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  • 特許-ハイブリッド自動車の走行支援制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ハイブリッド自動車の走行支援制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/15 20160101AFI20240730BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240730BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240730BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20240730BHJP
   B60W 20/12 20160101ALI20240730BHJP
【FI】
B60W20/15 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/26 900
B60W20/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021120355
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016196
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 友希
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-046077(JP,A)
【文献】特開2011-038925(JP,A)
【文献】特開2007-183216(JP,A)
【文献】特開2014-151760(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0361440(US,A1)
【文献】特開2021-046073(JP,A)
【文献】特開2020-067946(JP,A)
【文献】特開2020-071700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20- 6/547
B60W 10/00-20/50
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
B60L 1/00- 3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、モータと、バッテリと、外部の管理サーバから地図情報を通信により受信して地図情報記憶領域に記憶しながら現在地から目的地までの走行経路に対して経路案内を行なうナビゲーションシステムと、を備え、前記走行経路に対して生成された先読み情報に基づいて前記走行経路の各走行区間にCDモードとCSモードを含む走行モードのいずれかを割り当てた走行支援計画を生成して前記走行支援計画に沿って走行する走行支援制御を実行すると共に前記走行経路における電動走行の積算距離を前記走行支援制御の効果の一つとして演算するハイブリッド自動車の走行支援制御装置であって、
前記走行支援制御を実行している最中に自車が前記ナビゲーションシステムと前記管理サーバとの通信を行なうことができない通信圏外のエリアを走行しているときには、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止すると共に前記走行経路における電動走行の積算距離の演算については継続する、
ことを特徴とするハイブリッド自動車の走行支援制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車の走行支援制御装置であって、
前記走行支援制御を実行している最中に、自車が通信圏外のエリアではあるが前記地図情報記憶領域に記憶した地図情報の範囲内を走行しているときには前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを実行し、自車が通信圏外のエリアかつ前記地図情報記憶領域に記憶した地図情報の範囲外を走行しているときには、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止する、
ハイブリッド自動車の走行支援制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド自動車の走行支援制御装置であって、
前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止するときには、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止する際の走行モードを継続する、
ハイブリッド自動車の走行支援制御装置。
【請求項4】
請求項1または2記載のハイブリッド自動車の走行支援制御装置であって、
前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止するときには、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止する際の走行状態を継続する、
ハイブリッド自動車の走行支援制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車の走行支援制御装置であって、
