(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20240730BHJP
F01P 3/12 20060101ALI20240730BHJP
F01P 7/14 20060101ALI20240730BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F02B39/00 B
F01P3/12
F01P7/14 M
F01P7/14 N
F02D29/02 321A
F02D29/02 321C
(21)【出願番号】P 2021177609
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】溝口 紘晶
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特許第6519390(JP,B2)
【文献】特許第5962534(JP,B2)
【文献】実開昭62-59725(JP,U)
【文献】国際公開第2011/108117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02B 39/00
F01P 3/00
F01P 5/10
F01P 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて、ターボチャージャと、前記ターボチャージャに冷却水を供給する電動ポンプと、を備えるエンジンを制御する装置であって、
処理装置及び記憶装置を備えており、
前記処理装置は、
前記エンジンの停止後に前記ターボチャージャへの前記冷却水の供給が必要であるか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理において前記冷却水の供給が必要であると判定された場合に、前記エンジンの停止後に前記電動ポンプを駆動する停止後ポンプ駆動処理と、
前記停止後ポンプ駆動処理の実行回数を前記記憶装置に記録する記録処理と、
を実行するエンジン制御装置。
【請求項2】
前記停止後ポンプ駆動処理は、前記エンジンの停止後における前記電動ポンプの駆動時間を、前記エンジンが停止したときの前記ターボチャージャの温度状態により変化させて行われ、
前記記録処理は、前記実行回数と共に前記駆動時間の情報を記録する
請求項1に記載のエンジン制御装置。
【請求項3】
前記車両は、同車両の走行状況に応じて前記エンジンの自動停止、及び自動再始動を行うものであり、
前記記録処理は、前記自動停止に応じた前記停止後ポンプ駆動処理の実行回数は記録しない
請求項1又は請求項2に記載のエンジン制御装置。
【請求項4】
前記記録処理は、前記エンジンの停止と再始動との繰り返しにより前記停止後ポンプ駆動処理が繰り返し実行された場合の同停止後ポンプ駆動処理の実行回数は1回であるとして前記実行回数を記録する
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンを制御する装置に関し、特に電動ポンプが供給する冷却水で冷却を行う液冷式のターボチャージャを備えるエンジンに適用されるエンジン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高負荷運転の直後にエンジンを停止すると、エンジン停止後にターボチャージャが過熱状態となる場合がある。特許文献1に見られるように、エンジン停止後のターボチャージャの過熱を抑えるため、エンジン停止後に電動ポンプを駆動してターボチャージャに冷却水を供給することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジン停止後に電動ポンプを駆動すると、バッテリの充電量が低下して、いわゆるバッテリ上がりが生じる場合がある。こうしたエンジン停止中の電動ポンプの駆動以外にも、バッテリ上がりの原因は数多く存在する。そのため、バッテリ上がりの原因は、容易には特定できないものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するエンジン制御装置は、車両に搭載されて、ターボチャージャと、前記ターボチャージャに冷却水を供給する電動ポンプと、を備えるエンジンを制御する。同エンジン制御装置は、処理装置及び記憶装置を備えている。同エンジン制御装置における処理装置は、エンジンの停止後にターボチャージャへの冷却水の供給が必要であるか否かを判定する判定処理と、判定処理において冷却水の供給が必要であると判定された場合に、エンジンの停止後に電動ポンプを駆動する停止後ポンプ駆動処理と、停止後ポンプ駆動処理の実行回数を記憶装置に記録する記録処理と、を実行する。
【0006】
上記エンジン制御装置では、バッテリ上がりの原因の一つである停止後ポンプ駆動処理の実行回数が記憶装置に記録される。こうして記録された実行回数を参照することで、バッテリ上がりの原因が停止後ポンプ駆動処理にあるか、それ以外にあるかを判断し易くなる。したがって、バッテリ上がりの原因特定が容易となる。
