(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】地物データ収集装置、地物データ収集方法及び地物データ収集用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20240730BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20240730BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G08G1/01 A
G08G1/13
(21)【出願番号】P 2021119674
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅浩
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-249479(JP,A)
【文献】特開2020-038362(JP,A)
【文献】特開2011-017989(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181974(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180097(WO,A1)
【文献】特開2020-046411(JP,A)
【文献】吉田光伸 ほか,モービルマッピングシステム,三菱電機技報,三菱電機エンジニアリング株式会社,2007年08月25日,第81巻,第8号,pp.15-18
【文献】望月理香 ほか,地図自動生成に向けた道路標識の位置推定に関する検討,映像情報メディア学会 2019年年次大会講演予稿集,2019年,p. 34C-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00 - 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行に関連する地物について、位置ごとに、当該位置に前記地物が存在する信頼度を表す確率分布を含む地図情報を記憶する記憶部と、
1以上の車両の何れかから、当該車両と通信可能な通信部を介して前記地物の位置を表す地物データを受信する度に、受信した前記地物データを前記記憶部に記憶する受信処理部と、
受信した1以上の前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置に基づいて、前記確率分布を更新する更新部と、
更新された前記確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる場合、前記1以上の車両に対して前記通信部を介して前記地物データの収集を停止する指示を送信する収集停止指示部と、
を有
し、
前記地物データは、当該地物データを生成した車両と当該地物データに表される前記地物の位置間の距離を表す情報をさらに含み、
前記更新部は、前記距離が小さいほど前記確率分布の更新に対する前記地物データの寄与を大きくする地物データ収集装置。
【請求項2】
車両の走行に関連する地物について、位置ごとに、当該位置に前記地物が存在する信頼度を表す確率分布を含む地図情報を記憶する記憶部と、
1以上の車両の何れかから、当該車両と通信可能な通信部を介して前記地物の位置を表す地物データを受信する度に、受信した前記地物データを前記記憶部に記憶する受信処理部と、
受信した1以上の前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置に基づいて、前記確率分布を更新する更新部と、
更新された前記確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる場合、前記1以上の車両に対して前記通信部を介して前記地物データの収集を停止する指示を送信する収集停止指示部と、
を有し、
前記確率分布は正規分布で表され、前記収集停止指示部は、更新された前記確率分布における何れの方向についての分散値も所定の分散閾値以下となる場合、更新された前記確率分布の広がり度合いが
前記所定の閾値以下となると判定す
る、地物データ収集装置。
【請求項3】
前記確率分布は正規分布で表され、前記収集停止指示部は、更新された前記確率分布における位置の平均値における信頼度が所定の信頼度閾値以上となる場合、更新された前記確率分布の広がり度合いが
前記所定の閾値以下となると判定する、請求項
1に記載の地物データ収集装置。
【請求項4】
1以上の車両の何れかから、当該車両と通信可能な通信部を介して車両の走行に関連する地物の位置を表す地物データを受信する度に、受信した前記地物データを記憶部に記憶し、
受信した1以上の前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置に基づいて、地図情報に含まれる、位置ごとに、当該位置に前記地物が存在する信頼度を表す確率分布を更新し、
更新された前記確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる場合、前記1以上の車両に対して前記通信部を介して前記地物データの収集を停止する指示を送信する、
ことを含
み、
前記地物データは、当該地物データを生成した車両と当該地物データに表される前記地物の位置間の距離を表す情報をさらに含み、
前記確率分布を更新することは、前記距離が小さいほど前記確率分布の更新に対する前記地物データの寄与を大きくすることを含む、
地物データ収集方法。
【請求項5】
1以上の車両の何れかから、当該車両と通信可能な通信部を介して車両の走行に関連する地物の位置を表す地物データを受信する度に、受信した前記地物データを記憶部に記憶し、
受信した1以上の前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置に基づいて、地図情報に含まれる、位置ごとに、当該位置に前記地物が存在する信頼度を表す確率分布を更新し、
