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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】乗合車両及び運行管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/40 20240101AFI20240730BHJP
   G08G 1/127 20060101ALI20240730BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20240730BHJP
【FI】
G06Q50/40
G08G1/127 A
G06Q50/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021107861
(22)【出願日】2021-06-29
(65)【公開番号】P2023005731
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秀典
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-039582(JP,A)
【文献】特開2021-051431(JP,A)
【文献】特開2012-098908(JP,A)
【文献】特開2021-051663(JP,A)
【文献】国際公開第2010/004607(WO,A1)
【文献】特開2021-039473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G08G 1/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
規定経路を走行し前記規定経路に沿って設けられた停留所にて停車可能な乗合車両と、前記乗合車両の運行を管理する運行管理装置と、を備える運行管理システムであって、
前記乗合車両は、車室内を撮像する撮像器を備え、
前記運行管理装置は、
前記撮像器により撮像された、前記乗合車両が現停留所を出発し次停留所に向かう過程における車室内画像に含まれる乗客を認識する画像認識部と、
認識された乗客に基づいて前記車室の混雑率を求める、混雑率算出部と、
を備え、
さらに前記乗合車両は、前記混雑率が所定の混雑閾値を超過したときに、次停留所にて降車する乗客が居ること及び当該乗客の座席情報を通知する降車案内通知を発報可能である一方で、前記混雑率が前記混雑閾値以下であるときには、前記乗合車両が次停留所に向かう過程において前記降車案内通知の発報を行わない、通知部と、
前記乗合車両における降車予定停留所及び指定席が設定された乗降車予約が記憶される記憶部と、
前記乗降車予約を参照して、前記乗合車両の次停留所が前記降車予定停留所に設定されているか否かを判定する降車判定が可能な判定部と、
前記降車判定の結果、前記乗合車両の次停留所が前記降車予定停留所に設定されている場合に、前記通知部に前記降車案内通知の発報を指令する指令部と、
を備え、
前記判定部は、前記混雑率が前記混雑閾値を超過するときに前記降車判定を実行する一方で、前記混雑率が前記混雑閾値以下であるときには、前記降車判定を行わず、
前記乗降車予約には、前記降車予定停留所及び前記指定席と関連付けて乗車希望者の年齢情報が記憶され、
前記判定部は、前記乗合車両の降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を前記指定席に設定し、かつ、乗車希望者の年齢が所定の年齢閾値を超過する前記乗降車予約を、前記降車判定の対象外とし、
さらに前記判定部は、前記乗合車両の降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を前記指定席に設定し、かつ、乗車希望者の年齢が所定の年齢閾値以下である前記乗降車予約を、前記降車判定の対象とする、
運行管理システム。
【請求項2】
規定経路を走行し前記規定経路に沿って設けられた停留所にて停車可能な乗合車両と、前記乗合車両の運行を管理する運行管理装置と、を備える運行管理システムであって、
前記乗合車両は、車室内を撮像する撮像器を備え、
前記運行管理装置は、
前記撮像器により撮像された、前記乗合車両が現停留所を出発し次停留所に向かう過程における車室内画像に含まれる乗客を認識する画像認識部と、
認識された乗客に基づいて前記車室の混雑率を求める、混雑率算出部と、
を備え、
さらに前記乗合車両は、前記混雑率が所定の混雑閾値を超過したときに、次停留所にて降車する乗客が居ること及び当該乗客の座席情報を通知する降車案内通知を発報可能である一方で、前記混雑率が前記混雑閾値以下であるときには、前記乗合車両が次停留所に向かう過程において前記降車案内通知の発報を行わない、通知部と、
前記乗合車両における降車予定停留所及び指定席が設定された乗降車予約が記憶される記憶部と、
前記乗降車予約を参照して、前記乗合車両の次停留所が前記降車予定停留所に設定されているか否かを判定する降車判定を行う判定部と、
前記降車判定の結果、前記乗合車両の次停留所が前記降車予定停留所に設定されている場合に、前記通知部に前記降車案内通知の発報を指令可能な指令部と、
を備え、
前記指令部は、前記混雑率が前記混雑閾値を超過するときに前記通知部に前記降車案内通知の発報を指令する一方で、前記混雑率が前記混雑閾値以下であるときには前記降車案内通知の発報を前記通知部に指令せず、
前記乗降車予約には、前記降車予定停留所及び前記指定席と関連付けて乗車希望者の年齢情報が記憶され、
前記判定部は、前記乗合車両の降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を前記指定席に設定し、かつ、乗車希望者の年齢が所定の年齢閾値を超過する前記乗降車予約を、前記降車判定の対象外とし、
さらに前記判定部は、前記乗合車両の降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を前記指定席に設定し、かつ、乗車希望者の年齢が所定の年齢閾値以下である前記乗降車予約を、前記降車判定の対象とする、
運行管理システム。
【請求項3】
規定経路を走行し前記規定経路に沿って設けられた停留所にて停車可能な乗合車両であって、
車室内を撮像する撮像器と、
前記撮像器により撮像された、現停留所を出発し次停留所に向かう過程における車室内画像に含まれる乗客を認識する画像認識部と、
認識された乗客に基づいて前記車室の混雑率を求める、混雑率算出部と、
前記混雑率が所定の混雑閾値を超過したときに、次停留所にて降車する乗客が居ること及び当該乗客の座席情報を通知する降車案内通知を発報可能である一方で、前記混雑率が前記混雑閾値以下であるときには、次停留所に向かう過程において前記降車案内通知の発報を行わない、通知部と、
降車予定停留所及び指定席が設定された乗降車予約が記憶される記憶部と、
前記乗降車予約を参照して、次停留所が前記降車予定停留所に設定されているか否かを判定する降車判定が可能な判定部と、
