(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/08 20200101AFI20240730BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240730BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20240730BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20240730BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240730BHJP
【FI】
B60W50/08
G08G1/16 C
B60W30/12
B60W40/02
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2021119475
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久米 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】和泉 一輝
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159428(JP,A)
【文献】特開2021-91282(JP,A)
【文献】国際公開第2020/230312(WO,A1)
【文献】特開2020-163986(JP,A)
【文献】国際公開第2021/140917(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転可能な車両における車線変更のための運転制御であって少なくとも自動操舵制御を含む車線変更制御を実行可能に構成された、制御装置(18)であって、
プロセッサ(181)と、
前記プロセッサにより使用されるデータおよびプログラム命令を記憶する非遷移的実体的記憶媒体であるメモリ(182)と、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶された前記プログラム命令を実行することで、
運転自動化レベルが変化する移行領域まで所定距離以内もしくは所定時間以内である第一の場合、または、車線変更先領域に合流地点もしくはカーブ地点が存在する第二の場合、周辺監視義務のない自動運転中にドライバが車線変更の実行開始指示を行っても前記車線変更制御を制限するように構成される、
制御装置。
【請求項2】
前記車線変更制御を制限することは、前記車線変更制御を不許可とすることである、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記車線変更制御を制限することは、一旦実行開始した前記車線変更制御をキャンセルすることである、
請求項
1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記車線変更制御を制限することは、前記車線変更制御の待機状態に移行することである、
請求項
1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、さらに、
前記車線変更制御を制限することを前記ドライバに報知するように構成される、
請求項1~4のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、さらに、
前記車両についてあらかじめ設定された走行経路により車線変更が要求される場合、
前記第一の場合もしくは前記第二の場合であっても、前記車線変更制御を許可する
または、
前記第一の場合もしくは前記第二の場合に、周辺監視義務のない自動運転から、前記車線変更制御を実行可能な、周辺監視義務のある運転自動化レベルに移行することを、前記ドライバに提案する
ように構成される、
請求項1~5のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項7】
自動運転可能な車両における追越のための運転制御であって少なくとも自動操舵制御を含む追越制御を実行可能に構成された、制御装置(18)であって、
1つ以上のプロセッサ(181)と、
前記プロセッサにより使用されるデータおよびプログラム命令を記憶する非遷移的実体的記憶媒体である1つ以上のメモリ(182)と、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶された前記プログラム命令を実行することで、
前記追越制御開始前の前記車両の走行中車線である自車線から追越のために隣接車線に車線変更した後に前記自車線に復帰するための再車線変更を行う予定の地点である再車線変更地点が、運転自動化レベルが変化する移行領域まで所定距離以内もしくは所定時間以内である場合、
または、
前記再車線変更地点における車線変更先領域に合流地点もしくはカーブ地点が存在する場合、
前記追越制御を制限するように構成される
とともに、
追越のための1回目の車線変更の際の車線変更先である隣接車線が、周辺監視義務のない自動運転が可能な車線であることを条件として、周辺監視義務のない自動運転中にドライバに追越提案を行うように構成される、
制御装置。
【請求項8】
自動運転可能であって且つ追越のための運転制御であって少なくとも自動操舵制御を含む追越制御を実行可能に構成された車両の制御装置(27)であって、
1つ以上のプロセッサ(271)と、
前記プロセッサにより使用されるデータおよびプログラム命令を記憶する非遷移的実体的記憶媒体である1つ以上のメモリ(272)と、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶された前記プログラム命令を実行することで、
周辺監視義務のない自動運転中にて、ドライバが前記追越制御の実行開始指示を行った場合に、前記追越制御中の車線変更の際に前記ドライバに周辺監視を促す報知を実行するように構成される、
制御装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、さらに、
追越のための1回目の車線変更の際の車線変更先である隣接車線が、周辺監視義務のない自動運転が可能な車線であることを条件として、周辺監視義務のない自動運転中にドライバに追越提案を行うように構成される、
請求項
8に記載の運転制御装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、さらに、
前記追越制御中の1回目の車線変更の際にドライバに周辺監視を促す報知の方が、2回目の車線変更の際にドライバに周辺監視を促す報知よりも強く報知するように構成される、
請求項7~9のいずれか1つに記載の運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載システムにより自動的に車線変更制御を行う技術が、従来種々提案されている。例えば、特許文献1に記載の自動運転装置は、自車両が走行している車線が混雑していることを検出したときに、自車両を別の車線に車線変更するように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、自車両が、ドライバに周辺監視義務が課されていない自動運転中に、車線変更が必要あるいは推奨される場面やドライバが車線変更したくなるような場面に遭遇することがあり得る。ここで、車載システムによる自動的な車線変更制御が実行される際の交通環境は様々である。具体的には、例えば、車線変更の際の自車両の挙動や、実際に車線変更に要する時間は、自車両の車速、自車両が現在走行中の道路における交通状況、等に応じて変化し得る。
【0005】
本発明は、上記に例示した事情等に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、例えば、車載システムによる自動的な車線変更制御が可能な車両の利便性を向上する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の制御装置(18)は、自動運転可能な車両における車線変更のための運転制御であって少なくとも自動操舵制御を含む車線変更制御を実行可能に構成されている。
この制御装置は、
プロセッサ(181)と、
前記プロセッサにより使用されるデータおよびプログラム命令を記憶する非遷移的実体的記憶媒体であるメモリ(182)と、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶された前記プログラム命令を実行することで、
運転自動化レベルが変化する移行領域まで所定距離以内もしくは所定時間以内である第一の場合、または、車線変更先領域に合流地点もしくはカーブ地点が存在する第二の場合、周辺監視義務のない自動運転中にドライバが車線変更の実行開始指示を行っても前記車線変更制御を制限するように構成される。
請求項7に記載の制御装置(18)は、自動運転可能な車両における追越のための運転制御であって少なくとも自動操舵制御を含む追越制御を実行可能に構成されている。
この制御装置は、
1つ以上のプロセッサ(181)と、
前記プロセッサにより使用されるデータおよびプログラム命令を記憶する非遷移的実体的記憶媒体である1つ以上のメモリ(182)と、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶された前記プログラム命令を実行することで、
前記追越制御開始前の前記車両の走行中車線である自車線から追越のために隣接車線に車線変更した後に前記自車線に復帰するための再車線変更を行う予定の地点である再車線変更地点が、運転自動化レベルが変化する移行領域まで所定距離以内もしくは所定時間以内である場合、
または、
前記再車線変更地点における車線変更先領域に合流地点もしくはカーブ地点が存在する場合、
前記追越制御を制限するように構成されるとともに、
追越のための1回目の車線変更の際の車線変更先である隣接車線が、周辺監視義務のない自動運転が可能な車線であることを条件として、周辺監視義務のない自動運転中にドライバに追越提案を行うように構成される。
請求項8に記載の制御装置(27)は、自動運転可能であって且つ追越のための運転制御であって少なくとも自動操舵制御を含む追越制御を実行可能に構成された車両の制御装置であって、
1つ以上のプロセッサ(271)と、
前記プロセッサにより使用されるデータおよびプログラム命令を記憶する非遷移的実体的記憶媒体である1つ以上のメモリ(272)と、
を備え、
前記プロセッサは、前記メモリに記憶された前記プログラム命令を実行することで、
周辺監視義務のない自動運転中にて、ドライバが前記追越制御の実行開始指示を行った場合に、前記追越制御中の車線変更の際に前記ドライバに周辺監視を促す報知を実行するように構成される。
【0007】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、単に、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の一例を示すものであるにすぎない。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る制御装置を含む車載システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示された運転制御装置における概略的な機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示されたHMI制御装置における概略的な機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1に示された車載システムにおける一動作例の概略を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示された車載システムにおける一動作例の概略を示すフローチャートである。
