(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240730BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20240730BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M50/528
H01M10/0562
(21)【出願番号】P 2021102031
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄志
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523676(JP,A)
【文献】特開2003-187860(JP,A)
【文献】国際公開第2021/117908(WO,A1)
【文献】特開2021-082590(JP,A)
【文献】特開2004-047239(JP,A)
【文献】特開2014-116156(JP,A)
【文献】特開2021-048045(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0135180(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 50/50-50/598
H01M 50/20-50/298
H01M 10/52-10/667
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12;7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池であって、複数の直列体を有し、
前記複数の直列体の各々が、複数の電極体を有し、
前記複数の直列体の各々が、少なくとも1つの中間集電体を有し、
前記複数の直列体が、互いに電気的に並列に接続され、
前記複数の直列体の各々において、前記複数の電極体が、前記中間集電体を介して、互いに電気的に直列に接続され、
一の前記直列体の前記中間集電体と、他の前記直列体の前記中間集電体とが、互いに電気的に直接接続され
、
前記直列体が、バイポーラ構造を有する、
電池。
【請求項2】
前記中間集電体が、樹脂と導電材料とを含む、
請求項
1に記載の電池。
【請求項3】
1つの前記直列体において、前記中間集電体を介して、互いに電気的に直列に接続される前記複数の電極体の数が、2又は3である、
請求項1
又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記複数の直列体が、1つの外装体の内部に収容されている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記複数の直列体が、互いに積層され、
前記複数の直列体の各々において、前記複数の電極体が互いに積層され、
前記複数の直列体の積層方向と、前記複数の電極体の積層方向とが一致する、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
全固体電池である、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は電池を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のバイポーラ電池を互いに電気的に並列に接続する技術が開示されている。特許文献1に開示された電池は、複数の電極体(複数の単位電池とも言い得る)が互いに電気的に直列に接続された直列体を複数備え、当該複数の直列体が互いに電気的に並列に接続されてなるものともいえる。また、特許文献2には、バイポーラ電池の内部において、少なくとも2つの単位電池を互いに電気的に並列に接続する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-116156号公報
【文献】特開2018-028978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者の新たな知見によると、特許文献1に開示されたような電池においては、複数の電極体の一部に特異な容量低下が発生すると、その電極体が含まれる直列体における電圧のバラつきが顕著になり、これに伴って電池が急速に劣化する虞がある。このような課題は特許文献2に開示された技術によっても解決することは難しい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
電池であって、複数の直列体を有し、
前記複数の直列体の各々が、複数の電極体を有し、
前記複数の直列体の各々が、少なくとも1つの中間集電体を有し、
前記複数の直列体が、互いに電気的に並列に接続され、
前記複数の直列体の各々において、前記複数の電極体が、前記中間集電体を介して、互いに電気的に直列に接続され、
一の前記直列体の前記中間集電体と、他の前記直列体の前記中間集電体とが、互いに電気的に直接接続されている、
電池
を開示する。
【0006】
本開示の電池においては、前記直列体が、バイポーラ構造を有していてもよい。
【0007】
本開示の電池においては、前記中間集電体が、樹脂と導電材料とを含んでいてもよい。
【0008】
