(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】移動体監視システム、移動体監視システムの制御サーバ、及び移動体監視方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240730BHJP
G08G 1/015 20060101ALI20240730BHJP
G08G 1/04 20060101ALI20240730BHJP
G08G 1/08 20060101ALI20240730BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G08G1/015 C
G08G1/04 A
G08G1/08 A
G08G1/01 A
(21)【出願番号】P 2021507263
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010714
(87)【国際公開番号】W WO2020189475
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2019050736
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 謙一
(72)【発明者】
【氏名】小林 陽
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-259833(JP,A)
【文献】特開2009-015721(JP,A)
【文献】特開2005-182383(JP,A)
【文献】特開2010-211632(JP,A)
【文献】特開2001-209898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/015
G08G 1/04
G08G 1/08
G08G 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路を走行する移動体を監視する移動体監視システムであって、
前記走行路に設定した所定の領域にレーザを照射し、所定の周期毎に前記所定の領域内の物体による前記レーザの
三次元点群情報である反射信号を検出するレーザレーダと、
前記レーザレーダで検出される反射信号に基づいて、前記所定の領域に存在する移動体
、前記移動体の形状
および大きさを検出する移動体検出部と、
前記所定の領域内に複数の分割領域を設定し、前記所定の周期の異なるタイミングにおいて前記移動体検出部で検出される前記移動体の同一性を、前記移動体の形状
および大きさに基づいて判定し、同一であると判定された移動体の前記各分割領域内における存否に基づいて、同一であると判定された前記移動体の移動方向を検出する移動方向検出部と、
前記移動体検出部で検出される各分割領域内における移動体の数、及び、前記移動方向検出部で検出される各移動体の移動方向、を含むデータである交通流データを算出する交通流算出部と、
を備え
、
前記移動方向検出部は、前記所定の周期の異なるタイミングにて、前記移動体検出部で検出される各移動体の位置に基づいて、各移動体の速度を検出し、前記交通流データは、各移動体の速度を含む、
移動体監視システム。
【請求項2】
前記移動体検出部は、前記反射信号に基づいて、前記移動体の大きさ及び形状の少なくとも一方を検出し、
前記移動体の大きさ及び形状の少なくとも一方に基づいて、前記移動体の種別を判定すること
を特徴とする請求項1に記載の移動体監視システム。
【請求項3】
前記交通流算出部は、
前記移動体検出部にて、所定時間内に前記各分割領域内に存在する移動体の数を検出し、前記所定時間内における前記各分割領域内に存在する移動体の密度を示す密度マップを作成すること
を特徴とする請求項
1又は2に記載の移動体監視システム。
【請求項4】
前記走行路は信号機を有する交差点であり、
前記交通流算出部で算出された交通流のデータに基づいて、前記信号機の点灯時間を算出し、算出した点灯時間を示す信号機点灯データを送信する通信部、を更に備えたこと
を特徴とする請求項
1~3のいずれか一項に記載の移動体監視システム。
【請求項5】
走行路を走行する移動体を監視する移動体監視システムの制御サーバであって、
前記走行路に設定した所定の領域にレーザを照射し、所定の周期毎に前記所定の領域内の物体による前記レーザの
三次元点群情報である反射信号を検出するレーザレーダで検出される反射信号に基づいて、前記所定の領域に存在する移動体
、前記移動体の形状
および大きさを検出する移動体検出部と、
前記所定の領域内に複数の分割領域を設定し、前記所定の周期の異なるタイミングにおいて前記移動体検出部で検出される前記移動体の同一性を、前記移動体の形状
