(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】圧電振動板、圧電振動デバイス、及び、圧電振動デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20240730BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H03H9/19 F
H03H3/02 B
(21)【出願番号】P 2021548391
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020029023
(87)【国際公開番号】W WO2021059731
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019175261
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】大西 学
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-034575(JP,A)
【文献】特開2012-114776(JP,A)
【文献】特開2000-252375(JP,A)
【文献】特開2015-192279(JP,A)
【文献】特開2017-085412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00- 9/74
H03H 3/007-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視略矩形の圧電基板と、
該圧電基板の両主面に形成された第1,第2励振電極と、
前記圧電基板の
長辺方向の両端部に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子
と、
を備え、
前記第1,第2実装端子は、
前記圧電基板上に形成された耐半田金属膜を含む実装用金属膜と、
前記実装用金属膜上に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ連続するように形成された前記第1,第2励振電極を構成する励振用の金属膜
と、
を有し、
前記実装用金属膜及び当該実装用金属膜上の前記励振用の金属膜には、前記実装用金属膜の一部及び前記励振用の金属膜を分断し、前記耐半田金属膜が露出した分断溝が、前記圧電基板の前記長辺方向を横切るように形成されている、
圧電振動板。
【請求項2】
前記耐半田金属膜が、Ni及びNi合金の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の圧電振動板。
【請求項3】
平面視略矩形の圧電基板の両主面に形成された第1,第2励振電極、及び、前記圧電基板の長辺方向の両端部に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有する圧電振動板と、
前記圧電振動板の前記第1,第2励振電極をそれぞれ覆うように、前記圧電振動板の前記両主面にそれぞれ接合される第1,第2封止部材と、
を備え、
前記第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材は、樹脂製のフィルムであり、
前記圧電振動板の前記第1,第2実装端子は、前記圧電基板上に形成された耐半田金属膜を含む実装用金属膜と、前記実装用金属膜上に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ連続するように形成された前記第1,第2励振電極を構成する励振用の金属膜とを有し、
前記実装用金属膜及び当該実装用金属膜上の前記励振用の金属膜には、前記実装用金属膜の一部及び前記励振用の金属膜を分断し、前記耐半田金属膜が露出した分断溝が、前記圧電基板の前記長辺方向を横切るように形成されている、
圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記第1,第2封止部材の両封止部材は、前記樹脂製のフィルムである、
請求項3に記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
前記樹脂製のフィルムは、前記分断溝を覆うように、前記圧電振動板に接合されている、請求項4に記載の圧電振動デバイス。
【請求項6】
前記圧電振動板は、前記圧電基板の両主面に前記第1,第2励振電極がそれぞれ形成された振動部と、該振動部に連結部を介して連結された外枠部とを有し、前記外枠部は、該外枠部よりも薄肉の前記振動部の外周を、間隔を空けて取り囲んでおり、
前記フィルムは、その周端部が前記外枠部に接合されて、前記振動部を封止する、
請求項3に記載の圧電振動デバイス。
【請求項7】
前記外枠部の両主面の一方の主面には、前記第1励振電極と前記第1実装端子とを接続し、かつ前記振動部を取り囲むと共に、前記フィルムが接合される第1封止パターンが形成され、前記外枠部の前記両主面の他方の主面には、前記第2励振電極と前記第2実装端子とを接続し、かつ前記振動部を取り囲むと共に、前記フィルムが接合される第2封止パターンが形成されている、
請求項6に記載の圧電振動デバイス。
【請求項8】
前記第1,第2実装端子は、前記外枠部の両主面にそれぞれ形成され、前記両主面の前記第1実装端子同士が接続されると共に、前記両主面の前記第2実装端子同士が接続されている、
請求項6に記載の圧電振動デバイス。
【請求項9】
前記耐半田金属膜が、Ni及びNi合金の少なくとも一方を含む、
請求項6に記載の圧電振動デバイス。
【請求項10】
平面視略矩形の圧電基板の両主面に形成された第1,第2励振電極、及び、前記圧電基板の長辺方向の両端部に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有する圧電振動板を製造するために圧電ウェハを予め準備し、
前記圧電ウエハに、圧電基板の外形を複数形成する外形形成工程と、
前記外形形成工程で形成された複数の圧電基板上に耐半田金属膜を含む実装用金属膜をパターニングして、前記第1,第2実装端子となる領域に前記実装用金属膜を形成する実装用金属膜形成工程と、
前記実装用金属膜形成工程で実装用金属膜が形成された複数の前記圧電基板上及び前記実装用金属膜上に励振用の金属膜をパターニングして、前記第1,第2実装端子となる領域及び前記第1,第2励振電極となる領域に励振用の金属膜を形成して圧電振動板とする金属膜形成工程と、
前記金属膜形成工程で励振用の金属膜が形成された複数の前記圧電振動板の両主面の少なくとも一方の主面に樹脂製のフィルムを接合して前記第1,第2励振電極の少なくとも一方の励振電極を封止する接合工程と、
前記接合工程で前記フィルムが接合された各圧電振動板を個片化する個片化工程とを含み、
前記金属膜形成工程では、前記第1,第2実装端子となる領域の前記実装用金属膜上に、前記第1,第2励振電極となる領域の励振用の金属膜にそれぞれ連続するように前記励振用の金属膜を形成するとともに、前記実装用金属膜及び当該実装用金属膜上の前記励振用の金属膜には、前記実装用金属膜の一部及び前記励振用の金属膜を分断し、前記耐半田金属膜が露出した分断溝を、前記圧電基板の前記長辺方向を横切るように形成する、
圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記接合工程では、前記金属膜形成工程で励振用の金属膜が形成された複数の前記圧電振動板の両主面に、前記樹脂製のフィルムをそれぞれ接合して前記第1,第2励振電極をそれぞれ封止する、
請求項10に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記金属膜形成工程では、前記実装用金属膜及び当該実装用金属膜上に形成される励振用の金属膜に、前記実装用金属膜の一部及び前記励振用の金属膜を分断し、前記耐半田金属膜が露出した分断溝を、前記圧電基板の前記一方の組の対向辺に沿う方向を横切るように形成する、
請求項10または11に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記接合工程では、前記樹脂製のフィルムを、前記分断溝を覆うように前記圧電振動板に接合する、
請求項12に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装端子を備えた圧電振動板、それを用いた圧電振動デバイス、及び、圧電振動デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイス、例えば、圧電振動子として、表面実装型の水晶振動子が広く用いられている。この表面実装型の水晶振動子は、例えば、特許文献1に記載されているように、セラミックからなる上面が開口した箱形のベース内の保持電極に、水晶振動片の両面の励振電極から導出された電極を、導電性接着剤によって固着することによって、水晶振動片をベースに搭載する。このようにして水晶振動片を搭載したベースの開口に、蓋体を接合して気密に封止するようにしている。また、ベースの外底面には、当該水晶振動子を表面実装するための実装端子が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような圧電振動子の多くは、セラミック製のベースに、金属製あるいはガラス製の蓋体が接合されてパッケージが構成されているので、パッケージが高価となり、圧電振動子が高価なものとなっている。
【0005】
表面実装型の圧電振動子では、その実装端子が、半田等の接合材によって、回路基板等に接合されて実装されるので、実装端子を構成する金属が、付着した半田に拡散することによって生じる、いわゆる、半田食われによる導通不良を回避する必要がある。
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑みて為されたものであって、導通不良が生じることがなく、かつ、安価な圧電振動板及び圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0008】
(1)本発明の圧電振動板は、平面視略矩形の圧電基板と、該圧電基板の両主面に形成された第1,第2励振電極と、前記圧電基板の前記平面視略矩形の二組の対向辺の内の一方の組の対向辺に沿う方向の両端部に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子とを備え、前記第1,第2実装端子は、前記圧電基板上に形成された耐半田金属膜を含む実装用金属膜と、前記実装用金属膜上に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ連続するように形成された前記第1,第2励振電極を構成する励振用の金属膜とを有する。
【0009】
本発明の圧電振動板によれば、半田等の接合材によって、回路基板等に接合される第1,第2実装端子は、耐半田金属膜を含む実装用金属膜を有しているので、実装用金属膜の耐半田金属膜によって、半田食われが広がるのを抑制して導通不良を防止することができる一方、第1,第2実装端子の実装用金属膜上には、第1,第2励振電極を構成する励振用の金属膜が、第1,第2励振電極にそれぞれ連続するように形成されているので、第1,第2実装端子を、第1,第2励振電極にそれぞれ接続することができる。
【0010】
また、圧電振動板は、第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有するので、従来のように、実装端子を有する上面が開口した箱形のベース内に、圧電振動片を収納搭載する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0011】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記実装用金属膜及び当該実装用金属膜上の前記励振用の金属膜には、前記実装用金属膜の一部及び前記励振用の金属膜を分断し、前記耐半田金属膜が露出した分断溝が、前記圧電基板の前記一方の組の対向辺に沿う方向を横切るように形成されている。
【0012】
実装端子は、圧電基板の平面視略矩形の二組の対向辺の内の一方の組の対向辺に沿う方向の両端部に設けられており、この実施態様によれば、両端部の実装端子の実装用金属膜の一部及び励振用の金属膜は、耐半田金属膜が露出した分断溝によって前記対向辺に沿う方向を横切るように分断されることになる。
【0013】
したがって、平面視略矩形の圧電基板において、各端部の実装端子の実装用金属膜の一部及び励振用の金属膜は、分断溝を境界として、前記対向辺に沿う方向の外方寄りの領域と内方寄りの領域とに分断されることになる。
【0014】
これによって、実装端子の実装用金属膜や励振用の金属膜の外方寄りの領域に生じた半田食われが、内方寄りの領域へ広がるのを、耐半田金属膜が露出した分断溝によって抑制することができる。
【0015】
(3)本発明の一実施態様では、前記耐半田金属膜が、Ni及びNi合金の少なくとも一方を含んでいる。
【0016】
この実施態様によれば、Ni及びNi合金の少なくとも一方を含む耐半田金属膜によって、半田食われが広がるのを抑制することができる。
【0017】
(4)本発明の圧電振動デバイスは、平面視略矩形の圧電基板の両主面に形成された第1,第2励振電極、及び、前記圧電基板の前記平面視略矩形の二組の対向辺の内の一方の組の対向辺に沿う方向の両端部に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有する圧電振動板と、前記圧電振動板の前記第1,第2励振電極をそれぞれ覆うように、前記圧電振動板の前記両主面にそれぞれ接合される第1,第2封止部材とを備え、前記第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材は、樹脂製のフィルムであり、前記圧電振動板の前記第1,第2実装端子は、前記圧電基板上に形成された耐半田金属膜を含む実装用金属膜と、前記実装用金属膜上に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ連続するように形成された前記第1,第2励振電極を構成する励振用の金属膜とを有する。