前記降車判定の結果、次停留所が前記降車予定停留所に設定されている場合に、前記通知部に前記降車案内通知の発報を指令する指令部と、
を備え、
前記判定部は、前記混雑率が前記混雑閾値を超過するときに前記降車判定を実行する一方で、前記混雑率が前記混雑閾値以下であるときには前記降車判定を行わず、
前記乗降車予約には、前記降車予定停留所及び前記指定席と関連付けて乗車希望者の年齢情報が記憶され、
前記判定部は、降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を前記指定席に設定し、かつ、乗車希望者の年齢が所定の年齢閾値を超過する前記乗降車予約を、前記降車判定の対象外とし、
さらに前記判定部は、前記乗合車両の降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を前記指定席に設定し、かつ、乗車希望者の年齢が所定の年齢閾値以下である前記乗降車予約を、前記降車判定の対象とする、
乗合車両。
【請求項4】
規定経路を走行し前記規定経路に沿って設けられた停留所にて停車可能な乗合車両であって、
車室内を撮像する撮像器と、
前記撮像器により撮像された、現停留所を出発し次停留所に向かう過程における車室内画像に含まれる乗客を認識する画像認識部と、
認識された乗客に基づいて前記車室の混雑率を求める、混雑率算出部と、
前記混雑率が所定の混雑閾値を超過したときに、次停留所にて降車する乗客が居ること及び当該乗客の座席情報を通知する降車案内通知を発報可能である一方で、前記混雑率が前記混雑閾値以下であるときには、次停留所に向かう過程において前記降車案内通知の発報を行わない、通知部と、
降車予定停留所及び指定席が設定された乗降車予約が記憶される記憶部と、
前記乗降車予約を参照して、次停留所が前記降車予定停留所に設定されているか否かを判定する降車判定を行う判定部と、
前記降車判定の結果、次停留所が前記降車予定停留所に設定されている場合に、前記通知部に前記降車案内通知の発報を指令可能な指令部と、
を備え、
前記指令部は、前記混雑率が前記混雑閾値を超過するときに前記通知部に前記降車案内通知の発報を指令する一方で、前記混雑率が前記混雑閾値以下であるときには前記降車案内通知の発報を前記通知部に指令せず、
前記乗降車予約には、前記降車予定停留所及び前記指定席と関連付けて乗車希望者の年齢情報が記憶され、
前記判定部は、降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を前記指定席に設定し、かつ、乗車希望者の年齢が所定の年齢閾値を超過する前記乗降車予約を、前記降車判定の対象外とし、
さらに前記判定部は、前記乗合車両の降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を前記指定席に設定し、かつ、乗車希望者の年齢が所定の年齢閾値以下である前記乗降車予約を、前記降車判定の対象とする、
乗合車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、乗合車両、及び当該乗合車両が含まれる運行管理システムが開示される。
【背景技術】
【0002】
乗客が乗合車両に乗降する際の支援を行うシステムが従来から知られている。例えば特許文献1では、乗合車両に乗車中の乗客により予約入力された降車予定停留所が、当該乗合車両の次停留所である場合に、乗客が所有する携帯端末の表示部に、降車支援通知が表示される。降車支援通知は例えば次停留所での降車を促すメッセージや、降車ボタンの押下げを促すメッセージが含まれる。
【0003】
また特許文献2では、乗客により予約された降車予定停留所が次停留所である場合に、車内の表示部に、次停留所での降車を促す画面を表示させる。車内の表示部に降車案内が表示されることで、他の乗客は立ち位置を移動させたりする等の、降車環境の改善が図られる。
【0004】
また特許文献3では、エレベータの乗降車案内装置が開示される。この案内装置は、乗客が携帯する携帯端末から予め降車階情報を受信する。そして、乗客が乗るエレベータのかごの停止階と降車階情報が一致すると、かご内に「降車中」等のメッセージや「この階で降りられる方がいらっしゃいます」等の音声が報知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-134687号公報
【文献】特開2008-65759号公報
【文献】特開2008-120574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、次停留所で降車する乗客が車内にいることを、車内の他の乗客にも通知する降車案内通知を行うことで、降車口までの動線(降車動線)確保のために立位客が移動するなどの、降車環境の改善が図られる。一方、降車動線が確保されている低混雑時に降車案内通知が発報されると、乗客に対して本来無用の移動が促されるおそれがある。
【0007】
そこで本明細書では、車内の乗車状況に応じた降車案内通知の発報が可能な、運行管理システム及び乗合車両が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、乗合車両と運行管理装置を備える運行管理システムが開示される。乗合車両は、規定経路を走行し当該規定経路に沿って設けられた停留所にて停車可能となっている。運行管理装置は、乗合車両の運行を管理する。乗合車両は、車室内を撮像する撮像器を備える。運行管理装置は、画像認識部、及び混雑率算出部を備える。画像認識部は、撮像器により撮像された、乗合車両が現停留所を出発し次停留所に向かう過程における車室内画像に含まれる乗客を認識する。混雑率算出部は、認識された乗客に基づいて車室の混雑率を求める。さらに乗合車両は、通知部を備える。通知部は、混雑率が所定の混雑閾値を超過したときに、次停留所にて降車する乗客が居ること及び当該乗客の座席情報を通知する降車案内通知を発報可能である。一方で通知部は、混雑率が混雑閾値以下であるときには、乗合車両が次停留所に向かう過程において降車案内通知の発報を行わない。
【0009】
上記構成によれば、混雑率が混雑閾値以下である、低混雑率のときには、降車案内通知が見送られる。これにより、乗客に対して本来無用の移動を促す、いわば無用の移動要請が抑制される。
【0010】
また上記構成において、運行管理装置は、記憶部、判定部、及び指令部を備える。記憶部には、乗合車両における降車予定停留所及び指定席が設定された乗降車予約が記憶される。判定部は、乗降車予約を参照して、乗合車両の次停留所が降車予定停留所に設定されているか否かを判定する降車判定が可能となっている。指令部は、降車判定の結果、乗合車両の次停留所が降車予定停留所に設定されている場合に、通知部に降車案内通知の発報を指令する。また判定部は、混雑率が混雑閾値を超過するときに降車判定を実行する一方で、混雑率が混雑閾値以下であるときには、降車判定を行わない。
【0011】
