(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】タクシーシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/40 20240101AFI20240730BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240730BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20240730BHJP
B60W 30/165 20200101ALI20240730BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240730BHJP
【FI】
G06Q50/40
G08G1/09 H
G08G1/00 X
B60W30/165
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2021070568
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】覚知 誠
(72)【発明者】
【氏名】泉田 修
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊二
(72)【発明者】
【氏名】濱島 拓美
(72)【発明者】
【氏名】金高 充志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 敏広
(72)【発明者】
【氏名】高平 正光
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-047881(JP,A)
【文献】特開2020-119370(JP,A)
【文献】特開2018-097514(JP,A)
【文献】特開2021-028746(JP,A)
【文献】特開2009-031888(JP,A)
【文献】特開2021-028744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G08G 1/00
B60W 30/165
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転手が乗車しない状態で、利用者を自動運転で目的地まで輸送する複数のタクシー車両と、
複数の前記タクシー車両を管理する管理装置と、
を備え、
前記タクシー車両は、車内に搭載されたユーザI/Fを有し、
前記タクシー車両は、
前記ユーザI/Fを介して前記利用者
から入力される指示に従い、1以上の他の前記タクシー車両と、車両グループを構築可能であり、
前記車両グループを構築する2以上の前記タクシー車両は、1つの代表車両と、1以上の従属車両と、に分かれており
前記代表車両および前記従属車両は、前記代表車両を利用している代表利用者に前記代表車両および前記従属車両それぞれの利用料金を課金する一括課金処理、および、前記代表利用者から指定された一つの地点を前記代表車両および前記従属車両それぞれの目的地に設定する一括設定処理と、の少なくとも一方を行う、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のタクシーシステムであって、
前記代表車両は、前記代表利用者から前記目的地の設定を受け付けた後、設定された前記目的地を前記従属車両に送信し、
前記従属車両は、前記代表車両から受信した前記目的地に基づいて自身の目的地を設定する、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタクシーシステムであって、
前記従属車両は、当該従属車両の利用料金を当該従属車両の利用者に課金することなく、前記代表車両に送信し、
前記代表車両は、当該代表車両の利用料金と、前記従属車両から送信された利用料金と、の合算値を前記代表利用者に課金する、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のタクシーシステムであって、
前記タクシー車両は、
前記ユーザI/Fを介して、前記利用者から前記タクシー車両の必要個数として値Nが入力された場合、自身の周囲に位置する(N-1)個の他のタクシー車両に対して、自身を前記代表車両とする前記車両グループの構築を指示する、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のタクシーシステムであって、
さらに、複数の前記利用者が所有する複数の利用者端末を備え、
前記利用者端末は、前記利用者からの指示に従い、1以上の他の前記利用者端末と、端末グループを構築可能であり、
前記利用者が前記タクシー車両を利用開始した場合、前記利用者端末は、前記端末グループを反映した前記車両グループの構築の指示を前記タクシー車両に送信し、
前記タクシー車両は、前記利用者端末からの指示に基づいて、他の前記タクシー車両と前記車両グループを構築する、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のタクシーシステムであって、
前記タクシー車両は、
前記ユーザI/Fを介して、前記利用者から前記車両グループの構築の要求を受けた場合、自身と前記車両グループを構築可能な他の前記タクシー車両の一覧を前記利用者に提示し、前記一覧の中から前記利用者が選択した他の前記タクシー車両と前記車両グループを構築する、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のタクシーシステムであって、
前記タクシー車両は、前記車両グループを構築した場合、当該タクシー車両に乗車している前記利用者に対して、前記車両グループの適否を確認し、前記利用者が不適と判断した場合に、前記車両グループから離脱する、
ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のタクシーシステムであって、
前記タクシー車両は、前記車両グループの適否を確認する際、前記車両グループに属する他の前記タクシー車両の車内を撮像した車内画像を前記利用者に提示する、ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項9】
請求項7に記載のタクシーシステムであって、
前記タクシー車両は、前記車両グループの適否を確認する際、自身と、前記車両グループに属する他の前記タクシー車両と、の相対位置関係を示す画像を前記利用者に提示する、ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のタクシーシステムであって、
前記タクシー車両は、他の前記タクシー車両と前記車両グループを構築した場合、他の前記タクシー車両との連携を示す情報を、前記
タクシー車両の車外に通知する、ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載のタクシーシステムであって、
前記一括設定処理を行った場合、前記代表車両および1以上の前記従属車両は、規定の基準に従って並ぶ車列を維持しながら走行する隊列走行を実施する、ことを特徴とするタクシーシステム。
【請求項12】
請求項11に記載のタクシーシステムであって、
