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  • 特許-積層セラミックコンデンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H01G4/30 201G
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 516
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021209093
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2023093942
(43)【公開日】2023-07-05
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】土井 章孝
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216339(JP,A)
【文献】特開平06-084693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に交互に積層される複数の誘電体セラミック層及び複数の内部電極層を含むとともに、前記積層方向において相対する一対の主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する一対の側面と、前記積層方向及び前記幅方向に直交する長さ方向において相対する一対の端面と、を有する積層体と、
前記積層体の前記長さ方向の両端部に、少なくとも前記一対の端面のそれぞれを覆うように配置され、前記内部電極層に接続される一対の外部電極と、を備え、
前記外部電極は、
前記端面のそれぞれを覆って前記内部電極層に接続される第1の外部電極層と、
前記第1の外部電極層の上に形成される第2の外部電極層と、
前記第2の外部電極層の上に形成されるめっき層と、を備え、
前記第1の外部電極層は、Ni及び誘電体領域を含み、
前記第2の外部電極層は、Cu及びガラスを含み、
前記第1の外部電極層と前記第2の外部電極層との界面に、Sn、In、Ga、Zn、Bi、Pb、Fe、V、Y、Cuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属群を有し、
前記Ni及び前記Cuのうちの少なくともいずれか一方に前記金属群が固溶している、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記Niに前記金属群が固溶している、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記Cuに前記金属群が固溶している、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記Cuに固溶している前記金属群の濃度は、前記Niに固溶している前記金属群の濃度よりも低い、請求項3に記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘電体セラミック層と内部電極層とを多層化した積層体と、この積層体の両端部に配置された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサが知られている。この種の積層セラミックコンデンサにおいては、外部電極の最外層にめっきが施されたものがある。例えば特許文献1には、めっき層の下にNi、Cu及びNi-Cu合金からなる群から選択された1つ以上を含む中間層を設けることにより、めっき液の浸透防止を図った積層セラミックコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-214714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
外部電極によって十分な耐湿性を図ることは、積層セラミックコンデンサの信頼性を向上させる上で肝要であり、耐湿性をより向上させるための技術が求められている。
【0005】
本発明は、十分な耐湿性を有する積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層セラミックコンデンサは、積層方向に交互に積層される複数の誘電体セラミック層及び複数の内部電極層を含むとともに、前記積層方向において相対する一対の主面と、前記積層方向に直交する幅方向において相対する一対の側面と、前記積層方向及び前記幅方向に直交する長さ方向において相対する一対の端面と、を有する積層体と、前記積層体の前記長さ方向の両端部に、少なくとも前記一対の端面のそれぞれを覆うように配置され、前記内部電極層に接続される一対の外部電極と、を備え、前記外部電極は、前記端面のそれぞれを覆って前記内部電極層に接続される第1の外部電極層と、前記第1の外部電極層の上に形成される第2の外部電極層と、前記第2の外部電極層の上