(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物、それを用いた表示デバイスまたは受光デバイスの製造方法、基板ならびにデバイス
(51)【国際特許分類】
C08L 79/08 20060101AFI20240730BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240730BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20240730BHJP
H05B 33/00 20060101ALI20240730BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240730BHJP
【FI】
C08L79/08 Z
C08G73/10
C08K5/5419
C08L79/08 A
H05B33/00
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2021516708
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011711
(87)【国際公開番号】W WO2021193531
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2020052296
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020131460
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 大地
(72)【発明者】
【氏名】芦部 友樹
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-179750(JP,A)
【文献】特開2010-280807(JP,A)
【文献】国際公開第2013/125193(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/125194(WO,A1)
【文献】特開2020-033540(JP,A)
【文献】特開2017-226847(JP,A)
【文献】国際公開第2019/235712(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08K
C08L
H01L27/32
H05B33/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示デバイスまたは受光デバイスの基板として用いられる樹脂膜を製造するための樹脂組成物であって、(a)化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、および(b)化学式(3)で表される化合物および/またはその縮合物を含み、該樹脂組成物を430℃で30分加熱して得られる樹脂膜の重量減少開始温度が400℃以上であり、前記樹脂膜の膜厚が10μmであるときの黄色度が3.5以下であ
り、
前記樹脂中の化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位のうち、
Xの50モル%以上が、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および/または4,4’-オキシジフタル酸二無水物に対応するテトラカルボン酸残基であり、
Yの50モル%以上が、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンおよび/または3,3’-ジアミノジフェニルスルホンに対応するジアミン残基であり、
前記化学式(3)で表される化合物のうち、50重量%以上がn=3の化合物である、
樹脂組成物。
【化1】
(化学式(1)および(2)中、Xは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Yは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。)
【化2】
(化学式(3)中、R
11は水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を示す。R
12は炭素数1~10の炭化水素基を示す。nは、2~4の整数を示す。)
【請求項2】
前記樹脂中の化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位のうち50モル%以上が、化学式(11)で表される構造をYとして有する繰り返し単位である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化3】
【請求項3】
前記樹脂中の化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位のうち50モル%以上が、化学式(12)で表される構造をXとして有する繰り返し単位である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【化4】
【請求項4】
さらに溶媒を含む、請求項1~
3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)請求項
4に記載の樹脂組成物を支持体に塗布する工程と、
(B)該塗布膜を加熱して該支持体の上に樹脂膜を形成する工程と、
(C)該樹脂膜の上に表示デバイスまたは受光デバイスを形成する工程と、
を含む表示デバイスまたは受光デバイスの製造方法。
【請求項6】
さらに(D)前記支持体を除去する工程を含む請求項
5に記載の表示デバイスまたは受光デバイスの製造方法。
【請求項7】
化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、およびポリシロキサンを含む、表示デバイスまたは受光デバイスの基板であって、重量減少開始温度が400℃以上であり、黄色度が3.5以下であ
り、
前記樹脂中の化学式(1)で表される繰り返し単位のうち、
Xの50モル%以上が、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および/または4,4’-オキシジフタル酸二無水物に対応するテトラカルボン酸残基であり、
Yの50モル%以上が、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンおよび/または3,3’-ジアミノジフェニルスルホンに対応するジアミン残基であり、
前記ポリシロキサンが化学式(3)の縮合物であり、前記化学式(3)で表される化合物のうち50重量%以上がn=3である化合物である、表示デバイスまたは受光デバイスの基板。
【化5】
(化学式(1)中、Xは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Yは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。)
【化6】
(化学式(3)中、R
11
は水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を示す。R
12
は炭素数1~10の炭化水素基を示す。nは、2~4の整数を示す。)
【請求項8】
前記ポリシロキサンがシルセスキオキサン構造単位を含む、請求項
7に記載の表示デバイスまたは受光デバイスの基板。
【請求項9】
前記樹脂中の化学式(1)で表される繰り返し単位のうち50モル%以上が、化学式(11)で表される構造をYとして有する繰り返し単位である、請求項
7または
8に記載の表示デバイスまたは受光デバイスの基板。
【化7】
【請求項10】
前記樹脂中の化学式(1)で表される繰り返し単位のうち50モル%以上が、化学式(12)で表される構造をXとして有する繰り返し単である、請求項
7~
9のいずれかに記載の表示デバイスまたは受光デバイスの基板。
【化8】
【請求項11】
請求項
7~
10のいずれかに記載の基板の上に表示素子または受光素子が形成されてなるデバイス。
【請求項12】
請求項
7~