前記代表車両および1以上の前記従属車両は、前記隊列走行の実施中に、前記車両グループに属する後続車両との間の距離である管理距離が、規定の基準距離を超過した場合、前記管理距離が前記基準距離以下になるまで減速または停車する、ことを特徴とするタクシーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、運転手が乗車しない状態で、利用者を自動運転で目的地まで輸送する複数のタクシー車両と、複数の前記タクシー車両を管理する管理装置と、を備えるタクシーシステムを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動運転車両を、タクシー車両として利用することが提案されている。例えば、特許文献1には、自動運転車両を用いてタクシーサービスを行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、利用者は、自動運転のタクシー車両の利用開始時に目的地を設定し、利用終了時に利用料金を支払う。こうした目的地設定および料金支払いは、通常、タクシー車両ごとに処理される。したがって、従来、一つのタクシー車両に乗車している利用者が、この一つのタクシー車両に乗車したまま、他のタクシー車両の目的地を設定したり、利用料金を支払ったりできなかった。しかし、複数の利用者が、グループで行動する場合、タクシー車両ごとに目的地設定および料金支払いを行うことは不便であった。
【0005】
例えば、夫と妻が、一人乗りのタクシー車両を利用して、同じ目的地に出かける場合を考える。この場合、夫と妻は、互いに独立して、自身が乗車しているタクシー車両に対して、目的地の設定と、利用料金の支払いと、を行う。この場合、夫と妻は、同じ処理を重複して実行する必要があり、煩雑であった。また、夫と妻のいずれかが目的地の設定を間違えた場合、夫と妻が互いに異なる地点に輸送され、夫と妻が再開するまで時間がかかるおそれがあった。
【0006】
また、利用者の中には、目的地設定や料金支払いが困難な利用者もいる。例えば、母親と小児が、一人乗りのタクシー車両を利用して、同じ目的地に出かける場合を考える。この場合、小児が、目的地設定や決済を行うことは難しい。そのため、母親は、自身が乗車するタクシー車両と、小児が乗車するタクシー車両と、の両方に対して別々に、目的地設定と利用料金の支払いとを行う必要があり、非常に面倒であった。
【0007】
そこで、本明細書では、複数のタクシー車両を利用する場合の利用者の利便性をより向上できるタクシーシステムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示するタクシーシステムは、運転手が乗車しない状態で、利用者を自動運転で目的地まで輸送する複数のタクシー車両と、複数の前記タクシー車両を管理する管理装置と、を備え、前記タクシー車両は、前記利用者または前記管理装置の指示に従い、1以上の他の前記タクシー車両と、車両グループを構築可能であり、前記車両グループを構築する2以上の前記タクシー車両は、1つの代表車両と、1以上の従属車両と、に分かれており、前記代表車両および前記従属車両は、前記代表車両を利用している代表利用者に前記代表車両および前記従属車両それぞれの利用料金を課金する一括課金処理、および、前記代表利用者から指定された一つの地点を前記代表車両および前記従属車両それぞれの目的地に設定する一括設定処理と、の少なくとも一方を行う、ことを特徴とする。
【0009】
かかる構成とすることで、代表利用者が、自身が乗車している代表車両に加えて、同行者が乗車している従属車両の、料金支払いおよび目的地設定の少なくとも一方を行うことができる。その結果、複数のタクシー車両を利用する際の手間を軽減でき、利用者の利便性をより向上できる。
【0010】
この場合、前記代表車両は、前記代表利用者から前記目的地の設定を受け付けた後、設定された前記目的地を前記従属車両に送信し、前記従属車両は、前記代表車両から受信した前記目的地に基づいて自身の目的地を設定してもよい。
【0011】
かかる構成とすることで、代表利用者が代表車両に対して目的地を設定するだけで、自動的に、従属車両の目的地も設定できる。
【0012】
また、前記従属車両は、当該従属車両の利用料金を当該従属車両の利用者に課金することなく、前記代表車両に送信し、前記代表車両は、当該代表車両の利用料金と、前記従属車両から送信された利用料金と、の合算値を前記代表利用者に課金してもよい。
【0013】
かかる構成とすることで、代表利用者が、代表車両の利用料金だけでなく、従属車両の利用料金も、纏めて支払うことができる。
【0014】
また、前記タクシー車両は、前記利用者から前記タクシー車両の必要個数として値Nが入力された場合、自身の周囲に位置する(N-1)個の他のタクシー車両に対して、自身を前記代表車両とする前記車両グループの構築を指示してもよい。
【0015】
この場合、利用者が必要個数を指定するだけで、車両グループが自動的に構築される。結果として、利用者に手間を軽減できる。
【0016】
また、さらに、複数の前記利用者が所有する複数の利用者端末を備え、前記利用者端末は、前記利用者からの指示に従い、1以上の他の前記利用者端末と、端末グループを構築可能であり、前記利用者が前記タクシー車両を利用開始した場合、前記利用者端末は、前記端末グループを反映した前記車両グループの構築の指示を前記タクシー車両に送信し、前記タクシー車両は、前記利用者端末からの指示に基づいて、他の前記タクシー車両と前記車両グループを構築してもよい。
【0017】
かかる構成とすれば、複数の利用者は、タクシー車両に乗車する前、互いの顔を見ながら、端末グループを構築できる。そして、この端末グループを反映した車両グループを構築することで、意図しないタクシー車両が、車両グループに登録されるミスを効果的に防止できる。
【0018】
また、前記タクシー車両は、前記利用者から前記車両グループの構築の要求を受けた場合、自身と前記車両グループを構築可能な他の前記タクシー車両の一覧を前記利用者に提示し、前記一覧の中から前記利用者が選択した他の前記タクシー車両と前記車両グループを構築してもよい。
【0019】
かかる構成とすることで、利用者は、希望するタクシー車両を、車両グループに組み込むことができる。
【0020】
また、前記タクシー車両は、前記車両グループを構築した場合、当該タクシー車両に乗車している前記利用者に対して、前記車両グループの適否を確認し、前記利用者が不適と判断した場合に、前記車両グループから離脱してもよい。
【0021】
かかる構成とすることで、利用者の意に反して、違うタクシー車両の利用料金が課金されたり、無関係のタクシー車両が、自身と同じ目的地に移動したり、することを防止できる。
【0022】
この場合、前記タクシー車両は、前記車両グループの適否を確認する際、前記車両グループに属する他の前記タクシー車両の車内を撮像した車内画像を前記利用者に提示してもよい。
【0023】
車内画像、ひいては、利用者の顔が映った画像を提示することで、利用者は、代表車両および従属車両の乗員を正確に把握することができるため、車両グループ構築の適否をより正確に判断できる。
【0024】
また、前記タクシー車両は、前記車両グループの適否を確認する際、自身と、前記車両グループに属する他の前記タクシー車両と、の相対位置関係を示す画像を前記利用者に提示してもよい。
