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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用シフト装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20240730BHJP
   B60K 20/00 20060101ALI20240730BHJP
   B60K 20/04 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B60K20/02 E
B60K20/00 B
B60K20/02 G
B60K20/04 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021083881
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177541
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】小泉 篤史
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-318478(JP,A)
【文献】実開平04-013861(JP,U)
【文献】実開平07-008256(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
B60K 20/00
B60K 20/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられ、シフトレバーが移動可能に取り付けられた装置本体と、
前記車室内に設けられ、前記シフトレバーを前記車室内に突出させつつ前記装置本体を覆うハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、前記シフトレバーの移動を禁止するロック状態と、前記シフトレバーの移動を許容するアンロック状態とを切替可能なロック装置とを備え、
前記ハウジングは、前記車室の幅方向に延びて前記車室内に面し、前記シフトレバーが配置される本体壁と、
前記本体壁における前記幅方向の端部と接続し、前記本体壁から前記幅方向に交差する第1方向に遠ざかりつつ延びる側壁とを有し、
前記側壁には、取付溝と、
前記取付溝内に位置して前記ロック装置に対する前記ロック状態から前記アンロック状態への切替操作が可能な作業孔と、
前記側壁に取り付けられて前記取付溝内に位置し、前記作業孔を覆うカバー部材とが設けられ
前記カバー部材は、前記側壁への取り付けを行う取付部と、前記取付部と接続するとともに、前記第1方向に延びる壁部とを有し、
前記壁部は、前記本体壁から前記第1方向に遠ざかるにつれて、前記幅方向で前記作業孔に接近するように傾斜していることを特徴とする車両用シフト装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記側壁に設けられた状態において前記幅方向に押圧されることにより、前記ロック装置に対する前記切替操作を行う請求項記載の車両用シフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用シフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の車両用シフト装置が開示されている。この車両用シフト装置は、装置本体と、ハウジングと、ロック装置とを備えている。装置本体は車室内に設けられており、自動変速機と接続されている。自動変速機はエンジンと動力伝達が可能である。装置本体には、シフトレバーが取り付けられている。シフトレバーは、車両の運転者によって操作されることにより、ニュートラル位置、ドライブ位置及びパーキング位置等に移動可能である。
【0003】
ハウジングは、車室内に設けられている。ハウジングは、シフトレバーを車室内に突出させつつ装置本体を覆っている。より具体的には、ハウジングは、本体壁と側壁とカップホルダとを有している。本体壁はハウジングの上部に位置している。本体壁は、車室の幅方向に延びており、車室内に面している。側壁は本体壁における幅方向の端部と接続しており、本体壁から車室の下方に遠ざかりつつ延びている。カップホルダは本体壁に設けられている。カップホルダは本体壁に開口しつつ、下方に向かって延びている。また、カップホルダの内周面には、作業孔が設けられている。作業孔は、ハウジングの内部に連通している。また、内周面にはカバー部材が着脱可能に設けられている。カバー部材は、内周面取り付けられることにより、作業孔を覆っている。
【0004】
ロック装置は、装置本体に組み付けられており、ハウジング内に配置されている。ロック装置は、ロック状態とアンロック状態とに切替可能である。ロック装置は、ディテントピン、カム部材、ソレノイド、ロック解除部材等で構成されている。ディテントピンは、シフトレバーに接続されている。カム部材はディテントピンを保持可能である。ソレノイドは通電されることにより、カム部材を作動させる。ロック解除部材は、ソレノイドに依らずにカム部材を作動させる。
【0005】
この車両用シフト装置では、運転者がシフトレバーをドライブ位置に移動させることにより、エンジンと自動変速機とが動力伝達可能となり車両が走行する。一方、運転者がシフトレバーをニュートラル位置又はパーキング位置に移動させることにより、自動変速機は車両の動力伝達を遮断する。
【0006】
ここで、シフトレバーがパーキング位置に移動することにより、車両ではブレーキが作動した状態となる。また、この車両用シフト装置では、シフトレバーがパーキング位置に移動することで、ロック装置では、ソレノイドが作動してカム部材を作動させることにより、アンロック状態からロック状態に切り替わる。これにより、ロック装置はシフトレバーの移動を禁止する。このため、この車両用シフト装置では、車両の停止時に不意にシフトレバーがパーキング位置からドライブ位置等に移動することを防止している。なお、車両を始動させた際には、ソレノイドが通電されて再び作動する。これにより、カム部材が再び作動することで、ロック装置は、ロック状態からアンロック状態に切り替わる。これにより、ロック装置はシフトレバーの移動を許容する。こうして、運転者は、シフトレバーをドライブ位置に移動させることが可能となり、車両を再び走行させることが可能となる。
【0007】
ところで、シフトレバーをパーキング位置に移動させた状態において、車両に不具合が生じ、車両を始動させることが不可能となれば、ソレノイドに通電が行われず、ロック装置はロック状態を維持することになる。このため、シフトレバーをパーキング位置から移動させることができない。また、シフトレバーがパーキング位置にあるため、車両では、ブレーキが作動した状態が維持される。このため、車両の修理を行うに当たって、車両の搬送作業が困難となることが懸念される。
