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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】軸ずれ推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/40 20060101AFI20240730BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20240730BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20240730BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20240730BHJP
【FI】
G01S7/40 126
G01S13/931
G01S7/497
G01S17/931
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021090345
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182658
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康弘
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-198159(JP,A)
【文献】特開2008-94249(JP,A)
【文献】特開2004-184331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/51
13/00 - 13/95
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(VH)に搭載されたレーダ装置(20)による検出結果に基づいて、前記車両の前方で走行する先行車両のリフレクタの位置を示すリフレクタ位置情報を取得するように構成されたリフレクタ情報取得部(S110,S120)と、
前記リフレクタの位置と前記リフレクタの存在確率との対応関係が予め設定された尤度モデルと、複数の前記リフレクタ位置情報とを用いて、最尤推定法により、前記レーダ装置の軸ずれ量を算出するように構成された軸ずれ量算出部(S40~S60)と
を備える軸ずれ推定装置(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記尤度モデルにおける前記リフレクタの位置は、前記レーダ装置と前記リフレクタとの間の距離と、前記レーダ装置がレーダ波を送受信する方向となる光軸(LA)に対して前記リフレクタが存在する垂直方向の角度である垂直角度とを含む軸ずれ推定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記リフレクタの高さが予め設定された除外判定高を超えているか否かを判断し、前記リフレクタの高さが前記除外判定高を超えている場合には、前記リフレクタの高さが前記除外判定高を超えている前記リフレクタ位置情報を、前記軸ずれ量算出部による前記軸ずれ量の算出から除外するように構成されたリフレクタ高除外部(S130)を備える軸ずれ推定装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
複数の前記先行車両のうち、一つの前記先行車両を第1先行車両とし、前記第1先行車両とは異なる前記先行車両を第2先行車両として、前記レーダ装置に対して前記第2先行車両の一部が前記第1先行車両に隠されているオクルージョンが発生しているか否かを判断し、前記オクルージョンが発生していると判断した場合には、前記第2先行車両の前記リフレクタ位置情報を、前記軸ずれ量算出部による前記軸ずれ量の算出から除外するように構成されたオクルージョン除外部(S140)を備える軸ずれ推定装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記先行車両が虚像であるか否かを判断し、前記先行車両が前記虚像であると判断した場合には、前記虚像であると判断された前記先行車両の前記リフレクタ位置情報を、前記軸ずれ量算出部による前記軸ずれ量の算出から除外するように構成された虚像除外部(S150)を備える軸ずれ推定装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記リフレクタの前記存在確率は、販売されている前記車両の前記リフレクタの設置高さの分布に基づいて設定される軸ずれ推定装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか1項に記載の軸ずれ推定装置であって、
前記リフレクタの前記存在確率は、前記レーダ装置が設置される高さに基づいて設定される軸ずれ推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置の軸ずれ量を推定する軸ずれ推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、反射波の強度が最大となる反射点における垂直方向の角度と、メインスキャン角度とのずれ角度を演算し、このずれ角度に基づいてメインスキャン角度を修正するレーダ装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4890928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アダプティブクルーズコントロール機能の高性能化および高機能化により、レーダ装置は、より遠方の車両を検出することが求められている。このため、レーダ装置が車両に搭載された後におけるレーダ装置の軸ずれ量を高精度に推定する必要がある。