更新された前記確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる場合、前記1以上の車両に対して前記通信部を介して前記地物データの収集を停止する指示を送信する、
ことを含み、
前記確率分布は正規分布で表され、前記指示を送信することは、更新された前記確率分布における何れの方向についての分散値も所定の分散閾値以下となる場合、更新された前記確率分布の広がり度合いが前記所定の閾値以下となると判定することを含む、
地物データ収集方法。
【請求項6】
1以上の車両の何れかから、当該車両と通信可能な通信部を介して車両の走行に関連する地物の位置を表す地物データを受信する度に、受信した前記地物データを記憶部に記憶し、
受信した1以上の前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置に基づいて、地図情報に含まれる、位置ごとに、当該位置に前記地物が存在する信頼度を表す確率分布を更新し、
更新された前記確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる場合、前記1以上の車両に対して前記通信部を介して前記地物データの収集を停止する指示を送信する、
ことをコンピュータに実行さ
せ、
前記地物データは、当該地物データを生成した車両と当該地物データに表される前記地物の位置間の距離を表す情報をさらに含み、
前記確率分布を更新することは、前記距離が小さいほど前記確率分布の更新に対する前記地物データの寄与を大きくすることを含む、地物データ収集用コンピュータプログラム。
【請求項7】
1以上の車両の何れかから、当該車両と通信可能な通信部を介して車両の走行に関連する地物の位置を表す地物データを受信する度に、受信した前記地物データを記憶部に記憶し、
受信した1以上の前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置に基づいて、地図情報に含まれる、位置ごとに、当該位置に前記地物が存在する信頼度を表す確率分布を更新し、
更新された前記確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる場合、前記1以上の車両に対して前記通信部を介して前記地物データの収集を停止する指示を送信する、
ことをコンピュータに実行させ、
前記確率分布は正規分布で表され、前記指示を送信することは、更新された前記確率分布における何れの方向についての分散値も所定の分散閾値以下となる場合、更新された前記確率分布の広がり度合いが前記所定の閾値以下となると判定することを含む、地物データ収集用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図に表される地物のデータを収集する地物データ収集装置、地物データ収集方法及び地物データ収集用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転システムが車両を自動運転制御するために参照する高精度な地図には、道路または道路の周囲に設けられた、車両の走行に関連する地物に関する情報を正確に表していることが求められる。そこで、実際に道路を走行する車両から、地物を表すデータが収集される。その収集の際に、車両と地物を表すデータを収集する装置との間の通信負荷を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された技術では、サーバ装置は、第1移動体の周辺の状態と地図とに基づく自動運転が可能な第1移動体から自動運転の状況を示す情報を受信する。そしてサーバ装置は、第1移動体が移動した場所の状態を示す状態情報の送信が可能な第2移動体へ、状態情報の要求を送信し、受信された状況情報が、自動運転が可能であったことを示す場合、要求の送信を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地図に表される各地物の位置について正確性を担保できるよう、地図を更新するためには、地物ごとに、その地物を表すデータが一定数以上収集されることが望ましい。しかし、場所ごとの車両の通行頻度または収集環境などの影響により、地物ごとに、その地物を表すデータの収集速度が異なることがある。また、地物を表すデータに含まれる、その地物の位置の精度が一定でないため、十分な位置の精度が得られるまでに必要となる、地物を表すデータの数が、地物ごとに異なることがある。そのため、各地物に対してその地物を表すデータの収集を終了するタイミングを適切に設定することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、地物ごとに、その地物を表すデータの収集を停止するタイミングを適切に設定することが可能な地物データ収集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、地物データ収集装置が提供される。この地物データ収集装置は、車両の走行に関連する地物について、位置ごとに、その位置に地物が存在する信頼度を表す確率分布を含む地図情報を記憶する記憶部と、1以上の車両の何れかから、その車両と通信可能な通信部を介して地物の位置を表す地物データを受信する度に、受信した地物データを記憶部に記憶する受信処理部と、受信した1以上の地物データのそれぞれに表される地物の位置に基づいて、位置ごとの地物が存在する信頼度を表す確率分布を更新する更新部と、更新された確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる場合、1以上の車両に対して通信部を介して地物データの収集を停止する指示を送信する収集停止指示部とを有する。
【0008】
この地物データ収集装置において、地物データは、その地物データを生成する車両とその地物データに表される地物の位置間の距離を表す情報をさらに含み、更新部は、その距離が小さいほど確率分布の更新に対するその地物データの寄与を大きくすることが好ましい。