【0008】
この点、この車両用シフト装置では、修理のために車両の搬送作業を行うに当たり、作業者は、カップホルダの内周面からカバー部材を取り外し、作業孔を露出させる。これにより、作業者は、カップホルダの開口縁から作業孔に工具を進入させることにより、工具を通じてロック解除部材を操作することが可能となっており、ロック装置に対するロック状態からアンロック状態への切替操作を行うことが可能となっている。こうして、この車両用シフト装置では、たとえシフトレバーがパーキング位置にある状態で車両を始動させることが不可能となった場合であっても、ロック装置に対する切替操作を行うことで、シフトレバーをパーキング位置からニュートラル位置に移動させることができる。この結果、この車両用シフト装置では、車両のブレーキを解除した上で車両の搬送作業を行うことができる。
【0009】
このように、この車両用シフト装置では、ロック装置の切替操作を行うに当たって、作業者はハウジングを取り外して、装置本体やロック装置を車室内に露出させる必要がない。さらに、この車両用シフト装置では、作業孔がカップホルダの内周面に設けられており、かつ、作業孔はカバー部材によって覆われている。このため、この車両用シフト装置では、運転者や同乗者が不意に作業孔を通じてロック装置の切替操作を行うことを防止している。また、作業孔はカバー部材に覆われ、かつ、作業孔を覆った状態においてカバー部材は、カップホルダの内周面に配置されるため、カバー部材自体も運転者や同乗者の目に付き難い。このため、ハウジング、ひいては、車両用シフト装置の美観が高くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-73188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記従来の車両用シフト装置では、作業孔がカップホルダの内周面に設けられているため、工具を作業孔内に進入させ難く、ロック装置に対するロック状態からアンロック状態への切替操作を行い難い問題がある。そこで、カップホルダの内周面に換えて、作業孔をハウジングの本体壁に設けることが考えられる。しかし、この場合には、作業孔を覆った状態でカバー部材が本体壁に位置することにより、カバー部材が運転者や同乗者の目に付き易くなることから、ハウジング、ひいては、車両用シフト装置の美観が却って損なわれるおそれがある。
【0012】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ロック装置に対するロック状態からアンロック状態への切替操作が容易であり、かつ、高い美観を発揮可能な車両用シフト装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の車両用シフト装置は、車室内に設けられ、シフトレバーが移動可能に取り付けられた装置本体と、
前記車室内に設けられ、前記シフトレバーを前記車室内に突出させつつ前記装置本体を覆うハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、前記シフトレバーの移動を禁止するロック状態と、前記シフトレバーの移動を許容するアンロック状態とを切替可能なロック装置とを備え、
前記ハウジングは、前記車室の幅方向に延びて前記車室内に面し、前記シフトレバーが配置される本体壁と、
前記本体壁における前記幅方向の端部と接続し、前記本体壁から前記幅方向に交差する第1方向に遠ざかりつつ延びる側壁とを有し、
前記側壁には、取付溝と、
前記取付溝内に位置して前記ロック装置に対する前記ロック状態から前記アンロック状態への切替操作が可能な作業孔と、
前記取付溝内に位置し、前記作業孔を覆うカバー部材とが設けられ
前記カバー部材は、前記側壁への取り付けを行う取付部と、前記取付部と接続するとともに、前記第1方向に延びる壁部とを有し、
前記壁部は、前記本体壁から前記第1方向に遠ざかるにつれて、前記幅方向で前記作業孔に接近するように傾斜していることを特徴とする。
【0014】
本発明の車両用シフト装置では、ハウジングが本体壁と側壁とを有している。そして、側壁は、本体壁における幅方向の端部と接続して第1方向に延びている。つまり、側壁は、ハウジングにおいて、幅方向の端部に位置している。そして、側壁には作業孔が設けられているため、この作業孔を通じて、ロック装置に対するロック状態からアンロック状態への切替操作が可能である。
【0015】
これにより、この車両用シフト装置では、ロック装置の切替操作を行うに当たって、車室からハウジングを取り外して装置本体やロック装置を車室内に露出させる必要がない。また、作業孔が側壁に設けられることにより、この車両用シフト装置では、ハウジングにおける幅方向の端部側からロック装置の切替操作が可能となる。
【0016】
また、作業孔はカバー部材によって覆われるため、この車両用シフト装置では、運転者や同乗者が不意に作業孔を通じてロック装置の切替操作を行うことを防止できる。さらに、カバー部材は側壁に設けられることにより、この車両用シフト装置では、カバー部材についても、ハウジングにおける幅方向の端部に位置する。これにより、作業孔が本体壁に設けられ、作業孔を覆ったカバー部材が本体壁に位置する場合に比べて、この車両用シフト装置では、カバー部材自体も運転者や同乗者の目に付き難い。
【0017】
したがって、本発明の車両用シフト装置は、ロック装置に対するロック状態からアンロック状態への切替操作が容易であり、かつ、高い美観を発揮可能である。
【0018】
カバー部材は、側壁への取り付けを行う取付部と、取付部と接続するとともに、第1方向に延びる壁部とを有している。そして、壁部は、本体壁から第1方向に遠ざかるにつれて、幅方向で作業孔に接近するように傾斜している
【0019】
このため、例えば、壁部について、本体壁から第1方向方向に遠ざかるにつれても、幅方向における作業孔との距離が一定である場合に比べて、壁部、ひいてはカバー部材がより運転者や同乗者の目に付き難くなる。このため、この車両用シフト装置では、より高い美観を発揮できる。
【0020】
カバー部材は、側壁に設けられた状態において幅方向に押圧されることにより、ロック装置に対する切替操作を行うことが好ましい。この場合には、ロック装置に対する切替操作を行うに当たって、側壁からカバー部材を取り外す必要がなく、また、専用の工具も不要となる。このため、この車両用シフト装置では、ロック装置に対する切替操作をより容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車両用シフト装置は、ロック装置に対するロック状態からアンロック状態への切替操作が容易であり、かつ、高い美観を発揮可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1の車両用シフト装置を示す側面図である。
