の形成に用いられる材料としては、鉄、銅又はアルミニウムのような金属材料が挙げられる。或いは、第1ベース電極20は、セラミックス等の耐熱性、剛性及び絶縁性を有する非金属材料を用いて形成された基板の一面を、導電性を有する金属膜等にて被覆することによって形成されてもよい。金属膜が被覆される基板の一面は、第1フレキシブル電極10に対向する面である。
【0031】
第1ベース電極20の第1フレキシブル電極10との対向面21は、絶縁層22によって被覆される。絶縁層22は、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20との間への電圧の印加によって第1ベース電極20に蓄積された電荷が確実に維持されるよう、セラミックスから成る強誘電体を用いて形成される。特に、絶縁層22は、ペロブスカイト構造を有する強誘電体を用いて形成される。ペロブスカイト構造を有する強誘電体としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛((Pb,La)(Zr,Ti)O3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウムストロンチウム((Ba,Sr)TiO3)、又は、ニオブ酸カリウムナトリウム((NaK)NbO3)等が挙げられる。チタン酸バリウムには、CaZrO3やBaSnO3等の物質が固溶されていてもよい。
【0032】
また、絶縁層22の形成に用いられる材料としては、第1フレキシブル電極10を変形させるクーロン力が発生し得るような高い比誘電率を有する材料であることが好適である。絶縁層22の比誘電率は、例えば、セラミックス(ファインセラミックス)が採用されることによって1000以上であってもよい。チタン酸バリウムは、比誘電率が1000~10000前後である。チタン酸ジルコン酸鉛は、比誘電率が500~5000である。チタン酸ストロンチウムは、比誘電率が200~500である。これらのペロブスカイト構造を有する強誘電体は、高い比誘電率を有する材料である。
【0033】
第1ベース電極20は、第1フレキシブル電極10と対向する位置に頂点部を有するドーム状に形成される。すなわち、第1ベース電極20は、第1フレキシブル電極10との対向面21が、
図2に示すように、半球面等のドーム面状に形成される。第1ベース電極20は、ドーム面状の対向面21の中心軸が軸Aに沿うように配置される。第1ベース電極20の対向面21は、第1フレキシブル電極10に対して傾斜する。第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20との間には、空間23が形成される。空間23は、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20との間への電圧の印加時に、第1ベース電極20の対向面21に接近するよう変形する第1フレキシブル電極10を受け入れるための空間である。
【0034】
第1ベース電極20は、第1ベース電極20の対向面21を分割することによって複数の電極部25a,25bに分割されている。複数の電極部25a,25bは、半円板等の板状の絶縁部26によって互いに絶縁されている。板状の絶縁部26により、複数の電極部25a,25bは、第1フレキシブル電極10との間において互いに独立して電圧が印加される。複数の電極部25a,25bのうちの一方の電極部25aと他方の電極部25bとは、軸Aを含む平面に対して互いに対称な形状となるように分割されていてもよい。
【0035】
第2フレキシブル電極30及び第3フレキシブル電極50のそれぞれは、第1フレキシブル電極10と同様に構成される。すなわち、第2フレキシブル電極30の一端面31及び他端面32は、それぞれ、第1フレキシブル電極10の一端面11及び他端面12と同様に構成される。第3フレキシブル電極50の一端面51及び他端面52は、それぞれ、第1フレキシブル電極10の一端面11及び他端面12と同様に構成される。
【0036】
但し、第2フレキシブル電極30の他端面32は、連結部材112によって第3ベース電極60に連結される。第3フレキシブル電極50の他端面52には、連結部材111,112の代わりに、出力部材120が取り付けられる。出力部材120は、アクチュエータ1の仕事をアクチュエータ1の外部に出力する部材である。出力部材120は、アクチュエータ1の動作に従って変位する従動部材である。出力部材120は、アクチュエータ1の仕事の出力対象である外部装置の仕様等に応じて適宜設計される。
【0037】
第2ベース電極40及び第3ベース電極60のそれぞれは、第1ベース電極20と同様に構成される。すなわち、第2ベース電極40の対向面41は、第1ベース電極20の対向面21と同様に構成される。第2ベース電極40の対向面41を被覆する絶縁層42は、第1ベース電極20の絶縁層22と同様に構成される。第3ベース電極60の対向面61は、第1ベース電極20の対向面21と同様に構成される。第3ベース電極60の対向面61を被覆する絶縁層62は、第1ベース電極20の絶縁層22と同様に構成される。
