(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6566 20140101AFI20240730BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/617 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M10/6566
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/6563
H01M10/617
H01M10/6557
H01M10/647
(21)【出願番号】P 2021133905
(22)【出願日】2021-08-19
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 広隆
(72)【発明者】
【氏名】馬場 謙治
(72)【発明者】
【氏名】山田 正博
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-114989(JP,A)
【文献】特開2010-198937(JP,A)
【文献】特開2016-107894(JP,A)
【文献】特開2015-037044(JP,A)
【文献】特開2012-199205(JP,A)
【文献】特開2010-198971(JP,A)
【文献】特開2008-080930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電池パックにおいて、
第1方向に積層された複数の電池モジュールを含む電池スタックと、
前記電池スタックに対して固定され、前記電池スタックの一側面に沿って前記第1方向と直交する第2方向に延在する内部空間を画成する給気部材と、
前記給気部材の前記内部空間を前記第1方向に分割し、それぞれ前記第2方向に延在すると共に送風機に接続される複数の給気通路を形成する仕切部材と、
を備える電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックにおいて、
前記第1方向は、上下方向であり、
前記第2方向が前記車両の車幅方向と平行になるように前記車両に搭載される電池パック。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電池パックにおいて、
前記仕切部材は、前記第1方向における一側の第1給気通路と他側の第2給気通路とを形成し、
前記給気部材は、前記第2方向における一側で前記第1給気通路に連通すると共に第1送風機の吐出口に接続される第1給気口と、前記第2方向における他側で前記第2給気通路に連通すると共に第2送風機の吐出口に接続される第2給気口とを含む電池パック。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の電池パックにおいて、
前記電池スタックは、それぞれ前記一側面および前記一側面の反対側の他側面で開口するように隣り合う電池モジュール同士の間に形成される複数の空気通路を含み、
前記給気部材の前記内部空間は、前記複数の空気通路の前記一側面側の開口に連通し、
前記電池スタックに対して、前記複数の空気通路の前記他側面側の開口から流出する空気を外部に流出させる排気部材が固定されている電池パック。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の電池パックにおいて、
前記仕切部材は、前記電池スタックの構成部材に接続されるワイヤーハーネスを支持する電池パック。
【請求項6】
請求項5に記載の電池パックにおいて、前記仕切部材は、前記ワイヤーハーネスが挿通される収容空間を有する電池パック。
【請求項7】
請求項6に記載の電池パックにおいて、
前記仕切部材は、
前記電池スタックに対して固定されて前記第2方向に延在する第1部材と、
前記第1部材と互いに嵌合して前記第1部材と共に前記収容空間を画成し、前記第2方向に延在すると共に前記給気部材の内面に向けて突出する第2部材と、