図2図2は、実施例1の車両用シフト装置を示す上面図である。
図3図3は、実施例1の車両用シフト装置に係り、図2のA-A断面を示す断面図である。
図4図4は、実施例1の車両用シフト装置に係り、カバー部材を示す斜視図である。
図5図5は、実施例1の車両用シフト装置に係り、カバー部材を示す後方から見た側面図である。
図6図6は、実施例1の車両用シフト装置に係り、側壁に対するカバー部材の取り付けを示す要部拡大断面図である。
図7図7は、実施例1の車両用シフト装置に係り、側壁に対するカバー部材の取り外しを示す要部拡大断面図である。
図8図8は、実施例1の車両用シフト装置に係り、ロック装置に対する切替操作を示す図3と同様の断面図である。
図9図9は、実施例2の車両用シフト装置に係り、図3と同様の断面図である。
図10図10は、実施例2の車両用シフト装置に係り、図9のB-B断面を示す要部拡大断面図である。
図11図11は、実施例2の車両用シフト装置に係り、ロック装置に対する切替操作を示す図10と同様の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施例1)
図1図3に示すように、実施例1の車両用シフト装置は、車両としての乗用自動車(図示略)に採用されており、車室CR内に配置されている。より具体的には、車両用シフト装置は、車室CRの左右方向の略中央であって、運転席(図示略)と助手席(図示略)との間となる位置に配置されている。ここで、この車両では、車両用シフト装置の左方に運転席が配置されており、車両用シフト装置の右方に助手席が配置されている。なお、車両用シフト装置の左方に助手席が配置され、車両用シフト装置の右方に運転席が配置される構成であっても良い。
【0025】
本実施例では、図1に示す各矢印によって、車室CR及び車両用シフト装置の前後方向、左右方向及び上下方向を規定している。そして、図2以降では、図1に対応して、前後方向、左右方向及び上下方向を規定している。これらの前後方向、左右方向及び上下方向は、互いに直交している。ここで、左右方向は本発明における「幅方向」に相当している。また、上下方向のうち、下方向は本発明における「第1方向」に相当している。なお、これらの各方向は説明の便宜上のための一例である。
【0026】
車両用シフト装置は、図3に示す装置本体1と、ハウジング3と、ロック装置5とを備えている。装置本体1は、車室CR内に設けられている。また、装置本体1には、シフトレバー7及びレバーパネル9が取り付けられている。なお、図3では、説明を容易にするため、装置本体1及びロック装置5を模式化して図示しているとともに、ハウジング3を簡略化して図示している。図6図11についても同様である。
【0027】
装置本体1は公用品であり、構成に関する詳細な説明を省略する。そして、装置本体1は、車両に設けられた自動変速機と接続されている。自動変速機は、車両に設けられたエンジンと動力伝達可能に接続されている。これらの自動変速機及びエンジンについても公用品であり、詳細な説明を省略するとともに図示を省略する。なお、エンジンに換えてモータを車両に設けても良い。また、車両には、バッテリ(図示略)等、車両の走行に必要な部品が設けられている。
【0028】
図1図3に示すように、シフトレバー7は、ロッド7aとレバーグリップ7bとを有している。ロッド7aは円柱状に形成されており、軸方向で上下方向に延びている。図3に示すように、ロッド7aは、下端が装置本体1に接続されており、装置本体1から上方に向かって延びているとともに、装置本体1に対して前後方向に揺動可能となっている。レバーグリップ7bは、ロッド7aの上端に接続されている。なお、ロッド7a及びレバーグリップ7bの形状は適宜設計可能である。
【0029】
シフトレバー7は、車両の運転者(図示略)がレバーグリップ7bを把持しつつ、レバーグリップ7bを前後方向に移動させることにより、ロッド7aが装置本体1に対して前後方向に揺動する。これにより、シフトレバー7は、図1及び図2において仮想線で示すパーキング位置から、実線で示すドライブ位置まで前後方向に移動可能となっている。つまり、シフトレバー7は、最も後方に移動することによりドライブ位置となる。そして、シフトレバー7は、ドライブ位置から前方に移動することにより、ニュートラル位置となり、さらに、ニュートラル位置から前方に移動することにより、リバース位置となる。そして、リバース位置から前方に移動することにより、パーキング位置となる。なお、シフトレバー7は、例えば前後方向及び左右方向に移動する構成であっても良い。
【0030】
そして、装置本体1は、シフトレバー7がドライブ位置、ニュートラル位置、リバース位置及びパーキング位置にそれぞれ移動することに応じて、自動変速機を作動させる。
【0031】
レバーパネル9は、前後方向に延びる板状に形成されている。レバーパネル9には、挿通孔9aが形成されている。挿通孔9aにはロッド7aが挿通されている。レバーパネル9は、挿通孔9aにロッド7aを挿通させた状態でロッド7aに固定されている。これにより、レバーパネル9は、シフトレバー7が前後方向に移動することに伴って、前後方向に移動する。
【0032】
図1及び図2に示すように、ハウジング3は、車室CR内に設けられており、フロアパネル21上に配置されている。ハウジング3は樹脂製であり、本体壁と31と、右側壁33と、左側壁35と、前壁37とを有している。右側壁33は、本発明における「側壁」の一例である。これらの本体壁と31、右側壁33、左側壁35及び前壁37により、ハウジング3は、略矩形の箱状をなしている。これにより、図3に示すように、ハウジング3の内部には、収容空間3aが形成されている。なお、ハウジング3の後部は、車室CR内に設けられた後席(図示略)によって閉鎖されている。
【0033】
ハウジング3は、シフトレバー7を車室CR内に突出させつつ、装置本体1を上方から覆っている。より具体的には、ハウジング3は、シフトレバー7について、ロッド7aの一部と、レバーグリップ7bの全体とを車室CR内に突出させつつ、装置本体1の全体を上方から覆っている。これにより、ハウジング3は、収容空間3aに装置本体1の全体を収容している。
【0034】
本体壁31は、ハウジング3において最も上方に位置しており、ハウジング3の上面を構成している。本体壁31は、左右方向及び前後方向に延びている。より具体的には、本体壁31は、左右方向に比べて前後方向が長く延びている。また、本体壁31には、開口31aが形成されている。図3に示すように、開口31aは、収容空間3aに連通している。そして、開口31a内にシフトレバー7が配置されている。
【0035】
また、開口31aには、インジケータカバー39が取り付けられている。図1及び図2に示すように、インジケータカバー39には、シフトレバー7のドライブ位置を示す英文字「D」、ニュートラル位置を示す英文字「N」、リバース位置を示す英文字「R」及びパーキング位置を示す英文字「P」がそれぞれ付されている。
