IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

特許7528882提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム
<>
  • 特許-提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム 図1
  • 特許-提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム 図2
  • 特許-提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム 図3
  • 特許-提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム 図4
  • 特許-提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム 図5
  • 特許-提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム 図6
  • 特許-提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム 図7
  • 特許-提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム 図8
  • 特許-提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム 図9
  • 特許-提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240730BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240730BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240730BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240730BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W60/00
B60W40/04
B60W50/14
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021118053
(22)【出願日】2021-07-16
(65)【公開番号】P2023013690
(43)【公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】久米 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】小島 一輝
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-230573(JP,A)
【文献】特開2018-151754(JP,A)
【文献】特開2017-224107(JP,A)
【文献】特開2016-45856(JP,A)
【文献】特開2019-119262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60W 60/00
B60W 40/04
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、前記自動運転機能に関連する情報の提示を制御する提示制御装置であって、
前記自車両のドライバに周辺監視義務のある運転支援制御から、前記ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御への移行が可能になったか否かを把握する制御把握部(82)と、
前記自律走行制御への移行が可能となったことを示す移行可能情報を報知する報知制御部(88)と、を備え、
前記報知制御部は、前記自律走行制御への移行が可能となった地点から進行方向に規定される所定範囲(Rc)に、前記自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)が存在する場合、前記移行可能情報の報知を中止する提示制御装置。
【請求項2】
自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、前記自動運転機能に関連する情報の提示を制御する提示制御装置であって、
前記自車両のドライバに周辺監視義務のある運転支援制御から、前記ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御への移行が可能になったか否かを把握する制御把握部(82)と、
前記自律走行制御への移行が可能となったことを示す移行可能情報を報知する報知制御部(88)と、を備え、
前記報知制御部は、前記自律走行制御への移行が可能となった地点から進行方向に規定される所定範囲(Rc)に、前記自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)が存在する場合、前記自律走行制御の早期解除を警告する解除警告情報を、前記移行可能情報と共に報知する提示制御装置。
【請求項3】
前記報知制御部は、複数の前記中断予測区間が存在する場合、前記移行可能情報の報知を中止する請求項2に記載の提示制御装置。
【請求項4】
前記報知制御部は、前記移行可能情報の報知を中止する場合、前記自律走行制御への移行を保留している理由を示す保留理由情報を報知する請求項1又は3に記載の提示制御装置。
【請求項5】
前記報知制御部は、前記所定範囲に存在する前記中断予測区間の区間長さが所定距離よりも短い場合、前記移行可能情報の報知を行う請求項1~4のいずれか一項に記載の提示制御装置。
【請求項6】
自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、前記自動運転機能に関連する情報の提示を制御する提示制御プログラムであって、
前記自車両のドライバに周辺監視義務のある運転支援制御から、前記ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御への移行が可能になったか否かを把握し(S101)、
前記自律走行制御への移行が可能となった地点から進行方向に規定される所定範囲(Rc)に、前記自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)が存在しない場合、前記自律走行制御への移行が可能となったことを示す移行可能情報を報知し(S104)、
前記所定範囲に前記中断予測区間が存在する場合、前記移行可能情報の報知を中止する(S105)、
ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(11)に実行させる提示制御プログラム。
【請求項7】
自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、前記自動運転機能に関連する情報の提示を制御する提示制御プログラムであって、
前記自車両のドライバに周辺監視義務のある運転支援制御から、前記ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御への移行が可能になったか否かを把握し(S201)、
前記自律走行制御への移行が可能となった地点から進行方向に規定される所定範囲(Rc)に、前記自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)が存在しない場合、前記自律走行制御への移行が可能となったことを示す移行可能情報を報知し(S205)、
前記所定範囲に前記中断予測区間が存在する場合、前記自律走行制御の早期解除を警告する解除警告情報を、前記移行可能情報と共に報知する(S207)、
ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(11)に実行させる提示制御プログラム。
【請求項8】
自動運転機能による自車両(Am)の走行を可能にする自動運転制御装置であって、
複数の測位衛星から受信する測位信号に基づく自車位置情報を用いた自律走行制御により、ドライバに周辺監視義務がない状態で前記自車両を走行させる走行制御部(63)と、
前記測位信号の受信状況の悪化に伴う前記自車位置情報の信頼度の低下に起因して、前記自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)の存在を把握する区間把握部(74)と、
前記自車両の進行方向に生じる渋滞の状況を把握する渋滞把握部(75)と、を備え、
前記走行制御部は、前記中断予測区間が渋滞している場合、前記自車位置情報の信頼度が低下しても、前記自律走行制御の継続を許可する自動運転制御装置。
【請求項9】
自動運転機能による自車両(Am)の走行を可能にする自動運転制御プログラムであって、
複数の測位衛星から受信する測位信号に基づく自車位置情報を用いた自律走行制御により、ドライバに周辺監視義務がない状態で前記自車両を走行させ、
前記測位信号の受信状況の悪化に伴う前記自車位置情報の信頼度の低下に起因して、前記自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)の存在を把握し(S31)、
