(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】二次電池及び二次電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240730BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240730BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240730BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240730BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240730BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240730BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/058
H01M4/38 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/44 A
C01B33/02 Z
(21)【出願番号】P 2021215159
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 光俊
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/050100(WO,A1)
【文献】特開2006-120612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
10/05-10/0587
10/36-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池であって、負極と電解質層と正極とを有し、
前記負極が負極活物質としてのSi粒子を有し、
前記正極が正極活物質としてのLi含有化合物を有し、
前記Si粒子がクラスレート構造を有し、
前記正極における前記Li含有化合物の目付量C
1と、前記負極における前記Si粒子の目付量C
2との比C
1/C
2が、8.33以下である、
二次電池。
【請求項3】
前記Li含有化合物が、構成元素として、少なくとも、Liと、Ni、Co及びMnのうちの少なくとも一つと、Oとを含む、
請求項1又は2に記載の二次電池。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池と、
前記二次電池の充電及び放電を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が前記二次電池の充電電圧を4.2V以下に制御する、
二次電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はシリコン系負極活物質を用いた二次電池及び二次電池システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
シリコン系負極活物質を用いた電池が知られている。例えば、特許文献1には、負極活物質として珪素酸化物を用いたリチウムイオン二次電池が開示されている。また、特許文献2には、負極活物質としてシリコンクラスレートIIを用いたリチウムイオン二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-113547号公報
【文献】特開2021-034279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコン系負極活物質を用いた電池は、その耐久性について向上の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
二次電池であって、負極と電解質層と正極とを有し、
前記負極が負極活物質としてのSi粒子を有し、
前記正極が正極活物質としてのLi含有化合物を有し、
前記Si粒子がクラスレート構造を有し、
前記正極における前記Li含有化合物の目付量C1と、前記負極における前記Si粒子の目付量C2との比C1/C2が、8.33以下である、
二次電池
を開示する。
【0006】
本開示の二次電池においては、前記比C1/C2が、2.87以上であってもよい。
【0007】
本開示の二次電池において、
前記Li含有化合物が、構成元素として、少なくとも、Liと、Ni、Co及びMnのうちの少なくとも一つと、Oとを含んでいてもよい。
【0008】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
本開示の二次電池と、
前記二次電池の充電及び放電を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が前記二次電池の充電電圧を4.2V以下に制御する、
二次電池システム
を開示する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の二次電池は優れた耐久性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.二次電池
本開示の二次電池は、負極と電解質層と正極とを有する。ここで、前記負極は負極活物質としてのSi粒子を有し、前記正極は正極活物質としてのLi含有化合物を有する。前記Si粒子はクラスレート構造を有する。前記正極における前記Li含有化合物の目付量C