前記第2部材の先端部に固定されると共に前記給気部材の前記内面に当接する弾性部材とを含む電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電池パックとして、長辺が車両の前後方向に沿った姿勢で車両に搭載される略長方形状をなすパックケースと、それぞれパックケースの内部に上下方向に平積みされた偏平な箱形をなす複数のバッテリモジュールを含む複数のスタックと、パックケースの長手方向の一方の端部に配置される冷却ユニットとを含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この電池パックの冷却ユニットは、多翼ファンを電動モータにより回転駆動して送風を行うシロッコファンと、車両の前後方向に沿って細長く延びると共に車両の幅方向の一方へ向けて開口する吸入口と、吸入口を介して吸入された空気を冷却するエバポレータと、複数の吹出口を有する送風ダクトに接続された吐出部とを含む。送風ダクトは、パックケースの一方の長辺に沿って前後方向に延在し、各吹出口は、対応するスタックの側面に向けて開口する。これにより、エバポレータにより冷却された空気は、吐出部からパックケースの外周に沿って送風ダクトの各吹出口に供給され、各吹出口から対応するスタックに向けて送り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電池パックでは、冷却ユニットの吐出部と送風ダクトとの接続部や隣り合う吹出口同士の間で通路断面積が急変(急増)しており、各吹出口に空気が流れにくくなる領域が生じてしまう。このため、1つのスタックにおいて温度が全体に均一にならず、更に複数のスタック間でも温度にばらつきを生じてしまう。また、上記電池パックにおいて、送付ダクトを延長して冷却ユニットにおける通路断面積を徐変(徐増)させた場合、電池パックの体格が増大化してしまう。
【0005】
そこで、本開示は、電池パックの体格の増大化を抑制しつつ、一方向に積層された複数の電池モジュールを含む電池スタックを均一に冷却可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の電池パックは、車両に搭載される電池パックにおいて、第1方向に積層された複数の電池モジュールを含む電池スタックと、前記電池スタックに対して固定され、前記電池スタックの一側面に沿って前記第1方向と直交する第2方向に延在する内部空間を画成する給気部材と、前記給気部材の前記内部空間を前記第1方向に分割し、それぞれ前記第2方向に延在すると共に送風機に接続される複数の給気通路を形成する仕切部材とを含むものである。
【0007】
本開示の電池パックでは、第1方向に積層された複数の電池モジュールを含む電池スタックに対して、給気部材が固定される。給気部材は、電池スタックの一側面に沿って第1方向すなわち電池モジュールの積層方向と直交する第2方向に延在する内部空間を画成する。また、給気部材の内部空間は、仕切部材により第1方向に分割され(仕切られ)、それにより複数の給気通路が形成される。そして、複数の給気通路は、それぞれ第2方向に延在すると共に、送風機に接続される。これにより、各給気通路の断面積を送風機の吐出口の開口面積に近づけることが可能となるので、各給気通路内に送風機から空気が供給される際に、空気が流れにくくなる領域が発生するのを良好に抑制することができる。従って、各給気通路から電池スタックに対して万遍なく空気を送り込んで当該電池スタックを全体の温度が均一になるように冷却することが可能となる。更に、通路断面積の急変を抑えるために給気部材を延長(拡大)する必要がなくなるので、電池パックの体格の増大化を良好に抑制することができる。この結果、本開示の電池パックでは、体格の増大化を抑制しつつ、第1方向に積層された複数の電池モジュールを含む電池スタックを均一に冷却することが可能になる。
【0008】
また、前記第1方向は、上下方向であってもよく、前記電池パックは、前記第2方向が前記車両の車幅方向と平行になるように前記車両に搭載されてもよい。これにより、上下方向に積層(平積み)された複数の電池モジュール(電池スタック)を含む電池パックが搭載される車両のスペース効率を向上させることが可能となる。
【0009】