および大きさに基づいて判定し、同一であると判定された移動体の前記各分割領域内における存否に基づいて、同一であると判定された前記移動体の移動方向を検出する移動方向検出部と、
前記移動体検出部で検出される各分割領域内における移動体の数、及び、前記移動方向検出部で検出される各移動体の移動方向、を含むデータである交通流データを算出する交通流算出部と、
を備え
、
前記移動方向検出部は、前記所定の周期の異なるタイミングにて、前記移動体検出部で検出される各移動体の位置に基づいて、各移動体の速度を検出し、前記交通流データは、各移動体の速度を含む、
移動体監視システムの制御サーバ。
【請求項6】
走行路を走行する移動体を監視する移動体監視方法であって、
前記走行路に設定した所定の領域にレーザを照射し、所定の周期毎に前記所定の領域内の物体による前記レーザの
三次元点群情報である反射信号を検出するステップと、
前記検出した反射信号に基づいて、前記所定の領域に存在する移動体
、前記移動体の形状
および大きさを検出する
移動体検出ステップと、
前記所定の領域内に複数の分割領域を設定し、前記所定の周期の異なるタイミングにおいて検出される前記移動体の同一性を、前記移動体の形状
および大きさに基づいて判定し、同一であると判定された移動体の前記各分割領域内における存否に基づいて、同一であると判定された前記移動体の移動方向を検出する
移動方向検出ステップと、
前記各分割領域内における移動体の数、及び、各移動体の移動方向、を含むデータである交通流データを算出する
交通流算出ステップと、
を備え
、
前記移動方向検出ステップは、前記所定の周期の異なるタイミングにて、前記移動体検出ステップで検出される各移動体の位置に基づいて、各移動体の速度を検出し、前記交通流データは、各移動体の速度を含む、
移動体監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体監視システム、移動体監視システムの制御サーバ、及び移動体監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010-197341号公報(特許文献1)には、交差点において車両の通行量、混雑具合などを調査するシステムが開示されている。当該システムは、交差点に設置されたレーザレーダを用いて移動体を検出し、交差点に入る車両と交差点から出る車両を判定し、交差点を通行する交通流を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された技術は、走行路を走行する車両の方向や、交差点に入る車両の方向、交差点から出る車両の方向を高精度に検出できるものではない。即ち、交差点に接続する道路のどの車線から交差点に進入するか、或いは、どの方向からの車線が混雑しているかなどの情報を取得することができないという問題があった。
【0005】
本開示は、走行路を走行する移動体を高精度に監視することが可能な移動体監視システム、移動体監視システムの制御サーバ、及び移動体監視方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る移動体監視システムは、走行路を走行する移動体を監視する移動体監視システムであって、前記走行路に設定した所定の領域にレーザを照射し、所定の周期毎に前記所定の領域内の物体による前記レーザの反射信号を検出するレーザレーダと、前記レーザレーダで検出される反射信号に基づいて、前記所定の領域に存在する移動体を検出する移動体検出部と、前記所定の領域内に複数の分割領域を設定し、前記所定の周期毎に前記移動体検出部で検出される、前記各分割領域内における前記移動体の存否に基づいて、前記移動体の移動方向を検出する移動方向検出部と、前記移動体検出部で検出される各分割領域内における移動体の数、及び、前記移動方向検出部で検出される各移動体の移動方向、を含むデータである交通流データを算出する交通流算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本開示に係る制御サーバは、走行路を走行する移動体を監視する移動体監視システムの制御サーバであって、前記走行路に設定した所定の領域にレーザを照射し、所定の周期毎に前記所定の領域内の物体による前記レーザの反射信号を検出するレーザレーダで検出される反射信号に基づいて、前記所定の領域に存在する移動体を検出する移動体検出部と、前記所定の領域内に複数の分割領域を設定し、前記所定の周期毎に前記移動体検出部で検出される、前記各分割領域内における前記移動体の存否に基づいて、前記移動体の移動方向を検出する移動方向検出部と、前記移動体検出部で検出される各分割領域内における移動体の数、及び、前記移動方向検出部で検出される各移動体の移動方向、を含むデータである交通流データを算出する交通流算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本開