【0025】
かかる構成とすることで、利用者は、代表車両および従属車両を正確に把握することができ、車両グループ構築の適否をより正確に判断できる。
【0026】
また、前記タクシー車両は、他の前記タクシー車両と前記車両グループを構築した場合、他の前記タクシー車両との連携を示す情報を、前記車外に通知してもよい。
【0027】
かかる構成とすることで、車両グループを利用する利用者は、いずれのタクシー車両に乗車すべきかを、容易に把握できる。
【0028】
また、前記一括設定処理を行った場合、前記代表車両および1以上の前記従属車両は、規定の基準に従って並ぶ車列を維持しながら走行する隊列走行を実施してもよい。
【0029】
かかる構成とすることで、車両グループを利用する複数の利用者は、互いに離れ離れになる不安を感じにくくなる。
【0030】
この場合、前記代表車両および1以上の前記従属車両は、前記隊列走行の実施中に、前記車両グループに属する後続車両との間の距離である管理距離が、規定の基準距離を超過した場合、前記管理距離が前記基準距離以下になるまで減速または停車してもよい。
【0031】
かかる構成とすることで、車両グループを利用する複数の利用者は、互いに離れ離れになる不安をより感じにくくなる。
【発明の効果】
【0032】
本明細書で開示したタクシーシステムによれば、複数のタクシー車両を利用する際の手間を軽減でき、利用者の利便性をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】タクシーシステムの構成を示すイメージ図である。
【
図4】タクシー車両の構成を示すブロック図である。
【
図7】代表車両が記憶している車両グループ情報の一例を示す図である。
【
図8】一括課金処理および一括設定処理の様子を示すイメージ図である。
【
図9】車両グループ構築指示の流れを示すイメージ図である。
【
図10】車両グループ構築の適否を確認するための確認画面の一例を示す図である。
【
図11】車両グループ構築の適否を確認するための確認画面の他の一例を示す図である。
【
図12】車両グループ構築指示の流れの他の例を示すイメージ図である
【
図13】車両グループ構築指示に利用する設定画面のイメージ図である。
【
図14】車両グループ構築指示に利用する他の設定画面のイメージ図である。
【
図15】迎車利用する場合における、車両グループ構築の指示の流れを示すイメージ図である。
【
図16】一括設定処理を行った場合におけるタクシー車両の走行の様子を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照してタクシーシステム10の構成について説明する。
図1は、タクシーシステム10の構成を示すイメージ図である。このタクシーシステム10は、複数のタクシー車両12と、管理装置14と、複数の利用者端末16と、を備えている。
【0035】
タクシー車両12は、利用者100からの依頼を受けて、個別契約で利用者を目的地まで輸送する車両である。本例のタクシー車両12は、定員1名の一人乗り車両である。なお、当然ながら、乳幼児等は乗員としてカウントせず、大人と同乗可能である。また、このタクシー車両12は、動的運転タスクの全てを車両側で行う自動運転車両である。したがって、タクシー車両12には、運転手は乗車していない。
【0036】
ここで、「自動運転」とは、動的運転タスクのほぼ全てを車両が行うことを意味しており、例えば、米国の自動車技術会(SAE)で定められたレベル3からレベル5のいずれかを意味する。レベル3は、高速道路等、特定の場所において、全ての動的運転タスクが自動化されているものの、緊急時には、ドライバーの操作が必要となる運転形態である。また、レベル4は、特定の場所に限り、全ての動的運転タスクが自動化されており、緊急時の対応も自動的に処理される運転形態である。レベル5は、場所等の制限なく、ほぼ全ての条件で自動運転が可能な運転形態であり、いわゆる、「完全自動運転」を意味する。
【0037】
管理装置14は、タクシー車両12の配車を管理する。管理装置14は、複数のタクシー車両12それぞれの位置と運行状態を収集し、管理している。ここで、タクシー車両12の運行状態としては、例えば、空車、賃走、回送、迎車等がある。管理装置14は、さらに、利用者からのリクエストや、市中におけるタクシー車両12および人の分布状況等を考慮して、タクシー車両12の望ましい配置を算出し、タクシー車両12に配車指示を出力する。タクシー車両12は、この配車指示に従い、適宜、走行する。
【0038】
利用者端末16は、利用者100が所有している情報端末、例えば、スマートホン等の携帯情報端末である。利用者端末16には、予め、タクシーシステム10を利用するために用いられる専用のアプリケーションがインストールされている。
【0039】
ここで、タクシー車両12の利用形態としては、利用者100がタクシー車両12の近傍まで移動して利用開始する飛び込み利用と、利用者100がタクシー車両12を呼び出して利用する迎車利用と、がある。このうち、迎車利用には、タクシー車両12を使用したい将来の日時を指定する予約利用も含まれる。この二つの利用形態について、
図2、
図3を参照して説明する。
【0040】
図2は、飛び込み利用のイメージ図である。飛び込み利用の場合、利用者100は、空車状態のタクシー車両12の近傍まで移動し、このタクシー車両12に利用開始通知46を送る。ここで、利用開始通知46の送信は、利用者端末16を操作して行ってもよいし、タクシー車両12に搭載されたユーザインターフェース装置(以下「ユーザI/F」と略す)を操作して行ってもよい。利用開始通知46を受信した場合、タクシー車両12は、利用者100の輸送を開始したこと、すなわち、賃送状態になったことを、管理装置14に通知する。
【0041】
次に、迎車利用について説明する。
図3は、迎車利用のイメージ図である。迎車利用の場合、利用者100は、利用者端末16を操作して、利用リクエスト48を管理装置14に送信する。利用リクエスト48は、少なくとも、利用者100の乗車位置および乗車日時を含む。なお、乗車日時は、具体的な日付や時間で指定されてもよいし、「いますぐ」のような形態の指定でもよい。また、利用リクエスト48は、さらに、目的地や、決済種類、利用したいタクシー車両12の台数の少なくとも1つを含んでもよい。
【0042】
管理装置14は、受信した利用リクエスト48に応じて、タクシー車両12を配車する。具体的には、管理装置14は、利用リクエスト48で指示された乗車日時、乗車位置に、タクシー車両12が到達できるように、タクシー車両12に配車指示50を送信する。この配車指示50を受けたタクシー車両12は、指定された乗車日時に間に合うように、自動運転で、乗車位置まで移動する。そして、利用者100は、乗車位置において、配車されたタクシー車両12に乗車する。
【0043】
なお、
図2,
図3では、一人の利用者100が、一つのタクシー車両12を利用する場合を例に挙げて説明した。しかし、実際には、一緒に行動する複数の利用者100が、複数のタクシー車両12を利用する場合もある。かかる場合に、各利用者100が、別々に、料金の支払いをしたり、目的地の設定をしたりすることは、煩雑で無駄が多かった。そこで、本明細書で開示するタクシーシステム10では、利用者100が希望した場合には、複数のタクシー車両12で、車両グループを構築可能としている。車両グループを構築した場合、一人の利用者が、車両グループに属する複数のタクシー車両12の料金支払いと目的地設定とを一括で対応できる。この車両グループに関しては、後に詳説する。
