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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H01R13/42 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021107477
(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公開番号】P2023005506
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野崎 新史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大亮
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-258795(JP,A)
【文献】特開2012-064462(JP,A)
【文献】特開2005-158347(JP,A)
【文献】特開2010-238514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を収容するハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングに対する前記端子金具の挿入を可能とする仮係止位置と、前記ハウジングからの前記端子金具の離脱を規制する本係止位置との間で相対変位可能なリテーナとを備え、
前記ハウジングと前記リテーナのうち一方の部材の外面には、前記ハウジングと前記リテーナのうち他方の部材を収容する収容凹部が形成されており、
前記リテーナの仮係止位置から本係止位置への変位経路は、前記収容凹部の開口部における前記他方の部材の露出面と平行な二次元平面内に設定されており、
前記他方の部材には、前記リテーナを仮係止位置に保持するための弾性保持片が形成されており、
前記弾性保持片は、前記露出面に沿うように配置されているコネクタ。
【請求項2】
前記他方の部材の前記露出面は、前記一方の部材の前記外面と面一状の位置、又は前記外面よりも奥まった位置に配置されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記収容凹部の内周面と前記他方の部材の外周面は、互いに摺接可能な円弧形のガイド面を有し、
前記リテーナは、前記ガイド面同士の摺接によって回転しながら仮係止位置から本係止位置へ変位する請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記弾性保持片は、前記一方の部材の前記外面と面一状の位置、又は前記外面よりも奥まった位置に配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ハウジングに挿入した端子金具を、リテーナによって抜止めするコネクタが開示されている。リテーナは、ハウジングに対する端子金具の挿入を許容する仮係止位置と、端子金具に係止して端子金具を抜止めする本係止位置との間で移動可能である。仮係止位置のリテーナは、ハウジングの外面から突出している。仮係止位置のリテーナをハウジング内へ押し込むことによって、リテーナが本係止位置へ移動する。リテーナが本係止位置へ押し込まれると、端子金具を挿入することができないため、端子金具をハウジングに挿入するときには、リテーナを仮係止位置に保持する必要がある。
【0003】
特許文献1には、リテーナを仮係止位置に保持する手段として、ハウジングに形成した突部を、リテーナに貫通させている。突部は、リテーナの外面から外方へ突出している。異物がリテーナに接近したときには、突部によってリテーナに対する異物の当接を防止できる。これにより、仮係止位置のリテーナが異物に押されて本係止位置へ移動することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-117269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
突部が存在するのは、リテーナの外面のうちの一部分だけであるため、リテーナの外面のうち突部から離れた部位に異物が干渉する可能性がある。そのため、リテーナの外面のうち突部から離れた部位に異物が当たった場合には、仮係止位置のリテーナが本係止位置へ押し込まれてしまうおそれがある。