【0007】
停止後ポンプ駆動処理において、エンジンの停止後における電動ポンプの駆動時間を、エンジンが停止したときのターボチャージャの温度状態により変化させて行うことがある。こうした場合の上記記録処理では、実行回数と共に駆動時間の情報を記録することが望ましい。
【0008】
エンジン制御装置が搭載される車両が、同車両の走行状況に応じてエンジンの自動停止、及び自動再始動を行うものである場合の記録処理では、自動停止に応じた停止後ポンプ駆動処理の実行回数は記録しないことが望ましい。
【0009】
また、記録処理では、エンジンの再始動により停止後ポンプ駆動処理が中断された後、ターボチャージャの冷却が完了する前にエンジンが停止されて停止後ポンプ駆動処理が再実行された場合の同停止後ポンプ駆動処理の実行回数は1回であるとして実行回数を記録することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】エンジン制御装置の一実施形態の構成を模式的に示す図。
【
図2】同エンジン制御装置が実行する停止時処理のフローチャート。
【
図3】同エンジン制御装置が実行する停止後処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、エンジン制御装置の一実施形態を、
図1~
図3を参照して詳細に説明する。本実施形態のエンジン制御装置は、車両に搭載されるエンジン10に適用される。
<エンジン制御装置の構成>
まず、
図1を参照して、本実施形態のエンジン制御装置の構成を説明する。
図1に示すように、エンジン10には、吸気通路11と排気通路12とが設けられている。また、エンジン10には、同エンジン10の回転を受けて動作するオイルポンプ13が設置されている。
【0012】
エンジン10は、ターボチャージャ20を備えている。ターボチャージャ20は、エンジン10の排気通路12に設置されたタービンハウジング21と、エンジン10の吸気通路11に設置されたコンプレッサハウジング22と、を備える。タービンハウジング21とコンプレッサハウジング22とは、ジャーナルハウジング23を介して連結されている。タービンハウジング21の内部には、排気通路12を流れる排気の吹付けにより回転するタービンホイール24が設置されている。コンプレッサハウジング22の内部には、吸気通路11を流れる吸気を回転に応じて圧縮するコンプレッサホイール25が設置されている。ジャーナルハウジング23には、タービンホイール24とコンプレッサホイール25とを連結するタービン軸26が通されている。タービン軸26は、フローティング軸受27により、ジャーナルハウジング23に対して回転自在に軸支されている。また、タービン軸26におけるタービンホイール24との連結部の付近の部分には、タービンハウジング21からジャーナルハウジング23への排気流入を制限するためのシールリング28が取り付けられている。
【0013】
ジャーナルハウジング23の内部には、フローティング軸受27を通ってオイルを流すための通路であるオイル通路29が形成されている。オイル通路29には、オイルポンプ13が吐出したオイルの一部が供給される。また、ジャーナルハウジング23の内部には、冷却水を流すための通路であるウォータジャケット30が形成されている。ウォータジャケット30には、ターボチャージャ20の外部に設置された電動ポンプ31により冷却水が供給される。電動ポンプ31は、車両に搭載されたバッテリ14から供給される電力により動作する。また、車両には、エンジン10の回転を受けて発電するオルタネータ15が搭載されている。そして、バッテリ14には、オルタネータ15が発電した電力が充電される。
【0014】
エンジン10を搭載する車両には、ECM(エンジン制御モジュール)40が搭載されている。ECM40は、エンジン制御のための各種処理を実行する処理装置41と、エンジン制御用のプログラムやデータが記憶された記憶装置42と、を備えている。ECM40には、車速V、エンジン回転数NE、アクセルペダル開度ACC、過給圧PB、吸気流量GA、吸気温THA、外気温THOなどの車両の走行状態を示す状態量の検出信号が入力されている。また、ECM40には、イグニッションスイッチ43の操作状況を示す信号であるIG信号が入力されている。そして、ECM40は、入力された各信号に基づき、エンジン10のスロットル開度TA、燃料噴射量QINJ、点火時期AOP等の制御を行っている。
【0015】
エンジン10の運転中にECM40は、タービンハウジング21の温度であるハウジング温度TH1と、オイルコーキングの発生部位P1~P3の各温度と、を推定している。発生部位P1は、オイル通路29におけるシールリング28の近傍の部分である。発生部位P2は、オイル通路29におけるフローティング軸受27の近傍の部分である。発生部位P3は、オイル通路29におけるフローティング軸受27よりも下流側の部分であるオイルドレイン部である。以下の説明では、発生部位P1の温度をシールリング温度TH2、発生部位P2の温度をベアリング温度TH3、発生部位P3の温度をオイルドレイン温度TH4、と記載する。