上記構成によれば、低混雑率時には降車判定が見送られることで、判定主体である運行管理装置の処理負担が軽減される。
【0012】
また上記構成において、運行管理装置は、記憶部、判定部、及び指令部を備える。記憶部には、乗合車両における降車予定停留所及び指定席が設定された乗降車予約が記憶される。判定部は、乗降車予約を参照して、乗合車両の次停留所が降車予定停留所に設定されているか否かを判定する降車判定を行う。指令部は、降車判定の結果、乗合車両の次停留所が降車予定停留所に設定されている場合に、通知部に降車案内通知の発報を指令可能となっている。また指令部は、混雑率が混雑閾値を超過するときに通知部に降車案内通知の発報を指令する一方で、混雑率が混雑閾値以下であるときには降車案内通知の発報を通知部に指令しない。
【0013】
上記構成によれば、低混雑率時には降車案内通知の発報指令を指令部が控えることで、乗合車両の通知部による降車案内通知の発報が見送られる。
【0014】
また上記構成において、判定部は、乗合車両の降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を指定席に設定する乗降車予約を、降車判定の対象外としてもよい。
【0015】
上記構成によれば、降車動線が短い、降車口付近の座席に着座する乗客が降車する際には、降車案内通知の発報を控えることが出来る。
【0016】
また上記構成において、乗降車予約には、降車予定停留所及び指定席と関連付けて乗車希望者の年齢情報が記憶されてよい。この場合、判定部は、乗合車両の降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を指定席に設定し、かつ、乗車希望者の年齢が所定の年齢閾値を超過する乗降車予約を、降車判定の対象外とする。
【0017】
上記構成によれば、乗客が小児等の低年齢者である場合には、座席位置に関わらず降車案内の対象とされる。これにより、低年齢者のスムーズな降車が図られる。
【0018】
また本明細書では、規定経路を走行し当該規定経路に沿って設けられた停留所にて停車可能な、乗合車両が開示される。乗合車両は、撮像器、画像認識部、混雑率算出部、及び通知部を備える。撮像器は、車室内を撮像する。画像認識部は、撮像器により撮像された、現停留所を出発し次停留所に向かう過程における車室内画像に含まれる乗客を認識する。混雑率算出部は、認識された乗客に基づいて車室の混雑率を求める。通知部は、混雑率が所定の混雑閾値を超過したときに、次停留所にて降車する乗客が居ること及び当該乗客の座席情報を通知する降車案内通知を発報可能である。一方で通知部は、混雑率が混雑閾値以下であるときには、次停留所に向かう過程において降車案内通知の発報を行わない。
【0019】
また上記構成において、乗合車両は、記憶部、判定部、及び指令部を備えてもよい。記憶部には、降車予定停留所及び指定席が設定された乗降車予約が記憶される。判定部は、乗降車予約を参照して、次停留所が降車予定停留所に設定されているか否かを判定する降車判定が可能となっている。指令部は、降車判定の結果、次停留所が降車予定停留所に設定されている場合に、通知部に降車案内通知の発報を指令する。また判定部は、混雑率が混雑閾値を超過するときに降車判定を実行する一方で、混雑率が混雑閾値以下であるときには降車判定を行わない。
【0020】
また上記構成において、乗合車両は、記憶部、判定部、及び指令部を備えてもよい。記憶部には、降車予定停留所及び指定席が設定された乗降車予約が記憶される。判定部は、乗降車予約を参照して、次停留所が降車予定停留所に設定されているか否かを判定する降車判定を行う。指令部は、降車判定の結果、次停留所が降車予定停留所に設定されている場合に、通知部に降車案内通知の発報を指令可能となっている。また指令部は、混雑率が混雑閾値を超過するときに通知部に降車案内通知の発報を指令する一方で、混雑率が混雑閾値以下であるときには降車案内通知の発報を通知部に指令しない。
【0021】
また上記構成において、判定部は、降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を指定席に設定する乗降車予約を、降車判定の対象外としてもよい。
【0022】
また上記構成において、乗降車予約には、降車予定停留所及び指定席と関連付けて乗車希望者の年齢情報が記憶されてもよい。この場合、判定部は、降車口から所定の近傍範囲内に含まれる座席を指定席に設定し、かつ、乗車希望者の年齢が所定の年齢閾値を超過する乗降車予約を、降車判定の対象外とする。
【発明の効果】
【0023】
本明細書で開示される乗合車両及び運行管理システムによれば、車内の乗車状況に応じた降車案内通知の発報が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る運行管理システムにより提供される交通サービスを例示する図である。
図2】本実施形態に係る運行管理システムのハードウェア構成を例示する図である。
図3】本実施形態に係る運行管理システムの機能ブロックを例示する図である。
図4】運行スケジュールテーブルを例示する図である。
図5】本実施形態に係る乗合車両の外観を例示する図である。
図6】本実施形態に係る乗合車両の車室内を例示する図である。
図7】車室内画像を例示する図である。
図8】車室内画像に対してSSDアルゴリズムに基づく画像認識を実行したときの例を示す図である。
図9】降車案内判定フローを例示するフローチャートである。
図10】規定経路を運行中の乗合車両における運行スケジュールを例示する図である。
図11】降車案内判定フローの別例を示すフローチャートである。
図12】本実施形態の別例に係る運行管理システムの機能ブロックを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本明細書に係る運行管理システムの実施形態が図面を用いて説明される。以下で説明する形状、材料、個数、及び数値は、説明のための例示であって、運行管理システムの仕様に応じて適宜変更することができる。また以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号が付される。
【0026】
<交通サービス>
図1には、本実施形態に係る運行管理システムにより提供される交通サービスの概要が例示される。この運行管理システムには、複数台の乗合車両10-1~10-8と、乗合車両10-1~10-8の運行を管理する運行管理装置50が含まれる。
【0027】
図1に例示される交通サービスでは、運行経路である規定経路90を乗合車両10が走行し、不特定多数の利用者が移送される。規定経路90は例えば循環経路であってよい。乗合車両10は、規定経路90上を図示矢印のように一方通行にて循環運行する。さらに乗合車両10は、規定経路90に沿って設けられた停留所ST1~ST3にて停車可能となっている。
【0028】
規定経路90は、例えば乗合車両10のみが走行を許可される専用道路であってよい。乗合車両10が鉄道車両である場合には、規定経路90は循環線路であってよい。又は、規定経路90は、乗合車両10以外の車両も通行可能な一般道路に設定された路線であってもよい。