【0005】
レーダ装置によって追跡している車両において反射強度が最も高い反射点(すなわち、リフレクタ)の垂直角度に基づいて軸ずれ量を推定すると、リフレクタの搭載高さのばらつきのために、軸ずれ量の推定精度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本開示は、軸ずれ量の推定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、リフレクタ情報取得部(S110,S120)と、軸ずれ量算出部(S40~S60)とを備える軸ずれ推定装置(10)である。
リフレクタ情報取得部は、車両(VH)に搭載されたレーダ装置(20)による検出結果に基づいて、車両の前方で走行する先行車両のリフレクタの位置を示すリフレクタ位置情報を取得するように構成される。
【0008】
軸ずれ量算出部は、リフレクタの位置とリフレクタの存在確率との対応関係が予め設定された尤度モデルと、複数のリフレクタ位置情報とを用いて、最尤推定法により、レーダ装置の軸ずれ量を算出するように構成される。
【0009】
このように構成された本開示の軸ずれ推定装置は、尤度モデルを用いることによって、先行車両のリフレクタの設置位置のばらつきを考慮して軸ずれ量を算出することができるため、軸ずれ量の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両用障害物認識装置の構成を示すブロック図である。
図2】レーダ波の照射範囲を示す図である。
図3】選択視野の構成を示す図である。
図4】メインルーチンを示すフローチャートである。
図5】特徴量算出処理を示すフローチャートである。
図6】自車両の前方に存在する走行車両の強度分布画像を示す図である。
図7】リフレクタ高判定の方法を説明する図である。
図8】オクルージョン判定の方法を説明する図である。
図9】実像および虚像を示す図である。
図10】リフレクタ搭載高分布を示す図である。
図11】尤度モデルの算出方法を説明する図である。
図12】尤度モデルの一例を示す図である。
図13】軸ずれ量が0°であると仮定したときの確率を算出する方法を説明する図である。
図14】軸ずれ量が0.6°であると仮定したときの確率を算出する方法を説明する図である。
図15】平均値および標準偏差の算出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態の車両用障害物認識装置1は、図1に示すように、電子制御装置10と、レーダ装置20と、センサ部30とを備える。以下、車両用障害物認識装置1を搭載した車両を自車両という。
【0012】
電子制御装置10は、CPU11、ROMおよびRAM等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU11が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROMが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU11が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、電子制御装置10を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0013】
電子制御装置10は、CPU11と、RAM、ROMおよびフラッシュメモリ等の半導体メモリ12(以下、メモリ12)と、通信部13とを備える。
通信部13は、通信線を介して他の車載装置との間でデータ通信可能に接続されており、例えばCAN通信プロトコルに従ってデータの送受信を行う。CANは、Controller Area Networkの略である。CANは登録商標である。
【0014】
レーダ装置20は、図2に示すように、自車両VHの前側に搭載され、予め設定された測定周期が経過する毎に、自車両VHの車幅方向に水平および垂直方向の所定角度範囲内でレーダ波を自車両VHの前方へ向けて走査しながら照射し、反射したレーダ波を検出することによって、物体においてレーダ波を反射した箇所(以下、測距点)までの距離と測距点の角度とを測定する。
【0015】
レーダ装置20は、上記の測定周期を1フレームとして、1フレーム毎に、測距点の距離および角度を測定する。
なお、レーダ装置20は、例えば、レーダ波としてミリ波帯の電磁波を使用するいわゆるミリ波レーダであってもよいし、レーダ波としてレーザ光を用いるレーザレーダであってもよいし、レーダ波として音波を用いるソナーであってもよい。
【0016】
レーダ装置20は、反射したレーダ波をパルス波形で受信する。そしてレーダ装置20は、受信強度が検出閾値を超えたパルス波形を測距点として検出し、このパルス波形のピーク時の受信強度を反射強度とする。
【0017】