に形成されるめっき層と、を備え、前記第1の外部電極層は、Ni及び誘電体領域を含み、前記第2の外部電極層は、Cu及びガラスを含み、前記第1の外部電極層と前記第2の外部電極層との界面に、Sn、In、Ga、Zn、Bi、Pb、Fe、V、Y、Cuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属群を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、十分な耐湿性を有する積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの概略斜視図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図2のIII部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の概略斜視図である。図2は、図1に示すII-II線に沿った断面図である。
【0010】
図1に示すように、実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、全体として略直方体形状を有している。この積層セラミックコンデンサ10は、積層体12と、互いに離間して配置された一対の外部電極20と、を備えている。
【0011】
図1において、矢印Tは、積層セラミックコンデンサ10及び積層体12の積層方向を示している。図1及び図2において、矢印Lは、積層セラミックコンデンサ10及び積層体12の、積層方向Tに直交する長さ方向を示している。図1において、矢印Wは、積層セラミックコンデンサ10及び積層体12の、積層方向T及び長さ方向Lに直交する幅方向を示している。図2に示す断面図は、幅方向Wの中央部における長さ方向L及び積層方向Tに沿った断面であるLT断面を示している。
【0012】
図1及び図2に示すように、積層体12は、積層方向Tにおいて相対する一対の主面17aと、幅方向Wにおいて相対する一対の側面17bと、長さ方向Lにおいて相対する一対の端面17cと、有する。一対の主面17aは、第1の主面17a1と、第1の主面17a1と積層方向Tにおいて相対する第2の主面17a2と、を含む。一対の側面17bは、第1の側面17b1と、第1の側面17b1と幅方向Wにおいて相対する第2の側面17b2と、を含む。一対の端面17cは、第1の端面17c1と、第1の端面17c1と長さ方向Lにおいて相対する第2の端面17c2と、を含む。なお、以下においては、積層体12における第1の端面17c1側の長さ方向Lの一端部を第1の端面側の端部17d1といい、積層体12における第2の端面17c2側の長さ方向Lの他端部を第2の端面側の端部17d2という。
【0013】
なお、積層セラミックコンデンサ10の寸法は、例えば、長さ方向Lが0.2mm以上1.2mm以下、幅方向Wが0.1mm以上0.7mm以下、積層方向Tが0.1mm以上0.7mm以下であることが好ましい。
【0014】
一対の外部電極20は、第1の端面側の端部17d1に配置された第1の外部電極20aと、第2の端面側の端部17d2に配置された第2の外部電極20bと、を含む。第1の外部電極20aは、第1の端面17c1を覆っており、第2の外部電極20bは、第2の端面17c2を覆っている。
【0015】
図2に示すように、積層体12は、積層方向Tに沿って交互に積層された複数の誘電体セラミック層13及び複数の内部電極層14を有する。また、積層体12は、複数の内部電極層14のそれぞれが後述する第1誘電体セラミック層13aを介して対向している内層部12Aと、内層部12Aを積層方向Tに挟むように配設された一対の外層部12Bと、を有する。
【0016】
誘電体セラミック層13は、例えばチタン酸バリウムを主成分とするセラミックス材料が焼成されて形成される。内部電極層14は、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等に代表される金属材料、あるいは他の導電材料により形成される。
【0017】
図2に示すように、複数の内部電極層14は、複数の第1の内部電極層14a1と、複数の第2の内部電極層14a2と、を含む。第1の内部電極層14a1と第2の内部電極層14a2とは、誘電体セラミック層13を挟んで交互に積層されている。
【0018】
内部電極層14の厚さは、例えば、0.3μm以上0.4μm以下である。内部電極層14の厚さを0.3μm以上にすることで、電極途切れなどの不良が抑制される。また、内部電極層14の厚さを0.4μm以下にすることで、コンデンサ中の誘電体層が占める割合の低下、及びそれによる容量低下を抑制することが可能になる。
【0019】
積層体12の第1の端面17c1においては、複数の第1の内部電極層14a1の長さ方向Lの一端側の端面がそれぞれ露出しており、それら端面に、第1の外部電極20aが接触して電気的に接続されている。積層体12の第2の端面17c2においては、複数の第2の内部電極層14a2の長さ方向Lの他端側の端面がそれぞれ露出しており、それら端面に、第2の外部電極20bが接触して電気的に接続されている。これにより、第1の外部電極20aと第2の外部電極20bとの間は、複数のコンデンサ要素が電気的に並列に接続された構造となっている。