【0029】
また、規定経路90と接続するようにして車庫92が設けられる。図1では車庫92に待機される乗合車両10-5~10-8が例示される。車庫92との接続ポイントとして、規定経路90には回収ポイントPout及び投入ポイントPinが設けられる。
【0030】
また規定経路90には、運行中の乗合車両10-1~10-4に各自の運行スケジュールを送る運行スケジュール更新ポイントPuが設けられる。スケジュール更新ポイントPuでは、運行管理装置50から、当該ポイントを通過する乗合車両10に対して、当該乗合車両10の、運行スケジュール更新ポイントPuを起点とした一周分の運行スケジュールが提供される。
【0031】
後述されるように、本実施形態に係る運行管理システムでは、車内の混雑率に応じて、降車案内通知の可否が判定される。降車案内通知とは、次停留所が降車予定停留所に設定された乗降車予約が、図4に例示されるような運行スケジュールに設定されているときに、その次停留所にて降車する乗客(降車客)が居ること、及びその降車客の座席情報を車内に通知するものである。
【0032】
この降車案内通知は、乗合車両10が現停留所を出発し次停留所に向かう過程で発報される。次停留所に到着する前に、降車案内通知が発報されることで、例えば立位の乗客に対して、降車動線を確保するための移動が促される。また降車案内通知に、降車客が着座する座席情報が含まれることで、降車口を終点とする降車動線の起点(つまり降車客の座席)を、車内の乗客が理解可能となる。
【0033】
さらに、本実施形態に係る運行管理システムでは、降車案内通知は、車内の混雑率が所定の混雑閾値よりも低い低混雑時には、発報が控えられる。降車動線が確保された低混雑時に降車案内通知が行われないことにより、立位客の無用な移動が抑制可能となる。
【0034】
<運行管理システムの全体構成>
図2には、本実施形態に係る運行管理システムと、当該システムにアクセス可能な携帯端末70のハードウェア構成が例示される。また図3には、運行管理システム及び携帯端末70の機能ブロックが例示される。上述のように、運行管理システムは、乗合車両10及び運行管理装置50を含んで構成される。乗合車両10、運行管理装置50、及び携帯端末70は、インターネット95等の通信手段を用いて互いに通信可能となっている。
【0035】
<携帯端末>
携帯端末70は、乗合車両10の乗車希望者が操作可能となっている。携帯端末70は、例えばスマートフォンであってよく、そのハードウェア構成として、データの入出力を制御する入出力コントローラ71を備える。また携帯端末70は、演算装置として、CPU72を備え、記憶部として、ROM75、RAM76、及びストレージデバイス77を備える。ストレージデバイス77は、例えばSSD(Solid State Drive)であってよい。
【0036】
さらに携帯端末70は、入力部73及び表示部74を備える。例えば携帯端末70には、入力部73と表示部74が一体化されたタッチパネルが設けられる。さらに携帯端末70は測位部78及び時計80を備える。測位部78は、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)における衛星からの測位信号を受信する受信機である。携帯端末70の各種ハードウェア部品は内部バス79に接続される。
【0037】
記憶装置であるROM75及びストレージデバイス77の少なくとも一方にはプログラムが記憶され、このプログラムをCPU72が実行することで、携帯端末70には図3に例示されるバスアプリケーション81が構成される。バスアプリケーション81は、本実施形態に係る交通サービスの利便性を向上させるためのソフトウェアであって、運行スケジュール表示部82及び乗降車予約入力部84を備える。
【0038】
運行スケジュール表示部82は、乗合車両10の運行スケジュール(例えば時刻表)及び実際の運行状況を表示部74に表示する。例えば測位部78が受信した携帯端末70の現在位置に最も近い停留所ST1~ST3の運行スケジュール及び実際の運行状況が表示部74に表示される。
【0039】
乗降車予約入力部84は、乗合車両10の指定席42A~42F(図6参照)の乗車予約を行う。例えば乗車希望者が、乗車日時、乗車停留所ST1~ST3、及び降車停留所ST1~ST3を入力部73から入力することで、指定席42A~42Fを予約可能となる。
【0040】
<乗合車両>
図5には、乗合車両10の外観が例示され、図6には、乗合車両10の車室40内の様子が例示される。なお、図5図6において、車体前後方向が記号FRで表される軸で示され、車幅方向が記号RW(Right Width)で表される軸で示される。また、車高方向が記号UPで表される軸で示される。
【0041】
図5を参照して、乗合車両10は乗合バスとして利用され、左側面には乗車口及び降車口となる一対のドア41,41が設けられる。また、車両前方には車外表示器47Aが設けられる。車外表示器47Aはいわゆるデジタルサイネージとも呼ばれ、液晶ディスプレイまたはLEDディスプレイから構成される。
【0042】
図6を参照して、車室40内には、その壁面に沿って、乗客用の座席が複数設けられる。例えば座席は、事前予約の可能な指定席42A~42Fと、予約不可の自由席49が設けられる。また立位客の支持のため、天井には複数の吊り手44が設けられる。また車室40の側壁には手摺46が設けられる。
【0043】
ドア41,41の上方には、通知部である車内表示器47Bが設けられる。車内表示器47Bは、車外表示器47Aと同様に、液晶ディスプレイまたはLEDディスプレイから構成される。後述されるように、車内表示器47Bは、降車案内通知の発報態様として、テキストメッセージを表示する。このテキストメッセージは、例えば「座席〇〇にお座りのお客様が、次の停留所で降車します。スムーズな降車のご協力をお願いします。」等の、立位客に降車動線の形成を促す内容のメッセージとなる。なお、この降車案内メッセージは、車室40の天井に設けられた、通知部である車内スピーカ45から、音声案内としても出力可能となっている。
【0044】
車室40の天井の中央部には、撮像器である天井カメラ18が設けられる。例えば車室40の車幅方向中央かつ車両前後方向中央に、天井カメラ18が設けられる。例えば天井カメラ18は、CMOSセンサやCCDセンサ等のイメージセンサを備える。
【0045】
例えば天井カメラ18は、いわゆる360°カメラであってよく、車室40の乗客用空間全体を撮像可能となっている。例えば天井カメラ18は、車室40の床43全体を視野に含む。
【0046】
天井カメラ18により撮像される車室内画像は、例えば図7のような俯瞰視画像となる。このような車室内画像によれば、車室40の混雑率Aを求めることが出来る。
【0047】
なお、後述されるように、混雑率Aの算出に当たり、車室40内の乗客数が算出される。乗客数の算出に当たり、天井に設けられた天井カメラ18の代わりに、例えば車室40の側壁上方に設けられた側方カメラ(図示せず)の車室内画像が用いられてもよい。