【0038】
また、第2ベース電極40は、第1ベース電極20を構成する一方の電極部25a及び他方の電極部25bと同様に、軸Aを含む平面に対して分割される一方の電極部45a及び他方の電極部45bを有する。第3ベース電極60は、第1ベース電極20を構成する一方の電極部25a及び他方の電極部25bと同様に、軸Aを含む平面に対して分割される一方の電極部65a及び他方の電極部65bを有する。複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3の各電極部25a,45a,65aは、何れも、軸Aを含む平面の法線方向の一方側に配置される。複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3の各電極部25b,45b,65bは、いずれも、軸Aを含む平面の法線方向の他方側に配置される。
【0039】
連結部材111は、第1組C1の第1フレキシブル電極10と、第2組C2の第2ベース電極40とを連結する。連結部材112は、第2組C2の第2フレキシブル電極30と、第3組C3の第3ベース電極60とを連結する。すなわち、隣り合う組同士の一方の組のフレキシブル電極2と他方の組のベース電極3とは、連結部材111,112によって連結される。連結部材111,112は、絶縁体によって形成される。好ましくは、連結部材111,112は、絶縁ゴム又は絶縁ばね等の弾性変形可能な絶縁体によって形成されてもよい。言い換えると、連結部材111,112は、絶縁性を有する弾性体によって形成されてもよい。
【0040】
アクチュエータ1は、フレキシブル電極2とベース電極3との間に電圧を印加してアクチュエータ1を駆動する駆動回路70~90に接続される。駆動回路70~90は、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20との間に電圧を印加する第1駆動回路70と、第2フレキシブル電極30と第2ベース電極40との間に電圧を印加する第2駆動回路80と、第3フレキシブル電極50と第3ベース電極60との間に電圧を印加する第3駆動回路90とによって構成される。
【0041】
第1駆動回路70は、直流電圧源等によって構成される電源71a,71bと、第1駆動回路70の各構成要素と第1フレキシブル電極10及び第1ベース電極20とを接続する配線72a,72bと、半導体素子等によって構成されるスイッチ73a~76bと、集積回路等によって構成される制御部77とを含む。
【0042】
第1フレキシブル電極10は、配線72aによって、電源71aの正極及び負極の一方に接続されると共に、フレームグラウンド(又はアース)に接続される。第1ベース電極20の電極部25aは、配線72aによって、電源71aの正極及び負極の他方に接続されると共に、フレームグラウンドに接続される。スイッチ73aは、第1フレキシブル電極10と電源71aとの間に接続される。スイッチ74aは、第1フレキシブル電極10とフレームグラウンドとの間に接続される。スイッチ75aは、電極部25aと電源71aとの間に接続される。スイッチ76aは、電極部25aとフレームグラウンドとの間に接続される。
【0043】
また、第1フレキシブル電極10は、配線72bによって、電源71bの正極及び負極の一方に接続されると共に、フレームグラウンドに接続される。第1ベース電極20の電極部25bは、配線72bによって、電源71bの正極及び負極の他方に接続されると共に、フレームグラウンドに接続される。スイッチ73bは、第1フレキシブル電極10と電源71bとの間に接続される。スイッチ74bは、第1フレキシブル電極10とフレームグラウンドとの間に接続される。スイッチ75bは、電極部25bと電源71bとの間に接続される。スイッチ76bは、電極部25bとフレームグラウンドとの間に接続される。
【0044】
制御部77は、第1駆動回路70の各構成要素を制御する回路である。制御部77は、スイッチ73a~76bのON/OFF状態を制御することによって、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20との間における電圧の印加と停止とを切り替える。また、制御部77は、電源71a,71bの出力電圧の大きさを制御することによって、印加される電圧の大きさを制御することができる。これにより、制御部77は、第1フレキシブル電極10に作用するクーロン力の大きさを制御することができ、第1フレキシブル電極10の変形量を制御することができる。よって、制御部77は、出力部材120の変位量を制御することができる。更に、制御部77は、電圧の印加と停止とを切り替える速度を制御することによって、第1フレキシブル電極10の変形速度を制御することができ、出力部材120の変位速度を制御することができる。更に、制御部77は、電圧の印加と停止とを切り替えるタイミングを制御することによって、第1フレキシブル電極10の変形タイミングを制御することができ、出力部材120の変位タイミングを制御することができる。