1と、前記負極における前記Si粒子の目付量C
2との比C
1/C
2は、8.33以下である。
図1に一実施形態に係る二次電池100の構成を概略的に示す。
図1に示されるように、二次電池100は、負極10と電解質層20と正極30とを有する。
【0012】
1.1 負極
負極10は負極活物質としてのSi粒子を含む。
図1に示されるように、負極10は、負極活物質層11と負極集電体12とを備えるものであってよく、この場合、負極活物質層11が負極活物質としてのSi粒子を含み得る。
【0013】
1.1.1 負極活物質層
負極活物質層11は、負極活物質としてのSi粒子を含み、さらに任意に、電解質、導電助剤、バインダー等を含んでいてもよい。負極活物質層11はその他に各種の添加剤を含んでいてもよい。負極活物質層11における各成分の含有量は特に限定されるものではなく、目的とする電池の性能に応じて適宜決定されればよい。例えば、負極活物質層11全体(固形分全体)を100質量%として、負極活物質の含有量が40質量%以上、50質量%以上又は60質量%以上であってもよく、100質量%以下又は90質量%以下であってもよい。負極活物質層11の厚みも特に限定されるものではなく、例えば、1μm以上、10μm以上又は30μm以上であってもよく、1mm以下、500μm以下又は100μm以下であってもよい。
【0014】
負極活物質としてのSi粒子は、クラスレート構造を有する。Si粒子がクラスレート構造を有することで、電池の充放電に伴うSi粒子の膨張・収縮が比較的小さくなり、電池の耐久性能が向上し易い。尚、Si粒子がクラスレート構造を有するか否かについては、ラマンスペクトルやXRDなどから容易に判断可能である。本願においては、ラマン分光法で測定した325±10cm-1における最大ピーク強度I325と、205±10cm-1における最大ピーク強度I205との比I325/I205が1.03以上1.21の範囲内である場合に、Si粒子がクラスレート構造を有するものとみなす。尚、負極活物質としてのSi粒子は、酸化被膜を有するものであってもよく、炭素などの不純物を含むものであってもよい。
【0015】
負極活物質としてのSi粒子の大きさは特に限定されるものではない。Si粒子の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上又は0.7μm以上であってよく、また、50μm以下、30μm以下、10μm以下又は5μm以下であってもよい。尚、Si粒子の平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(メジアン径)である。
【0016】
負極活物質層11には、負極活物質として上記のSi粒子に加えて、その他の負極活物質が含まれていてもよい。例えば、負極活物質層11には、その他の負極活物質としてクラスレートシリコン以外のSi、Si合金、酸化ケイ素といったシリコン系活物質;グラファイトやハードカーボンなどの炭素系活物質;チタン酸リチウムなどの各種酸化物系活物質;金属リチウムやリチウム合金などから選ばれる少なくとも1種が含まれ得る。負極活物質層11に含まれる負極活物質に占めるクラスレート構造を有するSi粒子の割合は、例えば、50質量%超、70質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上であってもよい。或いは、負極活物質層11には、負極活物質としてクラスレート構造を有するSi粒子のみが含まれていてもよい。
【0017】
電解質は、固体電解質であってもよいし、液体電解質(電解液)であってもよい。二次電池100が全固体電池である場合、負極活物質層11は、電解質として固体電解質を含み得る。また、二次電池100が電解液電池である場合、負極活物質層11は、電解質として電解液を含み得る。
【0018】
固体電解質は、二次電池の固体電解質として公知のものを用いればよい。固体電解質は無機固体電解質であっても、有機ポリマー電解質であってもよい。特に、無機固体電解質は、イオン伝導度や耐熱性に優れるため好ましい。無機固体電解質としては、例えば、ランタンジルコン酸リチウム、LiPON、Li1+XAlXGe2-X(PO4)3、Li-SiO系ガラス、Li-Al-S-O系ガラス等の酸化物固体電解質;Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Si2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5-GeS2等の硫化物固体電解質を例示することができる。特に、硫化物固体電解質、中でもLi2S-P2S5を含む硫化物固体電解質の性能が高い。固体電解質は、非晶質であってもよいし、結晶であってもよい。固体電解質は例えば粒子状であってもよい。固体電解質は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0019】
電解液は、例えば、キャリアイオンとしてのリチウムイオンを含み得る。電解液は水系電解液であっても非水系電解液であってもよい。電解液の組成はリチウムイオン電池の電解液の組成として公知のものと同様とすればよい。例えば、電解液として、カーボネート系溶媒にリチウム塩を所定濃度で溶解させたものを用いることができる。カーボネート系溶媒としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6等が挙げられる。