【0048】
<乗合車両の自動運転制御機構>
図2図3を参照して、乗合車両10は、例えば自動運転機能を備える自動運転車両である。例えば交通サービスの提供に当たり、乗合車両10が規定経路90(図1参照)を走行する際には、米国の自動車技術会(SAE)による基準に基づいて、乗合車両10は、レベル4またはレベル5での自動運転が可能となっている。
【0049】
乗合車両10は、規定経路90を自動運転で走行しながら、停留所ST1~ST3にて停車して乗客が乗り降りする乗り合いバスとして利用される。例えば乗合車両10は、回転電機17(モータ)を駆動源とし、図示しないバッテリを電源とする電気自動車(BEV,BatteryElectric Vehicle)である。また乗合車両10は、走行制御機構として、ブレーキ機構14A、操舵機構14B、及び回転電機17の出力を制御するインバータ14Cを備える。
【0050】
さらに、乗合車両10は、自車位置の取得や周辺状況の把握のための機構として、車外カメラ11A、ライダーユニット11B、近接センサ12、測位部13、時計15、及び制御部20を備える。例えば乗合車両10には、その前面、後面、及び両側面に、センサユニットが設けられる。センサユニットは、車外カメラ11A及びライダーユニット11Bを含んで構成される。
【0051】
ライダーユニット11Bは、自動運転走行用のセンサユニットであり、自車周辺の物体と自車との距離を測定可能な測距部である。ライダーユニット11Bでは、ライダー(LiDAR、Light Detection and Ranging)、すなわちレーザー光を用いて周辺物体との距離を測定する技術が用いられる。ライダーユニット11Bは、例えばソリッドステート型のユニットであって、当該ユニットにより、乗合車両10の周辺環境についての3次元点群データを得ることが出来る。
【0052】
車外カメラ11Aは、ライダーユニット11Bと同様の視野を撮像する。車外カメラ11Aは、例えばCMOSセンサやCCDセンサ等のイメージセンサを備える。近接センサ12は、例えば赤外線センサであって、例えば平面視で乗合車両10の四隅に設けられる。例えば乗合車両10が乗車地に到着する際に、近接センサ12が歩道の縁石等の突出物を検出する。この検出により、乗合車両10を縁石に近接させて停車させる正着制御が可能となる。測位部13は人工衛星によって測位を行うシステムであって、例えば衛星測位システム(globalnavigation satellite system)が用いられる。
【0053】
制御部20は、例えば乗合車両10の電子コントロールユニット(ECU)であってよく、コンピュータ(電子計算機)から構成される。図2を参照して、制御部20は、そのハードウェア構成として、データの入出力を制御する入出力コントローラ21を備える。また制御部20は、演算装置として、CPU22、GPU23(Graphics Processing Unit)、及びDLA24(Deep Learning Accelerators)を備える。また制御部20は、記憶部として、ROM25、RAM26、及びハードディスクドライブ27(HDD)を備える。なお、ハードディスクドライブ27の代わりに、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置が用いられてもよい。これらの構成部品は内部バス28に接続される。
【0054】
記憶装置であるROM25及びハードディスクドライブ27の少なくとも一方には、乗合車両10の自動運転制御を行うためのプログラムが記憶される。上記プログラムが制御部20のCPU22等により実行されることで、制御部20には、図3に例示されるような機能ブロックが形成される。または、当該プログラムが記憶されたDVD等の非一過性の記憶媒体をCPU22が読み取って実行することによっても、制御部20には、図3に例示されるような機能ブロックが形成される。
【0055】
すなわち制御部20は機能ブロックとして、スキャンデータ解析部30、自己位置推定部31、自律走行制御部32、及び運行案内部33を備える。また制御部20は記憶部として、ダイナミックマップ記憶部34及び運行スケジュール記憶部35を備える。
【0056】
スキャンデータ解析部30は、車外カメラ11Aが撮像した撮像画像を取得する。スキャンデータ解析部30は、取得した撮像画像に対して、既知のディープラーニング手法を利用した画像認識を行う。この画像認識により、撮像画像内の物体検出とその属性(車両、通行人、構造物等)認識が行われる。
【0057】
またスキャンデータ解析部30は、ライダーユニット11Bから3次元点群データを取得する。さらにスキャンデータ解析部30は、画像認識済みの撮像画像と3次元点群データの座標を重ね合わせた周辺データを作成する。周辺データにより、どのような属性の物体が、乗合車両10からどれだけ離隔しているかを検出することが出来る。この周辺データは、自律走行制御部32に送られる。
【0058】
自己位置推定部31は、測位部13から自己位置情報(緯度、経度)を取得する。例えば自己位置推定部31は人工衛星から自己位置情報を取得する。このようにして得られた自己位置情報(自車位置情報)は、自律走行制御部32に送られる。
【0059】
ダイナミックマップ記憶部34には、運行管理装置50の運行ルート作成部62が作成した運行経路地図データが記憶される。この運行経路地図データには後述されるダイナミックマップデータが含まれる。また運行スケジュール記憶部35には、運行管理装置50の運行スケジュール作成部61が作成した運行スケジュール(図4参照)が記憶される。
【0060】
自律走行制御部32は、ダイナミックマップ記憶部34に記憶された運行経路地図データ、自己位置推定部31から送信された自己位置情報(自車位置情報)、及び、スキャンデータ解析部30から送信された周辺データに基づいて、乗合車両10の走行制御を行う。また停留所ST1~ST3に到着すると、乗合車両10は運行スケジュールに設定された出発時刻まで停留所ST1~ST3に待機する。
【0061】
<運行管理装置>
図1を参照して、運行管理装置50は、例えば複数の乗合車両10を使った交通サービスを提供する管理会社に設置される。運行管理装置50は、例えばコンピュータ(電子計算機)から構成される。図2を参照して、運行管理装置50は、そのハードウェア構成として、データの入出力を制御する入出力コントローラ51を備える。また運行管理装置50は、CPU52A、GPU52B,DLA52C、入力部53、表示部54、ROM55、RAM56、及びハードディスクドライブ57(HDD)、時計59を備える。なお、ハードディスクドライブ57の代わりに、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置が用いられてもよい。これらの構成部品は内部バス58に接続される。
【0062】