【0045】
第2駆動回路80及び第3駆動回路90のそれぞれは、第1駆動回路70と同様に構成される。
【0046】
図3は、
図1に示すフレキシブル電極2とベース電極3との間に電圧が印加された場合のアクチュエータ1を示す図である。
【0047】
図3に示すように、第1駆動回路70において、スイッチ73a,75aがON状態に制御され、スイッチ74a,76aがOFF状態に制御されると、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20の電極部25aとの間には電圧が印加される。この場合、電源71aの正極に接続された第1フレキシブル電極10は正の電荷を帯び、電源71aの負極に接続された電極部25aは負の電荷を帯びる。電極部25aの対向面21を被覆する絶縁層22は、誘電分極する。電極部25aの絶縁層22は、電極部25aとの界面付近が正の電荷を帯び、当該界面の反対側(空間23側)の表面付近が負の電荷を帯びる。電極部25aの絶縁層22と第1フレキシブル電極10との間には、クーロン力が発生する。当該クーロン力によって、第1フレキシブル電極10は、電極部25aの絶縁層22に引き付けられる。すなわち、当該クーロン力によって、第1フレキシブル電極10は、第1ベース電極20の電極部25aの対向面21に接近するように変形する。この第1フレキシブル電極10の変形により、第1フレキシブル電極10に連結された第2ベース電極40は、電極部25aの対向面21に沿って傾斜するように変位する。出力部材120には、
図3に示す矢印M1のようなモーメントが作用する。これにより、出力部材120は、
図3に示す矢印M1のように、軸Aに対して傾斜するように変位する。
【0048】
第2駆動回路80及び第3駆動回路90のそれぞれでも、第1駆動回路70と同様に、スイッチのON/OFF状態が制御されると、第2フレキシブル電極30及び第3フレキシブル電極50のそれぞれは、第1フレキシブル電極10と同様に変形する。これにより、出力部材120は、軸Aに対して更に傾斜するように変位することができる。
【0049】
図4は、
図3に示す場合の後に電圧の印加が停止された場合のアクチュエータ1を示す図である。
【0050】
図4に示すように、
図3に示す場合の後に、第1駆動回路70において、スイッチ73a,75aがOFF状態に制御され、スイッチ74a,76aがOFF状態に制御されると、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20の電極部25aとの間において電圧の印加が停止される。この場合、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20の電極部25aとに蓄積された電荷は、フレームグラウンドに解放される。第1フレキシブル電極10は、第1フレキシブル電極10の復元力によって電極部25aの対向面21から離隔するように変形し、原形に復元する。この第1フレキシブル電極10の復元により、第1フレキシブル電極10に連結された第2ベース電極40は、変位前(すなわち上記の電圧が印加される前)の初期位置に復元する。
【0051】
第2駆動回路80及び第3駆動回路90のそれぞれにおいて、第1駆動回路70と同様に、スイッチのON/OFF状態が制御されると、第2フレキシブル電極30及び第3フレキシブル電極50のそれぞれは、第1フレキシブル電極10と同様に原形に復元する。第1フレキシブル電極10、第2フレキシブル電極30及び第3フレキシブル電極50が原形に復元することによって、出力部材120は、初期位置に復元することができる。
【0052】
図4に示す場合の後に、第1駆動回路70において、スイッチ73b,75bがON状態に制御され、スイッチ74b,76bがOFF状態に制御されると、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20の電極部25bとの間には電圧が印加される。第1フレキシブル電極10は、第1ベース電極20の電極部25bの対向面21に接近するように変形する。出力部材120は、
図3に示す矢印M1とは反対方向に傾斜するように変位する。第2駆動回路80及び第3駆動回路90のそれぞれでも、第1駆動回路70と同様に、スイッチのON/OFF状態が制御されると、出力部材120は、
図3に示す矢印M1とは反対方向に更に傾斜するように変位することができる。
【0053】
