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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ガスバリア性包装材
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240730BHJP
   B65D 75/00 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D75/00
B32B9/00 A
B32B27/38
B32B27/26
B32B27/00 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021539171
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2020027177
(87)【国際公開番号】W WO2021029171
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019148908
(32)【優先日】2019-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 和起
(72)【発明者】
【氏名】橋本 凌馬
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/105282(WO,A1)
【文献】特開2005-002353(JP,A)
【文献】特開2007-126627(JP,A)
【文献】特開2010-202753(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 75/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物で構成された面を有する基体と、樹脂硬化層とを有するガスバリア性包装材であって、
前記樹脂硬化層がエポキシ樹脂、アミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂硬化剤、及び酸性化合物を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物であり、前記エポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量と、前記酸性化合物に由来する酸基のモル当量との比(塩基性窒素/酸基)が0.60~20であり、前記酸性化合物がp-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、乳酸、サリチル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である、ガスバリア性包装材。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物中の前記酸性化合物以外の不揮発分100質量部に対する該酸性化合物の含有量が5~70質量部である、請求項1に記載のガスバリア性包装材。
【請求項3】
前記基体における前記無機物がケイ素酸化物、アルミニウム、及びアルミニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のガスバリア性包装材。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂がメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のガスバリア性包装材。
【請求項5】
前記アミン系硬化剤が下記のアミン系硬化剤(i)である、請求項1~4のいずれか1項に記載のガスバリア性包装材。
(i)下記の(A)成分と(B)成分との反応生成物:
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化1】

(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
【請求項6】
前記基体の前記無機物から構成される面と前記樹脂硬化層とが隣接している、請求項1~のいずれか1項に記載のガスバリア性包装材。
【請求項7】
レトルト食品用包装材である、請求項1~のいずれか1項に記載のガスバリア性包装材。
【請求項8】
レトルト食品用袋である、請求項に記載のガスバリア性包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、化粧品、精密電子部品等に用いられる包装材料には、内容物の変質を防止するために高い酸素バリア性や水蒸気バリア性が求められる。
一般に熱可塑性プラスチックフィルムの酸素バリア性はそれほど高いものではないことから、当該フィルムにガスバリア性を付与する手段として、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)層やポリビニルアルコール(PVA)層などの各種ガスバリア層を形成する方法、又は、アルミナ(Al)やシリカ(SiO)などの無機物を蒸着する方法が検討されてきた。
【0003】
ガスバリア層としてPVDC層を形成したフィルムは、透明でかつ良好なバリア性を発揮する。しかし、一般廃棄物として焼却される際に酸性ガス等の有機物質を発生するため、環境への配慮の点から他材料への移行が望まれている。PVA層を形成したフィルムは低湿度下においては優れたガスバリア性を発揮するが、吸湿性が高く、相対湿度が70%程度以上になるとガスバリア性が急激に低下するという問題がある。
【0004】
熱可塑性プラスチックフィルムにアルミナやシリカなどの無機物を蒸着した無機蒸着フィルムは透明でかつ良好なガスバリア性を有しており、上記の問題も生じない。しかしながら無機蒸着フィルムを屈曲させると、無機蒸着層にクラックが発生して著しくガスバリア性が低下するという問題があった。
【0005】
無機物が蒸着された層を含むガスバリア性フィルム又は積層体の耐屈曲性を改善する方法として、所定のエポキシ樹脂及び所定のアミン系エポキシ樹脂硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物の硬化物からなる層を形成する方法が提案されている(特許文献1~3)。
特許文献4には、無機蒸着層を有する基材フィルムと、エポキシ樹脂、所定のエポキシ樹脂硬化剤、及び非球状無機粒子を含むエポキシ樹脂組成物の硬化物からなる樹脂硬化層とを有する所定の層構成のガスバリア性フィルムが、無機蒸着層を有する従来のガスバリア性フィルムよりもガスバリア性が向上し、かつ耐屈曲性にも優れることが開示されている。
【0006】
ガスバリア性フィルムに用いられるエポキシ樹脂組成物を改良することにより、得られるガスバリア性フィルムの各種機能の向上を図る検討もなされている。例えば特許文献5は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤及び特定の硬化促進剤を含み、形成される硬化物中にアミン由来の所定の骨格構造を所定量含有するガスバリア性樹脂組成物が、広い範囲の硬化条件で高いガスバリア性を発現することを報告している。
【0007】
上記の通り、基材上に所定のエポキシ樹脂組成物の硬化物からなるガスバリア層を形成するとガスバリア性の改善効果が非常に大きいことが知られている。
さらに、積層構造を有するガスバリア性フィルム、又はガスバリア性積層体においては、良好なガスバリア性を安定して発現するため、層間接着性が高いことも重要である。これに関して、例えば特許文献6には、少なくとも、基材、プライマー層、接着剤層、及びシーラント層がこの順に積層されたラミネートフィルムにおいて、特定のポリエステル系樹脂を含有するプライマー組成物を用いてプライマー層を形成し、及び、エポキシ樹脂組成物を主成分とする接着剤を用いて接着剤層を形成することで、長期間保存しても優れたラミネート強度及びヒートシール強度を維持できる、経時接着性に優れたラミネートフィルムが得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-300271号公報
【文献】特開2005-28835号公報
【文献】特開2009-101684号公報
【文献】国際公開第2018/105282号
【文献】特開2010-202753号公報
【文献】特開2013-203023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ガスバリア性フィルム又は積層体に使用する基材及びエポキシ樹脂組成物の種類によっては、基材と、エポキシ樹脂組成物の硬化物層との層間接着性が充分でない場合があった。特許文献1~6には、アミン系エポキシ樹脂硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物が開示されているが、近年の本発明者らの検討によれば、アミン系エポキシ樹脂硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は、無機物、特に、アルミナに対する接着性が不安定であることが見出された。
また食品用途等の包装材料においてはレトルト処理等の加熱処理が行われることがあり、レトルト処理後も層間接着性を維持できることが重要である。
【0010】
本発明の課題は、無機物で構成された面を有する基体と、エポキシ樹脂組成物の硬化物である樹脂硬化層とを有し、レトルト処理後も層間剥離が起こり難く耐レトルト性に優れるガスバリア性包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記樹脂硬化層をエポキシ樹脂、アミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂硬化剤、及び酸性化合物を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物で構成し、かつエポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量と、酸性化合物に由来する酸基のモル当量との比を所定の範囲とすることで上記課題を解決できることを見出した。
すなわち本発明は、下記に関する。
[1]無機物で構成された面を有する基体と、樹脂硬化層とを有するガスバリア性包装材であって、
前記樹脂硬化層がエポキシ樹脂、アミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂硬化剤、及び酸性化合物を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物であり、前記エポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量と、前記酸性化合物に由来する酸基のモル当量との比(塩基性窒素/酸基)が0.60~20である、ガスバリア性包装材。
[2]前記エポキシ樹脂組成物中の前記酸性化合物以外の不揮発分100質量部に対する該酸性化合物の含有量が5~70質量部である、上記[1]に記載のガスバリア性包装材。
