(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ランプ制御装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20240730BHJP
B60Q 1/02 20060101ALI20240730BHJP
B60Q 1/14 20060101ALI20240730BHJP
B60Q 11/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
B60Q1/02 C
B60Q1/14 A
B60Q11/00 610B
B60Q11/00 615A
B60Q11/00 650Z
(21)【出願番号】P 2021069708
(22)【出願日】2021-04-16
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生田 哲也
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-309511(JP,A)
【文献】特開2020-172123(JP,A)
【文献】特開2011-011593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/00-1/56
B60Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方に光を照射可能なヘッドランプと、
前記自車両の前方を撮像して得られた画像データに基づいて画像情報を取得し、当該画像情報及び前記自車両の速度に基づいて前記ヘッドランプの配光を変更する配光制御を実行可能な制御ユニットと、
を備えるランプ制御装置において、
前記制御ユニットは、
読み書き可能な揮発性メモリと、読み書き可能な不揮発性メモリと、を含み、
前記配光制御の実行中は、前記画像情報と、前記自車両の速度を含む車両状態情報と、当該配光制御の制御内容と、を含む配光制御情報を所定の記憶期間だけ前記揮発性メモリに記憶し、
前記配光制御の実行中に前記自車両の運転者により当該配光制御をキャンセル又は中断する操作である特定操作が行われた場合、
少なくとも、前記特定操作が行われた時点から、前記記憶期間以下の所定の第1期間だけ過去の時点まで、の前記配光制御情報を前記揮発性メモリから前記不揮発性メモリに移動して記録する、
ように構成された、
ランプ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のランプ制御装置において、
前記制御ユニットは、
前記配光制御の実行中に前記特定操作が行われた場合、更に、前記特定操作が行われた時点から、所定の第2期間だけ将来の時点まで、の前記配光制御情報を前記不揮発性メモリに記録する、
ように構成された、
ランプ制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のランプ制御装置において、
前記制御ユニットは、
前記配光制御としてオートハイビーム制御又はアダプティブハイビーム制御を実行する、
ように構成された、
ランプ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配光制御(車両のヘッドランプの配光を変更する制御)の不作動及び誤作動を含む配光制御情報を記録可能なランプ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配光制御を実行可能なランプ制御装置が知られている。例えば、特許文献1には、ヘッドランプの配光をロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとの間で自動的に切り替える制御を配光制御として実行するランプ制御装置(車両用灯具システム)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ランプ制御装置は、車両の前方を撮像する撮像装置を備えており、当該撮像装置により撮像された撮像データに基づいて取得される画像情報及び車両の速度に基づいて配光制御を行う。配光制御が適切に作動することにより、車両の運転者が手動でヘッドランプの配光を切り替える必要がなくなり利便性が向上する。加えて、夜間走行時の視認性が向上し、走行安全性が高くなる。
【0005】
しかしながら、現状の配光制御は運転者の期待通りに作動しないことが少なからずあり、配光制御の更なる性能向上(別言すれば、配光制御がより期待通りに作動すること)が要求されている。この要求に応えるため、係るランプ制御装置は、例えば、配光制御によりヘッドランプの配光が変更された場合、変更された時点を含む所定の期間に亘って配光制御に関連する情報を記録するように構成され得る。記録された情報を解析して配光制御の性能向上に活用するためである。
【0006】
しかしながら、ヘッドランプの配光は配光制御により頻繁に変更されるため、上記の構成では上記情報が頻繁に記録されることになり、記録容量の確保が困難となる。加えて、記録された情報には、配光制御が正しく作動したとき(正作動時)の情報と配光制御が誤って作動したとき(誤作動時)の情報が混在して含まれているため、誤作動時の情報を抽出することが難しい。更に、上記の構成では、運転者が配光制御の作動を期待しているにも関わらず配光制御が作動しないとき(不作動時)は情報自体が記録されないため、不作動時の情報を取得することができない。このため、このようなランプ制御装置では、配光制御の性能向上に寄与し得る情報を適切に取得することができない。
【0007】
本発明は、上述した問題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、配光制御の不作動及び誤作動を含む配光制御情報を適切に記録可能なランプ制御装置を提供することにある。
【0008】
本発明によるランプ制御装置(以下、「本発明装置」と称する。)は、