【0016】
ECM40は、ハウジング温度TH1、シールリング温度TH2、ベアリング温度TH3、及びオイルドレイン温度TH4を、車両の走行状況を示す各種の状態量に基づき推定している。各温度の推定に用いる状態量には、車速V、エンジン回転数NE、アクセルペダル開度ACC、燃料噴射量QINJ、過給圧PB、吸気流量GA、吸気温THA、及び外気温THOが含まれる。これら温度の推定は、例えば機械学習により学習されたニューラルネットワークを用いて行われる。
【0017】
なお、エンジン10を搭載する車両では、走行状況に応じてエンジン10の自動停止、及び自動再始動を行っている。エンジン10の自動停止、及び自動再始動は、バッテリ14の充電量が一定以上の場合にのみ行われる。以下の説明では、こうした自動停止ではない、イグニッションスイッチ43のオフ操作に応じたエンジン10の停止を、同エンジン10の手動停止と記載する。
【0018】
<停止後ポンプ駆動処理>
ECM40は、エンジン10の停止時に、ハウジング温度TH1、シールリング温度TH2、ベアリング温度TH3、及びオイルドレイン温度TH4に基づき、ターボチャージャ20の冷却の要否を判定している。そして、ECM40は、冷却が必要と判定すると、エンジン10の停止後に電動ポンプ31を駆動して冷却水を供給することで、ターボチャージャ20を冷却する停止後ポンプ駆動処理を行っている。
【0019】
図2に、停止後ポンプ駆動処理のため、エンジン10の停止時にECM40が実行する停止時処理のフローチャートを示す。本処理は、エンジン10の自動停止時、手動停止時の双方において実行される。
【0020】
ECM40は、エンジン10の停止に応じて本処理を開始すると、まずステップS100において、ハウジング温度TH1、シールリング温度TH2、ベアリング温度TH3、及びオイルドレイン温度TH4の現在の値を取得する。これら温度は、エンジン10の停止時におけるターボチャージャ20の温度状態を示す値である。
【0021】
続いて、ECM40はステップS110において、第1要求駆動時間TM1、第2要求駆動時間TM2、第3要求駆動時間TM3、及び第4要求駆動時間TM4を演算する。第1要求駆動時間TM1は、ステップS100で取得したハウジング温度TH1に基づき、第1演算マップMAP1を用いて演算される。第1要求駆動時間TM1は、ハウジング温度TH1を適正な温度に低下させるために必要な電動ポンプ31の駆動時間を示している。第2要求駆動時間TM2は、ステップS100で取得したシールリング温度TH2に基づき、第2演算マップMAP2を用いて演算される。第2要求駆動時間TM2は、オイルコーキングの生成を抑制可能な適正な温度にシールリング温度TH2を低下させるために必要な電動ポンプ31の駆動時間を示している。第3要求駆動時間TM3は、ステップS100で取得したベアリング温度TH3に基づき、第3演算マップMAP3を用いて演算される。第3要求駆動時間TM3は、オイルコーキングの生成を抑制可能な適正な温度にベアリング温度TH3を低下させるために必要な電動ポンプ31の駆動時間を示している。第4要求駆動時間TM4は、ステップS100で取得したオイルドレイン温度TH4に基づき、第4演算マップMAP4を用いて演算される。第4要求駆動時間TM4は、オイルコーキングの生成を抑制可能な適正な温度にオイルドレイン温度TH4を低下させるために必要な電動ポンプ31の駆動時間を示している。第1~第4演算マップMAP1~MAP4は、各々対応する部位の温度が一定の温度未満の場合には、要求駆動時間の値として「0」を演算するように設定されている。また、第1~第4演算マップMAP1~MAP4は、各々対応する部位の温度が上記一定の温度以上の場合には、その温度が高いほど長い時間を要求駆動時間の値として演算するように設定されている。なお、第1~第4演算マップMAP1~MAP4のそれぞれにおける上記一定の値は、マップ毎に個別の値となっている。そして、ECM40は、次のステップS120において、第1~第4要求駆動時間TM1~TM4の中で最大の値を、要求駆動時間TMRの値として設定する。
【0022】
次にECM40はステップS130において、要求駆動時間TMRの値として「0」よりも大きい値が設定されているか否かを判定する。「0」が要求駆動時間TMRの値として設定されている場合(NO)は、エンジン10の停止後にターボチャージャ20への冷却水の供給が不要な場合である。この場合のECM40は、そのまま今回のエンジン10の停止時における停止時処理を終了する。一方、「0」よりも大きい値が要求駆動時間TMRの値として設定されている場合(YES)は、エンジン10の停止後にターボチャージャ20への冷却水の供給が必要な場合である。この場合のECM40は、ステップS140に処理を進める。なお、本実施形態では、このステップS130の処理が、エンジン10の停止後にターボチャージャ20への冷却水の供給が必要であるか否かを判定する判定処理に対応している。
【0023】
