(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用電子制御装置
(51)【国際特許分類】
G06F 13/28 20060101AFI20240730BHJP
G06F 13/42 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G06F13/28 310E
G06F13/42 350Z
(21)【出願番号】P 2021104184
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青塚 祐一
(72)【発明者】
【氏名】松岡 英治
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-146258(JP,A)
【文献】特開平8-242254(JP,A)
【文献】特開平10-269185(JP,A)
【文献】特開2000-148663(JP,A)
【文献】特開2005-190195(JP,A)
【文献】特開2005-182505(JP,A)
【文献】特開平6-149686(JP,A)
【文献】特開平4-143850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 13/28
G06F 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPU(12)と、DMAコントローラ(20)と、RAM(16)と、タイマ(18)と、データ入力部(22)と、を備え、
前記CPUは、前記データ入力部に入力されたデータの転送を開始する開始タイミングを前記タイマにセットして、前記タイマから前記開始タイミングで第1割り込み信号を出力させ、前記タイマから出力される前記第1割り込み信号を受けると、前記データの転送を終了する終了タイミングを前記タイマにセットする割り込み処理を実施して、前記タイマから前記終了タイミングで第2割り込み信号を出力させる、ように構成され、
前記DMAコントローラは、前記タイマに同期した第1の出力に同期して、前記データ入力部から前記RAMへの前記データの転送を開始し、前記タイマに同期した第2の出力に同期して、前記データの転送を終了する、ように構成されている、車両用電子制御装置。
【請求項2】
CPU(12)と、DMAコントローラ(20)と、RAM(16)と、タイマ(18)と、データ入力部(22)と、を備え、
前記CPUは、前記データ入力部に入力されたデータの転送を開始する開始タイミングを前記タイマにセットして、前記タイマから前記開始タイミングで割り込み信号を出力させるよう構成され、
前記DMAコントローラは、前記タイマに同期した出力に同期して、前記データ入力部から前記RAMへの前記データの転送を開始するよう構成され、
更に、前記CPUは、前記タイマから出力される前記割り込み信号を受けると、周期処理にて、前記データ入力部から前記RAMに転送された前記データの数が予め設定された設定数に達したか否かを判断し、前記データの数が前記設定数に達すると、前記DMAコントローラによる前記データの転送を終了させる、ように構成されている、車両用電子制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用電子制御装置であって、
前記タイマは、制御対象の回転に同期してカウントするカウンタである、車両用電子制御装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用電子制御装置であって、
前記データ入力部は、所定周期で入力信号をデジタルデータに変換するA/D変換器(30)を備え、前記DMAコントローラは、該A/D変換器によるA/D変換結果であるデータを記憶するレジスタ(32)から、該データを前記RAMに転送するよう構成されている、車両用電子制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用電子制御装置であって、
前記CPUは、前記データの転送期間の間、前記RAMに転送された前記データのうち、前記A/D変換器によるA/D変換の遅れ時間が経過する間に転送された前記データを破棄し、前記データ転送期間を、前記遅れ時間分延長する、ように構成されている、車両用電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載された機器を制御する車両用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、CPU、RAM、DMAコントローラ、等を備え、DMAコントローラが、パルス信号のパルス幅を計測するタイマから起動信号を受けると、タイマによる計測結果をRAMに転送するよう構成された電子装置が開示されている。