【0020】
図2に示すように、誘電体セラミック層13は、第1の内部電極層14a1と第2の内部電極層14a2との間に挟まれた複数の第1誘電体セラミック層13aと、積層方向Tの両端に配置され、第1誘電体セラミック層13aよりも厚みの大きい一対の第2誘電体セラミック層13bと、を有する。
【0021】
第1誘電体セラミック層13aの厚さは、例えば0.10μm以上1.00μm以下である。第1誘電体セラミック層13aの厚さを0.10μm以上にすることで、絶縁特性の低下を防ぐことができ、信頼性の向上につながる。一方、第1誘電体セラミック層13aの厚さを1.00μm以下にすることで薄層化され、容量の向上を図ることが可能になる。また、第1誘電体セラミック層13aの層数は、例えば100層以上900層以下である。
【0022】
積層セラミックコンデンサ10は、例えば、誘電体セラミック層13及び内部電極層14となる材料が積層されて積層体12が形成され、その積層体12となる各材料が焼成され、この後、外部電極20が形成されることにより製造される。
【0023】
積層体12は、例えば次のような方法で製造される。
誘電体セラミック層13となる厚さが例えば0.6μm以上1.2μm以下程度のセラミックグリーンシートの表面に、内部電極層14となる導電性ペーストを印刷して内部電極パターンを形成する。内部電極パターンの厚さは、例えば、0.6μm以上2.0μm以下程度とされる。
【0024】
内部電極パターンが形成された内層部12A用のセラミックグリーンシートを所定枚数積層し、次いで、積層方向Tの両端面に外層部12B用のセラミックグリーンシートをそれぞれ積層して積層シートを得る。この積層シートを積層方向にプレスしてセラミックグリーンシート同士を圧着して、積層マザーブロックを得る。次いで、この積層マザーブロックを、ダイシングや押し切り等の方法でチップ状に個片化して複数のチップを得る。このようにして得られたチップを所定条件で焼成することにより、積層体12を得る。なお、この後、バレル研磨等の方法で積層体12を研磨してもよい。
【0025】
図1及び図2に示すように、第1の外部電極20aは、積層体12の第1の端面側の端部17d1に配置され、第2の外部電極20bは、積層体12の第2の端面側の端部17d2に配置されている。第1の外部電極20a及び第2の外部電極20bは、同じ構造の導電膜により構成されている。
以下において、第1の外部電極20aと第2の外部電極20bとを区別せずに説明する場合には、双方を外部電極20と称する場合がある。
【0026】
図2に示すように、実施形態の外部電極20は、第1の外部電極層21と、第1の外部電極層21の上に形成される第2の外部電極層22と、第2の外部電極層22の上に形成されるめっき層23と、第1の外部電極層21と第2の外部電極層22との間の界面領域24と、を備える。第1の外部電極層21及び第2の外部電極層22は、いずれも焼き付けにより形成される。ここで、界面とは、境界線を表しているものではなく、第1の外部電極層21と第2の外部電極層22にまたがった領域であり、両方の領域を含んでいてもよく、また、第1の外部電極層21と第2の外部電極層22との間の領域を含んでいてもよい。
【0027】
第1の外部電極層21は、Niを主成分とする導電膜であり、積層体12の第1の端面17c1及び第2の端面17c2をそれぞれ覆っている。第1の外部電極層21は、第1の端面17c1及び第2の端面17c2のそれぞれに露出する内部電極層14の端面に直接接触して電気的に接続される。第1の外部電極層21は、第1の端面側の端部17d1においては、第1の端面17c1の全面を覆い、かつ、互いに相対する第1の主面17a1及び第2の主面17a2と、互いに相対する第1の側面17b1及び第2の側面17b2との4面に跨るように形成されている。また、第2の端面側の端部17d2においても同様である。すなわち第2の端面側の端部17d2において、第1の外部電極層21は、第2の端面17c2の全面を覆い、かつ、互いに相対する第1の主面17a1及び第2の主面17a2と、互いに相対する第1の側面17b1及び第2の側面17b2との4面に跨るように形成されている。
【0028】
第2の外部電極層22は、Cuを主成分とする導電膜であり、第1の外部電極層21の上に形成されて第1の外部電極層21を覆っている。第2の外部電極層22は、少なくとも第1の外部電極層21における第1の端面17c1及び第2の端面17c2のそれぞれを覆う部分を覆って設けられる。第2の外部電極層22は、第1の外部電極層21の表面全面を覆うように設けてよい。また、第2の外部電極層22は、例えば第1の外部電極層21の第1の主面17a1、第2の主面17a2、第1の側面17b1及び第2の側面17b2を覆う部分の端縁側の一部が露出するように設けてもよい。