【0018】
本発明の圧電振動デバイスによれば、半田等の接合材によって、回路基板等に接合される第1,第2実装端子は、耐半田金属膜を含む実装用金属膜を有しているので、実装用金属膜の耐半田金属膜によって、半田食われが広がるのを抑制して導通不良を防止することができる一方、第1,第2実装端子の実装用金属膜上には、第1,第2励振電極を構成する励振用の金属膜が、第1,第2励振電極にそれぞれ連続するように形成されているので、第1,第2実装端子を第1,第2励振電極にそれぞれ接続することができる。
【0019】
また、圧電振動板は、第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有するので、従来のように、実装端子を有する上面が開口した箱形のベース内に、圧電振動片を収納搭載する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0020】
更に、圧電振動板の両主面にそれぞれ接合される第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材は、樹脂製のフィルムであるので、金属製やガラス製の蓋体で封止する構成に比べて、コストを低減することができる。
【0021】
(5)本発明の好ましい実施態様では、前記第1,第2封止部材の両封止部材は、前記樹脂製のフィルムである。
【0022】
この実施態様によれば、両封止部材を、樹脂製のフィルムで構成するので、高価なベース及び蓋体が不要となり、一層コストを低減することができる。
【0023】
(6)本発明の一実施態様では、前記実装用金属膜及び当該実装用金属膜上の前記励振用の金属膜には、前記実装用金属膜の一部及び前記励振用の金属膜を分断し、前記耐半田金属膜が露出した分断溝が、前記圧電基板の前記一方の組の対向辺に沿う方向を横切るように形成されている。
【0024】
実装端子は、圧電基板の平面視略矩形の二組の対向辺の内の一方の組の対向辺に沿う方向の両端部に設けられており、この実施態様によれば、両端部の実装端子の実装用金属膜の一部及び励振用の金属膜は、分断溝によって前記対向辺に沿う方向を横切るように分断されることになる。したがって、平面視略矩形の圧電基板において、各端部の実装端子の実装用金属膜の一部及び励振用の金属膜は、耐半田金属膜が露出した分断溝を境界として、前記対向辺に沿う方向の外方寄りの領域と内方寄りの領域とに分断されることになる。
【0025】
これによって、実装端子の実装用金属膜や励振用の金属膜の外方寄りの領域に生じた半田食われが、内方寄りの領域へ広がるのを、耐半田金属膜が露出した分断溝によって抑制することができる。
【0026】
(7)本発明の更に他の実施態様では、前記樹脂製のフィルムは、前記分断溝を覆うように、前記圧電振動板に接合されている。
【0027】
この実施態様によれば、圧電振動板の実装端子の分断溝を覆うように、樹脂製のフィルムが接合されるので、実装端子を回路基板等に接合するための半田が、実装端子の分断溝内に入り込むのを防止することができ、半田食われの広がりを分断溝によって効果的に抑制することができる。
【0028】
(8)本発明の一実施態様では、前記圧電振動板は、前記圧電基板の両主面に前記第1,第2励振電極がそれぞれ形成された振動部と、該振動部に連結部を介して連結された外枠部とを有し、前記外枠部は、該外枠部よりも薄肉の前記振動部の外周を、間隔を空けて取り囲んでおり、前記フィルムは、その周端部が前記外枠部に接合されて、前記振動部を封止する。
【0029】
この実施態様によれば、振動部の外周を取り囲む外枠部に、フィルムの周端部を接合することによって、外枠部に接合されたフィルムに接触することなく、外枠部より薄肉の振動部を封止することができる。
【0030】
(9)本発明の他の実施態様では、前記外枠部の両主面の一方の主面には、前記第1励振電極と前記第1実装端子とを接続し、かつ前記振動部を取り囲むと共に、前記フィルムが接合される第1封止パターンが形成され、前記外枠部の前記両主面の他方の主面には、前記第2励振電極と前記第2実装端子とを接続し、かつ前記振動部を取り囲むと共に、前記フィルムが接合される第2封止パターンが形成されている。
【0031】
この実施態様によれば、外枠部の両主面にそれぞれ形成される第1,第2封止パターンによって、第1,第2励振電極と第1,第2実装端子とをそれぞれ電気的に接続できると共に、フィルムを、振動部を取り囲む第1,第2封止パターンにそれぞれ強固に接合して、振動部を封止することができる。
【0032】
(10)本発明の更に他の実施態様では、前記第1,第2実装端子は、前記外枠部の両主面にそれぞれ形成され、前記両主面の前記第1実装端子同士が接続されると共に、前記両主面の前記第2実装端子同士が接続されている。
【0033】
この実施態様によれば、両主面の各実装端子同士が電気的にそれぞれ接続されているので、当該圧電振動デバイスを、回路基板等に実装する場合に、両主面のいずれの面でも実装することができる。
【0034】
(11)本発明の好ましい実施態様では、前記耐半田金属膜が、Ni及びNi合金の少なくとも一方を含んでいる。
【0035】
この実施態様によれば、Ni及びNi合金の少なくとも一方を含む耐半田金属膜によって、半田食われが広がるのを抑制することができる。
【0036】
(12)本発明の圧電振動デバイスの製造方法は、平面視略矩形の圧電基板の両主面に形成された第1,第2励振電極、及び、前記圧電基板の前記平面視略矩形の二組の対向辺の内の一方の組の対向辺に沿う方向の両端部に、前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有する圧電振動板を製造するために圧電ウェハを予め準備し、前記圧電ウエハに、圧電基板の外形を複数形成する外形形成工程と、前記外形形成工程で形成された複数の圧電基板上に耐半田金属膜を含む実装用金属膜をパターニングして、前記第1,第2実装端子となる領域に前記実装用金属膜を形成する実装用金属膜形成工程と、前記実装用金属膜形成工程で実装用金属膜が形成された複数の前記圧電基板上及び前記実装用金属膜上に励振用の金属膜をパターニングして、前記第1,第2実装端子となる領域及び前記第1,第2励振電極となる領域に励振用の金属膜を形成して圧電振動板とする金属膜形成工程と、前記金属膜形成工程で励振用の金属膜が形成された複数の前記圧電振動板の両主面の少なくとも一方の主面に樹脂製のフィルムを接合して前記第1,第2励振電極の少なくとも一方の励振電極を封止する接合工程と、前記接合工程で前記フィルムが接合された各圧電振動板を個片化する個片化工程とを含み、前記金属膜形成工程では、前記第1,第2実装端子となる領域の前記実装用金属膜上に、前記第1,第2励振電極となる領域の励振用の金属膜にそれぞれ連続するように前記励振用の金属膜を形成する。
【0037】