更に、前記仕切部材は、前記第1方向における一側の第1給気通路と他側の第2給気通路とを形成するものであってもよく、前記給気部材は、前記第2方向における一側で前記第1給気通路に連通すると共に第1送風機の吐出口に接続される第1給気口と、前記第2方向における他側で前記第2給気通路に連通すると共に第2送風機の吐出口に接続される第2給気口とを含むものであってもよい。
【0010】
また、前記電池スタックは、それぞれ前記一側面および前記一側面の反対側の他側面で開口するように隣り合う電池モジュール同士の間に形成される複数の空気通路を含むものであってもよく、前記給気部材の前記内部空間は、前記複数の空気通路の前記一側面側の開口に連通してもよく、前記電池スタックに対して、前記複数の空気通路の前記他側面側の開口から流出する空気を外部に流出させる排気部材が固定されてもよい。これにより、電池スタックの全体を効率よく均等に冷却することが可能となる。
【0011】
更に、前記仕切部材は、前記電池スタックの構成部材に接続されるワイヤーハーネスを支持するものであってもよい。これにより、各給気通路における空気の流れを乱すことなく均一にして電池スタックの冷却効率を向上させることが可能となる。加えて、ワイヤーハーネスの配索スペースや配索用の部品を別途用意する必要がなくなるので、電池パックの体格の増大化や、部品点数の増加、コストアップ等を良好に抑制することができる。
【0012】
また、前記仕切部材は、前記ワイヤーハーネスが挿通される収容空間を有するものであってもよい。これにより、各給気通路における空気の流れの乱れを極めて良好に抑制することが可能となる。
【0013】
更に、前記仕切部材は、前記電池スタックに対して固定されて前記第2方向に延在する第1部材と、前記第1部材と互いに嵌合して前記第1部材と共に前記収容空間を画成し、前記第2方向に延在すると共に前記給気部材の内面に向けて突出する第2部材と、前記第2部材の先端部に固定されると共に前記給気部材の前記内面に当接する弾性部材とを含むものであってもよい。これにより、仕切部材の組付性やワイヤーハーネスの配索性をより向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の電池パックを搭載した車両を示す概略構成図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0016】
図1は、本開示の電池パック1を搭載した車両Vを示す概略構成図である。同図に示す車両Vは、電池パック1に加えて、インバータ等を含む電力制御装置やシステムメインリレー(何れも図示省略)を介して電池パック1に接続されると共に当該電池パック1と電力をやり取りして走行用の動力や回生制動力を出力可能なモータジェネレータ(三相交流電動機)MGを含む電気自動車(BEV)あるいはハイブリッド車両(HEV、PHEV)である。本実施形態において、電池パック1は、後部座席(2列目座席)の下方に位置するように車両Vの車体に固定される。
【0017】
電池パック1は、
図2および
図3に示すように、例えば直列に接続される複数の電池モジュール20を含む単一の電池スタック2と、当該電池スタック2を収容するパックケース3とを含む。電池スタック2の各電池モジュール20は、偏平かつ比較的細長い略直方体状のモジュールケース21や、当該モジュールケース21内に収容される図示しない複数の電池セル、モジュールケース21の短辺側の側面から突出する正負の端子(図示省略)等を含むものである。電池モジュール20を構成する電池セルは、いわゆるラミネートセルとして形成されたニッケル水素二次電池あるいはリチウムイオン二次電池等であり、可撓性を有するラミネートフィルムにより形成された外装体と、当該外装体の内部に電解液と共に積層して収容されるシート状の正極、負極およびセパレータ(電極積層体)とを含む。複数の電池セルは、例えば直列に接続されると共に、モジュールケース21の内部に厚み方向(上下方向)に積層された状態で収容される。
【0018】
複数の電池モジュール20は、
図3に示すように、それぞれ略長方形状の平面形状を有するスペーサ22および図示しない絶縁シートを介して厚み方向(上下方向)に積層(平積み)されて一体化される。スペーサ22は、それぞれ短辺側の側面と平行に延在すると共に長辺側の側面に沿って並ぶ複数の凹部を有し、厚み方向(上下方向)に隣り合う2つの電池モジュール20の間に介設される。これにより、電池スタック2には、各スペーサ22の複数の凹部により複数の空気通路25が形成される。すなわち、複数の空気通路25は、それぞれ厚み方向(上下方向)に隣り合う電池モジュール20同士の間で電池スタック2の短辺側の側面に沿って延在すると共に、