その後、第1駆動回路70において、スイッチ73b,75bがOFF状態に制御され、スイッチ74b,76bがON状態に制御されると、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20の電極部25bとの間において電圧の印加が停止される。第1フレキシブル電極10は、第1フレキシブル電極10の復元力によって電極部25bの対向面21から離隔するように変形し、原形に復元する。第2駆動回路80及び第3駆動回路90のそれぞれでも、第1駆動回路70と同様に、スイッチのON/OFF状態が制御されると、第2フレキシブル電極30及び第3フレキシブル電極50のそれぞれは、第1フレキシブル電極10と同様に原形に復元する。出力部材120は、初期位置に復元することができる。
【0054】
上記のように、駆動回路70~90は、複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3を構成する一方の電極部25a,45a,65aに対して同時に電圧を印加し、その後、同時に電圧の印加の停止を行うことができる。そして、駆動回路70~90は、複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3を構成する他方の電極部25b,45b,65bに対して同時に電圧を印加し、その後、同時に電圧の印加の停止を行うことができる。このように、駆動回路70~90は、複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3を構成する一方の電極部25a,45a,65aと、他方の電極部25b,45b,65bと、を分けて電圧の印加と停止とを切り替える。これにより、アクチュエータ1は、軸Aに交差する方向に出力部材120を揺動させる揺動動作を実現することができる。
【0055】
もっとも、駆動回路70~90は、複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3を構成する一方の電極部25a,45a,65aに対して同時に電圧を印加又は停止しなくてもよい。例えば、駆動回路70~90は、出力部材120から最も遠い第1組C1から出力部材120が取り付けられた第3組C3に向かうような順に一方の電極部25a,45a,65aに対して電圧を印加又は停止してもよい。他方の電極部25b,45b,65bに対しても同様である。これにより、アクチュエータ1は、出力部材120をより滑らかに揺動させることができる。
【0056】
以上のように、実施形態1のアクチュエータ1は、フレキシブル電極2及びベース電極3を複数組C1~C3有する。複数組C1~C3のそれぞれは、同一軸A上に配置され、隣り合う組同士が連結されている。軸Aは、複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3のフレキシブル電極2との対向面21,41,61に交差する。複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3は、互いに絶縁された複数の電極部に分割されている。複数の電極部には、電圧が独立して印加される。
【0057】
このような構成により、複数組C1~C3のそれぞれのフレキシブル電極2は、複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3を構成する複数の電極部のうちの一部に接近するよう変形することができる。すなわち、複数組C1~C3のそれぞれのフレキシブル電極2は、電圧が印加された電極部に応じて、様々な形態に変形することができる。フレキシブル電極2に接続された出力部材120には、フレキシブル電極2の変形に応じて、様々な方向及び大きさを有するモーメントが作用する。そして、出力部材120は、様々な姿勢に変位することができる。これにより、実施形態1のアクチュエータ1は、例えば揺動動作のように、出力部材120の複雑な動作を実現することができる。しかも、複数組C1~C3のそれぞれが同一軸A上に配置されていることから、フレキシブル電極2全体の変形量が大きくなるので、出力部材120の変位量は大きくなり得る。これにより、実施形態1のアクチュエータ1は、出力部材120から外部に出力される仕事を大きくことができる。よって、実施形態1のアクチュエータ1は、複雑な動作を実現することができるだけでなく、高出力化を図ることができる。
【0058】
更に、実施形態1のアクチュエータ1は、隣り合う組同士の一方の組のフレキシブル電極2と他方の組のベース電極3とが、弾性体によって形成された連結部材111,112によって連結される。
【0059】