【0003】
この電子装置において、DMAコントローラは、起動信号が所定回数入力されると、パルス幅の計測結果を転送した後、CPUに割り込み信号を出力する。すると、CPUは、その割り込み信号にて、DMAコントローラからの転送データをバッファに退避させ、RAMの異常診断を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記電子装置において、特定期間内の複数の起動信号に対応したデータをDMAコントローラから転送させたい場合、DMAコントローラ若しくはタイマから、特定期間の開始及び終了タイミングでCPUに割り込み信号を入力するようにするとよい。つまり、CPUは、割り込み信号により割り込み処理を実行することができるので、この割り込み処理により、開始タイミングでDMAコントローラからデータ転送を開始させ、終了タイミングでそのデータ転送を停止させるようにするのである。
【0006】
しかし、CPUにて実行される処理は、優先度の高い他の割り込み処理により遅れることがあるので、DMAコントローラを上記のように動作させると、DMAコントローラからデータ転送される期間が、所望のデータ転送期間からずれる場合がある。その結果、転送すべきデータの一部が欠けるとか、転送データの一部に不要データが混ざる、という問題が発生する。
【0007】
本開示の1つの局面は、DMAコントローラを備えた車両用電子制御装置において、CPUが、所望の期間のデータを、DMAコントローラを介して正確に取得できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の1つの態様による車両用電子制御装置は、マイコン内にCPU(12)と、DMAコントローラ(20)と、RAM(16)と、タイマ(18)と、データ入力部(22)と、を備える。
【0009】
CPUは、データ入力部がデータ転送を開始する開始タイミングをタイマにセットして、タイマから開始タイミングで第1割り込み信号を出力させる。また、CPUは、タイマから出力される第1割り込み信号を受けると、データの転送を終了する終了タイミングをタイマにセットして、タイマから終了タイミングで第2割り込み信号を出力させる。
【0010】
一方、DMAコントローラは、タイマに同期した第1の出力に同期して、データ入力部からRAMへのデータの転送を開始し、タイマに同期した第2の出力に同期して、そのデータ転送を終了する。
【0011】
このように本開示の車両用電子制御装置によれば、DMAコントローラは、タイマからの出力に同期してデータ転送を開始し、タイマからの出力に同期してデータ転送を終了する。
【0012】
従って、データ入力部からRAMには、開始タイミングと終了タイミングとで規定されるデータ転送期間の間、データが遅延なく転送されることになる。そして、RAMに転送されたデータは、割り込み処理の遅れの影響なく転送されたデータであるため、CPUは、そのデータを使って車両制御を適正に実施することができる。
【0013】
次に、本開示の他の態様による車両電子制御装置は、上記と同様、CPUと、DMAコントローラと、RAMと、タイマと、データ入力部と、を備える。
そして、CPUは、データ入力部からデータの転送を開始する開始タイミングをタイマにセットして、タイマから開始タイミングで割り込み信号を出力させる。
【0014】
また、DMAコントローラは、タイマに同期した出力に同期して、データ入力部からRAMへのデータの転送を開始する。
従って、この車両用電子制御装置においても、割り込み処理の遅れの影響なくデータ転送を開始することができる。
【0015】
また、CPUは、タイマから出力された割り込み信号を受けると、周期処理にて、データ入力部からRAMに転送されたデータの数が、予め設定された設定数に達したか否かを判断する。そして、そのデータの数が設定数に達すると、DMAコントローラによるデータの転送を終了させる。
【0016】
従って、データ転送の終了タイミングは、割り込み処理の遅れの影響を受けることになるが、CPUは、設定数以上のデータを取得しないため、割り込み処理の遅れの影響なく所望の期間のデータを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態の車両用電子制御装置全体の構成を表すブロック図である。
【