【0006】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、リテーナを仮係止位置に確実に保持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタは、
端子金具を収容するハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングに対する前記端子金具の挿入を可能とする仮係止位置と、前記ハウジングからの前記端子金具の離脱を規制する本係止位置との間で相対変位可能なリテーナとを備え、
前記ハウジングと前記リテーナのうち一方の部材の外面には、前記ハウジングと前記リテーナのうち他方の部材を収容する収容凹部が形成され、
前記リテーナの仮係止位置から本係止位置への変位経路は、前記収容凹部の開口部における前記他方の部材の露出面と平行な二次元平面内に設定されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、リテーナを仮係止位置に確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例1のコネクタを斜め前方から見た斜視図である。
図2図2は、分解状態のコネクタを斜め前方から見た斜視図である。
図3図3は、分解状態のコネクタを斜め後方から見た斜視図である。
図4図4は、ハウジングとリテーナを組み付けた状態をあらわす正面図である。
図5図5は、ハウジングとリテーナを組み付けた状態をあらわす背面図である。
図6図6は、リテーナが仮係止位置にある状態をあらわす部分拡大正面図である。
図7図7は、リテーナが仮係止位置にある状態をあらわす背面図である。
図8図8は、リテーナが仮係止位置にある状態でランスが端子金具を抜止している状態をあらわす部分拡大側断面図である。
図9図9は、リテーナが本係止位置にある状態をあらわす部分拡大正面図である。
図10図10は、リテーナが本係止位置にある状態をあらわす背面図である。
図11図11は、リテーナが本係止位置にある状態で本係止部が端子金具を抜止している状態をあらわす部分拡大側断面図である。
図12図12は、本係止位置のリテーナに対してカバーを組み付けた状態をあらわす背断面図である。
図13図13は、仮係止位置のリテーナに対してカバーを組み付けた状態をあらわす部分拡大背断面図である。
図14図14は、本係止位置のリテーナに対してカバーを組み付けた状態をあらわす部分拡大背断面図である。
図15図15は、コネクタを斜め後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)端子金具を収容するハウジングと、前記ハウジングに取り付けられ、前記ハウジングに対する前記端子金具の挿入を可能とする仮係止位置と、前記ハウジングからの前記端子金具の離脱を規制する本係止位置との間で相対変位可能なリテーナとを備え、前記ハウジングと前記リテーナのうち一方の部材の外面には、前記ハウジングと前記リテーナのうち他方の部材を収容する収容凹部が形成され、前記リテーナの仮係止位置から本係止位置への変位経路は、前記収容凹部の開口部における前記他方の部材の露出面と平行な二次元平面内に設定されている。本開示の構成によれば、一方の部材の外面や他方の部材の露出面が異物によって押圧されても、仮係止位置のリテーナが本係止位置へ相対変位することがないので、リテーナを仮係止位置に確実に保持することができる。
【0011】
(2)前記他方の部材の前記露出面は、前記一方の部材の前記外面と面一状の位置、又は前記外面よりも奥まった位置に配置されていることが好ましい。この構成によれば、異物が露出面に接近したときに、異物が一方の部材の外面と干渉することによって、異物による露出面への衝撃を緩和又は防止することができる。
【0012】
(3)前記収容凹部の内周面と前記他方の部材の外周面は、互いに摺接可能な円弧形のガイド面を有し、前記リテーナは、前記ガイド面同士の摺接によって回転しながら仮係止位置から本係止位置へ変位することが好ましい。異物が、一方の部材の外面や他方の部材の露出面に対して擦るように干渉したときに、その干渉方向は直線方向である。しかし、リテーナが仮係止位置から本係止位置へ変位するときの動きは回転動作であるから、異物が一方の部材の外面や他方の部材の露出面に対して擦るように干渉しても、仮係止位置のリテーナが本係止位置へ移動し難い。
【0013】