前記自車両の進行方向に生じる渋滞の状況を把握し(S34)、
前記中断予測区間が渋滞している場合、前記自車位置情報の信頼度が低下しても、前記自律走行制御の継続を許可する(S38)、
ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(51)に実行させる自動運転制御プログラム。
【請求項10】
自動運転機能による自車両(Am)の走行を可能にする自動運転制御装置であって、
複数の測位衛星から受信する測位信号に基づく自車位置情報を取得する位置情報取得部(62)と、
前記自車位置情報を用いた自律走行制御により、ドライバに周辺監視義務がない状態で前記自車両を走行させる走行制御部(63)と、を備え、
前記走行制御部は、
渋滞中の走行に限定して実施される渋滞限定制御と、特定エリア内に限定して実施されるエリア限定制御と、を少なくとも含む複数のうちで、前記自律走行制御の制御モードを切り替え、
前記渋滞限定制御によって前記自車両が走行する場合、前記エリア限定制御によって前記自車両が走行する場合よりも、前記測位信号の受信状況の悪化に伴う前記自車位置情報の信頼度の低下に起因した前記自律走行制御の中断を発生させ難くする自動運転制御装置。
【請求項11】
自動運転機能による自車両(Am)の走行を可能にする自動運転制御プログラムであって、
複数の測位衛星から受信する測位信号に基づく自車位置情報を用いた自律走行制御により、ドライバに周辺監視義務がない状態で前記自車両を走行させ、
当該自律走行制御の制御モードを、渋滞中の走行に限定して実施される渋滞限定制御と、特定エリア内に限定して実施されるエリア限定制御と、を少なくとも含む複数のうちで切り替え(S25~S27)、
前記渋滞限定制御によって前記自車両が走行する場合、前記エリア限定制御によって前記自車両が走行する場合よりも、前記測位信号の受信状況の悪化に伴う前記自車位置情報の信頼度の低下に起因した前記自律走行制御の中断を発生させ難くする(S43~S45)、
ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(51)に実行させる自動運転制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、自動運転機能に関連する情報提示の制御技術、及び自動運転機能による走行を可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車位置検出部によって検出された自車位置を用いて自車両の自動運転を行うことが可能な車載システムが開示されている。特許文献1の車載システムは、自車両の前方位置における道路状況を予測し、例えばトンネル等で自車位置の検出が難しくなり自動運転の継続が不可能であると判定した場合には、自動運転の解除予告を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-2305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ドライバに周辺監視義務のある自動運転だけでなく、ドライバに周辺監視義務のない自動運転を可能にする技術が実現されつつある。こうした周辺監視義務のない自動運転が可能な構成であっても、例えばトンネル等で自車位置情報の信頼度が低下する場合には、自動運転が中断される可能性が高い。そのため、自車位置情報の信頼度が低下する等の自動運転の中断予測シーンに関連して、周辺監視義務のない自動運転の利便性が損なわれる虞があった。
【0005】
本開示は、周辺監視義務のない自動運転の利便性を確保可能な提示制御装置、提示制御プログラム、自動運転制御装置、及び自動運転制御プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、開示された一つの態様は、自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、自動運転機能に関連する情報の提示を制御する提示制御装置であって、自車両のドライバに周辺監視義務のある運転支援制御から、ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御への移行が可能になったか否かを把握する制御把握部(82)と、自律走行制御への移行が可能となったことを示す移行可能情報を報知する報知制御部(88)と、を備え、報知制御部は、自律走行制御への移行が可能となった地点から進行方向に規定される所定範囲(Rc)に、自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)が存在する場合、移行可能情報の報知を中止する提示制御装置とされる。
【0007】
また開示された一つの態様は、自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、自動運転機能に関連する情報の提示を制御する提示制御装置であって、自車両のドライバに周辺監視義務のある運転支援制御から、ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御への移行が可能になったか否かを把握する制御把握部(82)と、自律走行制御への移行が可能となったことを示す移行可能情報を報知する報知制御部(88)と、を備え、報知制御部は、自律走行制御への移行が可能となった地点から進行方向に規定される所定範囲(Rc)に、自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)が存在する場合、自律走行制御の早期解除を警告する解除警告情報を、移行可能情報と共に報知する提示制御装置とされる。
【0008】
また開示された一つの態様は、自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、自動運転機能に関連する情報の提示を制御する提示制御プログラムであって、自車両のドライバに周辺監視義務のある運転支援制御から、ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御への移行が可能になったか否かを把握し(S101)、自律走行制御への移行が可能となった地点から進行方向に規定される所定範囲(Rc)に、自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)が存在しない場合、自律走行制御への移行が可能となったことを示す移行可能情報を報知し(S104)、所定範囲に中断予測区間が存在する場合、移行可能情報の報知を中止する(S105)、ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(11)に実行させる提示制御プログラムとされる。
【0009】
また開示された一つの態様は、自動運転機能によって走行可能な自車両(Am)において用いられ、自動運転機能に関連する情報の提示を制御する提示制御プログラムであって、自車両のドライバに周辺監視義務のある運転支援制御から、ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御への移行が可能になったか否かを把握し(S201)、自律走行制御への移行が可能となった地点から進行方向に規定される所定範囲(Rc)に、自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)が存在しない場合、自律走行制御への移行が可能となったことを示す移行可能情報を報知し(S205)、所定範囲に中断予測区間が存在する場合、自律走行制御の早期解除を警告する解除警告情報を、移行可能情報と共に報知する(S207)、ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(11)に実行させる提示制御プログラムとされる。
【0010】
これらの態様では、自車両の進行方向に自律走行制御の中断が予測される中断予測区間が存在する場合、移行可能情報の報知を中止するか、又は移行可能情報と共に自律走行制御の早期解除を警告する解除警告情報が報知される。このように、中断が予測される場合の自律走行制御への移行が抑制されれば、自律走行制御が短時間で終了となるシーンは、発生し難くなる。したがって、周辺監視義務のない自動運転の利便性が確保可能となる。
【0011】
また開示された一つの態様は、自動運転機能による自車両(Am)の走行を可能にする自動運転制御装置であって、複数の測位衛星から受信する測位信号に基づく自車位置情報を用いた自律走行制御により、ドライバに周辺監視義務がない状態で自車両を走行させる走行制御部(63)と、測位信号の受信状況の悪化に伴う自車位置情報の信頼度の低下に起因して、自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)の存在を把握する区間把握部(74)と、自車両の進行方向に生じる渋滞の状況を把握する渋滞把握部(75)と、を備え、走行制御部は、中断予測区間が渋滞している場合、自車位置情報の信頼度が低下しても、自律走行制御の継続を許可する自動運転制御装置とされる。
【0012】