10のいずれかに記載の基板の一方の面に表示素子が形成されてなり、他方の面に受光素子が形成されてなる、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、それを用いた表示デバイスまたは受光デバイスの製造方法、基板ならびにデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、その優れた電気絶縁性、耐熱性、機械特性により、半導体、ディスプレイ用途といった、様々な電子デバイスの材料として使用されている。最近では、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、カラーフィルターなどのディスプレイの基板にポリイミド膜を用いることで、衝撃に強く、フレキシブルなディスプレイを製造することができる。
【0003】
電子デバイスに使用される材料は、デバイス製造における高温プロセスに耐える高い耐熱性が求められる。特に透明性を必要とする用途においては、耐熱性と透明性を両立する基板材料が求められる。
【0004】
例えば、特許文献1には高い耐熱性を有するポリイミドを基板として使用して、有機ELディスプレイを製造する例が開示されている。また、特許文献2には高透明性を有するポリイミドを基板として使用して、カラーフィルター、有機ELディスプレイ、タッチパネルなどの電子デバイスを製造する例が開示されている。また、特許文献3には、アルコキシシラン変性ポリイミド前駆体を使用してポリイミドフィルムを製造し、透明基板用途などに用いる例が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/099183号
【文献】国際公開第2017/221776号
【文献】特開2016-188367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたポリイミド樹脂膜では、樹脂膜の光透過率が不足しているため、透明性を必要とする用途に適用できないという課題があった。特許文献2や特許文献3に記載されたポリイミド樹脂膜では、電子デバイス製造時の高温プロセスにおいて、ポリイミド樹脂膜上に積層した膜が剥がれる課題があった。そこで本発明は、透明性を有し、電子デバイス用基板として使用可能な樹脂膜を与える樹脂組成物であって、高温プロセスにおいて、当該樹脂膜上に積層した膜の剥がれを抑制できるような樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表示デバイスまたは受光デバイスの基板として用いられる樹脂膜を製造するための樹脂組成物であって、(a)化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、および(b)化学式(3)で表される化合物および/またはその縮合物を含み、該樹脂組成物を430℃で30分加熱して得られる樹脂膜の重量減少開始温度が400℃以上であり、前記樹脂膜の膜厚が10μmであるときの黄色度が3.5以下である、樹脂組成物である。
【0008】
【0009】
化学式(1)および(2)中、Xは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Yは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0010】
【0011】
化学式(3)中、R11は水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を示す。R12は炭素数1~10の炭化水素基を示す。nは、2~4の整数を示す。
【0012】
また本発明は、化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、およびポリシロキサンを含む、表示デバイスまたは受光デバイスの基板であって、重量減少開始温度が400℃以上であり、黄色度が3.5以下である基板である。
【0013】
【0014】
化学式(1)中、Xは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Yは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る樹脂組成物は、透明性を有し、電子デバイス用基板として使用可能な樹脂膜を与える。この樹脂膜は、電子デバイス製造における高温プロセスにおいて、樹脂膜上に積層した膜が剥がれる現象を抑制することができ、かつ透明性を必要とする用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0017】
<樹脂組成物>
本発明にかかる樹脂組成物は、表示デバイスまたは受光デバイスの基板として用いられる樹脂膜を製造するための樹脂組成物であって、(a)化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂(以下、「(a)樹脂」と称する場合がある)、および(b)化学式(3)で表される化合物および/またはその縮合物(以下、「(b)化合物等」と称する場合がある)を含む。
【0018】
【0019】
化学式(1)および(2)中、Xは炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Yは炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~10のアルキルシリル基、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンまたはピリジニウムイオンを示す。
【0020】
【0021】
化学式(3)中、R11は水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を示す。R12は炭素数1~10の炭化水素基を示す。nは、2~4の整数を示す。
【0022】
本発明にかかる樹脂組成物は、これを430℃で30分加熱して得られる樹脂膜の重量減少開始温度が400℃以上である。重量減少開始温度は、好ましくは430℃以上であり、より好ましくは450℃以上である。また、重量減少開始温度は600℃以下が好ましい。樹脂膜の重量減少開始温度が400℃以上であると、電子デバイスの製造における高温プロセスにおいて、樹脂膜からの発ガスに起因して、樹脂膜上に形成した膜が剥がれる膜浮き現象が生じるのを抑制することができる。樹脂膜の重量減少温度が高温であるほど、電子デバイス製造のプロセス温度を高温化できるため好ましい。なお、430℃30分で焼成して得られる樹脂膜にて重量減少開始温度を規定する意味については後述する。
【0023】
さらに、その樹脂膜の膜厚が10μmであるときの黄色度が3.5以下である。黄色度は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2以下である。また、好ましくは-3以上であり、より好ましくは-2.5以上であり、さらに好ましくは-2以上である。樹脂膜の黄色度が3.5以下であると、無色透明性を必要とする用途に好適に用いることができる。
【0024】
本発明において、樹脂膜の重量減少開始温度は、熱重量測定装置を用いで測定される。加熱条件は、(第1段階)10℃/minの昇温レートで試料を150℃まで昇温して、150℃で30分間保持する、(第2段階)10℃/minの降温レートで試料を室温まで空冷する、(第3段階)10℃/minの昇温レートで加熱する、という条件とし、重量減少が開始する温度を重量減少開始温度として求める。
【0025】
本発明において、樹脂膜の黄色度は、JIS K 7373:2006に基づいて求める。また、樹脂膜の膜厚の測定方法として、光干渉式膜厚計、エリプソメーターなどの非接触式測定方法や、触針式段差系、マイクロメーター、ダイヤルゲージなどの接触式測定方法や、エンコーダー内蔵測長器などの電磁式測定方法を用いることができる。
【0026】
((a)樹脂)
化学式(1)はポリイミドの繰り返し単位構造を示し、化学式(2)はポリアミド酸等の繰り返し単位構造を示す。ポリアミド酸は、後述の通り、テトラカルボン酸とジアミン化合物を反応させることで得られる。さらにポリアミド酸は、加熱や化学処理を行うことにより、耐熱性樹脂であるポリイミドに変換することができる。
【0027】
化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂とは、該繰り返し単位の繰り返し数が全ての繰り返し単位の繰り返し数の50%以上を占めることをいう。(a)樹脂は、該繰り返し単位の繰り返し数が全繰り返し単位の繰り返し数の80%以上を占めることが好ましく、90%以上を占めることがより好ましい。上記の範囲であれば、表示デバイスまたは受光デバイスの基板として使用するために必要な耐熱性が確保される。
【0028】