(4)前記他方の部材には、前記リテーナを仮係止位置に保持するための弾性保持片が形成されており、前記弾性保持片は、前記露出面に沿うように配置されていることが好ましい。この構成によれば、弾性保持片が露出面から突出していないので、異物が弾性保持片と干渉し難く、弾性保持片による保持機能の信頼性に優れている。
【0014】
(5)(4)において、前記弾性保持片は、前記一方の部材の前記外面と面一状の位置、又は前記外面よりも奥まった位置に配置されていることが好ましい。この構成によれば、異物が露出面に接近したときに、異物が一方の部材の外面と干渉することによって、異物による弾性保持片への衝撃を緩和又は防止することができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のコネクタを具体化した実施例1を、図1図15を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、図1~3,8,11,15において矢印Fで示す方向を前方、矢印Rで示す方向を後方と定義する。
【0016】
本実施例1のコネクタは、図1~3に示すように、ハウジング10と、3つの端子金具25と、リテーナ32と、カバー50を備えて構成されている。ハウジング10は、合成樹脂製の単一部品である。図2,3に示すように、ハウジング10は、板厚方向を前後方向に向けた円板部11と、円板部11の前面から前方へ同心状に突出した円柱部12と、円板部11の前面から前方へ突出した3つの端子収容部21とを有する。
【0017】
円板部11の外周縁部には、3つのガイド用張出部13と3つの抜止用リブ14が形成されている。3つのガイド用張出部13は、円板部11と同心の円弧状をなし、周方向において等角度ピッチで配置されている。ガイド用張出部13の後面は、円板部11、即ちハウジング10の後面10Rに対して面一状に連なっている。図7,10に示すように、ガイド用張出部13の外周面は、第1外周ガイド面15として機能する。
【0018】
3つの抜止用リブ14は、円板部11と同心の円弧状をなしている。ハウジング10を後方から見た背面視において、抜止用リブ14は、ガイド用張出部13に対して時計回り側に隣接して並ぶように配置されている。抜止用リブ14の後面は、円板部11及びガイド用張出部13の後面に対して前方へ凹むように配置されている。円板部11の外周面のうちガイド用張出部13及び抜止用リブ14が形成されていない領域は、第2外周ガイド面16として機能する。
【0019】
円板部11には、周方向において等角度ピッチで配置された3つの弾性保持片17が形成されている。弾性保持片17は、円板部11の外周縁に沿うように配置されている。弾性保持片17は、背面視において、円板部11と同心の円弧形をなし、時計回り方向へ片持ち状に延出したアーム状をなす。前後方向において、弾性保持片17の前面は円板部11の前面と同じ位置にあり、弾性保持片17の後面は円板部11の後面と同じ位置にある。弾性保持片17は、弾性保持片17における反時計回り側の端部を支点として、前後方向へ弾性的に変位することができる。
【0020】
円柱部12には、円柱部12と同心の円弧形をなす2つの検知溝18が形成されている。図13,14に示すように、背面視において、検知溝18における反時計回り側の端部には、径方向外方へ凹ませた形状の検知用凹部19が形成されている。図2に示すように、円柱部12の外周面は、第3外周ガイド面20として機能する。
【0021】
3つの端子収容部21は、円板部11と同心の1つの円周上において周方向に等角度ピッチで配置されている。ハウジング10を前方から見た正面視において、3つの端子収容部21は円柱部12を包囲するように配置されている。端子収容部21の内部には、円板部11、即ちハウジング10の後面10Rに開口する端子収容室22が形成されている。端子収容部21の外周面のうち円柱部12と対向する領域には、端子収容室22内を端子収容部21の外部へ開放させる切欠部23が形成されている。前後方向における切欠部23の形成範囲は、端子収容室22の前端部と後端部を除いた領域である。端子収容部21の前端部には、端子収容部21の前端面から端子収容室22内に貫通した貫通孔24が形成されている。
【0022】
端子金具25は、図8,11に示すように、全体として前後方向に細長い形状である。端子金具25は、端子本体部26と、端子本体部26の前端から前方へ突出した接続部27と、端子本体部26の後方に配置された圧着部28とを有する。端子本体部26には、段差状の一次係止部29が形成されている。圧着部28の後端部には、二次係止部30が形成されている。圧着部28には、電線31の前端部が圧着によって接続されている。