本開示の電池においては、1つの前記直列体において、前記中間集電体を介して、互いに電気的に直列に接続される前記複数の電極体の数が、2又は3であってもよい。
【0009】
本開示の電池においては、前記複数の直列体が、1つの外装体の内部に収容されていてもよい。
【0010】
本開示の電池においては、
前記複数の直列体が、互いに積層されていてもよく、
前記複数の直列体の各々において、前記複数の電極体が互いに積層されていてもよく、
前記複数の直列体の積層方向と、前記複数の電極体の積層方向とが一致していてもよい。
【0011】
本開示の電池は、全固体電池であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の電池によれば、複数の電極体の一部に特異な容量低下が発生したとしても、その電極体が含まれる直列体における電圧のバラつきが抑制され易い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】実施例に係る電池における電圧のバラつきを示している。
【
図6】比較例に係る電池における電圧のバラつきを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1~3に示されるように、実施形態に係る電池100は、複数の直列体10を有する。また、前記複数の直列体10の各々が、複数の電極体1を有する。また、前記複数の直列体10の各々が、少なくとも1つの中間集電体3を有する。また、前記複数の直列体10が、互いに電気的に並列に接続されている。また、前記複数の直列体10の各々において、前記複数の電極体1が、前記中間集電体3を介して、互いに電気的に直列に接続されている。さらに、一の前記直列体10の前記中間集電体3と、他の前記直列体10の前記中間集電体3とが、互いに電気的に直接接続されている。
【0015】
1.直列体
図1及び2に示されるように、電池100は、複数の直列体10を有する。複数の直列体10は、各々、複数の電極体1を有し、また、少なくとも1つの中間集電体3を有する。各々の直列体10において、複数の電極体1の数は2以上であればよく、2であっても、3であっても、4以上であってもよい。また、各々の直列体10において、中間集電体3の数は1以上であればよく、1であっても、2であっても、3以上であってもよい。
【0016】
2.電極体
図1及び2に示されるように、各々の電極体1は単位電池を構成し得る。
図1に示されるように、各々の電極体1は、正極活物質層1a、負極活物質層1b及び電解質層1cを有するものであってよい。正極活物質層1a、負極活物質層1b及び電解質層1cは、各々、塗工、転写又はプレス成形等の公知の成形法によって容易に得られる。
【0017】
2.1 正極活物質層
正極活物質層1aは、少なくとも正極活物質を含み得る。電池100が全固体電池である場合、正極活物質層1aは、正極活物質に加えて、さらに任意に固体電解質、バインダー及び導電助剤等を含んでいてもよい。また、電池100が電解液系の電池である場合、正極活物質層1aは、正極活物質に加えて、さらに任意にバインダー及び導電助剤等を含んでいてもよい。
【0018】
正極活物質としては公知の活物質を用いればよい。公知の活物質のうち、所定のイオンを吸蔵放出する電位(充放電電位)の異なる2つの物質を選択し、貴な電位を示す物質を正極活物質とし、卑な電位を示す物質を後述の負極活物質として、それぞれ用いることができる。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合は、正極活物質としてコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、マンガン酸リチウム、スピネル系リチウム化合物等の各種のリチウム含有複合酸化物を用いることができる。電池100が全固体電池である場合、正極活物質と固体電解質との接触による反応を抑制するために、正極活物質の表面にニオブ酸リチウム層やチタン酸リチウム層やリン酸リチウム層等の被覆層が設けられていてもよい。正極活物質は、例えば、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。
【0019】
電池100が全固体電池である場合、固体電解質は有機固体電解質(ポリマー固体電解質)及び無機固体電解質のいずれであってもよい。特に、無機固体電解質は、有機ポリマー電解質と比較してイオン伝導度が高く、また、有機ポリマー電解質と比較して耐熱性に優れる。無機固体電解質としては、例えば、ランタンジルコン酸リチウム、LiPON、Li1+XAlXGe2-X(PO4)3、Li-SiO系ガラス、Li-Al-S-O系ガラス等の酸化物固体電解質;Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Si2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5-GeS2等の硫化物固体電解質を例示することができる。中でも、硫化物固体電解質、特にLi2S-P2S5を含む硫化物固体電解質の性能が高い。固体電解質は、例えば、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。
【0020】
バインダーとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)系バインダー、ブチレンゴム(IIR)系バインダー、スチレンブタジエンゴム(SBR)系バインダー、アクリレートブタジエンゴム(ABR)系バインダー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)系バインダー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系バインダー等が挙げられる。
【0021】
導電助剤としてはアセチレンブラックやケッチェンブラック等の炭素材料やニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。導電助剤は、例えば、粒子状又は繊維状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。
【0022】
正極活物質層1aにおける各成分の含有量は従来と同様とすればよい。正極活物質層1aの形状も従来と同様とすればよい。電池100をより容易に構成できる観点から、シート状の正極活物質層1aであってもよい。正極活物質層1aの厚みは、特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上2mm以下であってもよい。下限は1μm以上であってもよく、上限は1mm以下であってもよい。
【0023】
2.2 負極活物質層
負極活物質層1bは、少なくとも負極活物質を含み得る。電池100が全固体電池である場合、負極活物質層1bは、負極活物質に加えて、さらに任意に固体電解質、バインダー及び導電助剤等を含んでいてもよい。また、電池100が電解液系の電池である場合、負極活物質層1bは、負極活物質に加えて、さらに任意にバインダー及び導電助剤等を含んでいてもよい。
【0024】
負極活物質としては公知の活物質を用いればよい。例えば、リチウムイオン電池を構成する場合は、負極活物質としてSiやSi合金や酸化ケイ素等のシリコン系活物質;グラファイトやハードカーボン等の炭素系活物質;チタン酸リチウム等の各種酸化物系活物質;金属リチウムやリチウム合金等を用いることができる。負極活物質は、例えば、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。固体電解質、バインダー及び導電助剤は正極活物質層1aに用いられるものとして例示したものの中から適宜選択して用いることができる。
【0025】
負極活物質層1bにおける各成分の含有量は従来と同様とすればよい。負極活物質層1bの形状も従来と同様とすればよい。電池100をより容易に構成できる観点から、シート状の負極活物質層1bであってもよい。負極活物質層1bの厚みは、特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上2mm以下であってもよい。下限は1μm以上であってもよく、上限は1mm以下であってもよい。負極の容量が正極の容量よりも大きくなるように、負極活物質層1bの厚みや積層面積(電極面積)が調整されてもよい。
【0026】
2.3 電解質層
電解質は、上記したように正極活物質層1a及び負極活物質層1bに配置され得るほか、正極活物質層1aと負極活物質層1bとの間に電解質層1cとしても配置され得る。電解質層1cは、電池の電解質層として一般的なものをいずれも採用可能である。電解質層1cは、少なくとも電解質を含む。電池100が全固体電池である場合、電解質層1cは、固体電解質と任意にバインダーとを含んでいてもよい。固体電解質については上述した通りであり、特に無機固体電解質、中でも硫化物固体電解質の性能が高い。バインダーは正極活物質層1aに用いられるバインダーと同様のものを適宜選択して用いることができる。
【0027】
電解質層1cにおける各成分の含有量は従来と同様とすればよい。電解質層1cの形状も従来と同様とすればよい。電池100をより容易に構成できる観点から、シート状の電解質層1cであってもよい。電解質層1cの厚みは、例えば、0.1μm以上2mm以下であってもよい。下限は1μm以上であってもよく、上限は1mm以下であってもよい。
【0028】
一方で、電池100が電解液系電池である場合、電解質層1cは電解液とセパレータとを含み得る。電解液やセパレータは公知のものを用いればよい。尚、電解質層1cが液系電解質層である場合と固体電解質層である場合とを比較した場合、電解質層1cが固体電解質層である場合のほうが、すなわち、電池100が全固体電池である場合のほうが、電池100を構成することがより容易となるものと考えられる。特に、電解液系の電池よりも全固体電池のほうが、直列体10においてバイポーラ構造を構成し易い。
【0029】
2.4 正極集電体及び負極集電体
図1に示されるように、電池100においては、少なくとも一部の電極体1が、正極集電体1dや負極集電体1eを有していてもよい。正極集電体1d及び負極集電体1eは、電池の集電体として一般的なものをいずれも採用可能である。正極集電体1d及び負極集電体1eは、金属箔又は金属メッシュであってもよい。特に、金属箔が取扱い性等に優れる。正極集電体1d及び負極集電体1eは、各々、複数枚の金属箔からなっていてもよい。
【0030】