自車両の前方に光を照射可能なヘッドランプ(31)と、
前記自車両の前方を撮像して得られた画像データに基づいて画像情報を取得し、当該画像情報及び前記自車両の速度に基づいて前記ヘッドランプ(31)の配光を変更する配光制御を実行可能な制御ユニット(11、30)と、
を備える。
前記制御ユニット(11、30)は、
読み書き可能な揮発性メモリと、読み書き可能な不揮発性メモリと、を含み、
前記配光制御の実行中は、前記画像情報と、前記自車両の速度を含む車両状態情報と、当該配光制御の制御内容と、を含む配光制御情報を所定の記憶期間だけ前記揮発性メモリに記憶し(ステップ620)、
前記配光制御の実行中に前記自車両の運転者により当該配光制御をキャンセル又は中断する操作である特定操作が行われた場合(ステップ520:Yes)、
少なくとも、前記特定操作が行われた時点(時点t0)から、前記記憶期間以下の所定の第1期間だけ過去の時点(時点tp)まで、の前記配光制御情報を前記揮発性メモリから前記不揮発性メモリに移動して記録する(ステップ640)、
ように構成されている。
【0009】
配光制御が運転者の期待通りに作動しない場合、通常、運転者が配光制御をキャンセル又は中断する何らかの操作を行うことが考えられる。別言すれば、配光制御の実行中に運転者により当該制御をキャンセル又は中断する操作が行われた場合、当該操作の直前に配光制御が不作動又は誤作動した蓋然性が極めて高い。そこで、本発明装置は、配光制御の実行中に運転者により当該制御をキャンセル又は中断する操作である特定操作が行われた場合、少なくとも、当該特定操作が行われた時点から、第1期間だけ過去の時点まで、の配光制御情報を不揮発性メモリに記録するように構成されている。この構成によれば、記録容量を超過することなく所望の情報(配光制御の不作動及び誤作動を含む情報)を効率的に記録することができる。即ち、配光制御の不作動及び誤作動を含む配光制御情報を適切に記録することができる。
【0010】
本発明の一側面では、
前記制御ユニット(11、30)は、
前記配光制御の実行中に前記特定操作が行われた場合(ステップ520:Yes)、更に、前記特定操作が行われた時点(時点t0)から、所定の第2期間だけ将来の時点(時点tf)まで、の前記配光制御情報を前記不揮発性メモリに記録する(ステップ640)、
ように構成されている。
【0011】
不揮発性メモリに記録された配光制御情報は、解析されて配光制御の更なる性能向上に活用される。このため、特定操作が行われた時点に対して過去の情報だけではなく、当該時点に対して将来の情報をも配光制御情報として記録することにより、配光制御の不作動及び誤作動に関するより多くの情報を収集することが可能となり、配光制御の更なる性能向上に寄与することができる。
【0012】
本発明の一側面では、
前記制御ユニット(11、30)は、
前記配光制御としてオートハイビーム制御又はアダプティブハイビーム制御を実行する、
ように構成されている。
【0013】
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るランプ制御装置(本実施装置)の概略構成図である。
【
図2A】ハイビーム時不作動状況を説明するための図である。
【
図2B】ハイビーム時誤作動状況を説明するための図である。
【
図3A】ロービーム時不作動状況を説明するための図である。
【
図3B】ロービーム時誤作動状況を説明するための図である。
【
図4】本実施装置のランプ制御ECUのCPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
【
図5】ランプ制御ECUのCPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
【
図6】本実施装置のカメラECUのCPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(構成)
以下、本発明の実施形態に係るランプ制御装置(以下、「本実施装置」とも称する。)について図面を参照しながら説明する。本実施装置は、車両に搭載される。
図1に示すように、本実施装置は、カメラ10、車両状態センサ20、並びに、ランプ制御ECU30と、これに接続されたヘッドランプ31、オートハイビームスイッチ32、及び、ウィンカーレバー33と、を備える。カメラ10は、カメラECU11を備える。以下では、カメラECU11、及び、ランプ制御ECU30を、それぞれ単に「ECU11」及び「ECU30」と称する場合がある。
【0016】
これらのECUは、マイクロコンピュータを主要部として備え、CAN(Controller Area Network)100を介して相互に情報を送信可能及び受信可能に接続されている。ECUは、Electronic Control Unitの略である。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM(読み書き可能な揮発性メモリ)、インターフェース(I/F)、及び、読み書き可能な不揮発性メモリ等を含む(ECU30ではこれらの図示は省略している。)。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。なお、これらのECUは、処理能力に応じて、幾つか又は全部が一つのECUに統合されてもよい。以下では、本実施装置が搭載された車両を「自車両」と称する。
【0017】
カメラ10は、自車両のルームミラー(インナーミラー/リアビューミラー)の裏面に設置されており、所定の時間が経過する毎に自車両の前方を撮像する。ECU11は、カメラ10によって撮像して得られた画像データに基づいて、自車両の周囲に存在する立体物を認識(検出)し、自車両と立体物との相対関係を演算する。ここで、「自車両と或る物標との相対関係」とは、自車両から当該物標までの距離、自車両に対する当該物標の方位及び相対速度等を含む。立体物は、移動物(例えば、他車両及び歩行者)及び静止物(例えば、街路灯、看板、建物、信号機、道路標識及びガードレール)を含む。なお、移動物は、移動可能な立体物を意味しており、移動中の立体物のみを意味するものではない。