【0009】
また、この地物データ収集装置において、確率分布は正規分布で表され、収集停止指示部は、更新された確率分布における何れの方向についての分散値も所定の分散閾値以下となる場合、更新された確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となると判定することが好ましい。
【0010】
あるいは、この地物データ収集装置において、確率分布は正規分布で表され、収集停止指示部は、更新された確率分布における位置の平均値における信頼度が所定の信頼度閾値以上となる場合、更新された確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となると判定することが好ましい。
【0011】
他の形態によれば、地物データ収集方法が提供される。この地物データ収集方法は、1以上の車両の何れかから、その車両と通信可能な通信部を介して車両の走行に関連する地物の位置を表す地物データを受信する度に、受信した地物データを記憶部に記憶し、受信した1以上の地物データのそれぞれに表される地物の位置に基づいて、地図情報に含まれる、位置ごとに、その位置に地物が存在する信頼度を表す確率分布を更新し、更新された確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる場合、1以上の車両に対して通信部を介して地物データの収集を停止する指示を送信する、ことを含む。
【0012】
さらに他の形態によれば、地物データ収集用コンピュータプログラムが提供される。この地物データ収集用コンピュータプログラムは、1以上の車両の何れかから、その車両と通信可能な通信部を介して車両の走行に関連する地物の位置を表す地物データを受信する度に、受信した地物データを記憶部に記憶し、受信した1以上の地物データのそれぞれに表される地物の位置に基づいて、地図情報に含まれる、位置ごとに、その位置に地物が存在する信頼度を表す確率分布を更新し、更新された確率分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる場合、1以上の車両に対して通信部を介して地物データの収集を停止する指示を送信する、ことをコンピュータに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る地物データ収集装置は、地物ごとに、その地物を表すデータの収集を停止するタイミングを適切に設定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】地物データ収集装置が実装される地物データ収集システムの概略構成図である。
【
図3】データ取得装置のハードウェア構成図である。
【
図4】地物データ収集装置の一例であるサーバのハードウェア構成図である。
【
図5】地物データ収集処理に関する、サーバのプロセッサの機能ブロック図である。
【
図6】地物の位置についての信頼度分布を表す模式図である。
【
図7】地物データ収集処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、地物データ収集装置、及び、地物データ収集装置にて実行される地物データ収集方法ならびに地物データ収集用コンピュータプログラムについて説明する。この地物データ収集装置は、所定の領域について、通信可能な1以上の車両から、車両の走行に関連する地物を表すデータ(以下、地物データと呼ぶ)を収集する。
【0016】
この地物データ収集装置は、各地物の位置を、位置ごとに、その位置にその地物が存在する確からしさである信頼度を表した確率分布(以下、信頼度分布と呼ぶ)で表す。この地物データ収集装置は、地物ごとに、その地物について受信した地物データに表される地物の位置を用いてその地物についての信頼度分布を更新する。そしてこの地物データ収集装置は、信頼度分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる地物について、地物データの収集を停止する。
【0017】
なお、検出対象となる地物には、例えば、各種の道路標識、各種の道路標示、信号機及びその他の車両の走行に関連する地物が含まれる。
【0018】
図1は、地物データ収集装置が実装される地物データ収集システムの概略構成図である。本実施形態では、地物データ収集システム1は、少なくとも一つの車両2と、地物データ収集装置の一例であるサーバ3とを有する。各車両2は、例えば、サーバ3が接続される通信ネットワーク4とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。なお、
図1では、簡単化のため、一つの車両2のみが図示されているが、地物データ収集システム1は、複数の車両2を有していてもよい。同様に、
図1では、一つの無線基地局5のみが図示されているが、複数の無線基地局5が通信ネットワーク4に接続されていてもよい。また、サーバ3は、通信ネットワークを介して交通情報を管理する交通情報サーバ(図示せず)と通信可能に接続されていてもよい。
【0019】
図2は、車両2の概略構成図である。車両2は、カメラ11と、GPS受信機12と、無線通信端末13と、データ取得装置14とを有する。カメラ11、GPS受信機12、無線通信端末13及びデータ取得装置14は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。また、車両2は、車両2の走行予定ルートを探索し、その走行予定ルートに従って車両2が走行するようナビゲートするナビゲーション装置(図示せず)をさらに有してもよい。
【0020】