化学式(1)および(2)中、Xは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示すが、かかるテトラカルボン酸残基は、水素原子および炭素原子を必須成分とし、ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい炭素数2~80の4価の有機基であることが好ましく、炭素数2~80の4価の炭化水素基であることがより好ましい。ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの各原子は、それぞれ独立に20以下の範囲であるものが好ましく、10以下の範囲であるものがより好ましい。
【0029】
Xを与えるテトラカルボン酸としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例として、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン、シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸や、国際公開第2017/099183号に記載のテトラカルボン酸などが挙げられる。これらのうち、樹脂膜の耐熱分解性と高い光透明性を両立させる観点から、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテルが好ましい。なかでも、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸が最も好ましい。
【0030】
これらのテトラカルボン酸は、そのまま、あるいは酸無水物、活性エステル、活性アミドの状態でも使用できる。これらのうち、酸無水物は、重合時に副生成物が生じないため好ましく用いられる。また、これらを2種以上用いてもよい。
【0031】
樹脂中の化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位のうち50モル%以上が、化学式(12)で表される構造をXとして有する繰り返し単位であることが好ましい。
【0032】
【0033】
Xとして化学式(12)で表される構造を与えるテトラカルボン酸は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸である。3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸をテトラカルボン酸に用いると、本発明の樹脂膜の重量減少温度をより向上させることでき、また黄色度の増加をより抑制できる。
【0034】
化学式(1)および(2)中、Yは、水素原子および炭素原子を必須成分とし、ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の原子を含んでもよい炭素数2~80の2価の有機基であることが好ましく、炭素数2~80の2価の炭化水素基であることがより好ましい。ホウ素、酸素、硫黄、窒素、リン、ケイ素およびハロゲンの各原子は、それぞれ独立に20以下の範囲であるものが好ましく、10以下の範囲であるものがより好ましい。
【0035】
Yを与えるジアミンとしては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例として、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4-アミノ安息香酸4-アミノフェニル、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサンや、国際公開第2017/099183号に記載のジアミンなどが挙げられる。このうち、樹脂膜の耐熱分解性と高い光透明性を両立させる観点から、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホンが好ましい。なかでも、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンが最も好ましい。
【0036】
これらのジアミンは、そのまま、あるいは対応するトリメチルシリル化ジアミンの状態でも使用できる。また、これらを2種以上用いてもよい。
【0037】
樹脂中の化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位のうち50モル%以上が、化学式(11)で表される構造をYとして有する繰り返し単位であることが好ましい。
【0038】
【0039】
Yとして化学式(11)で表される構造を与えるジアミンは4,4’-ジアミノジフェニルスルホンである。4,4’-ジアミノジフェニルスルホンをジアミンに用いると、本発明の樹脂膜の黄色度をより減少させることができ、また重量減少温度の低下をより抑制できる。
【0040】
(a)樹脂は、末端が末端封止剤により封止されたものであってもよい。末端封止剤を反応させることで、ポリイミド前駆体の分子量を好ましい範囲に調整できる。
【0041】
末端のモノマーがジアミン化合物である場合は、そのアミノ基を封止するために、ジカルボン酸無水物、モノカルボン酸、モノカルボン酸クロリド化合物、モノカルボン酸活性エステル化合物、二炭酸ジアルキルエステルなどを末端封止剤として用いることができる。
【0042】
末端のモノマーが酸二無水物である場合は、その酸無水物基を封止するために、モノアミン、モノアルコールなどを末端封止剤として用いることができる。
【0043】
(a)樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、ポリスチレン換算で好ましくは200,000以下、より好ましくは150,000以下、さらに好ましくは100,000以下であることが好ましい。この範囲であれば、高濃度の樹脂組成物であっても粘度が増大するのをより抑制することができる。また、重量平均分子量は好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは30,000以上である。重量平均分子量が30,000以上であれば、樹脂組成物としたときの粘度が低下しすぎることがなく、より良好な塗布性を保つことができる。
【0044】
化学式(1)および(2)の繰り返し数は、上述の重量平均分子量を満たす範囲であればよい。好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上である。また、好ましく1000以下であり、より好ましくは500以下である。
【0045】
((b)化合物等)
(b)化学式(3)で表される化合物は、アルコキシ基(OR11)の加水分解とそれに続く脱水縮合によりシロキサン結合を形成する。この反応が繰り返されることにより、化学式(3)で表される化合物からポリシロキサンが生成される。樹脂膜中に形成されるポリシロキサンは、樹脂膜の耐熱分解性を損なうことなく、光透過率を向上させることができる。したがって、樹脂膜の重量減少開始温度を高めつつ、黄色度を下げることができる。
【0046】
化学式(3)で表される化合物は、化学式(31)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0047】
【0048】
化学式(31)中、R11は水素原子または炭素数1~10の炭化水素基を示す。R12は炭素数1~10の炭化水素基を示す。ここで、R11およびR12における炭素数1~10の炭化水素基は、反応性の官能基を有さないものである。化学式(31)で表される化合物は、Si(OR11)4よりも少ない数のアルコキシ基(OR11)を持つため、すべてのアルコキシ基が加水分解されやすい。このため、未反応のアルコキシ基が加熱されて劣化した場合に見られる、樹脂膜の黄色度の増加が起こらない。そして、化学式(31)で表される化合物を含むと、Si(OR11)4のみから得られるポリシロキサンと異なり、炭化水素基R12を含むポリシロキサンを与えるため、有機ポリマーとの相溶性により優れる。またSi(OR11)2(R12)2のみから得られるポリシロキサンと異なり、分岐構造が形成されたネットワーク状のポリシロキサンを与えるため、耐熱性により優れる。
【0049】
化学式(3)で表される化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどがあげられる。これらのうち、フェニルトリメトキシシランおよびフェニルトリエトキシシランが、化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂との相溶性がよく好ましい。これらの化合物を単独または2種以上含んでもよい。