これにより、出力部材120は、電圧印加時において変位量が更に大きくなり得る。アクチュエータ1は、動作量を増大させることができる。また、出力部材120は、電圧印加停止時において初期位置に復元し易くなり得るので、電圧の印加と停止とが短い周期で繰り返されても、これに迅速に応答して迅速に変位することができる。アクチュエータ1は、動作速度を高速化することができる。したがって、実施形態1のアクチュエータ1は、更に高出力化を図ることができる。
【0060】
図5は、
図1に示すフレキシブル電極2及びベース電極3を支持する支持部材130を模式的に示す図である。
図5は、アクチュエータ1の軸Aに沿った断面を示す。
図5では、複数組C1~C3のそれぞれのベース電極3を構成する複数の電極部及び絶縁部の図示、絶縁層22,42,62の図示、及び、駆動回路70~90の図示が省略されている。
図6以降においても、これらの図示が省略されている。
【0061】
複数組C1~C3のそれぞれのフレキシブル電極2及びベース電極3は、例えば
図5に示すような支持部材130によって支持されていてもよい。支持部材130は、軸Aに沿って延びる棒状部材によって構成される。支持部材130は、フレキシブル電極2の変形に追従して弾性変形可能な絶縁体によって形成される。支持部材130は、複数組C1~C3のそれぞれのフレキシブル電極2及びベース電極3を貫通して支持する。
【0062】
図6は、
図5に示す支持部材130の他の例を模式的に示す図である。
【0063】
また、複数組C1~C3のそれぞれのフレキシブル電極2及びベース電極3は、例えば
図6に示すような支持部材140によって支持されていてもよい。支持部材140は、軸Aに沿って延びる筒状部材によって構成される。支持部材140は、複数組C1~C3のそれぞれのフレキシブル電極2及びベース電極3を収容する有底筒状のケース141と、ケース141の開口部を閉塞するストッパー142と、ケース141の内部に充填された絶縁液143とを有する。
【0064】
ケース141は、フレキシブル電極2の変形に追従して弾性変形可能な絶縁体によって形成される。ストッパー142は、絶縁体によって形成された蓋又は栓等であり、ケース141の内部に充填された絶縁液143がケース141の外部に漏れることを防ぐ。絶縁液143は、毒性を有しない合成油、鉱油又は植物由来の絶縁油であってもよいし、潤滑油等の機械油であってもよい。絶縁液143の比誘電率は、空気の比誘電率よりも高い。
【0065】
支持部材140に支持されたフレキシブル電極2及びベース電極3では、フレキシブル電極2とベース電極3との間が、高い比誘電率を有する絶縁液143によって満たされる。これにより、アクチュエータ1は、フレキシブル電極2及びベース電極3が支持部材140によって支持されると、両電極間への電圧の印加により蓄積される電荷量を増加させることができ、両電極間に発生するクーロン力を大きくすることができる。よって、アクチュエータ1は、フレキシブル電極2の変形量の増大及び変形速度の高速化が可能であり、更に高出力化を図ることができる。
【0066】
なお、絶縁液143が高粘性の機械油である場合、絶縁液143は、
図5に示す支持部材130に支持されたフレキシブル電極2及びベース電極3の表面に塗布されていてもよい。これにより、アクチュエータ1は、フレキシブル電極2及びベース電極3が支持部材130によって支持されても、フレキシブル電極2の変形量の増大及び変形速度の高速化が可能であり、更に高出力化を図ることができる。
【0067】
[実施形態2]
図7を用いて、実施形態2のアクチュエータ1について説明する。実施形態2のアクチュエータ1において、従前の実施形態と同様の構成及び動作については、その説明を省略する。
図7は、実施形態2のアクチュエータ1の構成を説明する図である。
【0068】
実施形態2のアクチュエータ1では、隣り合う組同士の一方の組のフレキシブル電極2と他方の組のベース電極3とが、連結部材111,112の代わりに、連結部材113,114によって連結される。連結部材113は、第1組C1の第1フレキシブル電極10と、第2組C2の第2ベース電極40とを連結する。連結部材114は、第2組C2の第2フレキシブル電極30と、第3組C3の第3ベース電極60とを連結する。連結部材113,114は、導電体によって形成される。好ましくは、連結部材113,114は、導電ゴム又は導電ばね等の弾性変形可能な導電体によって形成されてもよい。
【0069】
実施形態2のアクチュエータ1では、連結部材113,114が導電体によって形成されるので、第1フレキシブル電極10と第2ベース電極40とは同電位になり、第2フレキシブル電極30と第3ベース電極60とは同電位になる。これにより、実施形態2のアクチュエータ1は、第1駆動回路70、第2駆動回路80及び第3駆動回路90を、駆動回路100に統合することができる。
【0070】