本発明の圧電振動デバイスの製造方法によれば、実装用金属膜形成工程では、圧電基板上の第1,第2実装端子となる領域に実装用金属膜を形成し、金属膜形成工程では、圧電基板上及び耐半田金属膜上の第1,第2実装端子となる領域及び前記第1,第2励振電極となる領域に励振用の金属膜を形成すると共に、実装用金属膜上には、第1,第2励振電極となる領域の励振用の金属膜にそれぞれ連続するように励振用の金属膜を形成するので、第1,第2実装端子の実装用金属膜の耐半田金属膜によって、半田食われが広がるのを抑制して導通不良を防止することができる一方、励振用の金属膜の形成によって、第1,第2実装端子と第1,第2励振電極とをそれぞれ接続することができる。
【0038】
また、圧電振動板は、第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有するので、従来のように、実装端子を有する上面が開口した箱形のベース内に、圧電振動片を収納搭載する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0039】
更に、接合工程では、複数の前記圧電振動板の両主面の少なくとも一方の主面に樹脂製のフィルムを接合して封止するので、金属製やガラス製の蓋体で封止する構成に比べて、コストを低減することができる。
【0040】
(13)本発明の好ましい実施態様では、前記接合工程では、前記金属膜形成工程で励振用の金属膜が形成された複数の前記圧電振動板の両主面に、前記樹脂製のフィルムをそれぞれ接合して前記第1,第2励振電極をそれぞれ封止する。
【0041】
この実施態様によれば、圧電振動板の両主面に、樹脂製のフィルムをそれぞれ接合して封止するので、高価なベース及び蓋体が不要となり、一層コストを低減することができる。
【0042】
(14)本発明の一実施態様では、前記金属膜形成工程では、前記実装用金属膜及び当該実装用金属膜上に形成される励振用の金属膜に、前記実装用金属膜の一部及び前記励振用の金属膜を分断し、前記耐半田金属膜が露出した分断溝を、前記圧電基板の前記一方の組の対向辺に沿う方向を横切るように形成する。
【0043】
実装端子は、圧電基板の平面視略矩形の二組の対向辺の内の一方の組の対向辺に沿う方向の両端部に設けられており、この実施態様によれば、両端部の実装端子の実装用金属膜の一部及び励振用の金属膜は、耐半田金属膜が露出した分断溝によって前記対向辺に沿う方向を横切るように分断されることになる。したがって、平面視略矩形の圧電基板において、各端部の実装端子の実装用金属膜の一部及び励振用の金属膜は、分断溝を境界として、前記対向辺に沿う方向の外方寄りの領域と内方寄りの領域とに分断されることになる。
【0044】
これによって、実装端子の実装用金属膜や励振用の金属膜の外方寄りの領域に生じた半田食われが、内方寄りの領域へ広がるのを、耐半田金属膜が露出した分断溝によって抑制することができる。
【0045】
(15)本発明の更に他の実施態様では、前記接合工程では、前記樹脂製のフィルムを、前記分断溝を覆うように前記圧電振動板に接合する。
【0046】
この実施態様によれば、圧電振動板の実装端子の分断溝を覆うように、樹脂製のフィルムが接合されるので、実装端子を回路基板等に接合するための半田が、実装端子の分断溝内に入り込むのを防止することができ、半田食われの広がりを分断溝によって効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、半田等の接合材によって、回路基板等に接合される第1,第2実装端子は、耐半田金属膜を含む実装用金属膜を有しているので、実装用金属膜の耐半田金属膜によって、半田食われが広がるのを抑制して導通不良を防止することができる一方、第1,第2実装端子の実装用金属膜上には、第1,第2励振電極を構成する励振用の金属膜が、第1,第2励振電極にそれぞれ連続するように形成されているので、第1,第2実装端子を、第1,第2励振電極にそれぞれ接続することができる。
【0048】
また、圧電振動板は、第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有するので、従来のように、実装端子を有する上面が開口した箱形のベース内に、圧電振動片を収納搭載する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0049】
また、圧電振動板の両主面にそれぞれ接合される第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材は、樹脂製のフィルムであるので、金属製やガラス製の蓋体で封止する構成に比べて、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る水晶振動子の概略斜視図である。
【
図5】
図5は
図3を拡大した金属膜の構成を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は
図5の矩形のセクションAを拡大すると共に、上下を反転した断面図である。
【
図8】
図8は本発明の他の実施形態に係る水晶振動子を構成する水晶振動板の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この実施形態では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に適用して説明する。
【0052】
図1は、本発明の一実施形態に係る水晶振動子の概略斜視図であり、
図2は、その概略平面図であり、
図3は、
図2のA-A線に沿う概略断面図であり、
図4は、その概略底面図である。なお、
図3及び後述の
図5、
図6、
図7A~
図7Hでは、説明の便宜上、樹脂フィルムや金属膜の厚みを誇張して示している。
【0053】
この実施形態の水晶振動子1は、圧電振動板としてのATカットの水晶振動板2と、この水晶振動板2の表裏の両主面の一方の主面側を覆って封止する第1封止部材としての第1樹脂フィルム3と、水晶振動板2の他方の主面側を覆って封止する第2封止部材としての第2樹脂フィルム4とを備えている。
【0054】
この水晶振動子1は、直方体であって、平面視矩形である。この実施形態の水晶振動子1は、平面視で、例えば、1.2mm×1.0mmで、厚みは0.2mmであり、小型化及び低背化を図っている。
【0055】
なお、水晶振動子1のサイズは、上記に限定されるものではなく、これとは異なるサイズであっても適用可能である。
【0056】
次に、水晶振動子1を構成する水晶振動板2及び第1,第2樹脂フィルム3,4の各構成について説明する。
【0057】
この実施形態の水晶振動板2は、水晶板を水晶の結晶軸であるX軸の周りに35°15´回転させて加工したATカットの水晶板であり、回転した新たな軸をY´軸及びZ´軸という。ATカットの水晶板では、その表裏の両主面が、XZ´平面である。
【0058】
このXZ´平面において、平面視矩形の水晶振動板2の短辺方向(
図2,
図4の上下方向)がX軸方向となり、水晶振動板2の長辺方向(
図2,
図4の左右方向)がZ´軸方向となる。水晶振動板2の長辺方向(Z´軸方向)は、平面視矩形の水晶振動板2の二組の対向辺の内の一方の組の対向辺に沿う方向である。
【0059】