自車が通信圏外のエリアを走行していることに起因して前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止している状態から前記ナビゲーションシステムと前記管理サーバとの通信が復帰したときには、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを復帰する、
ハイブリッド自動車のの走行支援制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車の走行支援制御装置であって、
自車が通信圏外のエリアを走行していることに起因して前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止したときでも目的地に到着したときには前記走行経路における電動走行の積算距離を報知する、
ハイブリッド自動車の走行支援制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車の走行支援制御装置に関し、詳しくは、走行経路に対して走行モードを割り当てた走行支援計画を生成して走行するハイブリッド自動車の走行支援制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車の走行支援制御装置としては、現在地から目的地までの走行経路のうち目的地手前の1つ以上の区間を除く区間について区間毎に電動走行モード(EVモード)とハイブリッド走行モード(HVモード)とのいずれかを選択するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、上記制御によりハイブリッド車全体としてのランニングコストの更なる低下を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-151760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ナビゲーションシステムでは、無線通信回線を介して外部サーバから地図情報や経路情報などを取得するもの(クラウドナビなど)も提案されている。こうしたナビゲーションシステムを搭載するハイブリッド車では、各区間にEVモードとHVモードを割り当てて走行する走行支援制御を実行している最中に通信圏外となるエリアを走行したときには、地図情報や経路情報を取得することができず、EVモードとHVモードとの切り替えを適正に行なうことができない場合が生じる。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車の走行支援制御装置は、無線通信回線を介して外部サーバから地図情報などを取得するナビゲーションシステムを搭載するものにおいて、走行支援制御を行なっている最中に通信圏外となるエリアを走行したときにより適正に対処することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車の走行支援制御装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車の走行支援制御装置は、
エンジンと、モータと、バッテリと、外部の管理サーバから地図情報を通信により受信して地図情報記憶領域に記憶しながら現在地から目的地までの走行経路に対して経路案内を行なうナビゲーションシステムと、を備え、前記走行経路に対して生成された先読み情報に基づいて前記走行経路の各走行区間にCDモードとCSモードを含む走行モードのいずれかを割り当てた走行支援計画を生成して前記走行支援計画に沿って走行する走行支援制御を実行すると共に前記走行経路における電動走行の積算距離を前記走行支援制御の効果の一つとして演算するハイブリッド自動車の走行支援制御装置であって、
前記走行支援制御を実行している最中に自車が前記ナビゲーションシステムと前記管理サーバとの通信を行なうことができない通信圏外のエリアを走行しているときには、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止すると共に前記走行経路における電動走行の積算距離の演算については継続する、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車の走行支援制御装置を搭載するハイブリッド自動車は、エンジンと、モータと、バッテリと、外部の管理サーバから地図情報を通信により受信して地図情報記憶領域に記憶しながら現在地から目的地までの走行経路に対して経路案内を行なうナビゲーションシステムとを備える。走行支援制御装置は、走行経路に対して生成された先読み情報に基づいて走行経路の各走行区間にCDモードとCSモードを含む走行モードのいずれかを割り当てた走行支援計画を生成して前記走行支援計画に沿って走行する走行支援制御を実行する。その際、走行経路における電動走行の積算距離を走行支援制御の効果の一つとして演算する。また、走行支援制御装置は、自車がナビゲーションシステムと管理サーバとの通信を行なうことができない通信圏外のエリアを走行しているときには、走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止すると共に走行経路における電動走行の積算距離の演算については継続する。