示に係る移動体監視方法は、走行路を走行する移動体を監視する移動体監視方法であって、前記走行路に設定した所定の領域にレーザを照射し、所定の周期毎に前記所定の領域内の物体による前記レーザの反射信号を検出するステップと、前記検出した反射信号に基づいて、前記所定の領域に存在する移動体を検出するステップと、前記所定の領域内に複数の分割領域を設定し、前記所定の周期毎に検出される、前記各分割領域内における前記移動体の存否に基づいて、前記移動体の移動方向を検出するステップと、前記各分割領域内における移動体の数、及び、各移動体の移動方向、を含むデータである交通流データを算出するステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、走行路を走行する移動体を高精度に監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の開示に係る移動体監視システムの構成を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、対面通行路に設置したレーザレーダ、及びその検出領域を示す平面図である。
【
図2B】
図2Bは、対面通行路に設置したレーザレーダ、及びその検出領域を示す鳥観図である。
【
図3A】
図3Aは、交差点に設置したレーザレーダ、及びその検出領域を示す平面図である。
【
図3B】
図3Bは、交差点に設置したレーザレーダ、及びその検出領域を示す鳥観図である。
【
図4】
図4は、データベースに記憶される交通流データの第1の例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、データベースに記憶される交通流データの第2の例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る移動体監視システムの処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6のS15に示す交通流データの演算、記録処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図6のS16に示す交通流データの削除処理の詳細な手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る移動体監視システムの処理手順を示すフローチャートである。
【
図10A】
図10Aは、第2実施形態に係る移動体監視システムで交通流を監視する交差点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態の説明]
図1は、第1実施形態に係る移動体監視システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本開示に係る移動体監視システム101は、走行路を走行する移動体の数、移動方向、移動速度などの各種の移動体に関する情報を監視するものである。移動体監視システム101は、移動体が走行する走行路に設置されるレーザレーダ1と、レーザレーダ1に接続される制御装置2(制御サーバ)と、制御装置2に接続される管理サーバ3と、を備えている。なお、本開示で説明する「移動体」とは、車両(自動車やオートバイ)、自転車、歩行者を含む概念である。また「走行路」とは、移動体が通過する道路や、十字路、丁字路、三叉路などの交差点を含む概念である。
【0012】
レーザレーダ1は、走行路上に設定した所定の領域に向けてレーザを照射し、所定の周期毎に所定の領域内に存在する物体によるレーザの反射信号を検出し、更にクラスタリングして三次元点群情報を取得する。更に、レーザレーダ1は、取得した三次元点群情報(反射信号)をセンサデータとして制御装置2に出力する。レーザレーダ1で検出されたセンサデータに基づいて、検出された物体の大きさ、形状を検出することができる。このため、後述するように、センサデータに基づいて、走行路を走行する移動体、或いは走行路に停止している移動体の種別、即ち、車両、自転車、歩行者などの種別を判別することができる。
【0013】
また、レーザレーダ1は、移動体の三次元データを取得できるので、可視カメラや赤外線カメラなどのカメラで移動体を撮像して検出する方法と対比すると、レーザレーダ1の取り付け位置を比較的低い位置に設置することができるという利点がある。走行路に可視カメラや赤外線カメラを設置して移動体を検出する方法では、比較的高い位置にカメラを設置して走行路を俯瞰する必要がある。一方、レーザレーダ1では、高い位置への取り付けが不要となる。なお、本開示では、移動体として車両を例に挙げて説明する。
【0014】
【0015】
図2A、
図2Bは、走行路が片側1車線の対面走行路51にレーザレーダ1を設置して車両を監視する例を示し、
図2Aは平面図、
図2Bは鳥瞰図を示している。