また開示された一つの態様は、自動運転機能による自車両(Am)の走行を可能にする自動運転制御プログラムであって、複数の測位衛星から受信する測位信号に基づく自車位置情報を用いた自律走行制御により、ドライバに周辺監視義務がない状態で自車両を走行させ、測位信号の受信状況の悪化に伴う自車位置情報の信頼度の低下に起因して、自律走行制御の中断が予測される中断予測区間(Sin)の存在を把握し(S31)、自車両の進行方向に生じる渋滞の状況を把握し(S34)、中断予測区間が渋滞している場合、自車位置情報の信頼度が低下しても、自律走行制御の継続を許可する(S38)、ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(51)に実行させる自動運転制御プログラムとされる。
【0013】
これらの態様では、自車位置情報の信頼度の低下に起因した自律走行制御の中断が予測される中断予測区間の存在が把握されても、中断予測区間の渋滞が把握されている場合には、自車位置情報の信頼度が低下しても、自律走行制御の継続が許可される。このように、渋滞中の走行では、自車両の走行速度が低下しており、かつ、自車周囲の他車両の情報を利用できるため、自車位置情報に依存しなくても、自律走行制御の継続が可能となり得る。故に、自車位置情報の信頼度が低下した場合でも、渋滞中であることを条件に自律走行制御の継続を許可すれば、周辺監視義務のない自動運転の利便性が確保可能となる。
【0014】
また開示された一つの態様は、自動運転機能による自車両(Am)の走行を可能にする自動運転制御装置であって、複数の測位衛星から受信する測位信号に基づく自車位置情報を取得する位置情報取得部(62)と、自車位置情報を用いた自律走行制御により、ドライバに周辺監視義務がない状態で自車両を走行させる走行制御部(63)と、を備え、走行制御部は、渋滞中の走行に限定して実施される渋滞限定制御と、特定エリア内に限定して実施されるエリア限定制御と、を少なくとも含む複数のうちで、自律走行制御の制御モードを切り替え、渋滞限定制御によって自車両が走行する場合、エリア限定制御によって自車両が走行する場合よりも、測位信号の受信状況の悪化に伴う自車位置情報の信頼度の低下に起因した自律走行制御の中断を発生させ難くする自動運転制御装置とされる。
【0015】
また開示された一つの態様は、自動運転機能による自車両(Am)の走行を可能にする自動運転制御プログラムであって、複数の測位衛星から受信する測位信号に基づく自車位置情報を用いた自律走行制御により、ドライバに周辺監視義務がない状態で自車両を走行させ、当該自律走行制御の制御モードを、渋滞中の走行に限定して実施される渋滞限定制御と、特定エリア内に限定して実施されるエリア限定制御と、を少なくとも含む複数のうちで切り替え(S25~S27)、渋滞限定制御によって自車両が走行する場合、エリア限定制御によって自車両が走行する場合よりも、測位信号の受信状況の悪化に伴う自車位置情報の信頼度の低下に起因した自律走行制御の中断を発生させ難くする(S43~S45)、ことを含む処理を、少なくとも一つの処理部(51)に実行させる自動運転制御プログラムとされる。
【0016】
これらの態様では、渋滞限定制御によって自車両が走行する場合、エリア限定制御によって自車両が走行する場合よりも、測位信号の受信状況の悪化に伴う自車位置情報の信頼度の低下に起因した自律走行制御の中断が発生し難くなる。このように、渋滞中の走行では、自車両の走行速度が低下しており、かつ、自車周囲の他車両の情報を利用できるため、自車位置情報に依存しなくても、自律走行制御の継続が可能となり得る。故に、自車位置情報の信頼度が低下した場合でも、渋滞限定制御による走行を継続できるようにすれば、周辺監視義務のない自動運転の利便性が確保可能となる。
【0017】
尚、上記及び特許請求の範囲における括弧内の参照番号は、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の第一実施形態によるHCUを含む車載ネットワークの全体像を示す図である。
図2】自動運転ECUの詳細を示すブロック図である。
図3】HCUの詳細を示すブロック図である。
図4】前方範囲に中断予測区間が存在するシーン1での車両制御及び情報提示の一例を示すタイムチャートである。
図5図5に示すシーンにて、自動運転ECUにより実施される運転制御切替処理の詳細を示すフローチャートである。
図6図5に示すシーンにて、HCUにより実施される報知制御処理の詳細を示すフローチャートである。
図7】前方範囲に中断予測区間が存在するシーン2での車両制御及び情報提示の一例を示すタイムチャートである。
図8図7に示すシーンにて、自動運転ECUにより実施される継続判定処理の詳細を示すフローチャートである。
図9】自車位置情報の信頼度が低下するシーンにて、自律走行制御の継続可否を判定する継続判定処理の詳細を示すフローチャートである。
図10】第二実施形態における報知制御処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0020】
(第一実施形態)
図1図3に示す本開示の第一実施形態によるHCU(Human Machine Interface Control Unit)は、車両(以下、自車両Am)において用いられるインターフェース制御装置である。HCU100は、自車両AmのHMI(Human Machine Interface)システム10を、複数の入出力デバイス等と共に構成している。HMIシステム10は、自車両Amのドライバ等の乗員による操作を受け付ける入力インターフェース機能と、ドライバへ向けて情報を提示する出力インターフェース機能とを備えている。
【0021】
HCU100は、自車両Amに搭載された車載ネットワーク1の通信バス99に通信可能に接続されている。HCU100は、車載ネットワーク1に設けられた複数のノードのうちの一つである。車載ネットワーク1の通信バス99には、周辺監視センサ30、ロケータ35、ナビゲーションECU(Electronic Control Unit)38及び車載通信機39等が接続されている。さらに、通信バス99には、走行制御ECU40、運転支援ECU50a及び自動運転ECU50b等が接続されている。通信バス99に接続されたこれらのノードは、相互に通信可能である。これら装置及び各ECU等のうちの特定ノード同士は、相互に直接的に電気接続され、通信バス99を介すことなく通信可能であってもよい。
【0022】
周辺監視センサ30は、自車両Amの周辺環境を監視する自律センサである。周辺監視センサ30には、例えばカメラユニット31、ミリ波レーダ32、ライダ33及びソナー34のうちの1つ又は複数が含まれている。周辺監視センサ30は、自車周囲の検出範囲から移動物体及び静止物体を検出可能である。周辺監視センサ30は、自車周囲の物体の検出情報を運転支援ECU50a及び自動運転ECU50b等に提供する。
【0023】
ロケータ35は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機及び慣性センサ等を含む構成である。ロケータ35は、GNSS受信機で複数の測位衛星から受信する測位信号、慣性センサの計測結果、及び通信バス99に出力された車速情報等を組み合わせ、自車両Amの自車位置及び進行方向等を逐次測位する。さらに、ロケータ35は、3次元地図データ及び2次元地図データを格納した地図データベース36を有している。ロケータ35は、現在位置周辺の地図データを地図データベース36から読み出し、自車両Amの自車位置情報及び方角情報と共に、ロケータ情報として運転支援ECU50a及び自動運転ECU50b等に提供する。
【0024】
ナビゲーションECU38は、自車両Amの自車位置情報及び方角情報をロケータ35から取得し、現在位置から、ドライバ等によって設定された目的地までの経路を設定する。ナビゲーションECU38は、目的地までの設定経路を示す経路情報を、運転支援ECU50a、自動運転ECU50b及びHCU100等に提供する。ナビゲーションECU38は、HMIシステムと連携し、目的地までの経路案内として、画面表示及び音声メッセージ等を組み合わせ、交差点及び分岐ポイント等にて自車両Amの進行方向をドライバに通知する。
【0025】
ここで、スマートフォン等のユーザ端末等が、車載ネットワーク1又はHCU100に接続されていてもよい。こうしたユーザ端末が、ロケータ35に替わって、自車位置情報、方角情報及び地図データ等を運転支援ECU50a及び自動運転ECU50bに提供してもよい。またユーザ端末が、ナビゲーションECU38に替わって、目的地までの経路情報を、HCU100に提供してもよい。
【0026】
車載通信機39は、自車両Amに搭載された車外通信ユニットであり、V2X(Vehicle to Everything)通信機として機能する。車載通信機39は、道路脇に設置された路側機との間で無線通信によって情報を送受信する。一例として、車載通信機39は、自車両Amの現在位置周辺及び進行方向の渋滞情報及び道路工事情報等を路側機から受信する。渋滞情報及び道路工事情報は、VICS(登録商標)情報等である。車載通信機39は、受信した渋滞情報及び道路工事情報を自動運転ECU50b等に提供する。
【0027】
走行制御ECU40は、マイクロコントローラを主体として含む電子制御装置である。走行制御ECU40は、ブレーキ制御ECU、駆動制御ECU及び操舵制御ECUの機能を少なくとも有している。走行制御ECU40は、ドライバの運転操作に基づく操作指令、運転支援ECU50aの制御指令及び自動運転ECU50bの制御指令のいずれか一つに基づき、各輪のブレーキ力制御、車載動力源の出力制御及び操舵角制御を継続的に実施する。