[3]前記基体における前記無機物がケイ素酸化物、アルミニウム、及びアルミニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]又は[2]に記載のガスバリア性包装材。
[4]前記エポキシ樹脂がメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とする、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のガスバリア性包装材。
[5]前記アミン系硬化剤が下記のアミン系硬化剤(i)である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のガスバリア性包装材。
(i)下記の(A)成分と(B)成分との反応生成物:
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化1】

(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
[6]前記酸性化合物がスルホン酸化合物、カルボン酸化合物、及びリン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のガスバリア性包装材。
[7]前記酸性化合物の酸価が200~650mgKOH/gである、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のガスバリア性包装材。
[8]前記基体の前記無機物から構成される面と前記樹脂硬化層とが隣接している、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のガスバリア性包装材。
[9]レトルト食品用包装材である、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のガスバリア性包装材。
[10]レトルト食品用袋である、上記[9]に記載のガスバリア性包装材。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガスバリア性包装材は、レトルト処理後も基体と樹脂硬化層との間で層間剥離が起こり難く耐レトルト性に優れることから、レトルト食品用の袋、蓋材等のレトルト食品用包装材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】包装用フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
図2】包装用フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
図3】包装用フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ガスバリア性包装材]
本発明のガスバリア性包装材(以下、単に「本発明の包装材」ともいう)は、無機物で構成された面を有する基体(以下、単に「基体」ともいう。)と、樹脂硬化層とを有し、前記樹脂硬化層がエポキシ樹脂、アミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂硬化剤、及び酸性化合物を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物であり、前記エポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量と、前記酸性化合物に由来する酸基のモル当量との比(塩基性窒素/酸基)が0.60~20であることを特徴とする。
本発明のガスバリア性包装材は上記構成を有することにより、ガスバリア性が高く、レトルト処理後においても、基体の無機物から構成される面と、樹脂硬化層との接着性の高い包装材となる。この観点で、当該包装材は基体と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有していればよいが、基体の無機物側の面に樹脂硬化層を有することが好ましい。
【0015】
本明細書において「エポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量」とは、全アミン価測定により求められる、エポキシ樹脂組成物中の1~3級アミン由来の塩基性窒素のモル当量を意味し、該塩基性窒素には、アミン系硬化剤中の1~3級アミン由来の塩基性窒素だけでなく、例えばエポキシ樹脂中の1~3級アミン由来の塩基性窒素も含まれる。エポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量は、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。また「酸性化合物に由来する酸基のモル当量」とは、エポキシ樹脂組成物中に配合した酸性化合物が有するプロトン放出性基のモル当量を意味する。
プロトン放出性基としては、例えばスルホン酸基、カルボキシ基、リン酸基が挙げられる。
【0016】
本発明のガスバリア性包装材がレトルト処理後においても基体と樹脂硬化層との間で層間剥離が起こり難く、耐レトルト性に優れる理由については定かではないが、以下のように考えられる。
近年の本発明者らの検討によれば、樹脂硬化層を構成するエポキシ樹脂組成物の硬化物は、無機物、特に、アルミナに対する接着性が不安定であり、中でもエポキシ樹脂組成物においてアミン系エポキシ樹脂硬化剤を用いた場合にその傾向が顕著であることが見出された。そして本発明者らが鋭意検討を行った結果、アミン系エポキシ樹脂硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物に対し酸性化合物を添加することで、該エポキシ樹脂組成物中のアミンが中和され、これにより得られる硬化物の、アルミナ等の無機物に対する接着性が向上することを見出した。特に、アルミニウムやアルミナ等の両性金属を含む無機物は酸及びアルカリにより腐食されやすいことから、前記エポキシ樹脂組成物への酸性化合物の添加による中和効果で腐食が抑えられ、それにより接着性向上効果が良好になったものと推察される。
さらに本発明者らは、基体と樹脂硬化層との常態での接着性が良好であっても、レトルト処理後の接着性が必ずしも良好になるとは限らず、樹脂硬化層に用いるエポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量と、酸性化合物に由来する酸基のモル当量との比(塩基性窒素/酸基)を0.60~20の範囲とすることで、レトルト処理後の接着性が向上することを見出し、本発明を完成させたものである。この理由については、塩基性窒素/酸基が0.60~20の範囲であれば、レトルト処理条件下で基体の無機物面が腐食を受けにくいためであると考えられる。
【0017】
本発明のガスバリア性包装材の形態は、収納、保存する物品に応じて適宜選択することができ、例えば、包装用フィルム;包装用袋、ボトル等の包装容器;並びに包装容器の蓋材、シール材等が挙げられる。これらの中でも、レトルト処理に供するのに適した形態としては包装用フィルム、及び、包装用袋又はその蓋材、シール材であることが好ましい。包装用フィルム又は包装用袋の具体例としては、三方シール平袋、スタンディングパウチ、ガセット包装袋、ピロー包装袋、主室と副室とからなり主室と副室との間に易剥離壁を設けた多室パウチ、シュリンクフィルム包装等が挙げられる。
包装材の容量についても特に限定されず、収納、保存する物品に応じて適宜選択することができる。
【0018】
包装材の用途としては、本発明の効果の有効性を得る観点から、耐レトルト性を要する用途が好ましく、レトルト食品用の袋、蓋材等のレトルト食品用包装材、中でもレトルト食品用袋であることがより好ましい。
以下、本発明のガスバリア性包装材を構成する材料について説明する。
【0019】
<基体>
本発明のガスバリア性包装材に用いる基体は、無機物で構成された面を有するものであればよい。「無機物で構成された面を有する」とは、例えば基体がフィルム状である場合は少なくとも一方の面が無機物で構成されたものが挙げられ、基体が袋状又はボトル状である場合は、外表面又は内表面のうち少なくとも一方の表面が無機物で構成されたものが挙げられる。無機物で構成された面は、平面、曲面、凹凸面等であってもよい。
本発明の包装材において、無機物で構成された面を有する基体を用いることで高いガスバリア性を得ることができる。
【0020】
当該無機物としては、ガスバリア性の観点から、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、ジルコニウム、炭素、又はこれらの酸化物、炭化物、窒化物、酸窒化物等が挙げられ、ケイ素酸化物(シリカ)、アルミニウム、及びアルミニウム酸化物(アルミナ)からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、本発明の効果の有効性の観点からはアルミニウム酸化物(アルミナ)であることがさらに好ましい。
【0021】
基体は、全体が無機物から構成されていてもよく、有機物から構成された成形体の少なくとも一方の面に無機薄膜層を有する態様でもよい。
例えば包装用フィルム、包装用袋等を構成するフィルム状の基体としては、アルミニウム箔等の金属箔、及び、ベースフィルムの少なくとも一方の面に無機薄膜層を有するフィルム等が挙げられる。
ベースフィルムの少なくとも一方の面に無機薄膜層を有するフィルムは、無機薄膜層を少なくとも1層有していればよく、2層以上有していてもよいが、耐屈曲性や生産性の観点から、当該フィルムはベースフィルムの片面のみに無機薄膜層を有していることが好ましい。
【0022】
上記ベースフィルムとしては、透明プラスチックフィルムが好ましい。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム;ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシレンアジパミド(N-MXD6)等のポリアミド系フィルム;ポリイミド系フィルム;ポリ乳酸等の生分解性フィルム;ポリアクリロニトリル系フィルム;ポリ(メタ)アクリル系フィルム;ポリスチレン系フィルム;ポリカーボネート系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(EVOH)系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム等が挙げられる。これらの中でも、透明性、強度及び耐熱性の点から、ベースフィルムとしてはポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、及びポリイミド系フィルムからなる群から選ばれるフィルムが好ましく、ポリエステル系フィルムがより好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがさらに好ましい。
上記フィルムは一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよい。