【0023】
リテーナ32は、合成樹脂製の単一部品である。図4に示すように、リテーナ32は、正面視形状が円環形をなしている。リテーナ32の外周面には、周方向に等角度ピッチで配置された3つのガイドピン33が形成されている。
【0024】
リテーナ32には、リテーナ32を前後方向に貫通した収容凹部34が形成されている。収容凹部34は、リテーナ32の後面32Rを浅く凹ませた大径凹部35と、大径凹部35からリテーナ32の前端面まで貫通した小径凹部36とを有する。大径凹部35は、リテーナ32と同心の円形をなす。大径凹部35の内径寸法は、リテーナ32の外径寸法よりも少し小さい寸法である。大径凹部35の内周面には、周方向に等角度ピッチで配置された3つのガイド用凹部37が形成されている。ガイド用凹部37は、リテーナ32と同心の円弧形をなし、リテーナ32の後面32Rに開口している。ガイド用凹部37の内周面は、円弧形の第1内周ガイド面38として機能する。
【0025】
大径凹部35の内周面のうちガイド用凹部37が形成されていない領域には、図3に示すように、スリット状に凹ませた抜止用溝部39が形成されている。図5,7に示すように、抜止用溝部39は、背面視において、ガイド用凹部37に対して時計回り側に隣接して並ぶよう配置されている。背面視において、抜止用溝部39の反時計回り側の端部は、ガイド用凹部37と連通している。大径凹部35の内周面のうちガイド用凹部37及び抜止用溝部39が形成されていない領域は、第2内周ガイド面40として機能する。小径凹部36は、リテーナ32及び大径凹部35と同心の円形をなす。小径凹部36の内周面は、第3内周ガイド面41として機能する。
【0026】
図3に示すように、リテーナ32のうち小径凹部36を包囲する部位は、環状部42として機能する。環状部42の後面は大径凹部35内に臨んでいる。環状部42の後面には、周方向の等角度ピッチで配置された3対の保持突起43,44が形成されている。一対の保持突起43,44は、周方向に間隔を空けて並ぶ第1保持突起43と第2保持突起44とから構成されている。背面視において、第2保持突起44は、第1保持突起43よりも時計回り側に配置されている。
【0027】
環状部42には、周方向に等角度ピッチで配置された3つの保持室45が形成されている。保持室45は、環状部42を前後方向に貫通している。図4,6,9に示すように、リテーナ32を前方から見た正面視において、保持室45は、長円を収容凹部34と同心の円弧形をなすように湾曲させた形状である。
【0028】
保持室45内には、弧状基部46と、ランス47と、本係止部48とが形成されている。図6,9に示すように、弧状基部46は、保持室45の内面における径方向内側の弧状面から、径方向外方へ同心円弧状に張り出している。弧状基部46は、保持室45の後端部に配置されている。周方向における弧状基部46の形成範囲は、正面視において、保持室45の時計回り側の端部を除いた領域である。
【0029】
ランス47は、弧状基部46の周方向における中央部に配置されている。ランス47は、弧状基部46から前方へ片持ち状に延出している。ランス47は、ランス47の後端部を支点として径方向へ弾性的に変位することができる。ランス47は、端子金具25を一次係止するための部位である。本係止部48は、弧状基部46から、径方向外方へリブ状に張り出した形状である。周方向における本係止部48の形成範囲は、正面視において、ランス47よりも反時計回り側の領域である。本係止部48は、ランス47よりも後方に配置されている。
【0030】
カバー50は、合成樹脂製の単一部品である。カバー50は、図2,3に示すように、円形をなす後壁部51と、後壁部51の外周縁から前方へ突出した円筒形の周壁部52とを有する。後壁部51には、周方向に等角度ピッチで配置された3つの電線挿通孔53が形成されている。後壁部51には、後壁部51の同心の円弧形をなす2つの検知部54が形成されている。検知部54は、後壁部51から前方へ突出している。図13,14に示すように、背面視において、検知部54における時計回り側の端部には、径方向外方へ突出した検知突起55が形成されている。周壁部52の内周面には、周方向に等角度ピッチで配置された3つのガイド溝56が形成されている。ガイド溝56の前端部は、周壁部52の前面に開口している。