この水晶振動板2は、平面視が略矩形の振動部21と、この振動部21の周囲を、貫通部22を挟んで取り囲む外枠部23と、振動部21と外枠部23とを連結する連結部24とを備えている。振動部21、外枠部23及び連結部24は、一体的に形成されている。振動部21及び連結部24は、外枠部23に比べて薄く形成されている。すなわち、振動部21は、外枠部23に比べて薄肉である。この薄肉の振動部21を覆うように、第1,第2樹脂フィルム3,4の周縁部を、外枠部23に接合することによって、内部空間が形成されて封止される。
【0060】
この実施形態では、平面視が略矩形の振動部21を、その一つの角部に設けた一箇所の連結部24によって外枠部23に連結しているので、2箇所以上で連結する構成に比べて、振動部21に作用する応力を低減することができる。
【0061】
また、この実施形態では、連結部24は、外枠部23の内周のうちX軸方向に沿う一辺から突出し、かつ、Z´軸方向に沿って形成されている。水晶振動板2のZ´軸方向の両端部に形成された第1,第2実装端子27,28は、半田等によって回路基板等に直接接合される。このため、水晶振動子の長辺方向(Z´軸方向)に収縮応力が働き、当該応力が振動部に伝搬することにより水晶振動子の発振周波数が変化し易くなることが考えられる。
【0062】
これに対して、この実施形態では、前記収縮応力に沿う方向に連結部24が形成されているため、当該収縮応力が振動部21に伝搬するのを抑制することができる。その結果、水晶振動子1を回路基板に実装した際の発振周波数の変化を抑制することができる。
【0063】
振動部21の表裏の両主面には、一対の第1,第2励振電極25,26がそれぞれ形成されている。平面視矩形の水晶振動板2の長辺方向(
図2~
図4の左右方向)の両端部の外枠部23には、第1,第2励振電極25,26にそれぞれ接続された上記第1,第2実装端子27,28が、水晶振動板2の短辺方向(
図2,
図4の上下方向)に沿ってそれぞれ形成されている。各実装端子27,28は、当該水晶振動子1を、回路基板等に実装するための端子である。
【0064】
両主面の一方の主面では、
図2に示されるように、第1実装端子27は、後述の矩形環状の第1封止パターン201に連設され、他方の主面では、
図4に示されるように、第2実装端子28は、後述の矩形環状の第2封止パターン202に連設されている。
【0065】
このように第1,第2実装端子27,28は、振動部21を挟んで水晶振動板2の長辺方向(Z´軸方向)の両端部にそれぞれ形成されている。
【0066】
水晶振動板2の両主面の第1実装端子27同士、及び、第2実装端子28同士はそれぞれ電気的に接続されている。この実施形態では、両主面の第1実装端子27同士及び第2実装端子28同士は、水晶振動板2の対向する長辺側の側面を引き回された引き回し電極でそれぞれ電気的に接続されると共に、水晶振動板2の対向する短辺側の側面を引き回された引き回し電極でそれぞれ電気的に接続されている。
【0067】
水晶振動板2の表面側には、第1樹脂フィルム3が接合される第1封止パターン201が、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されている。この第1封止パターン201は、第1実装端子27に連なる接続部201aと、この接続部201aの両端部から水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部201b,201bと、水晶振動板2の短辺方向に沿って延出して前記各第1延出部201b,201bの延出端を接続する第2延出部201cとを備えている。第2延出部201cは、第1励振電極25から引出された第1引出し電極203に接続されている。したがって、第1実装端子27は、第1封止パターン201及び第1引出し電極203を介して第1励振電極25に電気的に接続されている。水晶振動板2の短辺方向に沿って延出する第2延出部201cと第2実装端子28との間には、電極が形成されていない無電極領域205aが設けられて、第1封止パターン201と第2実装端子28との絶縁が図られている。この無電極領域205aは、第1封止パターン201の第2延出部201cと第2実装端子28との間に、後述の絶縁溝36を構成している。
【0068】
水晶振動板2の裏面側には、
図4に示されるように、第2樹脂フィルム4が接合される第2封止パターン202が、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されている。この第2封止パターン202は、第2実装端子28に連なる接続部202aと、この接続部202aの両端部から水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部202b,202bと、水晶振動板2の短辺方向に沿って延出して、前記各第1延出部202b,202bの延出端を接続する第2延出部202cとを備えている。接続部202aは、第2励振電極26から引出された第2引出し電極204に接続されている。したがって、第2実装端子28は、第2封止パターン202及び第2引出し電極204を介して第2励振電極26に電気的に接続されている。水晶振動板2の短辺方向に沿って延出する第2延出部202cと第1実装端子27との間には、電極が形成されていない無電極領域206aが設けられて、第2封止パターン202と第1実装端子27との絶縁が図られている。この無電極領域206aは、第2封止パターン202の第2延出部202cと第1実装端子27との間に、後述の絶縁溝37を構成している。
【0069】
図2に示されるように、第1封止パターン201の、水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部201b,201bの幅は、前記長辺方向に沿って延びる外枠部23の幅より狭く、第1延出部201b,201bの幅方向(
図2の上下方向)の両側には、電極が形成されていない無電極領域205b,205b;207b,207bが設けられている。
【0070】
この第1延出部201b,201bの両側の無電極領域205b,205b;207b,207bの内、外側の無電極領域205b,205bは、一端側が第1実装端子27まで延びていると共に、他端側が第2実装端子28と第2延出部201cとの間の無電極領域205a(36)に連なっている。これによって、第1封止パターン201の接続部201a、第1延出部201b,201b、及び、第2延出部201cの外側は、略等しい幅の無電極領域によって囲まれている。この無電極領域は、水晶振動板2の短辺方向に沿って延びる接続部201aの一端の外側から一方の第1延出部201bに沿って延出し、その延出端から第2延出部201cに沿って延出し、その延出端から他方の第1延出部201bに沿って接続部201aの他端の外側まで延出している。
【0071】