これにより、走行支援制御を実行している最中に自車が走行圏外のエリアを走行したときにより適正に対処することができ、走行支援制御の効果の一つとしての走行経路における電動走行の積算距離の演算を継続することができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車の走行支援制御装置において、前記走行支援制御を実行している最中に、自車が通信圏外のエリアではあるが前記地図情報記憶領域に記憶した地図情報の範囲内を走行しているときには前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを実行し、自車が通信圏外のエリアかつ前記地図情報記憶領域に記憶した地図情報の範囲外を走行しているときには、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止するものとしてもよい。こうすれば、地図情報記憶領域に記憶した地図情報の範囲内については走行支援計画を実行することができる。
【0010】
本発明のハイブリッド自動車の走行支援制御装置において、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止するときには、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止する際の走行モード(CDモードやCSモード)を継続するものとしてもよい。また、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止するときには、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止する際の走行状態(電動走行の状態やハイブリッド走行の状態)を継続するものとしてもよい。また、アクセル開度や車速、バッテリの蓄電状態に応じて電動走行とハイブリッド走行とを切り替えて走行するものとしてもよい。
【0011】
本発明のハイブリッド自動車の走行支援制御装置において、自車が通信圏外のエリアを走行していることに起因して前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止している状態から前記ナビゲーションシステムと前記管理サーバとの通信が復帰したときには、前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを復帰するものとしてもよい。こうすれば、走行支援計画を継続することができる。
【0012】
本発明のハイブリッド自動車の走行支援制御装置において、自車が通信圏外のエリアを走行していることに起因して前記走行支援計画に基づく走行モードの切り替えを停止したときでも目的地に到着したときには前記走行経路における電動走行の積算距離を報知するものとしてもよい。こうすれば、自車が通信圏外のエリアを走行したときでも、運転者などに走行支援制御の効果の一つとしての走行経路における電動走行の積算距離を知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の走行支援制御装置の構成の一例をハイブリッドECU50を中心にブロックとして示すブロック図である。
図2】ハイブリッドECU50により実行される走行支援制御の一例を示すフローチャートである。
図3】ハイブリッドECU50により実行される走行支援計画作成処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の走行支援制御装置の構成の一例をハイブリッド電子制御ユニット(以下、ハイブリッドECUという。)50を中心にブロックとして示すブロック図である。走行支援制御装置としては電子制御ユニット50が相当する。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、動力源としてエンジンEGとモータMGとを備える。実施例のハイブリッド自動車20は、走行モードとして、バッテリ40の蓄電割合SOCを減少させるように電動走行を優先させるCDモード(Charge Depletingモード)と、バッテリ40の蓄電割合SOCを目標割合に維持するように電動走行とハイブリッド走行とを併用するCSモード(Charge Sustainingモード)と、を切り替えて走行する。電動走行は、エンジンEGの運転を停止した状態でモータMGからの動力だけで走行するモードであり、ハイブリッド走行は、エンジンEGを運転してエンジンEGからの動力とモータMGからの動力とにより走行するモードである。
【0015】
実施例のハイブリッド自動車20は、動力源の他に、イグニッションスイッチ21、GPS(Global Positioning System, Global Positioning Satellite)22、車載カメラ24、ミリ波レーダー26、加速度センサ28、車速センサ30、アクセルセンサ32、ブレーキセンサ34、モード切替スイッチ36、電池アクチュエータ38、バッテリ40、エアコン用電子制御ユニット(以下、エアコンECUという。)42、エアコン用コンプレッサ44、ハイブリッドECU50、アクセルアクチュエータ60、ブレーキアクチュエータ62、ブレーキ装置64、表示装置66、走行状態インジケータ67、メーター68、DCM(Data Communication Module)70、ナビゲーションシステム80などを備える。
【0016】
GPS22は、複数のGPS衛星から送信される信号に基づいて車両の位置を検出する装置である。車載カメラ24は、車両の周囲を撮像するカメラであり、例えば、車両前方を撮像する前方用カメラや車両後方を撮像する後方用カメラなどが該当する。ミリ波レーダー26は、自車両と前方の車両との車間距離や相対速度を検知したり、自車両と後方の車両との車間距離や相対速度を検知する。