【0023】
無機薄膜層は、ガスバリア性を付与するために設けられ、厚みが薄くても高いガスバリア性を発現することができる。無機薄膜層は、金属箔からなるもの、蒸着法により形成されたもの等を挙げることができるが、高い透明性を得る観点からは蒸着法により形成された無機蒸着層であることが好ましい。
無機薄膜層を構成する無機物は、ベースフィルム等の成形体上にガスバリア性の薄膜を形成しうる無機物であれば特に制限はなく、前述したケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、錫、ニッケル、チタン、ジルコニウム、炭素、又はこれらの酸化物、炭化物、窒化物、酸窒化物等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性の点からはケイ素酸化物(シリカ)、アルミニウム、及びアルミニウム酸化物(アルミナ)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ガスバリア性及び透明性の高い薄膜を形成する観点からはケイ素酸化物及びアルミニウム酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ガスバリア性の点からはケイ素酸化物がさらに好ましい。一方で、従来接着性が発現し難かったアルミニウム酸化物からなる無機薄膜層に対しても、後述するエポキシ樹脂組成物の硬化物である樹脂硬化層は良好な接着性を発現する。したがって本発明の効果の有効性の観点からは、無機薄膜層を構成する無機物はアルミニウム酸化物であることが好ましい。上記無機物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
無機薄膜層の厚みは、高いガスバリア性を得る観点から、好ましくは5nm以上である。また、透明性及び耐屈曲性の観点からは、好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下である。上記厚みは、無機薄膜層の1層あたりの厚みである。
【0024】
無機薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法、あるいはプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法等の公知の蒸着法が挙げられる。また、アルミニウム等の金属箔をベースフィルム等の成形体と貼り合わせて無機薄膜層を形成することもできる。
【0025】
フィルム状基体の厚みは用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、ガスバリア性や強度の点から、好ましくは5~300μm、より好ましくは5~100μm、さらに好ましくは8~50μm、よりさらに好ましくは10~40μmである。
【0026】
<樹脂硬化層>
本発明のガスバリア性包装材を構成する樹脂硬化層は、エポキシ樹脂、アミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂硬化剤、及び酸性化合物を含有するエポキシ樹脂組成物の硬化物である。
【0027】
(エポキシ樹脂組成物)
本発明に用いるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、アミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂硬化剤、及び酸性化合物を含有するエポキシ樹脂組成物であり、エポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量と、酸性化合物に由来する酸基のモル当量との比(塩基性窒素/酸基)が0.60~20である。
エポキシ樹脂組成物が上記構成を有することにより、該組成物の硬化物である樹脂硬化層を有する本発明のガスバリア性包装材は高いガスバリア性を有し、レトルト処理後においても、特にアルミナ等の無機物に対する接着性が良好な硬化物を形成できる。
【0028】
エポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量と、酸性化合物に由来する酸基のモル当量との比(塩基性窒素/酸基)は、レトルト処理後においても無機物に対する接着性が良好な硬化物を形成する観点から、20以下であり、好ましくは18以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下、よりさらに好ましくは10以下である。また、レトルト処理後においても無機物に対する接着性が良好な硬化物を形成する観点、及び高いガスバリア性を維持する観点から、0.60以上であり、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは1.0以上である。
エポキシ樹脂組成物中の上記モル当量比(塩基性窒素/酸基)は、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
【0029】
レトルト処理後においても無機物に対する接着性が良好な硬化物を形成する観点から、エポキシ樹脂組成物の25℃におけるpHは、好ましくは9.5以下であり、また、好ましくは4.5以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは5.5以上、よりさらに好ましくは6以上、よりさらに好ましくは6.5以上である。エポキシ樹脂組成物の25℃におけるpHは、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
【0030】
以下、エポキシ樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
〔エポキシ樹脂〕
エポキシ樹脂は、飽和又は不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよいが、高いガスバリア性の発現を考慮した場合には、芳香環又は脂環式構造を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましい。
当該エポキシ樹脂の具体例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基及び/又はグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂が挙げられる。柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記のエポキシ樹脂を適切な割合で2種以上混合して用いることもできる。
上記の中でも、ガスバリア性の観点から、エポキシ樹脂としてはメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、及びビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものが好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものがより好ましい。
なお、ここでいう「主成分」とは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含みうることを意味し、好ましくは全体の50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%を意味する。
【0031】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。メタキシリレンジアミンは4つのアミノ水素を有するので、モノ-、ジ-、トリ-及びテトラグリシジル化合物が生成する。グリシジル基の数はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0032】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類に対しエピハロヒドリンを水酸化ナトリウムなどのアルカリ存在下、20~140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50~120℃、アミン類の場合は20~70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂を得る場合は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンが用いられる。
【0033】
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、好ましくは100~4,000であり、200~1,000であることがより好ましく、200~500であることがさらに好ましい。
【0034】
〔アミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂硬化剤〕
エポキシ樹脂硬化剤は、高いガスバリア性を発現する観点から、アミン系硬化剤を含むものである。
アミン系硬化剤としては、従来エポキシ樹脂硬化剤として用いられているポリアミン又はその変性物を用いることができる。高いガスバリア性を得る観点から、アミン系硬化剤はポリアミンの変性物であることが好ましく、下記のアミン系硬化剤(i)及びアミン系硬化剤(ii)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、下記アミン系硬化剤(i)であることがさらに好ましい。
(i)下記の(A)成分と(B)成分との反応生成物:
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化2】

(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
(ii)エピクロロヒドリンと、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種との反応生成物
【0035】
≪アミン系硬化剤(i)≫
アミン系硬化剤(i)は、下記の(A)成分と(B)成分との反応生成物である。
(A)メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種
(B)下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種
【化3】

(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、又は炭素数7~13のアラルキル基を表す。)
前記(A)成分はガスバリア性の観点から用いられ、ガスバリア性の点からメタキシリレンジアミンが好ましい。(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種類を混合して用いてもよい。
【0036】