【0020】
導電助剤としては、例えば、気相法炭素繊維(VGCF)やアセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)やカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノファイバー(CNF)等の炭素材料;ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。導電助剤は、例えば、粒子状又は繊維状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。導電助剤は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0021】
バインダーとしては、例えば、ポリイミド(PI)系バインダー、ブタジエンゴム(BR)系バインダー、ブチレンゴム(IIR)系バインダー、アクリレートブタジエンゴム(ABR)系バインダー、スチレンブタジエンゴム(SBR)系バインダー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)系バインダー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系バインダー等が挙げられる。特に負極活物質層11がバインダーとしてのポリイミドを含む場合に、Si粒子の膨張・収縮が一層抑制され易い。ポリイミドは、ポリアミック酸を加熱してイミド化反応(脱水・環化)を生じさせて得られたものであってよい。ポリアミック酸は芳香族でも脂肪族でもよいが、ポリイミドとなった場合において高強度のバインダーとなり得る観点から特に芳香環を有するものが好ましい。バインダーは1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0022】
1.1.2 負極集電体
負極集電体12は、二次電池の負極集電体として一般的なものをいずれも採用可能である。また、負極集電体12は、箔状、板状、メッシュ状、パンチングメタル状、及び、発泡体等であってよい。負極集電体12は、金属箔又は金属メッシュであってもよく、或いは、カーボンシートであってもよい。特に、金属箔が取扱い性等に優れる。負極集電体12は、複数枚の箔やシートからなっていてもよい。負極集電体12を構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。特に、還元耐性を確保する観点及びリチウムと合金化し難い観点から、負極集電体12がCu、Ni及びステンレス鋼から選ばれる少なくとも1種の金属を含むものであってもよい。負極集電体12は、その表面に、抵抗を調整すること等を目的として、何らかのコート層を有していてもよい。また、負極集電体12は、金属箔や基材に上記の金属がめっき又は蒸着されたものであってもよい。また、負極集電体12が複数枚の金属箔からなる場合、当該複数枚の金属箔の間に何らかの層を有していてもよい。負極集電体12の厚みは特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上又は1μm以上であってもよく、1mm以下又は100μm以下であってもよい。
【0023】
1.2 電解質層
電解質層20は少なくとも電解質を含む。二次電池100が固体電池(固体電解質を含む電池であって、液体を含まないものであってもよいし、液体を含むものであってもよい)である場合、電解質層20は、固体電解質を含み、さらに任意にバインダー等を含んでいてもよい。この場合、電解質層20における固体電解質とバインダー等との含有量は特に限定されない。一方で、二次電池100が電解液電池である場合、電解質層20は、電解液を含み、さらに、当該電解液を保持するとともに、負極10と正極30との接触を防止するためのセパレータ等を有していてもよい。電解質層20の厚みは特に限定されるものではなく、例えば、0.1μm以上又は1μm以上であってもよく、2mm以下又は1mm以下であってもよい。
【0024】
固体電解質、電解液及びバインダー等については上述した通りである。セパレータは、二次電池において通常用いられるセパレータであればよく、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル及びポリアミド等の樹脂からなるもの等が挙げられる。セパレータは、単層構造であっても良く、複層構造であっても良い。複層構造のセパレータとしては、例えばPE/PPの2層構造のセパレータ、又は、PP/PE/PP若しくはPE/PP/PEの3層構造のセパレータ等を挙げることができる。セパレータは、セルロース不織布、樹脂不織布、ガラス繊維不織布といった不織布からなるものであってもよい。
【0025】
1.3 正極
正極30は正極活物質を含む。
図1に示されるように、正極30は、正極活物質層31と正極集電体32とを備えるものであってよく、この場合、正極活物質層31が正極活物質を含み得る。
【0026】
1.3.1 正極活物質層
正極活物質層31は、正極活物質を含み、さらに任意に、電解質、導電助剤、バインダー等を含んでいてもよい。正極活物質層31はその他に各種の添加剤を含んでいてもよい。正極活物質層31における各成分の含有量は特に限定されるものではなく、目的とする電池の性能に応じて適宜決定されればよい。例えば、正極活物質層31全体を100質量%として、正極活物質の含有量が50質量%以上、60質量%以上又は70質量%以上であってもよく、100質量%以下又は90質量%以下であってもよい。正極活物質層31の厚みも特に限定されるものではなく、例えば、1μm以上、10μm以上又は30μm以上であってもよく、1mm以下、500μm以下又は100μm以下であってもよい。