第1封止パターン201の接続部201aの幅方向の内側には、無電極領域207aが形成されており、この無電極領域207aの両端は、第1延出部201b,201bの内側の無電極領域207b,207bに連なっている。第2延出部201cの幅方向の内側には、連結部24の第1引出し電極203を除いて無電極領域207cが形成されており、この無電極領域207cは、第1延出部201b,201bの内側の無電極領域207b,207bに連なっている。これによって、第1封止パターン201の接続部201a、第1延出部201b,201b、及び、第2延出部201cの幅方向の内側は、連結部24の第1引出し電極203を除いて平面視で矩形環状の略等しい幅の無電極領域207a,207b,207c,207bによって囲まれている。
【0072】
図4に示されるように、第2封止パターン202の、水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部202b,202bの幅は、前記長辺方向に沿って延びる外枠部23の幅より狭く、第1延出部202b,202bの幅方向(
図4の上下方向)の両側には、電極が形成されていない無電極領域206b,206b;208b,208bが設けられている。
【0073】
この第1延出部202b,202bの両側の無電極領域206b,206b;208b,208bの内、外側の無電極領域206b,206bは、一端側が第2実装端子28まで延びていると共に、他端側が第1実装端子27と第2延出部202cとの間の無電極領域206a(37)に連なっている。これによって、第2封止パターン202の接続部202a、第1延出部202b,202b、及び、第2延出部202cの外側は、略等しい幅の無電極領域によって囲まれている。この無電極領域は、水晶振動板2の短辺方向に沿って延びる接続部202aの一端の外側から一方の第1延出部202bに沿って延出し、その延出端から第2延出部202cに沿って延出し、その延出端から他方の第1延出部202bに沿って接続部201aの他端の外側まで延出している。
【0074】
第2封止パターン202の接続部202aの幅方向の内側には、連結部24の第2引出し電極204を除いて無電極領域208aが形成されており、この無電極領域208aの両端は、第1延出部202b,202bの内側の無電極領域208b,208bに連なっている。第2延出部202cの幅方向の内側には、無電極領域208cが形成されており、この無電極領域208cは、第1延出部202b,202bの内側の無電極領域208b,208bに連なっている。これによって、第2封止パターン202の接続部202a、第1延出部202b,202b、及び、第2延出部202cの幅方向の内側は、連結部24の第2引出し電極204を除いて平面視で矩形環状の略等しい幅の無電極領域208a,208b,208c,208bによって囲まれている。
【0075】
上記のように第1,第2封止パターン201,202の第1延出部201b,201b;202b,202bを、外枠部23の幅よりも狭くし、第1延出部201b,201b;202b,202bの幅方向の両側には、無電極領域205b,207b;206b,208bを設けていると共に、接続部201a,202a及び第2延出部201c,202cの幅方向の内側には、無電極領域207a,207c;208a,208cを設けている。前記無電極領域205b,207a,207b,207c;206b,208a,208b,208cは、スパッタリング時に外枠部23の側面に回り込んだ第1,第2封止パターン201,202を、フォトリソグラフィー技術によりパターニングし、これをメタルエッチングで除去することによって形成される。これにより、第1,第2封止パターン201,202が外枠部23の側面に回り込むことによる短絡を防止することができる。
【0076】
上記のように、両主面の第1実装端子27同士及び第2実装端子28同士は、電気的にそれぞれ接続されているので、当該水晶振動子1を、回路基板等に実装する際に、表裏の両主面のいずれの面でも実装することができる。
【0077】
水晶振動板2の表裏の両主面にそれぞれ接合されて水晶振動板2の振動部21をそれぞれ封止する第1,第2樹脂フィルム3,4は、矩形のフィルムである。この矩形の第1,第2樹脂フィルム3,4は、水晶振動板2の長手方向の両端部の第1,第2実装端子27,28を除く矩形の領域を覆うサイズであり、前記矩形の領域に接合される。
【0078】
この実施形態では、第1,第2樹脂フィルム3,4は、耐熱性の樹脂フィルム、例えば、ポリイミド樹脂製のフィルムであり、300℃程度の耐熱性を有している。このポリイミド樹脂製の第1,第2樹脂フィルム3,4は、透明であるが、後述の加熱圧着の条件によっては、不透明となる場合がある。なお、この第1,第2樹脂フィルム3,4は、透明、不透明、あるいは、半透明であってもよい。
【0079】
第1,第2樹脂フィルム3,4は、ポリイミド樹脂に限らず、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されるような樹脂、例えば、ポリアミド樹脂やポリエーテルエーテルケトン樹脂等を用いてもよい。
【0080】
第1,第2樹脂フィルム3,4は、表裏両面の全面に熱可塑性の接着層が形成されている。この第1,第2樹脂フィルム3,4は、その矩形の周端部が、水晶振動板2の表裏両主面の外枠部23に、振動部21を封止するように、例えば、熱プレスによってそれぞれ加熱圧着される。
【0081】
このように第1,第2樹脂フィルム3,4は、耐熱性の樹脂フィルムであるので、当該水晶振動子1を、回路基板等に半田実装する場合の半田リフロー処理の高温に耐えることができ、第1,第2樹脂フィルム3,4が変形等することがない。
【0082】
この実施形態では、水晶振動子1を、回路基板等に半田実装する場合に、第1,第2実装端子27,28に付着した半田に、第1,第2実装端子27,28を構成する積層金属膜のAuが拡散することによって生じる、いわゆる、半田食われによって、導通不良を生じるのを防止するために、次のように構成している。
【0083】
図5は、第1,第2励振電極25,26及び第1,第2実装端子27,28等の膜構成を示すために、上記
図3を拡大した概略断面図である。
図6は、
図5の矩形のセクションAを拡大した図であって、
図5の上下を反転させて水晶基板側である外枠部23を下方にした図であり、金属膜にハッチングを施している。
【0084】
各実装端子27,28は、水晶振動板2を構成する水晶基板上に形成された実装用金属膜13と、この実装用金属膜13上に形成された励振用の金属膜14とを備えている。
【0085】
この実施形態の実装用金属膜13は、下地膜としてのTi膜30と、耐半田金属膜であるNi・Ti合金膜31と、半田濡れ性を向上させるAu膜32とを有している。耐半田金属膜は、Ni・Ti合金膜31に限らず、他の金属膜、例えば、Ni膜としてもよい。
【0086】
実装用金属膜13上の励振用の金属膜14は、Ti膜33と、Au膜34と、Ti膜35とを有している。この励振用の金属膜14のTi膜33,35を、他の金属膜、例えば、Cr膜としてもよい。
【0087】
第1,第2実装端子27,28の実装用金属膜13上の励振用の金属膜14の最上層は、Ti膜35であるので、Au膜34が最上層である場合に比べて、第1,第2樹脂フィルム3,4との接合強度が向上する。
【0088】