記憶装置であるROM55及びハードディスクドライブ57の少なくとも一方には、運行管理を行うためのプログラムが記憶される。上記プログラムが運行管理装置50のCPU52A等により実行されることで、運行管理装置50には、図3に例示されるような機能ブロックが形成される。また当該プログラムが記憶されたDVD等の非一過性の記憶媒体をCPU52Aが読み取って実行することによっても、運行管理装置50には、図3に例示されるような機能ブロックが形成される。
【0063】
すなわち運行管理装置50は、記憶部として、運行スケジュール記憶部68及びダイナミックマップ記憶部67を備える。また運行管理装置50は、機能部として、運行スケジュール作成部61、運行ルート作成部62、乗降車予約設定部63、降車案内判定部64、降車案内指令部65、車室内画像認識部66、及び混雑率算出部69を備える。
【0064】
ダイナミックマップ記憶部67には、地図データであるダイナミックマップデータが記憶される。ダイナミックマップは、3次元地図であって、例えば車道の位置及び形状(3次元形状)が記憶される。車道の3次元形状とは、例えば勾配や幅員等が含まれる。また車道に引かれた車線、横断歩道、停止線等の位置もダイナミックマップに記憶される。加えて、道路周辺の停留所、建物、信号機等の構造物の位置及び形状(3次元形状)もダイナミックマップに記憶される。さらに、駐車場の位置及び形状もダイナミックマップに記憶される。
【0065】
例えばダイナミックマップでは、緯度及び経度を含む地理座標系が用いられる。乗合車両10が自動運転走行する際には、運行ルート作成部62がダイナミックマップ記憶部67からダイナミックマップデータを抽出して、走行路線及び停留所位置を含む運行地図データを作成する。
【0066】
運行スケジュール作成部61は、乗合車両10の運行スケジュール(言い換えると運行ダイヤ)を作成する。例えば運行ルート作成部62から運行地図データを受信すると、運行スケジュール作成部61は、走行路線、乗合車両10の定格速度、及び停留所ST1~ST3での標準停車時間等に基づいて、運行スケジュールを作成する。
【0067】
図4には、乗合車両10に提供される、運行スケジュールテーブルが例示される。運行スケジュールテーブルには、各停留所ST1~ST3の到着予定時刻及び出発予定時刻の他に、運行スケジュール更新ポイントPu(図1参照)の通過時刻、回収ポイントPoutの通過予定時刻、投入ポイントPinの通過予定時刻も設定される。
【0068】
さらに運行スケジュールテーブルには、実際の各ポイントの通過・到着・出発時刻が記録される欄及び混雑率が入力される欄が設けられる。加えて運行スケジュールテーブルには、乗車予約及び降車予約の有無と、乗車希望者の年齢情報が記録される欄が設けられる。
【0069】
乗車予約及び降車予約の欄には、予約された指定席番号が記録される。また後述されるように、乗車希望者の年齢は、例えば乗客が小児であるか否かを判定するために記録される。例えば後述されるように、降車時に、立位客の移動を促すような声を発しづらい小児に代わり、車内に降車案内通知が発報される。
【0070】
例えば運行スケジュール作成部61は、規定経路90(図1参照)を走行中の全ての乗合車両10-1~10-4に対する、運行スケジュール更新ポイントPuを起点とした、規定経路90の一周分のスケジュール(全体スケジュール)を作成する。この全体スケジュールは、運行スケジュール記憶部68に記憶される。
【0071】
また運行スケジュール作成部61は、全体スケジュールに基づいて、乗合車両10-1~10-4のそれぞれ独立した個別の運行スケジュール(個別スケジュール)を作成する。図4に例示されるように、個別スケジュールとして、運行スケジュール更新ポイントPuを起点とした、乗合車両10の一周分のスケジュールが作成される。作成された個別スケジュールは、乗合車両10が運行スケジュール更新ポイントPuを通過したときに、当該乗合車両10に提供される。提供された運行スケジュール(個別スケジュール)は、乗合車両10内の運行スケジュール記憶部35に記憶される。
【0072】
図3を参照して、乗降車予約設定部63は、乗車希望者の携帯端末70(例えばスマートフォン)から入力された乗車予約情報を受け付け、運行スケジュール記憶部68に記憶させる。乗車予約情報には、乗車希望者が乗車予定の停留所である乗車予定停留所、降車予定の停留所である降車予定停留所、及び着座予定の指定席番号が含まれる。また乗車予約情報には、上記項目に関連付けられて、乗車希望者の年齢情報が含まれる。さらにその他に、乗車希望時刻や乗車希望車両等が、乗車予約情報に含まれていてもよい。
【0073】
例えば図4を参照して、この運行スケジュールには、停留所ST2にて乗車し、指定席42Bに着座予定の、9歳の乗車希望者の乗車予約情報が設定されている。またこの運行スケジュールには、停留所ST3にて乗車し、指定席42D,42Eに着座予定の、65歳及び63歳の乗車希望者の乗車予約情報と、指定席42Bに着座する9歳の乗客が停留所ST3で降車する降車予約情報が設定されている。このように、乗降車予約設定部63により設定された乗車予約情報は、運行スケジュール記憶部68に記憶される。
【0074】
降車案内判定部64は、乗合車両10の次停留所が降車予定停留所に設定されているか否かを判定する降車判定を行う。この降車判定は、例えば乗合車両10が現停留所を出発して次停留所に向かう過程で実行される。この降車判定に当たり、降車案内判定部64は、運行スケジュール記憶部68に記憶された乗降車予約情報を参照する。降車判定の詳細は後述される。
【0075】
降車案内指令部65は、降車案内判定部64による降車判定結果と、乗合車両10の混雑率算出部69により算出された混雑率Aに基づいて、降車案内通知の発報の指令可否を決定する。
【0076】
この決定プロセスの詳細は後述されるが、降車判定により、次停留所を降車予定停留所とする降車予約情報が設定されていると判定された場合であって、かつ、混雑率Aが所定の混雑閾値K1を超過する場合には、降車案内指令部65は、降車案内通知の発報を、乗合車両10の運行案内部33を介して、通知部に指令する。ここで通知部は、車内スピーカ45及び車内表示器47Bの少なくとも一方を含む。上記通知指令を受けて、通知部である車内スピーカ45及び車内表示器47Bは、運行案内メッセージ(音声メッセージおよびテキストメッセージ)を出力する。
【0077】
一方、次停留所が降車予定停留所に設定されていても、混雑率Aが所定の混雑閾値K1以下の低混雑状態である場合には、降車案内指令部65は、降車案内通知の発報を通知部(車内スピーカ45及び車内表示器47B)には指令しない。降車動線が確保された低混雑時には降車案内通知が行われないことにより、立位客の無用な移動が抑制可能となる。
【0078】
<混雑率の算出1>
車室内画像認識部66は、乗合車両10の天井カメラ18が撮像した車室内画像を取得するとともに、当該画像に含まれる、乗客の画像領域を認識する。例えば車室内画像認識部66には、画像認識アルゴリズムとして、教師有り学習を用いたSSD(Single Shot Multibox Detector)が実装される。