【0050】
化学式(31)で表される化合物以外で(b)化合物に該当する化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジフェニルシランジオールなどがあげられる。これらのうち、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジフェニルシランジオールが、化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂との相溶性がよく好ましい。これらの化合物を単独または2種以上含んでもよい。さらには化学式(31)で表される化合物と組合せて含んでもよく、フェニルトリメトキシシランとジメトキシジフェニルシラン、フェニルトリメトキシシランとジエトキシジフェニルシラン、フェニルトリメトキシシランとジフェニルシランジオール、フェニルトリエトキシシランとジメトキシジフェニルシラン、フェニルトリエトキシシランとジエトキシジフェニルシラン、フェニルトリエトキシシランとジフェニルシランジオールが好ましい組み合わせである。
【0051】
また本発明の樹脂組成物は、化学式(3)で表される化合物表される化合物の代わりに、それらから得られる縮合物を含むことでもよい。縮合物は、前述の通り、アルコキシ基の加水分解とそれに続く脱水縮合によりシロキサン結合を形成させることで得られる。
【0052】
樹脂組成物における(b)化合物等の含有量は、(a)樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。上記含有量が、5質量部以上であれば樹脂膜の光透過性がより向上し、200質量部以下であれば樹脂膜としたときの機械特性がより向上する。
【0053】
((c)溶媒)
本発明における樹脂組成物は、(c)溶媒を含んでもよい。溶媒を含むと、樹脂組成物をワニスとして使用することができる。かかるワニスを様々な支持体上に塗布することで、化学式(1)または(2)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂を含む塗膜を支持体上に形成できる。さらに、得られた塗膜を加熱処理して硬化させることにより、表示デバイスまたは受光デバイスの基板として使用できるポリイミドフィルムが得られる。
【0054】
溶媒としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例として、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレンウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、ジメチルスルホキシド、スルホラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、水や、国際公開第2017/099183号に記載の溶媒などを単独、または2種以上使用することができる。
【0055】
樹脂組成物における溶媒の含有量は、(a)樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1500質量部以下である。かかる条件を満たす範囲であれば、塗布に適した粘度となり、塗布後の膜厚を容易に調節することができる。
【0056】
本発明における樹脂組成物の粘度は20~10,000mPa・sが好ましく、50~8,000mPa・sがより好ましい。粘度が20mPa・s未満であると十分な膜厚の樹脂膜が得られなくなり、10,000mPa・sより大きいと樹脂組成物の塗布が困難となる。
【0057】
(添加剤)
本発明にかかる樹脂組成物は、(a)樹脂、(b)化合物および(c)溶媒以外に、(d)光酸発生剤、(e)熱架橋剤、(f)熱酸発生剤、(g)フェノール性水酸基を含む化合物、(h)密着改良剤、(i)無機粒子および(j)界面活性剤から選ばれる少なくとも一つの添加剤を含んでもよい。これらの添加剤の具体例としては、例えば国際公開第2017/099183号に記載のものを挙げることができる。
【0058】
(d)光酸発生剤
本発明の樹脂組成物は、光酸発生剤を含有することで感光性樹脂組成物とすることができる。光酸発生剤を含有することで、光照射部に酸が発生して光照射部のアルカリ水溶液に対する溶解性が増大し、光照射部が溶解するポジ型のレリーフパターンを得ることができる。また、光酸発生剤とエポキシ化合物または後述する熱架橋剤を含有することで、光照射部に発生した酸がエポキシ化合物や熱架橋剤の架橋反応を促進し、光照射部が不溶化するネガ型のレリーフパターンを得ることができる。
【0059】
光酸発生剤としては、キノンジアジド化合物、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよく、高感度な感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0060】
(e)熱架橋剤
本発明の樹脂組成物は、熱架橋剤を含有することで加熱して得られる樹脂膜の耐薬品性や硬度を高めることができる。熱架橋剤の含有量は、(a)樹脂100質量部に対して10質量部以上100質量部以下が好ましい。上記含有量が10質量部以上100質量部以下であれば、得られる樹脂膜の強度が高く、樹脂組成物の保存安定性にも優れる。
【0061】
(f)熱酸発生剤
本発明の樹脂組成物は、さらに熱酸発生剤を含有してもよい。熱酸発生剤は、後述する現像後加熱により酸を発生し、(a)樹脂と熱架橋剤との架橋反応を促進するほか、硬化反応を促進する。このため、得られる樹脂膜の耐薬品性が向上し、膜減りを低減することができる。熱酸発生剤から発生する酸は強酸が好ましく、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸などが好ましい。 熱酸発生剤の含有量は、架橋反応をより促進する観点から、(a)樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、10質量部以下が好ましい。
【0062】
(g)フェノール性水酸基を含む化合物
必要に応じて、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を補う目的で、フェノール性水酸基を含む化合物を含有してもよい。フェノール性水酸基を含む化合物を含有することで、得られる感光性樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するために、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で、容易に現像が行えるようになる。そのため、感度が向上しやすくなる。このようなフェノール性水酸基を含む化合物の含有量は、(a)樹脂100質量部に対して、好ましくは3質量部以上40質量部以下である。
【0063】
(h)密着改良剤
本発明におけるワニスは、密着改良剤を含有してもよい。密着改良剤としては、化学式(3)で表される化合物とは異なり、アルコキシシリル基とアルコキシシリル基とは異なる反応性官能基を有するシラン化合物が好ましく、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルメトキシジエトキシシラン、3-ウレイドプロピルジメトキシエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、4-アミノフェニルトリメトキシシラン、4-アミノフェニルトリエトキシシラン、4-アミノフェニルメチルジメトキシシラン、4-アミノフェニルメチルジエトキシシシラン、3-アミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノフェニルトリエトキシシラン、3-アミノフェニルメチルジメトキシシラン、3-アミノフェニルメチルジエトキシシシラン、2-アミノフェニルトリメトキシシラン、2-アミノフェニルトリエトキシシラン、2-アミノフェニルメチルジメトキシシラン、2-アミノフェニルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのシランカップリング剤があげられる。密着改良剤を含有することにより、感光性樹脂膜を現像する場合などに、シリコンウェハ、ITO、SiO2、窒化ケイ素などの下地基材との密着性を高めることができる。また、樹脂膜と下地の基材との密着性を高めることにより洗浄などに用いられる酸素プラズマやUVオゾン処理に対する耐性を高めることもできる。また、焼成時やディスプレイ製造時の真空プロセスで樹脂膜が基板から浮く膜浮き現象を抑制することができる。密着改良剤の含有量は、(a)樹脂100質量部に対して、0.005~10質量部が好ましい。