【0017】
加速度センサ28は、例えば、車両の前後方向の加速度を検出したり、車両の左右方向(横方向)の加速度を検出するセンサである。車速センサ30は、車輪速などに基づいて車両の車速を検出する。アクセルセンサ32は、運転者のアクセルペダルの踏み込み量に応じたアクセル開度などを検出する。ブレーキセンサ34は、運転者のブレーキペダルの踏み込み量としてのブレーキポジションなどを検出する。モード切替スイッチ36は、運転席のハンドル近傍に配置されて、CDモードとCSモードとを切り替えるためのスイッチである。
【0018】
電池アクチュエータ38は、バッテリ40の状態、例えば端子間電圧、充放電電流、バッテリ温度を検出しており、これらに基づいてバッテリ40を管理する。電池アクチュエータ38は、充放電電流に基づいて全蓄電容量に対する残存蓄電容量の割合としての蓄電割合SOCを演算したり、蓄電割合SOCやバッテリ温度などに基づいてバッテリ40から出力してもよい許容最大出力電力(出力制限Wout)やバッテリ40に入力してもよい許容最大入力電力(入力制限Win)を演算する。バッテリ40は、充放電可能な二次電池として構成されており、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池、鉛蓄電池などを用いることができる。
【0019】
エアコンECU42は、図示しないがCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM、フラッシュメモリ、入力ポート、出力ポート、通信ポートなどを備える。エアコンECU42は、乗員室を空気調和する空調装置に組み込まれており、乗員室の温度が設定された温度となるように空調装置におけるエアコン用コンプレッサ44を駆動制御する。
【0020】
エンジンEGは、例えば内燃機関として構成されている。モータMGは、例えば同期発動電動機などの発電機としても機能する電動機として構成されている。モータMGは、図示しないがインバータを介してバッテリ40に接続されており、バッテリ40から供給される電力を用いて駆動力を出力したり、発電した電力によりバッテリ40を充電したりすることができる。
【0021】
ハイブリッドECU50は、図示しないがCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他にROMやRAM、フラッシュメモリ、入力ポート、出力ポート、通信ポートなどを備える。ハイブリッドECU50は、走行モードを設定したり、設定した走行モードや、アクセルセンサ32からのアクセル開度、ブレーキセンサ34からのブレーキポジション、電池アクチュエータ38からの出力制限および入力制限に基づいてエンジンEGの目標運転ポイント(目標回転数や目標トルク)やモータMGのトルク指令を設定する。なお、ハイブリッドECU50は、アクセサリーオンでは起動せず、レディオンで起動する。
【0022】
ハイブリッドECU50は、電動走行するときには、アクセルセンサ32からのアクセル開度や車速センサ30からの車速に基づいて要求駆動力や要求パワーを設定し、車両に要求駆動力や要求パワーを出力するようにモータMGのトルク指令を設定し、設定したトルク指令をアクセルアクチュエータ60に送信する。ハイブリッドECU50は、ハイブリッド走行するときには、車両に要求駆動力や要求パワーを出力するようにエンジンEGの目標運転ポイントとモータMGのトルク指令とを設定し、目標運転ポイントとトルク指令とをアクセルアクチュエータ60に送信する。また、ハイブリッドECU50は、ブレーキペダルが踏み込まれたときには、ブレーキセンサ34からのブレーキポジションや車速センサ30からの車速に基づいて要求制動力を設定し、要求制動力や車速に基づいてモータMGを回生制御するための回生用のトルク指令を設定すると共に、ブレーキ装置による目標制動力を設定し、トルク指令についてはアクセルアクチュエータ60に送信し、目標制動力についてはブレーキアクチュエータ62に送信する。
【0023】
アクセルアクチュエータ60は、ハイブリッドECU50により設定された目標運転ポイントやトルク指令によりエンジンEGやモータMGを駆動制御する。アクセルアクチュエータ60は、エンジンEGが目標運転ポイント(目標回転数や目標トルク)で運転されるように、吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御、吸気バルブ開閉タイミング制御などを行なう。また、アクセルアクチュエータ60は、モータMGからトルク指令に相当するトルクが出力されるようにモータMGを駆動するためのインバータが有するスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0024】
ブレーキアクチュエータ62は、ハイブリッドECU50により設定された目標制動力がブレーキ装置64により車両に作用するようにブレーキ装置64を制御する。ブレーキ制御装置64は、例えば油圧駆動の摩擦ブレーキとして構成されている。
【0025】
表示装置66は、例えば運転席前方のインストールパネルに組み込まれており、各種情報を表示する。走行状態インジケータ67は、図示しないがEVインジケータとHVインジケータとを有し、モータ走行しているときには、EVインジケータを点灯すると共にHVインジケータを消灯し、ハイブリッド走行しているときには、EVインジケータを消灯すると共にHVインジケータを点灯する。メーター68は、例えば運転席前方のインストールパネルに組み込まれている。