【0036】
また、インジケータカバー39には、案内溝39aが形成されている。案内溝39aは前後方向に延びる矩形の長孔状に形成されており、インジケータカバー39を上下方向に貫通している。開口31a内に配置されたシフトレバー7は、この案内溝39aを通じて、車室CR内に突出している。案内溝39aは、シフトレバー7がドライブ位置とパーキング位置との間を移動するに当たって、シフトレバー7を前後方向に案内する。
【0037】
一方、図3に示すように、レバーパネル9は、収容空間3a内に配置されており、インジケータカバー39の下方に位置している。そして、レバーパネル9は、案内溝39aを通じて車室CR内に臨んでいる。なお、開口31a、インジケータカバー39及び案内溝39aの各形状は適宜設計可能である。
【0038】
図1及び図2に示すように、右側壁33は、ハウジング3において最も右方に位置しており、ハウジング3の右側面を構成している。図3に示すように、右側壁33は、第1傾斜部33aと第1立壁部33bとで構成されている。第1傾斜部33aは、本体壁31の右端と接続しており、本体壁31と一体をなしている。第1傾斜部33aは、本体壁31の右端から下方に向かって延びている。この際、第1傾斜部33aは、下方に向かうにつれて、本体壁31から右方に徐々に離隔するように傾斜している。
【0039】
第1立壁部33bは、第1傾斜部33aの下方に位置している。第1立壁部33bは、第1傾斜部33aの下端と接続しており、下方に向かって延びている。この際、第1立壁部33bは、下方に向かうにつれて、第1傾斜部33aよりも小さい角度において、本体壁31から右方に徐々に離隔するように傾斜している。そして、図1に示すように、第1立壁部33bは、下端でフロアパネル21と接続している。これらの第1傾斜部33a及び第1立壁部33bにより、右側壁33は、本体壁31から下方に遠ざかりつつ延びる形状をなしている。
【0040】
図3に示すように、左側壁35は、ハウジング3において最も左方に位置しており、ハウジング3の左側面を構成している。左側壁35は、第2傾斜部35aと第2立壁部35bとで構成されている。第2傾斜部35aは、本体壁31の左端と接続しており、本体壁31と一体をなしている。第2傾斜部35aは、本体壁31の左端から下方に向かって延びている。この際、第2傾斜部35aは、下方に向かうにつれて、本体壁31から左方に徐々に離隔するように傾斜している。
【0041】
第2立壁部35bは、第2傾斜部35aの下方に位置している。第2立壁部35bは、第2傾斜部35aの下端と接続しており、下方に向かって延びている。この際、第2立壁部35bは、下方に向かうにつれて、第2傾斜部35aよりも小さい角度において、本体壁31から左方に徐々に離隔するように傾斜している。そして、第1立壁部33bと同様、第2立壁部35bについても、下端でフロアパネル21と接続している。これらの第2傾斜部35a及び第2立壁部35bにより、左側壁35についても、本体壁31から下方に遠ざかりつつ延びる形状をなしている。
【0042】
図1に示すように、前壁37は、ハウジング3において最も前方に位置しており、ハウジング3の前面を構成している。前壁37は、第3傾斜部37aと第3立壁部37bとで構成されている。第3傾斜部37aは、本体壁31の前端と接続しており、本体壁31と一体をなしている。第3傾斜部37aは、本体壁31の前端から下方に向かって延びている。この際、第3傾斜部37aは、下方に向かうにつれて、本体壁31から前方に徐々に離隔するように傾斜している。
【0043】
第3立壁部37bは、第3傾斜部37aの下方に位置している。第3立壁部37bは、第3傾斜部37aの下端と接続しており、下方に向かって延びている。この際、第1立壁部33b及び第2立壁部35bと異なり、第3立壁部37bは、下方に向かって略垂直に延びており、下端でフロアパネル21と接続している。これらの第3傾斜部37a及び第3立壁部37bにより、前壁37についても、本体壁31から下方に遠ざかりつつ延びる形状をなしている。なお、第3立壁部37bについて、下方に向かうにつれて、本体壁31から前方に徐々に離隔するように傾斜する形状をなしていても良い。また、第1立壁部33b及び第2立壁部35bについて、略垂直で下方に向かって延びる形状をなしていても良い。
【0044】
また、図2に示すように、第3傾斜部37aは、右端で第1傾斜部33aの前端と接続しているとともに、左端で第2傾斜部35aの前端と接続している。同様に、第3立壁部37bは、右端で第1立壁部33bの前端と接続している。また、図示を省略するものの、第3立壁部37bは、左端で第2立壁部35bの前端と接続している。こうして、前壁37は、右側壁33及び左側壁35と接続しており、右側壁33及び左側壁35と一体をなしている。
【0045】
また、ハウジング3では、図3に示すように、右側壁33に取付溝11及び作業孔13が設けられている。より具体的には、取付溝11及び作業孔13は、それぞれ右側壁33の第1立壁部33bに設けられている。取付溝11は、前後方向及び上下方向に延びる区形状をなしている。ここで、取付溝11は、上下方向の長さに比べて前後方向の長さが長く設定されている。そして、取付溝11は、第1立壁部33bのほぼ前端から後端まで延びている。取付溝11は、第1立壁部33bから略水平で右方、つまり車室CR内に開口している。
【0046】
作業孔13は、取付溝11内に位置しており、取付溝11と左右方向で連通している。ここで、作業孔13は、取付溝11内において、後述するロック解除部材5bと左右方向で対向する位置に設けられている。作業孔13は、第1立壁部33bを左右方向に貫通している。これにより、作業孔13は、取付溝11を通じて収容空間3aを車室CR内に連通させている。なお、詳細な図示を省略するものの、作業孔13は、取付溝11よりも前後方向に短く形成されている。
【0047】
また、第1立壁部33bには、取付溝11内において作業孔13よりも前方となる個所に係合孔15が形成されている。係合孔15は、第1立壁部33bを左右方向に貫通している。なお、図示を省略するものの、取付溝11内において作業孔13よりも後方となる個所にも係合孔15が形成されている。
【0048】
さらに、右側壁33には、第1カバー部材17が設けられている。第1カバー部材17は、本発明における「カバー部材」の一例である。第1カバー部材17は樹脂製である。図4及び図5に示すように、第1カバー部材17は、壁部41と、底壁部42と、第1係合突起43と、第2係合突起44とを有している。第1係合突起43及び第2係合突起44は、本発明における「取付部」の一例である。
【0049】