図2Aに示すように、対面走行路51の側方に設置した1台のレーザレーダ1により、対面走行路51に検出領域K1を設定することができる。更に、
図2Bに示すように、対面走行路51の各車線に4個の分割領域n1、n2、s1、s2を設定し、各分割領域内において移動体を検出する。なお、分割領域は4個の限定されるものではなく、複数の分割領域とすることができる。
【0016】
図3A、
図3Bは、交差点(四叉路)にレーザレーダ1を設置して車両を監視する例を示し、
図3Aは平面図、
図3Bは模式的な鳥瞰図を示している。
図3Aに示すように、交差点52の側方に設置した1台のレーザレーダ1により、交差点52に検出領域K2を設定することができる。更に、
図3Bに示すように、交差点52における各走行路の4つの交差点進入部に、合計8個の分割領域n1、n2、w1、w2、s1、s2、e1、e2を設定し、各分割領域内において車両を検出する。詳細については後述する。
【0017】
図1に戻って、制御装置2は、センサデータ取得部21と、センサデータ処理部22と、車両検出部23と、車両追跡部24と、交通流算出部25と、データベース26と、通信部27、を備えている。制御装置2は、レーザレーダ1との間で、有線、または無線により接続されている。例えば、制御装置2を、交通量を総括的に管理する基地局内に設置し、レーザレーダ1との間で有線、無線、或いはネットワークを介して接続することができる。勿論、制御装置2をレーザレーダ1の側部近傍に設ける構成としてもよい。なお、制御装置2は、中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
【0018】
センサデータ取得部21は、レーザレーダ1より出力される三次元点群データ(センサデータ)を取得する。
【0019】
センサデータ処理部22は、センサデータ取得部21で取得されたセンサデータから不要なデータを削減する処理を行う。
【0020】
車両検出部23(移動体検出部)は、センサデータ処理部22より出力されるセンサデータ(反射信号)に基づいて、所定の領域に存在する移動体を検出する。更に、車両検出部23は、センサデータに基づいて、各移動体の大きさ、形状を測定し、この測定結果に基づいて移動体の種別を判定する。具体的に、レーザレーダ1で検出されるセンサデータの横方向の長さが、予め設定した一定の長さ(例えば2m)以上である場合に移動体は車両であると判断する。更に、横方向の長さが上記の車両よりも長い場合には、大型車両(トラックなど)であると判断する。更には、二輪車、歩行者を判断することもできる。なお、移動体の大きさ、及び形状のうちの少なくとも一方を検出して移動体の種別を判定することもできる。
【0021】
車両追跡部24(移動方向検出部)は、車両検出部23にて検出された車両に対して、各車両を特定するための車両IDを付与する。そして、各車両の動きを画像上でトラッキングすることにより、各車両の車両IDに基づいて車両の移動方向、移動速度を検出する。例えば、
図2Bに示した4個の分割領域n1、n2、s1、s2を設定し、車両が分割領域s1で検出され、その後分割領域n1で検出された場合には、この車両は
図2Bに示す矢印Y1の方向に移動する車両であると判断する(分割領域の、長さ(道路延長方向)は例えば1mである。
図3の分割領域も同様である。)。
【0022】
また、
図3Bに示した8個の分割領域n1、n2、w1、w2、s1、s2、e1、e2を設定し、車両が分割領域w1で検出され、その後分割領域n1で検出された場合には、この車両は
図3Bに示す矢印Y2の方向に左折した車両であると判断する。
【0023】
更に、レーザレーダ1による各フレームでのセンサデータによる車両の位置の変化量と、時間経過の関係に基づいて、車両の移動速度を検出することができる。
【0024】
即ち、車両追跡部24は、所定の領域内に複数の分割領域を設定し、所定の周期毎に車両検出部23で検出される、各分割領域内における車両の存否に基づいて、車両の移動方向を検出する移動方向検出部としての機能を備えている。
【0025】
また、車両追跡部24は、所定の周期の、異なるタイミング(換言すれば異なる時刻)において車両検出部23で検出される各車両の大きさ、及び形状の少なくとも一方に基づいて、異なるタイミングで検出される車両の同一性を判定し、同一であると判定された車両について、車両の移動方向を検出する機能を備えている。
【0026】
更に、車両追跡部24は、所定周期の異なるタイミングにて、車両検出部23で検出される各車両の位置に基づいて、各車両の速度を検出する。検出した速度を交通流算出部25に出力する。
【0027】
交通流算出部25は、車両検出部23で検出され、車両IDが付与された車両の移動状況を示す交通流データを作成する。例えば、