【0026】
DCM(Data Communication Module)70は、自車両の情報を交通情報管理センター100に送信したり、交通情報管理センター100からの道路交通情報を受信したりする。自車両の情報としては、例えば、自車両の位置や、車速、走行パワー、走行モードなどを挙げることができる。道路交通情報としては、例えば、現在や将来の渋滞に関する情報や、走行経路上の区間における現在の平均車速や将来の平均車速の予測値に関する情報、交通規制に関する情報、天候に関する情報、路面状態に関する情報、地図に関する情報などを挙げることができる。DCM70は、交通情報管理センター100と所定間隔毎(例えば、30秒毎や1分毎、2分毎など)に通信している。
【0027】
ナビゲーションシステム80は、自車両を設定した目的地に誘導するシステムであり、表示部82と地図情報記憶領域84とを備える。ナビゲーションシステム80は、地図情報管理センター110とDCM(Data Communication Module)70を介して通信しており、地図情報記憶領域84の容量の範囲内で地図情報管理センター110から地図情報を取得して地図情報記憶領域84に記憶し、必要に応じて地図情報記憶領域84に記憶した地図情報を表示部82に表示する。ナビゲーションシステム80は、交通情報管理センター100とDCM(Data Communication Module)70を介して通信している。ナビゲーションシステム80は、目的地が設定されると、目的地の情報とGPS22により取得した現在地(現在の自車両の位置)の情報と地図情報記憶領域84に記憶されている地図情報とに基づいて経路を設定する。そして、ナビゲーションシステム80は、必要に応じて地図情報管理センター110と通信して地図情報を地図情報記憶領域84に記憶し、所定時間毎(例えば、3分毎や5分毎など)に交通情報管理センター100と通信して道路交通情報を取得し、地図情報と道路交通情報とに基づいて経路案内を行なう。
【0028】
ナビゲーションシステム80は、経路案内を行なう際、交通情報管理センター100から道路交通情報を取得する毎(或いは所定時間毎)に、交通情報管理センター100から取得した道路交通情報のうちの走行経路内の各走行区間の情報や走行負荷に関する情報、自車両の車速、自車両の走行パワー、自車両の走行モードなどに基づいて各走行区間を走行するのに必要な負荷情報などを先読み情報として生成し、ハイブリッドECU50に送信する。なお、先読み情報としては、自車両の位置、車速、走行パワー、走行モードなどの自車両の情報や、現在や将来の渋滞に関する情報、走行経路上の区間における現在の平均車速や将来の平均車速の予測値に関する情報、交通規制に関する情報、天候に関する情報、路面状態に関する情報、地図に関する情報なども含まれる。
【0029】
こうして構成されたハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2は、ハイブリッドECU50により実行される走行支援制御の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、イグニッションスイッチ21がオンとされた以降に実行される。
【0030】
走行支援制御では、まず、走行支援制御の実行が可能か否かを判定する(ステップS100)。走行支援制御は、上述したように、ナビゲーションシステム80により現在地から目的地までの経路が設定されたときに経路の各区間の走行モードにCDモードとCSモードとのうちのいずれかを割り当てて走行する制御であるから、目的地の設定がないときには走行支援制御を実行することができない。また、ナビゲーションシステム80に異常が生じているときやGPS22に異常が生じているときなど、経路案内を良好に行なうことができないときには走行支援制御は実行することはできない。バッテリ温度が低いときにはバッテリ40から出力してもよい許容最大出力電力である出力制限Woutが小さくなり、CDモードで走行していても頻繁にエンジンEGを始動する場合が生じ、適正にCDモードによる走行を行なうことができなくなる。ステップS100では、これらのような事情により走行支援制御の実行が可能であるか否かを判定するのである。ステップS100で走行支援制御の実行が可能ではないと判定したときには、走行支援制御の実行が可能になるまで待機する。
【0031】
ステップS100で走行支援制御の実行が可能であると判定したときには、自車が地図情報管理センター110との通信を行なうことができない通信圏外のエリアを走行しているか否かを判定する(ステップS120)。自車が通信圏内のエリアを走行していると判定したときには、ナビゲーションシステム80から送信された先読み情報の更新がなされたか否かを判定する(ステップS110)。先読み情報が更新されていると判定したときには、先読み情報を取得し(ステップS120)、走行支援計画作成処理を実行して走行支援計画を作成する(ステップS140)。図3に走行支援計画作成処理の一例を示す。
【0032】