【
図6】
図1に示された車載システムにおける他の動作例の概略を示すフローチャートである。
【
図7】
図1に示された車載システムにおけるさらに他の動作例の概略を示すフローチャートである。
【
図8】
図1に示された車載システムにおけるさらに他の動作例の概略を示すフローチャートである。
【
図9】
図1に示された車載システムにおけるさらに他の動作例の概略を示すフローチャートである。
【
図10】
図1に示された車載システムにおけるさらに他の動作例の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
以下、実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、一つの実施形態に対して適用可能な各種の変形例の説明は、当該実施形態に関する一連の説明の途中にて逐次挿入されると、当該実施形態の理解が妨げられるおそれがある。このため、変形例については、当該実施形態に関する一連の説明の途中ではなく、その後にまとめて説明する。
【0010】
(車載システム構成)
図1を参照すると、車載システム10は、車両としての自動車に搭載されることで、当該車両における運転自動化システムとしての機能を奏するように構成されている。車載システム10を搭載した車両を、以下「自車両」と称することがある。具体的には、本実施形態においては、車載システム10は、少なくとも自動操舵運転を実現可能に構成されている。
【0011】
「自動操舵運転」とは、SAE Internationalが公開している規格「SAE J3016」に規定された動的運転タスクのうち、少なくとも、操舵すなわち横方向の車両運動制御サブタスクを、運転自動化システムが担当すなわち実行することをいう。SAEはSociety of Automotive Engineersの略である。「動的運転タスク」とは、道路交通において車両を操作する際にリアルタイムで行う必要がある全ての操作上および戦術上の機能であって、戦略上の機能を除いたものである。「戦略上の機能」は、行程計画、経由地選択、等であって、具体的には、「行くか行かないか、いつどこへどのように行くか」を決定あるいは選択することを含む。
【0012】
すなわち、「自動操舵運転」は、典型的には、「SAE J3016」におけるレベル1またはレベル2に相当する運転自動化レベルである。但し、「自動操舵運転」は、いわゆる「自動運転」をも含む概念である。「自動運転」とは、「SAE J3016」におけるレベル3~5に該当する、運転自動化システムが全ての動的運転タスクを担当すなわち実行する運転自動化レベルをいうものとする。「SAE J3016」におけるレベルXを、以下単に「SAEレベルX」と称する。Xは0~5のうちのいずれかである。
【0013】
以下、SAEレベルXにおけるXの数値が大きいほど、あるいは、運転自動化システムが担当すなわち実行する動的運転タスクが増えるほど、運転自動化レベルが「高い」と表現する。また、運転自動化レベルが高い方に変化することを、運転自動化レベルの「上昇」と称する。これに対し、上記Xの数値が小さいほど、あるいは、運転自動化システムが担当すなわち実行する動的運転タスクが減るほど、運転自動化レベルが「低い」と表現する。また、運転自動化レベルが低い方に変化することを、運転自動化レベルの「低下」と称する。
【0014】
SAEレベル0~5の内容は、具体的には、下記の通りである。なお、以下の各レベルの内容説明において、「ドライバ」は、動的運転タスクを担当あるいは実行する乗員、典型的には、自車両における運転席に搭乗する乗員であり、「運転席乗員」とも称され得る。「OEDR」は、Object and Event Detection and Responseの略であり、「対象物および事象の検知および応答」とも称される。OEDRには、運転環境の監視が含まれる。運転環境の監視には、対象物および事象の、検知、認識、および分類が含まれる。また、運転環境の監視には、対象物および事象に対して、必要に応じて応答する準備が含まれる。「限定領域」は、或る運転自動化システムまたはその機能が作動するように設計されている特定の条件であり、運行設計領域あるいはODDとも称される。ODDはOperational Design Domainの略である。限定領域は、例えば、地理的、環境的、速度的、および時間的等の、複数の制約条件のうちの、少なくとも1つを含む。
【0015】
・レベル0:手動運転…ドライバが全ての動的運転タスクを実行する。
・レベル1:運転支援…運転自動化システムが、動的運転タスクのうちの、縦方向の車両運動制御サブタスクと、横方向の車両運動制御サブタスクとのうちの、いずれか一方を、特定の限定領域において持続的に実行する。縦方向の車両運動制御サブタスクは、発進、加減速、および停止である。横方向の車両運動制御サブタスクは、操舵である。但し、運転自動化システムは、縦方向の車両運動制御サブタスクと横方向の車両運動制御サブタスクとの両方を同時には実行しない。
・レベル2:高度運転支援…運転自動化システムが、動的運転タスクのうちの、縦方向の車両運動制御サブタスクおよび横方向の車両運動制御サブタスクを、特定の限定領域において持続的に実行する。ドライバは、動的運転タスクのサブタスクであるOEDRを実行して運転自動化システムを監督することが期待される。
・レベル3:条件付自動運転…運転自動化システムが全ての動的運転タスクを特定の限定領域において持続的に実行する。原則的に、ドライバには、周辺監視(すなわち自車両周辺の交通環境の監視)等のOEDRを実行する義務はない。但し、当該運転自動化レベルが継続困難となった場合、運転自動化システムは充分な時間的余裕をもってドライバに運転交代を要請する。ドライバは、その要請に適切に対応する必要がある。
・レベル4:高度自動運転…運転自動化システムが全ての動的運転タスクを特定の限定領域において持続的に実行する。限定領域において、当該運転自動化レベルが継続困難となった場合の対応は、運転自動化システムが実行する。
・レベル5:完全自動運転…運転自動化システムが全ての動的運転タスクを、特定の限定領域に限定されず無制限に、持続的に実行する。当該運転自動化レベルが継続困難となった場合の対応も、特定の限定領域に限定されず無制限に、運転自動化システムが実行する。
【0016】
本実施形態においては、車載システム10は、自車両にてSAEレベル0~3の運転自動化レベルを実現可能に構成されている。具体的には、車載システム10は、SAEレベル1に相当するACCおよびLKAを実行可能に構成されている。ACCはアダプティブ・クルーズ・コントロールすなわち車間距離制御である。LKAは、Lane Keeping Assistanceの略であり、車線維持支援制御である。
【0017】
また、車載システム10は、SAEレベル2に相当する、ハンズオン運転およびハンズオフ運転を実行可能に構成されている。「ハンズオン運転」は、ドライバが自車両を運転することを前提としつつ、並行して作動する運転自動化システムが適時に運転制御あるいは運転支援制御を実行する運転自動化レベルである。すなわち、ハンズオン運転は、ドライバに、ハンズオン状態と、動的運転タスクとしての周辺監視の実行とを要求する、高度運転支援である。「周辺監視」とは、自車両周辺の交通環境、具体的には、道路状況、交通状況、障害物の存在状態、等の監視をいうものとする。「道路状況」とは、カーブの有無あるいはカーブ曲率等、道路における地形的な状況をいうものとする。「交通状況」とは、交通量、すなわち、他車両の存在状況をいうものとする。「障害物の存在状態」は、障害物の有無、種類、相対位置、相対速度、等を含む。「障害物」は、人、動物、駐停車車両、路上落下物、等を含む。「ハンズオン状態」とは、ドライバが自車両の操舵すなわち横方向の車両運動制御サブタスクに干渉可能な状態であり、典型的にはドライバが後述するステアリングホイール211を把持している状態である。一方、「ハンズオフ運転」は、ドライバが運転自動化システムからの介入要求等に対して適切に対応することを条件として、運転自動化システムが自動的に発進、操舵、加減速、および停止制御を実行する運転自動化レベルである。すなわち、ハンズオフ運転は、ドライバに、ハンズオン状態は要求しないものの、動的運転タスクとしての周辺監視の実行をドライバに要求する、高度運転支援である。車載システム10は、ハンズオン運転およびハンズオフ運転中において、LCAを実行可能に構成されている。LCAはLane Change Assistの略であり、ウィンカ操作をトリガーすなわち実行開始指示操作として車線変更を行う自動車線変更支援である。
【0018】
また、車載システム10は、SAEレベル3に相当する、所定の自動運転可能道路を法定速度域にて走行するという条件で実行される自動運転を実行可能に構成されている。以下、本明細書においては、特に補足説明しない限り、このような自動運転を、単に「自動運転」と略称する。「自動運転可能道路」は、自動運転可能な道路としてあらかじめ設定された自動車専用道路である。自動運転可能道路は、典型的には、法定最高速度が60km/hを超える自動車専用道路、例えば高速道路である。ここで、本実施形態においては、自動運転の実行条件は、自車両が追越車線を走行中ではないこと、および、障害事由発生区間を走行中ではないことを含む。「障害事由発生区間」は、交通事故、道路工事、道路保全作業、等の障害事由が発生している、道路上の地点あるいは区間である。さらに、車載システム10は、自動運転中において、追越車線に進入しない条件で、車線変更制御および追越制御を実行可能に構成されている。「車線変更制御」は、車線変更のために必要な車両運転制御であって、少なくとも自動操舵制御を含む。「追越制御」は、自車両の走行中車線である自車線にて自車両の前方を走行中の他車両を追い越して自車線に復帰するために必要な車両運転制御であって、車線変更制御と加減速制御とを含む。
【0019】
このように、車載システム10は、自動操舵制御として、ドライバに周辺監視義務が課されるハンズオン運転およびハンズオフ運転と、ドライバに周辺監視義務が課されない自動運転とを実行可能に構成されている。なお、本実施形態においては、ハンズオフ運転は、自車両が自動運転可能道路を走行中であることを実行条件とするものとする。すなわち、車載システム10は、一般道路においては、ハンズオフ運転および自動運転のいずれも実行しないように構成されている。
【0020】
車載システム10は、車載通信回線10Aおよびこの車載通信回線10Aを介して相互に接続された複数のノード等を含む車載ネットワークであって、自車両運転時の各種車両制御およびこれに伴う各種報知動作等を実行可能に構成されている。車載システム10は、CAN(国際登録商標:国際登録番号1048262A)等の所定の通信規格に準拠するように構成されている。CAN(国際登録商標)はController Area Networkの略である。
【0021】
車載システム10は、車両状態センサ11と、外界状態センサ12と、周辺監視センサ13と、ロケータ14と、通信モジュール15と、ナビゲーション装置16とを備えている。また、車載システム10は、ドライバ状態検出部17と、運転制御装置18と、走行装置19と、HMI装置20とを備えている。HMIはヒューマン マシン インタフェースの略である。