【0044】
次に、タクシー車両12および管理装置14それぞれの構成について説明する。
図4は、タクシー車両12の構成を示すブロック図である。駆動ユニット22は、タクシー車両12を走行させるための機械的駆動力を発生させる機器であり、例えば、原動機や動力伝達装置、ブレーキ装置、懸架装置、舵取り装置等を含む。車両センサ群24は、タクシー車両12の走行に必要な各種情報をセンシングするための複数のセンサを含む。かかる車両センサ群24は、例えば、タクシー車両12の周辺環境を検知するためのセンサ(例えばカメラ、LiDAR、ミリ波レーダ、超音波センサ等)や、タクシー車両12の現在位置を検知するためのセンサ(例えばGPS等)、タクシー車両12の走行状態を検知するためのセンサ(例えば加速度センサ、ジャイロセンサ等)等を含む。車両センサ群24で検知された情報は、車両コントローラ20に送信される。車両コントローラ20は、車両センサ群24で検知された情報に基づいて、タクシー車両12の加減速量および操舵量を演算し、駆動ユニット22を駆動する。
【0045】
通信I/F26は、通信技術を利用して、車外の情報機器と通信する。この場合、通信対象である情報機器としては、例えば、管理装置14、利用者端末16、および、他のタクシー車両12等が含まれる。こうした通信は、携帯電話会社が提供するモバイルデータ通信を利用して行われてもよいし、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信を利用して行われてもよいし、専用の通信回線を利用して行われてもよい。
【0046】
ユーザI/F28は、利用者100に対して情報を提示するとともに、利用者100からの操作を受け付ける装置である。このユーザI/F28は、例えば、利用者100に情報を出力する出力装置と、利用者100の操作を受け付ける入力装置と、を有する。出力装置は、例えば、ディスプレイ、スピーカ、および、ランプの少なくとも1つを含んでもよい。また、入力装置は、例えば、タッチパネル、キーボード、スイッチ、レバー、ペダル、マイクの少なくとも1つを含んでもよい。
【0047】
決済装置30は、単独で、または、管理装置14と協働して、タクシー車両12の利用料金の徴収を実行する装置である。したがって、決済装置30は、利用料金を徴収するための装置、例えば、投入された現金の金額を計数して必要に応じて釣銭を出す金銭装置や、クレジットカードでの決済を処理するカードリーダ、プリペイドカードに内蔵されたICチップと通信するRFIDリーダ/ライタ、バーコード決済を行うためのバーコードリーダ等を有してもよい。また、決済装置30は、利用者100が事前登録した電子ウォレットにアクセスするためのアクセス情報(例えば、利用者100の識別情報やパスワード等)を取得し、これを管理装置14に送信する装置でもよい。この場合、管理装置14は、受信したアクセス情報に基づいて、利用者100の電子ウォレットにアクセスし、利用料金を徴収する。
【0048】
通知装置32は、車両グループの構築状況を車外に通知する装置である。ここで、車両グループとは、上述した通り、2以上のタクシー車両12で構成されるグループのことである。車両グループを構成する2以上のタクシー車両12は、利用料金の支払い、および、目的地の設定、の少なくとも一方を一括して処理するが、これについては後述する。通知装置32は、タクシー車両12が、他のタクシー車両12と車両グループを構築した場合、この他のタクシー車両12との連携を示す情報を、車外に通知する。かかる通知装置32は、例えば、車外から見える位置において光を発するランプ、車外から視認可能な位置に設けられた表示エリアに情報を表示する表示器、車外に対して音声を出力するスピーカの少なくとも1つを含む。
【0049】
車両コントローラ20は、タクシー車両12の駆動を制御する。車両コントローラ20は、例えば、車両センサ群24での検知結果からタクシー車両12の周辺環境を把握し、タクシー車両12が安全に走行できるように駆動ユニット22の駆動を制御する。また、車両コントローラ20は、必要に応じて、車両グループの構築状況を管理し、その構築状況に応じて、目的地の設定や利用料金の課金を管理する。
【0050】
こうした車両コントローラ20は、物理的には、プロセッサ20aとメモリ20bとを有するコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを1つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラーも含まれる。また、プロセッサ20aとは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。また、プロセッサ20aは、物理的に1つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサを含んでもよい。同様に、メモリ20bも、物理的に1つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のメモリで構成されてもよい。また、メモリ20bは、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも1つを含んでもよい。
【0051】
次に、管理装置14の構成について説明する。
図5は、管理装置14の構成を示すブロック図である。管理装置14は、管理コントローラ36と、通信I/F38と、車両DB40と、利用者DB42と、を有している。通信I/F38は、モバイルデータなど汎用的な通信網を介して利用者端末16と通信を行う。また、通信I/F38は、汎用的な通信網、または、専用通信網を介して、複数のタクシー車両12と通信を行う。
【0052】
車両DB40は、タクシーシステム10を構成する複数のタクシー車両12の情報を記録したデータベースである。車両DB40には、複数のタクシー車両12それぞれの識別情報、位置、運行状態、車両グループの構築状況等が記録されている。
【0053】
利用者DB42には、利用者100の情報が記録されている。利用者DB42に記録される利用者100の情報としては、例えば、利用者100の識別情報や、氏名、連絡先等が含まれる。また、利用者100が目的地として設定することが多い場所、例えば自宅や勤務している会社等の住所も、利用者100の識別情報と対応付けて記録してもよい。さらに、利用者DB42には、利用者100が使用する電子ウォレットの情報、例えば、引き落とし口座番号や、クレジットカード番号等も登録されてもよい。
【0054】
管理コントローラ36は、利用者端末16から送信された利用者100からの要求に応じて、タクシー車両12の配車をコントロールする。また、管理コントローラ36は、タクシー車両12から送られる情報に基づいて、車両DB40を更新する。また、管理コントローラ36は、利用者端末16から送信される利用者100の登録情報に基づいて、利用者DB42も更新する。こうした管理コントローラ36も、プロセッサ36aとメモリ36bとを有したコンピュータで構成される。