【0064】
(i)無機粒子
本発明の樹脂組成物は、耐熱性向上を目的として無機粒子を含有することができる。か
かる目的に用いられる無機粒子としては、白金、金、パラジウム、銀、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、鉄、コバルト、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉛、ビスマス、タングステンなどの金属無機粒子や、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属酸化物無機粒子などが挙げられる。無機粒子の形状は特に限定されず、球状、楕円形状、偏平状、ロット状、繊維状などが挙げられる。また、無機粒子を含有した樹脂膜の表面粗さが増大するのを抑制するため、無機粒子の平均粒径は1nm以上100nm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であればより好ましく、1nm以上30nm以下であればさらに好ましい。
【0065】
無機粒子の含有量は、(a)樹脂100質量部に対し、3質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、100質量部以下が好ましく、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。上記含有量が3質量部以上であれば耐熱性が十分向上し、100質量部以下であれば樹脂膜の靭性が低下しにくくなる。
【0066】
(j)界面活性剤
本発明の樹脂組成物は、塗布性を向上させるために界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、住友3M(株)製の“フロラード”(登録商標)、DIC(株)製の“メガファック”(登録商標)、旭硝子(株)製の“スルフロン”(登録商標)などのフッ素系界面活性剤、信越化学工業(株)製のKP341、チッソ(株)製のDBE、共栄社化学(株)製の“ポリフロー”(登録商標)、“グラノール”(登録商標)、ビック・ケミー(株)製のBYKなどの有機シロキサン界面活性剤、共栄社化学(株)製のポリフローなどのアクリル重合物界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、(a)樹脂100質量部に対し、0.01~10質量部含有することが好ましい。
【0067】
<樹脂組成物の製造方法>
上記(a)樹脂、(b)化合物等ならびに必要により光酸発生剤、熱架橋剤、熱酸発生剤、フェノール性水酸基を含む化合物、密着改良剤、無機粒子および界面活性剤などを溶媒に溶解させることにより、本発明の樹脂組成物の実施形態の一つであるワニスを得ることができる。溶解方法としては、撹拌や加熱が挙げられる。光酸発生剤を含む場合、加熱温度は感光性樹脂組成物としての性能を損なわない範囲で設定することが好ましく、通常、室温~80℃である。また、各成分の溶解順序は特に限定されず、例えば、溶解性の低い化合物から順次溶解させる方法がある。また、界面活性剤など撹拌溶解時に気泡を発生しやすい成分については、他の成分を溶解してから最後に添加することで、気泡の発生による他成分の溶解不良を防ぐことができる。
【0068】
なお、(a)樹脂は既知の方法によって重合することができる。例えば、テトラカルボン酸、あるいは対応する酸二無水物、活性エステル、活性アミドなどを酸成分とし、ジアミンあるいは対応するトリメチルシリル化ジアミンなどをジアミン成分として反応溶媒中で重合させることにより、ポリアミド酸を得ることができる。また、ポリアミド酸は、カルボキシ基がアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオンと塩を形成したものでもあってもよく、炭素数1~10の炭化水素基または炭素数1~10のアルキルシリル基でエステル化されたものであってもよい。一方、ポリイミドは、後述する方法によってポリアミド酸をイミド化することで得られる。
【0069】
反応溶媒としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例として、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレンウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、ジメチルスルホキシド、スルホラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、水や、国際公開第2017/099183号に記載の反応溶媒などを単独、または2種以上使用することができる。
【0070】
反応溶媒の使用量は、テトラカルボン酸およびジアミン化合物の合計量が、反応溶液の全体の0.1~50質量%となるように調整することが好ましい。また反応温度は-20℃~150℃が好ましく、0~100℃がより好ましい。さらに、反応時間は0.1~24時間が好ましく、0.5~12時間がより好ましい。また、反応で使用するジアミン化合物のモル数とテトラカルボン酸のモル数は等しいことが好ましい。等しければ、樹脂組成物から高い機械特性の樹脂膜が得られやすい。
【0071】
得られたポリアミド酸溶液はそのまま本発明の樹脂組成物として使用してもよい。この場合、反応溶媒に樹脂組成物として使用する溶媒と同じものを用いたり、反応終了後に溶媒を添加したりすることで、樹脂を単離することなく目的の樹脂組成物を得ることができる。
【0072】
また、得られたポリアミド酸は、更にポリアミド酸の繰り返し単位の一部または全てをイミド化させたり、エステル化させたりしてもよい。この場合、ポリアミド酸の重合で得られたポリアミド酸溶液をそのまま次の反応に用いてもよく、ポリアミド酸を単離したうえで、次の反応に用いてもよい。
【0073】
エステル化およびイミド化反応においても、反応溶媒に樹脂組成物として使用する溶媒と同じものを用いたり、反応終了後に溶媒を添加したりすることで、樹脂を単離することなく目的の樹脂組成物を得ることができる。
【0074】
イミド化する方法は、ポリアミド酸を加熱する方法、もしくは、脱水剤およびイミド化触媒を添加して必要に応じて加熱する方法であることが好ましい。後者の方法の場合、脱水剤の反応物やイミド化触媒などを除去する工程が必要になるため、前者の方法がより好ましい。脱水剤およびイミド化触媒としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
【0075】
イミド化に用いられる反応溶媒としては、重合反応で例示した反応溶媒を挙げることができる。
【0076】
イミド化反応の反応温度は、好しくは0~180℃であり、より好ましくは10~150℃である。反応時間は、好ましくは1.0~120時間であり、より好ましくは2.0~30時間である。反応温度や反応時間をこのような範囲で適宜調整することで、ポリアミド酸のうち所望の割合をイミド化させることができる。
【0077】
エステル化する方法は、エステル化剤を反応させる方法、もしくは、脱水縮合剤の存在下にアルコールを反応させる方法が好ましい。エステル化のために用いられる材料や反応条件には特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
【0078】
これらの製造方法により得られたワニスは、濾過フィルターを用いて濾過し、ゴミなどの異物を除去することが好ましい。
【0079】
<樹脂膜の製造方法>
本発明の樹脂組成物を用いた樹脂膜の製造方法は、(A)支持体に上記樹脂組成物を塗布する工程と、(B)該塗布膜を加熱して該支持体の上に樹脂膜を形成する工程とを含む。
【0080】
まず、本発明の樹脂組成物の実施形態の一つであるワニスを支持体上に塗布する。支持体としては、シリコン、ガリウムヒ素などのウェハ基板、サファイアガラス、ソーダ石灰硝子、無アルカリガラスなどのガラス基板、ステンレス、銅などの金属基板あるいは金属箔、セラミックス基板、などが挙げられる。中でも、表面平滑性、加熱時の寸法安定性の観点から、無アルカリガラスが好ましい。
【0081】