前記(B)成分は前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、ガスバリア性の観点から、前記一般式(1)におけるRは水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることがよりさらに好ましい。
また、ガスバリア性の観点から、前記一般式(1)におけるRは水素原子又は炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましく、水素原子であることがよりさらに好ましい。
【0037】
前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば当該不飽和カルボン酸のエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物が挙げられる。不飽和カルボン酸のエステルとしてはアルキルエステルが好ましく、良好な反応性を得る観点から、当該アルキル炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2である。
【0038】
前記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、α-プロピルアクリル酸、α-イソプロピルアクリル酸、α-n-ブチルアクリル酸、α-t-ブチルアクリル酸、α-ペンチルアクリル酸、α-フェニルアクリル酸、α-ベンジルアクリル酸、クロトン酸、2-ペンテン酸、2-ヘキセン酸、4-メチル-2-ペンテン酸、2-ヘプテン酸、4-メチル-2-ヘキセン酸、5-メチル-2-ヘキセン酸、4,4-ジメチル-2-ペンテン酸、4-フェニル-2-ブテン酸、桂皮酸、o-メチル桂皮酸、m-メチル桂皮酸、p-メチル桂皮酸、2-オクテン酸等の不飽和カルボン酸、及びこれらのエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物等が挙げられる。
上記の中でも、良好なガスバリア性を得る観点から、前記(B)成分はアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらのアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらのアルキルエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましく、アクリル酸のアルキルエステルがよりさらに好ましく、アクリル酸メチルがよりさらに好ましい。
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
前記(A)成分と前記(B)成分との反応は、前記(B)成分として不飽和カルボン酸、エステル、アミドを使用する場合には、0~100℃、より好ましくは0~70℃の条件下で(A)成分と(B)成分とを混合し、100~300℃、好ましくは130~250℃の条件下でマイケル付加反応及び脱水、脱アルコール、脱アミンによるアミド基形成反応を行うことにより実施される。
この場合、アミド基形成反応の際には、反応を完結させるために、必要に応じて反応の最終段階において反応装置内を減圧処理することもできる。また、必要に応じて非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。さらに脱水剤、脱アルコール剤として、亜リン酸エステル類などの触媒を添加することもできる。
【0040】
一方、前記(B)成分として不飽和カルボン酸の酸無水物、酸塩化物を使用する場合には、0~150℃、好ましくは0~100℃の条件下で混合後、マイケル付加反応及びアミド基形成反応を行うことにより実施される。この場合、アミド基形成反応の際には、反応を完結させるために、必要に応じて反応の最終段階において反応装置内を減圧処理することもできる。また、必要に応じて非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。さらにピリジン、ピコリン、ルチジン、トリアルキルアミンなどの3級アミンを添加することもできる。
【0041】
前記(A)成分と前記(B)成分との反応により形成されるアミド基部位は高い凝集力を有しているため、当該(A)成分と(B)成分との反応生成物であるエポキシ樹脂硬化剤を用いて形成される樹脂硬化層は、高いガスバリア性と良好な接着性とを有する。
【0042】
前記(A)成分に対する前記(B)成分の反応モル比[(B)/(A)]は、0.3~1.0の範囲であることが好ましい。上記反応モル比が0.3以上であれば、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基が生成し、高いレベルのガスバリア性及び接着性が発現する。一方、上記反応モル比が1.0以下の範囲であれば、エポキシ樹脂中のエポキシ基との反応に必要なアミノ基の量が十分であり、耐熱性に優れ、有機溶剤や水に対する溶解性にも優れる。
得られるエポキシ樹脂硬化物の高いガスバリア性、優れた塗膜性能を特に考慮する場合には、前記(A)成分に対する前記(B)成分の反応モル比[(B)/(A)]が0.6~1.0の範囲であることがより好ましい。
【0043】
上記アミン系硬化剤は、前記(A)成分と(B)成分と、さらに下記(C)成分、(D)成分及び(E)成分からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応生成物であってもよい。
(C)R-COOHで表される一価のカルボン酸及びその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種(Rは水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~7のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表す。)
(D)環状カーボネート
(E)炭素数2~20のモノエポキシ化合物
【0044】
前記(C)成分である、R-COOHで表される一価のカルボン酸及びその誘導体は、必要に応じてエポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂との反応性を低下させ、作業性を改善する観点から用いられる。
は水素原子、水酸基を有していてもよい炭素数1~7のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表し、Rは、好ましくは炭素数1~3のアルキル基又はフェニル基である。
またR-COOHで表される一価のカルボン酸の誘導体としては、例えば当該カルボン酸のエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物が挙げられる。当該カルボン酸のエステルとしてはアルキルエステルが好ましく、当該アルキル炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2である。
前記(C)成分としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸等の一価のカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。
前記(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
前記(D)成分である環状カーボネートは、エポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂との反応性を低下させ作業性を改善する観点から、必要に応じて用いられるものであり、前記(A)成分との反応性の観点から、六員環以下の環状カーボネートであることが好ましい。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセリンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、4-ビニル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メトキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オンなどが挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性の観点から、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びグリセリンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
前記(D)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
前記(E)成分であるモノエポキシ化合物は、炭素数2~20のモノエポキシ化合物であり、エポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂との反応性を低下させ作業性を改善する観点から、必要に応じて用いられる。ガスバリア性の観点から、炭素数2~10のモノエポキシ化合物であることが好ましく、下記式(2)で示される化合物であることがより好ましい。
【0047】
【化4】

(式(2)中、Rは水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、又はR-O-CH-を表し、Rはフェニル基又はベンジル基を表す。)
前記式(2)で示されるモノエポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、及びベンジルグリシジルエーテル等が挙げられる。前記(E)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
上記アミン系硬化剤に前記(C)成分、(D)成分又は(E)成分を用いる場合には、前記(C)成分、(D)成分及び(E)成分からなる群から選ばれるいずれか1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
なお、上記アミン系硬化剤は、前記(A)~(E)成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに他の成分と反応させた反応生成物であってもよい。ここでいう他の成分としては、例えば芳香族ジカルボン酸又はその誘導体などが挙げられる。
但し、該「他の成分」の使用量は、上記アミン系硬化剤を構成する反応成分の合計量の30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
前記(A)成分及び(B)成分と、さらに前記(C)成分、(D)成分及び(E)成分からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物との反応生成物は、前記(C)成分、(D)成分及び(E)成分からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を、前記(B)成分と併用して、ポリアミン化合物である前記(A)成分と反応させて得られる。該反応は、前記(B)~(E)成分を任意の順序で添加して前記(A)成分と反応させてもよく、前記(B)~(E)成分を混合して前記(A)成分と反応させてもよい。