またレーダ装置20は、パルス波形のピーク時の時間tpに基づいて、測距点の距離を算出する。さらにレーダ装置20は、レーダ波の走査方向に基づいて、測距点が存在する水平角度および垂直角度を算出する。
【0018】
そしてレーダ装置20は、測距点の距離、水平角度および垂直角度と、反射強度とを示す測距点情報を電子制御装置10へ出力する。
また電子制御装置10は、図1に示すように、通信部13を介して、レーダ装置20による測定結果を、例えば、運転支援を行う運転支援装置40へ送信する。
【0019】
センサ部30は、自車両の挙動を検出する少なくとも1つのセンサを備える。本実施形態では、一例として、センサ部30は、車速に応じた車速検出信号を電子制御装置10へ出力する車速センサ31と、ヨーレートに応じたヨーレート検出信号を電子制御装置10へ出力するヨーレートセンサ32とを備える。
【0020】
レーダ装置20は、水平角度および垂直角度に基づいて、測距点を取得する。そのため、図3の画像G1で示すように、測距点の位置は、複数の画素を二次元行列状に配列することで表現することができる。1画素は、測距点の距離の情報と、強度情報とを含む。なお、1画素は、反射した複数のレーダ波を受信する場合には、複数の測距点を含む。
【0021】
図3の画像G1における水平方向軸と垂直方向軸との交点Oは、自車両に搭載されたレーダ装置20がレーダ波を送受信する方向となる光軸LAの延長線上に位置する測距点に対応する。図3は、光軸LAが水平方向HDに対して上方向にずれている状態を示している。光軸LAと水平方向HDとが一致している状態が、軸ずれが無い状態である。
【0022】
電子制御装置10は、レーダ装置20により検出可能な視野の一部分を切り出した領域を選択視野とし、選択視野に映っている物体を検出する。
図3に示す画像G1は、水平方向に沿って26画素が配列され、且つ、垂直方向に沿って16画素が配列されることによって形成されている。図3に示す選択視野FV1,FV2は、水平方向に沿って22画素が配列され、且つ、垂直方向に沿って10画素が配列されることによって形成されている。
【0023】
選択視野FV1は、中心線LC1を中心として選択された状態で、その中心線LC1は光軸LAと重なる。一方、選択視野FV2は、中心線LC2を中心として選択された状態で、選択視野FV1よりも下側の領域が選択される。
【0024】
図3は、選択視野FV1が水平方向HDに対して上方向にずれている状態を示す。この場合に、選択視野FV2で示すように、選択視野FV1より下を選択することによって、水平方向HDに対する光軸LAのずれを補正することができる。
【0025】
すなわち、電子制御装置10は、軸ずれ量に応じて選択視野の位置を変更することによって、軸ずれを補正する。
以下、選択視野において、上から1,2,3,4,5,6,7,8,9,10番目の行をそれぞれ、第1,2,3,4,5,6,7,8,9,10観測レイヤLY1,LY2,LY3,LY4,LY5,LY6,LY7,LY8,LY9,LY10という。図3に記載されている第1~10観測レイヤLY1~LY10は、選択視野FV1における観測レイヤを示している。
【0026】
次に、電子制御装置10が実行するメインルーチンの手順を説明する。メインルーチンは、電子制御装置10の動作中において測定周期毎に繰り返し実行される処理である。
メインルーチンが実行されると、電子制御装置10のCPU11は、図4に示すように、まずS10にて、物体追跡を実行する。
【0027】
具体的には、CPU11は、まず、直近のフレーム(すなわち、今回のフレーム)でレーダ装置20により検出された1または複数の測距点について、測距点の距離および角度に基づいて、測距点の横位置および縦位置を算出する。横位置は、自車両を起点として自車両の車幅方向に沿った位置である。縦位置は、自車両を起点として車幅方向に対して垂直な方向に沿った位置である。
【0028】
そしてCPU11は、今回のフレームの測距点(以下、今回測距点)毎に、前回のフレームの測距点(以下、前回測距点)と同一の物標を表すものであるか否かを判定する履歴追尾処理を実行する。
【0029】
具体的には、CPU11は、前回測距点の情報に基づいて、前回測距点に対応する今回測距点の予測位置を算出し、その予測位置と、今回測距点の位置との差分が予め設定された上限値より小さい場合には、履歴接続があるものと判断し、複数のフレーム(例えば5フレーム)に渡って履歴接続があると判断された測距点を物標であると認識する。さらにCPU11は、今回測距点の位置と前回測距点の位置との差分と、測定周期(すなわち、1フレームの時間)とに基づいて、今回測距点の相対速度を算出する。
【0030】
次にCPU11は、物標であると認識された測距点のうち、同一の物体に起因した測距点を選択するために予め設定された同一物体選択条件を満たす測距点(以下、同一物体測距点)を選択する。なお、本実施形態における同一物体選択条件は、例えば「自車両から最も近い位置に存在している物標の測距点」を代表測距点として、この代表測距点との間で、距離の差が予め設定された距離選択判定値以下あり、且つ、角度の差が予め設定された角度選択判定値以下あり、且つ、相対速度の差が予め設定された相対速度選択判定値以下であることである。
【0031】