正極集電体1d及び負極集電体1eを構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。特に、酸化耐性を確保する観点から、正極集電体1dがAlを含むものであってもよく、また、還元耐性を確保する観点から、負極集電体1eがCuを含むものであってもよい。
【0031】
正極集電体1d及び負極集電体1eは、その表面に、抵抗を調整すること等を目的として、何らかのコート層を有していてもよい。また、正極集電体1d及び負極集電体1eが複数枚の金属箔からなる場合、当該複数枚の金属箔間に何らかの層を有していてもよい。正極集電体1d及び負極集電体1eの厚みは特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上又は1μm以上であってもよく、1mm以下又は100μm以下であってもよい。
【0032】
3.中間集電体
図1及び2に示されるように、1つの直列体10において、中間集電体3を介して、複数の電極体1が互いに電気的に直列に接続される。すなわち、中間集電体3は、一の電極体1の正極活物質層1aと他の電極体1の負極活物質層1bとの間に配置され得る。高電圧を容易に確保できる観点、エネルギー密度を高める観点等から、直列体10はバイポーラ構造を有するものであってもよく、この場合、中間集電体3はバイポーラ集電体であってもよい。すなわち、
図1に示されるように、中間集電体3の一方の表面に正極活物質層1aが積層され、他方の表面に負極活物質層1bが積層されてもよい。
【0033】
中間集電体3は、金属からなるものであってもよい。或いは、後述するように、樹脂と導電材料とを含むものであってもよい。中間集電体3は、複数の層(又は箔)からなっていてもよい。中間集電体3が金属からなる場合、当該中間集電体3を構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。中間集電体3は、その表面に、抵抗を調整すること等を目的として、何らかのコート層を有していてもよい。中間集電体3の厚みは特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上又は1μm以上であってもよく、1mm以下又は100μm以下であってもよい。
【0034】
中間集電体3が樹脂と導電材料とを含む場合、電池100が軽量化され易く、また、電池100の安全性が向上し易い。樹脂は、例えば、ビニル樹脂であってもよい。また、導電材料は、例えば、炭素材料又は金属材料であってもよい。金属材料としては、上述の金属と同様のものが採用され得る。導電材料の形状は特に限定されず、例えば、粒子状であってもよい。中間集電体3は、例えば、上記の樹脂と導電材料との混合物を箔状に成形することによって得られたものであってよい。中間集電体3における樹脂と導電材料との割合は特に限定されるものではなく、集電体としての定型性及び機械特性と、電極体1同士を電気的に直列に接続できる程度の導電性とが確保されればよい。
【0035】
4.電気的な接続
図1~3に示されるように、電池100は、直列体10同士の並列接続と、直列体10における電極体1同士の直列接続と、一の直列体10の中間集電体3と他の直列体10の中間集電体3との直接的な接続との少なくとも3種類の電気的な接続を有する。
【0036】
4.1 直列体同士の並列接続
図1~3に示されるように、電池100においては、複数の直列体10が、互いに電気的に並列に接続される。直列体10同士の電気的な接続は、例えば、正極集電体1dから正極集電タブ20を突出させ、負極集電体1eから負極集電タブ30を突出させて、正極集電タブ20同士を束ねて一体化するとともに、負極集電タブ30同士を束ねて一体化することによってなされてもよいし、正極集電体1dや負極集電体1eに端子等を固定又は一体化させて、当該端子同士を電気的に接続することによってなされてもよいし、その他の方法によってなされてもよい。
【0037】
尚、後述するように、電極体1同士を直列に接続して直列体10とすることで、高電圧を確保できるものの、電極体1同士を直列に接続しただけでは、電池全体として十分な容量を確保することは難しい。これに対し、電池100においては、複数の直列体10が電気的に並列に接続されることで、電池100全体としての容量が高まる。電気的に並列に接続される直列体10の数は、目的とする電池の容量によって適宜決定され得る。電池100において、直列体10は複数あればよく、2以上であっても、3以上であっても、4以上であっても、5以上であってもよい。
【0038】
4.2 電極体同士の直列接続
図1~3に示されるように、1つの直列体10においては、複数の電極体1が、中間集電体3を介して、互いに電気的に直列に接続される。電池100においては、公知の方法によって電極体1同士が電気的に直列に接続されればよい。例えば、中間集電体3の一方の面に一の電極体1の正極を配置し、他方の面に他の電極体1の負極を配置することで、当該一の電極体1と他の電極体1とを電気的に直列に接続することができる。上述の通り、直列体10はバイポーラ構造を有するものであってもよく、すなわち、中間集電体3がバイポーラ集電体であってもよい。
【0039】