【0028】
運転支援ECU50a及び自動運転ECU50bは、自車両Amの自動運転システム50を構成している。自動運転システム50の搭載により、自車両Amは、自動運転機能を備えた自動運転車両となり、自動運転機能によって走行可能となる。
【0029】
運転支援ECU50aは、自動運転システム50において、ドライバの運転操作を支援する運転支援機能を実現させる。運転支援ECU50aは、米国自動車技術会の規定する自動運転レベルにおいて、レベル2程度の高度運転支援又は部分的な自動運転を可能にする。運転支援ECU50aによって実施される自動運転は、ドライバの目視による自車周辺の監視が必要な周辺監視義務のある自動運転となる。
【0030】
自動運転ECU50bは、ドライバの運転操作を代行可能であり、米国自動車技術会の規定する自動運転レベルにおいて、システムが制御主体となるレベル3以上の自律走行を実施可能である。自動運転ECU50bによって実施される自動運転は、自車周囲の監視が不要となる、即ち、周辺監視義務のないアイズオフの自動運転となる。
【0031】
以上の自動運転システム50では、運転支援ECU50aによる周辺監視義務のある運転支援制御と、自動運転ECU50bによる周辺監視義務のない自律走行制御とを少なくとも含む複数のうちで、自動運転機能の走行制御状態が切り替えられる。以下の説明では、運転支援ECU50aによるレベル2以下の自動運転制御を「運転支援制御」と記載し、自動運転ECU50bによるレベル3以上の自動運転制御を「自律走行制御」と記載する。
【0032】
自律走行制御によって自車両Amが走行する自動運転期間では、予め規定された運転以外の特定の行為(以下、セカンドタスク)がドライバに許可され得る。セカンドタスクは、自動運転ECU50b及びHCU100が連携して行う運転操作の実施要求、即ち、運転交代の要請が発生するまで、ドライバに法規的に許可される。例えば、動画コンテンツ等のエンターテイメント系のコンテンツの視聴、スマートフォン等のデバイス操作及び食事等の行為が、セカンドタスクとして想定される。
【0033】
運転支援ECU50aは、処理部、RAM、記憶部、入出力インターフェース及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含むコンピュータである。運転支援ECU50aは、処理部でのプログラムの実行により、ACC(Adaptive Cruise Control)及びLTC(Lane Trace Control)等の運転支援機能を実現する。運転支援ECU50aは、ACC及びLTCの各機能の連携により、自車両Amを走行中の自車レーンに沿って走行させる運転支援制御を実施する。加えて運転支援ECU50aは、運転支援制御の状態を示す制御ステータス情報を、自動運転ECU50bに提供する。
【0034】
自動運転ECU50bは、運転支援ECU50aよりも高い演算能力を備えており、ACC及びLTCに相当する走行制御を少なくとも実施できる。自動運転ECU50bは、処理部51、RAM52、記憶部53、入出力インターフェース54及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含むコンピュータである。処理部51は、RAM52へのアクセスにより、本開示の自動運転制御方法を実現するための種々の処理を実行する。記憶部53には、処理部51によって実行される種々のプログラム(自動運転制御プログラム等)が格納されている。処理部51によるプログラムの実行により、自動運転ECU50bには、自動運転機能を実現するための複数の機能部として、情報連携部61、環境認識部62、行動判断部63及び制御実行部64等が構築される(図2参照)。
【0035】
情報連携部61は、HCU100の情報連携部82への情報提供と、情報連携部82からの情報取得とを実施する。これら情報連携部61,82の連携により、自動運転ECU50b及びHCU100は、それぞれが取得した情報を共有する。情報連携部61は、自動運転機能の動作状態を示す制御ステータス情報を生成し、生成した制御ステータス情報を情報連携部82に提供する。加えて情報連携部61は、情報連携部82へ向けた報知の実施要求の出力により、自動運転機能の動作状態に同期したHCU100による報知を可能にする。一方、情報連携部61は、ドライバの操作情報等を情報連携部82から取得する。情報連携部61は、操作情報に基づき、HMIシステム10等へ入力されるドライバ操作を把握する。
【0036】
環境認識部62は、ロケータ35より取得するロケータ情報と、周辺監視センサ30より取得する検出情報とを組み合わせ、自車両Amの走行環境を認識する。環境認識部62は、自車両Amが走行する道路に関する情報と、自車周囲の動的な物標(他車両等)の相対位置及び相対速度等を把握する。加えて環境認識部62は、自車両Amの状態を示す車両情報を通信バス99から取得する。一例として、環境認識部62は、自車両Amの現在の走行速度を示す車速情報を取得する。環境認識部62は、走行環境認識のためのサブ機能部として、エリア把握部74及び渋滞把握部75を有する。
【0037】
エリア把握部74は、自車両Amの走行する道路又は走行予定の道路が予め設定された自動運転可能エリア(以下、ADエリア)又は制限付きADエリアであるか否かを判別する。ADエリア及び制限付きADエリアであるか否かを示す情報は、地図データベース36に格納された地図データに記録されていてもよく、車載通信機39によって受信する受信情報に含まれていてもよい。
【0038】
ADエリア及び制限付きADエリアは、ドライバによる周辺監視義務のない自動運転が法規的に許可される運行設計領域(Operational Design Domain)に相当し得る。周辺監視義務のない自動運転には、複数の制御モードとして、渋滞中の走行に限定して実施される渋滞限定制御(以下、渋滞時レベル3)と、ADエリア内に限定して実施されるエリア限定制御(以下、エリアレベル3)と、が含まれている。ADエリア内の道路では、渋滞時レベル3及びエリアレベル3の両方の実施が許可され、制限付きADエリア内の道路では、渋滞時レベル3のみが実施を許可される。ADエリア及び制限付きADエリアのいずれにも含まれない手動運転エリア(以下、MDエリア)では、レベル3の自律走行制御での走行は、原則的に禁止される。MDエリアでは、レベル2以上の自動運転での走行が禁止されてもよい。ADエリア又は制限付きADエリアは、例えば高速道路又は自動車専用道路等に設定される。
【0039】
さらにエリア把握部74は、自律走行制御の中断が予測される中断予測区間Sin(図4参照)の存在を把握する。中断予測区間Sinは、原則的に、ADエリア及び制限付きADエリアとされる道路の中の一部の区間である。中断予測区間Sinには、自律走行制御の使用が法規的に許可されない道路区間、走行環境に起因して自律走行制御の継続が難しくなる道路区間、及びシステム要因によって自律走行制御の継続が難しくなる道路区間等が含まれる。法規的な理由に起因する中断予測区間Sinには、合流地点の前後区間、及び料金所の前後区間等が含まれる。法規的な理由に起因する中断予測区間Sinは、ADエリア又は制限付きADエリア内に設定される。走行環境に起因する中断予測区間Sinには、測位信号の受信感度の低下するトンネル区間、山間部の道路区間、及び高層ビルに囲まれた道路区間等と、道路工事が行われている道路工事区間等とが含まれる。システムに起因する中断予測区間Sinには、自律走行制御に必要な高精度の地図データが未整備の道路区間等が含まれる。尚、工事区間は、高精度地図データが未整備の道路区間として扱われてもよい。
【0040】
エリア把握部74は、ロケータ情報を参照し、測位信号に基づく自車位置情報及び方角情報と、自車両Amの進行方向の地図データとを取得する。エリア把握部74は、地図データを参照し、地図データに記録された道路の種別情報、並びに道路周囲の建物情報及び地形情報等から、自車両Amの進行方向にある中断予測区間Sinの存在を推定する。地図データに中断予測区間Sinを示す情報が予め付属している場合、エリア把握部74は、地図データの付属情報に基づき、中断予測区間Sinの存在を認識してもよい。さらに、エリア把握部74は、車載通信機39にて受信される道路工事情報に基づき、中断予測区間Sinの存在を認識してもよい。
【0041】
エリア把握部74は、ナビゲーションECU38に目的地が設定されている場合、ナビゲーションECU38から取得する経路情報を、中断予測区間Sinが存在するか否かの判定に使用する。エリア把握部74は、経路情報に基づき、進行方向に存在する複数の道路の中から、自車両Amが走行を予定している道路を特定する。一例として、進行方向に存在する分岐を一方(例えば、右側)に進むとトンネルが存在しており、分岐を他方(例えば、左側)に進むとトンネルは存在しないシーンが想定される。こうしたシーンにて、経路情報がない場合、エリア把握部74は、分岐にて自車両Amが実際に向かう方向に関わらず、分岐手前にて中断予測区間Sinが存在すると判定する。一方、分岐を左側に進む内容の経路情報がある場合、エリア把握部74は、分岐を右側に進んだ先にあるトンネルの存在を把握していても、進行方向には中断予測区間Sinが存在しないと、分岐手前にて判定する。
【0042】