図2】CPUにおける割り込み処理の遅延によって生じる問題点を説明する説明図である。
【
図3】センサからA/D変換器にアナログ波形が入力され、RAMにデータが転送されるまでの流れを説明する説明図である。
【
図4】DMAコントローラによるデータ転送動作を説明するタイムチャートである。
【
図5】CPU及びDMAコントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態のCPU及びDMAコントローラの処理手順を表すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態のDMAコントローラによるデータ転送動作を説明するタイムチャートである。
【
図8】CPUがA/D変換器で生じる遅延時間を考慮してデータを取得するように構成された変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
図1に示すように、本実施形態の車両用電子制御装置(以下、ECU)4は、車両に搭載されたエンジン2の燃料噴射量や点火時期等を制御する装置である。
【0019】
ECU4は、エンジン2を制御するための処理を行う制御部として、マイクロコンピュータ(以下、マイコン)10を備える。マイコン10は、CPU12,ROM14,RAM16,タイマ18,及び、DMAコントローラ(以下、DMAC)20を備えている。
【0020】
また、マイコン10には、エンジン2に設けられた各種センサからの検出信号を取り込む入力部22、及び、エンジン2の燃料噴射装置や点火装置に制御信号を出力する出力部24も備えられている。そして、マイコン10内の上記各部は、バス26を介して互いに接続されている。
【0021】
入力部22には、A/D変換器30が設けられている。
A/D変換器30は、センサからの入力信号(すなわち、アナログ電圧)をA/D変換するためのものであり、本実施形態では、エンジン2の振動を検出するノックセンサからの検出信号をデジタルデータに変換するものとする。
【0022】
なお、A/D変換器30は、エンジン2や吸入空気の温度を検出する温度センサ、吸入空気の圧力を検出する吸気圧センサ等、検出信号としてアナログ電圧を出力するセンサからの出力をA/D変換するものであってもよい。
【0023】
A/D変換器30は、例えば、回転センサからエンジン2の所定回転角度毎に出力される回転信号に同期して、ノックセンサからの検出信号を繰り返しA/D変換するように構成されている。そして、DMAC20は、A/D変換器30にてA/D変換されたデータを、RAM16に転送する。なお、A/D変換器30は、一定時間毎に検出信号をA/D変換するように構成されていてもよい。
【0024】
DMAC20は、CPU12によりエンジン2の回転に同期して設定されるデータ転送期間の間、A/D変換器30にてA/D変換された複数のデータを、順次、RAM16に転送する。
【0025】
なお、データ転送期間には、ノックセンサからの検出信号に基づきノック判定を実施できるように、エンジン2のクランク角度で、例えば、BTDC60°CAからATDC60°CAまでの期間が予め設定されている。
【0026】
ところで、データ転送期間の間、DMAC20にデータ転送を実施させるには、CPU12からタイマ18に転送期間をセットして、転送開始、または転送終了タイミングでタイマ18からCPU12に割り込みを発生させる。
【0027】
そして、CPU12の割り込み処理内でDMAC20に転送の開始と終了を指令する。DMAC20は、CPU12から出力される指令に従い、データ転送期間の間、A/D変換器30からRAM16へのデータ転送を実施することができる。
【0028】
しかしながら、このようにすると、
図2に示すように、CPU12でデータ転送期間の開始タイミング及び終了タイミングで実行される割り込み処理が、優先度の高い他の割り込み処理によって遅延されることがある。
【0029】
そして、この割り込み処理の遅延によって、DMAC20へのデータ転送の開始の指令が遅れて、データ転送期間の最初のデータが欠落したり、DMAC20へのデータ転送の終了の指令が遅れて、転送データの最後に不要なデータが混ざったりすることがある。
【0030】
そこで、本実施形態では、
図3,
図4に示すように、CPU12が、データ転送期間の開始タイミング及び終了タイミングを、順次タイマ18にセットし、タイマ18から、これら各タイミングで第1割り込み信号及び第2割り込み信号を発生させる。
【0031】