ステップS140に処理を進めると、ECM40は、そのステップS140において、記録済みフラグがセットされているか否かを判定する。そして、ECM40は、記録済みフラグがセットされている場合(YES)にはステップS180に処理を進める。また、ECM40は、記録済みフラグがセットされていない場合(NO)にはステップS150に処理を進める。
【0024】
ステップS150においてECM40は、今回のエンジン10の停止が自動停止であるか否かを判定する。そして、ECM40は、自動停止である場合(YES)にはステップS180に処理を進める。また、ECM40は、自動停止でない場合(NO)、すなわち今回のエンジン10の停止が、イグニッションスイッチ43のオフ操作に応じた手動停止である場合には、ステップS160に処理を進める。
【0025】
ステップS160においてECM40は、記憶装置42に記録される実行回数カウンタのカウントアップを行う。本実施形態では、要求駆動時間TMRの設定範囲を複数の時間帯に区分けするとともに、時間帯別に実行回数カウンタを用意している。そして、ステップS160では、現在の要求駆動時間TMRの設定値に対応した時間帯の実行回数カウンタをカウントアップしている。なお、記憶装置42における各実行回数カウンタの値は、ECM40の給電停止中も保持される。そして、ECM40は、次のステップS170において、記録済みフラグをセットした後、ステップS180に処理を進める。一方、上記のように、停止時処理の開始時に記録済みフラグが既にセットされていた場合(S140:YES)、及び自動停止の場合(S150:YES)には、実行回数カウンタのカウントアップを行わずに、ステップS180に処理が進められる。なお、本実施形態では、上記ステップS160の処理が、停止後ポンプ駆動処理の実行回数を記憶装置42に記録する記録処理に対応している。
【0026】
さて、ステップS180に処理を進めると、ECM40はそのステップS180において、駆動時間カウンタTMCの値を「0」にリセットする。そして、ECM40は、ステップS190において、電動ポンプ31の駆動を開始した後、今回のエンジン10の停止時における停止時処理を終了する。
【0027】
なお、ECM40は、エンジン10の停止後に電動ポンプ31が駆動中である場合には、
図3に示す停止後処理を既定の制御周期毎に実行する。停止後処理を開始すると、ECM40はステップS200において、駆動時間カウンタTMCの値をカウントアップする。そして、ECM40は、ステップS210において、駆動時間カウンタTMCの値が要求駆動時間TMRの値以上となっているか否かを判定する。駆動時間カウンタTMCが要求駆動時間TMRの値未満の値である場合(NO)には、ECM40はそのまま今回の制御周期における停止後処理を終了する。また、駆動時間カウンタTMCが要求駆動時間TMRの値以上の値である場合(YES)には、ECM40はステップS220において電動ポンプ31の駆動を停止する。さらに、ECM40は、ステップS230において記録済みフラグをクリアした後、今回の制御周期における停止後処理を終了する。
【0028】
本実施形態では、以上の停止時処理、及び停止後処理を通じて、停止後ポンプ駆動処理が実行されている。停止後ポンプ駆動処理は、要求駆動時間TMRの値に応じた時間、電動ポンプ31を駆動することで完了となる。そして、停止後ポンプ駆動処理の完了と共に記録済みフラグはクリアされる。
【0029】
一方、停止後ポンプ駆動処理の開始後、要求駆動時間TMRの値に応じた時間が経過する前にエンジン10が再始動された場合には停止後ポンプ駆動処理は中断される。この場合には、記録済みフラグはセットされたままとなる。
【0030】
なお、ECM40は、エンジン10の再始動後、ターボチャージャ20の温度が高ければ、電動ポンプ31を駆動してターボチャージャ20を冷却している。そして、ECM40は、ターボチャージャ20が冷却されて電動ポンプ31を停止するときに、記録済みフラグをクリアする。
【0031】
<実施形態の作用効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
エンジン10の高負荷運転時には、タービンハウジング21に高温の排気が流入して、ターボチャージャ20が高温となる。そして、ターボチャージャ20の内部のオイルが炭化して、オイル通路29にオイルコーキングが堆積することがある。エンジン10の運転中には、電動ポンプ31を駆動して冷却水を供給することで、ターボチャージャ20を冷却している。また、本実施形態では、高負荷運転の直後のようなターボチャージャ20が高温の状態でエンジン10が停止した場合には、停止後ポンプ駆動処理によりエンジン10の停止後も電動ポンプ31を駆動している。そして、これにより、ターボチャージャ20を冷却して、オイルコーキングの生成及び堆積を抑えている。
【0032】