【0018】
また、ECU11は、画像データに基づいて、自車両の前方に延在する区画線を認識(検出)する。ECU11は、認識した区画線に基づいて車線(隣接する2つの区画線の間の領域)の形状を演算する。
【0019】
加えて、ECU11は、画像データに基づいて、自車両の周囲に存在する光源を認識(検出)し、自車両と光源との相対関係及び光源の種類を演算する。
光源は、他車両の光と、周囲の光と、を含む(以下、両者をそれぞれ「他車両光」及び「周囲光」と称する。)。他車両光は、典型的には、対向車のヘッドランプ及び先行車のテールランプである。周囲光は、典型的には、街路灯及び建物の光である。
光源の種類は、光源の速度、光源と立体物との位置関係及び車線形状等に基づいて判別され得る。例えば、或る光源が或る他車両と略同一の速度で移動しており、当該光源と当該他車両とが略同一の位置に位置している場合、当該光源は他車両光と判別され得る。一方、或る光源の速度がゼロであり、車線の外部に位置している場合、当該光源は周囲光と判別され得る。
【0020】
更に、ECU11は、画像データに基づいて、周知の方法により自車両の周囲の照度である環境照度を演算する。例えば、ECU11は、画像データから撮像画像を生成し、撮像画像を構成する各画素の輝度値を照度に換算することにより環境照度を演算する。環境照度は、後述するオートハイビーム制御の作動条件が成立しているか否かを判定する際に用いられる(後述)。
【0021】
ECU11は、演算して得られた自車両と立体物との相対関係、車線形状、自車両と光源との相対関係及び光源の種類、並びに、環境照度、を含む情報を画像情報として取得する。
【0022】
車両状態センサ20は、車両状態を表す信号を発生する複数種類のセンサであり、本実施形態では、車速センサ、操舵角センサ、及び、ヨーレートセンサを含む。ECU11は、車両状態センサ20が発生した信号を所定の時間が経過する毎に取得し、取得した信号に基づいて自車両の速度(車速)、操舵角及びヨーレートを演算する。ECU11は、演算して得られた車速、操舵角及びヨーレートを含む情報を車両状態情報として取得する。
【0023】
ECU30は、オートハイビーム制御を実行可能となっている。オートハイビーム(Auto High-beam)制御は、画像情報及び車速に基づいて、ヘッドランプ31の配光をロービームとハイビームとの間で自動的に切り替える制御である。以下、オートハイビーム制御を「AHB制御」とも称する。AHB制御については後で詳述する。なお、AHB制御は、「配光制御」の一例に相当する。
【0024】
ヘッドランプ31は、自車両の左前端部に設けられた左ヘッドランプと、自車両の右前端部に設けられた右ヘッドランプと、を含む。左ヘッドランプ及び右ヘッドランプは、それぞれ、ロービームとして機能するすれ違い用前照灯と、ハイビームとして機能する走行用前照灯と、を含む。以下では、左ヘッドランプのロービームと右ヘッドランプのロービームを「ヘッドランプ31のロービーム」、又は、単に「ロービーム」と称し、左ヘッドランプのハイビームと右ヘッドランプのハイビームを「ヘッドランプ31のハイビーム」、又は、単に「ハイビーム」と称する。ヘッドランプ31のロービーム及びハイビームは、何れも自車両の前方に光を照射可能となっているが、自車両の進行方向における光の照射範囲は、ハイビーム(例えば、100[m])のほうがロービーム(例えば、40[m])よりも長くされている。
【0025】
オートハイビームスイッチ(AHBSW)31は、AHB制御を作動可能状態にするためのスイッチである。AHBSW32は、運転席の近傍に設けられ、自車両の運転者により操作される。AHBSW32は、オン状態に設定されると、その設定が解除されるまでオン信号を発生する。AHBSW32は、オフ状態に設定されると、その設定が解除されるまでオフ信号を発生する。ECU30は、AHBSW32が発生した信号を所定の期間が経過する毎に取得する。ECU30は、AHBSW32からオン信号を取得した場合、AHB制御が作動可能であると判定し、オフ信号を取得した場合、AHB制御が作動不可能であると判定する。
【0026】
ウィンカーレバー33は、運転者により操作される操作器であり、ヘッドランプ31の配光を手動で切り替えたり、パッシング操作をしたりするために用いられる。ウィンカーレバー33は、中立位置と、中立位置に対して前方の第1位置と、中立位置に対して後方の第2位置と、に移動可能となっている。中立位置に位置するウィンカーレバー33は、外力が加えられていない状態では中立位置に留まるようになっている。この状態から前方に外力が加えられると、ウィンカーレバー33は第1位置に移動し、外力が加えられなくても第1位置に留まるようになっている。第1位置に位置するウィンカーレバー33に後方に(中立位置側に)外力が加えられると、ウィンカーレバー33は中立位置に戻るようになっている。一方、中立位置に位置している状態から後方に外力が加えられると、ウィンカーレバー33は第2位置に移動するが、外力が加えられなくなると直ちに中立位置に戻るようになっている。別言すれば、第2位置に位置するウィンカーレバー33は、後方に外力を加え続ける限り、第2位置に留まるようになっている。
【0027】
ウィンカーレバー33は、中立位置に位置している期間中、ロービーム信号を発生する。ロービーム信号は、ヘッドランプ31の配光をロービームに切り替える又は維持することを表す信号である。ウィンカーレバー33は、第1位置に位置している期間中、第1ハイビーム信号を発生する。第1ハイビーム信号は、ヘッドランプ31の配光をハイビームに切り替える又は維持することを表す信号である。ウィンカーレバー33は、第2位置に位置している期間中、第2ハイビーム信号を発生する。第2ハイビーム信号は、ヘッドランプ31の配光をハイビームに切り替える又は維持することを表す信号である。