カメラ11は、車両2の周囲を撮影するための撮像部の一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ11は、例えば、車両2の前方を向くように、例えば、車両2の車室内に取り付けられる。そしてカメラ11は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両2の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ11により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両2には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラ11が設けられてもよい。
【0021】
カメラ11は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してデータ取得装置14へ出力する。
【0022】
GPS受信機12は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。そしてGPS受信機12は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してデータ取得装置14へ出力する。なお、車両2はGPS受信機12以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0023】
無線通信端末13は、通信部の一例であり、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。そして無線通信端末13は、データ取得装置14から受け取った、地物データなどを含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末13は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局5へ送信することで、地物データ及び走行情報などをサーバ3へ送信する。また、無線通信端末13は、無線基地局5からダウンリンクの無線信号を受信して、その無線信号に含まれる、サーバ3からの収集指示あるいは収集停止指示などをデータ取得装置14あるいは車両2の走行を制御する電子制御装置(ECU、図示せず)へわたす。
【0024】
図3は、データ取得装置のハードウェア構成図である。データ取得装置14は、カメラ11により生成された画像に基づいて地物データを生成する。さらに、データ取得装置14は、車両2の走行情報を生成する。そのために、データ取得装置14は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。
【0025】
通信インターフェース21は、車内通信部の一例であり、データ取得装置14を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。すなわち、通信インターフェース21は、車内ネットワークを介して、カメラ11、GPS受信機12及び無線通信端末13と接続される。そして通信インターフェース21は、カメラ11から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、GPS受信機12から測位情報を受信する度に、受信した測位情報をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、無線通信端末13を介してサーバ3から受信した、地物データの収集指示及び収集停止指示をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、プロセッサ23から受け取った、地物データを、車内ネットワークを介して無線通信端末13へ出力する。
【0026】
メモリ22は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ22は、ハードディスク装置といった他の記憶装置をさらに有してもよい。そしてメモリ22は、データ取得装置14のプロセッサ23により実行される地物データ生成に関連する処理において使用される各種のデータを記憶する。そのようなデータには、例えば、道路地図、車両2の識別情報、カメラ11の設置高さ、撮影方向及び画角といったカメラ11のパラメータ、及び、画像から地物を検出するための識別器を特定するためのパラメータセットなどが含まれる。なお、道路地図は、例えば、ナビゲーション装置で利用される地図とすることができ、その道路地図に表される領域に含まれる各道路区間の位置、長さ、個々の交差点における道路区間の接続関係などの情報を有する。また、メモリ22は、カメラ11から受信した画像、及び、GPS受信機12から受信した測位情報を一定期間記憶してもよい。さらに、メモリ22は、地物データの収集指示にて指定された、地物データの生成及び収集対象となる領域(以下、収集対象領域と呼ぶことがある)を表す情報、及び、収集停止指示にて指定された、地物データの収集を停止する領域(以下、収集停止領域と呼ぶことがある)を表す情報を記憶する。さらにまた、メモリ22は、プロセッサ23で実行される各処理を実現するためのコンピュータプログラムなどを記憶してもよい。
【0027】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、カメラ11から受信した画像、GPS受信機12から受信した測位情報をメモリ22に記憶する。さらに、プロセッサ23は、車両2が走行している間、所定の周期(例えば、0.1秒~10秒)ごとに、地物データ生成に関連する処理を実行する。
【0028】
プロセッサ23は、地物データ生成に関連する処理として、例えば、GPS受信機12から受信した測位情報で表される車両2の自車位置が収集対象領域に含まれるか否か判定する。そしてプロセッサ23は、自車位置が収集対象領域に含まれる場合、カメラ11から受信した画像に基づいて地物データを生成する。
【0029】