図3の走行支援計画作成処理では、まず、現在地から制御終了区間(目的地)までの走行経路の各走行区間の消費エネルギE(n)とその総和としての総エネルギEsumを計算する(ステップS400)。各走行区間の消費エネルギE(n)は、その走行区間が市街地であるか郊外であるか山間部であるかなどの基準により定めることができる。次に、エアコン消費エネルギEacを計算する(ステップS410)。エアコン消費エネルギEacは、実施例では、そのときのエアコンの消費電力や予め定めた消費電力、エアコンの最大消費電力などに所定時間(10kmや15kmだけ走行するに必要な時間)を乗じることにより計算するものとした。そして、総エネルギEsumにエアコン消費エネルギEacを加えたものがバッテリ40の残量より大きいか否かを判定する(ステップS420)。バッテリ40の残量は、バッテリ40の全容量に蓄電割合SOCを乗じることにより計算することができる。総エネルギEsumにエアコン消費エネルギEacを加えたものがバッテリ40の残量以下であると判定したときには、全走行区間にCDモードを割り当てる(ステップS430)。総エネルギEsumにエアコン消費エネルギEacを加えたものがバッテリ40の残量より大きいと判定したときには、各走行区間を走行負荷(区間内における平均負荷)が低い順に並び替え(ステップS440)、走行負荷が低い順に、割り当てた走行区間の消費エネルギEnの総和がバッテリ40の残量を超えるまでCDモードに割り当てると共に残余の走行区間をCSモードに割り当てる(ステップS450)。即ち、総エネルギEsumにエアコン消費エネルギEacを加えたものがバッテリ40の残量より大きいときを条件として走行経路にCDモードとCSモードを割り当てるのである。
【0033】
図2の走行支援制御の説明に戻る。こうして走行支援計画を作成すると、走行支援計画に沿って走行モードを制御し、走行支援制御の効果(制御効果)を累積する(ステップS160)。制御効果としては、例えば、走行支援制御中のモータ走行による走行距離や走行時間、ハイブリッド走行による走行距離や走行時間などを挙げることができる。なお、累積した制御効果は、ハイブリッドECU50の図示しないフラッシュメモリなどに記憶される。
【0034】
続いて、目的地に到着したか否かを判定し(ステップS180)、目的地に到着したと判定したときには、制御効果を表示出力する。例えば、運転席前方のインストールパネルに組み込まれた表示装置66に「モータ走行〇〇km、ハイブリッド走行〇〇km」などと表示する。
【0035】
ステップS180で目的地に到着していないと判定したときや、目的地に到着したと判定して制御効果を表示出力した後には、走行支援制御の終了条件が成立しているか否かを判定する(ステップS200)。走行支援制御の終了条件としては、目的地に到達したとき、充電などによりバッテリ40の残量が変更したとき、運転者などにより走行支援制御を終了する操作が行なわれたときなどを挙げることができる。走行支援制御の終了条件が成立していないと判定したときには、ステップS100の走行支援制御の実行が可能か否かを判定する処理に戻る。走行支援制御の終了条件が成立していると判定したときには、制御効果をクリアを消去して(ステップS210)、走行支援制御を終了する。なお、充電などによりバッテリ40の残量が変更したときには、走行支援制御を終了するが、新たな走行支援制御の開始となる場合には、再び本ルーチンが実行されることになる。
【0036】
ステップS110で自車が通信圏外のエリアを走行していると判定したときには、自車が地図情報記憶領域84に記憶した地図情報の範囲内(キャッシュエリア内)を走行しているか否かを判定する(ステップS150)。自車がキャッシュエリア内を走行していると判定したときには、走行支援計画に沿って走行モードを制御すると共に走行支援制御の効果(制御効果)を累積し(ステップS160)、ステップS180以降の処理を行なう。
【0037】
ステップS150で自車がキャッシュエリア内を走行していないと判定したときには、走行支援計画による走行モードの切り替え要求を停止し、走行支援制御の効果(制御効果)については累積し(ステップS170)、ステップS180以降の処理を行なう。走行支援計画による走行モードの切り替えが停止されると、走行モードの切り替えが停止されたときの走行モード(CDモードまたはCSモード)を維持する。
【0038】
いま、自車が通信圏内のエリアを走行している場合を考える。この場合、先読み情報が更新される毎に走行支援計画が生成され、走行支援計画に沿って走行モードが切り替えられる。そして、電動走行の積算距離やハイブリッド走行の積算距離などの走行支援制御による効果が演算されて記憶される。自車が通信圏内のエリアから通信圏外のエリアに移行すると、自車が地図情報記憶領域84に記憶されている地図情報の範囲内(キャッシュエリア内)を走行しているときには、先読み情報の更新や走行支援計画の生成は行なわれないが、通信圏外のエリアを走行する前に生成された走行支援計画に沿って走行モードが切り替えられる。この場合でも、走行支援制御による効果が演算されて記憶される。自車が通信圏外のエリアにおいてキャッシュエリアの外側まで走行すると、走行支援制御による走行モードの切り替えが停止され、そのときの走行モードが維持される。この場合でも、走行支援制御による効果が演算されて記憶される。自車が通信圏外のエリアにおいてキャッシュエリア外から通信圏内のエリアまで走行すると、走行支援制御による走行モードの切り替えを復帰する。この場合も、走行支援制御による効果が演算されて記憶される。したがって、走行支援制御を実行中に自車が通信圏内を走行する場合でも通信圏外を走行する場合でも走行支援制御による効果(電動走行の積算距離やハイブリッド走行の積算距離など)については継続して演算されて記憶される。走行支援制御による効果が継続して演算されて記憶される。自車が目的地に到着すると、走行支援制御の効果を表示装置66に「モータ走行〇〇km、ハイブリッド走行〇〇km」などと表示出力する。