駆動回路100は、第1駆動回路70の電源71a,71bと同様に構成される電源101a,101bと、駆動回路100の各構成要素とフレキシブル電極2及びベース電極3とを接続する配線102a,102bとを含む。駆動回路100は、第1駆動回路70のスイッチ73a~76bと同様に構成されるスイッチ103a~108bと、第1駆動回路70の制御部77と同様に構成される制御部109とを含む。
【0071】
第1フレキシブル電極10及び第3フレキシブル電極50のそれぞれは、配線102aによって、電源101aの正極及び負極の一方に接続されると共に、フレームグラウンドに接続される。第2フレキシブル電極30は、配線102aによって、電源101aの正極及び負極の他方に接続されると共に、フレームグラウンドに接続される。スイッチ103aは、第1フレキシブル電極10と電源101aとの間に接続される。スイッチ104aは、第1フレキシブル電極10とフレームグラウンドとの間に接続される。スイッチ105aは、第3フレキシブル電極50と電源101aとの間に接続される。スイッチ106aは、第3フレキシブル電極50とフレームグラウンドとの間に接続される。スイッチ107aは、第2フレキシブル電極30と電源101aとの間に接続される。スイッチ108aは、第2フレキシブル電極30とフレームグラウンドとの間に接続される。
【0072】
また、第1フレキシブル電極10及び第3フレキシブル電極50のそれぞれは、配線102bによって、電源101bの正極及び負極の一方に接続されると共に、フレームグラウンドに接続される。第2フレキシブル電極30は、配線102bによって、電源101bの正極及び負極の他方に接続されると共に、フレームグラウンドに接続される。スイッチ103bは、第1フレキシブル電極10と電源101bとの間に接続される。スイッチ104bは、第1フレキシブル電極10とフレームグラウンドとの間に接続される。スイッチ105bは、第3フレキシブル電極50と電源101bとの間に接続される。スイッチ106bは、第3フレキシブル電極50とフレームグラウンドとの間に接続される。スイッチ107bは、第2フレキシブル電極30と電源101bとの間に接続される。スイッチ108bは、第2フレキシブル電極30とフレームグラウンドとの間に接続される。
【0073】
駆動回路100において、スイッチ103a,105a,107aがON状態に制御され、スイッチ104a,106a,108aがOFF状態に制御されると、第1フレキシブル電極10及び第3フレキシブル電極50のそれぞれと第2フレキシブル電極30との間には電圧が印加される。上記のように、第1フレキシブル電極10と第2ベース電極40とは同電位であり、第2フレキシブル電極30と第3ベース電極60とは同電位である。よって、第2フレキシブル電極30と第2ベース電極40との間には電圧が印加され、第3フレキシブル電極50と第3ベース電極60との間には電圧が印加される。第2フレキシブル電極30は、第2フレキシブル電極30と第2ベース電極40との間に発生するクーロン力によって、第2ベース電極40の一方の電極部45aの対向面41に接近するように変形する。第3フレキシブル電極50は、第3フレキシブル電極50と第3ベース電極60との間に発生するクーロン力によって、第3ベース電極60の一方の電極部65aの対向面61に接近するように変形する。これにより、出力部材120は、
図3に示す矢印M1と同じ方向に、軸Aに対して傾斜するように変位する。
【0074】
その後、駆動回路100において、スイッチ103a,105a,107aがOFF態に制御され、スイッチ104a,106a,108aがON状態に制御されると、第1フレキシブル電極10及び第3フレキシブル電極50のそれぞれと第2フレキシブル電極30との間において電圧の印加が停止される。第2フレキシブル電極30及び第3フレキシブル電極50のそれぞれは、原形に復元する。これにより、出力部材120は、初期位置に復元する。
【0075】
その後、駆動回路100において、スイッチ103b~108bが上記のスイッチ103a~108aと同様に制御されると、出力部材120は、
図3に示す矢印M1と反対方向に、軸Aに対して傾斜するように変位した後に初期位置に復元する。駆動回路100が、上記のように電圧の印加と停止とを繰り返すことによって、実施形態2のアクチュエータ1は、実施形態1と同様に、軸Aに交差する方向に出力部材120を揺動させる動作を実現することができる。
【0076】
以上のように、実施形態2のアクチュエータ1は、連結部材113,114が導電体によって形成されることによって、実施形態1と同様に複雑な動作を実現しつつ、駆動回路100の構成を実施形態1よりも簡素化することができる。よって、実施形態2のアクチュエータ1は、複雑な動作を容易に実現することができる。
【0077】
なお、