図4に示すように、壁部41は、前後方向及び上下方向に延びる矩形の板状に形成されている。より具体的には、壁部41は、取付溝11の形状に対応する形状をなしており、上下方向の長さに比べて前後方向の長さが長く形成されている。また、壁部41は、上端から下端に向かうにつれて、所定の角度で徐々に右方から左方に向かって傾斜する形状をなしている。なお、壁部41の傾斜角度は適宜設計可能である。
【0050】
図5に示すように、壁部41は、表面411と裏面412とを有している。表面411は、第1カバー部材17が取付溝11に取り付けられることにより、車室CRに面するようになっている。一方、裏面412は表面411の反対側に位置しており、第1カバー部材17がハウジング3の右側壁33に取り付けられることにより、取付溝11の内部に面するようになっている。なお、右側壁33対する第1カバー部材17の取り付けについては後述する。
【0051】
図4に示すように、底壁部42は、前後方向及び左右方向に延びる矩形の板状に形成されている。底壁部42における前後方向の長さは、壁部41の前後方向の長さと等しくなっている。図5に示すように、底壁部42は、左右方向に略水平に延びている。また、底壁部42は、右端で壁部41の下端と接続しており、壁部41と一体をなしている。
【0052】
図4に示すように、第1係合突起43と第2係合突起44とは、前後方向に離隔して配置されており、それぞれ壁部41及び底壁部42に一体に形成されている。より具体的には、第1係合突起43は、壁部41及び底壁部42における略前端となる箇所に一体に形成されており、壁部41の裏面412から左方に向かって延びている。一方、第2係合突起44は、壁部41及び底壁部42における略後端となる箇所に一体に形成されており、裏面412から左方に向かって延びている。
【0053】
第1係合突起43は、第1基端部位431と第1先端部位432と第1段差部位433とを有している。第1基端部位431は、壁部41及び底壁部42と接続している。第1先端部位432は、第1基端部位431に一体に形成されており、第1基端部位431の左端から左方に向かって延びている。また、第1先端部位432は、第1基端部位431よりも上下方向の長さが短く形成されている。第1段差部位433は、第1基端部位431と第1先端部位432との間に配置されており、上下方向に略垂直に延びて第1基端部位431と第1先端部位432とに接続している。
【0054】
第2係合突起44は、第2基端部位441と第2先端部位442と第2段差部位443とを有している。第2係合突起44は、第1係合突起43と同一の形状である。これにより、第2基端部位441、第2先端部位442及び第2段差部位443は、それぞれ第1基端部位431、第1先端部位432及び第1段差部位433と同一の形状となっている。
【0055】
図3及び図6図8に示すように、第1カバー部材17は、ハウジング3の右側壁33に対して着脱可能に取り付けられている。右側壁33に第1カバー部材17を取り付けるに当たっては、図6に示すように、第1カバー部材17の第1係合突起43及び第2係合突起44を取付溝11に向けた状態とする。そして、この状態で図6の破線矢印で示すように、第1カバー部材17を取付溝11内に進入させる。そして、作業孔13よりも前方となる個所に形成された係合孔15に対して、第1係合突起43の第1先端部位432を進入させることにより、第1先端部位432を係合孔15に係止させる。また、図示を省略するものの、作業孔13よりも後方となる個所に形成された係合孔15に対して、第2係合突起44の第2先端部位442を進入させることにより、第2先端部位442を係合孔15に係止させる。
【0056】
こうして、右側壁33、より具体的には、右側壁33の第1立壁部33bに対して第1カバー部材17が取り付けられ、第1カバー部材17は、取付溝11内に位置する。ここで、各係合孔15に第1先端部位432及び第2先端部位442をそれぞれ進入させることにより、取付溝11の奥部、すなわち右側壁33において各係合孔15の周囲となる箇所に、第1段差部位433及び第2段差部位443が当接する。これにより、第1先端部位432及び第2先端部位442が各係合孔15内に過度に進入することが防止され、第1カバー部材17が取付溝11内に過度に進入することが防止される。なお、図3及び図6図8では、説明を容易にするため、第1カバー部材17の形状を簡略化して図示している。
【0057】
また、このように、第1カバー部材17が取付溝11内に位置することにより、作業孔13は、第1係合突起43と第2係合突起44との間に配置されて、壁部41の裏面412と対向する。こうして、作業孔13は、第1カバー部材17に覆われている。このため、図1及び図3に示すように、右側壁33に第1カバー部材17が取り付けられている状態では、作業孔13は第1カバー部材17によって車室CRからは見えなくなっている。
【0058】
ここで、第1カバー部材17では、壁部41が上端から下端に向かうにつれて、徐々に左方に向かって傾斜する形状をなしている。これにより、右側壁33に第1カバー部材17が取り付けられることにより、取付溝11内において、第1カバー部材17は、本体壁31から下方に遠ざかるにつれて、作業孔13に近づくように左方に傾斜している。つまり、第1カバー部材17は、上方から下方に向かうにつれて、取付溝11の奥側に進入するようになっている。
【0059】
一方、右側壁33から第1カバー部材17を取り外すに当たっては、図7の破線矢印で示すように、第1カバー部材17を右方に移動させて、取付溝11内から第1カバー部材17を右方に引き抜く。これにより、各係合孔15に対する第1先端部位432及び第2先端部位442の係止が解除され、各係合孔15から第1先端部位432及び第2先端部位442がそれぞれ脱出する。こうして、右側壁33から第1カバー部材17を取り外すことにより、作業孔13は第1カバー部材17によって覆われなくなる。この結果、図8に示すように、取付溝11を通じて、作業孔13が車室CR内に露出する。
【0060】
図3及び図8に示すように、ロック装置5は装置本体1に組み付けられており、ハウジング3の収容空間3a内に配置されている。ロック装置5は公用品と同様の構成であり、カム部材5a及びロック解除部材5bを有している他、図示しないディテントピン及びソレノイド等を有している。ディテントピンは、ロッド7aに接続されている。カム部材5aはディテントピンを保持可能である。ソレノイドは、カム部材5aを作動させる。ロック解除部材5bは、カム部材5aに連結されている。ここで、ロック解除部材5bは、装置本体1及びロック装置5が収容空間3a内に収容された際、作業孔13に臨む位置に配置されている。
【0061】