ワニスの塗布方法としては、スピン塗布法、スリット塗布法、ディップ塗布法、スプレー塗布法、印刷法などが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。樹脂膜を表示デバイスまたは受光デバイスの基板として用いる場合には、大型サイズの支持体上に塗布する必要があるため、特にスリット塗布法が好ましく用いられる。
【0082】
塗布に先立ち、支持体を予め前処理してもよい。例えば、前処理剤をイソプロパノール、エタノール、メタノール、水、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチル、アジピン酸ジエチルなどの溶媒に0.5~20質量%溶解させた溶液を用いて、スピンコート、スリットダイコート、バーコート、ディップコート、スプレーコート、蒸気処理などの方法で支持体表面を処理する方法が挙げられる。必要に応じて、減圧乾燥処理を施し、その後50℃~300℃の熱処理により支持体と前処理剤との反応を進行させることができる。
【0083】
塗布後は、ワニスの塗布膜を乾燥させることが一般的である。乾燥方法としては、減圧乾燥や加熱乾燥、あるいはこれらを組み合わせて用いることができる。減圧乾燥の方法としては、例えば、真空チャンバー内に塗布膜を形成した支持体を置き、真空チャンバー内を減圧することで行なう。また、加熱乾燥はホットプレート、オーブン、赤外線などを使用して行なう。ホットプレートを用いる場合、プレート上に直接、もしくは、プレート上に設置したプロキシピン等の治具上に塗布膜を保持して加熱乾燥する。
【0084】
本発明の樹脂組成物に光酸発生剤を含む場合、次に説明する方法により、乾燥後の塗布膜からパターンを形成することができる。塗布膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。ポジ型の感光性を有する場合、露光部が現像液に溶解する。ネガ型の感光性を有する場合、露光部が硬化し、現像液に不溶化する。
【0085】
露光後、現像液を用いてポジ型の場合は露光部を、またネガ型の場合は非露光部を除去することによって所望のパターンを形成する。現像液としては特に制限はなく、公知のものを用いることができる(例えば、国際公開第2017/099183号に記載の現像液など)。このうち、ポジ型・ネガ型いずれの場合もテトラメチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。またネガ型においては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどの有機溶媒を用いることもできる。現像後は水にてリンス処理をすることが一般的である。
【0086】
最後に180℃以上600℃以下の範囲で加熱処理し、塗布膜を焼成することにより耐熱性を有する樹脂膜を製造することができる。好ましくは430℃以上で加熱することが好ましく、また490℃以下で加熱することが好ましい。表示デバイスは400℃よりも高い温度で製造されるため、この温度に耐えられる樹脂膜が必要となる。430℃以上の焼成温度であれば、樹脂膜に高い耐熱性を持たせることができる。また、490℃以下で加熱すれば、樹脂の熱分解が抑制されて黄色度の低い樹脂膜が得られる。
【0087】
<樹脂膜>
本発明における樹脂膜の膜厚は特に限定されるものではないが、膜厚は3μm以上が好ましい。膜厚は、より好ましくは5μm以上であり、さらに好ましくは7μm以上である。また、膜厚は100μm以下が好ましい。膜厚は、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。膜厚が3μm以上であれば表示デバイスまたは受光デバイスの基板として特に優れた機械特性が得られる。また、膜厚が100μm以下であれば、表示デバイスまたは受光デバイスの基板として特に優れた靭性が得られる。
【0088】
本発明における樹脂膜は、様々な電子デバイスの基板として使用できる。特に有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ、電子ペーパー、タッチパネルなどの表示デバイスや、X線受光センサー、太陽電池、シンチレーターなどの受光デバイスの基板として好適に用いられる。従来、これらのデバイスは大面積のガラスを基板として使用し、その上に各種素子を形成して製造されてきた。よって、ガラス基板を支持体とし、樹脂組成物を塗布し加熱して硬化させて得られた樹脂膜の上に、同様に各種素子を形成して最後の段階でガラス基板を取り除けば、樹脂膜を基板としたデバイスを製造できる。
【0089】
樹脂膜は、表示デバイスまたは受光デバイスの基板として用いる場合は、通常、支持体から剥離せずに次の工程に用いる。しかし、後述する剥離方法によって支持体から剥離した樹脂膜を用いて、次の工程へ進めても良い。剥離せずに次の工程に用いる場合、支持体が反ることにより工程通過性が低下するのを防ぐため、発生するストレスが25MPaより小さいことが好ましい。ストレスは、一般に薄膜応力測定装置を用いて測定される。その仕組みは、ポリイミドフィルムが成膜された基板の反り量を測定し、そこから算出される。なお、ポリイミドフィルムが吸湿すると測定結果に影響するため、ポリイミドフィルムを乾燥させた状態で測定した結果を採用する。
【0090】
<表示デバイスまたは受光デバイスの基板>
本発明の実施の形態に係る基板は、化学式(1)で表される繰り返し単位を主成分とする樹脂、およびポリシロキサンを含む、表示デバイスまたは受光デバイスの基板であって、重量減少開始温度が400℃以上であり、黄色度が3.5以下である基板である。
【0091】
【0092】
化学式(1)中、Xは、炭素数2以上の4価のテトラカルボン酸残基を示し、Yは、炭素数2以上の2価のジアミン残基を示す。この化学式(1)の詳細な説明、および基板の重量減少開始温度が400℃以上であり、黄色度が3.5以下であることの説明及び好ましい範囲は、本発明にかかる樹脂組成物において説明した内容と同じである。
【0093】
特に、基板がポリシロキサンを含むことで、重量減少開始温度を高めつつ、黄色度を下げることができる。ポリシロキサンはシルセスキオキサンであることが好ましく、(b)化合物の加水分解および縮合により得られるポリシロキサンであることがより好ましい。このとき、上記効果が特に大きくなる。
【0094】
また本発明の表示デバイスまたは受光デバイスの基板において、化学式(1)で表される繰り返し単位のうち50モル%以上が、前述の化学式(11)で表される構造をYとして有する繰り返し単位であることが好ましく、化学式(1)で表される繰り返し単位のうち50モル%以上が、前述の化学式(12)で表される構造をXとして有する繰り返し単位であることが好ましい。
【0095】
上記基板の製造方法としては特に制限はないが、本発明にかかる樹脂組成物から得られる樹脂膜を当該基板としての用途に供することで、得ることができる。
【0096】
<表示デバイスまたは受光デバイス>
本発明にかかるデバイスは、上記基板の上に表示素子または受光素子が形成されてなるデバイスである。表示素子としては、有機EL素子、液晶表示素子、マイクロLED素子、電子ペーパー用の駆動素子、タッチパネル部材、カラーフィルター等が挙げられる。受光素子としては、X線受光素子、太陽電池セル、シンチレーターパネル、イメージセンサ等が挙げられる。
【0097】
本発明にかかるデバイスの例として、上記基板の一方の面に表示素子が形成されてなり、他方の面に受光素子が形成されてなるデバイスが挙げられる。一例を示すと、まず本発明の基板の上に表示素子である有機EL素子を形成した有機ELパネルを用意する。それとは別に、シリコン基板を用いてCMOSセンサー素子が形成されたイメージセンサを用意する。上記有機ELパネルに対して、有機EL素子が形成された面とは反対の面にイメージセンサを貼り合わせると表示素子と受光素子が一体となったパネルが形成される。有機EL素子が形成された面から入射する光は、本発明の基板の黄色度が小さいためほとんど遮られることなく通過して受光素子に届く。その結果、受光素子の前面に表示素子が存在しても光のセンシングが可能となる。このように、各素子の配置に対する制約が軽減されて、デバイスの設計自由度が増すメリットがある。
【0098】
<表示デバイスまたは受光デバイスの製造方法>
本発明の樹脂組成物を用いた表示デバイスまたは受光デバイスの製造方法は、上記樹脂膜の製造方法における(A)工程および(B)工程に加えて、(C)該樹脂膜の上に表示デバイスまたは受光デバイスを形成する工程を含む。
【0099】