【0055】
次に、こうしたタクシーシステム10において構築される車両グループについて説明する。上述した通り、本例のタクシー車両12は、一人乗りの自動運転車両である。したがって、複数人で利用する場合には、複数のタクシー車両12を同時に利用する必要がある。このとき、複数のタクシー車両12それぞれの利用者100が、目的地の設定や利用料金の決済を、別々に行うことは、不便であった。
【0056】
例えば、妻と夫が、2つのタクシー車両12を利用して、同じ目的地に移動する場合を考える。目的地が同じであるにも関わらず、妻と夫が、それぞれ、別々に、目的地設定作業を実行することは、無駄である。また、万一、妻または夫が、誤って、間違った目的地を設定した場合、妻と夫は、互いに異なる場所に輸送されることになり、再会するまでに時間がかかる。
【0057】
また、利用者100の中には、目的地設定や料金決済や困難な人もいる。例えば、母親と小児が、2つのタクシー車両12を利用して移動する場合を考える。この場合、小児が、目的地設定の作業や、料金決済を行うことは難しい。そのため、母親が、自身が利用するタクシー車両12、および、小児が利用するタクシー車両12の双方について、目的地の設定および利用料金の決済を行う必要がある。そして、こうした目的地の設定や利用料金の決済を、タクシー車両12ごとに行うのは、非常に面倒であった。
【0058】
このように複数人でタクシーシステム10を利用する際の手間を軽減し、利用者100の利便性を向上するために、本例では、車両グループを構築可能としている。車両グループは、利用者100または管理装置14からの指定された2以上のタクシー車両12で構築されるグループである。車両グループを構築する2以上のタクシー車両12は、1つの代表車両と、1以上の従属車両と、に分けられる。
【0059】
図6は、車両グループのイメージ図である。なお、以下の図面および説明では、必要に応じて、タクシー車両12、および、それに関連する要素の符号に添え字A,B,Cを追加し、利用者100、および、それに関連する要素の符号に添え字a,b,cを追加している。
【0060】
図6では、車両グループは、三つのタクシー車両12A,12B,12Cで構成されている。このうち、タクシー車両12Aが、代表車両であり、タクシー車両12B,12Cが、従属車両となる。また、代表車両12Aに乗車する利用者100aが代表利用者であり、従属車両12B,12Cに乗車する利用者100b,100cが従属利用者となる。
【0061】
車両グループが構築された場合、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cは、一括課金処理、および、一括設定処理の少なくとも一方を実行する。一括課金処理は、代表利用者100aに、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cの利用料金を課金する処理である。この一括課金処理を行うことで、従属利用者100b,100cは、利用料金を支払う必要がなく、支払者を代表利用者100a一人にまとめることができる。その結果、大人が、決済能力のない小児等と一緒に行動する場合であっても、簡易にタクシー車両を利用できる。また、家族のように家計をともにしている人同士で出かける場合や、会社の業務で複数の社員が移動する場合にも、支払いを分ける必要がないため、支払の管理の手間を簡易化できる。
【0062】
また、一括設定処理は、代表利用者100aから指定された1つの地点を代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cそれぞれの目的地に設定する処理である。この一括設定処理を行うことで、従属利用者100b,100cが、代表利用者100aと別に目的地を設定する必要がない。その結果、大人が、目的地設定作業ができない小児等と一緒に行動する場合であっても、簡易にタクシー車両を利用できる。また、一括設定処理を行うことで、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cが、常に、同じ目的地に移動する。したがって、ともに行動する利用者100a,100b,100cが、意に反して離れてしまうことを防止できる。
【0063】
なお、
図6では、一括課金処理および一括設定処理の双方を実行しているが、いずれか一方のみを実行するのでもよい。例えば、代表利用者100aから指定された1つの地点を代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cそれぞれの目的地に設定する一方で、利用料金は、それぞれの利用者100a,100b,100cに、個別に課金してもよい。また、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cの利用料金を、一人の代表利用者100aに課金する一方で、目的地は、タクシー車両12ごとに独立して設定できるようにしてもよい。
【0064】
車両グループを構築するタクシー車両12は、メモリ20bに、車両グループ情報52を記憶している。
図7は、代表車両12Aが記憶している車両グループ情報52の一例を示す図である。
図7の例では、車両グループ情報52は、課金用代表車両、課金用従属車両、設定用代表車両、設定用従属車両それぞれの識別情報が含む。ここで、課金用代表車両および課金用従属車両は、一括課金処理において代表車両および従属車両となる車両のことである。課金用代表車両が設定されている場合、タクシー車両12は、当該タクシー車両12の利用料金を、課金用代表車両を利用している利用者、すなわち、代表利用者に課金する。
【0065】
設定用代表車両および設定用従属車両は、一括設定処理において代表車両および従属車両となる車両である。設定用代表車両が設定されている場合、タクシー車両12は、設定用代表車両を利用している利用者、すなわち、代表利用者の指示に基づいて、目的地を設定する。
【0066】
なお、課金用代表車両、課金用従属車両、設定用代表車両、および、設定用従属車両の欄は、いずれも、対象となる車両が無い場合、「NULL」が登録される。したがって、代表車両12Aの場合、自分自身が代表車両であるため、課金用代表車両および設定用代表車両の欄は、「NULL」となる。また、従属車両12B,12Cの場合、自分自身が従属車両であるため、課金用従属車両および設定用従属車両の欄は、「NULL」となる。さらに、また、車両グループを構築していない場合、課金用代表車両、課金用従属車両、設定用代表車両、および、設定用従属車両の欄は、全て、「NULL」となる。
【0067】
次に、一括課金処理および一括設定処理の具体的な処理形態を説明する。
図8は、一括課金処理および一括設定処理の様子を示すイメージ図である。一括課金処理を行う場合、従属車両12B,12Cは、当該従属車両12B,12Cの利用料金を、車車間通信等を利用して、代表車両12Aに送信する。代表車両12Aは、当該代表車両12Aの利用料金と、従属車両12B,12Cの利用料金と、の合計値を、代表利用者100aに請求し、決済する。
【0068】
また、一括設定処理を行う場合、代表車両12Aは、当該代表車両12Aに乗車している利用者100aが当該代表車両12Aの目的地(