図2Bに示したように対面走行路51に検出領域K1を設定した場合には、この検出領域K1内を走行した車両の車両ID、車両の種別(普通車、大型車など)、走行した時刻、最初に検出された分割領域、最後に検出された分割領域、車両の走行方向、車両の走行速度、の各情報を含む交通流データを作成する。
【0028】
即ち、交通流算出部25は、所定時間又は単位時間における、車両検出部23で検出される各分割領域内における車両の数、及び、車両の移動方向を含むデータである交通流データを算出する機能を備えている。
【0029】
更に、交通流算出部25は、車両検出部23にて、所定時間内に各分割領域内に存在する車両の数を検出し、所定時間内における各分割領域内に存在する車両の密度を示す密度マップを作成する。密度マップの詳細については後述する。
【0030】
データベース26は、交通流算出部25より出力される交通流データを記憶して保存する。
図4は、交通流データの一例を示す説明図である。
図4に示すように、交通流データには、車両が走行した時刻(例えば、12時34分01秒)、車両ID(例えば、000100)、この車両が最初に検出されたエリア(例えば、s1)、最後に検出されたエリア(例えば、n1)、車両の種別(例えば、普通車)が含まれる。なお、
図4では各車両の速度は省略されている。
【0031】
更に、所望の時間帯毎の車両の通過台数のデータを記憶する。
図5は、時間帯毎における車両の通過台数を示す説明図であり、進路(例えば、s1→n1)、普通車の通過台数、大型車の通過台数を示すデータが記憶される。データベース26に記憶される上記の交通流データは、所定の保管期間が経過した後に消去される。データの保管期間は、一週間、一ヶ月、一年など、任意の期間に設定することができる。
【0032】
このため、データベース26には、直近の一定期間(上記の保管期間)の交通流データが記憶されることになる。換言すれば、交通流算出部25は、データベース26に交通流データを記憶するとともに、一定期間が経過した場合には、データベース26に記憶されている交通流データを削除する。更には、交通流算出部25は、データベース26に記憶されている交通流データが、通信部27を介して管理サーバ3に送信された場合に、この交通流データを削除する。
【0033】
なお、交通流データを自動で削除せず、装置の管理者などの操作者による操作によって削除してもよい。
【0034】
図1に戻って、通信部27は、管理サーバ3との間で通信が可能であり、管理サーバ3からの検索要求に応じて、データベース26に記憶されている交通流データを読み出し、管理サーバ3に送信する。例えば、管理サーバ3からの検索要求として、所定の交差点に設けられる信号機の点灯時間を決める信号機点灯データの出力要求が発生した場合には、交通流算出部25で算出された交通流のデータ(後述する密度マップ)に基づいて、信号機の点灯時間を算出し、算出した点灯時間を示す信号機点灯データを管理サーバ3に送信する。詳細については後述する。
【0035】
管理サーバ3は、制御装置2との間で無線、有線、或いはネットワークにより接続されている。従って、管理サーバ3の設置位置は任意に決めることができる。勿論、制御装置2の近傍に設置することもできる。
【0036】
[第1実施形態の動作の説明]
次に、上述のように構成された第1実施形態に係る移動体監視システム101の処理手順を、
図6~
図8に示すフローチャートを参照して説明する。
図6~
図8に示す処理は、
図1に示す制御装置2により実行される。なお、本開示では、前述した
図2A、
図2Bに示したように、対面走行路51の側方に設置されたレーザレーダ1により、対面走行路51を走行する車両を監視する例について説明する。
【0037】
初めに、ステップS11において、センサデータ取得部21は、レーザレーダ1により所望の検出領域で検出された三次元点群情報(センサデータ)を取得する。例えば、
図2A、
図2Bに示したように、対面走行路51の側方にレーザレーダ1が設けられている場合には、検出領域K1内に存在する移動体より得られるセンサデータを取得する。また、
図3A、
図3Bに示したように、交差点52の側方にレーザレーダ1が設けられている場合には、検出領域K2内に存在する移動体より得られるセンサデータを取得する。
【0038】
ステップS12において、センサデータ処理部22は、センサデータ取得部21にて取得されたセンサデータから、走行路以外(道路上以外)で検出されたセンサデータを削除する。例えば、
図2A、
図2Bに示した例では、
図2Bに示す分割領域n1、n2、s1、s2以外の領域(走行路以外の領域)においては移動体を検出する必要がないので、走行路以外の領域で検出されたセンサデータを削除する。
図3A、
図3Bに示す例では、