【0022】
HMI装置20は、入出力デバイスとして、操作部21と、メータパネル22と、CID装置23と、HUD装置24と、スピーカ25と、端末装置26とを含む。CIDはセンター インフォメーション ディスプレイの略である。HUDはヘッドアップディスプレイの略である。また、HMI装置20は、これらの入出力デバイスにおける表示および/または音声出力動作を制御するHMI制御装置27を備えている。
【0023】
操作部21は、車載通信回線10Aを介して、HMI制御装置27と情報通信可能に接続されている。メータパネル22、CID装置23、HUD装置24、およびスピーカ25は、車載通信回線10Aとは異なるサブ通信回線を介して、HMI制御装置27と情報通信可能に接続されている。端末装置26は、ドライバを含む自車両乗員によって自車両内に持ち込まれた、携帯型あるいはウェアラブル型の電子機器であって、例えば、携帯電話、タブレット端末、ノートパソコン、携帯ゲーム機、スマートウォッチ、等である。端末装置26は、自車両に持ち込まれた場合に、Bluetooth(登録商標)、TransferJet(登録商標)、等の近距離無線通信により、HMI制御装置27と情報通信可能に接続されるようになっている。HMI制御装置27は、車載通信回線10Aと接続されたノードとして設けられている。
【0024】
(各種センサ)
車両状態センサ11は、自車両の運転状態に関連する諸量に対応する出力を発生するように設けられている。「運転状態に関連する諸量」は、例えば、アクセル操作量、ブレーキ操作量、シフトポジション、操舵角、等の、ドライバまたは運転自動化システムによる運転操作状態に関連する諸量を含む。また、「運転状態に関連する諸量」は、例えば、車速、角速度、前後方向加速度、左右方向加速度、等の、自車両の挙動に関連する物理量を含む。すなわち、車両状態センサ11は、アクセル開度センサ、操舵角センサ、車輪速センサ、角速度センサ、加速度センサ、等の、車両運転制御に必要な周知のセンサ類を、図示および説明の簡略化のために総称したものである。車両状態センサ11は、車載通信回線10Aを介して、運転制御装置18等の各部に検出出力を提供可能に設けられている。
【0025】
外界状態センサ12は、自車両周辺の交通環境のうち主として自然環境に関連する諸量に対応する出力を発生するように設けられている。「自然環境に関連する諸量」は、例えば、外気温、降雨量、照度、等の物理量を含む。すなわち、外界状態センサ12は、外気温センサ、雨滴センサ、照度センサ、等の周知のセンサ類を、図示および説明の簡略化のために総称したものである。外界状態センサ12は、車載通信回線10Aを介して、運転制御装置18等の各部に検出出力を提供可能に設けられている。
【0026】
周辺監視センサ13は、自車両周辺の交通環境のうち、主として、外界状態センサ12により検知されるもの以外を検知するように設けられている。具体的には、周辺監視センサ13は、自車両周辺の所定の検知範囲における、移動物体および静止物体を検知可能に構成されている。「移動物体」は、歩行者、サイクリスト、動物、および運転中の他車両を含む。「静止物体」は、路上落下物、ガードレール、縁石、駐停車車両、道路標識、道路標示、道路脇の構造物(例えば、壁、建物、等。)、等を含む。周辺監視センサ13は「ADASセンサ」とも称され得る。ADASはAdvanced Driver-Assistance Systemsの略である。
【0027】
本実施形態においては、周辺監視センサ13は、移動物体および静止物体を検知するための構成として、フロントカメラ131とレーダセンサ132とを有している。フロントカメラ131は、自車両の前方および前側方の画像を撮影するように設けられている。フロントカメラ131は、デジタルカメラ装置であって、CCDあるいはCMOS等の画像センサを備えている。CCDはCharge Coupled Deviceの略である。CMOSはComplementary Metal Oxide Semiconductorの略である。
【0028】
レーダセンサ132は、レーダ波を送受信するように構成された、ミリ波レーダセンサ、サブミリ波レーダセンサ、またはレーザレーダセンサであって、自車両における車体の少なくとも前面部に装着されている。レーダセンサ132は、反射点の、位置および相対速度に対応する信号を出力するように構成されている。「反射点」は、自車両周辺に存在する物体の表面上における、レーダ波を反射したと推定される点である。「相対速度」は、反射点すなわちレーダ波を反射した物体の、自車両に対する相対速度である。
【0029】
(ロケータ)
ロケータ14は、いわゆる複合測位により、自車両の高精度な位置情報等を決定するように構成されている。具体的には、ロケータ14は、GNSS受信器141と、慣性取得部142と、高精度地
図DB143と、ロケータECU144とを有している。GNSSはGlobal Navigation Satellite Systemの略である。DBはデータベースの略である。ECUはElectronic Control Unitの略である。「高精度な位置情報」とは、例えば、SAEレベル2以上の、高度運転支援あるいは自動運転に利用可能な程度、具体的には、誤差が10cm未満となるような程度の位置精度を有する位置情報である。
【0030】
GNSS受信器141は、複数の測位衛星すなわち人工衛星から送信された測位信号を受信可能に設けられている。本実施形態においては、GNSS受信器141は、GPS、QZSS、GLONASS、Galileo、IRNSS、北斗衛星導航系統、等の衛星測位システムのうちの少なくとも1つにおける測位衛星からの測位信号を受信可能に構成されている。GPSはGlobal Positioning Systemの略である。QZSSはQuasi-Zenith Satellite Systemの略である。GLONASSはGlobal Navigation Satellite Systemの略である。IRNSSはIndian Regional Navigation Satellite Systemの略である。
【0031】
慣性取得部142は、自車両に作用する加速度および角速度を取得するように構成されている。本実施形態においては、慣性取得部142は、ロケータ14における箱状の筐体内に内蔵された3軸ジャイロセンサおよび3軸加速度センサとして設けられている。
【0032】
高精度地
図DB143は、高精度地図情報を書き換え可能に記憶するとともに電源遮断中にも記憶内容を保持するように、不揮発性リライタブルメモリを主体として構成されている。不揮発性リライタブルメモリは、例えば、ハードディスク、EEPROM、フラッシュROM、等である。EEPROMはElectronically Erasable and Programmable ROMの略である。ROMはRead Only Memoryの略である。高精度地図情報は、高精度地図データとも称され得る。高精度地図情報には、数メートル程度の位置誤差に対応する従来のカーナビゲーションシステムにて用いられていた地図情報よりも高精度な地図情報が含まれている。具体的には、高精度地
図DB143には、ADASIS規格等の所定の規格に準拠して、三次元道路形状情報、レーン数情報、規制情報、等の、高度運転支援あるいは自動運転に利用可能な情報が格納されている。ADASISはAdvanced Driver Assistance Systems Interface Specificationの略である。
【0033】
ロケータECU144は、図示しないCPU、ROM、RAM、入出力インタフェース、等を備えた、いわゆる車載マイクロコンピュータとして構成されている。CPUはCentral Processing Unitの略である。RAMはRandom Access Memoryの略である。ロケータECU144は、GNSS受信器141にて受信した測位信号、慣性取得部142にて取得した加速度および角速度、車両状態センサ11から取得した車速、等に基づいて、自車両の位置や方角等を逐次決定するように構成されている。そして、ロケータ14は、ロケータECU144による位置や方角等の決定結果を、車載通信回線10Aを介して、ナビゲーション装置16、運転制御装置18、およびHMI制御装置27等の各部に提供可能に設けられている。
【0034】
(通信モジュール)
通信モジュール15は、DCMとも称される車載通信モジュールであって、LTEあるいは5G等の通信規格に準拠した無線通信により、自車両周辺の基地局との間で情報通信可能に設けられている。DCMはData Communication Moduleの略である。LTEはLong Term Evolutionの略である。5Gは5th Generationの略である。
【0035】
具体的には、例えば、通信モジュール15は、クラウド上のプローブサーバから最新の高精度地図情報を取得するように構成されている。また、通信モジュール15は、取得した最新の高精度地図情報を、ロケータECU144と連携することで、高精度地
図DB143に格納するようになっている。さらに、通信モジュール15は、渋滞情報等の交通情報を、上記のプローブサーバおよび/または所定のデータベースから取得するように構成されている。「渋滞情報」は、渋滞区間の位置および長さを含む。具体的には、渋滞情報は、渋滞先頭位置、渋滞最後尾位置、概算渋滞距離、概算渋滞時間、等を含む。交通情報は「道路交通情報」とも称される。
【0036】
(ナビゲーション装置)
ナビゲーション装置16は、自車両の現在位置から所定の目的地までの走行予定経路を算出するように設けられている。本実施形態においては、ナビゲーション装置16は、自車両のドライバ等により設定された目的地、ロケータ14から取得した高精度地図情報、ロケータ14から取得した自車両の位置情報、等に基づいて、走行予定経路を算出するように構成されている。また、ナビゲーション装置16は、算出結果である経路情報を含む各種情報を、運転制御装置18およびHMI制御装置27等の各部に車載通信回線10Aを介して提供可能に設けられている。すなわち、ナビゲーション装置16は、地図表示および経路表示等のためナビゲーション画面を、HMI装置20にて表示させるようになっている。
【0037】
(ドライバ状態検出部)
ドライバ状態検出部17は、ドライバ状態を検出するように設けられている。「ドライバ状態」は、自車両におけるドライバの状態であり、ドライバ挙動およびドライバの覚醒状態を含む。「ドライバ挙動」は、ドライバの顔の向き、視線方向、姿勢、等を含む。また、ドライバ状態検出部17は、ドライバ状態の検出結果を、運転制御装置18およびHMI制御装置27等の各部に車載通信回線10Aを介して提供可能に構成されている。
【0038】
具体的には、ドライバ状態検出部17は、CCDあるいはCMOS等の画像センサを備えた車内カメラによる撮影画像に基づく画像認識により、ドライバ状態を検出するように構成されている。すなわち、ドライバ状態検出部17は、ドライバの覚醒状態の低下等を警告する、いわゆるドライバステータスモニタを構成するように設けられている。また、ドライバ状態検出部17は、ドライバによるアクセルおよびブレーキの操作状態、後述するステアリングホイール211の把持状態および操作状態、等を検出するように構成されている。
【0039】
(運転制御装置)