図7に示す駆動回路100では、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20との間に電圧が印加されない。しかしながら、駆動回路100は、例えば、第1ベース電極20の一方の電極部25aを、配線102aによって、電源101aの正極及び負極の他方にスイッチを介して接続すると共に、フレームグラウンドにスイッチを介して接続することができる。同様に、駆動回路100は、例えば、第1ベース電極20の他方の電極部25bを、配線102bによって、電源101bの正極及び負極の他方にスイッチを介して接続すると共に、フレームグラウンドにスイッチを介して接続することができる。これにより、実施形態2のアクチュエータ1は、第1フレキシブル電極10と第1ベース電極20との間に電圧を印加することができ、第1フレキシブル電極10を一方の電極部25a又は他方の電極部25bの対向面21に接近するよう変形させることができる。これにより、実施形態2のアクチュエータ1は、出力部材120の変位量を大きくすることができ、高出力化を図ることができる。
【0078】
[実施形態3]
図8~
図9を用いて、実施形態3のアクチュエータ1について説明する。実施形態3のアクチュエータ1において、従前の実施形態と同様の構成及び動作については、その説明を省略する。
図8は、実施形態3のアクチュエータ1の構成を説明する図である。
図8は、
図2に対応する図である。
【0079】
実施形態3のアクチュエータ1では、ベース電極3が、3以上の複数の電極部に分割される。分割された電極部の数は、任意である。例えば、実施形態3の第1ベース電極20は、
図8に示すように、複数の電極部25c~25fに分割されてもよい。
【0080】
複数の電極部25c~25fは、実施形態1と同様に、絶縁部26によって互いに絶縁されている。複数の電極部25c~25fには、第1フレキシブル電極10との間において互いに独立して電圧が印加される。複数の電極部25c~25fは、軸Aの周回方向に沿って配置される。複数の電極部25c~25fは、第1ベース電極20を、軸Aの周回方向に等間隔に分割して形成されてもよい。複数の電極部25c~25fには、第1フレキシブル電極10との間に印加される電圧が、軸Aの周回方向に沿って順次印加される。実施形態3の第2ベース電極40及び第3ベース電極60も、実施形態3の第1ベース電極20と同様に構成される。
【0081】
図9は、
図8に示すフレキシブル電極2とベース電極3との間に電圧が印加された場合のアクチュエータ1を説明する図である。
【0082】
図9の矢印S1のように、第1ベース電極20を構成する複数の電極部25c~25fに対して電圧が軸Aの周回方向に沿って順次印加されると、第1フレキシブル電極10は、複数の電極部25c~25fのそれぞれの対向面21に接近するように順次変形する。第2ベース電極40及び第3ベース電極60のそれぞれを構成する複数の電極部に対しても電極部25c~25fと同様に電圧が順次印加されると、第2フレキシブル電極30及び第3フレキシブル電極50のそれぞれは、第1フレキシブル電極10と同様に順次変形する。
【0083】
駆動回路70~90は、ベース電極3を構成する複数の電極部に対して軸Aの周回方向に沿って順次印加される電圧を、複数組C1~C3のそれぞれに対して同一方向に印加することができる。これにより、出力部材120は、
図9の矢印M2のように、軸Aの周回方向に旋回するように変位する。
【0084】
もっとも、駆動回路70~90は、ベース電極3を構成する複数の電極部に対して軸Aの周回方向に沿って順次印加される電圧を、複数組C1~C3の全てに同時に印加する必要はなく、組C1~C3毎に印加タイミングを分けて印加することができる。例えば、駆動回路70~90は、出力部材120から最も遠い第1組C1から出力部材120が取り付けられた第3組C3に向かうような順に当該電圧を印加してもよい。これにより、アクチュエータ1は、出力部材120をより滑らかに旋回させることができる。
【0085】
以上のように、実施形態3のアクチュエータ1は、ベース電極3を構成する複数の電極部に対して電圧が軸Aの周回方向に沿って順次印加されることによって、出力部材120を軸Aの周回方向に旋回させる旋回動作を実現することができる。よって、実施形態3のアクチュエータ1は、出力部材120の複雑な動作を実現することができる。
【0086】
[実施形態4]
図10~
図11を用いて、実施形態4のアクチュエータ1について説明する。実施形態4のアクチュエータ1において、従前の実施形態と同様の構成及び動作については、その説明を省略する。
図10は、実施形態4のアクチュエータ1の構成を説明する図である。
【0087】
実施形態4のアクチュエータ1は、隣り合う組同士の一方の組のフレキシブル電極2と他方の組のフレキシブル電極2とが、互いに対向して同一軸A上に配置され、且つ、連結部材115によって連結される。例えば、実施形態4のアクチュエータ1では、