【0027】
正極活物質としては二次電池の正極活物質として公知のものを用いればよい。公知の活物質のうち、キャリアイオンであるリチウムイオンを吸蔵放出する電位(充放電電位)が、上記のクラスレート構造を有するSi粒子における充放電電位よりも貴な電位を示す物質を正極活物質として用いることができる。このような正極活物質としては、例えば、各種のLi含有化合物が挙げられる。より具体的には、正極活物質としてコバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、Li1±αNi1/3Co1/3Mn1/3O2±δ、マンガン酸リチウム、スピネル系リチウム化合物(Li1+xMn2-x-yMyO4(MはAl、Mg、Co、Fe、Ni及びZnから選ばれる一種以上)で表わされる組成の異種元素置換Li-Mnスピネル等)、チタン酸リチウム、リン酸金属リチウム(LiMPO4等、MはFe、Mn、Co及びNiから選ばれる一種以上)等の各種のリチウム含有酸化物を用いてもよい。特に、正極活物質としてのLi含有化合物が、構成元素として、少なくとも、Liと、Ni、Co及びMnのうちの少なくとも一つと、Oとを含む場合に、一層高い効果が期待できる。正極活物質は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。正極活物質は、例えば、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。正極活物質の粒子は、中実の粒子であってもよく、中空の粒子であってもよい。正極活物質の粒子は、一次粒子であってもよいし、複数の一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。正極活物質の粒子の平均粒子径は、例えば1nm以上、5nm以上、又は10nm以上であってもよく、また500μm以下、100μm以下、50μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0028】
正極活物質の表面には、Liイオン伝導性化合物を含有する保護層が形成されていてもよい。すなわち、正極活物質層31には、正極活物質と、その表面に設けられた保護層と、を備える複合体が含まれていてもよい。これにより、正極物活物質と硫化物(硫化物固体電解質等)との反応等が抑制され易くなる。Liイオン伝導性化合物としては、例えば、Li3BO3、LiBO2、Li2CO3、LiAlO2、Li4SiO4、Li2SiO3、Li3PO4、Li2SO4、Li2TiO3、Li4Ti5O12、Li2Ti2O5、Li2ZrO3、LiNbO3、Li2MoO4、Li2WO4が挙げられる。正極活物質の表面における保護層の被覆率(面積率)は、例えば、70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。保護層の厚さは、例えば、0.1nm以上又は1nm以上であってもよく、100nm以下又は20nm以下であってもよい。
【0029】
電解質や導電助剤やバインダーは、負極活物質層11に含まれ得るものとして例示したものの中から選択されたものであってもよい。電解質や導電助剤やバインダーは、各々、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0030】
1.3.2 正極集電体
正極集電体32は、二次電池の正極集電体として一般的なものをいずれも採用可能である。また、正極集電体32は、箔状、板状、メッシュ状、パンチングメタル状、及び、発泡体等であってよい。正極集電体32は、金属箔又は金属メッシュによって構成されていてもよい。特に、金属箔が取扱い性等に優れる。正極集電体32は、複数枚の箔からなっていてもよい。正極集電体32を構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。特に、酸化耐性を確保する観点等から、正極集電体32がAlを含むものであってもよい。正極集電体32は、その表面に、抵抗を調整すること等を目的として、何らかのコート層を有していてもよい。また、正極集電体32は、金属箔や基材に上記の金属がめっき又は蒸着されたものであってもよい。また、正極集電体32が複数枚の金属箔からなる場合、当該複数枚の金属箔間に何らかの層を有していてもよい。正極集電体32の厚みは特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上又は1μm以上であってもよく、1mm以下又は100μm以下であってもよい。
【0031】
1.4 活物質の目付量
従来から、負極活物質としてSi粒子を用いた負極が高いエネルギー密度を有するものとして注目を集めてきた。しかしながら、負極活物質としてSi粒子を用いた場合、充放電時のSi粒子の膨張収縮が大きく、粒子のワレ等が生じ易い。これまでSiのシリサイド化や黒鉛との混合などにより、Si粒子の膨張収縮に係る悪影響を抑えてきたが、この場合、その他の元素の比率が増加し、場合によっては50質量%以上をSi以外の元素が占め、エネルギー密度の低下を引き起こす場合がある。
【0032】