図3Bに示す8個の領域の外側の領域で検出されたセンサデータを削除する(つまり領域K2に含まれない領域のデータは削除される。なお、領域K2に含まれる交差点内のデータは削除されない。)。この処理により、車両監視に必要でないデータを削除できるので、データ量を削減できる。
【0039】
ステップS13において、車両検出部23は、レーザレーダ1により検出された移動体の種別を特定する。例えば、普通車両、大型車両などの種別が特定される。
【0040】
ステップS14において、車両追跡部24は、車両検出部23で検出された車両に、各車両を特定するための車両IDを付与する(例えばフレーム上の座標値とIDとを対応させて記憶する。)。そして、画像上のトラッキングにより異なるフレーム(異なる時刻の検出データ)において同一の車両を特定する。なお、フレームの周期は例えば、数μ秒~数m秒程度である。
【0041】
ステップS15において、交通流算出部25により交通流データの測定、記録処理が実施される。以下、
図7に示すフローチャートを参照して、交通流データの測定、記録処理の詳細について説明する。
【0042】
図7に示すステップS31において、交通流算出部25は、1つのフレームを選択し、このフレームにおける1つの車両のID、種別、大きさ、速度、車両が存在する領域、の各データを取得する。
【0043】
ステップS32において、車両検出部23で検出された車両(これを、車両V1とする)は、検出領域K1内に設定したいずれかの分割領域にて検出されるのが初めてであるか否かを判断する。分割領域は、
図2Bに示す分割領域n1、n2、s1、s2である。例えば、車両V1が
図2Bに示す矢印Y1の方向に向けて走行している場合には分割領域s1内に進入した場合にレーザレーダ1によって初めて車両V1が検出されることになる。そして、初めて検出される場合には(S32;YES)、ステップS33に処理を進め、初めてでなければ(S32;NO)、ステップS34に処理を進める。
【0044】
ステップS33において、交通流算出部25は、車両V1が検出された時刻、車両V1のID、種別、車両V1が検出された分割領域、即ち、
図2Bに示すs1、n2などの分割領域を交通流データとして記録する。
【0045】
ステップS34において、交通流算出部25は、車両V1が前回(前回フレームで)検出された分割領域(例えばs1)とは異なる分割領域で検出されたか否かを判断する。例えば、車両V1が
図2Bに示す矢印Y1の方向に移動している場合には、車両V1は分割領域s1からn1に移動することになる。この場合には、前回と異なる分割領域で検出されたものと判断される。
【0046】
そして、車両V1が異なる分割領域で検出された場合には(S34;YES)、ステップS35において、交通流算出部25は、車両V1の移動情報を算出し、交通流データに記録する。例えば、車両V1が
図2Bに示す分割領域s1で検出され、その後、分割領域n1で検出された場合には、車両V1は
図2Bに示す矢印Y1の方向に移動しているものと判断し、この移動情報を交通流データに記録する。その後、交通流データをデータベース26に記録し、ステップS31に戻り、前記フレームの次のフレームを選択し、上記と同様の処理を実行する。そして、上記の処理を、レーザレーダ1で検出された各フレーム中に含まれる各車両(全車両)に対して実施し、所定時間が経過したら本処理を終了する。
【0047】
図6に戻り、ステップS16において、交通流算出部25は、交通流データをデータベース26から削除する処理を実施する。以下、この処理の詳細を
図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0048】
ステップS51において、交通流算出部25は、
図2Bに示すいずれかの分割領域にて車両V1が最後に検出されてから、予め設定した閾値時間が経過したか否かを判断する。例えば、車両V1が分割領域s1内で検出され、その後分割領域n1内で検出され、更にその後、全ての分割領域s1、s2、n1、n2内、即ち、検出領域K1内で車両V1が検出されなくなった場合には、検出されなくなった時点を記憶すると共に、この時点から計時を開始し、閾値時間が経過したか否かを判断する。
【0049】
閾値時間が経過した場合には(S51;YES)、ステップS52において、交通流算出部25は、車両V1は検出領域K1の外へ出たものと判定する。
【0050】
ステップS53において、交通流算出部25は、全ての車両についての判定が終了したか否かを判断し、終了した場合には(S53;YES)、ステップS54において、交通流算出部25は、検出領域K1の外に出たと判定された車両についての交通流データを、データベース26から削除する。つまり、検出する必要がなくなった車両についての交通流データを削除することにより、データベース26内のデータ量を削減する。その後、本処理を終了する。
【0051】
図6に戻り、ステップS17において通信部27は、現在の時刻が交通流データの送信周期であるか否かを判断する。