前記(A)成分と前記(C)成分との反応は、前記(A)成分と(B)成分との反応と同様の条件で行うことができる。前記(C)成分を用いる場合には、前記(B)成分及び(C)成分を混合して前記(A)成分と反応させてもよく、初めに前記(A)成分と(B)成分とを反応させてから前記(C)成分を反応させてもよい。
一方、前記(D)成分及び/又は(E)成分を用いる場合には、初めに前記(A)成分と(B)成分とを反応させてから、前記(D)成分及び/又は(E)成分と反応させることが好ましい。
前記(A)成分と前記(D)成分及び/又は(E)成分との反応は、25~200℃の条件下で(A)成分と(D)成分及び/又は(E)成分とを混合し、30~180℃、好ましくは40~170℃の条件下で付加反応を行うことにより実施される。また、必要に応じナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシドなどの触媒を使用することができる。
上記反応の際には、反応を促進するために、必要に応じて(D)成分及び/又は(E)成分を溶融させるか、もしくは非反応性の溶剤で希釈して使用することもできる。
【0051】
上記アミン系硬化剤が、前記(A)成分及び(B)成分と、さらに前記(C)成分、(D)成分及び(E)成分からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の反応生成物である場合にも、前記(A)成分に対する前記(B)成分の反応モル比[(B)/(A)]は、前記と同様の理由で0.3~1.0の範囲であることが好ましく、0.6~1.0の範囲であることがより好ましい。一方、前記(A)成分に対する、前記(C)成分、(D)成分及び(E)成分の反応モル比[{(C)+(D)+(E)}/(A)]は、0.05~3.1の範囲であることが好ましく、0.07~2.5の範囲であることがより好ましく、0.1~2.0の範囲であることがより好ましい。
ただし、ガスバリア性及び塗工性の観点から、前記(A)成分に対する、前記(B)~(E)成分の反応モル比[{(B)+(C)+(D)+(E)}/(A)]は、0.35~2.5の範囲であることが好ましく、0.35~2.0の範囲であることがより好ましい。
【0052】
(アミン系硬化剤(ii))
アミン系硬化剤(ii)は、エピクロロヒドリンと、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種との反応生成物である。
アミン系硬化剤(ii)は、下記一般式(3)で表される化合物を主成分として含むことが好ましい。ここでいう「主成分」とは、アミン系硬化剤(ii)中の全構成成分を100質量%とした場合、その含有量が50質量%以上である成分をいう。
【化5】

(式(3)中、Aは1,3-フェニレン基又は1,4-フェニレン基である。nは1~12の数である。)
Aは1,3-フェニレン基であることがより好ましい。
アミン系硬化剤(ii)中、上記一般式(3)で示される化合物の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上である。また、上限は100質量%である。
また、硬化剤としての良好な硬化性能を得る観点からは、上記一般式(3)で表される化合物の中でも、n=1の化合物が占める割合が高いことが好ましい。アミン系硬化剤(ii)中の、上記一般式(3)で表されるn=1の化合物の含有量としては、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。また、上限は100質量%である。
アミン系硬化剤(ii)中の上記一般式(3)で表される化合物の含有量、及び上記一般式(3)で示される化合物の組成は、GC分析及びゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)分析により求めることができる。
【0053】
アミン系硬化剤(ii)はエピクロロヒドリンと、メタキシリレンジアミン及びパラキシリレンジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種(以下「原料ジアミン」ともいう)とを付加反応させることにより得られる。
エピクロロヒドリンと原料ジアミンとの付加反応は公知の方法で行うことができ、その方法は特に制限されないが、反応効率の観点から、塩基性触媒の存在下で行われることが好ましい。塩基性触媒としてはアルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選ばれる1種以上がより好ましく、水酸化ナトリウムがさらに好ましい。
【0054】
付加反応におけるエピクロロヒドリンと原料ジアミンの使用量は、前記一般式(3)で示される化合物のうちn=1の化合物を高選択率で得る観点から、エピクロロヒドリン1モルに対する原料ジアミンのモル比が、好ましくは1.5~12モル、より好ましくは1.5~6.0モル、さらに好ましくは1.8~3.0モルとなる範囲である。
【0055】
エポキシ樹脂硬化剤は、アミン系硬化剤以外の硬化剤成分を含有していてもよいが、高いガスバリア性を得る観点からはアミン系硬化剤の含有量が高いことが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤中のアミン系硬化剤の含有量は、高いガスバリア性を得る観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは90質量%以上である。また、上限は100質量%である。
【0056】
エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂反応物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数の比(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数)が0.2~12.0の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.4~10.0、さらに好ましくは0.6~8.0、よりさらに好ましくは1.0超5.0以下、よりさらに好ましくは1.1~3.5の範囲である。
【0057】
(酸性化合物)
エポキシ樹脂組成物に用いられる酸性化合物は、プロトン放出性基を有する酸化合物であれば特に制限されず、例えばスルホン酸化合物、カルボン酸化合物、及びリン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの酸性化合物は有機酸、無機酸のいずれでもよいが、有機酸であることが好ましい。また、上記酸性化合物は水和物でもよい。
【0058】
酸性化合物の酸価は、好ましくは120~1,300mgKOH/g、より好ましくは150~800mgKOH/g、さらに好ましくは200~650mgKOH/gである。得られる硬化物の高いガスバリア性を維持する観点からは、エポキシ樹脂組成物中の酸性化合物の含有量は少ない方が好ましい。この観点から、酸性化合物の酸価が120mgKOH/g以上であれば、レトルト処理後の接着性向上に必要な酸性化合物の使用量を低減することができ、さらに、得られる硬化物において高いガスバリア性を維持しやすい。また、酸性化合物の酸価が1,300mgKOH/g以下であれば、酸性化合物の揮発等を抑制することができ、エポキシ樹脂組成物の調製が容易になる。
また酸性化合物は、エポキシ樹脂組成物中のアミンとの混和性の観点から、1価の酸であることが好ましい。
【0059】
さらに、医薬品、食品等のガスバリア性包装材に適用する観点では、本発明に用いる酸性化合物としてはp-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、乳酸、サリチル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びリン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
得られる硬化物の無機物に対するレトルト処理後の接着性を向上させ、且つ高いガスバリア性を維持する観点からは、酸性化合物はp-トルエンスルホン酸、乳酸、及びサリチル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、安全性が高いという観点では、乳酸がさらに好ましい。
【0060】
エポキシ樹脂組成物中の酸性化合物の含有量は、エポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量と、酸性化合物に由来する酸基のモル当量との比(塩基性窒素/酸基)が0.60~20となる範囲であれば特に制限されないが、エポキシ樹脂組成物中の酸性化合物以外の不揮発分100質量部に対し、好ましくは4~120質量部、より好ましくは5~100質量部、さらに好ましくは5~70質量部、よりさらに好ましくは9~50質量部、よりさらに好ましくは15~45質量部、よりさらに好ましくは20~40質量部、よりさらに好ましくは25~40質量部である。酸性化合物の含有量が上記範囲であれば、得られる硬化物の無機物に対するレトルト処理後の接着性を向上させることができる。さらに、酸性化合物の含有量がエポキシ樹脂組成物中の酸性化合物以外の不揮発分100質量部に対し120質量部以下であれば、高いガスバリア性を維持できる。また、エポキシ樹脂組成物との混合が容易であり、酸性化合物の溶出等も抑制できる。
【0061】
(非球状無機粒子)
エポキシ樹脂組成物には、さらに非球状無機粒子を含有させることができる。エポキシ樹脂組成物に非球状無機粒子を含有させることで、樹脂硬化層の形成に用いた際にはブロッキング抑制効果が得られ、且つ、ガスバリア性包装材のガスバリア性及び耐屈曲性も向上させることができる。
非球状無機粒子の形状は、球状(略真円球状)以外の三次元形状であればよく、例えば、板状、鱗片状、柱状、鎖状、繊維状等が挙げられる。板状、鱗片状の無機粒子は複数積層されて層状になっていてもよい。これらの中でも、ガスバリア性及び耐屈曲性向上の観点からは、板状、鱗片状、柱状、又は鎖状の無機粒子が好ましく、板状、鱗片状、又は柱状の無機粒子がより好ましく、板状又は鱗片状の無機粒子がさらに好ましい。
【0062】
非球状無機粒子を構成する無機物としては、シリカ、アルミナ、雲母(マイカ)、タルク、アルミニウム、ベントナイト、スメクタイト等が挙げられる。これらの中でも、ガスバリア性及び耐屈曲性を向上させる観点からはシリカ、アルミナ、及び雲母からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、シリカ及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