なお,タイマ18は、例えば、パルス発生器から一定周期で出力されるパルス信号をカウントすることで、時間を計時するカウンタであってもよい。本実施形態では、転送データが、A/D変換器30にて、制御対象であるエンジン2の所定回転角度毎にA/D変化されるデータであることから、タイマ18には、エンジン2の所定回転角度毎にカウントアップするカウンタが用いられる。
【0032】
次に、DMAC20は、タイマ18に同期した出力(以下、同期出力)に同期して、A/D変換器30のレジスタ32からRAM16へのデータ転送を開始し、次のタイマ18からの同期出力に同期して、そのデータ転送を終了する。
【0033】
つまり、
図4に示すように、タイマ18からは、カウンタのアウトプットコンペア機能により、設定されたタイミングでレベルが反転する信号が、タイマ18に同期した信号として出力される。そして、DMAC20は、この出力信号のレベル変化により、データ転送を開始し、終了する。
【0034】
従って、DMAC20によるデータ転送が、CPU12が実行する割り込み処理の遅延によって遅れることはなく、DMAC20は、所望のデータ転送期間の間、A/D変換器30でA/D変換されたデータをRAM16に転送することができる。
【0035】
なお、レジスタ32は、A/D変換器30によるA/D変換結果を一時的に保持するものである。つまり、A/D変換器30は、センサ40からの検出信号をA/D変換する度に、A/D変換結果をレジスタ32に書き込むようにされている。そして、DMAC20は、データ転送期間の間、レジスタ32に書き込まれたデータを、順次、RAM16に転送する。
【0036】
一方、CPU12は、データ転送開始タイミングでタイマ18から出力される第1割り込み信号を受けると、割り込み処理により、終了タイミングをタイマ18にセットする。また、CPU12は、タイマ18からデータ転送終了タイミングで出力される第2割り込み信号を受けると、割り込み処理により、転送されたデータを使って処理を実施する。
【0037】
この結果、CPU12は、データ転送期間にDMAC20からRAM16に転送されてきた全データを、正確な期間の間、取得することができるようになる。また、RAM16のバッファ領域には、DMAC20から次のデータ転送期間に転送されてくるデータを書き込むことができるようになる。
【0038】
次に、上述したCPU12の動作、及び、DMAC20の動作を、
図5に示すフローチャートに沿って説明する。
図5に示すように、CPU12は、S100にて、データ転送期間の開始タイミング、詳しくは開始タイミングまでのカウント値、をタイマ18にセットし、DMAC20がタイマ18からの同期出力に同期してデータ転送を開始するのを許可する。
【0039】
S100にて、データ転送期間の開始タイミングがタイマ18にセットされると、タイマ18は、開始タイミングになるまでエンジン2の回転に同期したパルス出力をカウントする。そして、
図4に示すように、タイマ18のカウント値が開始タイミングのカウント値と一致すると、出力信号を反転させて、第1割り込み信号を発生する。
【0040】
この第1割り込み信号により、CPU12は、S110の割り込み処理を実行する。そして、S110の割り込み処理では、データ転送期間の終了タイミングを、タイマ18にセットする。
【0041】
一方、DMAC20は、S200にて、CPU12から許可信号を受けることで、タイマ18からの同期出力に同期してデータ転送を開始することができるようになる。そして、その後は、タイマ18からの同期出力がOFFからONに反転するのを待ち、タイマ18からの同期出力がOFFからONに反転すると、S210にて、レジスタ32に保存されたA/D変換結果をRAM16に転送する、データ転送を開始する。
【0042】
次に、CPU12がS110にて、データ転送期間の終了タイミングをタイマ18にセットすると、タイマ18は、終了タイミングになるまでエンジン2の回転角度をカウントし、終了タイミングに達すると、同期出力を反転させて、第2割り込み信号を発生する。
【0043】
この第2割り込み信号により、CPU12は、S120の割り込み処理を実行する。
S120の割り込み処理では、データ転送期間中にレジスタ32から転送され、RAM16のバッファ領域に保存されているデータを使用して処理を実施する。
【0044】
また、S120の割り込み処理では、DMAC20がタイマ18からの同期出力に同期してデータ転送を開始するのを禁止する。
なお、レジスタ32から転送され、RAM16に保存されたデータは、エンジン2の所定回転角度範囲内にノックセンサから得られた振動データであるため、CPU12は、そのデータを利用してエンジン2のノック判定を行い、エンジン2の点火時期を制御する。