さらにCPU11は、選択された同一物体測距点の中から、算出された横位置に基づいて、最も右側に位置する測距点(以下、最右端測距点)と、最も左側に位置する測距点(以下、最左端測距点)とを抽出する。そしてCPU11は、最右端測距点の横位置と最左端測距点の横位置との中心値を、物体の中心横位置xとして決定する。また電子制御装置10は、最右端測距点の横位置と最左端測距点の横位置との差を、物体の横幅として決定する。
【0032】
さらにCPU11は、算出された縦位置に基づいて、最も前側に位置する測距点(以下、最前端測距点)と、最も後側に位置する測距点(以下、最後端測距点)とを抽出する。そしてCPU11は、最前端測距点の縦位置と最後端測距点の縦位置との中心値を、物体の中心縦位置yとして決定する。またCPU11は、最前端測距点の縦位置と最後端測距点の縦位置との差を、物体の奥行として決定する。
【0033】
従って、CPU11は、最右端測距点、最左端測距点、最前端測距点および最後端測距点を囲む矩形を物体として認識する。
さらにCPU11は、履歴追尾処理による判定結果に基づいて、前回のフレームにおける物体と今回のフレームにおける物体とで履歴接続がある場合に、前回および今回のフレームにおける物体の中心横位置xおよび中心縦位置yと、測定周期(すなわち、1フレームの時間)とを用いて、今回のフレームにおける物体の横相対速度vxおよび縦相対速度vyを算出する。
【0034】
またCPU11は、前回のフレームで認識された物体について、今回のフレームで認識された物体と履歴接続できなかった場合には、前回のフレームで認識された物体の中心横位置x、中心縦位置y、横相対速度vxおよび縦相対速度vyに基づいて外挿することにより、今回のフレームで認識された物体の中心横位置x、中心縦位置y、横相対速度vxおよび縦相対速度vyとする。
【0035】
そしてS10の処理が終了すると、CPU11は、S20にて、特徴量算出処理を実行する。
ここで、特徴量算出処理の手順を説明する。
【0036】
特徴量算出処理が実行されると、CPU11は、図5に示すように、まずS110にて、S10の処理で認識された物体の中から、予め設定された車両抽出条件に基づいて、車両を抽出する。車両抽出条件は、中心横位置xが-2.5m~2.5mの範囲内であり、且つ、中心縦位置yが30m~150mの範囲内であり、且つ、縦絶対速度が40km/h以下となる物体である。縦絶対速度は、縦相対速度vyに自車速を加算した速度である。
【0037】
次にCPU11は、S120にて、S110で抽出された車両におけるリフレクタの距離および観測レイヤを特定する。
図6に示す画像G2は、自車両の前方に存在する走行車両をカメラで撮影することにより得られた画像である。画像G2において、円CL1,CL2で囲まれた領域には、リフレクタが映っている。
【0038】
図6に示す画像G3は、自車両の前方に存在する走行車両をレーダ装置20で検出することによって得られた強度分布画像である。円CL3,CL4で囲まれた領域は、リフレクタに対応する測距点である。
【0039】
CPU11は、S120にて、まず、S110で抽出された車両のそれぞれについて、車両を構成する複数の測距点の中から、リフレクタを抽出するために予め設定されたリフレクタ判定値以上の反射強度を有する測距点を抽出する。そしてCPU11は、抽出した測距点の中から、最も反射強度が大きい測距点を、リフレクタに対応する測距点として特定する。さらにCPU11は、特定した測距点の距離を、リフレクタの距離として設定する。またCPU11は、特定した測距点の距離および角度に基づいて、観測レイヤを算出し、この観測レイヤを、リフレクタの観測レイヤとして設定する。
【0040】
S120の処理が終了すると、図5に示すように、CPU11は、S130にて、リフレクタ高判定を実行する。具体的には、CPU11は、まず、選択視野に映っている車両のそれぞれついて、車両を構成する複数の画素の領域(以下、車両画素領域)と、リフレクタが存在する画素(以下、リフレクタ画素)とを特定する。
【0041】
例えば、図7に示す選択視野画像G4には、2台の車両が映っている。選択視野画像G4における矩形R1は第1車両の車両画素領域であり、選択視野画像G4における矩形R2は第2車両の車両画素領域である。
【0042】
選択視野画像G4における矩形R3は、第1車両において反射強度がリフレクタ判定値以上の画素によって構成される領域である。選択視野画像G4における矩形R4は、第4車両において反射強度がリフレクタ判定値以上の画素によって構成される領域である。
【0043】
選択視野画像G4における矩形R5は、第1車両のリフレクタ画素である。選択視野画像G4における矩形R6は、第2車両のリフレクタ画素である。
そしてCPU11は、選択視野に映っている車両のそれぞれついて、車両画素領域における最下端の観測レイヤ(以下、最下端レイヤ)と、リフレクタ画素が位置する観測レイヤ(以下、リフレクタレイヤ)とを特定する。さらにCPU11は、最下端観測レイヤとリフレクタレイヤとの間に存在する観測レイヤの数(以下、高さレイヤ数)を算出する。
【0044】
図7に示す選択視野画像G4では、第1車両の最下端レイヤは第9観測レイヤLY9であり、第1車両のリフレクタレイヤは第8観測レイヤLY8である。また、第2車両の最下端レイヤは第9観測レイヤLY9であり、第2車両のリフレクタレイヤは第5観測レイヤLY5である。このため、第1車両の高さレイヤ数は、矢印AL1で示すように「1」であり、第2車両の高さレイヤ数は、矢印AL2で示すように「4」である。
【0045】