渋滞把握部75は、自車周囲の他車両の検出情報と車速情報等とを組み合わせて、自車両Amの周囲、自車両Amの進行方向に生じている渋滞の状況を把握する。渋滞把握部75は、現在の自車両Amの走行速度が渋滞速度(例えば、30km/h程度)以下であり、かつ、自車レーンを走行する前方車両及び後方車両が共に存在する場合、自車周囲が渋滞状態にあると判定する。加えて渋滞把握部75は、車載通信機39にて受信する渋滞情報に基づき、自車周囲及び進行方向の渋滞の状況を把握できる。
【0043】
行動判断部63は、運転支援ECU50a及びHCU100と連携し、自動運転システム50及びドライバ間での運転交代を制御する。行動判断部63は、自動運転システム50に運転操作の制御権がある場合、自車位置情報及び検出情報等を用いた自律走行制御により、ドライバに周辺監視義務がない状態で自車両Amを走行させる。具体的に、行動判断部63は、環境認識部62による走行環境の認識結果に基づき、自車両Amを走行させる予定走行ラインを生成し、生成した予定走行ラインを制御実行部64に出力する。行動判断部63は、自動運転機能の動作状態を制御するためのサブ機能部として、制御切替部77を有する。
【0044】
制御切替部77は、運転支援ECU50aと連携して、ドライバによる周辺監視義務のある運転支援制御と、ドライバによる周辺監視義務のない自律走行制御とを切り替える。具体的に、制御切替部77は、自律走行制御への移行を許可するための移行条件(以下、レベル3開始条件)が成立したか否かを判定する。レベル3開始条件には、自車両Amのドライバに関する要件、自車両Amの走行状態に関する要件、自車周囲の走行環境に関する要件等が含まれている。制御切替部77は、レベル3開始条件の成立に基づき、自律走行制御への移行を許可する。加えて制御切替部77は、自律走行制御によって自車両Amが走行している場合、渋滞時レベル3及びエリアレベル3を含む複数のうちで、自律走行制御の制御モードを切り替える。
【0045】
制御実行部64は、自動運転ECU50bに運転操作の制御権がある場合、走行制御ECU40との連携により、行動判断部63にて生成された予定走行ラインに従って、自車両Amの加減速制御及び操舵制御等を実行する。具体的に、制御実行部64は、予定走行ラインに基づく制御指令を生成し、生成した制御指令を走行制御ECU40へ向けて逐次出力する。
【0046】
次に、HMIシステム10に含まれる複数の表示デバイス、オーディオ装置24、アンビエントライト25、操作デバイス26及びHCU100の各詳細を順に説明する。
【0047】
表示デバイスは、画像表示等により、ドライバの視覚を通じて情報を提示する。表示デバイスには、メータディスプレイ21、センターインフォメーションディスプレイ(以下、CID)22及びヘッドアップディスプレイ(以下、HUD)23等が含まれている。CID22は、タッチパネルの機能を有しており、ドライバ等による表示画面へのタッチ操作を検出する。
【0048】
オーディオ装置24は、運転席を囲む配置にて車室内に設置された複数のスピーカを有しており、報知音又は音声メッセージ等をスピーカによって車室内に再生させる。アンビエントライト25は、インスツルメントパネル及びステアリングホイール等に設けられている。アンビエントライト25は、発光色を変化させるアンビエント表示により、ドライバの周辺視野を利用した情報提示を行う。
【0049】
操作デバイス26は、ドライバ等によるユーザ操作を受け付ける入力部である。操作デバイス26には、例えば自動運転機能の作動及び停止に関連するユーザ操作等が入力される。一例として、運転支援制御の開始を指示するレベル2移行操作、及び運転支援制御から自律走行制御への移行を指示するレベル3移行操作等が操作デバイス26には入力される。ステアリングホイールのスポーク部に設けられたステアスイッチ、ステアリングコラム部に設けられた操作レバー、及びドライバの発話内容を認識する音声入力装置等が、操作デバイス26に含まれる。
【0050】
HCU100は、複数の表示デバイス、オーディオ装置24及びアンビエントライト25を用いた情報提示を統合的に制御する情報提示装置である。HCU100は、自動運転システム50との連携により、自動運転に関連する情報の提示を制御する。HCU100は、処理部11、RAM12、記憶部13、入出力インターフェース14及びこれらを接続するバス等を備えた制御回路を主体として含むコンピュータである。処理部11は、RAM12へのアクセスにより、提示制御処理のための種々の処理を実行する。RAM12は、映像データ生成のためのビデオRAMを含む構成であってよい。記憶部13は、不揮発性の記憶媒体を含む構成である。記憶部13には、処理部11によって実行される種々のプログラム(提示制御プログラム等)が格納されている。HCU100は、記憶部13に記憶されたプログラムを処理部11によって実行することにより、複数の機能部を構築する。HCU100には、情報取得部81、情報連携部82及び提示制御部88等の機能部が構築される(図3参照)。
【0051】
情報取得部81は、自車両Amの状態を示す車両情報(例えば、車速情報等)を通信バス99から取得する。加えて情報取得部81は、ユーザ操作の内容を示す操作情報をCID22及び操作デバイス26等から取得する。
【0052】
情報連携部82は、自動運転ECU50bと連携し、自動運転システム50及びHCU100間での情報の共有を可能にする。情報連携部82は、情報取得部81にて把握される操作情報を、自動運転ECU50bに提供する。加えて情報連携部82は、自動運転機能に関連する情報提示の実施要求と、自動運転機能の状態を示す制御ステータス情報とを、自動運転ECU50bから取得する。
【0053】
情報連携部82は、制御ステータス情報に基づき、自動運転システム50による自動運転の動作状態を把握する。具体的に、情報連携部82は、実施中の走行制御が運転支援制御及び自律走行制御のいずれであるか否か、即ち、ドライバに周辺監視義務のない自律走行制御が自動運転機能によって実行されているか否かを把握する。
【0054】
情報連携部82は、自動運転システム50が運転支援制御によって自車両Amを走行させている場合、制御ステータス情報に基づき、運転支援制御から自律走行制御への移行が可能になったか否かを把握する。情報連携部82は、例えば制御切替部77にてレベル3開始条件が成立した場合、自律走行制御への移行が可能になったと判断する。情報連携部82は、自律走行制御への移行が可能になったことを把握した場合、自動運転ECU50bにて進行方向の中断予測区間Sinが認識されているか否かを、さらに把握する。また情報連携部82は、自動運転システム50が自律走行制御によって自車両Amを走行させている場合、自律走行制御の制御モードをさらに把握する。
【0055】
提示制御部88は、各表示デバイス、オーディオ装置24及びアンビエントライト25(以下、情報提示デバイス)を用いたドライバへの情報の提供を統合的に実施する。提示制御部88は、情報連携部82にて取得される制御ステータス情報及び実施要求に基づき、自動運転の動作状態に合わせたコンテンツ提供及び情報提示を実施する。提示制御部88は、情報連携部82にてアイズオフでの自律走行制御の実施が把握されると、動画コンテンツ等の再生を可能にする。加えて提示制御部88は、情報連携部82にて取得される実施要求に基づき、ドライバへ向けた運転交代の要請等を実施する。
【0056】
具体的に、提示制御部88は、自律走行制御への移行が可能となったことを示す移行可能情報の報知(以下、レベル3可能報知)、及び自律走行制御が開始されることを示す移行開始情報の報知(以下、レベル3開始報知)等を実施する。提示制御部88は、レベル3開始条件の成立が情報連携部82によって把握されたことに基づき、レベル3可能報知を実施する。提示制御部88は、レベル3可能報知として、例えば「2ndタスクが利用可能になりました」等のメッセージを、メータディスプレイ21及びCID22等に表示させる。また提示制御部88は、自律走行制御への制御移行に合わせて、レベル3開始報知を実施する。提示制御部88は、レベル3開始報知として、例えば「車両からの情報にご注意ください 周辺の道路状況により自動運転が解除されます」等のメッセージを各表示デバイスに表示させる。
【0057】
ここまで説明した自動運転システム50及びHCU100は、自車両Amの進行方向に中断予測区間Sinする場合、中断予測区間Sinへの進入を想定した車両制御及び情報提示を実施する。以下、図4図8に基づき、図1図3を参照しつつ、自車両Amが中断予測区間Sinに進入する2つシーンにおける車両制御及び情報提示の詳細を、順に説明する。
【0058】
<1.運転支援制御によって走行する自車両が中断予測区間に接近するシーン>
図4に示すシーンでは、自車両Amの前方範囲Rcに中断予測区間Sin(ドット範囲参照)が存在することにより、運転支援制御から自律走行制御への制御移行が一時的に中止される。自動運転システム50は、少なくとも自車両Amが中断予測区間Sinを通過するまで、自律走行制御への移行を保留する。自動運転システム50は、中断予測区間Sinにおいて、ハンズオンでの運転支援制御による走行を継続させるか、又は運転支援制御を終了し、手動運転へと移行させる。
【0059】
こうした自律走行制御への制御移行を保留する内容を含んだ運転制御切替処理(図5参照)が制御切替部77によって実施される。制御切替部77は、自動運転システム50にて運転支援制御が開始されたことに基づき、運転制御切替処理を開始する。制御切替部77は、自律走行制御への移行が完了するまで、又は自動運転機能の停止によって手動運転に切り替えられるまで、運転制御切替処理を繰り返し実施する。