図3に示すように、電池スタック2の長辺側の第1側面(一側面)2sfと、当該第1側面2sfの反対側の第2側面(他側面)2srとで開口する。
【0019】
パックケース3は、電池パック1が車両Vに搭載された際に上側に位置する上側ケース半部4と、電池パック1が車両Vに搭載された際に下側に位置する下側ケース半部5と、複数の支柱6と、給気部材としての第1サイドカバー7と、排気部材としての第2サイドカバー8と、延長ケース9とを含む。上側ケース半部4は、電池スタック2の上面および両端面の上側半分を覆うように金属または樹脂により形成されており、略長方形状の平面形状を有する。下側ケース半部5は、電池スタック2の下面および両端面の下側半分を覆うように金属または樹脂により形成されており、略長方形状の平面形状を有する。
【0020】
図3に示すように、上側ケース半部4と下側ケース半部5とは、複数の支柱6を介して一体化され、電池スタック2は、上側ケース半部4と下側ケース半部5との間に配置された両者に固定される。複数の支柱6は、上側ケース半部4の両側(長辺側)の側端部と下側ケース半部5の両側(長辺側)の側端部との間に、上側ケース半部4および下側ケース半部5の長手方向に間隔をおいて配設される。これにより、隣り合う支柱6同士の間には、電池スタック2の第1側面2sfまたは第2側面2srと対向すると共に空気の流通を許容する開口部(図示省略)が形成される。
【0021】
パックケース3の第1サイドカバー7は、例えば金属板をプレス加工することにより形成されており、上側ケース半部4および下側ケース半部5と概ね同一の長手方向長さを有する。
図3に示すように、第1サイドカバー7は、略コの字状(略C字状)の断面形状を有するダクト部7aと、ダクト部7aの
図3における上側の縁部から図中上方に延出された上側固定部7bと、ダクト部7aの
図3における下側の縁部から図中下方に延出された下側固定部7cとを含む。
【0022】
第1サイドカバー7の上側固定部7bは、上側ケース半部4の一方(
図3における左側)の側面に固定され、下側固定部7cは、下側ケース半部5の一方(
図3における左側)の側面に固定される。これにより、隣り合う支柱6同士の間に形成される複数の開口部が第1サイドカバー7により覆われ、ダクト部7aにより画成される内部空間は、上述の複数の支柱6や電池スタック2の第1側面2sfに沿って電池モジュール20の積層方向すなわち上下方向(第1方向)および空気通路25の延在方向の双方に直交する方向(第2方向)に延在する。更に、ダクト部7aの内部空間は、電池スタック2に形成された複数の空気通路25の第1側面2sf側の開口に連通する。
【0023】
パックケース3の第2サイドカバー8は、例えば金属板をプレス加工することにより形成されており、上側ケース半部4および下側ケース半部5と概ね同一の長手方向長さを有する。
図3に示すように、第2サイドカバー8は、電池スタック2の第2側面2srに沿って配設された複数の支柱6に固定され、電池スタック2に形成された複数の空気通路25の第2側面2sr側の開口に連通する空間を画成する。更に、本実施形態では、第2サイドカバー8の
図3における上端部と上側ケース半部4の他方(
図3における右側)の側面との間、および第2サイドカバー8の
図3における下端部と下側ケース半部5の他方(
図3における右側)の側面との間に隙間が形成される。
【0024】
パックケース3の延長ケース9は、
図2に示すように、パックケース3の長手方向における中央部付近で、第1サイドカバー7から第2サイドカバー8側とは反対側にと突出するように、上側ケース半部4および下側ケース半部5に連結される。延長ケース9の内部には、図示しないジャンクションボックスや、他の電気機器等が収容される。
【0025】
また、第1サイドカバー7のダクト部7aの内部空間には、仕切部材(セパレータ)10が配置される。仕切部材10は、