運転制御装置18は、車両状態センサ11、外界状態センサ12、周辺監視センサ13、ロケータ14、等から取得した信号および情報に基づいて、自車両の運転を制御するように設けられている。運転制御装置18は、SAEレベル1~3に相当する運転自動化レベルを実現する運転自動化システム(すなわち自動運転システム)の動作を制御する制御ユニットすなわち自動運転ECUとしての構成を有している。具体的には、運転制御装置18は、自動運転可能な自車両における、車線変更のための運転制御であって少なくとも自動操舵制御を含む車線変更制御、および、追越のための運転制御であって少なくとも自動操舵制御を含む追越制御を実行可能に構成されている。
【0040】
運転制御装置18は、プロセッサとメモリとを備えた、いわゆる車載マイクロコンピュータとしての構成を有している。すなわち、運転制御装置18は、運転制御プロセッサ181と運転制御メモリ182とを備えている。運転制御プロセッサ181は、図示しないCPU、RAM、入出力インタフェース、等を備えている。運転制御プロセッサ181は、運転制御メモリ182に記憶されたプログラム命令を実行することで、車載システム10による縦方向および/または横方向の車両運動制御サブタスクの実行を実現するように構成されている。運転制御メモリ182は、運転制御プロセッサ181により使用されるデータおよびプログラム命令を記憶する非遷移的実体的記憶媒体であって、ROMおよび/または不揮発性リライタブルメモリを備えている。本実施形態において運転制御装置18により奏される各種機能の詳細については後述する。
【0041】
(走行装置)
走行装置19は、駆動装置191と、制動装置192と、操舵装置193とを備えている。駆動装置191は、車両の駆動力を発生させる装置であって、電動機および/またはエンジンである動力源装置と、かかる動力源装置から車軸に駆動力を伝達する動力伝達機構とを有している。制動装置192は、摩擦ブレーキおよび/または回生ブレーキによる制動力を発生するように構成されている。操舵装置193は、パワーステアリング装置であって、操舵輪の向きを制御するように構成されている。
【0042】
(HMI装置)
HMI装置20は、いわゆる車両用HMIであって、自車両とドライバを含む乗員との間の情報伝達を実現するための構成を有している。具体的には、HMI装置20は、ドライバに自車両に関する各種情報を少なくとも視覚的に提示するとともに、提示内容に対応するドライバの入力操作を受け付けるように構成されている。提示される各種情報は、例えば、各種案内、入力操作指示、入力操作内容報知、警告、等である。
【0043】
操作部21は、ドライバの運転操作を含む各種操作を受け付けるとともに、かかる操作の受け付け結果を、車載通信回線10Aを介して、運転制御装置18およびHMI制御装置27等の各部に提供可能に構成されている。具体的には、操作部21は、ステアリングホイール211、ステアリングスイッチ212、ウィンカスイッチ213、等を有している。
【0044】
ステアリングホイール211は、不図示のステアリングコラムにて回転可能に支持された不図示のステアリングシャフトに固定されている。ステアリングスイッチ212は、ステアリングホイール211における不図示のスポーク部等に設けられている。ウィンカスイッチ213は、上記のステアリングコラムに設けられた操作レバーである不図示のウィンカーレバーの操作状態に応じた信号を出力するように構成されている。
【0045】
HMI装置20は、不図示のダッシュボードに設けられた、メータパネル22、CID装置23、およびHUD装置24を備えている。すなわち、本実施形態においては、HMI装置20は、上記のダッシュボードに取り付けられた機器を主体とする、いわゆる「ダッシュボードHMI」としての構成を有している。
【0046】
メータパネル22は、メータ221と、メータディスプレイ222と、メータスイッチ223とを有している。メータ221は、自車両の車速、冷却水温、燃料残量、等のメータ表示を実行するように設けられている。メータディスプレイ222は、メータパネル22の車幅方向における中央部に設けられた情報表示部あるいは情報表示領域であって、日時、外気温、走行距離、ラジオ受信局、等の各種情報表示を実行するように設けられている。本実施形態においては、メータディスプレイ222は、略矩形状の表示可能領域を備えた、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイである表示デバイスとしての構成を有している。ELはエレクトロ ルミネッセンスの略である。メータスイッチ223は、メータ221および/またはメータディスプレイ222における表示状態あるいは表示内容に関する各種操作を受け付け可能に設けられている。
【0047】
CID装置23は、ナビゲーション装置16による地図表示および経路表示等のためナビゲーション画面を表示可能に設けられている。また、CID装置23は、かかるナビゲーション画面とは異なる情報やコンテンツも表示可能に設けられている。
【0048】
具体的には、CID装置23は、例えば、「コンフォート」、「ノーマル」、「スポーツ」、「サーキット」、等の走行モードに関連する表示および設定操作を実行可能に構成されている。また、CID装置23は、SAEレベル3の自動運転中にドライバが利用可能なセカンドタスクに関連する表示を実行可能に構成されている。セカンドタスクとは、ドライバが実行する、運転操作以外のタスクである。具体的には、セカンドタスクには、例えば、読書、携帯通信端末操作、映像コンテンツ視聴、等が含まれる。セカンドタスクは、「運転外タスク」あるいは「セカンダリーアクティビティ」とも称される。
【0049】
CID装置23は、CIDディスプレイ231と、入力デバイス232と、CIDスイッチ233とを有している。CIDディスプレイ231は、上記のダッシュボードの車幅方向における略中央位置、具体的には運転席と助手席との間の位置にて、少なくともドライバから視認可能に設けられている。CIDディスプレイ231は、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイである表示デバイスとしての構成を有している。CIDディスプレイ231は、セカンドタスクが映像コンテンツの視聴である場合に、かかる映像コンテンツにおける映像を表示するように構成されている。「映像コンテンツ」は、例えば、映画、コンサート映像、ミュージックビデオ、テレビ放送、等である。
【0050】
入力デバイス232は、透明なタッチパネルであって、CIDディスプレイ231の上に重ねられることでCIDディスプレイ231を覆うように設けられている。すなわち、入力デバイス232は、CIDディスプレイ231における表示をドライバ等に視認させつつ、かかる表示に対応したドライバ等による入力操作を受け付け可能に構成されている。CIDスイッチ233は、CIDディスプレイ231および入力デバイス232の周囲に配置された複数の手動操作スイッチにより構成されている。
【0051】
HUD装置24は、ドライバの前方視界内に文字および/または記号を含む表示画像を表示するように設けられている。本実施形態においては、HUD装置24は、AR技術を用いてドライバの前方に虚像表示画像を形成することで、自車両の進行先の路面を含む前景に表示画像を重畳表示するように構成されている。具体的には、HUD装置24は、表示画像光を不図示のフロントウィンドシールドにおける所定の投影範囲に投影して、表示画像光のフロントウィンドシールドによる反射光をドライバに視認させることで、表示画像をAR表示する構成を有している。HUD装置24による「重畳表示」は、前景に含まれる重畳対象物(例えば建物)にその関連情報(例えば建物名)を関連付けて表示することであって、例えば、関連情報を重畳対象物と重なるように表示したり重畳対象物の近傍に表示したりすることである。前方路面に対する、経路表示、進行方向表示、交通情報表示、等の各種表示も、「重畳表示」に該当する。
【0052】
HMI装置20は、音声による情報提示を含む音声出力を実行するためのスピーカ25を備えている。すなわち、スピーカ25は、メータパネル22、CID装置23、およびHUD装置24における表示内容に対応した音声を出力するように設けられている。また、スピーカ25は、メータパネル22、CID装置23、およびHUD装置24における表示内容には対応しない音声(例えば、音楽、ラジオ音声、等)をも出力可能に設けられている。また、スピーカ25は、自車両内に持ち込まれた端末装置26が近距離無線通信によりHMI制御装置27と接続された場合に、かかる端末装置26における音声出力機器として機能するように設けられている。さらに、HMI装置20は、自車両内に持ち込まれた端末装置26が近距離無線通信によりHMI制御装置27と接続された場合に、メータパネル22等における表示内容とこれに対応した音声とを端末装置26にて出力させることが可能に構成されている。
【0053】
(HMI制御装置)
HMI制御装置27は、HMI装置20の動作を制御するように設けられている。すなわち、HMI制御装置27は、HMI装置20に含まれる、メータパネル22、CID装置23、HUD装置24、等の動作を制御する、HCUとしての構成を有している。HCUはHMI Control Unitの略である。
【0054】
HMI制御装置27は、プロセッサとメモリとを備えた、いわゆる車載マイクロコンピュータとしての構成を有している。すなわち、HMI制御装置27は、HCUプロセッサ271とHCUメモリ272とを備えている。HCUプロセッサ271は、図示しないCPU、RAM、入出力インタフェース、等を備えている。HCUプロセッサ271は、HCUメモリ272に記憶されたプログラム命令を実行することで、HMI装置20における表示出力および音声出力を制御するように構成されている。HCUメモリ272は、HCUプロセッサ271により使用されるデータおよびプログラム命令を記憶する非遷移的実体的記憶媒体であって、ROMおよび/または不揮発性リライタブルメモリを備えている。本実施形態においてHMI制御装置27により奏される各種機能の詳細については後述する。
【0055】
(第一実施形態)
図2は、プログラム命令の実行により運転制御装置18にて実現される機能構成部あるいは機能構成ブロックを示す。
図2に示されているように、運転制御装置18は、車載マイクロコンピュータ上にて実現される機能構成あるいは機能部として、運転状態取得部1801と、運転環境取得部1802と、ドライバ挙動取得部1803と、自車両位置取得部1804とを有している。また、運転制御装置18は、車載マイクロコンピュータ上にて実現される機能構成あるいは機能部として、経路情報取得部1805と、車線情報取得部1806と、自動化レベル決定部1807と、車両制御部1808と、報知情報生成部1809とを有している。
【0056】
運転状態取得部1801は、車両状態センサ11にて検出された、自車両の運転状態に関連する諸量に対応する情報を取得するようになっている。運転環境取得部1802は、外界状態センサ12および周辺監視センサ13にて検出された、自車両周辺の交通環境に対応する情報を取得するようになっている。ドライバ挙動取得部1803は、自車両のドライバ挙動を取得するようになっている。具体的には、ドライバ挙動取得部1803は、ドライバ状態検出部17により検出されたドライバ挙動を、ドライバ状態検出部17から取得(すなわち受信)するようになっている。また、ドライバ挙動取得部1803は、HMI装置20におけるドライバの各種操作状況を取得するようになっている。
【0057】
自車両位置取得部1804は、自車両の現在の高精度な位置情報をロケータECU144から取得するようになっている。経路情報取得部1805は、自車両の走行予定経路を示す経路情報をナビゲーション装置16から取得するようになっている。車線情報取得部1806は、高精度地