【0039】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20の走行支援制御装置では、自車が通信圏内のエリアから通信圏外のエリアまで走行すると、自車がキャッシュエリア内を走行しているときには、通信圏外のエリアを走行する前に生成された走行支援計画に沿って走行モードを切り替えると共に走行支援制御による効果(電動走行の積算距離やハイブリッド走行の積算距離)を演算して記憶する。これにより、走行支援計画をより適正に実行することができる。自車が通信圏外のエリアにおいてキャッシュエリアの外側まで走行すると、走行支援制御による走行モードの切り替えが停止され、そのときの走行モードが維持されるが、走行支援制御による効果については継続して演算して記憶する。これにより、自車が通信圏外のエリアにおいてキャッシュエリアの外側まで走行したときに対処することができる。自車が通信圏外のエリアにおいてキャッシュエリア外から通信圏内のエリアまで走行すると、走行支援制御による走行モードの切り替えを復帰し、走行支援制御による効果についても継続して演算して記憶する。これにより、走行支援計画をより適正に実行することができる。そして、目的地に到着したときには、自車が通信圏外を走行する場合でも継続して演算した走行支援制御による効果(電動走行の積算距離やハイブリッド走行の積算距離など)を表示装置66に表示出力する。これにより、自車が通信圏外のエリアを走行した場合であっても走行支援制御の効果を運転者などに知らせることができる。これらの結果、走行支援制御を行なっている最中に通信圏外となるエリアを走行したときにより適正に対処することができる。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20の走行支援制御装置では、自車が通信圏外のエリアでもキャッシュエリア内を走行しているときには、通信圏外のエリアを走行する前に生成された走行支援計画に沿って走行モードを切り替えると共に走行支援制御による効果(電動走行の積算距離やハイブリッド走行の積算距離)を演算して記憶するものとした。しかし、自車が通信圏外のエリアであればキャッシュエリア内を走行しているときでも、走行支援制御による走行モードに切り替えを停止するものとしてもよい。この場合でも走行支援制御による効果については継続して演算して記憶するのが好ましい。
【0041】
実施例のハイブリッド自動車20の走行支援制御装置では、自車が通信圏外のエリアにおいてキャッシュエリア外を走行しているときには、走行支援制御による走行モードの切り替えを停止し、走行モードの切り替えを停止したときの走行モード(CDモードまたはCSモード)を維持するものとした。しかし、走行支援制御による走行モードの切り替えを停止したときの走行状態(電動走行またはハイブリッド走行)を維持するものとしたり、アクセル開度や車速、バッテリ40の蓄電割合SOCに基づいて電動走行とハイブリッド走行とを切り替えるものとしたりしてもよい。
【0042】
実施例のハイブリッド自動車20では、ナビゲーションシステム80は、現在地の情報と目的地の情報とに基づいて地図情報管理センター110から取得した地図情報を用いて現在地から目的地までの走行経路を設定するものとしたが、地図情報管理センター110との協調により現在地から目的地までの走行経路を設定するものとしてもよい。即ち、ナビゲーションシステム80は、地図情報管理センター110に現在地の情報と目的地の情報とを送信し、地図情報管理センター110により現在地の情報と目的地の情報とに基づいて設定された走行経路を地図情報管理センター110から受信することにより、走行経路を設定するものとしてもよい。
【0043】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジンEGが「エンジン」に相当し、モータMGが「モータ」に相当し、バッテリ40が「バッテリ」に相当し、ハイブリッドECU50が「走行支援制御装置」に相当する。
【0044】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0045】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、ハイブリッド自動車の走行支援制御装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
20 ハイブリッド自動車、21 イグニッションスイッチ、22 GPS、24 車載カメラ、26 ミリ波レーダー、28 加速度センサ、30 車速センサ、32 アクセルセンサ、34 ブレーキセンサ、36 モード切替スイッチ、38 電池アクチュエータ、40 バッテリ、42 エアコン用電子制御ユニット(エアコンECU)、44 エアコン用コンプレッサ、50 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、60 アクセルアクチュエータ、62 ブレーキアクチュエータ、64 ブレーキ装置、66 表示装置、67 走行状態インジケータ、68 メーター、70 DCM、80 ナビゲーションシステム、82 表示部、84 地図情報データベース、100 交通情報管理センター、EG エンジン、MG モータ。
図1
図2
図3