さらにCPU11は、選択視野に映っている車両のそれぞれついて、最下端レイヤに位置する測距点の距離と、高さレイヤ数とを用いて、リフレクタの高さ(以下、リフレクタ高)を算出する。そしてCPU11は、選択視野に映っている車両のそれぞれついて、算出されたリフレクタ高が予め設定された除外判定高(例えば、1.5m)を超えるか否かを判断する。そしてCPU11は、リフレクタ高が除外判定高を超えている車両を除外し、リフレクタ高が除外判定高以下である車両を推定対象車両に設定する。
【0046】
S130の処理が終了すると、図5に示すように、CPU11は、S140にて、オクルージョン判定を実行する。オクルージョンは、例えば図8に示すように、自車両のレーダ装置20の前方に第1先行車両PV1が存在し、さらに第1先行車両PV1の前方に第2先行車両PV2が存在している場合において、レーダ装置20から見て第2先行車両PV2の一部を第1先行車両PV1が隠す状態をいう。
【0047】
CPU11は、オクルージョン判定によって、隠されている車両を抽出する。そしてCPU11は、推定対象車両に設定されている車両の中から、オクルージョン判定によって抽出した車両を推定対象車両から除外する。
【0048】
以下に、オクルージョン判定の方法の一例を説明する。
図8に示すように、CPU11は、第1先行車両PV1の存在に起因して矩形状の物体RC1を認識し、第2先行車両PV2の存在に起因して矩形状の物体RC2を認識しているとする。レーダ装置20から見て物体RC2が存在する方向と、レーダ装置20から見て物体RC1が存在する方向とが一致しており、且つ、物体RC2の距離は物体RC1の距離より長い。このため、CPU11は、第2先行車両PV2の一部を第1先行車両PV1が隠す状態であると判断することができる。
【0049】
隠された車両である第2先行車両PV2についてはリフクタRF2も隠されている可能性がある。そして、第2先行車両PV2のリフクタRF2であると誤認識された測距点を用いて軸ずれ量の推定を行うと、軸ずれ量の推定精度が低下する恐れがある。このため、隠されている車両は推定対象車両から除外される。一方、隠されていない車両である第1先行車両PV1については、リフクタRF1も隠されていないと判断され、推定対象車両から除外されない。
【0050】
S140の処理が終了すると、CPU11は、図5に示すように、S150にて、虚像判定を実行する。虚像は、図9に示すように、レーダ装置20から送信されたレーダ波が静止物(図9では、トンネル壁や防音壁)で反射した後に物体で反射し、その後、上記の静止物で反射したレーダ波をレーダ装置20が受信することで、物体と認識される像である。虚像は、壁や測定対象との位置関係によって、高さ方向にずれて見えることがある。このため、虚像を車両として学習してしまうと、軸ずれ量の推定精度が低下する。なお、図9の上側の図は、レーダ装置20、実像および虚像をレーダ装置20の上方から見た図である。図9の下側の図は、レーダ装置20、実像および虚像をレーダ装置20の後方から見た図である。
【0051】
具体的には、CPU11は、追跡された車両の中から、予め設定されたペア判定条件に基づいて、虚像および実像のペアを特定し、特定したペアのうち、反射強度が小さい方の車両を、虚像として抽出する。虚像は、実像に対して距離および相対速度のそれぞれの差が予め設定された閾値以下(例えば、距離差が5m以下、且つ、速度差が5km/h以下)となる特徴があるため、この特徴に基づいてペア判定条件が設定される。
【0052】
CPU11は、虚像判定によって、虚像であると判定された車両を抽出する。そしてCPU11は、推定対象車両に設定されている車両の中から、虚像判定によって抽出した車両を推定対象車両から除外する。
【0053】
S150の処理が終了すると、CPU11は、図5に示すように、S160にて、S130~S150の処理によって除外されずに残っている推定対象車両が存在しているか否かを判断する。ここで、推定対象車両が存在していない場合には、CPU11は、特徴量算出処理を終了する。
【0054】
一方、推定対象車両が存在している場合には、CPU11は、S170にて、推定対象車両におけるリフレクタの距離および観測レイヤを、特徴量として、メモリ12に設けられている特徴量リスト内に記憶して、特徴量算出処理を終了する。
【0055】
特徴量算出処理が終了すると、CPU11は、図4に示すように、S30にて、予め設定された推定可能判定条件が成立したか否かを判断する。本実施形態の推定可能判定条件は、後述する第1判定条件、第2判定条件および第3判定条件の全てが成立することである。
【0056】
第1判定条件は、自車両の車速が第1判定速度(例えば、40km/h)以上であることである。なお、自車両の車速は、車速センサ31によって検出される。
第2判定条件は、自車両が直進していることである。なお、自車両が直進しているか否かは、自車両が走行している道路の曲率半径が予め設定された第2判定半径(例えば、1500m)以上であるか否かによって判断される。すなわち、曲率半径が第2判定半径以上である場合に、自車両が直進していると判断される。なお、道路の曲率半径は、車速センサ31によって検出される車速と、ヨーレートセンサ32によって検出されるヨーレートとに基づいて算出される。
【0057】
第3判定条件は、特徴量リストに、1台以上の推定対象車両におけるリフレクタの距離および観測レイヤが記憶されていることである。