図7の例の場合「β駅」)を設定すれば、車車間通信等を利用して、この設定された目的地を従属車両12B,12Cに送信する。従属車両12B,12Cは、代表車両12Aから送信された目的地を、自身の目的地として設定する。
【0069】
なお、
図7で説明した処理手順は、一例であり、代表車両12Aを利用する代表利用者100aが、課金および目的地の設定を一括で対応できるのであれば、他の形態でもよい。例えば、一括課金処理および一括設定処理の一部を、管理装置14や代表利用者100aが所有する代表利用者端末16aが実行してもよい。例えば、代表車両12Aの目的地は、代表車両12Aから、管理装置14を中継して、従属車両12B,12Cに送信されてもよい。また、別の形態として、目的地は、代表利用者100aが所有する利用者端末16、すなわち、代表利用者端末16aから、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cに送信されてもよい。
【0070】
また、従属車両12B,12Cの利用料金は、各従属車両12B,12Cが、代表利用者端末16aと通信することで、徴収してもよい。また、別の形態として、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cが、自身の利用料金を管理装置14に通知し、管理装置14が、これらの利用料金の合計を、代表利用者100aから徴収してもよい。
【0071】
ところで、これまで説明したタクシー車両12は、利用者100または管理装置14から指示を受けて、車両グループを構築する。この車両グループ構築の指示の流れについて説明する。
図9は、車両グループ構築指示の流れを示すイメージ図である。
図9の例では、1人の利用者100aが、1つのタクシー車両12Aに、必要なタクシー車両12の個数を通知することで、車両グループが構築できる。具体的に説明すると、
図9の例では、利用者100a,100b,100bは、3台のタクシー車両12A,12B,12Cを飛び込み利用する。この場合、一人の利用者100aは、利用者端末16aを操作して、あるいは、タクシー車両12AのユーザI/F28を操作して、必要なタクシー車両12の個数N(
図9の例ではN=3)を、近くのタクシー車両12Aに通知する。この通知を受けたタクシー車両Aは、自身の近傍に位置する(N-1)個のタクシー車両12B,12Cに対して、車両グループの構築を指示する。この指示を受けたタクシー車両12B,12Cは、タクシー車両12Aを「代表車両」として車両グループ情報52に登録する。また、タクシー車両12Aは、タクシー車両12B,12Cを、「従属車両」として車両グループ情報52に登録する。
【0072】
車両グループが構築できれば、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cは、通知装置32を用いて、互いの連携を示す情報を、車外に通知する。例えば、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cは、通知装置32の一部として車両の外周面に取り付けられたランプを有しており、このランプを同じ色で点灯することで、互いに連携していることを車外の人に通知する。また、別の形態として、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cは、通知装置32の一部として車両の外周面に取り付けられたディスプレイを有しており、このディスプレイに、一体感のある画像を表示することで、互いに連携していることを車外の人に通知してもよい。このように、車両グループを構築した際、当該車両グループに属する複数のタクシー車両12A,12B,12Cが、互いの連携を示す情報を、車外に通知することで、利用者100a,100b,100cは、自身が乗車すべきタクシー車両12を容易に特定できる。
【0073】
車両グループが構築できれば、利用者100a,100b,100cは、当該車両グループを構成するタクシー車両12A,12B,12Cに乗車する。各タクシー車両12A,12B,12Cは、車両グループの構築の適否について利用者100a,100b,100cに確認する。具体的には、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cは、利用者100a,100b,100cに対して、従属車両12B,12Cの課金および目的地設定を、利用者100aが代表して行うことの可否を確認する。そして、利用者100aa,100b,100cが、現在構築されている車両グループが不適と判断した場合、車両グループから離脱する。なお、離脱の結果、代表車両または従属車両のいずれかがゼロになった場合、車両グループそのものが解消される。例えば、従属利用者100bが不適と判断した場合、タクシー車両12Cが車両グループから離脱し、残りのタクシー車両12A,12Cのみ車両グループを構築する。一方、代表利用者100aが不適と判断した場合、あるいは、全ての従属利用者100b,100cが不適と判断した場合には、車両グループそのものを解消する。このように、車両グループを構築した際に、その適否を確認することで、利用者100が、意に反して、無関係の車両の料金を支払ったり、無関係の車両が自身を追跡したりすることを防止できる。結果として、利用者100が、タクシーシステム10をより安心して利用できる。
【0074】
車両グループ構築の適否の確認の形態は、特に限定されない。例えば、代表車両12Aは、従属車両12B,12Cの識別情報を利用者100aに提示したうえで、利用者100aが、従属車両12B,12Cの料金決済および目的地設定を担当してもよいかを確認してもよい。同様に、従属車両12B,12Cは、代表車両12Aの識別情報を利用者100a,100bに提示したうえで、代表車両12Aに、料金決済および目的地設定を任せてもよいかを確認してもよい。
【0075】
また、車両の識別情報に替えて、車両の相対位置関係を示すイメージ図を表示したうえで、車両グループ構築の適否を確認してもよい。
図10は、この場合において、代表車両12Aに表示される確認画面64の一例を示す図である。
図10の例では、確認画面64は、車両グループ構築の適否を確認するメッセージと、代表車両12A周辺の平面図と、を含んでいる。利用者100aは、この確認画面64で、従属車両12B,12Cの位置を確認し、従属車両12B,12Cの料金決済および目的地設定を引き受けるか否かを判断する。同様に、従属車両12B,12Cは、車両グループ構築の適否を確認するメッセージと、従属車両12B,12C周辺の平面図と、を含む確認画面64を利用者100b,100cに提示する。利用者100b,100cは、この確認画面64で、代表車両12Aの位置を確認し、自身の料金決済および目的地設定を、代表車両12Aの乗員に任せるか否かを判断する。このように、車両の相対位置関係を示すイメージ図を利用者100a,100b,100cに提示することで、利用者100a,100b,100cは、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cを正確に把握することができ、車両グループ構築の適否をより正確に判断できる。
【0076】
また、別の形態として、各タクシー車両12は、車両グループを構築する他のタクシー車両12の車内を撮像した車内画像を、表示したうえで、車両グループ構築の適否を確認してもよい。