【0028】
(作動の詳細)
続いて、ECU30及びECU11の作動の詳細について説明する。ECU30は、ウィンカーレバー33が発生した信号を所定の期間が経過する毎に取得する。ECU30は、AHB制御を実行していない期間中において、ウィンカーレバー33からロービーム信号を取得した場合にはヘッドランプ31の配光をロービームに切り替え、第1又は第2ハイビーム信号を取得した場合にはヘッドランプ31の配光をハイビームに切り替える。この構成によれば、運転者は、ウィンカーレバー33を操作することにより、ヘッドランプ31の配光を手動で切り替えることができる。なお、ウィンカーレバー33に後方の外力を一時的に加える(即ち、ウィンカーレバー33を一時的に第2位置に位置させて第2ハイビーム信号を発生させる)ことにより、いわゆるパッシング操作が実現される。
【0029】
ECU30は、AHB作動条件が成立した場合、AHB制御を実行する。AHB作動条件は、以下の条件1乃至条件3が全て成立した場合に成立する。
(条件1)環境照度が低い。
(条件2)AHBSW32がオン状態に設定されている。
(条件3)ウィンカーレバー33が中立位置に位置している。
【0030】
ECU30は、条件1の成立可否を、ECU11から画像情報を取得することにより判定する。具体的には、ECU30は、画像情報に含まれる環境照度が所定の照度閾値以下の場合、条件1が成立していると判定し、環境照度が照度閾値を超える場合、条件1が成立していないと判定する。また、ECU30は、AHBSW32から取得される信号がオン信号の場合、条件2が成立していると判定し、当該取得される信号がオフ信号の場合、条件2が成立していないと判定する。更に、ECU30は、ウィンカーレバー33から取得される信号がロービーム信号の場合、条件3が成立していると判定し、当該取得される信号が第1又は第2ハイビーム信号の場合、条件3が成立していないと判定する。
【0031】
ECU30は、AHB作動条件の成立下でハイビーム条件が成立した場合、ヘッドランプ31の配光を自動的にハイビームに切り替える制御をAHB制御として実行する。ハイビーム条件は、以下の条件4乃至条件6が全て成立した場合に成立する。
(条件4)自車両の前方に他車両光がない。
(条件5)自車両の前方の周囲光が少ない。
(条件6)車速が大きい。
なお、AHB作動条件の条件3から明らかなように、AHB制御の実行中はウィンカーレバー33は中立位置に留まっている。別言すれば、AHB制御によりヘッドランプ31の配光がハイビームに切り替えられても、ウィンカーレバー33は第1位置には移動しない。
【0032】
ECU30は、条件4及び条件5の成立可否をECU11から画像情報を取得することにより判定する。具体的には、ECU30は、画像情報に基づいて他車両光が検出されていないと判定した場合、条件4が成立していると判定し、他車両光が検出されていると判定した場合、条件4が成立していないと判定する。また、ECU30は、画像情報に基づいて周囲光の個数が所定の個数閾値以下であり、且つ、光の強度が所定の強度閾値を超える周囲光が1つも検出されていないと判定した場合、条件5が成立していると判定し、周囲光の個数が個数閾値を超えている、及び/又は、光の強度が強度閾値を超える周囲光が1つ以上検出されていると判定した場合、条件5が成立していないと判定する。但し、条件5の内容はこれに限られず、周囲光が少ないと推定される任意の内容が採用され得る。更に、ECU30は、条件6の成立可否を、車両状態センサ20から車速を取得することにより判定する。具体的には、ECU30は、車速が所定の第1車速閾値(例えば、30[km/h])以上である場合、条件6が成立していると判定し、車速が第1車速閾値未満である場合、条件6が成立していないと判定する。
【0033】
一方、ECU30は、AHB作動条件の成立下でロービーム条件が成立した場合、ヘッドランプ31の配光を自動的にロービームに切り替える制御をAHB制御として実行する。ロービーム条件は以下の条件7乃至条件9の何れか1つが成立した場合に成立する。
(条件7)自車両の前方に他車両光がある。
(条件8)自車両の前方の周囲光が多い。
(条件9)車速が小さい。
【0034】
ECU30は、条件4が成立していない場合、条件7が成立していると判定し、条件4が成立している場合、条件7が成立していないと判定する。また、ECU30は、条件5が成立していない場合、条件8が成立していると判定し、条件5が成立している場合、条件8が成立していないと判定する。更に、ECU30は、車速が所定の第2車速閾値(例えば、25[km/h])以下である場合、条件9が成立していると判定し、車速が第2車速閾値を超える場合、条件9が成立していないと判定する。
【0035】
但し、AHB制御を開始してからハイビーム条件が成立するまでは、ロービーム条件が成立していなくても、ECU30は、ヘッドランプ31の配光をロービームに維持する。また、一旦ハイビーム条件が成立すると、その後、ハイビーム条件が不成立になっても、ロービーム条件が成立するまでは、ECU30は、ヘッドランプ31の配光をハイビームに維持する。
【0036】
ECU11は、ECU30から、AHB制御を実行中であるか否かを表す信号を取得し、当該信号に基づいてAHB制御が実行中であるか否かを判定する。そして、AHB制御が実行中であると判定した場合、ECU30から、AHB制御の制御内容(即ち、ヘッドランプ31の配光がロービーム又はハイビームの何れであるか)を表す信号を受信する。ECU11は、AHB制御の実行中、画像情報と、車両状態情報と、AHB制御の制御内容と、を含む情報をAHB制御情報として自身のRAMに所定の記憶期間だけ記憶(格納)する。このとき、ECU11は、AHB制御情報を現在時刻と関連付けてRAMに記憶してもよい。ECU11は、記憶期間が経過した時点でAHB制御情報をRAMから消去する。本実施形態では、記憶期間は6秒に設定されているが、この構成に限られない。なお、AHB制御情報は、「配光制御情報」の一例に相当する。