ロック装置5は、図3に示すロック状態と、図8に示すアンロック状態とに切替可能となっている。ロック装置5は、図3に示すロック状態では、ソレノイドが車両から通電されることにより、カム部材5aを作動させる。これにより、カム部材5aは、ディテントピンによって、装置本体1に対するロッド7aの前後方向の移動を禁止させる。これにより、ロック装置5は、ロック状態となることにより、装置本体1に対するシフトレバー7の前後方向の移動を禁止する。
【0062】
一方、ロック装置5がロック状態にある場合において、ソレノイドが再び通電されることにより、ソレノイドはカム部材5aを作動させる。これにより、カム部材5aは、ディテントピンに対して、ロッド7aの前後方向の移動を許容させる。こうして、ロック装置5は、図8に示すアンロック状態となることにより、装置本体1に対するシフトレバー7の前後方向の移動を許容する。また、ロック解除部材5bは、ロック装置5がロック状態にある場合において、外部から操作されることにより、ソレノイドの作動に依らずにカム部材5aを作動させて、ロック装置5をロック状態からアンロック状態に切替可能である。なお、ロック装置5は、ハウジング3の収容空間3a内であれば、装置本体1から離隔して配置されていても良い。また、ロック装置5は、ロック状態とアンロック状態とを実現可能であり、かつ、外部からの操作によってロック状態からアンロック状態に切替可能であれば、他の構成であっても良い。
【0063】
以上のように構成された車両用シフト装置では、運転手がエンジンを作動させて車両が始動することにより、ロック装置5では、ソレノイドに通電が行われる。このため、ロック装置5は、ロック状態からアンロック状態に切り替わる。これにより、運転者はシフトレバー7の操作が可能となり、シフトレバー7をパーキング位置からドライブ位置やリバース位置に移動させることが可能となる。こうして、車両では、エンジンと自動変速機とが動力伝達可能となることにより、運転手が移動させたシフトレバー7の位置に応じた走行を開始する。
【0064】
一方、目的地等に到着し、車両の走行を停止させた状態で運転者がシフトレバー7をパーキング位置に移動させることにより、車両では、エンジンと自動変速機との動力伝達が遮断される。また、シフトレバー7がパーキング位置となることにより、車両ではブレーキが作動する。
【0065】
また、運転者がシフトレバー7をパーキング位置に移動させることにより、ロック装置5では、ソレノイドに再び通電が行われることで、アンロック状態からロック状態に切り替わる。これにより、この車両用シフト装置では、車両の停止時に不意にシフトレバー7がパーキング位置からドライブ位置等に移動することを防止する。そして、運転者がエンジンの作動を停止させることにより、車両が完全に停止する。
【0066】
ところで、シフトレバー7をパーキング位置に移動させた状態において、例えばバッテリ不具合によって車両を始動させることが不可能となれば、ソレノイドに通電が行われず、ロック装置5はロック状態を維持することになる。このため、シフトレバーをパーキング位置から移動させることができず、車両の修理を行う必要が生じる。しかし、シフトレバーがパーキング位置にあることから、車両では、ブレーキが作動した状態が維持される。このため、車両の修理を行うに当たって、車両の搬送作業が困難となることが懸念される。
【0067】
この点、この車両用シフト装置では、車両の搬送作業を行うに当たり、作業者(図示略)は、図7に示すように、取付溝11内から第1カバー部材17を右方に引き抜くことにより、右側壁33から第1カバー部材17を取り外す。これにより、作業者は、取付溝11を通じて、作業孔13を車室CR内に露出させる。
【0068】
そして、このように、作業孔13を車室CR内に露出させた状態において、図8に示すように、作業者は、ハウジング3の右方から、工具100の先端部分を取付溝11内、さらには、作業孔13内に進入させる。ここで、取付溝11は、第1立壁部33bから略水平で右方に開口しており、取付溝11と作業孔13とは左右方向で対向しつつ連通している。このため、作業者は工具100の先端部分について、左右方向に略水平の状態で取付溝11内及び作業孔13内に進入させる。また、ロック装置5においてロック解除部材5bは、装置本体1及びロック装置5が収容空間3a内に収容された際、作業孔13に臨む位置に配置されている。このため、作業者は、作業孔13に進入させた工具100を通じて、ハウジング3の外部からロック解除部材5bを直接操作することが可能となっている。具体的には、工具100によって、ロック解除部材5bをロッド7a側、つまり左方に向けて押圧することにより、ロック解除部材5bに対する操作を行う。これにより、作業者は、ソレノイドの作動に依らずにカム部材5aを作動させることができ、ロック装置5に対するロック状態からアンロック状態への切替操作を行うことができる。
【0069】
こうして、この車両用シフト装置では、たとえシフトレバーがパーキング位置にある状態で車両を始動させることが不可能となった場合であっても、シフトレバーをパーキング位置からニュートラル位置に移動させることができる。この結果、作業者は、車両のブレーキを解除した上で車両の搬送作業を行うことができるため、車両の搬送作業、ひいては車両の修理を容易に行うことができる。
【0070】
このように、この車両用シフト装置では、ロック装置5に対するロック状態からアンロック状態への切替操作を行うに当たって、作業者はハウジング3をフロアパネル21から取り外して、装置本体1及びロック装置5を車室CR内に露出させる必要がない。また、作業孔13、取付溝11及び第1カバー部材17が設けられた右側壁33は、ハウジング3において右端に位置している。これにより、この車両用シフト装置では、右側壁33からの第1カバー部材17の取り外しと、工具100によるロック解除部材5bの操作とについて、いずれも、ハウジング3の右端側から行うことが可能となっている。
【0071】
さらに、この車両用シフト装置では、第1立壁部33bに取付溝11及び作業孔13が形成されている、そして、取付溝11が第1立壁部33bから略水平で右方に開口しており、取付溝11と作業孔13とは左右方向で対向しつつ連通している。このため、この車両用シフト装置では、ハウジング3の外部、つまり車室CRから作業孔13内に工具を進入させ易くなっている。さらに、ロック装置5では、ロック解除部材5bを押圧することでロック解除部材5bに対する操作を行うことが可能となっている。つまり、この車両用シフト装置では、工具100によってロック解除部材5bを操作するに当たり、工具100の先端部分を左右方向に略水平の状態で作業孔13内に進入させつつ、工具100によってロック解除部材5bを押圧すれば足りる。このため、この車両用シフト装置では、作業孔13内への工具100の進入及び工具100によるロック解除部材5bの操作についても容易となっている。
【0072】