エンジン10が停止すると、オルタネータ15の発電も停止するため、バッテリ14への充電が行われなくなる。そのため、停止後ポンプ駆動処理により、エンジン10の停止後に電動ポンプ31を駆動すると、その駆動に伴う電力消費のため、バッテリ14の充電量が低下する。そして、停止後ポンプ駆動処理によるエンジン10の停止後の電動ポンプ31の駆動が長時間行われたり、高頻度で行われたりすると、バッテリ14の充電能力が低下する、いわゆるバッテリ上がりが生じる場合がある。
【0033】
バッテリ上がりが発生した車両がディーラに持ち込まれることがある。そうした場合のディーラでは、バッテリ上がりの原因を特定して必要な整備を行う。ただし、エンジン10の停止後の電動ポンプ31の駆動以外にも、オルタネータ15等の車両の電気系の故障なども、バッテリ上がりの原因となる。
【0034】
これに対して、本実施形態では、停止後ポンプ駆動処理の実行回数を記憶装置42に記録している。こうして記憶装置42に記録された停止後ポンプ駆動処理の実行回数は、ディーラ等に設置されたスキャンツールにより確認可能とされている。そのため、バッテリ上がりの原因の特定が容易となる。
【0035】
以上の本実施形態のエンジン制御装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)停止後ポンプ駆動処理の実行回数を記憶装置42に記録している。そのため、バッテリ上がりの原因特定が容易となる。
【0036】
(2)本実施形態では、エンジン10の停止時のターボチャージャ20の温度状態により、停止後ポンプ駆動処理での電動ポンプ31の駆動時間を変化させている。停止後ポンプ駆動処理による電動ポンプ31の駆動が、バッテリ14の充電能力に与える影響は、駆動時間の短い場合よりも駆動時間が長い方が大きくなる。本実施形態では、駆動時間の時間帯毎に停止後ポンプ駆動処理の実行回数を記録している。そのため、バッテリ上がりの原因が、停止後ポンプ駆動処理での電動ポンプ31の駆動にあるかどうかを判断し易くなる。
【0037】
(3)バッテリ14の充電量が低下した場合にはエンジン10の自動停止が行われない。また、自動停止後のエンジン10の再始動により、バッテリ14の充電が再開される。そのため、自動停止時の停止後ポンプ駆動処理は、バッテリ14の充電能力の低下につながり難いと考えられる。その点、本実施形態では、自動停止時の停止後ポンプ駆動処理については、記録する実行回数に含めないようにしている。そのため、バッテリ上がりの原因が、停止後ポンプ駆動処理での電動ポンプ31の駆動にあるかどうかを適切に判断し易くなる。
【0038】
(4)エンジン10の停止と再始動とが繰り返された場合、エンジン10の停止の都度、停止後ポンプ駆動処理が実行されることがある。こうした場合には、停止後ポンプ駆動処理での電動ポンプ31の駆動が短時間で中断されるため、バッテリ14の充電能力の低下につながり難い。こうした場合の繰り返しの停止後ポンプ駆動処理の実行回数を忠実に記録すると、その実行回数からバッテリ上がりの原因を判断し難くなる虞がある。そこで、本実施形態では、エンジン10の停止と再始動との繰り返しにより停止後ポンプ駆動処理が繰り返し実行された場合の同停止後ポンプ駆動処理の実行回数は1回であるとして実行回数を記録している。そのため、バッテリ上がりの原因が、停止後ポンプ駆動処理での電動ポンプ31の駆動にあるかどうかを適切に判断し易くなる。
【0039】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・エンジン10の自動停止時における停止後ポンプ駆動処理の実行や、エンジン10の停止と再始動が繰り返された場合の繰り返しの停止後ポンプ駆動処理の実行についても、記録する実行回数に含めるようにしてもよい。
【0040】
・上記実施形態では、駆動時間の時間帯別に停止後ポンプ駆動処理の実行回数を記録することで、同処理での電動ポンプ31の駆動時間をある程度に確認できるようにしていた。停止後ポンプ駆動処理の実行回数を電動ポンプ31の駆動時間の時間帯別に記録する以外にも、電動ポンプ31の駆動時間の情報を記録する方法は存在する。例えば停止後ポンプ駆動処理での電動ポンプ31の総駆動時間や平均駆動時間を記録するといった方法である。いずれにせよ、停止後ポンプ駆動処理の実行回数と共に、同処理での電動ポンプ31の駆動時間の情報を記録しておけば、バッテリ上がりの原因特定に役立てられる。
【0041】
・停止後ポンプ駆動処理での電動ポンプ31の駆動時間を固定する場合等には、同処理の実行回数のみを記録するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10…エンジン
11…吸気通路
12…排気通路
13…オイルポンプ
14…バッテリ
15…オルタネータ
20…ターボチャージャ
21…タービンハウジング
22…コンプレッサハウジング
23…ジャーナルハウジング
24…タービンホイール
25…コンプレッサホイール
26…タービン軸
27…フローティング軸受
28…シールリング
29…オイル通路
30…ウォータジャケット
31…電動ポンプ
40…ECM(エンジン制御モジュール)
41…処理装置
42…記憶装置
43…イグニッションスイッチ