図DB143から、自車両が現在走行中の道路である走行中道路における車線情報を取得するようになっている。「車線情報」は、車線数および車線種別を含む。「車線種別」は、走行車線、追越車線、等を含む。
【0058】
自動化レベル決定部1807は、運転状態取得部1801等にて取得した各種情報に基づいて、自車両の運転自動化レベルを決定するようになっている。具体的には、自動化レベル決定部1807は、所定の運転自動化レベルの開始条件の成否を判定するとともに、かかる開始条件の成立中にドライバによる承認操作を受け付けた場合に当該運転自動化レベルを開始するようになっている。また、自動化レベル決定部1807は、当該運転自動化レベルを実行中に、継続条件が不成立となった場合あるいは終了条件が成立した場合に、当該運転自動化レベルを終了するために必要な制御を実行するようになっている。そして、運転制御装置18は、自動化レベル決定部1807による運転自動化レベルの決定結果を、HMI制御装置27等の各部に車載通信回線10Aを介して提供可能に設けられている。
【0059】
車両制御部1808は、自動化レベル決定部1807によって決定された運転自動化レベルに基づいて、自車両の運転制御を実行するようになっている。すなわち、車両制御部1808は、自動化レベル決定部1807による運転自動化レベルの決定結果に応じて走行装置19を制御することで、車速制御、操舵制御、制動制御、等の車両運動制御サブタスクを実行するようになっている。
【0060】
報知情報生成部1809は、運転制御装置18による車両運転制御に関してドライバに報知する必要がある報知情報を生成してHMI制御装置27に出力するようになっている。「報知情報」は、運転自動化レベルの決定結果を含む。また、「報知情報」は、車両運転制御に関する、各種の案内、要求、警告、等を含む。
【0061】
図3は、プログラム命令の実行によりHMI制御装置27にて実現される機能構成部あるいは機能構成ブロックを示す。
図3に示されているように、HMI制御装置27は、車載マイクロコンピュータ上にて実現される機能構成あるいは機能部として、情報取得部2701と、表示制御部2702と、音声出力制御部2703と、入力操作受付部2704とを有している。
【0062】
情報取得部2701は、HMI装置20にて提示すべき情報を取得するようになっている。具体的には、例えば、情報取得部2701は、報知情報生成部1809にて生成された報知情報を、運転制御装置18から取得するようになっている。表示制御部2702は、HMI装置20における表示動作を制御するようになっている。「表示動作」には、上記の映像コンテンツの表示の他に、交通情報、経路情報、運転状態情報、報知情報、等の各種情報の表示を含む。音声出力制御部2703は、HMI装置20すなわちスピーカ25における音声出力動作を制御するようになっている。入力操作受付部2704は、ドライバを含む自車両乗員による、HMI装置20、すなわち、操作部21、メータスイッチ223、入力デバイス232、CIDスイッチ233、等における入力操作を受け付けるようになっている。
【0063】
(動作概要)
以下、本実施形態に係る運転制御装置18およびHMI制御装置27の動作、ならびに、これらにより実行される制御方法および制御プログラムの概要について、これらにより奏される作用あるいは効果とともに説明する。以下、本実施形態に係る装置構成、および、これにより実行される制御方法および制御プログラムを、「本実施形態」と総称することがある。
【0064】
運転制御装置18において、運転状態取得部1801は、車両状態センサ11にて検出された、自車両の運転状態に関連する諸量に対応する情報を取得する。運転環境取得部1802は、外界状態センサ12および周辺監視センサ13にて検出された、自車両周辺の交通環境に対応する情報を取得する。ドライバ挙動取得部1803は、自車両のドライバ挙動を取得する。自車両位置取得部1804は、自車両の現在の高精度な位置情報を取得する。経路情報取得部1805は、自車両の走行予定経路を示す経路情報を取得する。車線情報取得部1806は、走行中道路における車線情報を取得する。
【0065】
自動化レベル決定部1807は、運転状態取得部1801等にて取得した各種情報に基づいて、自車両の運転自動化レベルを決定する。具体的には、自動化レベル決定部1807は、SAEレベル1~3のうちのいずれかに相当する所定の運転自動化レベルの開始条件の成否を判定する。具体的には、自車両が自動運転可能道路に進入後、走行車線における安定的な走行、すなわち、例えば、制限速度内におけるほぼ定速での自車線維持走行の所定時間継続により、自動運転の開始条件のうちの少なくとも1つが成立する。
【0066】
報知情報生成部1809は、運転状態取得部1801等にて取得した各種情報、および/または、自動化レベル決定部1807による運転自動化レベルの決定結果に基づいて、報知情報を生成してHMI制御装置27に出力する。すなわち、自動化レベル決定部1807は、所定の運転自動化レベル、例えば、ハンズオン運転、ハンズオフ運転、または自動運転の開始条件が成立すると、この開始条件の成立をHMI制御装置27に通知する。具体的には、例えば、自動運転の開始条件が成立したことが自動化レベル決定部1807により判定されると、報知情報生成部1809は、自動運転が開始可能となったことに対応する報知情報を生成してHMI制御装置27に出力する。
【0067】
HMI制御装置27において、情報取得部2701は、報知情報を、運転制御装置18すなわち報知情報生成部1809から取得する。表示制御部2702および音声出力制御部2703は、取得した報知情報に対応した表示および/または音声出力により、ドライバに各種情報を報知する。例えば、表示制御部2702および音声出力制御部2703は、開始条件が成立した所定の運転自動化レベルの開始を承認するための入力操作である承認操作をドライバに促す情報提示を実行する。そして、入力操作受付部2704は、かかる入力操作を所定時間待機する。
【0068】
入力操作受付部2704が承認操作を受け付けると、HMI制御装置27は、ドライバによる承認操作が受け付けられた旨を、運転制御装置18に通知する。運転制御装置18において、承認操作が受け付けられた旨の情報をドライバ挙動取得部1803が取得すると、自動化レベル決定部1807は、開始条件が成立して実行が承認された運転自動化レベルの実行を開始する。すると、車両制御部1808は、自動化レベル決定部1807によって決定すなわち実行開始された運転自動化レベルに応じて、車速制御、操舵制御、制動制御、等を実行する。
【0069】
SAEレベル3の自動運転中は、ドライバによる動的運転タスクの実行、すなわち、例えば、周辺監視、操舵制御操作、および加減速制御操作は、原則として要求されない。このため、自動運転中にて、ドライバは、ステアリングホイール211を常時把持していることは要求されず、アクセルペダルおよびブレーキペダルをいつでも操作可能な程度の運転姿勢を常時保持することも要求されない。よって、自動運転中においては、ドライバは、セカンドタスクを実行することが可能となる。
【0070】
一方、SAEレベル2のハンズオン運転中あるいはハンズオフ運転中は、ドライバには、少なくとも周辺監視を含む、動的運転タスクの実行が要求される。すなわち、ハンズオン運転中にて、ドライバには、ハンズオン状態が要求され、且つ周辺監視義務がある。また、ハンズオフ運転中にて、ドライバには、ハンズオン状態は要求されないものの、周辺監視義務がある。
【0071】
本実施形態においては、実行可能な、あるいは、推奨される運転自動化レベルは、車線種別によって異なる。具体的には、自車両は、自動運転可能道路に進入すると、走行車線および追越車線にて、ハンズオン運転およびハンズオフ運転が可能である。但し、追越車線においては、可能な限りすみやかに走行車線に移動する必要性等を考慮して、ハンズオン運転が推奨される。さらに、自車両は、走行車線における走行を維持することで、自動運転が可能である。すなわち、追越車線を走行中には、自動運転は実行できない。
【0072】
例えば、自車両が、ドライバに周辺監視義務が課されていない自動運転中に、車線変更が必要あるいは推奨される場面やドライバが車線変更したくなるような場面に遭遇することがあり得る。ここで、車載システム10による自動的な車線変更制御が実行される際の交通環境は様々である。
【0073】
一例として、走行中道路が高速道路における片側3車線の本線車道である状況を想定する。この状況で、自車線が第一走行車線であって、隣接する第二走行車線への車線変更要求がある場合、ハンズオン運転、ハンズオフ運転、および自動運転のいずれを実行中であっても、この要求に対応した車線変更を車載システム10により実行することが可能である。また、自車線が第二走行車線であって、隣接する第一走行車線への車線変更要求がある場合、ハンズオン運転、ハンズオフ運転、および自動運転のいずれを実行中であっても、この要求に対応した車線変更を車載システム10により実行することが可能である。
【0074】
一方、自車線が第二走行車線であって、隣接する追越車線への車線変更要求がある場合、ハンズオン運転およびハンズオフ運転を実行中であれば、この要求に対応した車線変更を車載システム10により実行することが可能である。これに対し、自動運転中においては、追越車線に進入することはできない。このため、自動運転中において、第二走行車線から追越車線への車線変更要求(例えば先行車両の追越要求)がある場合、この要求に対応した車線変更を実行するためには、自動運転を中断あるいは終了する必要がある。
【0075】
ところで、車線変更の際の自車両の挙動や、実際に車線変更に要する時間は、自車両の車速、走行中道路における交通状況、等に応じて変化し得る。具体的には、車載システム10による車線変更においては、自車両周辺の他車両の有無、自車両の車速、等に応じて、車線変更の開始地点と完了地点までの距離あるいは所要時間が変化する。
【0076】
一方、自動運転可能道路の終点への接近、自車両の自動運転可能道路からの退出予定、自車両の進行先における障害事由発生区間の発生、等により、運転自動化レベルを自動運転から低下させる必要性が生じることがある。このとき、車線変更の完了地点が遠くなるあるいは所要時間が長くなると、運転自動化レベルが変化する移行領域までに車線変更が完了せず、車線変更の途中で自動運転を終了させなければならない事態が発生する可能性がある。このような事態が発生することは、ドライバにとっての利便性が悪い。また、合流地点やカーブ地点においては、周辺車両の増加や、周辺車両の車線変更、周辺車両のふらつきが、通常の直線道路よりも多く発生する可能性が高い。このような不特定なリスクが高い状況において車載システム10による自動的な車線変更を実施すると、車線変更がスムーズに実行されない可能性があった。
【0077】
そこで、本実施形態は、上記のような課題を解決すべく、周辺監視義務のない自動運転中にドライバが車線変更の実行開始指示を行っても、以下の場合には、車載システム10すなわち運転制御装置18による車線変更制御を制限する。また、本実施形態は、このような車線変更制御の制限が実行される際に、車線変更制御を制限することをドライバに報知する。これにより、車載システム10による自動的な車線変更制御が可能な車両の利便性が向上するとともに、ドライバに状況を報知することで安心感を与えることが可能となる。
・第一の場合:運転自動化レベルが変化する移行領域まで所定距離(例えば3km)以内または所定時間(例えば3分)以内である。