図3に示すように、ダクト部7aの内部空間の上下方向における中央付近に配置され、当該内部空間を電池モジュール20の積層方向すなわち上下方向(第1方向)において2つに分割する(仕切る)。これにより、ダクト部7aの内部空間には、
図3および
図4に示すように、電池モジュール20の積層方向における上側(一側)の第1給気通路P1と、下側(他側)の第2給気通路P2とが形成される。第1および第2給気通路P1,P2は、概ね同一の通路断面積を有し、それぞれ電池モジュール20の積層方向および空気通路25の延在方向の双方に直交する方向(第2方向)に延在する。更に、第1サイドカバー7のダクト部7aには、第1給気口7iaおよび第2給気口7ibが形成されている。第1給気口7iaは、第1給気通路P1に連通するようにダクト部7aの一方(第2方向における一側)の端部(
図4における右側の端部)に形成されている。また、第2給気口7ibは、第2給気通路P2に連通するようにダクト部7aの他方(第2方向における他側)の端部(
図4における左側の端部)に形成されている。
【0026】
本実施形態において、仕切部材10は、それぞれ第1サイドカバー7のダクト部7a(内部空間)と概ね同一の長手方向長さを有する第1部材11および第2部材12を含む。第1部材11は、樹脂により形成されており、
図3に示すように、略コの字状(略C字状)の断面形状を有する。すなわち、第1部材11は、背部および当該背部の反対側で開口する凹部を含み、当該第1部材11の背部は、凹部が第1サイドカバー7のダクト部7aの内面と対向するように、電池スタック2の第1側面2sfに沿って並ぶパックケース3の複数の支柱6に固定される。これにより、第1部材11は、複数の支柱6や電池スタック2の第1側面2sfに沿って電池モジュール20の積層方向および空気通路25の延在方向の双方に直交する方向(第2方向)に延在する。
【0027】
第2部材12は、樹脂により形成されており、第1部材11の
図3における上面および下面に形成された対応する突起11aとそれぞれ係合する複数の係合部12aを有する。第2部材12は、複数の突起11aおよび複数の係合部12aを介して第1部材11と互いに嵌合し、第1部材11の凹部(開口)を塞ぐことで当該第1部材11と共に収容空間10aを画成する。また、第2部材12は、電池スタック2の第1側面2sfに沿って電池モジュール20の積層方向および空気通路25の延在方向の双方に直交する方向(第2方向)に延在すると共に、第1サイドカバー7のダクト部7aの内面に向けて突出する。更に、第2部材12の先端部には、ダクト部7aの内面に当接するように例えば樹脂製のスポンジといったような弾性部材13が固定されている。
【0028】
ダクト部7aの内部空間に仕切部材10を配置する際には、まず、第1部材11の背部を複数の支柱6(電池スタック2)に対して固定する。次いで、電池スタック2の構成部材すなわち当該電池スタック2に設けられた各種センサ等に接続されるワイヤーハーネスWHを第1部材11の凹部内に配置する。更に、ワイヤーハーネスWHを支持(保持)するように第1部材11と第2部材12とを互いに嵌合させ、ダクト部7aの内面が弾性部材13に当接するように第1サイドカバー7を上側ケース半部4および下側ケース半部5に固定する。これにより、
図3に示すように、ワイヤーハーネスWHが第1部材11と第2部材12とにより画成された収容空間10a内に挿通されてダクト部7aの内部空間で仕切部材10により支持(保持)されると共に、当該ダクト部7aの内部が仕切部材10により複数に分割されることになる。
【0029】
上述のように構成される電池パック1は、
図2に示すように、第1サイドカバー7や延長ケース9が車両Vの前側に位置すると共に、パックケース3の長手方向が車両Vの車幅方向と平行になるように、後部座席(2列目座席)の下方に配置・固定される。すなわち、電池パック1の第1サイドカバー7、仕切部材10および電池スタック2の第1側面2sf等は、第2サイドカバー8や電池スタック2の第2側面2sr等よりも前側で車幅方向に延在する。これにより、上下方向に積層(平積み)された複数の電池モジュール20(電池スタック2)を含む電池パック1が搭載される車両Vのスペース効率を向上させることが可能となる。
【0030】
更に、