【0079】
SSDアルゴリズムは既知の技術であるため、ここでは簡潔に説明される。SSDアルゴリズムでは、撮像画像内の位置推定及びクラス推定が行われる。つまり、画像内のどの位置に物体がいるのか、及びその物体の属性(クラス)は何か、という2種類の推定が同時並行で、つまり、ニューラルネットワークを用いた一回の演算で(Single Shotで)行われる。
【0080】
SSDアルゴリズムでは、人物の検出に当たり、その人物と外部との境界線を抽出する代わりに、図8に例示されるような矩形枠の「バウンディングボックス」により、人物の境界が画定される。例えばSSDアルゴリズムでは、位置推定に当たり、画像上に大きさや形の異なる複数の(例えば1万個弱の)デフォルトボックスと呼ばれる矩形枠が当て嵌められ、そのいずれの枠が物体を過不足なく含められるかが演算される。さらに各バウンディングボックスには、当該ボックスに捉えられた物体の属性(クラス)が表示される。
【0081】
車室内画像認識部66は、撮像画像中の乗客101A,101Bを認識してバウンディングボックス111A,111Bで囲むとともに、認識された乗客に対して属性「Passenger」の値を付与する。このような画像認識を可能とするため、例えば教師データを用いてSSDアルゴリズムが学習される。この教師データは、立位及び座位の人物画像を入力データとし、クラス「Passenger」及び乗客を囲むバウンディングボックスの位置パラメータを出力データとする一対の教師データセットを備える。
【0082】
各バウンディングボックスには位置パラメータが与えられる。すなわち、撮像画像平面座標におけるボックスの中心座標C[Cx,Cy]、ボックス幅W、及びボックス高さHがバウンディングボックスの位置パラメータとして与えられる。
【0083】
混雑率算出部69は、車室内画像認識部66により認識された乗客の数Npをカウントする。さらに混雑率算出部69は、乗合車両10の定員数Ncを参照する。この定員数Ncは例えば乗合車両10の図示しない記憶部に記憶される。混雑率算出部69は、定員数Ncに対する乗客数Npの割合から混雑率A[%]を求める(A=Np/Nc)。求められた混雑率Aは運行管理装置50の降車案内判定部64に送られる。
【0084】
<混雑率の算出2>
なお、乗客数を用いて混雑率Aを求める代わりに、バウンディングボックスの占有面積を用いて、混雑率Aが求められてもよい。上述のように、バウンディングボックスには、その位置パラメータとしてボックス幅W及びボックス高さHが含まれる。ボックス幅Wとボックス高さHの積から、バウンディングボックスの面積Sbを求めることが出来る。このバウンディングボックスの面積Sbが、人物の占有面積として利用される。なお、車室側方から車室内を撮像する側方カメラによる側面視画像と比較して、天井カメラ18による俯瞰視画像を用いることで、人物の占有面積を精度よく求めることが出来る。
【0085】
混雑率算出部69は、車室内画像認識部66により認識された乗客を区画するバウンディングボックスの面積Sbの総和ΣSbを求める。さらに混雑率算出部69は、面積総和ΣSbと車室40の床面積Saに基づいて、車室40における混雑率を求める。具体的に混雑率算出部69は、車室床面積Saに対する乗客の占有総面積ΣSbの割合(ΣSb/Sa)×100[%]を混雑率Aとして求める。
【0086】
<降車案内判定フロー>
図9には、本実施形態に係る運行管理システムにおける、降車案内判定フローが例示される。なおこのフローの各ステップは、いずれも運行管理装置50内で実行される。
【0087】
このフローでは、例えば、乗合車両10が現停留所を出発し次停留所に向かう過程で実行される。例えば現停留所の出発時点で図9の降車案内判定フローが実行される。例えば乗合車両10の運行案内部33により、現停留所からの出発時刻が運行管理装置50に送られる。この出発時刻の受信をトリガーとして、図9のフローが実行される。
【0088】
なお以下では、図10の運行スケジュールのように、現停留所を停留所ST2とし、次停留所を停留所ST3としてフローが説明される。また説明の便宜上、以下の説明では、図1にて走行中の乗合車両10-1~10-4のうち、乗合車両10-1に対して実行される降車案内フローが説明される。なお当然のことながら、図9の降車案内フローは、全ての乗合車両10-1~10-8に対して実行可能である。
【0089】
乗合車両10-1が現停留所ST2を出発すると、車室内画像認識部66は、車内カメラである天井カメラ18が撮像した車室内画像を取得する(S10)。この車室内画像は、乗合車両10-1が現停留所ST2を出発し次停留所ST3に向かう過程で天井カメラ18により撮像される。さらに車室内画像認識部66は、図8に例示されるような、車室画像内の乗客の画像認識を行う(S12)。
【0090】
次に混雑率算出部69は、車室内画像認識部66により認識された乗客に基づいて車室40の混雑率Aを求める。例えば混雑率算出部69は、乗客数Npと、乗合車両10の定員数Ncに基づいて、混雑率A[%](=Np/Nc)を求める(S14)。または、混雑率算出部69は、乗客のバウンディングボックスの面積Sbの総和ΣSbを求めるとともに、車室床面積Saに対する面積総和ΣSbの割合である混雑率A[%]を求める。
【0091】
次に混雑率算出部69は、受信した乗合車両10-1の混雑率Aが、所定の混雑閾値K1を超過するか否かを判定する(S16)。混雑閾値K1は、例えば70%以上100%以下の値であってよい。
【0092】
混雑率Aが混雑閾値K1以下である場合には、図9の降車案内判定フローが終了する。つまり降車案内判定部64は降車判定を行わない。一方、混雑率Aが混雑閾値K1を超過する場合、混雑率算出部69は、車内が混雑している旨の通知を降車案内判定部64に送信する。これを受けて降車案内判定部64は、運行スケジュール記憶部68に記憶された、乗合車両10-1の運行スケジュール、特に乗降車予約情報を参照して、降車判定を実行する。
【0093】
ここで降車案内判定部64は、後述される降車判定に先立ち、その前処理を実行する(S18,S20)。この前処理では、乗合車両10-1の降車口(ドア41)から所定の近傍範囲内に含まれる座席を指定席に設定する乗降車予約が、ステップS22にて実行される降車判定の対象外となる。例えばこのような降車口近傍の座席として、図6を参照して、降車口と対向する指定席42A~42Cを指定席に設定する乗降車予約が、降車判定の対象外となる。
【0094】
なお以下では、冗長な記載を避けるために、「乗合車両10-1の降車口(ドア41)から所定の近傍範囲内に含まれる座席(指定席42A~42C)を指定席に設定する乗降車予約」は、「降車口近傍予約」と適宜記載される。
【0095】
降車案内判定フローは、車内混雑時において降車動線の円滑な形成を促すためのフローであるところ、降車口(ドア41)付近の指定席42A~42Cは、混雑時であっても降車動線が短く、降車客が乗降口(ドア41)付近の数人の立位客に声を掛けるのみにて、降車動線を形成できる。