【0060】
制御切替部77は、レベル3開始条件が成立したか否かを判定する(S21)。制御切替部77は、レベル3開始条件が成立していない場合(S21:NO)、運転支援ECU50aによる運転支援制御を継続させる(S28)。一方、レベル3開始条件の一部又は全てが成立している場合(S21:YES)、制御切替部77は、中断予測区間Sinが存在するか否かを判定する(S22)。制御切替部77は、自律走行制御への移行が可能となった地点、言い替えれば、レベル3開始条件が成立した現在地点から進行方向に規定される所定範囲(以下、前方範囲Rc)にある中断予測区間Sinの存在を把握する。前方範囲Rcは、例えば自車両Amから2km程度前方の範囲とされる。
【0061】
制御切替部77は、前方範囲Rcに中断予測区間Sinの少なくとも一部が含まれている場合(S22:YES)、この中断予測区間Sinの区間長さが所定距離を超えているか否かを把握する(S23)。所定距離は、自車位置情報の信頼度が一時的に低下しても自律走行制御を継続できる距離とされ、例えば数10~数100m程度とされる。中断予測区間Sinの区間長さが所定距離を超えている場合(S23:YES)、制御切替部77は、レベル3開始条件が成立していても、自律走行制御への制御移行を保留し、運転支援制御を継続させる(S28)。
【0062】
制御切替部77は、前方範囲Rcに中断予測区間Sinが存在しない場合(S22:NO)、又は中断予測区間Sinの区間長さが所定距離以下である場合(S23:NO)、自律走行制御への移行トリガの有無を判定する(S24)。自律走行制御への移行トリガ(以下、レベル3移行トリガ)は、例えばドライバによるレベル3移行操作の入力、及びレベル3開始条件とは異なる条件の成立に基づくシステムの自動移行判定等である。レベル3移行トリガがない場合(S24:NO)、運転支援ECU50aによる運転支援制御が継続される(S28)。
【0063】
一方、レベル3移行トリガがある場合(S24:YES)、制御切替部77は、自律走行制御による自車両Amの走行を開始させる。この場合、制御切替部77は、渋滞時レベル3及びエリアレベル3を含む複数のうちで、自律走行制御の制御モードを切り替える(S25~S27)。具体的に、自車周囲の渋滞が把握されている場合(S25:YES)、制御切替部77は、渋滞時レベル3によって自車両Amを走行させる(S26)。一方、自車周囲に渋滞が把握されていない場合(S25:NO)、制御切替部77は、エリアレベル3によって自車両Amを走行させる(S27)。
【0064】
HCU100は、報知制御処理(図6参照)の実施により、中断予測区間Sinの有無に応じて、レベル3可能報知の実施及び中止を切り替える。情報連携部82は、自動運転ECU50bから取得する制御ステータス情報に基づき、運転支援制御から自律走行制御への移行が可能になったか否かを把握する(S101)。情報連携部82は、自律走行制御への移行が可能になったと判定した場合(S101:YES)、前方範囲Rcに存在する中断予測区間Sinが自動運転ECU50bによって認識されているか否かを把握する(S102)。さらに、情報連携部82は、中断予測区間Sinが自動運転ECU50bによって認識されている場合(S102:YES)、認識されている中断予測区間Sinの区間長さが所定距離を超えているか否かを判断する(S103)。
【0065】
提示制御部88は、前方範囲Rcに中断予測区間Sinが存在しない場合(S102:NO)、又は前方範囲Rcに存在する中断予測区間Sinが所定距離以下である場合(S103:NO)、レベル3可能報知を実施する(S104)。
【0066】
一方、前方範囲Rcに所定距離を超える中断予測区間Sinが存在する場合(S103:YES)、提示制御部88は、自律走行制御への制御移行の保留に合わせて、レベル3可能報知を中止する(S105)。提示制御部88は、レベル3可能報知を中止する場合、自律走行制御への移行を保留している理由を示す保留理由情報の報知(以下、保留理由報知)を実施する。提示制御部88は、保留理由報知として、例えば「前方にトンネルが存在します 自動運転は利用できません」等のメッセージをメータディスプレイ21等に表示させる。
【0067】
提示制御部88は、自車両Amの中断予測区間Sinへの進入に合わせて、中断区間進入報知(図4参照)を実施する。提示制御部88は、中断区間進入報知として、例えば「トンネル内では自動運転は利用できません」等のメッセージをメータディスプレイ21等に表示させる。提示制御部88は、自車両Amの中断予測区間Sinからの退出に合わせて、中断区間終了報知(図4参照)を実施する。提示制御部88は、中断区間進入報知として、例えば「自動運転の利用が可能になりました」等のメッセージをメータディスプレイ21等に表示させる。
【0068】
<2.自律走行制御によって走行する自車両が中断予測区間に接近するシーン>
図7に示すシーンでは、自車両Amの前方範囲Rcに中断予測区間Sin(ドット範囲参照)が存在することにより、渋滞時レベル3の自律走行制御の解除が準備される。自動運転ECU50bは、継続判定処理(図8参照)の実施により、渋滞時レベル3を継続させるか否かを判断する。
【0069】
継続判定処理では、エリア把握部74が、前方範囲Rcにおける中断予測区間Sinの有無を判定する(S31)。前方範囲Rcに中断予測区間Sinが存在している場合(S31:YES)、エリア把握部74は、中断予測区間Sinの区間長さが所定距離を超えているか否かをさらに判定する(S32)。前方範囲Rcに所定距離を超える中断予測区間Sinが存在しない場合(S31:NO,又はS32:NO)、制御切替部77は、渋滞時レベル3を継続させる。
【0070】
エリア把握部74は、前方範囲Rcに所定距離を超える中断予測区間Sinが存在する場合(S32:YES)、この中断予測区間Sinの種別を判定する(S33)。具体的に、エリア把握部74は、前方範囲Rcの中断予測区間Sinが、測位信号の受信状況の悪化に伴う自車位置情報の信頼度の低下に起因して、自律走行制御の中断が予測される中断予測区間Sin(以下、GNSS途絶区間)であるか否かを判定する。前方範囲Rcに存在する中断予測区間SinがGNSS途絶区間でない場合(S33:NO)、制御切替部77は、渋滞時レベル3の終了を決定する(S37)。
【0071】
対して、前方範囲Rcの中断予測区間SinがGNSS途絶区間である場合(S33:YES)、渋滞把握部75が、自車両Amの進行方向に生じている渋滞の状況の把握を開始する(S34)。これにより、自車両Amが中断予測区間Sinに進入すると(S35:YES)、中断予測区間Sinに生じている渋滞の状況が、制御切替部77によって判断される。
【0072】
制御切替部77は、中断予測区間Sinに生じている渋滞区間が長いか否かを判定する(S36)。中断予測区間Sinが所定の割合以上渋滞している場合、言い替えれば、中断予測区間Sinに占める渋滞区間の割合が所定の閾値(例えば、80%)以上である場合、制御切替部77は、渋滞区間が長いと判定する(S36:YES)。この場合、制御切替部77は、渋滞時レベル3の継続を許可する(S38)。例えば、中断予測区間Sinとなるトンネルが入口から出口まで渋滞している場合、制御切替部77は、自車両Amがトンネル内に進入しても、渋滞時レベル3を継続させる。
【0073】
制御切替部77は、中断予測区間Sinに占める渋滞区間の割合が所定の閾値未満であり、渋滞区間が長くないと判定した場合(S36:NO)、渋滞時レベル3の終了を決定する(S37)。この場合、制御切替部77は、ハンズオンの運転支援制御又は手動運転に自車両Amの制御状態を移行させる。
【0074】
HCU100は、所定距離を超える中断予測区間Sinを自動運転ECU50bが前方範囲Rcに認識すると、渋滞時レベル3の解除を前提とした報知を開始する(図7参照)。詳記すると、情報連携部82は、制御ステータス情報に基づき、所定距離を超える中断予測区間Sinが自動運転ECU50bにて認識されたことを把握する。これにより、提示制御部88は、渋滞時レベル3の解除を予告する報知(以下、解除予告報知)を実施する。提示制御部88は、解除予告報知として、例えば「自動運転がもうすぐ終了になります」等のメッセージを、メータディスプレイ21及びHUD23等に表示させる。提示制御部88は、解除予告報知に合わせて、セカンドタスクに関連して提供していた動画コンテンツ等の再生を制限する。
【0075】
中断予測区間SinがGNSS途絶区間でない場合、自動運転ECU50bは、渋滞時レベル3を終了させる。故にこの場合、提示制御部88は、解除予告報知に続いて、ドライバへの運転交代要請を実施する。これにより、運転操作の制御権が自動運転システム50からドライバに引き渡される。
【0076】
一方、中断予測区間SinがGNSS途絶区間である場合、自動運転ECU50bは、自車両AmがGNSS途絶区間に進入するまで渋滞時レベル3による走行を継続させる。中断予測区間Sin(GNSS途絶区間)に生じている渋滞が短い場合、提示制御部88は、自車両AmがGNSS途絶区間に進入した後、ドライバへの運転交代要請を実施する。対して、中断予測区間Sin(GNSS途絶区間)に生じている渋滞が長い場合、提示制御部88は、自車両AmがGNSS途絶区間に進入した後、渋滞時レベル3が継続可能であることを示す報知(以下、レベル3継続報知)を実施する。提示制御部88は、レベル3継続報知として、例えば「自動運転による走行が継続されます」等のメッセージを、メータディスプレイ21及びHUD23等に表示させる。この場合、提示制御部88は、レベル3継続報知の実施後に、動画コンテンツ等の再生の制限を解除する。