【0037】
ここで、AHB制御は、運転者の期待通りに作動しないことがある。このため、従来から、AHB制御が期待通りに作動しなかったときの情報を取得して解析し、これによりAHB制御の性能を更に向上させることが要求されていた。しかしながら、従来のランプ制御装置では、そのような情報を適切に取得することができなかった。
【0038】
ところで、AHB制御が期待通りに作動しない場合、通常、運転者がAHB制御をキャンセル又は中断する何らかの操作を行うことが考えられる。別言すれば、AHB制御の実行中に運転者により当該制御をキャンセル又は中断する操作が行われた場合、当該操作の直前にAHB制御が不作動又は誤作動した蓋然性が極めて高い。そこで、本実施装置は、AHB制御の実行中に運転者により当該制御をキャンセル又は中断する操作である特定操作が行われた場合、当該特定操作が行われた時点を含む所定の期間におけるAHB制御情報を不揮発性メモリに記録(格納)するように構成されている。この構成によれば、記録容量を超過することなく所望の情報(AHB制御の不作動及び誤作動を含む情報)を効率的に記録することができる。
【0039】
具体的には、ECU30は、AHB制御の実行中に運転者により以下の操作1乃至操作3の何れかが行われた場合、特定操作が行われたと判定する。
(操作1)AHBSW32をオフする操作。
(操作2)ウィンカーレバー33を中立位置から第1位置に移動させる操作。
(操作3)パッシング操作。
【0040】
ECU30は、AHBSW32から取得される信号がオン信号からオフ信号に変化した場合、運転者により操作1が行われたと判定する。ECU30は、ウィンカーレバー33から取得される信号がロービーム信号から第1ハイビーム信号に変化した場合、運転者により操作2が行われたと判定する。ECU30は、ウィンカーレバー33から取得される信号がロービーム信号から第2ハイビーム信号に(一時的に)変化した場合、運転者により操作3が行われたと判定する。以下、
図2A乃至
図3Bを参照して詳細に説明する。
【0041】
図2Aは、AHB制御によりヘッドランプ31の配光がハイビームに維持されている最中に不作動が生じた状況(以下、「ハイビーム時不作動状況」とも称する。)を示す図である。この例では、運転者は、時点taにてAHB制御によりヘッドランプ31の配光が自動的にロービームに切り替えられることを期待したものの、実際には切り替えが行われずにハイビームが継続したため、時点t0にてAHBSW32をオフする操作(操作1)を行っている。AHBSW32をオフする(操作1を行う)と、条件2が成立しなくなり、AHB作動条件が不成立となるため、AHB制御がキャンセルされる。このとき、ウィンカーレバー33は中立位置に位置しているため、時点t0にてヘッドランプ31の配光はロービームに切り替えられる(
図2A参照)。
【0042】
ECU30は、時点t0にて特定操作(
図2Aの例では、操作1)が行われたと判定すると、直ちに(即ち、時点t0にて)ECU11にトリガ信号を送信する。ECU11は、時点t0にてトリガ信号を受信すると、時点tpから時点tfまでの期間におけるAHB制御情報を自身の不揮発性メモリに記録する。ここで、時点tpは、時点t0から所定の第1期間だけ過去の時点である。第1期間は、記憶期間以下の任意の期間に設定され得る期間であり、本実施形態では、記憶期間と等しい期間(6秒)に設定されている。このため、トリガ信号を受信した時点(時点t0)では、時点tpから時点t0までのAHB制御情報はECU11のRAMに記憶されている。従って、ECU11は、トリガ信号を受信すると、時点tpから時点t0までのAHB制御情報をRAMから不揮発性メモリに移動する。また、時点tfは、時点t0から所定の第2期間だけ将来の時点である。本実施形態では、第2期間は1.2秒に設定されているが、この構成に限られない。ECU11は、時点t0にてトリガ信号を受信すると、その時点から第2期間が経過する時点(時点tf)までの期間は、RAMに格納されるAHB制御情報を不揮発性メモリに移動する。これにより、時点tpから時点tfまでの期間(=第1期間+第2期間)におけるAHB制御情報が不揮発性メモリに記録される。以下では、時点tpから時点tfまでの期間を「特定期間」とも称する。
【0043】
上記説明から明らかなように、ハイビーム時不作動状況においては、操作1は、AHB制御のキャンセルと、ロービームへの切り替えと、を同時に実現できる操作である。
【0044】
なお、
図2Aの例では、時点t0にて特定操作が行われた後も、しばらくの間(例えば、7秒)、特定操作が行われた状態が継続している。これは、ハンチングを防止するための処理であり、実際に特定操作が継続しているわけではない。
図2B乃至
図3Bについても同様である。
【0045】
図2Aでは、特定操作として操作1が行われた状況が例示されているが、特定操作として操作2又は操作3が行われてもよい。
まず、操作2について説明する。時点t0にて操作2が行われると、条件3が成立しなくなり、AHB作動条件が不成立となるため、AHB制御がキャンセルされる。但し、ハイビーム時不作動状況において操作2が行われた場合は、操作2によりウィンカーレバー33が第1位置に移動しているため、AHB制御がキャンセルされても、ヘッドランプ31の配光はハイビームに維持される。従って、運転者は、操作2の終了後、例えばAHBSW32をオフし、且つ、ウィンカーレバー33を中立位置に戻すことにより、ヘッドランプ31の配光を手動でロービームに切り替えることができる。この場合も、ECU30が時点t0にて特定操作として操作2が行われたと判定してECU11にトリガ信号を送信することにより、ECU11が特定期間におけるAHB制御情報を不揮発性メモリに記録するようになっている。
【0046】