また、工具100によるロック装置5の切替操作を行う場合を除いて、作業孔13は、取付溝11に取り付けられた第1カバー部材17によって覆われる。このため、この車両用シフト装置では、運転者や同乗者が不意に作業孔13を通じてロック装置5の切替操作を行うことを防止できる。さらに、作業孔13が右側壁33に設けられることにより、第1カバー部材17は右端部に位置して作業孔13を覆っている。これにより、例えば第1カバー部材17がハウジング3の本体壁31に設けられて作業孔13を覆う場合に比べて、この車両用シフト装置では、第1カバー部材17自体も運転者や同乗者の目に付き難くなっている。換言すれば、この車両用シフト装置では、図2に示すように、運転者や同乗者が車室CRの上方からハウジング3を見下ろしても、作業孔13や作業孔13を覆う第1カバー部材17は見えることがない。
【0073】
さらに、この車両用シフト装置では、助手席に着座した状態で同乗者がハウジング3を見た場合、同乗者の視線は、図3の白色矢印で示すように、ハウジング3を右上方から左下方へ見下ろす形となる。ここで、右側壁33において、取付溝11は、第1立壁部33bに設けられることにより、第1傾斜部33aの下方に位置している。このため、取付溝11内に第1カバー部材17が配置されることにより、第1カバー部材17についても、第1傾斜部33aの下方に位置する。これにより、このため、同乗者の視線には、第1傾斜部33aが入り易くなっている一方で、第1傾斜部33aの下方に位置する第1カバー部材17については、同乗者の視線に入り難くなっている。
【0074】
特に、図4及び図5に示すように、第1カバー部材17において、壁部41は、上端から下端に向かうにつれて、徐々に右方から左方に向かって傾斜する形状をなしている。このため、図3及び図6に示すように、第1カバー部材17が取付溝11に取り付けられることにより、壁部41は、下方に向かうにつれて、徐々に取付溝11の奥側、つまり、作業孔13に近づくように左方に傾斜することになる。この点においても、この車両用シフト装置では、右側壁33に設けられた状態にある第1カバー部材17が同乗者の視線に入り難くなっている。
【0075】
さらに、壁部41が下方に向かうにつれて作業孔13に近づくように左方に傾斜することにより、第1カバー部材17は、第1傾斜部33aの下端と連続しつつ、第1傾斜部33aの下端からハウジング3の内部に入り込むような意匠を創出している。こうして、図1に示すように、この車両用シフト装置において、第1カバー部材17が設けられた状態にある右側壁33は、本体壁31の右端から下方に向かって本体壁31から右方に離隔するように傾斜した後、再び本体壁31に近づくように傾斜する意匠となっている。
【0076】
したがって、実施例1の車両用シフト装置は、ロック装置5に対するロック状態からアンロック状態への切替操作が容易であり、かつ、高い美観を発揮可能である。
【0077】
(実施例2)
図9に示すように、実施例2の車両用シフト装置では、第1カバー部材17に換えて、第2カバー部材19が右側壁33に設けられている。第2カバー部材19についても、本発明における「カバー部材」の一例である。
【0078】
また、この車両用シフト装置では、ロック解除部材5bが作業孔13に臨みつつ、作業孔13内に一部が進入した状態となっている。さらに、図10及び図11に示すように、この車両用シフト装置では、実施例1の車両用シフト装置に比べて、取付溝11の前後方向の長さが短く設定されている。
【0079】
第2カバー部材19は、第1カバー部材17と同様に、壁部41及び底壁部42を有している。ここで、上記のように、この車両用シフト装置では、取付溝11の前後方向の長さが短くなっている。このため、第2カバー部材19では、取付溝11の前後方向の長さに対応して、壁部41及び底壁部42について、第1カバー部材17に比べて、前後方向に短く形成されている。つまり、第2カバー部材19は、第1カバー部材17に比べて、前後方向の長さが短くなっている。なお、図9図11では、説明を容易にするため、第2カバー部材19の形状を簡略化して図示している。
【0080】
また、第2カバー部材19は押圧部45を有している。図9に示すように、押圧部45は、上下方向に略垂直に延びている。押圧部45は、下端で底壁部42の左端と接続しており、底壁部42と一体をなしている。また、図10及び図11に示すように、押圧部45の前後方向の長さは、壁部41及び底壁部42の前後方向と等しくなっている。
【0081】
さらに、第2カバー部材19は、第1係合突起43及び第2係合突起44に換えて、第1係合爪46及び第2係合爪47を有している。これらの第1係合爪46及び第2係合爪47も、本発明における「取付部」の一例である。
【0082】
第1係合爪46と第2係合爪47とは、前後方向に離隔して配置されており、それぞれ押圧部45に一体に形成されている。より具体的には、第1係合爪46は、押圧部45における前方側に一体に形成されており、押圧部45から左方に向かって延びている。一方、第2係合爪47は、押圧部45における後方側に一体に形成されており、押圧部45から第1係合爪46と等しい長さで左方に向かって延びている。ここで、第1係合爪46と第2係合爪47とにおける前後方向の間隔は、作業孔13の前後方向の長さに整合するように設定されている。
【0083】
また、第2カバー部材19では、押圧部45において、第1係合爪46よりも前方となる個所に第1保持凸部451が形成されているとともに、第2係合爪47よりも後方となる個所に第2保持凸部452が形成されている。第1保持凸部451及び第2保持凸部452は、それぞれ押圧部45から左方に向かって突出している。また、第1保持凸部451には、第1コイルばね51が挿通されている。同様に、第2保持凸部452には、第2コイルばね53が挿通されている。なお、第1保持凸部451及び第2保持凸部452が左方に突出する長さは、第1係合爪46及び第2係合爪47が左方に延びる長さよりも短く設定されている。
【0084】
さらに、この車両用シフト装置では、右側壁33に対して、第3保持凸部453及び第4保持凸部454が形成されている。第3保持凸部453及び第4保持凸部454は、それぞれ右側壁33において、取付溝11の奥部となる個所に形成されている。そして、第3保持凸部453と第4保持凸部454とは、作業孔13を挟んで前後に配置されている。具体的には、第3保持凸部453は、作業孔13よりも前方側であって、第1保持凸部451と左右方向で対向する個所に配置されている。一方、第4保持凸部454は、作業孔13よりも後方側であって、第2保持凸部452と左右方向で対向する個所に配置されている。第3保持凸部453及び第4保持凸部454は、それぞれ右側壁33から右方に向かって突出している。なお、この車両用シフト装置では、実施例1の車両用シフト装置と異なり、右側壁33に対して各係合孔15が形成されていない。
【0085】