上記非球状無機粒子は、エポキシ樹脂組成物への分散性を高め、硬化物の透明性を向上させることを目的として、必要に応じ表面処理されていてもよい。中でも、非球状無機粒子は有機系材料でコーティングされていることが好ましく、ガスバリア性及び耐屈曲性、透明性を向上させる観点からは有機系材料でコーティングされたシリカ及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。ガスバリア性及び耐屈曲性向上の観点からは、有機系材料でコーティングされたシリカがさらに好ましく、透明性の観点からは、有機系材料でコーティングされたアルミナがさらに好ましい。
【0063】
非球状無機粒子の平均粒径は、好ましくは1~2,000nm、より好ましくは1~1,500nm、さらに好ましくは1~1,000nm、よりさらに好ましくは1~800nm、よりさらに好ましくは1~500nm、よりさらに好ましくは5~300nm、よりさらに好ましくは5~200nm、よりさらに好ましくは5~100nm、よりさらに好ましくは8~70nmの範囲である。当該平均粒径が1nm以上であれば無機粒子の調製が容易であり、2,000nm以下であればガスバリア性、耐屈曲性、及び透明性がいずれも良好になる。なお、当該平均粒径は一次粒子の平均粒径である。
【0064】
非球状無機粒子が板状、鱗片状、柱状、又は繊維状である場合、非球状無機粒子のアスペクト比は好ましくは2~700、より好ましくは3~500である。当該アスペクト比が2以上であると良好なガスバリア性が発現しやすい。非球状無機粒子の平均粒径及びアスペクト比は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、3箇所以上の測定値の平均から求められる。なお、樹脂硬化層中に存在する非球状無機粒子の平均粒径及びアスペクト比については、例えばガスバリア性包装材をエポキシ樹脂で包埋した後、イオンミリング装置を用いてフィルム断面のイオンミリングを行って断面観察用試料を作製し、得られた試料の樹脂硬化層部分の断面を上記と同様の方法で観察、測定することにより求めることができる。
非球状無機粒子の平均粒径が100nm未満であって上記方法による平均粒径の測定が困難である場合は、当該平均粒径は例えばBET法により測定することもできる。
【0065】
非球状無機粒子の製造方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
非球状無機粒子の調製しやすさ、エポキシ樹脂組成物への配合容易性並びに分散性の観点から、本発明においては非球状無機粒子の分散液を調製し、該分散液をエポキシ樹脂組成物に配合することが好ましい。非球状無機粒子分散液の分散媒には特に制限はなく、水又は有機溶剤のいずれも用いることができる。有機溶剤としては非球状無機粒子の分散性の観点から極性溶剤が好ましく、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノール等のプロトン性極性溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。
非球状無機粒子の分散性の観点からは、分散媒は水及びプロトン性極性溶剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、粒子の分散性、並びに分散液とエポキシ樹脂組成物との混和性の観点からはプロトン性極性溶剤がより好ましく、メタノール、エタノール、1-プロパノール、及び2-プロパノールからなる群から選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
【0066】
非球状無機粒子を用いる場合、エポキシ樹脂組成物中の非球状無機粒子の含有量は、前記エポキシ樹脂及び前記エポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し、好ましくは0.5~10.0質量部、より好ましくは1.0~8.0質量部、さらに好ましくは1.5~7.5質量部、よりさらに好ましくは3.0~7.0質量部である。エポキシ樹脂組成物中の非球状無機粒子の含有量がエポキシ樹脂及び前記エポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し0.5質量部以上であれば、ガスバリア性及び耐屈曲性向上効果が良好である。また、当該含有量が10.0質量部以下であると透明性も良好になる。
【0067】
エポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて熱硬化性樹脂、湿潤剤、粘着付与剤、カップリング剤、消泡剤、硬化促進剤、防錆添加剤、顔料、酸素捕捉剤等の添加剤を配合してもよい。
上記添加剤のうちカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等が挙げられ、得られる硬化物の無機物への接着性向上の観点からはシランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基を有するシランカップリング剤、アミノ基を有するシランカップリング剤、エポキシ基を有するシランカップリング剤、(メタ)アクリル基を有するシランカップリング剤、メルカプト基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。これらの中でも、得られる硬化物の無機物への接着性の観点からはアミノ基を有するシランカップリング剤及びエポキシ基を有するシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なおアミノ基を有するシランカップリング剤を用いる場合は、該アミノ基も「エポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量」の計算に含まれる。
【0068】
エポキシ樹脂組成物中の上記添加剤の合計含有量は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の合計量100質量部に対し20.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.001~15.0質量部である。
【0069】
本発明の効果を得る観点から、エポキシ樹脂組成物の固形分中のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、及び酸性化合物の合計含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、よりさらに好ましくは85質量%以上であり、上限は100質量%である。「エポキシ樹脂組成物の固形分」とは、エポキシ樹脂組成物中の水及び有機溶剤を除いた成分を意味する。
エポキシ樹脂組成物に用いられる有機溶剤としては非反応性溶剤が好ましい。その具体例としては、非球状無機粒子の分散液に用いる分散媒として例示した極性溶剤の他、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、トルエン等を用いることができる。
【0070】
〔エポキシ樹脂組成物の調製〕
エポキシ樹脂組成物は、例えばエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、酸性化合物、及び、必要に応じ用いられる非球状無機粒子の分散液、その他の添加剤並びに溶剤をそれぞれ所定量配合した後、公知の方法及び装置を用いて攪拌、混合することにより調製できる。
各成分を混合する順序は特に限定されないが、非球状無機粒子を用いる場合は、エポキシ樹脂組成物中の非球状無機粒子の分散性を良好にするために、まず非球状無機粒子の分散液と溶剤成分とを混合し、次いで、エポキシ樹脂硬化剤又はその溶液、エポキシ樹脂、並びに酸性化合物の順に添加して混合することが好ましい。非球状無機粒子が含まれる液中の固形分濃度を低い状態から徐々に高くしていくことにより、非球状無機粒子の分散性が良好な状態で維持されるためである。
【0071】
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物である樹脂硬化層はガスバリア性に優れ、レトルト処理後においてもアルミナ等の無機物への接着性が良好である。
エポキシ樹脂組成物を硬化させて樹脂硬化層を形成する方法としては特に制限されず、その硬化物を得るのに十分なエポキシ樹脂組成物の濃度及び温度において公知の方法により行われる。硬化温度は、例えば10~140℃の範囲で選択できる。その一実施形態についてはガスバリア性包装材の製造方法において説明する。
【0072】
樹脂硬化層の厚みは、ガスバリア性及び耐屈曲性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上である。また、無機物に対するレトルト処理後の接着性の観点、乾燥不足を抑制する観点、及び透明性の観点からは、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8.0μm以下、よりさらに好ましくは5.0μm以下、よりさらに好ましくは3.5μm以下、よりさらに好ましくは2.0μm以下、よりさらに好ましくは1.0μm以下である。上記厚みは、樹脂硬化層の1層あたりの厚みである。
【0073】
<ガスバリア性包装材の層構成>
本発明のガスバリア性包装材は、前記基体と、少なくとも1層の前記樹脂硬化層とを有する構成であればよい。本発明のガスバリア性包装材が包装用フィルム又は包装用袋である場合は、基体の片面のみが無機物で構成され、前記樹脂硬化層を1層のみ有する構成が好ましい。また、基体の無機物から構成される面と、樹脂硬化層とは隣接していることが好ましい。
例えばガスバリア性包装材が包装用フィルムである場合の好ましい層構成として、図1図3の構成が挙げられる。
【0074】
図1は本発明のガスバリア性包装材である包装用フィルムの一実施形態を示す断面模式図であり、包装用フィルム100は、ベースフィルム11の片面に無機薄膜層12を有する基体1と、その無機薄膜層12側の面に樹脂硬化層2が設けられた構成である。図1においては、無機薄膜層12と樹脂硬化層2とが隣接している。
但し本発明のガスバリア性包装材の一実施形態である包装用フィルムは図1の層構成のものに限定されず、例えば樹脂硬化層を2層以上有してもよい。また、例えば図1の包装用フィルムにおいて、基体1と樹脂硬化層2との間、又は、樹脂硬化層2の上面(基体1と隣接していない面)側に、プライマー層や保護層等を有する構成でもよい。
【0075】
また本発明のガスバリア性包装材は、前記基体、少なくとも1層の前記樹脂硬化層、及び熱可塑性樹脂層を有する構成でもよい。その好ましい構成としては例えば、ガスバリア性包装材が包装用フィルムである場合、図1の包装用フィルム100における樹脂硬化層側の面(図1の包装用フィルム100における樹脂硬化層2側の面(上面))、又はその反対面(図1の包装用フィルム100におけるベースフィルム11側の面(下面))に熱可塑性樹脂層を積層した構成が挙げられる。
包装用フィルム100と熱可塑性樹脂層との間には、さらにプライマー層やインキ層、接着剤層、表面保護層、蒸着層等の任意の層が積層されていてもよい。また、包装用フィルム100及び熱可塑性樹脂層を、それぞれ2層以上有していてもよい。