【0029】
なお、本明細書では、Niを主成分とするという意味は、Niの成分が50wt%以上を占めることをいい、Cuを主成分とするという意味は、Cuの成分が50wt%以上を占めることをいう。すなわち、第1の外部電極層21はNiを50wt%以上含み、第2の外部電極層22はCuを50wt%以上含む。
【0030】
めっき層23は、例えば、Niめっき層やSnめっき層等による単層構造、あるいはNiめっき層の上にSnめっき層を形成した複層構造であってよい。めっき層23は、例えばバレルめっき法により形成される。バレルめっき法は、バレル内のめっき液に、第2の外部電極層22まで形成された複数の積層体12を投入して浸漬し、バレルを回転させながら第2の外部電極層22の表面にめっき層23を形成する。
【0031】
図3は、図2のIIIで示す部分の拡大図である。図3では第1の外部電極20a側を示しているが、第2の外部電極20b側も同様の構成である。したがって以下では、図3を参照して第1の外部電極20aを外部電極20の代表として説明する。
【0032】
図3に示すように、第1の外部電極層21は、第1の金属成分21a中に、誘電体粒子21bを含んでいる。誘電体粒子21bは、誘電体領域の一例である。第1の金属成分21aはNiを主成分とするとともに、後述する金属群24aを含んでいる。誘電体粒子21bは、第1の金属成分21a中の積層体12側において分散している。誘電体粒子21bは、誘電体セラミック層13を形成するセラミックス材料の粒子である。誘電体粒子21bは、第1の外部電極層21を積層体12に焼き付ける際に、誘電体セラミック層13から第1の金属成分21a中に移動することにより、第1の外部電極層21中に分散して存在する。例えば、第1の外部電極層21を積層体12とともに同時に焼成(コファイア)して積層体12に焼き付けた場合、第1の外部電極層21中の誘電体粒子21bの量は、同時焼成でない場合よりも多くなる。
【0033】
図3に示すように、第2の外部電極層22は、Cuを主成分とする第2の金属成分22a中に、ガラス22bを含んでいる。ガラス22bは、例えば、ケイ酸(SiO)、アルミナ(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化バリウム(BaO)、ジルコニア(ZrO)といった酸化物を含むガラス成分である。
【0034】
実施形態においては、図2に示すように、第1の外部電極層21と第2の外部電極層22との間に、界面領域24が形成されている。この界面領域24は、図3に示すように、金属群24aを含む。実施形態において図2に示す界面領域24は、図3に示す多数の金属群24aが、第1の外部電極層21と第2の外部電極層22との間において層状に凝集して形成された領域である。すなわち実施形態の積層セラミックコンデンサ10は、第1の外部電極層21と第2の外部電極層22との界面に、金属群24aを有する。金属群24aは、Sn、In、Ga、Zn、Bi、Pb、Fe、V、Y、Cuのうちの少なくとも1種の金属を含んでいる。ここでは、金属群24aが含む金属が1種の場合も、金属群24aと称する。
【0035】
金属群24aによる界面領域24は、第1の外部電極層21を積層体12に焼き付けて形成した際に、第1の外部電極層21に含まれる金属群24aが、積層体12とは反対側の表面側に移動することにより形成される。したがって第1の外部電極層21の界面領域24に近接する領域にも、金属群24aが固溶している。
【0036】
また、図3に示すように、第2の外部電極層22の第2の金属成分22a中にも、金属群24aが固溶している。これは、第2の外部電極層22を、既に形成されている第1の外部電極層21に焼き付けて形成した際に、界面領域24中の金属群24aが第2の外部電極層22に移動することにより固溶する。第2の外部電極層22中の金属群24aは、界面領域24に近接する領域に固溶している。
【0037】
実施形態の積層セラミックコンデンサ10においては、第2の外部電極層22が含むCuに固溶している金属群24aの濃度は、第1の外部電極層21が含むNiに固溶している金属群24aの濃度よりも低い場合がある。この濃度の相違は、第2の外部電極層22の焼き付け時においては、第1の外部電極層21に含まれる金属群24aが、既に形成されている界面領域24に阻まれて第2の外部電極層22に移動する量が少ないことが理由と推測される。
【0038】
第1の外部電極層21は、例えば、Ni粉を含む導電性Niペーストを積層体12の第1の端面側の端部17d1及び第2の端面側の端部17d2に塗布し、所定の焼き付け温度で加熱するなどの方法で形成される。上述したように、第1の外部電極層21を積層体12とともに同時に焼成(コファイア)して積層体12に焼き付けてもよい。第2の外部電極層22は、Cu粉を含む導電性Cuペーストを第1の外部電極層21の上に塗布し、所定の焼き付け温度で加熱するなどの方法で形成される。
【0039】