1つの直列体10に含まれる電極体1の数は、特に限定されるものではないが、当該数が少ない方が、各々の電極体1の電圧の監視や推定が容易となり、また、安全性も向上し易い。この点、1つの直列体10において、中間集電体3を介して、互いに電気的に直列に接続される複数の電極体1の数は、2又は3であってよい。尚、1つの電極体が3.5V~4.5V程度の電圧を有するものである場合、当該電極体を3つ直列に接続することで、12V程度の電圧を有する直列体及び電池が得られる。12V程度の電圧を有する電池は使い勝手がよく、需要も多い。
【0040】
4.3 中間集電体同士の直接的な接続
図1~3に示されるように、電池100においては、一の直列体10の中間集電体3と、他の直列体10の中間集電体3とが、互いに電気的に直接接続されている。「電気的に直接接続される」とは、一の直列体10の中間集電体3と、他の直列体10の中間集電体3との間に、電極体1を介さない直接的な導電パスを有することを意味する。すなわち、電池100は、直列体10同士の並列接続や、電極体1同士の直列接続とは別に、中間集電体3同士の直接的な導電パスを有する。
【0041】
一の直列体10の中間集電体3と他の直列体10の中間集電体3とは、例えば、
図1~3に示されるように、中間集電体3から中間集電タブ40を突出させて、当該中間集電タブ40同士を束ねて一体化することによってなされてもよいし、中間集電体3に端子等を固定又は一体化させて、当該端子同士を電気的に接続することによってなされてもよいし、その他の方法によってなされてもよい。
【0042】
電池100において、1つの直列体10に複数の中間集電体3が含まれる場合(すなわち、直列接続される電極体が3つ以上である場合)、一の直列体10に含まれる複数の中間集電体3のうちの少なくとも1つと、他の直列体10に含まれる複数の中間集電体3のうちの少なくとも1つとが電気的に直接接続されればよい。また、一の直列体10の1つの中間集電体3に対して、他の直列体10の複数の中間集電体3が電気的に直接接続されてもよい。
【0043】
このように、直列体10同士の並列接続や、電極体1同士の直列接続とは別に、中間集電体3同士が電気的に直接的に接続されることで、特定の電極体1において特異な容量低下が生じたとしても、当該電極体1が含まれる直列体10と他の直列体10との間で電流が分散して電圧がバランスし、容量低下が生じた電極体1が含まれる直列体10において、電圧のバラつきが抑制され易い。
【0044】
5.積層構造
電池100は、所定の積層構造を有していてもよい。例えば、
図1及び3に示されるように、電池100においては、複数の直列体10が互いに積層されていてもよく、複数の直列体10の各々において、複数の電極体1が互いに積層されていてもよく、複数の直列体10の積層方向と複数の電極体1の積層方向とが一致していてもよい。より具体的には、中間集電体3の一方の面に一の電極体1の正極活物質層1aが積層され、他方の面に他の電極体1の負極活物質層1bが積層されてもよく、正極集電体1dの一方の面に一の電極体1の正極活物質層1aが積層され、他方の面に他の電極体1の正極活物質層1aが積層されてもよく、負極集電体1eの一方の面に一の電極体1の負極活物質層1bが積層され、他方の面に他の電極体1の負極活物質層1bが積層されてもよい。これにより、一の電極体1と他の電極体1とが電気的に直列に接続され、また、一の直列体10と他の直列体10とが電気的に並列に接続され得る。言い換えれば、複数の電極体1と中間集電体3との積層体であって、直列接続構造(バイポーラ構造であってもよい)と、並列接続構造との双方を有する積層体が得られる。
図1に示されるように、このようにして得られた積層体の側面において、上述したタブ等を介して、正極集電体1d同士、負極集電体1e同士、中間集電体3同士が電気的に接続されることで、電池100が構成されてもよい。
【0045】
6.その他の部材
電池100は、上記以外のその他の部材を有していてもよい。以下に説明される部材は、電池100が有し得るその他の部材の一例である。
【0046】
6.1 外装体
図4に示されるように、電池100においては、複数の直列体10が、1つの外装体50の内部に収容されていてもよい。より具体的には、電池100から外部へと電力を取り出すためのタブ20、30(又は端子等)を除いた部分が、1つの外装体50の内部に収容されていてもよい。また、電池100において、中間集電体3やタブ40は、その少なくとも一部が外装体50の外部にあってもよいし、タブ40及び中間集電体3の全体が外装体50の内部に収容されていてもよい。特に、タブ40及び中間集電体3の全体が外装体50の内部に収容されている場合(言い換えれば、中間集電体3が外装体50の外部へと引き出されていない場合)に、中間集電体3と正極集電タブ20や負極集電タブ30との干渉が回避され易く、また、外装体50の封止も容易である。
【0047】
外装体50は、電池の外装体として公知のものをいずれも採用可能である。例えば、外装体50としてラミネートフィルムを用いてもよい。また、複数の電池100が、電気的に接続され、また、任意に重ね合わされて、組電池とされていてもよい。この場合、公知の電池ケースの内部に当該組電池が収容されてもよい。
【0048】
6.2 封止樹脂
電池100においては、直列体10が樹脂によって封止されていてもよい。例えば、