【0076】
熱可塑性樹脂層としては、熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。当該熱可塑性樹脂フィルムとしては、前記基体を構成するベースフィルムにおいて例示した透明プラスチックフィルムが好ましい。熱可塑性樹脂フィルムの表面には火炎処理やコロナ放電処理などの表面処理が施されていてもよい。また熱可塑性樹脂フィルムとして、紫外線吸収剤や着色剤等を含むフィルムや、表面にプライマー層、インキ層、表面保護層、蒸着層等を有するフィルムを用いることもできる。
熱可塑性樹脂層の厚みは、好ましくは10~300μm、より好ましくは10~100μmである。
【0077】
熱可塑性樹脂層を有する包装用フィルムの好ましい層構成としては、例えば、図1の構成の包装用フィルム100と熱可塑性樹脂フィルム3とが直接積層された構成(図2)や、図1の構成の包装用フィルム100と熱可塑性樹脂フィルム3とが接着剤層を介して積層された構成(図3)等が挙げられる。
図2は本発明のガスバリア性包装材である包装用フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。図2において、包装用フィルム200は、エポキシ樹脂組成物からなる樹脂硬化層2を介して、基体1と熱可塑性樹脂フィルム3とを対向させて積層したものであり、ベースフィルム11及び無機薄膜層12からなる基体1、樹脂硬化層2、及び熱可塑性樹脂フィルム3がこの順に積層された構成である。
一方で、図1の構成の包装用フィルム100と熱可塑性樹脂フィルムとが接着剤層を介して積層された構成である場合、包装用フィルム100における樹脂硬化層側の面と熱可塑性樹脂フィルムとを対向させて積層することが好ましい。この場合の層構成は図3に示す構成となる。図3は本発明のガスバリア性包装材である包装用フィルムの一実施形態を示す断面模式図である。図3において、包装用フィルム300は図1の包装用フィルム100における樹脂硬化層2側の面と熱可塑性樹脂フィルム3とを対向させて、接着剤層4を介して積層したものであり、ベースフィルム11及び無機薄膜層12からなる基体1、樹脂硬化層2、接着剤層4、及び熱可塑性樹脂フィルム3がこの順に積層された構成である。
【0078】
<ガスバリア性包装材の製造方法>
本発明のガスバリア性包装材の製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば図1の構成の包装用フィルム100の製造方法としては、ベースフィルムの片面に無機薄膜層が形成された基体の無機薄膜層側の面に、樹脂硬化層形成用の前記エポキシ樹脂組成物を所望の厚みとなるよう塗布し、次いでエポキシ樹脂組成物を硬化させて樹脂硬化層を形成する方法が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物を塗布する際の塗布方法としては、例えば、バーコート、メイヤーバーコート、エアナイフコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、マイクログラビアコート、マイクロリバースグラビアコート、ダイコート、スロットダイコート、バキュームダイコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート、スプレーコート、はけ塗り等が挙げられる。これらの中でもバーコート、ロールコート又はスプレーコートが好ましく、工業的にはグラビアコート、リバースグラビアコート、マイクログラビアコート、又はマイクロリバースグラビアコートが好ましい。
エポキシ樹脂組成物を塗布した後、必要に応じて溶剤を揮発させる工程(乾燥工程)を行う。乾燥工程における条件は適宜選択できるが、例えば、乾燥温度60~180℃、乾燥時間5~180秒の条件で行うことができる。
乾燥工程を行った後、エポキシ樹脂組成物を硬化させて樹脂硬化層を形成する。硬化温度は、例えば10~140℃の範囲で選択でき、好ましくは10~80℃の範囲である。また硬化時間は、例えば0.5~200時間の範囲で選択でき、好ましくは2~100時間の範囲である。
【0079】
図2の構成の包装用フィルム200の製造方法としては、基体の無機物から構成される面に前述したエポキシ樹脂組成物を塗布した後、直ちにその塗布面に熱可塑性樹脂フィルムをニップロール等により貼り合わせ、次いで、前述の方法でエポキシ樹脂組成物を硬化させる方法が挙げられる。この場合、樹脂硬化層を構成するエポキシ樹脂組成物が、基体と熱可塑性樹脂フィルムとを接着させる接着剤層としての役割を果たす。
また、図3の構成の包装用フィルム300の製造方法としては、前述の方法で製造した包装用フィルム100の片面、又は、熱可塑性樹脂フィルムの片面に接着剤層を構成する接着剤を塗布し、次いで他方のフィルムを貼付して積層する方法が挙げられる。
接着剤層を構成する接着剤としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等の公知の接着剤を用いることができる。また接着剤層の厚みは特に限定されないが、接着性と透明性とを両立させる観点からは、好ましくは0.1~30μm、より好ましくは1~20μm、さらに好ましくは2~20μmである。
【0080】
上記包装用フィルムを公知の方法で加工することで、ガスバリア性を有する包装用袋等の各種包装容器、包装容器用蓋材、シール材等を得ることができる。
【0081】
<ガスバリア性包装材の特性>
本発明のガスバリア性包装材は優れたガスバリア性を有する。例えば、ガスバリア性包装材である包装用フィルムの23℃、相対湿度60%における酸素透過率は、使用する基体のバリア性によっても異なるが、好ましくは2cc/m・day・atm以下、より好ましくは1.5cc/m・day・atm以下、さらに好ましくは1cc/m・day・atm以下である。
ガスバリア性包装材の酸素透過率は、具体的には実施例に記載の方法で求められる。
【実施例
【0082】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
本実施例における測定及び評価は以下の方法で行った。
【0083】
<エポキシ樹脂組成物中の塩基性窒素のモル当量と、酸性化合物に由来する酸基のモル当量との比(塩基性窒素/酸基)>
各例のエポキシ樹脂組成物に用いたエポキシ樹脂の塩基性窒素の当量A1(g/当量)、エポキシ樹脂硬化剤の塩基性窒素の当量A2(g/当量)、及び酸性化合物の酸基の当量A3(g/当量)をそれぞれ算出した。次いで、エポキシ樹脂組成物へのエポキシ樹脂の配合量B1(g)、エポキシ樹脂硬化剤の配合量B2(g)、及び酸性化合物の配合量B3(g)から(B1/A1+B2/A2)を(B3/A3)で除した値を算出し、この値をモル当量比(塩基性窒素/酸基)とした。なお、エポキシ樹脂硬化剤の塩基性窒素の当量A2の計算には、エポキシ樹脂硬化剤溶液中の添加剤等に由来する塩基性窒素も含まれる。
エポキシ樹脂の塩基性窒素の当量A1(g/当量)及びエポキシ樹脂硬化剤の塩基性窒素の当量A2(g/当量)は、電位差滴定装置(京都電子工業(株)製「AT-610」にて、サンプルの希釈溶剤に酢酸、滴定溶媒に0.1N過塩素酸/酢酸溶液を用いて全アミン価(mgKOH/g)を求め、該アミン価から塩基性窒素の当量を算出した。計算式は、塩基性窒素の当量(g/当量)=1÷(全アミン価×10-3÷56.11)より算出した。
【0084】
<pH>
ポータブル型pHメーター((株)堀場製作所製「D-72LAB」)を用いて25℃におけるpHを測定した。電極には低電気伝導率水・非水溶媒用pH電極((株)堀場製作所製「6377-10D」)を使用した。
【0085】
<樹脂硬化層の厚み>
多層膜厚測定装置(グンゼ(株)製「DC-8200」)を用いて測定した。
【0086】
<レトルト処理後の剥離の有無>
各例で得られた包装用フィルム(2)を、レトルト食品用オートクレーブ((株)トミー精工製「SR-240」)を用いて121℃30分レトルト処理した。レトルト処理後の包装用フィルム(2)を用いて、JIS K6854-3:1999に指定されている方法に従い、300mm/minの剥離速度でT型剥離試験を行い、剥離の有無を目視評価した。
【0087】
<酸素透過率(cc/(m・day・atm))>
各例で使用したアルミナ蒸着PET、及び各例で得られた包装用フィルム(1)について、酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製「OX-TRAN2/21」)を使用して、23℃、相対湿度60%の条件下で酸素透過率を測定した。
【0088】
製造例1(エポキシ樹脂硬化剤溶液Aの調製)
反応容器に1molのメタキシリレンジアミン(MXDA)を仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93molのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。生成するメタノールを留去しながら165℃に昇温し、2.5時間165℃を保持することで、アミン系硬化剤を得た。そこに、メタノールを1.5時間かけて滴下し、さらに、シランカップリング剤である3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBE-903」)を添加して、アミン系硬化剤が62.2質量%、3-アミノプロピルトリエトキシシランが2.8質量%、メタノールが35質量%のエポキシ樹脂硬化剤溶液Aを得た。エポキシ樹脂硬化剤溶液Aの塩基性窒素の当量(不揮発分換算)は172g/当量であった。
【0089】
実施例1
(エポキシ樹脂組成物の調製)
希釈溶剤であるメタノール24.4g、酢酸エチル4.84g、有機系コーティングが施された板状アルミナ粒子の分散液(川研ファインケミカル(株)製「KOS-A2EOK5-10」、エタノール分散液、固形分濃度:10質量%、アルミナ粒子の平均一次粒子径:20nm)1.49gを加え、よく撹拌した。次いで、製造例1で得られたエポキシ樹脂硬化剤溶液A 3.18gを加えて撹拌した。ここに、エポキシ樹脂としてメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)1g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=1.2)と、酸性化合物としてp-トルエンスルホン酸一水和物(酸価294mgKOH/g)0.32gを加えて撹拌し、エポキシ樹脂組成物を調製した。エポキシ樹脂組成物中のp-トルエンスルホン酸一水和物以外の不揮発分100質量部に対する、p-トルエンスルホン酸一水和物の配合量は10質量部である。
(包装用フィルムの作製、評価)
得られたエポキシ樹脂組成物を、PETの片面にアルミニウム酸化物(アルミナ)が蒸着されたアルミナ蒸着PET(東レフィルム加工(株)製「バリアロックス1011HG(コート無し)」、厚み:12μm、酸素透過率:2.2cc/(m・day・atm))のアルミナ蒸着面にバーコーターNo.3を使用して塗布した。該エポキシ樹脂組成物を120℃で60秒間加熱して乾燥させ(乾燥後の厚み:約0.5μm)、さらに40℃で2日加熱して硬化させて、基体と樹脂硬化層とからなる図1の構成の包装用フィルム(1)を作製した。