・第二の場合:車線変更先領域、すなわち、自車線からの車線変更先の隣接車線である変更先車線における所定範囲内(例えば自車両位置から所定距離あるいは所定時間以内)に、合流地点またはカーブ地点が存在する。
【0078】
ここで、「移行領域」は、例えば、自動運転を終了する際に運転交代のために通常設定される、領域すなわち道路区間である。また、「移行領域」は、例えば、交通情報に基づいて取得された障害事由発生区間もしくは障害事由発生地点、または、これらを含む所定距離範囲内の領域である。なお、典型的には、自車両が分岐手前に位置する場合が「第二の場合」に該当する。しかしながら、「第二の場合」には、分岐や合流がなく単に片側2車線以上の本線におけるカーブ手前に自車両が位置する場合、すなわち、「車線変更する側の領域」と「車線変更しない側の領域」の両方にカーブ地点が存在する場合も含まれる。
【0079】
図4は、車線変更制御の制限を、車線変更制御の不許可とした例を示す。
図4に示されたフローチャートにおいて、「S」は「ステップ」を略記したものである。また、「シーン#1」は「第一の場合」を示し、「シーン#2」は「第二の場合」を示す。
図5~
図8に示されたフローチャートにおいても同様である。
【0080】
図4に示されたフローチャートは、運転制御プロセッサ181およびHCUプロセッサ271により実行されるプログラムを示す。
図4に示されたプログラムは、自動運転中にドライバにより車線変更のためのトリガー操作(例えばウィンカスイッチ213の操作)がなされた時点で起動される。以下、運転制御プロセッサ181およびHCUプロセッサ271を総称して、単に「プロセッサ」と称する。同様に、運転制御メモリ182およびHCUメモリ272を総称して、単に「メモリ」と称する。すなわち、本実施形態に係る処理は、典型的には、運転制御プロセッサ181とHCUプロセッサ271とが協働することで実現される。換言すれば、本実施形態に係る処理は、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のメモリとによって実現される。
図5以降においても同様である。
【0081】
図4に示されたプログラムが起動されると、まず、ステップ401にて、プロセッサは、現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」に該当するか否かを判定する。「第一の場合」に該当しない場合(すなわちステップ401=NO)、プロセッサは、処理をステップ402に進行させる。ステップ402にて、プロセッサは、現時点において自車両の走行状況が「第二の場合」に該当するか否かを判定する。
【0082】
現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」にも「第二の場合」にも該当しない場合(すなわちステップ402=NO)、プロセッサは、ステップ403およびステップ404の処理を実行した後、本プログラムを終了する。ステップ403にて、プロセッサは、運転制御装置18による車線変更制御を開始する。ステップ404にて、プロセッサは、車線変更制御を開始したことをHMI装置20によりドライバに報知する。
【0083】
現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」または「第二の場合」に該当する場合(すなわちステップ401またはステップ402=YES)、プロセッサは、ステップ405およびステップ406の処理を実行した後、本プログラムを終了する。ステップ405にて、プロセッサは、車線変更制御の開始を不許可とする。ステップ406にて、プロセッサは、車線変更制御の開始を不許可としたことをHMI装置20によりドライバに報知する。
【0084】
図5は、車線変更制御の制限を、車線変更制御の実行中におけるキャンセルとした例を示す。
図5に示されたプログラムは、車線変更制御の実行開始から、実質的に車線変更が終了するまで、すなわち、自車両の車幅中心が変更先車線に進入するまで、所定時間間隔で繰り返し起動される。
【0085】
図5に示されたプログラムが起動されると、まず、ステップ501にて、プロセッサは、現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」に該当するか否かを判定する。「第一の場合」に該当しない場合(すなわちステップ501=NO)、プロセッサは、処理をステップ502に進行させる。ステップ502にて、プロセッサは、現時点において自車両の走行状況が「第二の場合」に該当するか否かを判定する。
【0086】
現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」または「第二の場合」に該当する場合(すなわちステップ501またはステップ502=YES)、プロセッサは、ステップ503およびステップ504の処理を実行した後、本プログラムを一旦終了する。ステップ503にて、プロセッサは、車線変更制御をキャンセルするとともに、車線変更のキャンセルのために必要な車両制御を開始する。ステップ504にて、プロセッサは、車線変更をキャンセルしたことをHMI装置20によりドライバに報知する。これに対し、現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」にも「第二の場合」にも該当しない場合(すなわちステップ502=NO)、プロセッサは、ステップ503およびステップ504の処理をスキップして、本プログラムを一旦終了する。
【0087】
図6は、車線変更制御の制限を、車線変更制御を待機状態に移行することとした例を示す。
図6に示されたプログラムは、
図4の場合と同様に、自動運転中にドライバにより車線変更のためのトリガー操作がなされた時点で起動される。
【0088】
図6に示されたプログラムが起動されると、まず、ステップ601にて、プロセッサは、現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」に該当するか否かを判定する。「第一の場合」に該当しない場合(すなわちステップ601=NO)、プロセッサは、処理をステップ602に進行させる。ステップ602にて、プロセッサは、現時点において自車両の走行状況が「第二の場合」に該当するか否かを判定する。
【0089】
現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」に該当する場合(すなわちステップ601=YES)、プロセッサは、ステップ603およびステップ604の処理を実行した後、本プログラムを終了する。ステップ603にて、プロセッサは、車線変更制御を不許可とする。ステップ604にて、プロセッサは、車線変更制御を不許可としたことをHMI装置20によりドライバに報知する。
【0090】
現時点において自車両の走行状況が「第二の場合」に該当する場合(すなわちステップ602=YES)、プロセッサは、ステップ605およびステップ606の処理を実行した後、本プログラムを終了する。ステップ605にて、プロセッサは、車線変更制御を待機状態に移行する。ステップ606にて、プロセッサは、車線変更制御を待機状態に移行したことをHMI装置20によりドライバに報知する。これに対し、現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」にも「第二の場合」にも該当しない場合(すなわちステップ602=NO)、プロセッサは、ステップ603~ステップ606の処理をスキップして、本プログラムを一旦終了する。
【0091】
なお、車線変更制御の制限を、車線変更制御を待機状態に移行することとする例は、車線変更制御を実行中の状況に対しても適用可能である。この場合、
図5に示されたフローチャートは、
図6に示された通りに変容される。すなわち、ステップ502における判定結果が「YES」である場合、ステップ503およびステップ504の処理に代えて、ステップ605およびステップ606の処理が実行される。
【0092】
ところで、自車両についてあらかじめ設定された走行経路により車線変更が要求される場合、「第一の場合」または「第二の場合」に該当したとしても、可能な限り早期に車線変更を実行する必要がある。そこで、この場合、車載システム10は、自動運転を維持しつつ車線変更制御を許可してもよい。あるいは、この場合、車載システム10は、周辺監視義務のない自動運転から周辺監視義務のある運転自動化レベルに移行することを、ドライバに提案してもよい。
【0093】
図7は、自車両の走行状況が「第一の場合」や「第二の場合」に該当しても、自車両についてあらかじめ設定された走行経路により車線変更が要求される場合には、自動運転を維持しつつ車線変更制御を許可する例を示す。すなわち、
図7のフローチャートは、
図4等のフローチャートを一部変容したものである。
図7にて、「LC」は「車線変更」を略記したものである。
【0094】
図7に示されたプログラムが起動されると、まず、ステップ701にて、プロセッサは、現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」に該当するか否かを判定する。「第一の場合」に該当しない場合(すなわちステップ701=NO)、プロセッサは、処理をステップ702に進行させる。ステップ702にて、プロセッサは、現時点において自車両の走行状況が「第二の場合」に該当するか否かを判定する。
【0095】
現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」にも「第二の場合」にも該当しない場合(すなわちステップ702=NO)、プロセッサは、ステップ703の処理を実行する。ステップ703にて、プロセッサは、車線変更制御を許可する。すなわち、この場合、車線変更制御の制限(すなわち、不許可、キャンセル、または待機)は行われない。
【0096】
現時点において自車両の走行状況が「第一の場合」または「第二の場合」に該当する場合(すなわちステップ701またはステップ702=YES)、プロセッサは、ステップ704の処理を実行する。ステップ704にて、プロセッサは、自車両についてあらかじめ設定された走行経路により車線変更が要求されるか否かを判定する。
【0097】
車線変更が要求される場合(すなわちステップ704=YES)、プロセッサは、ステップ703の処理を実行する。このとき、プロセッサは、ドライバに周辺監視を促す報知をHMI装置20により実行することが好適である。これに対し、車線変更が要求されない場合(すなわちステップ704=NO)、プロセッサは、ステップ705およびステップ706の処理を実行する。ステップ705にて、プロセッサは、車線変更制御を制限する。ステップ706にて、プロセッサは、車線変更制御を制限したことをHMI装置20によりドライバに報知する。
【0098】
図8は、自車両の走行状況が「第一の場合」や「第二の場合」に該当し、且つ、自車両についてあらかじめ設定された走行経路により車線変更が要求される場合に、自動運転からSAEレベル2に移行することをドライバに提案する例を示す。すなわち、
図8のフローチャートは、
図7のフローチャートにおけるステップ703をステップ803に変更したものである。ステップ803にて、プロセッサは、自動運転からSAEレベル2に移行することをドライバに提案する。
【0099】
(第二実施形態)