一方で、クラスレート構造を有するSi粒子は、充放電時の膨張収縮が小さく、通常のSi粒子と比較して、二次電池の耐久性を高め易い。また、本発明者の新たな知見によると、負極活物質としてクラスレート構造を有するSi粒子を用いた場合、充電時の負極の利用容量(Si粒子の利用率、すなわち、Si粒子のLi吸蔵率)と二次電池の耐久性との間に相関がある。すなわち、クラスレート構造を有するSi粒子は、その利用率が低くなるほど、無膨張領域の割合が増加し、膨張収縮量をさらに大幅に低減できる。また、過度の膨張収縮によるクラスレート構造の崩れを抑えることもでき、充放電を繰り返した場合でも、クラスレート構造が維持され易い。これらの結果、二次電池の耐久性が一層向上する。ここで、本発明者が確認した限りでは、充電時のSi粒子の利用率は、正負極活物質の目付量とほぼ1:1で相関する。すなわち、正極活物質の目付量が多いほど、また、負極活物質の目付量が少ないほど、負極活物質の利用率が高くなる。
【0033】
二次電池100においては、正極30におけるLi含有化合物の目付量C1と、負極10におけるSi粒子の目付量C2との比C1/C2が8.33以下であることが重要である。比C1/C2が8.33以下であることで、上述したようにSi粒子の利用率が十分に低下し、充電時のSi粒子の膨張が抑えられる。結果として、二次電池100の耐久性を高めることができ、充放電を繰り返したとしても二次電池100の容量が低下し難い。また、比C1/C2の下限値は二次電池100として必要な容量を確保できる範囲で設定されればよい。例えば、比C1/C2は0.50以上、1.00以上、1.50以上、2.00以上、2.50以上、2.87以上、3.00以上又は3.40以上であることが好ましい。
【0034】
負極10におけるSi粒子の目付量や、正極30におけるLi含有化合物の目付量は、上記の比C1/C2が満たされる範囲内で、目的とする電池の性能に応じて適宜調整され得る。負極10におけるSi粒子の目付量は、例えば、0.1mg/cm2以上、0.5mg/cm2以上、1.0mg/cm2以上、1.5mg/cm2以上又は2.0mg/cm2以上であってもよく、10.0mg/cm2以下、8.5mg/cm2以下又は7.0mg/cm2以下であってもよい。正極30におけるLi含有化合物の目付量は、例えば、0.5mg/cm2以上、1.0mg/cm2以上、12.5mg/cm2以上又は15.0mg/cm2以上であってもよく、40.0mg/cm2以下、30mg/cm2以下又は25.0mg/cm2であってもよい。
【0035】
電極における活物質の目付量は種々の方法により特定することができる。例えば、電極の断面をSEM等で観察するとともに元素分析等によって活物質層に含まれる活物質の割合を特定することで、活物質の目付量を特定することができる。或いは、二次電池から活物質層を剥がし取り、活物質層中に含まれる活物質の質量を測定し、これと電極面積とから活物質の目付量を特定することもできる。
【0036】
1.5 その他の構成
二次電池100は、上記の各構成が外装体の内部に収容されたものであってもよい。外装体は、電池の外装体として公知のものをいずれも採用可能である。また、複数の二次電池100が、任意に電気的に接続され、また、任意に重ね合わされて、組電池とされていてもよい。この場合、公知の電池ケースの内部に当該組電池が収容されてもよい。二次電池100は、このほか必要な端子等の自明な構成を備えていてよい。二次電池100の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、及び角型等を挙げることができる。
【0037】
1.6 二次電池の製造方法
二次電池100は、公知の方法を応用することで製造することができる。例えば以下のようにして製造することができる。ただし、二次電池100の製造方法は、以下の方法に限定されるものではなく、例えば、乾式成形等によって各層が形成されてもよい。
(1)負極活物質層を構成する負極活物質等を溶媒に分散させて負極層用スラリーを得る。この場合に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではなく、水や各種有機溶媒を用いることができる。その後、ドクターブレード等を用いて負極層用スラリーを、負極集電体の表面に塗工し、その後乾燥させることで、当該負極集電体の表面に負極活物質層を形成し、負極とする。
(2)正極活物質層を構成する正極活物質等を溶媒に分散させて正極層用スラリーを得る。この場合に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではなく、水や各種有機溶媒を用いることができる。ドクターブレード等を用いて正極層用スラリーを正極集電体の表面に塗工し、その後乾燥させることで、正極集電体の表面に正極活物質層を形成し、正極とする。
(3)負極と正極とで電解質層(固体電解質層又はセパレータ)を挟み込み、負極集電体、負極活物質層、電解質層、正極活物質層及び正極集電体をこの順に有する積層体を得る。積層体には必要に応じて端子等のその他の部材を取り付ける。
(4)積層体を電池ケースに収容し、電解液電池の場合は電池ケース内に電解液を充填し、積層体を電解液に浸漬するようにして、電池ケース内に積層体を密封することで、二次電池とする。尚、電解液電池の場合に上記(3)の段階で負極活物質層、セパレータ及び正極活物質層に電解液を含ませてもよい。
【0038】
2.二次電池システム