図2に示すように、第1サイドカバー7(ダクト部7a)の第1給気口7iaには、パックケース3の前側かつ車幅方向における左側に配置された第1ブロワB1の吐出口DPが接続され、第1サイドカバー7(ダクト部7a)の第2給気口7ibには、パックケース3の前側かつ車幅方向における右側に配置された第2ブロワB2の吐出口DPが接続される。第1および第2ブロワB1,B2は、図示しない制御装置により制御される同一諸元の電動式の送風機であり、第1および第2ブロワB1,B2を車幅方向に間隔をおいて車体に配置することで、車両Vのスペース効率をより向上させることが可能となる。本実施形態では、第1および第2ブロワB1,B2の吐出口DP内に、例えば車両Vの車室内の空気調和を行う空気調和装置と冷媒を共用して第1および第2ブロワB1,B2から送り出される空気を冷却する図示しない冷却器(熱交換器)が配置される。各冷却器への冷媒の供給は、電池スタック2(各電池モジュール20)の温度等に応じて上記制御装置により制御される。ただし、第1および第2ブロワB1,B2の吐出口DPから冷却器が省略されてもよく、第1および第2ブロワB1,B2から送り出される空気が車室内の空気(夏期には、空気調和装置からの冷却風)を利用して冷却されてもよい。
【0031】
車両Vの走行中等に、第1および第2ブロワB1,B2が作動させられると、第1ブロワB1の吐出口DPから第1給気口7iaを介して第1サイドカバー7のダクト部7aに形成された第1給気通路P1に空気が供給される。また、第2ブロワB2の吐出口DPから第2給気口7ibを介して第1サイドカバー7のダクト部7aに形成された第2給気通路P2に空気が供給される。第1給気通路P1に供給された空気は、
図3からわかるように、隣り合う支柱6同士の間の開口部を介して電池スタック2の上側半分の領域に配設された複数の空気通路25に流入する。当該複数の空気通路25に流入した空気は、電池スタック2の上側半分の領域から熱を奪い、第2サイドカバー8により画成される空間を介して、上側ケース半部4の側面と第2サイドカバー8の上端部との隙間からパックケース3の外部に流出する。また、第2給気通路P2に供給された空気は、
図3からわかるように、隣り合う支柱6同士の間の開口部を介して電池スタック2の下側半分の領域に配設された複数の空気通路25に流入する。当該複数の空気通路25に流入した空気は、電池スタック2の下側半分の領域から熱を奪い、第2サイドカバー8により画成される空間を介して、下側ケース半部5の側面と第2サイドカバー8の上端部との隙間からパックケース3の外部に流出する。
【0032】
ここで、電池パック1において、上側の第1給気通路P1と下側の第2給気通路P2とは、第1サイドカバー7(ダクト部7a)の内部空間を仕切部材10により電池モジュール20の積層方向に分割することにより形成される。これにより、
図4に示すように、第1および第2給気通路P1,P2の断面積を第1および第2ブロワB1,B2の吐出口DPの開口面積と近づける(概ね同一にする)ことが可能となるので、第1および第2給気通路P1,P2内に第1または第2ブロワB1,B2から空気が供給される際に、空気が流れにくくなる領域が発生するのを良好に抑制することができる。従って、第1および第2給気通路P1,P2の各々から電池スタック2に対して万遍なく空気を送り込んで当該電池スタック2を全体の温度が均一になるように冷却することが可能となる。
【0033】
また、電池パック1に仕切部材10が設けられていない場合には、吐出口DPの通路断面積に対してダクト部7aの内部空間の断面積が急増することに起因して、第1および第2ブロワB1,B2の吐出口DPから直進する空気がスムースに流入しなくってしまう領域(
図4における二点鎖線参照)が生じてしまう。そして、これを回避するためには、当該領域が電池スタック2の第1側面2sfと対向しないように第1サイドカバー7を
図4における両側(第2方向)に延長(拡大)する必要がある。これに対して、ダクト部7aの内部空間を仕切部材10により分割して第1および第2給気通路P1,P2を形成すれば、通路断面積の急変(急増)を抑えることが可能となるので、第1サイドカバー7を延長する必要がなくなり、電池パック1(パックケース3)の体格の増大化を良好に抑制することができる。この結果、電池パック1では、体格の増大化を抑制しつつ、上下方向に積層(平積み)された複数の電池モジュール20を含む電池スタック2を均一に冷却することが可能になる。