以下、第二実施形態について説明する。なお、以下の第二実施形態の説明においては、主として、上記第一実施形態と異なる部分について説明する。また、第一実施形態と第二実施形態とにおいて、互いに同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の第二実施形態の説明において、第一実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記第一実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0100】
本実施形態に係る車載システム10の構成は、上記第一実施形態と同様である。すなわち、本実施形態に係る車載システム10は、
図1~
図3に示された構成を有している。但し、本実施形態は、動作態様およびこれに対応する機能構成が上記第一実施形態とは若干異なる。
【0101】
自動運転中は、ドライバは、周辺監視をする必要がない。しかしながら、追越制御においては、短期間に2度の車線変更が実施される。さらに、周辺車両の状況によって車線変更の挙動は様々である。このため、追越制御中の短期間に2度の車両挙動変化が発生することで、ドライバを含めた乗員が不安を感じるおそれがあった。
【0102】
そこで、本実施形態は、周辺監視義務のない自動運転中にて、ドライバが追越制御のトリガー操作すなわち実行開始指示操作を行った場合、追越制御中の車線変更の際にドライバに周辺監視を促す報知を実行する。本実施形態によれば、追越制御における車両挙動変化が最も大きい車線変更中に、周辺監視を促す報知を実施することで、ドライバを含めた乗員に車両挙動に対する準備を促すことができ、乗員に安心感を与えることができる。
【0103】
また、車載システム10による追越制御においては、自車両周辺の他車両の有無、自車両の車速、等に応じて、追越制御の開始地点から完了地点までの距離あるいは所要時間が変化する。このため、追越の完了地点が遠くなる、あるいは、所要時間が長くなることで、運転自動化レベルが変化する移行領域までに追越が完了せず、追越制御の途中で自動運転を終了させなければならない事態が発生する可能性がある。あるいは、合流地点やカーブ地点においては、周辺車両の増加や、周辺車両の車線変更、周辺車両のふらつきが、通常の直線道路よりも多く発生する可能性が高い。このような不特定なリスクが高い状況にて車載システム10による自動的な追越制御を実施すると、追越の際の車線変更がスムーズに実行されない可能性があった。
【0104】
そこで、本実施形態は、上記のような課題を解決すべく、所定の場合、追越制御を制限する。ここにいう「所定の場合」とは、下記のいずれかの場合である。
・再車線変更地点が、運転自動化レベルが変化する移行領域まで所定距離以内または所定時間以内である場合。ここで、「再車線変更地点」は、再車線変更を行う予定の地点である。「再車線変更」は、追越制御開始前の自車両の走行中車線である自車線から、追越のために隣接車線である変更先車線に車線変更した後に、かかる変更先車線から自車線に復帰するための車線変更であり、追越のための2回目の車線変更とも称され得る。
・再車線変更地点における車線変更先領域に合流地点またはカーブ地点が存在する場合。
【0105】
具体的には、例えば、本実施形態は、自車両の走行状況が、かかる「所定の場合」に該当する「特定シーン」である場合、追越制御の開始を不許可とする、および/または、一旦開始した追越制御をキャンセルする。本実施形態によれば、追越制御中の車線変更を安定的に実施することで、車載システム10による自動的な追越制御が可能な車両の利便性が向上する。
【0106】
また、追越のための自車線からの1回目の車線変更における変更先車線が、周辺車両義務のある運転自動化レベルのみに対応した車線(例えば追越車線)である場合、追越を実行するためには、自動運転を中断または終了して運転交代する必要がある。このため、このような場合に車載システム10によりせっかく追越提案を行っても、提案承認により自動運転が継続できなくなってしまい、かえってドライバにとって利便性が悪くなることがあった。
【0107】
そこで、本実施形態は、追越のための1回目の車線変更の際の車線変更先である隣接車線が、周辺監視義務のない自動運転が可能な車線であることを条件として、周辺監視義務のない自動運転中にドライバに追越提案を行う。これにより、車載システム10による自動的な追越制御が可能な車両の利便性が向上する。
【0108】
また、追越制御中の1回目の車線変更よりも、追越開始前の自車線に復帰する2回目の車線変更の方が、比較的安全である。そこで、本実施形態は、追越制御中の1回目の車線変更の際にドライバに周辺監視を促す報知の方が、2回目の車線変更の際にドライバに周辺監視を促す報知よりも強く報知する。これにより、追越制御の進行状況に応じた、適切な態様でのドライバへの注意喚起が可能となる。
【0109】
図9および
図10は、本実施形態に対応するフローチャートである。
図9に示されたフローチャートは、追越提案に関する処理を対応する。
図10に示されたフローチャートは、ドライバが追越提案を承認して追越制御が開始した際の処理に対応する。本実施形態に係る処理も、上記第一形態と同様に、1つ以上のプロセッサと、1つ以上のメモリとによって実現される。
【0110】
図9に示されたプログラムは、自動運転中であり、車線変更制御中でも追越制御中でもなく、運転交代のための移行領域まで所定距離以内または所定時間以内でもない状況にて、所定時間間隔で繰り返し起動される。
図9に示されたプログラムが起動されると、まず、ステップ901にて、プロセッサは、自車線が走行車線であるか否かを判定する。
【0111】
例えば、自車両が、複数の自動運転可能道路同士が交差するジャンクションにて本線車道から分岐する分岐路すなわちランプウェイを現在走行中である場合がある。この場合、自車両は、自動運転中であるものの、走行車線を走行中ではない。また、この場合は、仮に低速走行中の先行車両が存在していても、追越提案をすべきではない。そこで、この場合(すなわちステップ901=NO)、プロセッサは、ステップ902以降の処理をすべてスキップして、本プログラムを一旦終了する。
【0112】
自車線が走行車線である場合(すなわちステップ901=YES)、プロセッサは、処理をステップ902に進行させる。ステップ902にて、プロセッサは、自車線における自車両の前方であって自車両から所定距離範囲内に先行車両が存在するか否かを判定する。このような先行車両が存在しない場合(すなわちステップ902=NO)、現時点にて自車両は追越シーンにはない。そこで、この場合、プロセッサは、ステップ903以降の処理をすべてスキップして、本プログラムを一旦終了する。
【0113】
自車線における自車両の前方であって自車両から所定距離範囲内に先行車両が存在する場合(すなわちステップ902=YES)、プロセッサは、処理をステップ903に進行させる。ステップ903にて、プロセッサは、かかる先行車両に自車両が追い付く予定であるか否かを判定する。
【0114】
先行車両が自車両の設定車速に対して相対的に低速走行中ではなく、且つ、自車両が、かかる先行車両を追従対象とする車間距離制御中である場合、かかる先行車両に自車両が追い付くシーンではない。そこで、この場合(すなわちステップ903=NO)、プロセッサは、ステップ904以降の処理をすべてスキップして、本プログラムを一旦終了する。
【0115】
先行車両に自車両が追い付く予定である場合(すなわちステップ903=YES)、現時点にて自車両は追越シーンにある。そこで、この場合、プロセッサは、処理をステップ904に進行させる。ステップ904にて、プロセッサは、かかる先行車両を追い越す場合の、自車線からの車線変更先が、走行車線であるか否かを判定する。
【0116】
変更先車線が走行車線である場合(すなわちステップ904=YES)、プロセッサは、ステップ905の処理を実行した後、本プログラムを終了する。ステップ905にて、プロセッサは、ドライバへの追越提案を実行する。ドライバが、かかる追越提案を承認すると、プロセッサは、自動運転を維持しつつ、追越制御を開始する。
【0117】
これに対し、変更先車線が追越車線である場合(すなわちステップ904=NO)、プロセッサは、ステップ906の処理を実行した後、本プログラムを終了する。ステップ906にて、プロセッサは、ドライバに対し、SAEレベル2への移行、および、移行後の自動追越制御実施を提案する。
【0118】
図10は、ステップ905の処理が実行された後の処理を示す。まず、ステップ1001にて、プロセッサは、追越前の自車線からの1回目の車線変更を開始する旨の報知を実行する。
【0119】
次に、ステップ1002にて、プロセッサは、車線変更の際にドライバに周辺監視を促す報知を実行する。ステップ1002における報知は、比較的強めに行われる。すなわち、ステップ1002における報知は、比較的大きめのボリュームで音声出力されるとともに、比較的目立つ態様で表示される。
【0120】
続いて、ステップ1003にて、プロセッサは、1回目の車線変更が完了したか否かを判定する。1回目の車線変更が完了するまでは(すなわちステップ1003=NO)、プロセッサは、ステップ1003の処理を繰り返す。1回目の車線変更が完了すると、プロセッサは、処理をステップ1004に進行させる。
【0121】
ステップ1004にて、プロセッサは、追越対象の先行車両であった他車両の追い抜きが完了したか否かを判定する。すなわち、プロセッサは、自車両が追越前の自車線に復帰するための2回目の車線変更を良好に実施可能な程度まで、自車両と当該他車両との車間距離が形成されたか否かを判定する。追い抜きが完了するまでは(すなわちステップ1004=NO)、プロセッサは、ステップ1004の処理を繰り返す。追い抜きが完了すると、プロセッサは、処理をステップ1005~ステップ1007に進行させる。
【0122】
ステップ1005にて、プロセッサは、2回目の車線変更を開始する旨の報知を実行する。ステップ1006にて、プロセッサは、車線変更の際にドライバに周辺監視を促す報知を実行する。ステップ1006における報知は、ステップ1002における報知よりも弱めに行われる。ステップ1007にて、プロセッサは、2回目の車線変更が完了したか否かを判定する。2回目の車線変更が完了するまでは(すなわちステップ1007=NO)、プロセッサは、処理をステップ1007からステップ1008に進行させる。
【0123】
ステップ1008にて、プロセッサは、自車両の走行状況が「特定シーン」に該当するか否かを判定する。自車両の走行状況が「特定シーン」に該当しない場合(すなわちステップ1008=NO)、プロセッサは、処理をステップ1007に戻す。自車両の走行状況が「特定シーン」に該当しないまま、2回目の車線変更が完了すると(すなわちステップ1007=YES)、プロセッサは、追越制御を終了する。
【0124】
これに対し、自車両の走行状況が「特定シーン」に該当する場合(すなわちステップ1008=YES)、プロセッサは、ステップ1009およびステップ1010の処理を実行した後、追越制御を終了する。ステップ1009にて、プロセッサは、追越制御をキャンセルするとともに、追越制御のキャンセルのために必要な車両制御を開始する。ステップ1010にて、プロセッサは、追越制御をキャンセルしたことをドライバに報知する。
【0125】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。故に、上記実施形態に対しては、適宜変更が可能である。以下、代表的な変形例について説明する。以下の変形例の説明においては、上記実施形態との相違点を主として説明する。また、上記実施形態と変形例とにおいて、相互に同一または均等である部分には、同一符号が付されている。したがって、以下の変形例の説明において、上記実施形態と同一の符号を有する構成要素に関しては、技術的矛盾または特段の追加説明なき限り、上記実施形態における説明が適宜援用され得る。