【0052】
送信周期である場合には(S17;YES)、ステップS18において、通信部27は、データベース26に記憶されている交通流データを管理サーバ3に送信する。従って、管理サーバ3において、交通流データを取得できる。管理サーバ3では、例えば
図4に示したように、
図2Bに示す検出領域K1内において、車両が検出領域K1内に進入した時刻、車両を特定するID、車両が最初に入った分割領域、最後に入った分割領域、及び車両の種別を示す情報が、管理サーバ3の操作者に提供される。
更には、
図5に示したように、所定の時間帯における車両の通過台数、車両の進行方向、及び車両の種別を示すデータが管理サーバ3の操作者に提供される。
【0053】
その後、ステップS19において、交通流算出部25は、管理サーバ3に送信した交通流データをデータベース26から削除する。その後、本処理を終了する。
【0054】
[第1実施形態の効果の説明]
このようにして、本開示に係る移動体監視システム101では、レーザレーダ1を用いて所望の検出領域(
図2A、
図2Bの例ではK1、
図3A、
図3Bの例ではK2)に設定した複数の分割領域(例えば、
図2Bに示すs1、s2、n1、n2)内にて車両を検出する。このため、単に検出領域K1を通過する車両を検出することのみならず、車両の走行方向、速度、種別、停車中の車両などの詳細なデータを検出し、交通流データを作成することができる。
【0055】
従って、管理サーバ3の操作者は、レーザレーダ1による所望の検出領域内において、交通流データを認識することができる。また、所定の検出領域において、任意の時間帯(例えば、午前7時から8時の時間帯)に走行する車両の種別、台数を、容易に且つ正確に認識することができる。また、人員により交通流を測定する場合と比較して、人件費を削減でき、測定期間を短縮でき、且つ測定精度を高めることができる。
【0056】
また、レーザレーダ1を用いて移動体を測定しているので、例えばカメラで撮像する場合と比較して、設置位置の融通性を高めることができる。即ち、走行路を走行する移動体をカメラで撮像する場合には、走行路を俯瞰できる位置(比較的高い位置)にカメラを設置する必要があるが、本開示ではレーザレーダ1を用いて移動体を検出するので、レーザレーダ1の設置位置を低くすることができ、設置位置の制限が緩和される。
【0057】
更に、移動体をカメラで撮像する場合には、画像解析に多くの演算負荷を要することになるが、レーザレーダ1を用いることにより、移動体検出の演算負荷を軽減できる。
また、レーザレーダ1は検出領域が広いので、一つのみのレーザレーダ1で移動体検出を行うことができ、更に、監視対象となる走行路の道路形状の制約を受けにくい。
【0058】
更に、レーザレーダ1は、雨天、逆光、夜間、トンネル内などの、周囲環境による影響を受けにくいので、安定的に交通流データを取得することができ、且つ設置場所の制約を受けない。
【0059】
なお、
図2A、
図2Bに示したように、対面走行路51に検出領域K1を設定し、対面走行路51の交通流を測定する例について説明したが、
図3A、
図3Bに示したように、交差点における交通流を検出することもできる。
図3A、
図3Bに示す例の場合には、車両が交差点に進入するときに通過する分割領域、及び交差点から出るときに通過する分割領域を検出することにより、どの方向から来た車両が、どの方向から出て行くかを検出することができる。
【0060】
例えば、
図3Bに示す分割領域w1において検出された車両が、その後分割領域n1で検出された場合には、この車両は、分割領域w1側から交差点内に進入し、更に左折して分割領域n1側に出ていったものと判断することができる。そして、このような交通流データを作成し、管理サーバ3の操作者に提供することができる。従って、操作者は、交差点内に入る車両の経路及び台数、交差点から出る経路及び台数を認識することが可能になり、例えば、信号機の時間設定(赤の点灯時間、緑の点灯時間)に役立てることができる。
【0061】
[第2実施形態の説明]
次に、第2実施形態について説明する。本開示に係る移動体監視システムの構成は、前述した
図1と同様であるので、構成説明を省略する。また、処理動作については、前述した
図6のステップS15に示した交通流データの演算、削除処理が相違する。従って、
図9に示すフローチャートを参照してS15の処理について以下に説明する。
【0062】
ステップS71において、交通流算出部25は、車両のID、種別、大きさ、速度、及び存在する位置を取得する。
【0063】
ステップS72において、交通流算出部25は、S71の処理で取得した各データをデータベース26に記憶する。
【0064】
ステップS73において、交通流算出部25は、データベース26に記憶した上記データのうち、記憶後に所定時間が経過したデータを削除する。即ち、所定時間以上経過したデータは不要となるので、削除することによりデータベース26のデータ量を削減する。