例えば、プロセッサ23は、カメラ11から受信した画像を、検出対象となる地物を検出するように予め学習された識別器に入力することで、入力された画像(以下、単に入力画像と呼ぶことがある)に表された地物を検出する。そしてプロセッサ23は、検出した地物の種類を表す情報を地物データとして生成する。プロセッサ23は、そのような識別器として、例えば、入力画像から、その入力画像に表された地物を検出するように予め学習されたディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。そのようなDNNとして、例えば、Single Shot MultiBox Detector(SSD)またはFaster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つDNNが用いられる。この場合、識別器は、入力画像上の様々な領域において、検出対象となる地物の種類(例えば、車線区画線、横断歩道、一時停止線など)ごとに、その地物がその領域に表されている確からしさを表す確信度を算出する。識別器は、何れかの種類の地物についての確信度が所定の検出閾値以上となる領域に、その種類の地物が表されていると判定する。そしてその識別器は、入力画像上で検出対象となる地物が含まれる領域(例えば、検出対象となる地物の外接矩形、以下、物体領域と呼ぶ)を表す情報、及び、物体領域に表された地物の種類を表す情報を出力する。そこで、プロセッサ23は、検出された物体領域に表された地物の種類を表す情報を含むように地物データを生成すればよい。
【0030】
さらに、プロセッサ23は、地物データに表される地物の実空間における位置を特定し、その位置を表す情報を地物データに含める。ここで、画像上の各画素の位置は、カメラ11からその画素に表された物体への方位と1対1に対応する。そこで、プロセッサ23は、画像から検出された物体領域の重心に対応する、カメラ11からの方位、地物データの生成に用いられた画像が生成されたときの車両2の自車位置、進行方向及びカメラ11の撮影方向、画角及び設置高さといったパラメータに基づいて、その物体領域に表された地物の位置を推定する。その際、プロセッサ23は、地物データの生成に用いられた画像の生成時に最も近いタイミングでGPS受信機12から受信した測位情報で表される位置を、車両2の自車位置とすることができる。あるいは、ECU(図示せず)が車両2の自車位置を推定する場合には、プロセッサ23は、ECUから通信インターフェース21を介して、推定された車両2の自車位置を表す情報を取得してもよい。さらに、プロセッサ23は、ECU(図示せず)から、車両2の進行方向を表す情報を取得すればよい。あるいはまた、プロセッサ23は、いわゆるStructure from Motion (SfM)により、地物データに表される地物の位置を推定してもよい。この場合、プロセッサ23は、互いに異なるタイミングで得られた二つの画像間で、オプティカルフローを利用して同じ地物が表された物体領域同士を対応付ける。そしてプロセッサ23は、その二つの画像のそれぞれが得られたときの車両2の位置及び進行方向と、カメラ11のパラメータと、各画像における物体領域の位置とに基づいて、三角測量により、地物の位置を推定できる。
【0031】
プロセッサ23は、地物データに表される地物の位置を表す緯度及び経度を、地物データに表される地物の位置を表す情報として地物データに含める。さらに、プロセッサ23は、道路地図を参照して、地物データに表される地物の位置を含み、あるいは、その位置に最も近い道路区間であるリンクを特定する。そしてプロセッサ23は、特定したリンクの識別番号を地物データに含める。
【0032】
プロセッサ23は、さらに、地物データに、車両2の識別情報を含めてもよい。また、プロセッサ23は、地物データに、地物の位置の推定に利用される情報、例えば、カメラ11のパラメータ、及び、画像上での地物の位置を含めてもよい。さらに、プロセッサ23は、地物データに、地物の位置の推定の際に利用した、地物データ生成時の車両2の位置、進行方向、及び、車両2の自車位置の測位に利用されたGPS信号の受信強度を含めてもよい。そしてプロセッサ23は、地物データを生成する度に、その生成した地物データを、通信インターフェース21を介して無線通信端末13へ出力する。これにより、地物データがサーバ3へ送信される。なお、プロセッサ23は、地物データとは別個に、地物の位置の推定に利用される情報を車両2の識別情報とともに、無線通信端末13を介してサーバ3へ送信してもよい。
【0033】
変形例によれば、プロセッサ23は、カメラ11により生成された画像そのもの(以下、全体画像と呼ぶ)または全体画像から路面が表された領域を切り出すことで得られる部分画像を、地物データとしてもよい。この場合も、プロセッサ23は、サーバ3が全体画像または部分画像から地物の位置を検出できるように、地物データ生成時の車両2の位置、進行方向及びカメラ11のパラメータを地物データに含めてもよい。
【0034】
また、プロセッサ23は、検出された地物の位置が、サーバ3から受信した収集停止指示で指定された収集停止領域に含まれる場合、その地物の位置が収集対象領域に含まれるか否かにかかわらず、その地物についての地物データを生成しない。
【0035】
次に、地物データ収集装置の一例であるサーバ3について説明する。
図4は、地物データ収集装置の一例であるサーバ3のハードウェア構成図である。サーバ3は、通信インターフェース31と、ストレージ装置32と、メモリ33と、プロセッサ34とを有する。通信インターフェース31、ストレージ装置32及びメモリ33は、プロセッサ34と信号線を介して接続されている。サーバ3は、キーボード及びマウスといった入力装置と、液晶ディスプレイといった表示装置とをさらに有してもよい。
【0036】
通信インターフェース31は、通信部の一例であり、サーバ3を通信ネットワーク4に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース31は、車両2と、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース31は、車両2から無線基地局5及び通信ネットワーク4を介して受信した、地物データをプロセッサ34へわたす。また、通信インターフェース31は、プロセッサ34から受け取った収集指示及び収集停止指示を、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して車両2へ送信する。