S30にて、推定可能判定条件が成立していない場合には、CPU11は、S70に移行する。一方、推定可能判定条件が成立している場合には、CPU11は、S40にて、軸ずれ量確率分布を算出する。
【0058】
ここで、軸ずれ量確率分布について説明する。
車両においてリフレクタが搭載されている高さ(以下、リフレクタ搭載高)は、車両毎にばらついている。しかし、リフレクタ搭載高の範囲は保安基準により規定されている。例えば、日本では、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」における第210条で規定され、米国では、Federal Motor Vehicle Safety Standard 108で規定されている。
【0059】
また、販売されている車両の種類(以下、車種)毎のリフレクタ搭載高と、車種毎の販売台数とに基づいて、例えば図10に示すように、リフレクタ搭載高の分布を算出することが可能である。図10に示すリフレクタ搭載高分布HDでは、横軸にリフレクタ搭載高が設定され、縦軸に頻度が設定されている。そして、図10に示すリフレクタ搭載高分布HDでは、リフレクタ搭載高は200mm~1500mmの範囲で分布している。
【0060】
そして、リフレクタ搭載高分布と、レーダ装置20が自車両に設置されている高さ(以下、レーダ設置高)と、レーダ装置20の選択視野における観測レイヤとに基づいて、尤度モデルが事前に作成される。尤度モデルは、軸ずれが無い状態において、先行車両のリフレクタの距離および垂直角度に応じたリフレクタの存在確率を定義する。
【0061】
尤度モデルは、レーダ装置20からの距離を複数の距離区間に分割し、距離区間毎リフレクタ搭載高分布を配置することにより算出される。
説明を簡略化するために、図11に示すように、選択視野が、上から順に第1,2,3,4,5,6観測レイヤLY1,LY2,LY3,LY4,LY5,LY6を備えているとする。第1~6観測レイヤLY1~LY6における垂直角度範囲は互いに等しい。
【0062】
例えば、レーダ装置20から距離D1離れた位置では、リフレクタ搭載高分布HD1で示すように、第1~4観測レイヤLY1~LY4での存在確率が高く、第5観測レイヤLY5での存在確率が2番目に低く、第6観測レイヤLY6での存在確率が最も低い0である。
【0063】
また、レーダ装置20から距離D2離れた位置では、リフレクタ搭載高分布HD2で示すように、第5,6観測レイヤLY5,LY6での存在確率が最も低い0であり、第4観測レイヤLY4での存在確率が3番目に低く、第1観測レイヤLY1での存在確率が4番目に低く、第3観測レイヤLY3での存在確率が最も高い。
【0064】
また、レーダ装置20から距離D3離れた位置では、リフレクタ搭載高分布HD3で示すように、第1,5,6観測レイヤLY1,LY5,LY6での存在確率が最も低い0であり、第2観測レイヤLY2での存在確率が4番目に低く、第4観測レイヤLY4での存在確率が5番目に低く、第3観測レイヤLY3での存在確率が最も高い。
【0065】
図12に示す尤度モデルLMでは、横軸にレーダ装置20からの距離が設定され、縦軸に垂直角度が設定され、距離と垂直角度との組み合わせに応じて尤度が設定される。また尤度モデルLMでは、距離区間が5mに設定され、垂直角度区間が0.2°に設定されている。
【0066】
例えば、矩形R11で示すように、距離が10mであり、垂直角度が2.3°である場合の尤度は「10」である。また、矩形R12で示すように、距離が35mであり、垂直角度が0.3°である場合の尤度は「33」である。また、矩形R13で示すように、距離が70mであり、垂直角度が1.9°である場合の尤度は「0」である。
【0067】
そしてCPU11は、S40にて、特徴量リスト内に記憶されている複数の特徴量(すなわち、リフレクタの距離および観測レイヤ)と、尤度モデルとを用いて、軸ずれ量確率分布を算出する。
【0068】
軸ずれ量をxとし、特徴量をzとし、特徴量リスト内に記憶されている特徴量の数をmとして、軸ずれ量確率分布P(z|x)は、下式(1)で表される。
【0069】
【数1】
【0070】
ここで、軸ずれ量確率分布P(z|x)の算出方法を図13および図14を用いて説明する。
例えば、特徴量リスト内に第1特徴量、第2特徴量および第3特徴量が記憶されているとする。そして第1特徴量において、リフレクタの距離が30mであり、観測レイヤが第1観測レイヤLY1であるとする。また第2特徴量において、リフレクタの距離が60mであり、観測レイヤが第2観測レイヤLY2であるとする。また第3特徴量において、リフレクタの距離が80mであり、観測レイヤが第3観測レイヤLY3であるとする。
【0071】
図13に示すように、軸ずれ量が0°であると仮定した場合には、第1観測レイヤLY1は垂直角度が1.2°~1.8°の範囲を含むとする。第2観測レイヤLY2は垂直角度が0.6°~1.2°の範囲を含むとする。第3観測レイヤLY3は垂直角度が0.0°~0.6°の範囲を含むとする。第4観測レイヤLY4は垂直角度が-0.6°~0.0°の範囲を含むとする。第5観測レイヤLY5は垂直角度が-1.2°~-0.6°の範囲を含むとする。第6観測レイヤLY6は垂直角度が-1.8°~-1.2°の範囲を含むとする。
【0072】