包装用フィルム(1)の樹脂硬化層側の面に、ウレタン接着剤(東洋モートン(株)製「TOMOFLEX AD-502」)をバーコーターNo.12を使用して塗布し、80℃で10秒乾燥させて接着剤層を形成した(乾燥後の厚み:約3μm)。ウレタン接着剤は、主剤のAD-502 15gに、硬化剤のCAT-RT85 1.05gと、溶剤の酢酸エチル16.9gを加え、よく撹拌して調製したものを用いた。この上に、厚み50μmのポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製「P1146」)をニップロールにて貼り合わせ、40℃で2日加熱して、図3の構成の包装用フィルム(2)を得た。
この包装用フィルム(2)を用いて、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0090】
実施例2
実施例1において、メタノールの配合量を27.4g、p-トルエンスルホン酸一水和物の配合量を0.64gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0091】
実施例3
実施例1において、メタノールの配合量を30.2g、p-トルエンスルホン酸一水和物の配合量を0.96gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0092】
実施例4
実施例1において、酸性化合物として、p-トルエンスルホン酸一水和物に替えてドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA、酸価140mgKOH/g)を0.32g配合したこと以外は、実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0093】
実施例5
実施例4において、メタノールの配合量を27.4g、DBSAの配合量を0.64gに変更したこと以外は、実施例4と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0094】
実施例6
実施例4において、メタノールの配合量を30.2g、DBSAの配合量を0.96gに変更したこと以外は、実施例4と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0095】
実施例7
実施例4において、メタノールの配合量を33.2g、DBSAの配合量を1.28gに変更したこと以外は、実施例4と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0096】
実施例8
実施例4において、メタノールの配合量を35.9g、DBSAの配合量を1.60gに変更したこと以外は、実施例4と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0097】
実施例9
実施例4において、メタノールの配合量を41.9g、DBSAの配合量を2.24gに変更したこと以外は、実施例4と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0098】
実施例10
実施例4において、メタノールの配合量を50.4g、DBSAの配合量を3.20gに変更したこと以外は、実施例4と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0099】
実施例11
実施例1において、酸性化合物として、p-トルエンスルホン酸一水和物に替えてサリチル酸(SA、酸価406mgKOH/g)を0.32g配合したこと以外は、実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0100】
実施例12
実施例11において、メタノールの配合量を30.2g、SAの配合量を0.96gに変更したこと以外は、実施例11と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0101】
実施例13
実施例11において、メタノールの配合量を38.9g、SAの配合量を1.92gに変更したこと以外は、実施例11と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0102】
実施例14
実施例11において、メタノールの配合量を44.4g、SAの配合量を2.56gに変更したこと以外は、実施例11と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0103】
実施例15
実施例11において、メタノールの配合量を50.4g、SAの配合量を3.20gに変更したこと以外は、実施例11と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0104】
実施例16
実施例1において、酸性化合物として、p-トルエンスルホン酸一水和物に替えて乳酸(LA、酸価622mgKOH/g)水溶液((株)武蔵野化学研究所製「乳酸90F」、固形分濃度:90質量%)を0.32g(有効分として0.29g)配合し、メタノールの配合量を24.2gに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0105】
実施例17
実施例16において、メタノールの配合量を26.7g、乳酸水溶液の配合量を0.64gに変更したこと以外は、実施例16と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0106】
実施例18
実施例16において、メタノールの配合量を29.3g、乳酸水溶液の配合量を0.96gに変更したこと以外は、実施例16と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0107】
実施例19
実施例16において、メタノールの配合量を31.9g、乳酸水溶液の配合量を1.28gに変更したこと以外は、実施例16と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0108】
実施例20
実施例16において、メタノールの配合量を34.4g、乳酸水溶液の配合量を1.60gに変更したこと以外は、実施例16と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0109】
比較例1
実施例1において、メタノールの配合量を21.6gとし、且つp-トルエンスルホン酸一水和物を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0110】
比較例2
実施例16において、メタノールの配合量を47.4g、乳酸水溶液の配合量を3.20gに変更したこと以外は、実施例16と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0111】
実施例21
実施例16において、メタノールの配合量を18.4g、エポキシ樹脂(三菱瓦斯化学(株)製「TETRAD-X」)の配合量を0.4g(エポキシ樹脂硬化剤中の活性アミン水素数/エポキシ樹脂中のエポキシ基の数=3.0)、乳酸水溶液の配合量を0.26g(有効分として0.23g)に変更したこと以外は、実施例16と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0112】
実施例22
実施例21において、メタノールの配合量を20.4g、乳酸水溶液の配合量を0.52gに変更したこと以外は、実施例21と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0113】
実施例23
実施例21において、メタノールの配合量を22.5g、乳酸水溶液の配合量を0.78gに変更したこと以外は、実施例21と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0114】
実施例24
実施例21において、メタノールの配合量を24.5g、乳酸水溶液の配合量を1.04gに変更したこと以外は、実施例21と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0115】
実施例25
実施例21において、メタノールの配合量を26.6g、乳酸水溶液の配合量を1.30gに変更したこと以外は、実施例21と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0116】
実施例26
実施例21において、メタノールの配合量を28.9g、乳酸水溶液の配合量を1.57gに変更したこと以外は、実施例21と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0117】
実施例27
実施例23において、メタノールの配合量を132.4g(エポキシ樹脂組成物の固形分濃度:2質量%)に変更したこと以外は、実施例23と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0118】
実施例28
実施例23において、メタノールの配合量を4.10g(エポキシ樹脂組成物の固形分濃度:20質量%)に変更したこと以外は、実施例23と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0119】
比較例3
実施例21において、メタノールの配合量を16.2gに変更し、且つ乳酸水溶液を配合しなかったこと以外は、実施例21と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0120】
比較例4
実施例21において、メタノールの配合量を32.9g、乳酸水溶液の配合量を2.08gに変更したこと以外は、実施例21と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
【0121】
比較例5
実施例21において、メタノールの配合量を37.1g、乳酸水溶液の配合量を2.61gに変更したこと以外は、実施例21と同様の方法でエポキシ樹脂組成物の調製及び包装用フィルムの作製を行い、前記方法でレトルト処理後の剥離試験を行った。結果を表1に示す。
なお、表中の配合量はいずれも有効分としての配合量(質量部)である。
【0122】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明のガスバリア性包装材は、レトルト処理後も基体と樹脂硬化層との間で層間剥離が起こり難く耐レトルト性に優れることから、レトルト食品用の袋、蓋材等のレトルト食品用包装材として有用である。
【符号の説明】
【0124】
100、200、300 包装用フィルム(包装材)
1 基体
11 ベースフィルム
12 無機薄膜層
2 樹脂硬化層
3 熱可塑性樹脂フィルム(熱可塑性樹脂層)
4 接着剤層
図1
図2
図3