このように、第1の外部電極層21の形成工程を行った後に、第2の外部電極層22の形成工程を行ってもよいが、第1の外部電極層21の形成と第2の外部電極層22の形成とを同時に行ってもよい。その場合、積層体12に導電性Niペーストを塗布し、その上に導電性Cuペーストを塗布した状態で、同時に焼き付ける。
【0040】
実施形態の積層セラミックコンデンサ10によれば、上述したようにめっき層23をめっき液に浸漬して形成する場合、めっき層23の表面から外部電極20の内部にめっき液すなわち水分が浸入することが想定される。しかし実施形態によれば、界面領域24を形成する金属群24aにより水分の侵入が阻止され、積層体12まで水分が到達しにくい。これにより、例えばめっき層23をめっき液によって形成してもめっき液の侵入が抑制され、品質が確保される。
【0041】
外部電極20の全体の厚みは、例えば、10μm以上30μm以下である。また、第1の外部電極層21の厚みは、5μm以上15μm以下であり、第2の外部電極層22の厚みは、第1の外部電極層21より厚く、10μm以上20μm以下である。
【0042】
第1の外部電極層21及び第2の外部電極層22の厚みの測定方法としては、例えば、研磨により露出させた積層体12の幅方向W中央近傍のLT断面を観察する方法が挙げられる。測定機器としては、例えば、波長分散型X線分析(WDX)またはエネルギー分散型X線分析(EDX)と、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)とが挙げられる。
【0043】
また、LT断面において、第1の外部電極層21及び第2の外部電極層22の間を10点測定し、その平均値をモル比とした。界面領域24の厚みは、例えば10nm以上80nm以下が好ましい。その理由としては、界面領域24を設けることで耐湿性を向上できる。ただし、界面領域24の厚みが80nmの厚みの場合、第2の外部電極層22が劣化する場合がある。
【0044】
以上説明した実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10によれば、以下の効果が奏される。
【0045】
実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10は、積層方向Tに交互に積層される複数の誘電体セラミック層13及び複数の内部電極層14を含むとともに、積層方向Tにおいて相対する一対の主面17aと、積層方向Tに直交する幅方向Wにおいて相対する一対の側面17bと、積層方向T及び幅方向Wに直交する長さ方向Lにおいて相対する一対の端面17cと、を有する積層体12と、積層体12の長さ方向Lの両端部に、少なくとも一対の端面17cのそれぞれを覆うように配置され、内部電極層14に接続される一対の外部電極20と、を備え、外部電極20は、端面17cのそれぞれを覆って内部電極層14に接続される第1の外部電極層21と、第1の外部電極層21の上に形成される第2の外部電極層22と、第2の外部電極層22の上に形成されるめっき層23と、を備え、第1の外部電極層21は、Ni及び誘電体粒子21bを含み、第2の外部電極層22は、Cu及びガラス22bを含み、第1の外部電極層21と第2の外部電極層22との界面に、Sn、In、Ga、Zn、Bi、Pb、Fe、V、Y、Cuのうちの少なくとも1種の金属を含む金属群24aを有する。
【0046】
これにより、金属群24aが水分の侵入を阻止するため、積層セラミックコンデンサ10は外部電極20によって十分な耐湿性を有する。
【0047】
実施形態の積層セラミックコンデンサ10においては、第1の外部電極層21が含むNiに、金属群24aが固溶していることが好ましい。
【0048】
これにより、金属群24aの密度及び厚みが増加するため、耐湿性がさらに向上する。
【0049】
実施形態の積層セラミックコンデンサ10においては、第2の外部電極層22が含むCuに金属群24aが固溶していることが好ましい。
【0050】
これにより、金属群24aの密度及び厚みが増加するため、耐湿性がさらに向上する。
【0051】
実施形態の積層セラミックコンデンサ10においては、第2の外部電極層22が含むCuに固溶している金属群24aの濃度は、第1の外部電極層21が含むNiに固溶している金属群24aの濃度よりも低いことが好ましい。
【0052】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に制限はされず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
10 積層セラミックコンデンサ
12 積層体
13 誘電体セラミック層
14 内部電極層
17a 主面
17b 側面
17c 端面
20 外部電極
21 第1の外部電極層
21b 誘電体粒子(誘電体領域)
22 第2の外部電極層
22b ガラス
23 めっき層
24a 金属群
L 長さ方向
T 積層方向
W 幅方向
図1
図2
図3