本開示の技術は、二次電池の充放電を制御するシステムとしての側面も有する。すなわち、本開示の二次電池システムは、上記の二次電池100と、前記二次電池100の充電及び放電を制御する制御部(不図示)とを備え、前記制御部が前記二次電池100の充電電圧を4.2V以下に制御することを特徴とする。二次電池100の充電電圧を4.2V以下に制御することで、負極活物質としてのSi粒子の利用率を低く抑えることができ、上述したメカニズムに基づいて二次電池100の耐久性を向上させることができる。
【0039】
制御部は、上記の通りに二次電池100の充電及び放電を制御可能なものであればよい。例えば、電源から二次電池へと電気を供給して二次電池の充電を行う場合、二次電池の電圧を逐次測定し、測定した電圧が4.2Vを上回らないように電源からの電気の供給を続行又は停止して、充電を続行又は停止するようにすればよい。尚、制御部によって二次電池100の充放電を制御する場合、二次電池100の充電電圧の下限や放電電圧の上下限は特に限定されるものではなく、目的とする電池性能に応じて充電電圧の下限が決定され得る。充電電圧があまりに低いと二次電池100として十分な性能が得られない場合がある。
【0040】
3.補足
以上の通り、本開示の技術によれば、負極活物質としてクラスレート構造を有するSi粒子を用いるとともに、当該Si粒子の利用率を制御することで、充電時にSi粒子の無膨張領域の割合が増加し、充放電時のSi粒子の膨張収縮が抑えられ、また、過度の膨張収縮によるクラスレート構造の崩れを抑えることもでき、充放電を繰り返した場合でも、クラスレート構造が維持され易い。結果として、二次電池の耐久性が向上する。このような効果は、二次電池の種類(電解液電池、固体電池)によらず奏されるものと考えられる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を示しつつ、本開示の技術についてさらに詳細に説明するが、本開示の技術は以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
1.シリコン負極活物質の作製
シリコン負極活物質として、結晶シリコンとクラスレートシリコンとを各々作製した。
【0043】
1.1 結晶シリコンの作製
Si粒子(高純度化学製、5μm)を、遊星ボールミル(フリッチュ社製クラシックライン)を用いて微粒化を行い、結晶シリコンの粉末を得た。当該結晶シリコンはクラスレート構造を有しないものであった。
【0044】
1.2 クラスレートシリコンの作製
Si粒子とNa粒子とをmol比で1:1となるように混合し、700℃で加熱しNaSiを合成した。その後、340℃で加熱することで脱Na化を行った。さらに、430℃で加熱することでさらなる脱Na化を行った後に、遊星ボールミルを用いて150rpmで3時間微粒化を行い、粉末を得た。得られた粉末はクラスレート構造を有するもの(クラスレートシリコン)であった。
【0045】
2.正極の作製
PP製容器に、溶媒としてのNMPと、PVDF系バインダーの5wt%酪酸ブチル溶液と、正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(平均粒子径6μm)と、導電助剤としてのVGCFとを加え、あわとり練太郎(シンキー社製 ARE-310)で10分間攪拌して正極スラリーを得た。アプリケーターを使用してブレード法にて正極スラリーをAl箔(昭和電工社製)上に塗工した。塗工した電極は、80℃のホットプレート上で60分間乾燥させた。正極スラリーの濃度や塗工量を調整することで、正極活物質の目付量を種々変化させた。
【0046】
3.負極の作製
PP製容器に、溶媒としてのNMPと、バインダーとしてのポリイミドとなるポリアミック酸(UワニスA、宇部興産社製)と、負極活物質としてのシリコン活物質と、導電助剤としてのVGCF及びKBとを加え、あわとり練太郎 (シンキー社製 ARE-310)で10分間攪拌して負極スラリーを得た。アプリケーターを使用してブレード法にてCu箔(古河電工社製)上に塗工した。塗工した電極は、80℃のホットプレート上で60分間乾燥させた。負極スラリーの濃度や塗工量を調整することで、負極活物質の目付量を種々変化させた。
【0047】
4.電池の作製
作製した正極をφ14mmで打ち抜く一方、負極をφ16mmで打ち抜いた後、ロールプレス機にセットし、20kN/cmでプレスを行った。その後、負極についてはAr雰囲気下で350℃、2hで焼成を行い、上記ポリアミック酸のイミド化反応を生じさせた。各々の電極をグローブボックスに移動させて、負極の活物質層の上に電解液(1.2M LiPF6溶液。溶媒はFEC:EC:EMC:DMC=1:2:4:3vol%)を1ml滴下し、セパレータ(PP製)を積層して、再度電解液を1ml滴下したのち、正極を積層して、自動コインセルカシメ機(宝泉社製)を用いてコインセルを作製した。
【0048】
4.1 比較例1
正極における正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の目付量を28.480mg/cm2とし、負極における負極活物質(結晶シリコン)の目付量を4.838mg/cm2とした。すなわち、正極における正極活物質の目付量C1と、負極における負極活物質の目付量C2との比C1/C2を5.89とした。
【0049】
4.2 比較例2
正極における正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の目付量を17.978mg/cm2とし、負極における負極活物質(結晶シリコン)の目付量を6.660mg/cm2とした。すなわち、正極における正極活物質の目付量C1と、負極における負極活物質の目付量C2との比C1/C2を2.70とした。