まず、上述の(A)工程および(B)工程の方法で、ガラス基板などの支持体の上に樹脂膜を製造する。このとき、後述する支持体からの剥離を容易にさせるために、あらかじめプライマー層を支持体の上に設けても構わない。例えば、支持体上に、離型剤を塗布したり、犠牲層を設けたりすることが挙げられる。離型剤としては、シリコーン系、フッ素系、芳香族高分子系、アルコキシシラン系等が挙げられる。犠牲層としては、金属膜、金属酸化物膜、アモルファスシリコン膜等が挙げられる。
【0100】
上記にて形成した樹脂膜の上には、必要に応じて無機膜を設ける。これにより基板外部から水分や酸素が樹脂膜を通過して画素駆動素子や発光素子の劣化を引き起こすのを防ぐことができる。無機膜としては、例えばケイ素酸化物(SiOx)、ケイ素窒化物(SiNy)、ケイ素酸窒化物(SiOxNy)などが挙げられ、これらは単層、あるいは複数の種類を積層して用いることができる。また、これらの無機膜は例えばポリビニルアルコールなどの有機膜と交互に積層して用いることもできる。これらの無機膜の成膜方法は、化学気相成長法(CVD)や物理気相成長法(PVD)などの蒸着法を用いて行われることが好ましい。
【0101】
必要に応じて前記無機膜の上に樹脂膜を形成したり、更に無機膜を形成したりすることで、無機膜や樹脂膜を複数層具備する表示デバイスまたは受光デバイスの基板を製造することができる。なお、プロセスの簡略化の観点から、各樹脂膜の製造に用いられる樹脂組成物は同一の樹脂組成物であることが好ましい。
【0102】
つづいて、得られた樹脂膜上(その上に無機膜等がある場合はさらにその上)に、表示素子または受光素子の構成要素を形成する。例えば、有機ELディスプレイの場合、画像駆動素子であるTFT、第一電極、有機EL発光素子、第二電極、封止膜を順に形成して画像表示素子を形成する。カラーフィルター用基板の場合、必要に応じてブラックマトリックスを形成した後、赤、緑、青などの着色画素を形成する。タッチパネル用基板の場合、配線層と絶縁層を形成する。
【0103】
前記の無機膜を形成する工程やTFTを製造する工程では、400℃以上の温度で処理することもあるため、樹脂膜はその温度で熱分解しないことが好ましい。より好ましくは430℃以上、さらに好ましくは450℃以上の温度で熱分解しないことである。
【0104】
本発明にかかるデバイスをフレキシブルデバイスとして用いるために、最後に、(D)支持体を除去する工程を有することが好ましい。支持体と樹脂膜の界面で両者を剥離することで、支持体を除去する。剥離する方法には、前述のレーザーリフトオフ、機械的な剥離方法、支持体をエッチングする方法などが挙げられる。レーザーリフトオフを行う場合、ガラス基板などの支持体に対し、樹脂膜および素子が形成されている側の反対側からレーザーを照射する。これにより、素子にダメージを与えることなく、剥離を行うことができる。
【0105】
レーザー光には、紫外光から赤外光の波長範囲のレーザー光を用いることができるが、紫外光が特に好ましい。より好ましくは、308nmのエキシマレーザーが好ましい。剥離エネルギーは250mJ/cm2以下が好ましく、200mJ/cm2以下がより好ましい。
【0106】
以上の工程により樹脂膜上に形成された電子デバイスが得られ、必要に応じてモジュール化して最終製品とする。本発明の樹脂膜はヘイズ、黄色度が小さいことから、基板に高い無色透明性が求められる透過型ディスプレイとして使用できる。また、表示素子が形成された側とは反対側に、受光素子を形成した場合や、別の受光デバイスを配置した場合、表示側から入射して樹脂膜を通過した光にも前記受光素子や受光デバイスが反応する。このため、電子デバイスの設計自由度を向上させることができる。これらの用途を想定した場合、ヘイズは好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。
【実施例】
【0107】
以下、実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例等によって限定されるものではない。まず、下記の実施例および比較例で行った測定、評価および試験等について説明する。なお、特に断らない限り、測定n数は1である。
【0108】
(樹脂膜の膜厚の測定)
各実施例および比較例で得られた樹脂膜を用いて、リニアエンコーダー内蔵デジタル測長器(ニコン社製、ヘッド:MF-501、カウンタ:MFC-101A、スタンド:MS-11C)を用い、測定した。
【0109】
(樹脂膜の光透過率の測定)
各実施例および比較例で得られた樹脂膜付きのガラス基板を用いて、紫外可視分光光度計(島津製作所社製、MultiSpec1500)を用い、波長400nmにおける樹脂膜の光透過率を測定した。参照試料はガラス基板とした。
【0110】
(樹脂膜の黄色度の測定)
各実施例および比較例で得られた樹脂膜を用いて、分光ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HSP-150Vis)を用い、JIS K 7373:2006に基づいて測定した。
【0111】
(樹脂膜のヘイズの測定)
各実施例および比較例で得られた樹脂膜を用いて、分光ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HSP-150Vis)を用い、JIS K 7136:2000に基づいて測定した。
【0112】
(樹脂膜の重量減少開始温度の測定)
各実施例で得られた樹脂膜(試料)について、熱重量測定装置(島津製作所社製、TGA-50)を用い、重量減少開始温度を測定した。加熱条件は、第1段階において、10℃/minの昇温レートで試料を150℃まで昇温して、150℃で30分間保持した。これにより、この試料の吸着水を除去した。続く第2段階において、10℃/minの降温レートで試料を室温まで空冷した。続く第3段階において、10℃/minの昇温レートで加熱して、重量減少が開始する温度を重量減少開始温度として求めた。全ての段階を乾燥窒素下で実施した。
【0113】
(化合物)
実施例および比較例では、下記に示す化合物が適宜使用される。各化合物および略称は、以下に示す通りである。
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(三菱化学(株)製)
ODPA:4,4’-オキシジフタル酸二無水物(マナック(株)製)
6FDA:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(ダイキン工業(株)製)
4,4’-DDS:4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(セイカ(株)製)
3,3’-DDS:3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(セイカ(株)製)
TFMB:2,2’-(トリフルオロメチル)ベンジジン(セイカ(株)製)
KBM-103:フェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
KBM-04:テトラメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
KBM-202SS:ジフェニルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製)
(合成例1)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(140g)と、4,4’-DDS(24.58g(99.00mmol))とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらBPDA(29.42g(100.0mmol))を投入し、NMP(20g)で洗い込んだ。60℃で6時間攪拌して溶液Aを得た。
【0114】
(合成例2)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(140g)と、3,3’-DDS(24.58g(99.00mmol))とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらBPDA(29.42g(100.0mmol))を投入し、NMP(20g)で洗い込んだ。60℃で6時間攪拌して溶液Bを得た。
【0115】