【0037】
ストレージ装置32は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置32は、地図データ収集処理において使用される各種のデータ及び情報を記憶する。例えば、ストレージ装置32は、生成または更新対象となる地図、その地図に表される各地物の位置についての信頼度分布、及び、各車両2の識別情報を記憶する。なお、生成または更新対象となる地図は、各地物の位置についての信頼度分布を含む地図情報の一例である。さらにまた、ストレージ装置32は、各車両2から受信した地物データを記憶する。さらにまた、ストレージ装置32は、プロセッサ34上で実行される、地物データ収集処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。
【0038】
メモリ33は、記憶部の他の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ及び揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ33は、地物データ収集処理を実行中に生成される各種データなどを一時的に記憶する。
【0039】
プロセッサ34は、制御部の一例であり、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ34は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ34は、地物データ収集処理を実行する。
【0040】
図5は、地物データ収集処理に関連するプロセッサ34の機能ブロック図である。プロセッサ34は、収集指示部41と、受信処理部42と、更新部43と、収集停止指示部44とを有する。プロセッサ34が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ34上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ34が有するこれらの各部は、プロセッサ34に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0041】
収集指示部41は、車両2に対して、収集対象領域内に存在する地物についての地物データの収集を指示する収集指示を生成する。個々の収集対象領域は、例えば、生成または更新対象となる地図に表される全体領域を所定の長さ(例えば、数10m~数100m)ごとに格子状に分割することで設定される、複数の領域のうちの何れかとすることができる。ただしこの例に限られず、道路の密度が高い領域ほど収集対象領域の面積が狭くなるように個々の収集対象領域が設定されてもよい。あるいは、道路の特定の構造(例えば、交差点、合流または分岐)の密度が高い領域ほどその領域の面積が狭くなるように個々の収集対象領域が設定されてもよい。あるいはまた、各収集対象領域が一つの道路区間または一つの交差点を含むように、各収集対象領域が設定されてもよい。例えば、新規に地図が生成される場合、収集指示部41は、その地図に表される複数の領域のそれぞれを収集対象領域に設定する。あるいは、収集指示部41は、更新対象となる地図に表される複数の領域のうち、前回の更新から所定期間が経過した領域を、収集対象領域に設定してもよい。あるいはまた、収集指示部41は、入力装置を介して入力された、収集対象領域を指定する情報にしたがって、収集対象領域を設定してもよい。さらにまた、収集指示部41は、交通情報サーバから、工事が行われた地点を表す工事情報を受信すると、その工事が行われた地点を含む領域を、収集対象領域としてもよい。
【0042】
収集指示部41は、収集対象領域を特定する情報を含む収集指示を生成する。そして収集指示部41は、生成した収集指示を、通信インターフェース31を介して車両2へ送信する。
【0043】
受信処理部42は、車両2から、無線基地局5、通信ネットワーク4及び通信インターフェース31を介して地物データを受信する度に、受信した地物データをメモリ33またはストレージ装置32に保存する。また、受信処理部42は、受信した地物データを更新部43へわたす。
【0044】
更新部43は、収集対象領域内の各地物について、受信した1以上の地物データのそれぞれに表されるその地物の位置に基づいて、対応する地物の位置についての信頼度分布を更新する。なお、更新部43は、地物データを受信する度に、以下に説明する更新処理を実行してもよく、あるいは、更新部43は、2以上の所定数の地物データを受信する度に、更新処理を実行してもよい。
【0045】
本実施形態では、地物の位置についての信頼度確率分布は、路面に沿った2次元状の正規分布とすることができる。あるいは、その信頼度分布は、3次元状の正規分布であってもよい。そしてその信頼度分布は、上記のように、位置ごとに、その位置に地物が存在する信頼度を表す。
【0046】
更新部43は、受信した地物データに表される地物を、地図に表される各地物の何れかに対応付ける。その際、更新部43は、地物データに表される地物の位置が含まれる収集対象領域内に位置する、地図に表される地物ごとに、その地物について信頼度が最大となる位置、すなわち信頼度分布における平均値となる位置から、地物データに表される地物の位置までの距離を算出する。その距離は、マハラノビス距離で表されてもよい。そして更新部43は、地図に表される各地物のうち、算出した距離が最小となり、かつ、その距離が所定の距離閾値以下となるとともに、地物データに表される地物の種類と同じ種類の地物に、地物データに表された地物を対応付ける。
【0047】