図11は、この場合において、代表車両12Aに表示される確認画面64の一例を示す図である。
図11の例では、確認画面64は、車両グループ構築の適否を確認するメッセージと、従属車両12B,12Cの車内を撮像した車内画像66と、を含んでいる。利用者100aは、この確認画面64で、従属車両12B,12Cの乗員の顔を確認し、従属車両12B,12Cの料金決済および目的地設定を引き受けるか否かを判断する。同様に、従属車両12B,12Cは、車両グループ構築の適否を確認するメッセージと、代表車両12Aの車内画像66と、を含む確認画面64を利用者100b,100cに提示する。利用者100b,100cは、この確認画面64で、代表車両12Aの乗員の顔を確認し、自身の料金決済および目的地設定を、代表車両12Aの乗員に任せるか否かを判断する。このように、車内画像66を提示することで、利用者100a,100b,100cは、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cの乗員を正確に把握することができるため、車両グループ構築の適否をより正確に判断できる。
【0077】
次に、この車両グループ構築の指示の流れの他の例について説明する。
図12は、車両グループ構築指示の流れの他の例を示すイメージ図である。
図12の例では、利用者端末16a,16b,16cは、利用者100a,100b,100cからの指示に従い、互いに、端末グループを構築できる。端末グループは、1つの代表利用者端末16aと、1以上の従属利用者端末16b,16cと、を含むグループである。端末グループを構築した場合、利用者端末16a,16b,16cには、端末グループ情報が登録される。端末グループ情報は、端末グループの構成を示す情報、すなわち、複数の利用者端末16a,16b,16cのうち、いずれが代表利用者端末であり、いずれが従属利用者端末であるかを示す情報である。
【0078】
タクシー車両12A,12B,12Cは、利用者端末16a,16b,16cから得られる端末グループ情報を反映した車両グループを構築する。例えば、端末グループが構築できれば、利用者100a,100b,100cは、利用者端末16a,16b,16cを操作して、それぞれ、近くのタクシー車両12A,12B,12Cに、利用開始指示74_1を送信する。タクシー車両12A,12B,12Cは、自身の識別情報74_2を、通信相手の利用者端末16a,16b,16cに送信する。続いて、利用者端末16a,16b,16cは、自身の識別情報と、自身が乗車予定の車両の識別情報と、を対応付けた対応情報74_3を、他の利用者端末16a,16b,16cに送信する。対応情報74_3を受信すれば、各利用者端末16a,16b,16cは、この対応情報74_3と端末グループ情報とを照らし合わせ、代表車両および従属車両の識別情報を特定する。そして、利用者端末16a,16b,16cは、特定した代表車両および従属車両の識別情報74_4を、乗車予定のタクシー車両12に送信する。タクシー車両12は、この代表車両および従属車両の識別情報74_4に基づいて、車両グループを構築する。
【0079】
ここで、端末グループの構築は、利用者100a,100b,100cが、タクシー車両12A,12B,12Cに乗車する前の段階で、互いの顔をみながら、実行できる。そのため、利用者100a,100b,100cは、グループに属する人を正確に識別できる。そして、本例では、この端末グループの構成を、車両グループに反映させているため、無関係なタクシー車両12が、誤って、車両グループに参入することを効果的に防止できる。
【0080】
次に、車両グループ構築の指示の流れの他の例について説明する。
図13、
図14は、車両グループ構築指示に利用する設定画面のイメージ図である。以下で説明する形態では、利用者100は、車両のユーザI/F28を操作して、車両グループ構築を指示する。
【0081】
利用者100a,100b,100cが、それぞれ、タクシー車両12A,12B,12Cに乗車し、タクシー車両12Aを代表車両に、タクシー車両12B,12Cを従属車両に、設定する場合を例に挙げて説明する。利用者100bは、タクシー車両12Bに乗車すれば、タクシー車両12BのユーザI/F28を操作して、タクシー車両12Bの利用開始を指示する。この指示を受けたタクシー車両12Bは、
図13に示す設定画面76_1を利用者100bに提示し、利用者100bに対して、目的地の設定を求める。設定画面76_1には、具体的な目的地を入力するための「設定」ボタンと、目的地設定を他のタクシー車両12に依頼するための「他車に任せる」ボタンと、が含まれている。
【0082】
この設定画面76_1において、利用者100bが、「他車に任せる」ボタンを選択すると、車両の選択画面78_1が表示される。車両の選択画面78_1は、当該タクシー車両12Bと車両グループを構築可能な他のタクシー車両12A,12Cの一覧を含む画面である。ここで他のタクシー車両12A,12Cの一覧は、タクシー車両12A,12Cの識別情報を並べたリスト形式でもよいし、
図13の選択画面78_1のように、自身のタクシー車両12Bと、周辺の他のタクシー車両12A,12Cとの相対位置関係を示すイメージ図でもよい。利用者100bは、この選択画面78_1を見て、タクシー車両12Aを、目的地の設定を任せるタクシー車両、すなわち、代表車両として選択する。タクシー車両12Bは、ここで選択されたタクシー車両12Aを、代表車両として車両グループ情報52に登録する。利用者100cも同様の手順で、タクシー車両12Aに設定できる。
【0083】
一方、利用者100aは、タクシー車両12Aにおいて、
図13に示す設定画面76_1が提示されれば、「設定」ボタンを選択し、具体的な目的地を設定する。この目的地の設定は、具体的な住所や電話番号を入力するのでもよいし、地図上の点を選択するのでもよい。いずれにしても、具体的な目的地が入力できれば、タクシー車両12Aは、
図14の設定画面76_2を表示する。設定画面76_2は、目的地の設定を完了するための「OK」ボタンと、設定された目的地を他のタクシー車両12B,12Cにも適用するための「他車にも適用」ボタンと、が含まれている。利用者100aが、「他車にも適用」ボタンを選択すると、車両の選択画面78_2が表示される。利用者100aは、この選択画面78_2を見て、タクシー車両12B,12Cを、設定された目的地を適用する車両、すなわち、従属車両12B,12Cとして選択する。タクシー車両12Aは、ここで選択されたタクシー車両12B,12Cを、従属車両として車両グループ情報52に登録する。
【0084】
利用料金の決済に関しても、同様の手順で、代表車両および従属車両を設定する。以上のように、タクシー車両12のユーザI/F28を利用して、車両グループの構築を指示できるようにすることで、利用者端末16を所持していない利用者であっても、車両グループを構築することができる。
【0085】
次に、迎車利用する際の、車両グループ構築の指示の流れについて説明する。
図15は、迎車利用する際に、車両グループ構築の指示の流れを示すイメージ図である。上述した通り、迎車利用の際、利用者100は、利用者端末16を操作して、利用リクエスト48を管理装置14に送信する。利用リクエスト48には、タクシー車両12の乗車位置および乗車時間が含まれている。車両グループを構築したい場合、利用者100は、さらに、タクシー車両12の必要個数Nも管理装置14に送信する。なお、