【0126】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な装置構成に、何ら限定されるものではない。すなわち、例えば、車載システム10を搭載する車両は、四輪自動車に限定されない。具体的には、かかる車両は、三輪自動車であってもよいし、貨物トラック等の六輪または八輪自動車であってもよい。車両の種類は、内燃機関のみを備えたコンベンショナル自動車であってもよいし、内燃機関を備えない電気自動車あるいは燃料電池車であってもよいし、いわゆるハイブリッド車であってもよい。車両における車体の形状および構造も、箱状すなわち平面視における略矩形状に限定されない。車両の用途、ステアリングホイール211あるいは運転席の位置、乗員数、等についても、特段の限定はない。
【0127】
上記実施形態においては、車載システム10は、所定の自動運転可能道路を法定速度域にて走行するという条件で実行される、SAEレベル3に対応する自動運転を実行可能に構成されている。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、本発明は、他の種類の自動運転に対しても、良好に適用可能である。
【0128】
上記実施形態においては、車載システム10は、SAEレベル1~3に対応する車両制御動作を実行可能に構成されている。具体的には、車載システム10は、SAEレベル2以上の運転自動化レベルとして、SAEレベル2のハンズオン運転と、SAEレベル2のハンズオフ運転と、SAEレベル3の低速自動運転とのうちのいずれか1つを、択一的に実行可能であった。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。すなわち、例えば、本発明は、SAEレベル1~5に対応する車両制御動作を実行可能な場合にも、好適に適用され得る。また、本発明における運転自動化のレベルあるいはカテゴリも、「SAE J3016」に規定されたものに限定されない。
【0129】
具体的には、上記実施形態における「自動運転」は、「SAE J3016」におけるレベル3~5に該当する、運転自動化システムが全ての動的運転タスクを担当すなわち実行する運転自動化レベルである。このため、上記実施形態における「自動運転」の定義には、ドライバに周辺監視義務が課されていないことが、当然に含まれている。しかしながら、本発明は、かかる態様に限定されない。
【0130】
すなわち、例えば、「自動運転」の定義内容によっては、「周辺監視義務がない自動運転」のみならず、「周辺監視義務がある自動運転」をも概念し得ることとなる。具体的には、例えば、上記実施形態における、ハンズオン運転およびハンズオフ運転は、「周辺監視義務がある自動運転」と解釈することも可能である。この場合の「自動運転」は、ドライバが周辺監視義務等の一部の動的運転タスクを担当すなわち実行する、いわゆる「部分自動運転」をも含む概念となる。「部分自動運転」は、「高度運転支援」と実質的に同義であると評価することが可能である。
【0131】
上記の通り、各国の道路交通制度においては、自動運転の種類および条件(例えば、実行可能道路、走行速度域、車線変更可否、等。)について、国内事情等に応じた適宜の考慮がなされ得る。このため、本発明は、各国の道路交通制度に適合した仕様で実施され得る。
【0132】
車載システム10を構成する通信規格としては、CAN(国際登録商標)以外のもの、例えば、FlexRay(国際登録商標)等も採用され得る。また、車載システム10を構成する通信規格は、一種類に限定されない。例えば、車載システム10は、LIN等の通信規格に準拠したサブネットワーク回線を有していてもよい。LINはLocal Interconnect Networkの略である。
【0133】
車両状態センサ11、外界状態センサ12、および周辺監視センサ13についても、上記の例示に限定されない。例えば、周辺監視センサ13は、ソナーすなわち超音波センサを含んだ構成であってもよい。あるいは、周辺監視センサ13は、ミリ波レーダセンサ、サブミリ波レーダセンサ、レーザレーダセンサ、および超音波センサのうちの2種類以上を備えていてもよい。各種センサの設置個数についても特段の限定はない。
【0134】
ロケータ14についても、上記の例示に限定されない。例えば、ロケータ14は、ジャイロセンサおよび加速度センサを内蔵した構成ではなくてもよい。具体的には、慣性取得部142は、車両状態センサ11としてロケータ14の外部に設けられた角速度センサおよび加速度センサからの出力信号を受信するようになっていてもよい。
【0135】
通信モジュール15は、省略され得る。すなわち、交通情報は、ナビゲーション装置16によって取得され得る。あるいは、ナビゲーション装置16は、ロケータ14および通信モジュール15を含んだ構成を有していてもよい。
【0136】
ナビゲーション装置16は、車載通信回線10Aとは異なるサブ通信回線を介して情報通信可能に、HMI制御装置27と接続されていてもよい。
【0137】
ナビゲーション装置16は、HMI装置20とは別の、ナビゲーション画面表示専用の表示画面を有していてもよい。あるいは、ナビゲーション装置16は、HMI装置20の一部を構成するものとして設けられていてもよい。具体的には、例えば、ナビゲーション装置16は、CID装置23と一体化されてもよい。
【0138】
ドライバ状態検出部17は、車載通信回線10Aとは異なるサブ通信回線を介して情報通信可能に、HMI制御装置27と接続されていてもよい。
【0139】
ドライバ状態検出部17は、ドライバの視線あるいは顔の向きを画像認識により検出する構成に限定されない。すなわち、例えば、ドライバ状態検出部17は、ドライバの着座姿勢およびステアリングホイール把持状態を、画像センサとは異なる種類のセンサにより検出する構成を有していてもよい。
【0140】
HMI装置20は、メータパネル22とCID装置23とHUD装置24とを備えた構成に限定されない。すなわち、例えば、HMI装置20は、CID装置23および/またはHUD装置24を備えていなくてもよい。
【0141】
メータ221とメータディスプレイ222とは、1つの表示デバイスによって実現され得る。この場合、メータ221は、液晶または有機ELディスプレイである1つの表示デバイスにおける左右両端部の表示領域として設けられ得る。すなわち、メータ221は、タコメータ、スピードメータ、水温計、等に対応する、ベゼル、指針、目盛、等を、画像表示することによって実現され得る。また、メータディスプレイ222は、かかる表示デバイスにおける、メータ221以外の表示領域として設けられ得る。
【0142】
入力デバイス232は、CIDディスプレイ231と重畳されるタッチパネルに代えて、あるいはこれとともに、ドライバの手元で操作されるポインティングデバイス等を有していてもよい。入力デバイス232は、ドライバの発話を検出する音声入力装置を有していてもよい。
【0143】
上記実施形態において、運転制御装置18およびHMI制御装置27は、CPU等を備えた、いわゆる車載マイクロコンピュータとしての構成を有していた。しかしながら、本発明は、かかる構成に限定されない。
【0144】
例えば、運転制御装置18の全部または一部は、上記のような動作を可能に構成されたデジタル回路、例えばASICあるいはFPGAを備えた構成であってもよい。ASICはApplication Specific Integrated Circuitの略である。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略である。すなわち、運転制御装置18において、車載マイクロコンピュータ部分とデジタル回路部分とは併存し得る。HMI制御装置27についても同様である。
【0145】
上記実施形態にて説明した、各種の動作、手順、あるいは処理を実行可能とする、本発明に係るプログラムは、通信モジュール15等によるV2X通信を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。V2XはVehicle to Xの略である。あるいは、かかるプログラムは、車両の製造工場、整備工場、販売店、等に設けられた端末機器を介して、ダウンロードあるいはアップグレードされ得る。かかるプログラムの格納先は、メモリーカード、光学ディスク、磁気ディスク、等であってもよい。
【0146】
このように、上記の各機能構成および方法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、上記の各機能構成および方法は、一つあるいは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移的実体的記憶媒体に記憶されていてもよい。すなわち、上記の各機能構成および方法は、これを実現するための手順を含むコンピュータプログラム、あるいは、当該プログラムを記憶した非遷移的実体的記憶媒体としても表現可能である。
【0147】
本発明は、上記実施形態にて示された具体的な動作例に限定されない。例えば、本発明は、複数のプロセッサと複数のメモリとにより実現される態様に限定されない。すなわち、本発明は、1つのプロセッサと1つのメモリとによっても実現可能である。具体的には、例えば、本発明に係る処理は、すべて運転制御装置18により実行されるものと把握することが可能である。換言すれば、各種報知を実行するための処理は、報知情報生成部1809による処理として把握することが可能である。
【0148】
「取得」「算出」「推定」「検出」「検知」「決定」等の類似の表現は、技術的に矛盾しない範囲内において、相互に適宜置換可能である。「検出」あるいは「検知」と「抽出」とも、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜置換可能である。同様に、「所定値以内」と「所定値未満」とは、適宜置換可能である。
【0149】
上記実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、構成要素の個数、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数値に限定される場合等を除き、その特定の数値に本発明が限定されることはない。同様に、構成要素等の形状、方向、位置関係等が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に特定の形状、方向、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、方向、位置関係等に本発明が限定されることはない。
【0150】
変形例も、上記の例示に限定されない。例えば、複数の実施形態が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。また、複数の変形例が、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。さらに、上記実施形態の全部または一部と、変形例の全部または一部とが、技術的に矛盾しない限り、互いに組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0151】
10 車載システム
18 運転制御装置(制御装置)
181 運転制御プロセッサ(プロセッサ)
182 運転制御メモリ(メモリ)
20 HMI装置
27 HMI制御装置(制御装置)
271 HCUプロセッサ(プロセッサ)
272 HCUメモリ(メモリ)