更新部43は、受信した地物データに表された地物と対応付けられた、地図に表される地物について、その受信した地物データ及びそれまでに収集された各地物データに含まれる地物の位置に対して最尤推定することで、その地図に表された地物の位置についての信頼度分布を更新する。したがって、受信した地物データに表される位置についての信頼度が高くなるように、信頼度分布が更新される。
【0048】
あるいは、更新部43は、受信した地物データに表された地物と対応付けられた、地図に表される地物の位置についての信頼度分布をベイズ更新により更新してもよい。この場合、受信した地物データに表された地物と対応付けられた、地図に表される地物について、その地物が存在する可能性が有る範囲が、格子状の複数の区画に予め分割される。そして、区画ごとに、更新前の信頼度分布に従って、その地物が位置する信頼度が設定される。なお、信頼度の初期値として、各区画に同じ信頼度が設定されてもよく、あるいは、その地物が存在する可能性が高い区画ほど、高い信頼度が設定されもよい。更新部43は、地物データを受信すると、受信した地物データに表される地物の位置が含まれる区画の信頼度が高くなるように、各区画の信頼度を更新する。あるいは、更新部43は、受信した地物データに表される地物の位置から所定範囲内の各区画の信頼度が高くなるように、各区画の信頼度を更新してもよい。その際、更新部43は、その地物の位置に近い区画ほど、信頼度の上昇率を高くしてもよい。あるいはまた、更新部43は、区画ごとに、その区画を中心とし、かつ、更新前の確率分布の分散共分散行列を持つ確率分布を設定してもよい。そして更新部43は、各区画について、その区画の確率分布に基づいて、受信した地物データに表される地物の位置に対する、その区画に地物が存在する事後確率を算出し、その事後確率を、その区画の更新後の信頼度(すなわち、次回更新時のその区画の事前確率)としてもよい。そして更新部43は、各区画の信頼度を正規分布で近似することで、その地物の位置についての更新された信頼度分布を算出する。この場合、信頼度分布の更新に利用された地物データは廃棄されてもよいので、更新部43は、地物データの管理を簡単化できるとともに、地物データを記憶するためのメモリ容量も削減することができる。
【0049】
あるいは、更新部43は、地物ごとに、その地物の位置についての信頼度分布の複数の候補を設定してもよい。この場合、各候補は、位置の平均値と分散共分行列で表される正規分布とすることができる。そして更新部43は、地物データを受信すると、受信した地物データに表される地物の位置に対する、各候補の事後確率を算出し、その事後確率を、次回の更新の際の各候補の事前確率とする。更新部43は、事前確率が最大となる候補に相当する正規分布を、その地物の位置についての信頼度分布とする。この場合も、更新部43は、地物データの管理を簡単化できるとともに、地物データを記憶するためのメモリ容量も削減することができる。
【0050】
あるいはまた、更新部43は、収集対象領域単位で、その収集対象領域に含まれる、同種の複数の地物のそれぞれの信頼度分布を更新してもよい。この場合、同種の複数の地物のそれぞれの信頼度分布を含む混合正規分布が規定される。そして更新部43は、その収集対象領域について受信した地物データ及びそれまでに収集された地物データに表される地物の位置に対して期待値最大化アルゴリズムを適用することで、規定した混合正規分布を更新する。これにより、その更新された混合正規分布に含まれる、各地物の信頼度分布が更新される。この変形例によれば、更新部43は、収集対象領域内において密接して同種の複数の地物が存在する場合のように、受信した地物データに表される地物の対応付けが難しい場合でも、各地物の位置についての信頼度分布を適切に更新できる。
【0051】
更新部43は、位置についての信頼度分布が更新された地物について、その更新された信頼度分布を収集停止指示部44へ通知するとともに、ストレージ装置32に記憶する。
【0052】
収集停止指示部44は、位置についての信頼度分布が更新された地物について、その信頼度分布の広がり度合いに応じてその地物についての地物データの収集を停止するか否かを判定する。
【0053】
上記のように、位置についての信頼度分布が正規分布で表される場合、信頼度分布は、位置の平均値と分散共分散行列によって規定される。そしてその位置の平均値における信頼度が高いほど、あるいは、分散共分散行列の各要素の値が小さいほど、その信頼度分布の広がり度合いは小さくなる。そして信頼度分布の広がり度合いが小さいほど、正確な地物の位置が求められていることになる。そこで、収集停止指示部44は、位置についての信頼度分布が更新された地物について、更新された信頼度分布の広がり度合いがその広がり度合いに関する閾値以下となる場合、地物データの収集を停止する。具体的に、収集停止指示部44は、更新された信頼度分布を表す分散共分散行列における、各方向の分散値のうち、最大となる分散値が所定の分散閾値以下となる場合、信頼度分布の広がり度合いがその広がり度合いに関する閾値以下となると判定する。そして収集停止指示部44は、その地物について地物データの収集を停止する。あるいは、収集停止指示部44は、更新された信頼度分布を規定する位置の平均値における信頼度が所定の信頼度閾値以上となる場合、信頼度分布の広がり度合いがその広がり度合いに関する閾値以下となると判定する。そして収集停止指示部44は、その地物について地物データの収集を停止する。このように、地物データの収集の停止を判定することで、収集停止指示部44は、地物の位置が正確に求められたタイミングで地物データの収集を停止することができる。
【0054】
収集停止指示部44は、地物データの収集を停止すると判定した地物について、その地物の位置についての信頼度分布における、位置の平均値を中心とする所定範囲を収集停止領域に指定する。そして収集停止指示部44は、その収集停止領域を表す情報を含む収集停止指示を作成し、作成した収集停止指示を、通信インターフェース31を介して車両2へ送信する。これにより、収集停止領域内に位置する地物に関する地物データの収集が停止される。
【0055】
図6は、地物の位置についての信頼度分布を表す模式図である。