図15の例では、N=3である。管理装置14は、利用リクエスト48に基づいて、N個のタクシー車両12A,12B,12Cに対して、配車指示50を出力する。このとき、管理装置14は、配車指示50とともに、N個のタクシー車両12A,12B,12Cのうち、1つのタクシー車両12Aを代表車両とし、残りのタクシー車両12B,12Cを従属車両とする車両グループ情報も送信する。タクシー車両12A,12B,12Cは、受信した車両グループ情報52に基づいて、車両グループを構築する。また、タクシー車両12A,12B,12C、すなわち代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cは、配車指示50に基づいて、利用者100から指定された乗車位置へと移動する。
【0086】
利用者100a,100b,100cは、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cが、自身の元へ到着すれば、それぞれの車両に乗車する。このとき、利用者100a,100b,100cが、乗車すべき車両を識別できるように、通知装置32は、互いに連携していることを示す情報を車外に通知する。
【0087】
利用者100a,100b,100cが、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cに乗車すれば、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cは、車両グループの構築の適否について利用者100a,100b,100cに確認する。この確認の流れは、飛び込み利用における場合と同じでよい。以上の構成によれば、迎車利用時に車両グループを構築したい場合、利用者100は、タクシー車両12の必要個数Nを指定するだけでよい。その結果、利用者100はより簡便に、複数のタクシー車両12を利用できる。
【0088】
次に、一括設定処理を行った場合におけるタクシー車両12の走行形態について、
図16を参照して説明する。
図16は、代表利用者100aに指定された1つの地点を代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cそれぞれの目的地に設定した場合の、各車両12A,12B,12Cの走行の様子を示すイメージ図である。
【0089】
代表利用者100aおよび従属利用者100b,100cから一括設定処理が指示された場合、代表利用者100aおよび従属利用者100b,100cは、互いに一緒に行動することを希望しており、車両同士が過度に離れることは望まない、と推測できる。したがって、一括設定処理が指示された場合、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cは、規定の基準に従って並ぶ車列を維持しながら走行する隊列走行を実施する。より具体的に説明すると、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cは、規定の順番で一列に並んだ状態で走行する。このとき、代表車両12Aまたは従属車両12B,12Cは、同じ車両グループに属する後続車両との車間距離である管理距離Dab,Dbcをモニタリングしておく。そして、管理距離Dab,Dbcが、規定の基準距離Ddefを超過した場合、代表車両12Aまたは従属車両12B,12Cは、管理距離Dab,Dbcが基準距離Ddef以下になるまで、減速または停車する。
【0090】
図16の場合、代表車両12Aと従属車両12Bとの間の管理距離Dabが、基準距離Ddefを大きく超えている。また、代表車両12Aと従属車両12Bとの間には、車両グループに属さない他の車両110が入り込んでいる。この場合、代表車両12Aは、一時停車する等して、他の車両110に、代表車両12Aの追い越しを求める。そして、他の車両110の追い越しが完了した後、管理距離Dabが、基準距離Ddef以下になれば、代表車両12Aは、走行を開始する。以降、代表車両12Aは、管理距離Dabが、基準距離Ddef以下を保てるように、その走行速度を調整する。なお、従属車両12Bと従属車両12Cとの管理距離Dbcは、基準距離Ddef以下であるため、従属車両12Bは、特段の減速を行うことなく、走行する。また、従属車両12Cは、同じ車両グループに属する後続車両がないため、管理距離のモニタリングは行わない。以上の通り、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cが、互いの車間距離が基準距離Ddef以下を保つように走行することで、利用者100a,100b,100cは、離れ離れになる不安を感じにくくなる。
【0091】
なお、
図16では、代表車両12Aが、先頭となっているが、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cの車列内における順番は、適宜、変更されてもよい。例えば、代表車両12Aが、車列の最後尾を走行してもよい。また、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cの車列内における順番は、利用者100の指示に基づいて決定してもよい。すなわち、車両グループを構築した際、代表車両12Aまたは従属車両12B,12Cが、利用者100a,100b,100cに対して、代表車両12Aおよび従属車両12B,12Cの走行順序を問い合わせるようにしてもよい。
【0092】
以上の説明で明らかな通り、本明細書で開示するタクシーシステム10によれば、1人の利用者100が、複数のタクシー車両12の利用料金の支払いおよび目的地の設定の少なくとも1つを引き受けることができる。その結果、利用者100は、複数人でともに行動する場合でも、タクシーシステム10を気軽に利用できる。結果として、タクシーシステム10を利用する利用者の利便性をより向上できる。なお、上述したタクシーシステム10の構成は、一例であり、適宜、変更されてもよい。例えば、上述の説明では、タクシー車両12は、1人乗り車両であるが、タクシー車両12は、複数人が乗車可能な複数人乗り車両でもよい。また、上述の説明では、利用者端末16をタクシーシステム10の構成要素としているが、タクシーシステム10は、利用者端末16を有さない構成でもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 タクシーシステム、12 タクシー車両、12A 代表車両、12B,12C 従属車両、14 管理装置、16 利用者端末、16a 代表利用者端末、16b,16c 従属利用者端末、20 車両コントローラ、20a プロセッサ、20b メモリ、22 駆動ユニット、24 車両センサ群、26 通信I/F、28 ユーザI/F、30 決済装置、32 通知装置、36 管理コントローラ、36a プロセッサ、36b メモリ、38 通信I/F、46 利用開始通知、48 利用リクエスト、50 配車指示、52 車両グループ情報、64 確認画面、66 車内画像、76_1,76_2 設定画面、78_1,78_2 選択画面、100 利用者、100a 代表利用者、100b,100c 従属利用者。