【0077】
<自律走行制御によって走行中に測位信号の受信感度が低下するシーン>
次に、自律走行制御によって自車両Amが走行する自動運転期間に、測位信号の受信状況の悪化に伴い、ロケータ35にて同定される自車位置情報の信頼度が低下するシーンの詳細を説明する。自車位置情報の信頼度の低下は、例えば、トンネル内、高架下、山間部の道路区間、高層ビルに囲まれた道路区間等で生じることが想定される。さらに、測位信号を送信する人工衛星の配置に起因して、自車位置情報の信頼度の低下が生じることも想定されてよい。
【0078】
自動運転ECU50bは、上述したように、測位信号に基づく自車位置情報を自律走行制御に用いている。故に、行動判断部63は、自動運転期間に測位信号の受信状況が悪化し、自車位置情報の信頼度が低下した場合、自律走行制御を中止する。行動判断部63は、継続判定処理(図9参照)の実施により、測位信号の受信状況に応じて自律走行制御の継続可否を判定する。継続判定処理は、自律走行制御が開始されたことに基づき、行動判断部63によって開始され、自律走行制御が終了されるまで継続される。
【0079】
行動判断部63は、環境認識部62を通じて、ロケータ35における測位信号の受信状況を把握する(S41)。行動判断部63は、測位信号の受信状況に基づき、ロケータ35によって提供される自車位置情報の信頼度が低下しているか否かを判定する(S42)。測位信号の受信状況が良好であり、自車位置情報の信頼度が確保されている場合(S42:NO)、行動判断部63は、受信状況の監視を継続する。
【0080】
一方、測位信号の受信状況が悪化し、自車位置情報の信頼度が予め規定された基準値よりも低下した場合(S42:YES)、行動判断部63は、自車位置が不検知の状態と判断する。自車位置情報の信頼度低下を判断する基準値は、実質的にゼロであってもよい。即ち、全ての測位信号が途絶した場合に、自車位置情報の信頼度が確保されなくなったと判定されてもよい。
【0081】
行動判断部63は、自車位置情報の信頼度低下に基づき、自動運転ECU50bにて実行中の自律走行制御の制御モードを判別する(S43)。行動判断部63は、自動運転ECU50bにて自律走行制御の制御モードに応じて、自律走行制御の継続可否の判断基準を変更する。詳記すると、行動判断部63は、渋滞時レベル3によって自車両Amが走行する場合、エリアレベル3によって自車両Amが走行する場合よりも、自車位置情報の信頼度の低下に起因した自律走行制御の中断を発生させ難くする。具体的に、行動判断部63は、自車位置情報の信頼度が基準値を下回ってから、自律走行制御の中止を決定するまでの猶予時間を、自律走行制御の制御モードに応じて変更する。行動判断部63は、渋滞時レベル3の自律走行制御が実行されている場合の猶予時間(S43:YES,S44)を、渋滞時レベル3の自律走行制御が実行されている場合の猶予時間(S43:YES,S45)よりも長く設定する。
【0082】
行動判断部63は、実行中の制御モードに対応した猶予時間の設定後、信頼度が低下した後の経過時間の計測を開始する(S46)。行動判断部63は、経過時間が猶予時間を超えたか否かを判定する(S47)。経過時間が猶予時間を超えない場合(S47:NO)、行動判断部63は、測位信号の受信状況を再び把握し(S48)、自車位置情報の信頼度が基準値を超える程度に回復しているか否かを判定する(S49)。自車位置情報の信頼度が回復した場合(S49:YES)、行動判断部63は、実行中の自律走行制御の継続を決定し、測位信号の受信状況の監視を継続する。一方、自車位置情報の信頼度が回復しないまま(S49:NO)、経過時間が猶予時間を超えた場合(S47:YES)、行動判断部63は、実行中の自律走行制御の終了を決定する(S50)。この場合、行動判断部63は、自律走行制御から、ハンズオンの運転支援制御又は手動運転に、自動運転システム50の制御状態を移行させる。
【0083】
ここまで説明した第一実施形態では、自車両Amの進行方向に自律走行制御の中断が予測される中断予測区間Sinが存在する場合、自律走行制御への移行が可能となったことを示すレベル3可能報知が中心される。このように、中断が予測される場合の自律走行制御への移行が抑制されれば、自律走行制御が短時間で終了となるシーンは、発生し難くなる。したがって、周辺監視義務のない自動運転の利便性が確保可能となる。
【0084】
加えて第一実施形態では、レベル3可能報知を中止する場合、保留理由報知が実施される。これにより、自律走行制御への移行を保留している理由を示す保留理由情報がドライバに提供される。故に、自律走行制御への移行が許可されないことへのドライバの納得性を確保することが可能になる。
【0085】
ここで、前方範囲Rcに存在する中断予測区間Sinの区間長さが所定距離よりも短い場合、自車位置情報の信頼度の低下は、周辺監視センサ30の検出情報等によって補完可能である。故に、中断予測区間Sinが短い場合、中断予測区間Sinが存在しない場合と同様に、自律走行制御は、継続されてよい。こうした自律走行制御の継続によれば、自動運転の利便性は、いっそう向上し得る。
【0086】
また第一実施形態では、上記のような自動運転制御に合わせて、中断予測区間Sinの区間長さが短い場合には、レベル3可能報知が行われる。故に、ドライバは、自律走行制御が継続されることを認識でき、自律走行制御の使用を安心して継続できる。これにより、自動運転の利便性は、いっそう確保され易くなる。
【0087】
さらに第一実施形態では、自車位置情報の信頼度の低下に起因した自律走行制御の中断が予測される中断予測区間Sin(GNSS途絶区間)の存在が把握されると、この中断予測区間Sinにおける渋滞の状況が把握される。そして、中断予測区間Sinの渋滞が把握されている場合には、自車位置情報の信頼度が低下しても、自律走行制御の継続が許可される。このように、渋滞中の走行では、自車両Amの走行速度が低下し、かつ、自車周囲の他車両の情報を利用できるため、自車位置情報に依存しなくても、自律走行制御の継続が可能となり得る。故に、自車位置情報の信頼度が低下した場合でも、渋滞中であることを条件に自律走行制御の継続を許可すれば、周辺監視義務のない自動運転の利便性が確保可能となる。
【0088】
加えて第一実施形態では、渋滞時レベル3によって自車両Amが走行する場合、エリアレベル3によって自車両Amが走行する場合よりも、測位信号の受信状況の悪化に伴う自車位置情報の信頼度の低下に起因した自律走行制御の中断が発生し難くなる。上述したように、渋滞中の走行では、自車位置情報に依存しなくても、自律走行制御の継続が可能となり得る。故に、自車位置情報の信頼度が低下した場合でも、渋滞時レベル3による走行を継続できるようにすれば、周辺監視義務のない自動運転の利便性が確保可能となる。
【0089】
尚、上記実施形態では、環境認識部62が「位置情報取得部」に相当し、行動判断部63が「走行制御部」に相当し、エリア把握部74が「区間把握部」に相当し、情報連携部82が「制御把握部」に相当し、提示制御部88が「報知制御部」に相当する。さらに、前方範囲Rcが「所定範囲」に相当し、ADエリアが「特定エリア」に相当し、自動運転ECU50bが「自動運転制御装置」に相当し、HCU100が「提示制御装置」に相当する。
【0090】
(第二実施形態)
本開示の第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態では、HCU100にて実施される報知制御処理(図10参照)の内容が、第一実施形態の報知制御処理(図5参照)とは異なっている。以下、第二実施形態の報知制御処理の詳細を、図10に基づき、図1図4を参照しつつ説明する。
【0091】
HCU100は、情報連携部82にて、運転支援制御から自律走行制御への制御移行が可能になったか否かを把握する(S201)。情報連携部82は、自律走行制御への制御移行が可能になったことを把握すると(S201:YES)、中断予測区間Sinが前方範囲Rcに存在するか否かをさらに把握する(S202)。情報連携部82は、前方範囲Rcに中断予測区間Sinが存在している場合(S202:YES)、中断予測区間Sinの区間長さが所定距離を超えているか否かを判断する(S203)。前方範囲Rcに中断予測区間Sinが存在しない場合(S202:NO)、又は中断予測区間Sinの区間長さが所定距離以下である場合(S203:NO)、提示制御部88は、レベル3可能報知を実施する(S205)。
【0092】
一方、所定距離を超える区間長さの中断予測区間Sinの存在を把握していた場合(S203:YES)、情報連携部82は、こうした中断予測区間Sinが複数存在するか否かを判定する(S204)。この場合、複数の中断予測区間Sinの有無を判断する進行方向の範囲は、直近の中断予測区間Sinの有無を判断する前方範囲Rcよりも進行方向に拡大されよい。自車両Amの進行方向に所定距離を超える中断予測区間Sinが複数存在する場合(S204:YES)、提示制御部88は、レベル3可能報知を中止する(S206)。この場合、提示制御部88は、第一実施形態と同様に保留理由報知を実施する。尚、最初の中断予測区間Sinを通過した後であれば、保留理由報知は、省略されてよい。