【0031】
次に、本実施例1のコネクタの組付け手順を説明する。まず、端子金具25を取り付けていない状態のハウジング10を、リテーナ32の後方から収容凹部34内に収容する。このとき、円柱部12を小径凹部36に嵌入し、円板部11を大径凹部35内に収容する。ガイド用張出部13と抜止用リブ14をガイド用凹部37に嵌入することによって、リテーナ32とハウジング10を周方向において位置決めする。このとき、端子収容部21は、保持室45のうち正面視においてランス47よりも時計回り側の領域に収容される。
【0032】
この状態から、リテーナ32を、ハウジング10に対し、正面視において時計回り方向へ相対回転させる。このとき、第1外周ガイド面15、第2外周ガイド面16及び第3外周ガイド面20と、第1内周ガイド面38、第2内周ガイド面40及び第3内周ガイド面41とが摺接する。これらの摺接によるガイド作用によって、リテーナ32とハウジング10の相対回転動作が円滑に行われる。
【0033】
ハウジング10とリテーナ32を相対回転させると、抜止用リブ14が抜止用溝部39に嵌入することによって、リテーナ32がハウジング10に対して前方へ離脱することを規制される。端子収容部21がランス47を径方向外側から覆う仮係止位置までリテーナ32を回転させると、図7に示すように、第1保持突起43と第2保持突起44が、弾性保持片17に対して周方向に挟むように係止する。この係止作用によって、リテーナ32がハウジング10に対して仮係止位置に保持される。
【0034】
リテーナ32が仮係止位置にある状態では、ハウジング10の円板部11と円柱部12が収容凹部34内に収容される。リテーナ32の後面32Rにおいては、収容凹部34の開口部にハウジング10の後面10Rが露出する。ハウジング10の後面10Rは、前後方向においてリテーナ32の後面32Rと同じ位置にある。
【0035】
次に、ハウジング10の後方から端子金具25を端子収容室22内に挿入する。挿入過程では、端子本体部26がランス47と干渉することによって、ランス47が径方向内側へ弾性変位する。端子金具25が正規位置まで挿入されると、接続部27が貫通孔24に嵌入され、ランス47が弾性復帰して一次係止部29に係止する。ランス47が一次係止部29に係止することによって、端子金具25が抜止めされる。
【0036】
3つの端子金具25を端子収容室22に挿入した後、リテーナ32を、ハウジング10に対し、正面視において時計回り方向へ相対回転させる。リテーナ32を本係止位置まで回転させると、抜止用リブ14が抜止用溝部39の奥端部に当接し、第2保持突起44が弾性保持片17に係止することによって、リテーナ32が本係止位置に保持される。リテーナ32が本係止位置にある状態では、端子金具25の一次係止部29とリテーナ32のランス47とが解離し、本係止部48が端子金具25の二次係止部30に係止する。本係止部48と二次係止部30との係止作用によって、端子金具25が抜止される。
【0037】
リテーナ32を本係止位置へ回転させた後、ハウジング10の後方からカバー50をリテーナ32に組み付ける。組付けに際しては、ガイド溝56をガイドピン33に嵌合することによって、リテーナ32とカバー50を周方向において位置決めする。カバー50をリテーナ32に接近させると、図14に示すように、検知部54が検知溝18に嵌入され、検知突起55が検知用凹部19に嵌入される。尚、電線31は、予め、電線挿通孔53に挿通されている。
【0038】
カバー50を取り付ける時点で、リテーナ32が仮係止位置に留め置かれていた場合には、図13に示すように、検知突起55が、検知用凹部19から外れて検知溝18の開口縁部と干渉する。この干渉によって、リテーナ32に対するカバー50の組付ができなくなるので、リテーナ32が仮係止位置に留め置かれていること、即ちリテーナ32が本係止位置へ移動していないことが判る。
【0039】
本実施例1のコネクタは、端子金具25を収容するハウジング10と、リテーナ32とを備えている。リテーナ32は、ハウジング10に取り付けられ、ハウジング10に対する端子金具25の挿入を可能とする仮係止位置と、ハウジング10からの端子金具25の離脱を規制する本係止位置との間で相対変位可能である。
【0040】