励振用の金属膜14は、第1,第2励振電極25,26と同じ膜構成であり、第1,第2実装端子27,28の実装用金属膜13上の励振用の金属膜14は、第1,第2励振電極を構成する励振用の金属膜14に、それぞれ連続するように形成されている。
【0089】
したがって、第1実装端子27と第1励振電極25とを電気的に接続する第1引出し電極203及び第1封止パターン201も励振用の金属膜14で構成されている。同様に、第2実装端子28と第2励振電極26とを電気的に接続する第2引出し電極204及び第2封止パターン202も励振用の金属膜14で構成されている。
【0090】
水晶振動板2の両主面の一方の主面である表面側には、第1封止パターン201と第2実装端子28とを絶縁するための上記の無電極領域205aを構成する絶縁溝36が形成されており、水晶振動板2の他方の主面である裏面側には、第2封止パターン202と第1実装端子27とを絶縁するための上記の無電極領域206aを構成する絶縁溝37が形成されている。
【0091】
裏面側の絶縁溝37(206a)に表裏で対応する位置の第1実装端子27には、第1実装端子27の実装用金属膜13の一部であるAu膜32及び実装用金属膜13上の励振用の金属膜14を、水晶振動板2の長辺方向(
図5の左右方向)で内外に分断して耐半田金属膜であるNi・Ti合金膜31を露出させる分断溝38が形成されている。同様に、表面側の絶縁溝36(205a)に表裏で対応する位置の第2実装端子28には、第1実装端子28の実装用金属膜13の一部であるAu膜32及び実装用金属膜13上の励振用の金属膜14を、水晶振動板2の長辺方向(
図5,
図6の左右方向)で内外に分断して耐半田金属膜であるNi・Ti合金膜31を露出させる分断溝39が形成されている。
【0092】
分断溝38,39は、
図2,
図4に示されるように、水晶振動板2の長辺方向を横切るように、この例では、前記長辺方向に直交するように形成されている。
【0093】
分断溝38は、
図5に示すように、第1実装端子27の実装用金属膜13のAu膜32及び励振用の金属膜14を、外方寄りの領域、すなわち、前記長辺方向の一方の端縁寄りの領域(
図5の左方寄りの領域)と、内方寄りの領域、すなわち、振動部21寄りの領域(
図5の右方寄りの領域)とに分断している。同様に、分断溝39は、第2実装端子28の実装用金属膜13のAu膜32及び励振用の金属膜14を、外方寄りの領域、すなわち、前記長辺方向の他方の端縁寄りの領域(
図5の右方寄りの領域)と、内方寄りの領域、すなわち、振動部21寄りの領域(
図5の左方寄りの領域)とに分断している。したがって、第1,第2実装端子27,28の実装用金属膜13のAu膜32及び励振用の金属膜14は、耐半田金属膜であるNi・Ti合金膜31が露出した分断溝38,39によって外方寄りの領域と内方寄りの領域とにそれぞれ分断されている。
【0094】
これによって、第1,第2実装端子27,28の外方寄りの領域の実装用金属膜13のAu膜32や励振用の金属膜14のAu膜34の半田食われが生じても、耐半田金属膜であるNi・Ti合金膜31が露出した分断溝38,39によって、半田食われが、分断溝38,39よりも振動部21側である内方の領域へ広がるのを抑制することができる。
【0095】
また、第1,第2実装端子27,28は、絶縁溝36(205a),37(206a)によって、内方の金属膜と完全に分離されているので、第1,第2実装端子27,28の実装用金属膜13のAu膜32や励振用の金属膜14のAu膜34の半田食われが生じても、振動部21側である内方へ半田食われが広がるのを防止することができる。
【0096】
更に、第1,第2樹脂フィルム3,4は、表裏で対応する位置にある絶縁溝36(205a),37(206a)及び分断溝38,39をそれぞれ覆うように、水晶振動板2の表裏の両主面にそれぞれ接合されるので、半田が、絶縁溝36(205a),37(206a)や分断溝38,39の内部に浸入することがない。これによって、絶縁溝36(205a),37(206a)や分断溝38,39内における半田食われを防止することができる。
【0097】
次に、この実施形態の水晶振動子1の製造方法について説明する。
【0098】
図7A~
図7Hは、水晶振動子1を製造する工程を示す概略断面図であり、ウェハ状態の一部を示している。
【0099】
先ず、
図7Aに示される加工前の水晶ウェハ(ATカット水晶板)5を準備する。この水晶ウェハ5に対して、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、例えば、ウェットエッチングを行って、
図7Bに示すように、複数の水晶基板部分2a及びそれらを支持するフレーム部分(図示せず)等の外形を形成し、更に、水晶基板部分2aに、外枠部23aや、外枠部23aよりも薄肉の振動部21a等の外形を形成する、すなわち、外形形成工程を行う。
【0100】
次に、
図7Cに示すように、スパッタリング技術または蒸着技術、およびフォトリソグラフィー技術によって、水晶基板部分2aの全面に、耐半田金属膜であるNi・Ti合金膜30を含む実装用金属膜13を形成する。
【0101】
更に、
図7Dに示すように、第1,第2実装端子27a,28a以外の振動部21a及び絶縁溝36a,37a等の不要な部分の金属膜を除去する実装用金属膜13のパターニングを行う実装用金属膜形成工程を実施する。
【0102】
次に、
図7Eに示すように、スパッタリング技術または蒸着技術、およびフォトリソグラフィー技術によって、水晶基板部分2aの全面に、励振用の金属膜14を形成する。
【0103】
更に、
図7Fに示すように、励振用の金属膜14の不要部分を除去する励振用の金属膜14のパターニングを行い、絶縁溝36,37及び分断溝38,39を形成して水晶振動板とする金属膜形成工程を行う。
【0104】
この実施形態では、更に、
図7Gに示されるように、水晶基板部分2aの表裏の両主面を、連続した樹脂フィルム3a,4aでそれぞれ覆うように、樹脂フィルム3a,4aを加熱圧着し、各水晶基板部分2aの各振動部21aを封止する接合工程を行う。
【0105】
この樹脂フィルム3a,4aによる各振動部21aの封止は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行われる。
【0106】
次に、
図7Hに示すように、各水晶振動板2にそれぞれ対応するように、連続した各樹脂フィルム3a,4aを、第1,第2実装端子27,28の一部が露出するように切断して不要部分を除去し、各水晶振動板2を分離して個片化する個片化工程を行う。
【0107】
これによって、
図1,
図5等に示される水晶振動子1が複数得られる。
【0108】
以上のように本実施形態によれば、半田によって、回路基板等に接合される第1,第2実装端子27,28は、耐半田金属膜であるNi・Ti合金膜31を含む実装用金属膜13を有しているので、実装用金属膜13のAu膜32や実装用金属膜13上の励振用の金属膜14のAu膜34が半田に拡散することによって生じる、いわゆる、半田食われが生じても、Ni・Ti合金膜31によって半田食われが広がるのを抑制することができ、導通不良が生じるのを防止することができる。