上記説明から明らかなように、ハイビーム時不作動状況においては、操作2は、AHB制御をキャンセルする操作ではあるが、ヘッドランプ31の配光をロービームに切り替える操作ではない。しかしながら、本実施装置は、AHB制御の実行中における運転者の介入操作がAHB制御の不作動及び誤作動の発生に付随して行われるという知見に基づき、AHB制御をキャンセル又は中断するために運転者が行うと想定されるあらゆる操作を特定操作として検出することを目的としているため、ハイビーム時不作動状況では、操作2のような操作も特定操作に含めている。
【0047】
続いて、操作3について説明する。ECU30は、AHB制御の実行中に操作3が行われると、操作3の終了後、所定の期間(例えば、5秒)だけAHB制御に優先してヘッドランプ31の配光をロービームに切り替え、当該期間の経過後は(AHB作動条件が成立していれば)AHB制御を再開するように構成されている。このため、時点t0にて操作3が行われると、AHB制御は一時的に中断される。但し、ハイビーム時不作動状況において操作3が行われた場合は、上記期間だけヘッドランプ31の配光がロービームに維持されるものの、その後、ハイビーム条件が成立していれば、AHB制御により配光は再びハイビームに切り替えられる。従って、運転者は、操作3の終了後、例えばAHBSW32をオフすることにより、ヘッドランプ31の配光を手動でロービームに切り替えることができる。この場合も、ECU30が時点t0にて特定操作として操作3が行われたと判定してECU11にトリガ信号を送信することにより、ECU11が特定期間におけるAHB制御情報を不揮発性メモリに記録するようになっている。
【0048】
上記説明から明らかなように、ハイビーム時不作動状況においては、操作3は、AHB制御を中断する操作ではあるが、ヘッドランプ31の配光を完全にロービームに切り替える操作ではない。しかしながら、操作3は、ハイビーム時不作動状況において運転者がAHB制御をキャンセル又は中断するために行うと想定される操作であるため、操作3のような操作も特定操作に含めている。
【0049】
図2Bは、AHB制御によりヘッドランプ31の配光がハイビームに維持されている最中に誤作動が生じた状況(以下、「ハイビーム時誤作動状況」とも称する。)を示す図である。この例では、運転者は、AHB制御によりヘッドランプ31の配光がハイビームに維持されることを期待していたものの、実際には時点tbにて自動的にロービームに切り替わってしまったため、時点t0にてウィンカーレバー33を中立位置から第1位置に移動させる操作(操作2)を行っている。ウィンカーレバー33を第1位置に移動させる(操作2を行う)と、条件3が成立しなくなり、AHB作動条件が不成立となるため、AHB制御がキャンセルされる。このとき、ウィンカーレバー33は第1位置に位置しているため、時点t0にてヘッドランプ31の配光はハイビームに切り替えられる(
図2B参照)。
【0050】
ECU30は、時点t0にて特定操作(
図2Bの例では、操作2)が行われたと判定すると、直ちにECU11にトリガ信号を送信する。ECU11は、時点t0にてトリガ信号を受信すると、時点tpから時点tfまでの期間(特定期間)におけるAHB制御情報を自身の不揮発性メモリに記録する。
【0051】
上記説明から明らかなように、ハイビーム時誤作動状況においては、操作2は、AHB制御のキャンセルと、ハイビームへの切り替えと、を同時に実現できる操作である。
【0052】
図2Bでは、特定操作として操作2が行われた状況が例示されているが、特定操作として操作1又は操作3が行われてもよい。
まず、操作1について説明する。時点t0にて操作1が行われると、条件2が成立しなくなり、AHB作動条件が不成立となるため、AHB制御がキャンセルされる。但し、ハイビーム時誤作動状況において操作1が行われた場合は、ウィンカーレバー33は中立位置に留まっているため、AHB制御がキャンセルされても、ヘッドランプ31の配光はロービームに維持される。従って、運転者は、操作1の終了後、例えばウィンカーレバー33を第1位置に移動させることにより、ヘッドランプ31の配光を手動でハイビームに切り替えることができる。この場合も、ECU30が時点t0にて特定操作として操作1が行われたと判定してECU11にトリガ信号を送信することにより、ECU11が特定期間におけるAHB制御情報を不揮発性メモリに記録するようになっている。
【0053】
上記説明から明らかなように、ハイビーム時誤作動状況においては、操作1は、AHB制御をキャンセルする操作ではあるが、ヘッドランプ31の配光をハイビームに切り替える操作ではない。しかしながら、操作1は、ハイビーム時誤作動状況において運転者がAHB制御をキャンセル又は中断するために行うと想定される操作であるため、操作1のような操作も特定操作に含めている。
【0054】
続いて、操作3について説明する。時点t0にて操作3が行われると、AHB制御は一時的に中断される。ハイビーム時誤作動状況において操作3が行われた場合は、ウィンカーレバー33が外力により第2位置に保持されている期間のみヘッドランプ31の配光がハイビームに維持されるものの、その後、外力の作用が解除されてウィンカーレバー33が中立位置に戻ると、所定の期間だけロービームに切り替えられ、その後は、誤作動が継続していればロービームが維持される。従って、運転者は、操作3の終了後、例えばウィンカーレバー33を第1位置に移動させることにより、ヘッドランプ31の配光を手動でハイビームに切り替えることができる。この場合も、ECU30が時点t0にて特定操作として操作3が行われたと判定してECU11にトリガ信号を送信することにより、ECU11が特定期間におけるAHB制御情報を不揮発性メモリに記録するようになっている。
【0055】