【0065】
ステップS74において、交通流算出部25は、車両を検出する検出領域に一定の面積を有する分割領域を設定する。以下、分割領域の設定方法を、
図10A、
図10Bを参照して説明する。
例えば、車両の検出領域が、
図10Aに示す如くの交差点Q1である場合において、この交差点Q1において、矩形状をなす複数の分割領域を設定する。具体的に、
図10Bに示すように、交差点Q1の内部、及びこの交差点Q1に接続する走行路の適所に、矩形状の分割領域R13~R75を設定する。この際、走行路から逸脱する領域には分割領域は設定されない。ここで、
図10Aと
図10Bは対応しており、
図10Bに示す分割領域R33~R55の9個の分割領域が、
図10Aに示す交差点Q1の内部に対応している。
【0066】
ステップS75において、交通流算出部25は、予め設定した所定の時間内において分割領域毎に、車両が存在した時間を測定する。例えば、所定時間を1分間に設定し、この1分間において、それぞれの分割領域に車両が存在している時間を測定する。
【0067】
ステップS76において、交通流算出部25は、分割領域毎に車両が存在している時間の比率を算出する。例えば、任意の分割領域において、1分間のうち6秒間だけ車両が存在している場合には、比率は10%ということになる。
図10Bに示した各分割領域において上記の比率を算出し、比率を示す密度マップを作成する。具体的に、
図11に示すように、分割領域毎に比率が記入された密度マップが作成される。
【0068】
ステップS77において、交通流算出部25は、比率のデータが記載された密度マップをデータベース26に記憶する。
【0069】
その後、
図6のステップS18にて示したように、上記の密度マップを管理サーバ3に送信する。その結果、管理サーバ3の操作者は、密度マップを見ることにより交差点Q1において、車両が輻輳する領域、或いは頻繁に車両が走行する領域を認識することができる。
【0070】
更に、通信部27は、上記の密度マップに基づいて、交差点Q1に設けられている信号機の適正な点灯時間を算出し、算出した点灯時間を示す信号機点灯データを、管理サーバ3に送信してもよい。即ち、上述した密度マップにより、交差点内のどの領域において車両が輻輳しているかを認識することができる。従って、交差点Q1におけるどの車線が混雑しているかを認識できるので、この車線に対応する信号機の緑灯の点灯時間を長く設定するなどの情報を含む信号機点灯データを管理サーバ3に送信する。管理サーバ3では、信号機の点灯時間の制御を実施し、緑灯、赤灯の点灯時間を適正な時間に設定できる。
【0071】
このようにして、本開示に係る移動体監視システムでは、交差点Q1及びその周辺の走行路に複数の分割領域を設定し、各分割領域において車両の存在する時間の比率を示す密度マップを作成する。従って、操作者はこの密度マップを見ることにより、交差点Q1内における混雑状況を認識できる。従って、例えば特定の走行路の領域において車両の存在比率が大きい場合には、この走行路を走行する車両が交差点で多く信号待ちしていることを認識できる。よって、この走行路の進行方向における信号機の緑灯の点灯時間を長く設定する、などの対応を容易に認識することができる。即ち、信号機における緑灯の点灯時間、赤灯の点灯時間を設定する際のデータとして用いることができる。
【0072】
また、曜日や時間帯で、混雑状況が異なる場合、例えば、朝の通勤時間帯における各分割領域の輻輳状態と、昼の時間帯における各分割領域の輻輳状態を用いて、時間帯毎に信号機の緑灯の点灯時間、赤灯の点灯時間をリアルタイムで変更するように制御することもできる。従って、交差点における車両の渋滞緩和に寄与することができる。
【0073】
本開示は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本開示の技術的範囲は、上述の説明から妥当な請求の範囲に係る事項によってのみ定められる。
【0074】
本開示で示した各機能は、1又は複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理装置は、また、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。
【0075】
特願2019-050736号(出願日:2019年3月19日)の全内容は、ここに援用される。
【符号の説明】
【0076】
1 レーザレーダ
2 制御装置
3 管理サーバ
21 センサデータ取得部
22 センサデータ処理部
23 車両検出部(移動体検出部)
24 車両追跡部
25 交通流算出部
26 データベース
27 通信部
51 対面走行路
52 交差点
101 移動体監視システム