(合成例3)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(140g)と、4,4’-DDS(24.58g(99.00mmol))とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらODPA(31.02g(100.0mmol))を投入し、NMP(20g)で洗い込んだ。60℃で6時間攪拌して溶液Cを得た。
【0116】
(合成例4)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(140g)と、TFMB(31.70g(99.00mmol))とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながらBPDA(29.42g(100.0mmol))を投入し、NMP(20g)で洗い込んだ。60℃で6時間攪拌して溶液Dを得た。
【0117】
(合成例5)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(140g)と、4,4’-DDS(24.58g(99.00mmol))とを投入し、40℃に昇温した。昇温後、撹拌しながら6FDA(44.42g(100.0mmol))を投入し、NMP(20g)で洗い込んだ。60℃で6時間攪拌して溶液Eを得た。
【0118】
(合成例6)
300mL4つ口フラスコに、温度計、撹拌羽根付き撹拌棒をセットした。次に、乾燥窒素気流下、NMP(90g)と、KBM-103(80.0g(403.4mmol))と、水25gと、リン酸5gとを投入し、70℃に昇温した。昇温後、1時間攪拌して溶液Zを得た。
【0119】
(調製例1)
合成例1で得られた溶液Aに対して、KBM-103を40重量部(溶液Aに含まれる樹脂を100重量部とする)加えて撹拌した。撹拌後、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスa1を調製した。
【0120】
(調製例2)
合成例1で得られた溶液Aに対して、KBM-103とKBM-04を20重量部ずつ(溶液Aに含まれる樹脂を100重量部とする)加えて撹拌した。撹拌後、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスa2を調製した。
【0121】
(調製例3)
合成例1で得られた溶液Aに対して、KBM-103をKBM-202SSを20重量部ずつ(溶液Aに含まれる樹脂を100重量部とする)加えて撹拌した。撹拌後、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスa3を調製した。
【0122】
(調製例4)
合成例1で得られた溶液Aに対して、溶液Zを100重量部(溶液Aに含まれる樹脂を100重量部とする)加えて撹拌した。撹拌後、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスa4を調製した。
【0123】
(調製例5)
合成例1で得られた溶液Bに対して、KBM-103を40重量部(溶液Bに含まれる樹脂を100重量部とする)加えて撹拌した。撹拌後、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスa5を調製した。
【0124】
(調製例6)
合成例1で得られた溶液Cに対して、KBM-103を40重量部(溶液Cに含まれる樹脂を100重量部とする)加えて撹拌した。撹拌後、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスa6を調製した。
【0125】
(調製例7)
合成例1で得られた溶液Aに対して、何も加えず、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスa7を調製した。
【0126】
(調製例8)
合成例1で得られた溶液Aに対して、KBM-04を40重量部(溶液Aに含まれる樹脂を100重量部とする)加えて撹拌した。撹拌後、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスa8を調製した。
【0127】
(調製例9)
合成例1で得られた溶液Aに対して、KBM-202SSを40重量部(溶液Aに含まれる樹脂を100重量部とする)加えて撹拌した。撹拌後、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスa9を調製した
(調製例10)
合成例2で得られた溶液Bに対して、何も加えず、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスb1を調製した。
【0128】
(調製例11)
合成例3で得られた溶液Cに対して、何も加えず、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスc1を調製した。
【0129】
(調製例12)
合成例4で得られた溶液Dに対して、何も加えず、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスd1を調製した。
【0130】
(調製例13)
合成例5で得られた溶液Eに対して、何も加えず、孔径0.2μmの高密度ポリエチレン製のフィルターを用いて濾過を行い、ワニスe1を調製した。
【0131】
(実施例1)
調整例1で得られたワニスを用いて、スリット塗布装置(東レエンジニアリング(株)製)を用いて、縦350mm×横300mm×厚さ0.5mmの無アルカリガラス基板「AN100」(旭硝子(株)製)上に、調整例1のワニスをガラス基板の端から5mm内側のエリアに塗布した。つづいて、同じ装置を用いて80℃で加熱乾燥を行った。最後に、ガスオーブン「INH-21CD」(光洋サーモシステム(株)製)を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)、室温から130℃まで昇温して130℃で30分加熱し、次に220℃まで昇温して220℃で30分加熱し、さらに430℃まで昇温して430℃で30分加熱し、最後に室温まで降温して、ガラス基板上に膜厚10μmの樹脂膜を形成した。昇温速度は5℃/minとした。得られた樹脂膜付きのガラス基板に対して、樹脂膜が形成されていない側から波長308nmのレーザーを照射し、樹脂膜をガラス基板から剥離した。上記の方法によって、樹脂膜の光透過率、黄色度、ヘイズおよび重量減少開始温度を測定した。
【0132】
(実施例2~6、比較例1~7)
調製例2~13で得られたワニスを用いて実施例1同様に評価を行った。実施例1~6および比較例1~7の評価結果を表1に示す。
【0133】
【0134】
【0135】
(実施例101)
実施例1で得られたガラス基板上の樹脂膜の上にCVDによりSiO2、Si3N4の積層から成るガスバリア膜を成膜した。つづいてTFTを形成し、このTFTを覆う状態でSi3N4から成る絶縁膜を形成した。次に、この絶縁膜にコンタクトホールを形成した後、このコンタクトホールを介してTFTに接続される配線を形成した。
【0136】
さらに、配線の形成による凹凸を平坦化するために、平坦化膜を形成した。次に、得られた平坦化膜上に、ITOからなる第一電極を配線に接続させて形成した。その後、レジストを塗布、プリベークし、所望のパターンのマスクを介して露光し、現像した。このレジストパターンをマスクとして、ITOエッチャントを用いたウエットエッチングによりパターン加工を行った。その後、レジスト剥離液(モノエタノールアミンとジエチレングリコールモノブチルエーテルの混合液)を用いて該レジストパターンを剥離した。剥離後の基板を水洗し、加熱脱水して平坦化膜付き電極基板を得た。次に、第一電極の周縁を覆う形状の絶縁膜を形成した。
【0137】
さらに、真空蒸着装置内で所望のパターンマスクを介して、正孔輸送層、有機発光層、電子輸送層を順次蒸着して設けた。次いで、基板上方の全面にAl/Mgから成る第二電極を形成した。さらにCVDによりSiO2、Si3N4の積層から成る封止膜を形成した。最後にガラス基板に対し、樹脂膜が成膜されていない側からレーザー(波長:308nm)を照射し、樹脂膜との界面で剥離を行った。このときの照射エネルギーは、200mJ/cm2とした。
【0138】
以上のようにして、樹脂膜上に形成された有機EL表示装置が得られた。駆動回路を介して電圧を印加したところ、良好な発光を示した。
【0139】
(比較例101)
比較例3で得られたガラス基板上の樹脂膜の上にCVDによりSiO2、Si3N4の積層から成るガスバリア膜を成膜した。しかし、樹脂膜からのアウトガスによって、ガスバリア膜の一部が浮いて剥がれたため、先の工程に進められなかった。