上記説明から明らかなように、ハイビーム時誤作動状況においては、操作3は、AHB制御を中断する操作ではあるが、ヘッドランプ31の配光を完全にハイビームに切り替える操作ではない。しかしながら、操作3は、ハイビーム時誤作動状況において運転者がAHB制御をキャンセル又は中断するために行うと想定される操作であるため、操作3のような操作も特定操作に含めている。
【0056】
図3Aは、AHB制御によりヘッドランプ31の配光がロービームに維持されている最中に不作動が生じた状況(以下、「ロービーム時不作動状況」とも称する。)を示す図である。この例では、運転者は、時点tcにてAHB制御によりヘッドランプ31の配光が自動的にハイビームに切り替えられることを期待したものの、実際には切り替えが行われずにロービームが継続したため、時点t0にてウィンカーレバー33を中立位置から第1位置に移動させる操作(操作2)を行っている。これにより、AHB制御がキャンセルされるとともに、ヘッドランプ31の配光がハイビームに切り替えられる。即ち、ロービーム時不作動状況においては、操作2は、AHB制御のキャンセルと、ハイビームへの切り替えと、を同時に実現できる操作である。
【0057】
図3Aでは、特定操作として操作2が行われた状況が例示されているが、特定操作として操作1又は操作3が行われてもよい。ロービーム時不作動状況において操作1又は操作3を行うと、上述したハイビーム時誤作動状況において操作1又は操作3を行ったときとそれぞれ同様の作用がもたらされるため、これらの詳細な説明は省略する。
【0058】
図3Bは、AHB制御によりヘッドランプ31の配光がロービームに維持されている最中に誤作動が生じた状況(以下、「ロービーム時誤作動状況」とも称する。)を示す図である。この例では、運転者は、AHB制御によりヘッドランプ31の配光がロービームに維持されることを期待していたものの、実際には時点tdにて自動的にハイビームに切り替わってしまったため、時点t0にてAHBSW32をオフする操作(操作1)を行っている。これにより、AHB制御がキャンセルされるとともに、ヘッドランプ31の配光がロービームに切り替えられる。即ち、ロービーム時誤作動状況においては、操作1は、AHB制御のキャンセルと、ロービームへの切り替えと、を同時に実現できる操作である。
【0059】
図3Bでは、特定操作として操作1が行われた状況が例示されているが、特定操作として操作2又は操作3が行われてもよい。ロービーム時誤作動状況において操作2又は操作3を行うと、上述したハイビーム時不作動状況において操作2又は操作3を行ったときとそれぞれ同様の作用がもたらされるため、これらの詳細な説明は省略する。
【0060】
なお、特定期間におけるAHB制御情報にAHB制御の不作動及び誤作動を表す情報が確実に含まれるようにするため、特定期間のうちの第1期間は、「不作動及び誤作動が生じてから運転者が介入操作を行うまでの平均的な期間」よりも長くなるように設定されることが望ましい。この第1期間は、実験又はシミュレーションにより予め決定され得る。記憶期間は、このようにして決定された第1期間に基づいて設定されてもよい。
【0061】
不揮発性メモリに記録されたAHB制御情報は、ディーラー又は修理工場等で読み出すことができる。読み出し方法は特に限定されず、有線又は無線にて読み出しが行われ得る。読み出されたAHB制御情報には、AHB制御の不作動及び誤作動を表す情報が画像情報及び車両状態情報に関連付けて含まれている。このようにして取得されたAHB制御情報を解析することにより、AHB制御の性能を飛躍的に向上させることが期待できる。
【0062】
(具体的作動)
続いて、ECU11及びECU30の具体的な作動について説明する。ECU30のCPUは、イグニッションスイッチがオン位置にある期間中、所定時間が経過する毎に
図4及び
図5にフローチャートにより示したルーチン(それぞれ、AHB制御処理及びトリガ信号送信処理)を並行して繰り返し実行するように構成されている。また、ECU11は、イグニッションスイッチがオン位置にある期間中、所定時間が経過する毎に
図6にフローチャートにより示したルーチン(AHB制御情報記録処理)を繰り返し実行するように構成されている。以下、順に説明する。
【0063】
ECU30のCPUは、所定のタイミングになると、
図4のステップ400から処理を開始してステップ410に進み、AHB作動条件が成立しているか否かを判定する。AHB作動条件が成立していない場合、CPUは、ステップ410にて「No」と判定し、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、AHB作動条件が成立している場合、CPUは、ステップ410にて「Yes」と判定し、ステップ420に進む。
【0064】
ステップ420では、CPUは、ハイビーム条件が成立しているか否かを判定する。ハイビーム条件が成立している場合、CPUは、ステップ420にて「Yes」と判定し、ステップ430に進み、ヘッドランプ31の配光をハイビームに維持する(又は、切り替える)。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、ハイビーム条件が成立していない場合、CPUは、ステップ420にて「No」と判定し、ステップ440に進む。
【0065】
ステップ440では、CPUは、直前の周期におけるヘッドランプ31の配光がハイビームであるか否かを判定する。配光がロービームである場合、CPUは、ステップ440にて「No」と判定し、ステップ450に進み、ヘッドランプ31の配光をロービームに維持する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、直前の周期におけるヘッドランプ31の配光がハイビームである場合、CPUは、ステップ440にて「Yes」と判定し、ステップ460に進む。
【0066】