図1に示されるように複数の直列体10が積層されて積層体が構成されたうえで、当該積層体の少なくとも側面(積層方向に沿った面)が樹脂によって封止されてもよい。これにより、電極体1の内部への水分の混入等が抑制され易くなる。封止樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が採用され得る。電池100においては、複数の直列体10が樹脂によって封止された状態で、上述の外装体50の内部に収容されてもよい。
【0049】
6.3 電圧監視装置
電池100は、複数の電極体1の各々の電圧を監視するための装置を有していてもよい。電極体1の電圧を監視する装置については公知のものをいずれも採用可能である。
【0050】
6.4 拘束部材
電池100は、電極体1を拘束するための拘束部材を有していてもよい。例えば、上述のように複数の直列体10が積層されて積層体が構成された場合、拘束部材によって当該積層体に対して積層方向に拘束圧が付与されてもよい。特に電池100が全固体電池である場合、拘束部材による拘束圧の付与によって、電極体1の内部抵抗が低減され易い。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を示しつつ、本開示の電池による効果についてさらに詳細に説明するが、本開示の電池は以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例においては、電解質として固体電解質を用いた全固体電池について例示するが、本開示の技術の適用先は全固体電池に限定されるものではない。本開示の技術を液系電池に適用した場合においても同様の効果が奏されるものと考えられる。ただし、液系電池よりも全固体電池のほうが、バイポーラ構造を容易に構成し易い。
【0052】
1.実施例
1.1 正極合剤の作製
正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)と、固体電解質(LiI-LiBr-Li2S-P2S5)と、導電助剤(VGCF)と、バインダー(ABR)とを所定の比率で混合して正極合剤を得た。
【0053】
1.2 負極合剤の作製
負極活物質(グラファイト)と、固体電解質(LiI-LiBr-Li2S-P2S5)と、バインダー(ABR)とを所定の比率で混合して負極合剤を得た。
【0054】
1.3 電解質合剤の作製
固体電解質(LiI-LiBr-Li2S-P2S5)と、バインダー(ABR)とを所定の比率で混合して電解質合剤を得た。
【0055】
1.4 電池の作製
上記の正極合剤により得られる正極活物質層と、負極合剤により得られる負極活物質層と、電解質合剤により得られる電解質層と、正極集電体(アルミニウム箔)と、負極集電体(銅箔)と、中間集電体(ビニル樹脂と導電粒子とを混合物を箔状に成形した樹脂箔)とを用いて、
図1に示される構成を有する積層体を作製した。ここで、1つの直列体において、中間集電体を介して電気的に直列に接続される電極体の数を2つとした。また、3つの直列体を電気的に並列に接続するものとした。また、
図1及び3に示されるように、積層体の側面において、各集電体からタブを突出させたうえで、当該タブを利用して、正極集電体同士、負極集電体同士、及び、中間集電体同士を電気的に直接接続した。これら集電体の接続後、外装体としてのラミネートフィルム内に積層体を封止し、評価用の電池を得た。ここで、
図4に示されるように、正極集電タブ及び負極集電タブの一部は、シール材を介して、ラミネートフィルムの外部に引き出されるようにした。
【0056】
2.比較例
中間集電体同士を電気的に直接接続しなかったこと以外は、実施例と同様にして電池を得た。
【0057】
3.評価結果
図5に、実施例に係る電池の構成及び一部の電極体の容量が特異的に低下した場合における電圧のバラつきの一例を示す。
図5に示されるように、実施例に係る電池においては、中間集電体同士が電気的に直接接続されたことで、特定の電極体において特異な容量低下が生じたとしても、当該電極体が含まれる直列体と他の直列体とで電圧がバランスして、当該電極体が含まれる直列体において電圧のバラつきが抑制され易かった。
【0058】
図6に、比較例に係る電池の構成及び一部の電極体の容量が特異的に低下した場合における電圧のバラつきの一例を示す。
図6に示されるように、比較例に係る電池においては、特定の電極体において特異な容量低下が生じると、当該電極体が含まれる直列体において電圧のバラつきが顕著となり、電池の急速な劣化が懸念された。
【0059】
以上の通り、複数の電極体が互いに直列に接続された直列体を複数備え、且つ、複数の直列体が互いに並列に接続された電池において、複数の電極体の電圧のバラつきを抑えるためには、中間集電体同士を電気的に接続することが有効といえる。具体的には、電池が以下の構成を備えるとよい。
【0060】
電池が複数の直列体を有し、
前記複数の直列体の各々が、複数の電極体を有し、
前記複数の直列体の各々が、少なくとも1つの中間集電体を有し、
前記複数の直列体が、互いに電気的に並列に接続され、
前記複数の直列体の各々において、前記複数の電極体が、前記中間集電体を介して、互いに電気的に直列に接続され、
一の前記直列体の前記中間集電体と、他の前記直列体の前記中間集電体とが、互いに電気的に直接接続される。
【符号の説明】
【0061】
1 電極体
1a 正極活物質層
1b 負極活物質層
1c 電解質層
1d 正極集電体
1e 負極集電体
3 中間集電体
10 直列体
20、30、40 タブ
50 外装体
100 電池