【0050】
4.3 比較例3
正極における正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の目付量を20.114mg/cm2とし、負極における負極活物質(結晶シリコン)の目付量を2.050mg/cm2とした。すなわち、正極における正極活物質の目付量C1と、負極における負極活物質の目付量C2との比C1/C2を9.81とした。
【0051】
4.4 実施例1
正極における正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の目付量を23.674mg/cm2とし、負極における負極活物質(クラスレートシリコン)の目付量を4.756mg/cm2とした。すなわち、正極における正極活物質の目付量C1と、負極における負極活物質の目付量C2との比C1/C2を4.98とした。
【0052】
4.5 実施例2
正極における正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の目付量を19.224mg/cm2とし、負極における負極活物質(クラスレートシリコン)の目付量を5.658mg/cm2とした。すなわち、正極における正極活物質の目付量C1と、負極における負極活物質の目付量C2との比C1/C2を3.40とした。
【0053】
4.6 実施例3
正極における正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の目付量を21.182mg/cm2とし、負極における負極活物質(クラスレートシリコン)の目付量を2.542mg/cm2とした。すなわち、正極における正極活物質の目付量C1と、負極における負極活物質の目付量C2との比C1/C2を8.33とした。
【0054】
4.7 比較例4
正極における正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)の目付量を22.517mg/cm2とし、負極における負極活物質(クラスレートシリコン)の目付量を1.804mg/cm2とした。すなわち、正極における正極活物質の目付量C1と、負極における負極活物質の目付量C2との比C1/C2を12.48とした。
【0055】
5.充放電サイクル試験
作製したコインセルを、0.2mAで4.2Vまで定電流充電した後に、0.2mAで2.5Vまで放電した際の電池容量を初期容量として、2mAで4.2Vまで定電流充電した後に2mAで定電流放電を行う充放電試験を50回繰り返した。その後、0.2mAで4.2Vまで定電流充電した後に、0.2mAで2.5Vまで放電した際の電池容量を測定し、初期容量に対する比率を算出することで、50cyc後の耐久性能を確認した。比較例1の耐久性能を基準(100%)として、比較例2~4及び実施例1~3の耐久性能を相対化して評価した。
【0056】
また、初回充放電後の負極を取り出して、ラマン分光法による測定(波長532nm)を実施した。得られたラマンスペクトルを解析し、325±10cm-1における最大ピーク強度I325と205±10cm-1における最大ピーク強度I205との比I325/I205を算出した。当該比I325/I205が1.03以上1.21の範囲内である場合に、Si粒子がクラスレート構造を有するものいえる。
【0057】
6.評価結果
下記表1に評価結果を示す。
【0058】
【0059】
表1に示される結果から以下のことが分かる。まず、比較例1~3と実施例1~3との比較から、負極活物質として結晶シリコンを用いる場合よりも、クラスレートシリコンを用いる場合のほうが、二次電池の耐久性が高くなることが分かる。これは、クラスレートシリコンが結晶シリコンに比べて電池の充放電に伴う膨張・収縮が小さいことに起因するものと考えられる。
【0060】
また、比較例4と実施例1~3との比較から、負極活物質としてクラスレートシリコンを用いたとしても、活物質目付比C1/C2が大き過ぎる場合(すなわち、負極活物質に対して正極活物質が多く、負極活物質の利用料が多過ぎる場合)、二次電池の耐久性が低下することが分かる。これは以下のメカニズムによるものと推定される。すなわち、二次電池においては、充電時のSi粒子の利用率が高いほど、Si粒子の膨張量が大きくなり、膨張量が大きいほどSi粒子の割れが生じ易く、或いは、クラスレート構造が崩れ易くなるものと考えられる。比較例4においては、充電時にSi粒子の割れやクラスレート構造の崩れが起き、負極の容量が大きく低下したものと考えられる。
【0061】
7.固体電池についての検討
本開示の技術を固体電池(電解質として固体電解質を含む電池)に適用した場合についても検討した。
【0062】
7.1 負極の作製
ポリプロピレン製容器に、上記の負極活物質(結晶シリコン又はクラスレートシリコン)と、硫化物固体電解質(Li2S-P2S5系ガラスセラミック)と、導電助剤(VGCF)と、PVdF系バインダーを5重量%の割合で含有する酪酸ブチル溶液と、酪酸ブチルとを加え、超音波分散装置(エスエムテー製UH-50)で30秒間撹拌した。次に、容器を振とう器(柴田科学株式会社製、TTM-1)で30分間振とうさせた。アプリケーターを使用してブレード法にて、負極集電体(Cu箔、UACJ製)上に塗工し、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させた。これにより、負極集電体および負極活物質層を有する負極を得た。