ステップ460では、CPUは、ロービーム条件が成立しているか否かを判定する。ロービーム条件が成立している場合、CPUは、ステップ460にて「Yes」と判定し、ステップ450に進み、ヘッドランプ31の配光をロービームに切り替える。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、ロービーム条件が成立していない場合、CPUは、ステップ460にて「No」と判定し、ステップ470に進み、ヘッドランプ31の配光をハイビームに維持する。その後、CPUは、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上がAHB制御処理ルーチンについての説明である。
【0067】
加えて、ECU30のCPUは、所定のタイミングになると、
図5のステップ500から処理を開始してステップ510に進み、AHB制御を実行中であるか否かを判定する。AHB制御を実行していない場合、CPUは、ステップ510にて「No」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、AHB制御を実行している場合、CPUは、ステップ510にて「Yes」と判定し、ステップ520に進む。
【0068】
ステップ520では、CPUは、運転者により特定操作が行われたか否かを判定する。特定操作が行われていない場合、CPUは、ステップ520にて「No」と判定し、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、特定操作が行われた場合、CPUは、ステップ520にて「Yes」と判定し、ステップ530に進む。
【0069】
ステップ530では、CPUは、トリガ信号をECU11に送信する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上がトリガ信号送信処理ルーチンについての説明である。
【0070】
他方、ECU11のCPUは、所定のタイミングになると、
図6のステップ600から処理を開始してステップ610に進み、AHB制御を実行中であるか否かを判定する。AHB制御を実行していない場合、CPUは、ステップ610にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、AHB制御を実行している場合、CPUは、ステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ620に進む。
【0071】
ステップ620では、CPUは、ECU11のRAMにAHB制御情報を記憶(格納)する。また、RAMに記憶されているAHB制御情報のうち、記憶期間を超えて記憶されているAHB制御情報を消去する。その後、CPUは、ステップ630に進む。
【0072】
ステップ630では、CPUは、ECU30からトリガ信号を受信したか否かを判定する。トリガ信号を受信していない場合、CPUは、ステップ630にて「No」と判定し、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、トリガ信号を受信した場合、CPUは、ステップ630にて「Yes」と判定し、ステップ640に進む。
【0073】
ステップ640では、CPUは、特定期間(時点tpから時点tfまでの期間)におけるAHB制御情報を不揮発性メモリに記録する。具体的には、CPUは、特定期間のうち第1期間(時点tpから時点t0までの期間)におけるAHB制御情報をRAMから不揮発性メモリに移動する。加えて、CPUは、現時点(即ち、時点t0)から第2期間が経過する時点(即ち、時点tf)まで、RAMに格納されるAHB制御情報を不揮発性メモリに移動する。その後、CPUは、ステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。以上がAHB制御情報記録処理ルーチンについての説明である。なお、ステップ610の処理は行われなくてもよい。
【0074】
以上説明したように、本実施装置によれば、AHB制御の不作動及び誤作動を含むAHB制御情報を適切に記録することができる。
【0075】
以上、本実施形態に係るランプ制御装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
【0076】
例えば、ECU11は、特定期間(=第1期間+第2期間)ではなく、第1期間におけるAHB制御情報を自身の不揮発性メモリに記録するように構成されてもよい。この構成によっても、AHB制御の不作動及び誤作動を含む情報を適切に記録することができる。
【0077】
加えて、ECU30は、AHB制御の代わりにアダプティブハイビーム(Adaptive High-beam)制御を実行するように構成されてもよい。アダプティブハイビーム制御は、ヘッドランプ31の配光をハイビームに維持しつつ、画像情報に基づいて、先行車及び対向車等が位置する領域に光が照射されないように配光範囲(光の照射範囲)を自動的に変更する制御である。この場合、ECU11は、画像情報と、車両状態情報と、アダプティブハイビーム制御による配光範囲と、を含むアダプティブハイビーム制御情報を配光制御情報として自身のRAMに記憶するように構成され得る。そして、特定操作が行われてトリガ信号を受信した場合、特定期間におけるアダプティブハイビーム制御情報を不揮発性メモリに記録するように構成され得る。
【0078】
更に、AHB制御作動条件の条件3は、ウィンカーレバー33が中立位置ではなく第1位置に位置している場合に成立するように構成されてもよい。この場合、ECU30は、操作2の代わりに、ウィンカーレバー33を第1位置から中立位置に移動させる操作が行われた場合に特定操作が行われたと判定するように構成され得る。
【0079】
また、ECU30は、ECU11に統合されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10:カメラ、11:カメラECU、20:車両状態センサ、30:ランプ制御ECU、31:ヘッドランプ、32:オートハイビームスイッチ(AHBSW)、33:ウィンカーレバー