【0045】
一方、DMAC20は、S210にて、A/D変換結果のデータ転送を開始すると、タイマ18からの同期出力がONからOFFに反転するのを待機する。そして、タイマ18からの同期出力がONからOFFに反転すると、S220にて、A/D変換結果のデータ転送を停止し、S230に移行する。
【0046】
S230では、CPU12が、S120の割り込み処理にて、タイマ18からの同期出力に同期してデータ転送を開始するのを禁止する指令を送信してくるので、その禁止指令に従い、タイマ18からの同期出力に同期してデータ転送を開始するのを禁止する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のECU4においては、マイコン10に設けられたDMAC20が、タイマ18からの第1の同期出力に同期して、データ転送を開始し、タイマ18からの第2の同期出力に同期して、データ転送を終了する。
【0048】
このため、A/D変換器30のレジスタ32からRAM16には、データ転送期間の間、A/D変換器30にてA/D変換された全てのデータが転送されることになり、CPU12は、割り込み処理の遅延の影響を受けることなく、データを取得することができる。
【0049】
よって、CPU12の割り込み処理の遅延によって、CPU12がエンジン制御に用いるデータの一部が欠けたり、不要データが混ざったりすることがなく、CPU12は、DMAC20から取得したデータに基づき、エンジン2を適正に制御することができる。
【0050】
[第2実施形態]
第1実施形態では、DMAC20にデータ転送させる期間は予め設定されており、CPU12は、データ転送期間の開始タイミングと終了タイミングの両方で、タイマ18から割り込み信号を発生させるようにしている。
【0051】
しかし、データ転送の終了タイミングは、必ずしも規定する必要はなく、例えば、DMAC20がデータ転送を開始してから、CPU12が取得したデータの数を検出して、その数が予め設定された設定数に達したときに、データ転送を終了するようにしてもよい。
【0052】
以下、このように動作するよう構成された車両用電子制御装置について、本開示の第2実施形態として説明する。
なお、本実施形態の車両用電子制御装置は、第1実施形態のECU4と同様に構成されており、第1実施形態と異なる点は、マイコン10のCPU12及びDMAC20の動作だけである。このため、本実施形態では、CPU12及びDMAC20の動作について説明し、第1実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
【0053】
図6に示すように、CPU12は、第1実施形態と同様、S100にて、データ転送期間の開始タイミングをタイマ18にセットし、DMAC20がタイマ18からの同期出力に同期してデータ転送を開始するのを許可する。そして、その後、タイマ18から割り込み信号が出力されると、S130にて、DMAC20がタイマ18からの出力に同期してデータ転送を開始するのを禁止する。
【0054】
一方、DMAC20は、S200にてCPU12から許可を受けることで、タイマ18からの同期出力に同期してデータ転送を開始することができるようになる。このため、DMAC20は、タイマ18からの同期出力が反転するのを待ち、タイマ18からの同期出力が反転すると、S230にて、レジスタ32に保存されたA/D変換結果をRAM16に転送する、データ転送を開始する。
【0055】
このようにDMAC20がデータ転送を開始すると、CPU12から、S130の処理によって、タイマ18からの同期出力に同期してデータ転送を開始するのを禁止する指令が送信されてくる。
【0056】
このため、DMAC20は、S230にてデータ転送を開始すると、S240にて、CPU12からデータ転送開始の禁止指令が送信されてくるのを待ち、禁止指令が送信されてくると、タイマ18からの同期出力に同期してデータ転送を開始するのを禁止する。
【0057】
S240の処理は、S230にてデータ転送を開始した後に実行されることから、DMAC20からのデータ転送は、続くS250にて、CPU12からデータ転送の停止指令を受けるまで継続される。そして、DMAC20は、S250にて、CPU12からのデータ転送の停止指令を受けると、データ転送を停止する。
【0058】
次に、CPU12は、S130の処理実行後は、S140に移行し、
図7に示すように所定周期で実行される周期処理にて、DMAC20によりレジスタ32からRAM16へ転送されたデータの数が、予め設定された設定数に到達したか否かを判定する。