【0093】
対して、所定距離を超える中断予測区間Sinが一つしか把握されず、中断予測区間Sinの連続通過が想定されない場合(S204:NO)、提示制御部88は、レベル3可能報知を実施する(S207)。この場合、提示制御部88は、自律走行制御の早期解除を警告する解除警告情報の報知(解除警告報知)を、レベル3可能報知と共に実施する。提示制御部88は、解除警告情報を、移行可能情報と同じ表示デバイスに少なくとも表示させる。具体的に、提示制御部88は、移行可能情報である「2ndタスクが利用可能になりました」等のメッセージを、メータディスプレイ21及びHUD23等に表示させる。さらに、提示制御部88は、移行可能情報のメッセージと並べて、解除警告情報である「前方にトンネルが存在します 自動運転はすぐに利用できなくなります」等のメッセージを、メータディスプレイ21及びHUD23等に表示させる。
【0094】
ここまで説明した第二実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、周辺監視義務のない自動運転の利便性が確保可能となる。即ち、第二実施形態では、自車両Amの進行方向に自律走行制御の中断が予測される中断予測区間Sinが存在する場合、解除警告報知及びレベル3可能報知により、自律走行制御の早期解除を警告する解除警告情報が移行可能情報と共に報知される。これにより、中断が予測される場合には、自律走行制御への移行が抑制され得るため、自律走行制御が短時間で終了となるシーンは、発生し難くなる。したがって、周辺監視義務のない自動運転の利便性が確保可能となる。
【0095】
加えて第二実施形態では、自車両Amの進行方向に複数の中断予測区間Sinが存在する場合、レベル3可能報知は中止される。故に、複数の中断予測区間Sinを連続通過するシーンにおいて、中断予測区間Sinを通過するたびに、レベル3可能報知及び解除警告報知が実施され、ドライバに煩わしさを感じさせてしまう事態は、回避される。その結果、周辺監視義務のない自動運転の利便性は、いっそう確保され得る。
【0096】
(他の実施形態)
以上、本開示の複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0097】
上記第二実施形態の変形例1では、自車両Amの進行方向の範囲に、所定距離を超える長さの中断予測区間Sinが複数存在していても、レベル3可能報知及び解除警告報知が実施される。
【0098】
上記実施形態の変形例2では、中断予測区間Sinの存在によってレベル3可能報知が中止されても、保留理由報知は、実施されない。このように、保留理由情報は、ドライバに提供されなくてもよい。また、保留理由報知を実施するか否かは、ドライバによって設定可能であってよい。
【0099】
上記実施形態の変形例3では、中断予測区間Sin(GNSS途絶区間)の区間長さの判定が省略されている。変形例3では、中断予測区間Sinが前方範囲Rcに存在していれば、この中断予測区間Sinが短くても、レベル3可能報知が中止されるか、又は解除警告報知が実施される。
【0100】
上記実施形態では、自律走行制御への移行の可否を判定する場合の所定距離(図5 S23参照)と、自律走行制御の継続可否を判定する場合の所定距離(図8 S32参照)とが実質的に同一であった。しかし、上記実施形態の変形例4,5では、各所定距離が互いに異なっている。変形例4では、自律走行制御への移行の可否を判定する場合の所定距離は、自律走行制御の継続可否を判定する場合の所定距離よりも短く設定されている。また、変形例5では、自律走行制御への移行の可否を判定する場合の所定距離は、自律走行制御の継続可否を判定する場合の所定距離よりも長く設定されている。
【0101】
上記実施形態では、自律走行制御への移行の可否を判定する場合に前方範囲Rcとする自車進行方向の距離と、自律走行制御の継続可否を判定する場合に前方範囲Rcとする自車進行方向の距離とが実質的に同一であった。しかし、上記実施形態の変形例6,7では、前方範囲Rcとする各距離が互いに異なっている。変形例6では、自律走行制御への移行の可否を判定する場合の前方範囲Rcが、自律走行制御の継続可否を判定する場合の前方範囲Rcよりも広く(遠くに)設定されている。また、変形例7では、自律走行制御への移行の可否を判定する場合の前方範囲Rcが、自律走行制御の継続可否を判定する場合の前方範囲Rcよりも狭く(近くに)設定されている。
【0102】
上記実施形態の変形例8では、周辺監視センサ30の検出情報による補完によって自律走行制御を継続可能なシーンでも、自車位置情報の信頼度が低下した場合には、自律走行制御は、終了される。
【0103】
上記実施形態の変形例9では、自車位置情報の信頼度低下に基づいて自律走行制御の終了を決定する際の猶予時間は、自律走行制御の制御モードに関わらず、実質的に一定にとされる。
【0104】
上記実施形態の変形例10では、猶予時間に差を設ける処理とは異なった処理により、渋滞時レベル3を実行する場合に、エリアレベル3を実行する場合よりも、自車位置情報の信頼度の低下に起因した自律走行制御の中断が発生し難くされている。具体的に、変形例10では、信頼度が低下したと判定する基準値が、渋滞時レベル3を実行する場合には、エリアレベル3を実行する場合よりも、低く設定される。即ち、渋滞時レベル3の実行中は、エリアレベル3の実行中よりも、自車位置情報の信頼度が低下したと判定され難くなる。
【0105】
上記実施形態の変形例11では、運転支援ECU50a及び自動運転ECU50bの各機能は、一つの自動運転ECUによって提供されている。即ち、変形例11の自動運転ECU50bには、運転支援ECU50aの機能が実装されている。こうした変形例11では、統合された自動運転ECUが「自動運転制御装置」に相当する。さらに、統合された自動運転ECUに、HCU100の機能がさらに実装されていてもよい。こうした形態では、自動運転ECUが「提示制御装置」に相当する。
【0106】
上記実施形態にて、運転支援ECU、自動運転ECU及びHCUによって提供されていた各機能は、ソフトウェア及びそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの複合的な組合せによっても提供可能である。さらに、こうした機能がハードウェアとしての電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。
【0107】
上記実施形態の各処理部は、RAMと結合された演算処理のためのハードウェアである。処理部は、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等の演算コアを少なくとも一つ含む構成である。処理部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural network Processing Unit)及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってよい。こうした処理部は、プリント基板に個別に実装された構成であってもよく、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA等に実装された構成であってもよい。
【0108】
また、各種プログラム等を記憶する記憶媒体(持続的有形コンピュータ読み取り媒体,non-transitory tangible storage medium)の形態も、適宜変更されてよい。こうした記憶媒体は、回路基板上に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されて、自動運転ECU又はHCU等の制御回路に電気的に接続される構成であってよい。さらに、記憶媒体は、自動運転ECU又はHCUへのプログラムのコピー基となる光学ディスク及びのハードディスクドライブ等であってもよい。
【0109】
上記の自動運転システム及びHMIシステムを搭載する車両は、一般的な自家用の乗用車に限定されず、レンタカー用の車両、有人タクシー用の車両、ライドシェア用の車両、貨物車両及びバス等であってもよい。また、自動運転システム及びHMIシステムを搭載する車両は、右ハンドル車両であってもよく、又は左ハンドル車両であってもよい。さらに、車両が走行する交通環境は、左側通行を前提とした交通環境であってもよく、右側通行を前提とした交通環境であってもよい。本開示による情報提示制御及び自動運転制御は、それぞれの国及び地域の道路交通法、さらに車両のハンドル位置等に応じて適宜最適化されてよい。
【0110】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0111】
Am 自車両、11,51 処理部、50b 自動運転ECU(自動運転制御装置)、62 環境認識部(位置情報取得部)、63 行動判断部(走行制御部)、74 エリア把握部(区間把握部)、75 渋滞把握部、82 情報連携部(制御把握部)、88 提示制御部(報知制御部)、100 HCU(提示制御装置)、Rc 前方範囲(所定範囲)、Sin 中断予測区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10