図6に示されるように、地物601に対して、その位置の平均値μ1を中心とする信頼度分布611が求められている。同様に、地物602及び地物603に対して、その位置の平均値μ2を中心とする信頼度分布612及びその位置の平均値μ3を中心とする信頼度分布613が求められている。なお、
図6の上側では、各信頼度分布について、マハラノビス距離が1となる範囲が示されており、
図6の下側では、各信頼度分布について、道路600の延伸方向に沿った位置ごとの信頼度が示されている。
【0056】
地物601については、道路600の延伸方向における、信頼度分布611の分散値σ1が、分散閾値Thσよりも大きい。また、位置の平均値μ1における信頼度c1は信頼度閾値Thcよりも小さい。そのため、地物601については地物データの収集が継続される。
【0057】
一方、地物602については、何れの方向についても、信頼度分布612の分散値σ2が、分散閾値Thσ以下となっている。そのため、信頼度分布612で表される地物602の位置は十分に確からしいと推定される。その結果として地物602については地物データの収集が停止される。
【0058】
また、地物603については、信頼度分布613の位置の平均値μ3における信頼度c3が、信頼度閾値Thc以上となっている。そのため、信頼度分布613で表される地物603の位置は十分に確からしいと推定される。その結果として地物603については地物データの収集が停止される。
【0059】
図7は、サーバ3における、地物データ収集処理の動作フローチャートである。サーバ3のプロセッサ34は、所定の周期ごとに、以下に示される動作フローチャートに従って地物データ収集処理を実行すればよい。
【0060】
プロセッサ34の受信処理部42は、車両2から受信した地物データを、メモリ33またはストレージ装置32に保存する(ステップS101)。また、プロセッサ34の更新部43は、受信した地物データに表される地物の位置及び種類に基づいて、その地物データに表される地物を、地図に表される何れかの地物に対応付ける(ステップS102)。そして更新部43は、その地物データに表される地物の位置に基づいて、対応付けられた地物の位置についての信頼度分布を更新する(ステップS103)。
【0061】
プロセッサ34の収集停止指示部44は、更新された信頼度分布の広がり度合いが所定の閾値以下となるか否か判定する(ステップS104)。広がり度合いが所定の閾値以下となる場合(ステップS104-Yes)、収集停止指示部44は、その信頼度分布に対応する地物についての地物データの収集を停止する収集停止指示を生成する。そして収集停止指示部44は、通信インターフェース31を介して収集停止指示を車両2へ送信する。(ステップS105)。
【0062】
ステップS105の後、あるいは、ステップS104にて信頼度分布の広がり度合いが所定の閾値よりも大きい場合(ステップS104-No)、プロセッサ34は、その信頼度分布に対応する地物について、地物データの収集を継続すると判定する。そしてプロセッサ34は、地物データ収集処理を終了する。
【0063】
以上に説明してきたように、この地物データ収集装置は、収集対象エリア内の各地物について、その地物の位置を信頼度分布で表す。この地物データ収集装置は、地物ごとに、その地物について受信した地物データに表される地物の位置を用いてその地物の位置についての信頼度分布を更新する。そしてこの地物データ収集装置は、信頼度分布の広がり度合いが所定の閾値以下となる地物について、地物データの収集を停止する。このように、この地物データ収集装置は、地物ごとに、その地物の位置の信頼度が十分高くなった時点で地物データの収集を停止できるので、その地物を表すデータの収集を停止するタイミングを適切に設定することができる。
【0064】
変形例によれば、データ取得装置14は、地物データに、車両2から検出された地物の位置までの距離を含めてもよい。車両2から検出された地物の位置までの距離が短いほど、地物の位置は確からしいと想定される。そこで、更新部43は、地物データに含まれる、車両2から検出された地物の位置までの距離が短いほど、地物の位置についての信頼度分布の更新における、その地物データに表される地物の位置の寄与度を高くする。例えば、更新部43は、信頼度分布を最尤推定により更新する場合、各地物データに表される地物の位置に重み係数を乗じて得られる重み付け位置を、最尤推定に利用する。その際、更新部43は、車両2から検出された地物の位置までの距離が短いほど、重み係数を大きくすればよい。また、更新部43は、信頼度分布をベイズ更新により更新する場合、車両2から検出された地物の位置までの距離が短いほど、その位置が含まれる区画の信頼度の上昇率を高くする。
【0065】
この変形例によれば、地物データ収集装置は、地物の位置についての信頼度分布をより適切に更新することができる。
【0066】
さらに、上記の各実施形態または変形例による地物データ収集装置のプロセッサが有する各部の機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムは、コンピュータによって読取り可能な記録媒体に記憶された形で提供されてもよい。なお、コンピュータによって読取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体、光記録媒体、又は半導体メモリとすることができる。
【0067】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 地物データ収集システム
2 車両
11 カメラ
12 GPS受信機
13 無線通信端末
14 データ取得装置
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
3 サーバ
31 通信インターフェース
32 ストレージ装置
33 メモリ
34 プロセッサ
41 収集指示部
42 受信処理部
43 更新部
44 収集停止指示部
4 通信ネットワーク
5 無線基地局