【0109】
また、第1,第2実装端子27,28の実装用金属膜13及び該実装用金属膜13上の励振用の金属膜14には、実装用金属膜13のAu膜32及び励振用の金属膜14を分断し、耐半田金属膜であるNi・Ti合金膜31が露出した分断溝38,39が、水晶振動板2の長辺方向を直角に横切るように形成されているので、各実装端子27,28の実装用金属膜13のAu膜32及び励振用の金属膜14は、前記長辺方向の各端縁寄りである外方寄りの領域と、振動部21寄りである内方寄りの領域とに分断されている。
【0110】
これによって、第1,第2実装端子27,28の外方寄りの領域の実装用金属膜13のAu膜32や励振用の金属膜14のAu膜34の半田食われが生じても、耐半田金属膜であるNi・Ti合金膜31が露出した分断溝38,39によって、半田食われが、分断溝38,39よりも振動部21側である内方の領域へ広がるのを抑制することができる。
【0111】
更に、第1,第2樹脂フィルム3,4は、分断溝38,39をそれぞれ覆うように、水晶振動板2の表裏の両主面にそれぞれ接合されるので、半田が、分断溝38,39の内部に浸入するのを防止することができるので、半田食われが、分断溝38,39内で広がるのを防止することができる。
【0112】
また、水晶振動板2は、第1,第2励振電極25,26にそれぞれ接続された第1,第2実装端子27,28を有するので、従来のように、実装端子を有する上面が開口したセラミック等の絶縁材料からなる箱形のベース内に、圧電振動片を収納搭載する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0113】
更に、水晶振動板2の表裏の両主面に、第1,第2樹脂フィルム3,4をそれぞれ接合して第1,第2励振電極25,26を封止するので、従来のように、上面が開口した箱形のベース内に圧電振動片を収納搭載し、ベースの開口を気密に封止する蓋体が不要となり、一層コストを低減することができると共に、従来例に比べて、薄型化(低背化)を図ることができる。
【0114】
本実施形態の水晶振動子1では、第1,第2樹脂フィルム3,4によって振動部21を封止しているので、ベースに金属製やガラス製の蓋体を接合して気密に封止する従来例に比べて気密性が劣り、水晶振動子1の共振周波数の経年変化が生じ易い。
【0115】
しかし、例えば、近距離無線通信用途のうちBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)等では、周波数偏差等の規格が比較的緩やかであるので、かかる用途では、樹脂フィルムで封止した安価な水晶振動子1を使用することが可能である。
【0116】
上記実施形態では、分断溝38,39は、水晶振動板2の長辺方向を直角に横切るように形成したが、直角に限らず、水晶振動板2の長辺方向を斜めに横切るように形成してもよく、また、分断溝38,39は、直線状に限らず、曲線状であってもよい。
【0117】
本発明の他の実施形態として、分断溝38,39は省略してもよい。
【0118】
上記実施形態では、連結部24は平面視が略矩形の振動部21の一つの角部に一箇所、設けられていたが、連結部24の形成位置や形成数はこの限りではない。さらに連結部24の幅は一定でなくてもよい。
【0119】
また、貫通部を有することなく、振動部を薄く、その周辺部を厚くした逆メサ型の水晶振動板に適用してもよい。
【0120】
上記実施形態では、水晶振動板2の両主面に、第1,第2樹脂フィルム3,4を接合して、振動部21を封止したが、水晶振動板2の一方の主面のみに樹脂フィルムを接合し、他方の主面には、従来の蓋体を接合して振動部21を封止してもよい。この場合、蓋体が接合される側の主面の最上層のTi膜35は、省略してもよい。
【0121】
上記実施形態では、両主面の第1実装端子27同士及び第2実装端子28同士は、水晶振動板2の側面や端面の引き回し電極を介して電気的に接続されたが、両主面を貫通する貫通電極を介して電気的に接続されるようにしてもよく、あるいは、側面や端面の引き回し電極を介して電気的に接続されると共に、貫通電極を介して電気的に接続されるようにしてもよい。
【0122】
上記実施形態では、水晶振動板2の両主面の一方の主面には、
図2に示すように、第1封止パターン201が、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成され、水晶振動板2の両主面の他方の主面には、
図4に示すように、第2封止パターン202が、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されたが、矩形環状の第1,第2封止パターン201,202を省略してもよい。
【0123】
図8及び
図9は、第1,第2封止パターン201,202を省略した水晶振動板2
1の概略平面図及び概略底面図である。
【0124】
この水晶振動板2
1では、第1実装端子27は、
図8に示されるように、引き回し電極209及び第1引出し電極203を介して第1励振電極25に電気的に接続されている。
【0125】
第2実装端子28は、
図9に示されるように、第2引出し電極204が延長されて第2励振電極26に電気的に接続されている。
【0126】
引き回し電極209と第1実装端子27との接続部、及び、延長された第2引出し電極204と第2実装端子28との接続部には、分離溝381,391がそれぞれ形成されている。
【0127】
その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0128】
なお、矩形環状の第1,第2封止パターン201,202を省略した水晶振動板21では、樹脂フィルムとして、感光性の樹脂フィルムを使用してもよい。
【0129】
例えば、上記
図7Gに示されるように、複数の水晶振動板2
1がマトリクス状に配列支持された水晶ウェハを準備し、この水晶ウェハの両主面に、感光性の樹脂フィルムをそれぞれ貼り付け、感光性の樹脂フィルムを、露光及び現像して、水晶振動板2
1の第1,第2励振電極をそれぞれ覆うと共に、不要部分を除去するパターニング及び、硬化を行い、その後、水晶ウェハを各水晶振動板に個片化するようにしてもよい。
【0130】
水晶振動板は、平面視略矩形であればよく、上記のような平面視矩形に限らず、例えば、水晶振動板の角部を面取りした形状、あるいは、水晶振動板の周縁部を厚み方向に切欠き、切欠き部に電極が被着されてなるキャスタレーション等が形成された形状であってもよい。
【0131】
本発明は、水晶振動子等の圧電振動子に限らず、圧電発振器等の他の圧電振動デバイスに適用してもよい。
【符号の説明】
【0132】
1 水晶振動子
2 水晶振動板
3 第1樹脂フィルム
4 第2樹脂フィルム
5 水晶ウェハ
13 実装用金属膜
14 励振用の金属膜
21 振動部
23 外枠部
24 連結部
25 第1励振電極
26 第2励振電極
27 第1実装端子
28 第2実装端子
30,33,35 Ti膜
31 Ni・Ti合金膜(耐半田金属膜)
32,34 Au膜
38,39 分断溝
201 第1封止パターン
202 第2封止パターン