第2カバー部材19についても、ハウジング3の右側壁33、より具体的には、右側壁33の第1立壁部33bに取り付けられている。右側壁33に第2カバー部材19を取り付けるに当たっては、第2カバー部材19の第1係合爪46及び第2係合爪47を取付溝11に向けた状態とする。そして、この状態で第2カバー部材19を取付溝11内に進入させる。そして、作業孔13内に第1係合爪46及び第2係合爪47をそれぞれ進入させつつ、右側壁33において作業孔13の外周となる個所に、第1係合爪46及び第2係合爪47を係止させる。
【0086】
また、第1コイルばね51について、第1保持凸部451とは反対側を第3保持凸部453に挿通する。同様に、第2コイルばね53について、第2保持凸部452とは反対側を第4保持凸部454に挿通する。これにより、第1保持凸部451と第3保持凸部453とによって第1コイルばね51を保持させるとともに、第2保持凸部452と第4保持凸部454とによって第2コイルばね53を保持させる。
【0087】
こうして、右側壁33、より具体的には、右側壁33の第1立壁部33bに対して第2カバー部材19が取り付けられ、第2カバー部材19は、取付溝11内に位置する。これにより、第2カバー部材19では、押圧部45が作業孔13、さらには、ロック解除部材5bと前後方向で対向する。また、第1コイルばね51及び第2コイルばね53によって、第2カバー部材19は、作業孔13から右方に離隔するように付勢されている。ここで、第1係合爪46及び第2係合爪47が作業孔13の外周に係止されているため、第2カバー部材19は、第1コイルばね51及び第2コイルばね53の付勢力によって、取付溝11から右方に脱落することはない。この車両用シフト装置における他の構成は実施例1の車両用シフト装置と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0088】
この車両用シフト装置では、ロック装置5に対するロック状態からアンロック状態への切替操作を行うに当たって、作業者は、図11の黒色矢印で示すように、車室CRから第2カバー部材19を作業孔13に向けて左方に押圧する。これにより、第2カバー部材19は、第1コイルばね51及び第2コイルばね53の付勢力に抗しつつ、作業孔13に接近する。これにより、第2カバー部材19では、押圧部45がロック解除部材5bと当接しつつ、ロック解除部材5bを左方に押圧する。これにより、この車両用シフト装置においても、ロック解除部材5bの操作を操作することで、作業者は、ソレノイドの作動に依らずにカム部材5aを作動させることができ、ロック装置5に対するロック状態からアンロック状態への切替操作を行うことが可能となっている。なお、ロック装置5に対する切替操作が終了し、作業者が第2カバー部材19に対する押圧を解除すれば、第2カバー部材19は、第1コイルばね51及び第2コイルばね53の付勢力によって、再び図10に示す位置に復帰する。
【0089】
このように、この車両用シフト装置では、ロック装置5に対する切替操作を行うに当たって、作業者は、右側壁33からの第2カバー部材19の取り外しを行う必要がなく、第2カバー部材19を作業孔13に向けて押圧するだけで足りる。また、この車両用シフト装置では、ロック装置5に対する切替操作を行うに際して、工具100も不要となっている。このため、この車両用シフト装置では、ロック装置5に対する切替操作がより容易となっている。
【0090】
さらに、この車両用シフト装置においても、取付溝11に第2カバー部材19が取り付けられることにより、第2カバー部材19は第1傾斜部33aの下方に位置する。このため、図9の白色矢印で示すように、この車両用シフト装置においても、第2カバー部材19が同乗者の視線に入り難くなっている。また、また、この車両用シフト装置では、実施例1の車両用シフト装置に比べて、取付溝11及び第2カバー部材19が前後方向に短く形成されている。この点においても、この車両用シフト装置では、第2カバー部材19が同乗者の視線に入り難くなっている。そして、この車両用シフト装置では、ロック装置5に対する切替操作に関係なく、常に第2カバー部材19によって作業孔13を覆うことが可能となっている。これらのため、この車両用シフト装置では、より高い美観を発揮する。この車両用シフト装置における他の作用は、実施例1の車両用シフト装置と同様である。
【0091】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0092】
例えば、実施例1、2の車両用シフト装置は、車室CRにおいて運転席と助手席との間に配置されている。しかし、これに限らず、車両用シフト装置について、インスツルメントパネルの下方に設けられて、インスツルメントパネルと接続する構成としても良い。また、この場合、右側壁33や左側壁35は、本体壁31から車室CRの前方に向かって離隔するように延びる形状としても良い。つまり、前方向を本発明における「第1方向」としても良い。
【0093】
また、実施例1の車両用シフト装置では、ハウジング3の右側壁33に作業孔13、取付溝11及び第1カバー部材17を設けている。しかし、これに限らず、左側壁35に作業孔13、取付溝11及び第1カバー部材17を設ける構成としても良い。実施例2の車両用シフト装置についても同様である。
【0095】
また、実施例1の車両用シフト装置において、取付溝11及び第1カバー部材17の前後方向の長さについて、実施例2の車両用シフト装置のように短く設定しても良い。また、実施例2の車両用シフト装置において、取付溝11及び第2カバー部材19の前後方向の長さについて、実施例1の車両用シフト装置のように長く設定しても良い。
【0096】
さらに、実施例1の車両用シフト装置において、作業孔13を通じて、ロック解除部材5bを前方向や後方向等に移動させることによって、ロック解除部材5bの操作を行う構成としても良い。
【0097】
また、実施例2の車両用シフト装置では、第2カバー部材19が右側壁33に取り付けられた状態において、押圧部45とロック解除部材5bとが左右方向に僅かに離隔している。しかし、これに限らず、第2カバー部材19が右側壁33に取り付けられた状態において、押圧部45とロック解除部材5bとが当接していても良い。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、乗用自動車の他、運送車両や産業車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1…装置本体
3…ハウジング
5…ロック装置
7…シフトレバー
13…作業孔
17…第1カバー部材(カバー部材)
19…第2カバー部材(カバー部材)
31…本体壁
33…右側壁(側壁)
41…壁部
43…第1係合突起(取付部)
44…第2係合突起(取付部)
46…第1係合爪(取付部)
47…第2係合爪(取付部)
CR…車室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11