リテーナ32の後面32R、即ち外面には、ハウジング10を収容する収容凹部34が形成されている。リテーナ32の仮係止位置から本係止位置への変位経路は、収容凹部34の開口部におけるハウジング10の後面10R、即ち露出面と平行な二次元平面内に設定されている。リテーナ32の後面32Rやハウジング10の後面10Rが異物によって前方へ押圧されても、仮係止位置のリテーナ32が本係止位置へ相対変位することがない。したがって、リテーナ32を仮係止位置に確実に保持することができる。
【0041】
ハウジング10の後面10Rは、リテーナ32の後面32Rと面一状の位置に配置されている。弾性保持片17も、リテーナ32の後面32Rと面一状の位置に配置されている。異物がハウジング10の後面10Rに接近したときに、異物がリテーナ32の後面32Rと干渉する。これにより、異物によるハウジング10の後面10Rへの衝撃や弾性保持片17への衝撃を、緩和又は防止することができる。
【0042】
収容凹部34の内周面は円弧形の第1~第3内周ガイド面38,40,41を有し、ハウジング10の外周面は円弧形の第1~第3外周ガイド面15,16,20を有する。第1~第3内周ガイド面38,40,41と第1~第3外周ガイド面15,16,20は、個別に、かつ互いに摺接する。これらの摺接によって、リテーナ32は、回転しながら仮係止位置から本係止位置へ変位する。
【0043】
異物が、リテーナ32の後面32Rやハウジング10の後面10Rに対して擦るように干渉したときに、その干渉方向は直線方向である。これに対し、リテーナ32が仮係止位置から本係止位置へ変位するときの動きは回転動作である。したがって、異物がリテーナ32の後面32Rやハウジング10の後面10Rに対して擦るように干渉しても、仮係止位置のリテーナ32が本係止位置へ移動し難い。
【0044】
ハウジング10には、リテーナ32を仮係止位置に保持するための弾性保持片17が形成されている。弾性保持片17は、ハウジング10の後面10Rに沿うように配置されている。この構成によれば、弾性保持片17がハウジング10の後面10Rから後方へ突出していないので、異物が弾性保持片17と干渉し難い。したがって、弾性保持片17による保持機能の信頼性に優れている。
【0045】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、リテーナは回転しながら仮係止位置から本係止位置へ変位するが、リテーナの仮係止位置から本係止位置への移動経路は直線状であってもよい。
上記実施例では、収容凹部をリテーナに形成したが、収容凹部はハウジングに形成してもよい。
上記実施例では、他方の部材(ハウジング)の弾性保持片が露出面(後面)と面一状に配置されているが、弾性保持片は、露出面よりも奥まった位置に配置されていてもよく、露出面から突出した位置に配置されていてもよい。
上記実施例では、他方の部材(ハウジング)の露出面が、一方の部材(リテーナ)の外面(後面)と面一状の位置に配置されているが、他方の部材の露出面は、一方の部材の外面よりも奥まった位置に配置されていてもよく、一方の部材の外面から突出した位置に配置されていてもよい。
上記実施例では、弾性保持片が、一方の部材(リテーナ)の外面(後面)と面一状の位置に配置されているが、弾性保持片は、一方の部材の外面よりも奥まった位置に配置されていてもよく、一方の部材の外面から突出した位置に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…ハウジング
10R:ハウジングの後面(他方の部材の露出面)
11…円板部
12…円柱部
13…ガイド用張出部
14…抜止用リブ
15…第1外周ガイド面
16…第2外周ガイド面
17…弾性保持片
18…検知溝
19…検知用凹部
20…第3外周ガイド面
21…端子収容部
22…端子収容室
23…切欠部
24…貫通孔
25…端子金具
26…端子本体部
27…接続部
28…圧着部
29…一次係止部
30…二次係止部
31…電線
32…リテーナ
32R:リテーナの後面(一方の部材の外面)
33…ガイドピン
34…収容凹部
35…大径凹部
36…小径凹部
37…ガイド用凹部
38…第1内周ガイド面
39…抜止用溝部
40…第2内周ガイド面
41…第3内周ガイド面
42…環状部
43…第1保持突起
44…第2保持突起
45…保持室
46…弧状基部
47…ランス
48…本係止部
50…カバー
51…後壁部
52…周壁部
53…電線挿通孔
54…検知部
55…検知突起
56…ガイド溝
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