【0059】
そして、S140の周期処理にて、レジスタ32からRAM16へ転送されたデータの数が設定数に到達していないと判定されると、S140に戻り、次の周期処理にて、再びデータ数の判定を実施する。
【0060】
一方、S140にて、レジスタ32からRAM16へ転送されたデータの数が設定数に到達していると判定されると、CPU12は、S150に移行して、DMAC20にデータ転送の停止指令を出力する。この結果、DMAC20によるRAM16へのデータ転送が停止される。
【0061】
このように、本実施形態では、DMAC20によるレジスタ32からRAM16へのデータ転送は、データ転送期間の開始タイミングから、転送されたデータの数が設定数に到達するまで継続される。従って、データ転送期間は、レジスタ32からRAM16に転送されたデータの数によって規定されることになる。
【0062】
しかし、このようにしても、DMAC20によるデータ転送は、開始タイミングから遅れることなく開始され、CPU12は、データ転送開始後、設定数にて規定される所望の数だけ、データを取得することができる。
このため、CPU12は、第1実施形態と同様、所望のデータ転送期間の間にA/D変換器30でA/D変換されたデータを、正確な期間の間取得し、そのデータを使ってエンジン制御を適正に実施することができるようになる。
【0063】
[変形例]
次に、上記実施形態では、CPU12は、データ転送期間中にDMAC20から転送されてきたデータを、全て、RAM16の所定の記憶領域に保存するものとして説明した。
【0064】
しかし、A/D変換器30において、検出信号がA/D変換されるまでに時間がかかることから、DMAC20からは、センサの実際の検出タイミングからこの時間(以下、A/D変換遅れ時間)分遅れて、検出信号のA/D変換結果が転送されることになる。
【0065】
そこで、本変形例では、CPU12が、このA/D変換遅れ時間を考慮して、レジスタ32からRAM16へデータ転送するようにしている。
具体的には、CPU12は、
図8に示すように、レジスタ32からRAM16に転送されたデータのうち、データ転送期間の開始タイミングからA/D変換遅れ時間が経過する間に転送されたデータを破棄する。また、CPU12は、データ転送期間を、A/D変換遅れ時間分延長する。
【0066】
この結果、本変形例によれば、A/D変換器30においてA/D変換に要する遅れ時間の影響を受けることなく、所望のデータ転送期間内にセンサにて検出された検出信号のデータを取得することができるようになる。
【0067】
なお、第1実施形態において、データ転送期間をA/D変換の遅れ時間分延長するには、データ転送期間がA/D変換遅れ時間を含むように設定して、終了タイミングを決定するようにすればよい。
【0068】
また、第2実施形態において、データ転送期間をA/D変換遅れ時間分延長するには、
図6のS150にて判定に用いる設定数として、本来取得すべきデータの数にA/D変換遅れ時間に相当するデータの数を加えた数を設定するようにすればよい。
【0069】
以上、本開示の実施形態及び変形例について説明したが、本開示は上述の実施形態及び変形例に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、ECU4は、車両に搭載されたエンジン2を制御するものとして説明したが、本開示の車両用電子制御装置は、自動変速機等、車両の駆動系に設けられたエンジン以外の機器を制御するものであってもよい。
【0070】
また、本開示の車両用電子制御装置は、制動装置等、車両の制動系に設けられた機器を制御するものであってもよく、空調装置等、車両の駆動・制動系以外の車載機器を制御するものであってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、DMAC20は、データ入力部としてのA/D変換器30にてA/D変換されたデータを、RAM16に転送するものとして説明したが、DMACが転送するデータは、A/D変換されたデータに限定されるものではない。つまり、DMACがRAMに転送するデータは、例えば、他の電子制御装置や通信装置等から入力されるデータ等、車両用電子制御装置で利用されるデータであればよい。
【0072】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0073】
2…ECU、10…マイコン、12…CPU、16…RAM、18…タイマ、20…DMAC、22…入力部。