第1特徴量では、リフレクタの距離が30mであり、観測レイヤが第1観測レイヤLY1である。このため、尤度モデルLMにおいて、リフレクタの距離が30mであり、角度が1.3°,1.5°,1.7°であるときの尤度、すなわち、「7」と「8」と「10」とが抽出される。そして、「7」と「8」と「10」との総和である「25」が、軸ずれ量が0°であると仮定したときの第1特徴量に対する尤度となる。この尤度は、L(z|x=0°)に相当する。
【0073】
また第2特徴量では、リフレクタの距離が60mであり、観測レイヤが第2観測レイヤLY2である。このため、尤度モデルLMにおいて、リフレクタの距離が60mであり、角度が0.7°,0.9°,1.1°であるときの尤度、すなわち、「5」と「8」と「15」とが抽出される。そして、「5」と「8」と「15」との総和である「28」が、軸ずれ量が0°であると仮定したときの第2特徴量に対する尤度となる。この尤度は、L(z|x=0°)に相当する。
【0074】
また第3特徴量では、リフレクタの距離が80mであり、観測レイヤが第3観測レイヤLY3である。このため、尤度モデルLMにおいて、リフレクタの距離が80mであり、角度が0.1°,0.3°,0.5°であるときの尤度、すなわち、「21」と「35」と「50」とが抽出される。そして、「21」と「35」と「50」との総和である「106」が、軸ずれ量が0°であると仮定したときの第3特徴量に対する尤度となる。この尤度は、L(z|x=0°)に相当する。
【0075】
このため、ずれ量が0°であると仮定したときの第1,2,3特徴量に対応する尤度の総和、すなわち、「25」と「28」と「106」との総和である「159」が、軸ずれ量が0°であると仮定したときの確率P(z|x=0°)に相当する値となる。
【0076】
また、図14に示すように、軸ずれ量が0.6°であると仮定した場合には、第1観測レイヤLY1は垂直角度が1.8°~2.4°の範囲を含む。第2観測レイヤLY2は垂直角度が1.2°~1.8°の範囲を含む。第3観測レイヤLY3は垂直角度が0.6°~1.2°の範囲を含む。第4観測レイヤLY4は垂直角度が0.0°~0.6°の範囲を含む。第5観測レイヤLY5は垂直角度が-0.6°~0.0°の範囲を含む。第6観測レイヤLY6は垂直角度が-1.2°~-0.6°の範囲を含む。
【0077】
第1特徴量では、リフレクタの距離が30mであり、観測レイヤが第1観測レイヤLY1である。このため、尤度モデルLMにおいて、リフレクタの距離が30mであり、角度が1.9°,2.1°,2.3°であるときの尤度、すなわち、「5」と「4」と「2」とが抽出される。そして、「5」と「4」と「2」との総和である「11」が、軸ずれ量が0.6°であると仮定したときの第1特徴量に対する尤度となる。この尤度は、L(z|x=0.6°)に相当する。
【0078】
また第2特徴量では、リフレクタの距離が60mであり、観測レイヤが第2観測レイヤLY2である。このため、尤度モデルLMにおいて、リフレクタの距離が60mであり、角度が1.3°,1.5°,1.7°であるときの尤度、すなわち、「0」と「0」と「0」とが抽出される。そして、「0」と「0」と「0」との総和である「0」が、軸ずれ量が0.6°であると仮定したときの第2特徴量に対する尤度となる。この尤度は、L(z|x=0.6°)に相当する。
【0079】
また第3特徴量では、リフレクタの距離が80mであり、観測レイヤが第3観測レイヤLY3である。このため、尤度モデルLMにおいて、リフレクタの距離が80mであり、角度が0.7°,0.9°,1.1°であるときの尤度、すなわち、「8」と「4」と「0」とが抽出される。そして、「8」と「4」と「0」との総和である「12」が、軸ずれ量が0.6°であると仮定したときの第3特徴量に対する尤度となる。この尤度は、L(z|x=0.6°)に相当する。
【0080】
このため、軸ずれ量が0.6°であると仮定したときの第1,2,3特徴量に対応する尤度の総和、すなわち、「11」と「0」と「12」との総和である「23」が、軸ずれ量が0.6°であると仮定したときの確率P(z|x=0.6°)に相当する値となる。
【0081】
そして、軸ずれ量がφであると仮定したときの確率P(z|x=φ)の算出を、例えば、尤度モデルLMで設定されている角度-1.7°,-1.5°,-1.3°,-1.1°,・・・,-0.1°,0.1°,0.3°,・・・,3.3°,3.5°,3.7°のそれぞれで行うことによって、軸ずれ量確率分布P(z|x)が得られる。
【0082】
但し、軸ずれ量確率分布P(z|x)は、xの全範囲で積分した値が1となるように正規化される。
S40の処理が終了すると、CPU11は、図4に示すように、S50にて、軸ずれ量確率分布を更新する。具体的には、CPU11は、前回のフレームにおけるS50で更新された軸ずれ量確率分布をPt-1とし、今回のフレームにおけるS40で算出された軸ずれ量確率分布をPとし、今回のフレームにおけるS50で更新される軸ずれ量確率分布をPとし、重み係数をaとして、下式(2)により軸ずれ量確率分布を更新する。
【0083】
= a×Pt-1+(1-a)×P ・・・(2)
さらにCPU11は、S60にて、S50で更新された軸ずれ量確率分布に基づいて軸ずれ量を算出し、S70に移行する。具体的には、CPU11は、図15に示すように、S50で更新された軸ずれ量確率分布Pを正規分布NDと仮定して、平均値および標準偏差を算出する。
【0084】