【0034】
更に、電池スタック2は、それぞれ第1側面2sfおよび当該第1側面2sfの反対側の第2側面2srで開口するように隣り合う電池モジュール20同士の間に形成される複数の空気通路25を含む。これにより、第1および第2給気通路P1,P2の各々から各空気通路25に空気を送り込むと共に、複数の空気通路25から流出する空気を排気部材としての第2サイドカバー8を介して外部に流出させることで、電池スタック2の全体を効率よく均等に冷却することが可能となる。ただし、複数の空気通路25は、必ずしも上述のようにして電池スタック2に配置される必要はなく、例えば、各電池モジュール20のモジュールケース21内を通過するものであってもよい。
【0035】
また、上記実施形態において、仕切部材10は、電池スタック2に設けられた各種センサ等に接続されるワイヤーハーネスWHが挿通される収容空間10aを有し、第1サイドカバー7(ダクト部7a)の内部空間で当該ワイヤーハーネスWHを支持(保持)する。これにより、第1および第2給気通路P1,P2における空気の流れの乱れを極めて良好に抑制して電池スタック2の冷却効率を向上させることが可能となる。加えて、ワイヤーハーネスWHの配索スペースや配索用の部品を別途用意する必要がなくなるので、電池パック1の体格の増大化や、部品点数の増加、コストアップ等を良好に抑制することができる。ただし、仕切部材10は、空気の流れを乱すことなく均一にするようにワイヤーハーネスWHを支持するものであれば、必ずしも当該ワイヤーハーネスWHが挿通される収容空間10aを有さないものであってもよい。
【0036】
更に、上記実施形態において、仕切部材10は、電池スタック2に対して固定されて電池モジュール20の積層方向に直交する方向(第2方向)に延在する第1部材11と、第1部材11と互いに嵌合して当該第1部材11と共に収容空間10aを画成し、当該積層方向に直交する方向(第2方向)に延在すると共に第1サイドカバー7(ダクト部7a)の内面に向けて突出する第2部材12と、第2部材12の先端部に固定されると共に第1サイドカバー7の内面に当接する弾性部材13とを含む。これにより、上側ケース半部4および下側ケース半部5(電池スタック2)に対して、第1部材11、第2部材12および第1サイドカバー7をこの順番で組み付けることで、ダクト部7aの内部空間を仕切部材10により複数に分割すると共に、当該内部空間にワイヤーハーネスWHを配索することができる。この結果、電池パック1では、仕切部材10の組付性やワイヤーハーネスWHの配索性をより向上させることが可能となる。
【0037】
なお、電池パック1において、それぞれダクト部7aの内部空間を電池モジュール20の積層方向に分割する複数の仕切部材が第1サイドカバー7に対して設けられてもよく、ダクト部7aの内部空間に3つ以上の給気通路が形成されてもよい。更に、電池パック1は、上下方向に積層された複数の電池モジュール20を含む電池スタックを複数含むものであってもよく、当該複数の電池スタックがパックケース3内に長手方向に並べて配置されてもよい。
【0038】
また、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示の発明は、電池パックの製造産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 電池パック、2 電池スタック、2sf 第1側面、2sr 第2側面、3 パックケース、4 上側ケース半部、5 下側ケース半部、6 支柱、7 第1サイドカバー(給気部材)、7a ダクト部、7b 上側固定部、7c 下側固定部、7ia 第1給気口、7ib 第2給気口、8 第2サイドカバー、9 延長ケース、10 仕切部材、10a 収容空間、11 第1部材、11a 突起、12 第2部材、12a 係合部、13 弾性部材、20 電池モジュール、21 モジュールケース、22 スペーサ、25 空気通路、B1 第1ブロワ、B2 第2ブロワ、MG モータジェネレータ、P1 第1給気通路、P2 第2給気通路、V 車両、WH ワイヤーハーネス。