図10に示すように、第1組C1の第1フレキシブル電極10と、第2組C2の第2フレキシブル電極30とは、間隔を空けて互いに対向して同一軸A上に配置される。第1組C1の第1フレキシブル電極10と、第2組C2の第2フレキシブル電極30とは、当該間隔に配置された連結部材115によって連結される。出力部材120は、軸Aが延びる方向において第2ベース電極40の対向面41とは反対側の面に取り付けられる。
【0088】
実施形態4の第1ベース電極20は、実施形態3と同様に、軸Aの周回方向に沿って配置された複数の電極部25c~25fに分割される。複数の電極部25c~25fには、第1フレキシブル電極10との間に印加される電圧が、軸Aの周回方向に沿って順次印加される。実施形態4の第2ベース電極40も、実施形態4の第1ベース電極20と同様に構成される。
【0089】
連結部材115は、絶縁体によって形成される。好ましくは、連結部材115は、絶縁ゴム又は絶縁ばね等の弾性変形可能な絶縁体によって形成されてもよい。
【0090】
図11は、
図10に示すフレキシブル電極2とベース電極3との間に電圧が印加された場合のアクチュエータ1を説明する図である。
【0091】
図11の矢印S2のように、第1ベース電極20を構成する複数の電極部25c~25fに対して電圧が軸Aの周回方向に沿って順次印加されると、第1フレキシブル電極10は、複数の電極部25c~25fのそれぞれの対向面21に接近するように順次変形する。これにより、第2組C2の第2フレキシブル電極30及び第2ベース電極40は、
図11の矢印M4のように、軸Aの周回方向に沿って旋回しようとする。
【0092】
同時に、
図11の矢印S3のように、第2ベース電極40を構成する複数の電極部に対して電圧が軸Aの周回方向に沿って順次印加されると、第2フレキシブル電極30は、第2ベース電極40を構成する複数の電極部のそれぞれの対向面41に接近するように順次変形する。これにより、第1組C1の第1フレキシブル電極10及び第1ベース電極20は、
図11の矢印M3のように、軸Aの周回方向に沿って旋回しようとする。
【0093】
ここで、
図11に示すように、第1ベース電極20における電圧の印加順序(矢印S2)と、第2ベース電極40における電圧の印加順序(矢印S3)とは、軸Aの周回方向に沿って互いに逆方向である。この場合、第1フレキシブル電極10の旋回方向(矢印M3)と第2フレキシブル電極30の旋回方向(矢印M4)とが逆方向であるので、第1フレキシブル電極10と第2フレキシブル電極30とは、軸Aを中心軸としてねじれるように変形する。
【0094】
すなわち、駆動回路70,80は、ベース電極3を構成する複数の電極部に対して軸Aの周回方向に沿って順次印加される電圧を、複数組C1,C2のそれぞれに対して逆方向に印加する。この際、駆動回路70,80は、当該電圧を複数組C1,C2のそれぞれに対して同一の大きさで同時に印加する。これにより、実施形態4のアクチュエータ1は、軸Aを中心軸としたねじり動作を実現することができる。このねじり動作において、出力部材120が取り付けられた第2ベース電極40は、軸Aの周回方向に自転する。出力部材120は、第2ベース電極40の自転に従って、重心の移動を伴わずに軸Aの周回方向に回転するように変位する。
【0095】
以上のように、実施形態4のアクチュエータ1は、隣り合う組同士の一方の組のフレキシブル電極2と他方の組のフレキシブル電極2とが、互いに対向して配置され、且つ、絶縁体によって形成された連結部材115によって連結される。これにより、実施形態4のアクチュエータ1は、軸Aを中心軸としたねじり動作を実現することができる。よって、実施形態4のアクチュエータ1は、出力部材120の複雑な動作を実現することができる。
【0096】
更に、実施形態4のアクチュエータ1は、連結部材115が弾性変形可能な絶縁体によって形成される場合、出力部材120の変位量を増大させることができると共に、出力部材120を初期位置に復元させ易くすることができるので、高出力化を図ることができる。
【0097】
なお、
図10及び
図11に示すアクチュエータ1では、第3組C3の第3フレキシブル電極50及び第3ベース電極60が省略されている。しかしながら、実施形態4のアクチュエータ1は、連結部材111と同様の連結部材を介して第3フレキシブル電極50を第1ベース電極20に連結することによって、第3組C3を第1組C1に連結することができる。
【0098】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0099】
1…アクチュエータ、2…フレキシブル電極、3…ベース電極、10…第1フレキシブル電極、20…第1ベース電極、21…対向面、22…絶縁層、25a~25f…電極部、30…第2フレキシブル電極、40…第2ベース電極、41…対向面、42…絶縁層、50…第3フレキシブル電極、60…第3ベース電極、61…対向面、62…絶縁層、111~115…連結部材、120…出力部材、A…軸