すなわち、CPU11は、軸ずれ量確率分布Pのピーク位置wpeakを軸ずれ量δとする。またCPU11は、下式(3)に示すように、ピーク値Peakに対して60%の値となる第1位置wと第2位置wとの差の半分を標準偏差σとする。なお、第1位置wの値は第2位置wの値より大きい。
【0085】
σ = (w-w)/2 ・・・(3)
S70に移行すると、CPU11は、図4に示すように、予め設定された補正開始条件が成立したか否かを判断する。本実施形態の補正条件は、特徴量リスト内に記憶されている特徴量の数が予め設定された第1補正判定値以上であり、且つ、S60で算出された標準偏差σが予め設定された第2補正判定値以下であることである。
【0086】
ここで、補正開始条件が成立していない場合には、CPU11は、メインルーチンを終了する。一方、補正開始条件が成立している場合には、CPU11は、S80にて、軸ずれ補正量を算出する。軸ずれ補正量は、今回のフレームで算出された軸ずれ量から、前回のフレームまでに算出された軸ずれ量の中で最新の軸ずれ量を減算することによって算出される。
【0087】
そしてCPU11は、S90にて、S80で算出された軸ずれ補正量だけ選択視野をZ軸方向に沿って移動させることによって、軸ずれを補正する。なお、選択視野におけるZ軸方向に沿った移動は、1観測レイヤ分の垂直角度毎にしか行えない。このため、S80にて、軸ずれ補正量は、1観測レイヤ分の垂直角度を単位として算出される。
【0088】
S90の処理が終了すると、CPU11は、メインルーチンを終了する。
このように構成された電子制御装置10は、自車両VHに搭載されたレーダ装置20による検出結果に基づいて、車両の前方で走行する先行車両のリフレクタの距離および観測レイヤを取得する。
【0089】
電子制御装置10は、リフレクタの距離および垂直角度とリフレクタの存在確率との対応関係が予め設定された尤度モデルLMと、複数のリフレクタの距離および観測レイヤとを用いて、最尤推定法により、レーダ装置20の軸ずれ量を算出する。
【0090】
このような電子制御装置10は、尤度モデルを用いることによって、先行車両のリフレクタの設置位置のばらつきを考慮して軸ずれ量を算出することができるため、軸ずれ量の推定精度を向上させることができる。
【0091】
また電子制御装置10は、リフレクタ高が予め設定された除外判定高を超えているか否かを判断し、リフレクタ高が除外判定高を超えている場合には、リフレクタ高が除外判定高を超えているリフレクタの距離および観測レイヤを、軸ずれ量の算出から除外する。
【0092】
また電子制御装置10は、レーダ装置20に対して第2先行車両PV2の一部が第1先行車両PV1に隠されているオクルージョンが発生しているか否かを判断し、オクルージョンが発生していると判断した場合には、第2先行車両PV2のリフレクタの距離および観測レイヤを、軸ずれ量の算出から除外する。
【0093】
また電子制御装置10は、先行車両が虚像であるか否かを判断し、先行車両が虚像であると判断した場合には、虚像であると判断された先行車両のリフレクタの距離および観測レイヤを、軸ずれ量の算出から除外する。
【0094】
これにより、電子制御装置10は、軸ずれ量の算出に不適切なリフレクタを除外して、軸ずれ量の算出を行うことができるため、軸ずれ量の推定精度を更に向上させることができる。
【0095】
また、リフレクタの存在確率は、販売されている車両のリフレクタの設置高さの分布と、レーダ設置高とに基づいて設定される。これにより、電子制御装置10は、軸ずれ量の推定精度を更に向上させることができる。
【0096】
以上説明した実施形態において、電子制御装置10は軸ずれ推定装置に相当し、S110,S120はリフレクタ情報取得部としての処理に相当し、S40~S60は軸ずれ量算出部としての処理に相当し、リフレクタの距離および観測レイヤはリフレクタ位置情報に相当する。
【0097】
また、S130はリフレクタ高除外部としての処理に相当し、S140は*オクルージョン除外部としての処理に相当し、S150は虚像除外部としての処理に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0098】
本開示に記載の電子制御装置10およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の電子制御装置10およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の電子制御装置10およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。電子制御装置10に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0099】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0100】
上述した電子制御装置10の他、当該電子制御装置10を構成要素とするシステム、当該電子制御装置10としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、軸ずれ推定方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0101】
10…電子制御装置、20…レーダ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15