【0063】
7.2 正極の作製
ポリプロピレン製容器に、正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、平均粒径6μm)と、硫化物固体電解質(Li2S-P2S5系ガラスセラミック)と、導電助剤(VGCF)と、PVdF系バインダーを5重量%の割合で含有する酪酸ブチル溶液と、酪酸ブチルとを加え、超音波分散装置(エスエムテー製UH-50)で30秒間撹拌した。次に、容器を振とう器(柴田科学株式会社製、TTM-1)で3分間振とうさせた。アプリケーターを使用してブレード法にて、正極集電体(Al箔、昭和電工製)上に塗工し、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させた。これにより、正極集電体および正極活物質層を有する正極を得た。なお、正極の面積は、負極の面積よりも小さくした。
【0064】
7.3 固体電解質層の作製
ポリプロピレン製容器に、硫化物固体電解質(Li2S-P2S5系ガラスセラミック)と、ブチレンラバー系バインダーを5重量%の割合で含有するヘプタン溶液と、ヘプタンとを加え、超音波分散装置(エスエムテー製UH-50)で30秒間撹拌した。次に、容器を振とう器(柴田科学株式会社製、TTM-1)で30分間振とうさせた。アプリケーターを使用してブレード法にて、剥離シート(Al箔)上に塗工し、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させた。これにより、剥離シートおよび固体電解質層を有する転写部材を得た。
【0065】
7.4 電池の作製
正極における正極活物質層上に、接合用の固体電解質層を配置し、ロールプレス機にセットし、100kN/cm、165℃でプレスした。これにより、第1積層体を得た。次に、負極をロールプレス機にセットし、60kN/cm、25℃でプレスした。これにより、プレスされた負極を得た。その後、負極活物質層側から順に、接合用の固体電解質層および転写部材を配置した。この際、接合用の固体電解質層と、転写部材における固体電解質層とが対向するように配置した。得られた積層体を平面一軸プレス機にセットし、100MPa、25℃で、10秒間仮プレスした。その後、固体電解質層から剥離シートを剥がした。これにより、第2積層体を得た。次に、第1積層体における接合用の固体電解質層と、第2積層体における固体電解質層と、を対向するように配置し、平面一軸プレス機にセットし、400MPa、135℃で、1分間プレスした。これにより、評価用の固体電池を得た。
【0066】
7.4.1 比較例5
負極活物質として結晶シリコンを用い、且つ、正極における正極活物質の目付量C1と、負極における負極活物質の目付量C2との比C1/C2を5.50とした。
【0067】
7.4.2 実施例4
負極活物質としてクラスレートシリコンを用い、且つ、正極における正極活物質の目付量C1と、負極における負極活物質の目付量C2との比C1/C2を2.87とした。
【0068】
7.4.3 実施例5
負極活物質としてクラスレートシリコンを用い、且つ、正極における正極活物質の目付量C1と、負極における負極活物質の目付量C2との比C1/C2を3.71とした。
【0069】
7.5 充放電サイクル試験
上記のようにして作製した各々の硫化物固体電池に対して、実施例1~3及び比較例1~4と同様に、50cyc後の耐久性能を確認した。比較例5の耐久性能を基準(100%)として、実施例4及び5の耐久性能を相対化して評価した。また、初回充放電後の負極を取り出して、ラマン分光法による測定(波長532nm)を実施し、得られたラマンスペクトルを解析して、325±10cm-1における最大ピーク強度I325と205±10cm-1における最大ピーク強度I205との比I325/I205を算出した。当該比I325/I205が1.03以上1.21の範囲内である場合に、Si粒子がクラスレート構造を有するものいえる。
【0070】
7.6 評価結果
下記表2に評価結果を示す。下記表2に示されるように、本開示の技術によれば、固体電池においても、電解液電池と同様の効果が奏されることが分かる。
【0071】
【0072】
8.まとめ
以上の結果から、以下の構成(1)~(4)を備える二次電池は、優れた耐久性を有するものといえる。
(1)負極が負極活物質としてのSi粒子を含むこと。
(2)正極が正極活物質としてLi含有化合物を含むこと。
(3)Si粒子がクラスレート構造を有すること。
(4)正極におけるLi含有化合物の目付量C1と、負極におけるSi粒子の目付量C2との比C1/C2が、8.33以下であること。
【0073】
尚、上記実施例では、特定の正極や電解質を用いた例を示したが、本開示の技術において正極や電解質の種類に特に制限はない。また、上記実施例では、負極において特定の集電体やバインダーや導電助剤を用いた形態を示したが、本開示の技術において、負極における負極活物質以外の構成に特に制限はない。上記の推定メカニズムからすれば、電池の種類(電解液電池、固体電池)や材料によらず、特定の負極活物質が用いられるとともに活物質目付比C1/C2が所定範囲内に調整されることで、二次電池としての耐久性が向上するものと考えられる。
【符号の説明】
【0074】
10 負極
11 負極活物質層
12 負極集電体
20 電解質層
30 正極
31 正極活物質層
32 正極集電体
100 二次電池