【0096】
このように、降車動線の形成が容易な降車口近傍予約を、降車判定の対象から外すことで、降車案内通知の発報回数を低減でき、その分、車室内の静粛性を維持可能となる。
【0097】
降車案内判定部64は、運行スケジュール記憶部68に記憶された、乗合車両10-1に対する運行スケジュールを参照する。そして降車案内判定部64は、降車口近傍予約を抽出する(S18)。
【0098】
ここで、ステップS18(降車口近傍予約の抽出)とステップS22(降車判定)との間に、任意に乗車希望者の年齢を確認するステップS20が設けられてもよい。降車口付近の指定席42A~42Cに着座する乗客が小児である場合には、小児は立位客に声を掛けづらく、降車動線の形成が困難となるおそれもある。
【0099】
そこでステップS20において、降車案内判定部64は、降車口近傍予約に設定された乗車希望者の年齢を確認する。そして、乗車希望者の年齢が、所定の年齢閾値K2(例えば15歳)を超過する乗降車予約を、降車判定(S22)の対象から除外する。乗車希望者の年齢が年齢閾値K2以下である乗降車予約については、降車判定の対象に設定される。
【0100】
次に降車案内判定部64は、乗合車両10-1の次停留所ST3を降車予定停留所とする乗降車予約情報があるか否かを判定する、降車判定を実行する(S22)。例えば図10の例では、指定席42Bの乗客の降車予定停留所が、乗合車両10-1の次停留所ST3に設定されている。この場合、降車案内判定部64は、降車設定有りとの判定結果を降車案内指令部65に送信する。
【0101】
一方、乗合車両10-1の次停留所ST3を降車予定停留所とする乗降車予約情報が無い場合には、降車案内判定部64は、降車設定無しとの判定結果を降車案内指令部65に送信する。
【0102】
降車設定無しとの判定結果を受けた場合、降車案内指令部65は、図9の降車案内判定フローを終了させる。この結果、通知部である車内スピーカ45及び車内表示器47Bには、発報指令が入力されないため、乗合車両10-1が次停留所に向かう過程において、車内スピーカ45及び車内表示器47Bは、降車案内通知の発報を行わない。
【0103】
一方、降車案内判定部64から、降車設定有りとの判定結果を受けた場合、降車案内指令部65は、乗合車両10-1の運行案内部33を介して、通知部である車内スピーカ45及び車内表示器47Bに対して、降車案内通知の発報を指令する(S24)。なおこの時、次停留所ST3を降車予定停留所とする乗客が着座する指定席情報(例えば指定席番号)を、運行案内部33に送ってもよい。発報指令及び指定席情報を受けて、車内スピーカ45及び車内表示器47Bは、受信した指定席情報の乗客が、次停留所ST3で降車する旨の降車案内通知を出力する。
【0104】
上記の様な降車案内フローによれば、通知部である車内スピーカ45及び車内表示器47Bは、車室40内が混んでいる場合(混雑率A>混雑閾値K1)には、降車案内通知の発報を行う。その一方で、車室40が空いている場合(混雑率A≦混雑閾値K1)には、車内スピーカ45及び車内表示器47Bは、乗合車両10が次停留所に向かう過程で降車案内通知の発報を行わない。特に後者の場合において、乗客、特に立位客の無用な移動が抑制可能となる。
【0105】
<降車案内判定フローの別例>
図9の例では、混雑率Aが混雑閾値K1を超過するか否かに応じて、降車判定及びその前処理(S18-S22)を実行していたが、この順序を逆としてもよい。そのような降車案内判定フローの別例が、例えば図11に例示される。なおこのフローにおいて、乗合車両10の運行案内部33により、現停留所からの出発時刻が運行管理装置50に送られる。この出発時刻の受信をトリガーとして、図11のフローが実行される。
【0106】
このフローでは、まず降車案内判定部64により降車判定及びその前処理(S18-S22)が実行される。降車案内判定部64により降車設定無しと判定されたときには、そのままフローが終了してもよい。一方、降車案内判定部64により降車設定有りと判定されたときには、乗合車両10の車室内画像認識部66及び混雑率算出部69により混雑率Aの算出が行われる(S10~S14)。
【0107】
そして、混雑率Aが混雑閾値K1を超過するとき(S16)に、降車案内指令部65は降車案内通知の発報を、通知部である車内スピーカ45及び車内表示器47Bに指令する(S24)。
【0108】
一方、混雑率Aが混雑閾値K1以下である時には、降車案内指令部65は、降車案内通知の発報を、車内スピーカ45及び車内表示器47Bに指令しない(発報を見送る)。発報指令が入力されないため、車内スピーカ45及び車内表示器47Bは、乗合車両10が次停留所に向かう過程において、降車案内通知の発報を行わない。
【0109】
図11のフローによれば、まず降車判定の結果を待って、混雑率Aの算出が行なわれる。降車判定の結果によっては、つまり降車設定無しとの判定結果が得られた場合には、混雑率Aの算出に必要な、画像認識処理を行わずに済むので、運行管理装置50の演算負荷を軽減可能となる。
【0110】
<運行管理システムの別例>
図12には、図3に例示された運行管理システムの別例が示される。図3では運行管理装置50に設けられていた降車案内判定部64、降車案内指令部65、車室内画像認識部66、及び混雑率算出部69が、図12では乗合車両10内に設けられる。その他の構成は図3と同様である。
【0111】
図12のような機能ブロックは、図3と同様に、乗合車両10の自動運転制御及び運行管理を行うためのプログラムをCPU22等が実行することで、形成される。このプログラムは、記憶装置であるROM25及びハードディスクドライブ27の少なくとも一方に記憶されるか、DVD等の非一過性の記憶媒体に記憶される。
【0112】
このような構成において、図9図11における降車案内判定フローは、乗合車両10が単独で実行する。つまり、図9図11における各ステップが全て乗合車両10内で実行される。また例えば、図9図11における降車判定結果及び混雑率Aは、フローの終了後、運行管理装置50の運行スケジュール作成部61に送信される。
【符号の説明】
【0113】
10 乗合車両、18 天井カメラ(撮像器)、20 制御部、33 運行案内部、35 運行スケジュール記憶部、40 車室、41 ドア(降車口)、42A-42F 指定席、45 車内スピーカ(通知部)、47B 車内表示器(通知部)、50 運行管理装置、61 運行スケジュール作成部、62 運行ルート作成部、63 乗降車予約設定部、64 降車案内判定部、65 降車案内指令部、66 車室内画像認識部、67 ダイナミックマップ記憶部、68 運行スケジュール記憶部、69 混雑率算出部、70 携帯端末、81 バスアプリケーション、82 運行スケジュール表示部、84 乗降車予約入力部。
図1
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図12