IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 戸田工業株式会社の特許一覧

特許7528956モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板
<>
  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図1
  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図2
  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図3
  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図4
  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図5
  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図6
  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図7
  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図8
  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図9
  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20240730BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20240730BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240730BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01Q1/38
H05K3/46 Z
H01Q1/24 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021562660
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044698
(87)【国際公開番号】W WO2021112086
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2019219050
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香嶋 純
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180021(JP,A)
【文献】特開2016-34153(JP,A)
【文献】特開2015-159617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/00
H01Q 1/38
H05K 3/46
H01Q 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に接続された第1,第2コイルを備え、
前記第1コイルを渦巻状の第1アンテナコイルパターンおよび第2アンテナコイルパターンが直列に層間接続されたパターンで構成し、
前記第2コイルを渦巻状の第3アンテナコイルパターンおよび第4アンテナコイルパターンが直列に層間接続されたパターンで構成し、
前記第1アンテナコイルパターン、前記第3アンテナコイルパターン、前記第2アンテナコイルパターン、及び前記第4アンテナコイルパターンの順に配置し、
前記第1~第4アンテナコイルパターンを、該第1~第4アンテナコイルパターンを流れる電流の向きが、コイルの軸に対して全て同じ向きとなるよう回巻し、コイルの径方向に対して、前記第1,第3アンテナコイルパターンの電流の向きが同一方向となるように回巻するとともに、前記第2,第4アンテナコイルパターンの電流の向きが第1,第3アンテナコイルパターンと逆方向となるように回巻したことを特徴とするモジュール基板用アンテナ。
【請求項2】
前記第1アンテナコイルパターン、前記第3アンテナコイルパターン、前記第2アンテナコイルパターン、及び前記第4アンテナコイルパターンの順に配置されることにより構成された前記第1、第2コイルが複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のモジュール基板用アンテナ。
【請求項3】
前記第1,第2コイルに並列に接続された第3コイルを更に備え、
前記第3コイルを渦巻状の第5アンテナコイルパターンおよび第6アンテナコイルパターンが直列に層間接続されたパターンで構成し、
前記第1アンテナコイルパターン、前記第3アンテナコイルパターン、前記第5アンテナコイルパターン、前記第2アンテナコイルパターン、前記第4アンテナコイルパターン、及び前記第6アンテナコイルパターンの順に配置し、
前記第1~第6アンテナコイルパターンを、該第1~第6アンテナコイルパターンを流れる電流の向きが、コイルの軸に対して全て同じ向きとなるよう回巻し、コイルの径方向に対して、前記第1,第3,第5アンテナコイルパターンの電流の向きが同一方向となるように回巻するとともに、前記第2,第4,第6アンテナコイルパターンの電流の向きが前記第1,第3,第5アンテナコイルパターンと逆方向になるように回巻したことを特徴とする請求項1に記載のモジュール基板用アンテナ。
【請求項4】
前記第1アンテナコイルパターン、前記第3アンテナコイルパターン、前記第5アンテナコイルパターン、前記第2アンテナコイルパターン、前記第4アンテナコイルパターン、及び前記第6アンテナコイルパターンの順で配置されることにより構成された前記第1~第3コイルが複数設けられていることを特徴とする請求項3に記載のモジュール基板用アンテナ。
【請求項5】
前記第1~第3コイルに並列に接続された第4コイルを更に備え、
前記第4コイルを渦巻状の第7アンテナコイルパターンおよび第8アンテナコイルパターンが直列に層間接続されたパターンで構成し、
前記第1アンテナコイルパターン、前記第3アンテナコイルパターン、前記第5アンテナコイルパターン、前記第7アンテナコイルパターン、前記第2アンテナコイルパターン、前記第4アンテナコイルパターン、前記第6アンテナコイルパターン、及び前記第8アンテナコイルパターンの順に配置し、
前記第1~第8アンテナコイルパターンを、該第1~第8アンテナコイルパターンを流れる電流の向きが、コイルの軸に対して全て同じ向きとなるよう回巻し、コイルの径方向に対して、前記第1,第3,第5,第7アンテナコイルパターンの電流の向きが同一方向となるように回巻するとともに、前記第2,第4,第6,第8アンテナコイルパターンの電流の向きが前記第1,第3,第5,第7アンテナコイルパターンと逆方向になるように回巻したことを特徴とする請求項3に記載のモジュール基板用アンテナ。
【請求項6】
前記第1アンテナコイルパターン、前記第3アンテナコイルパターン、前記第5アンテナコイルパターン、前記第7アンテナコイルパターン、前記第2アンテナコイルパターン、前記第4アンテナコイルパターン、前記第6アンテナコイルパターン、及び前記第8アンテナコイルパターンの順で配置されることにより構成された前記第1~第4コイルが複数設けられていることを特徴とする請求項5に記載のモジュール基板用アンテナ。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のモジュール基板用アンテナを備えることを特徴とするモジュール基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ等が実装され、無線通信用モジュールとして機能するモジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で信号の授受を行うICモジュール(非接触型のICタグやICカード)が普及し始めている。このICモジュールは、絶縁性基板の表面に導体配線が形成されたアンテナ用の配線を備えており、このアンテナ配線により、非接触による信号の授受を行うことができる。
【0003】
例えば、それぞれ大きさ(平面視の外寸)の異なる3つのコイルが絶縁基板の内部に設けられ、これらの3つのコイルが絶縁層の積層方向において互いに重なるように配置されたモジュール基板用アンテナが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-166160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のモジュール基板用アンテナにおいては、各コイルを大きさの異なるものにする必要があり、コイルパターンの巻回数や面積に制約があるため、全てのコイルのインダクタンスを最大限に大きくすることができず、結果として、コイルの合成インダクタンスを大きくすることが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題に加え、アンテナコイルの寄生容量を抑制することにより、さらにコイルの合成インダクタンスを大きくすることができるモジュール基板用アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のモジュール基板用アンテナは、並列に接続された第1、第2コイルを備え、第1コイルを渦巻状の第1アンテナコイルパターンおよび第2アンテナコイルパターンが直列に層間接続されたパターンで構成し、第2コイルを渦巻状の第3アンテナコイルパターンおよび第4アンテナコイルパターンが直列に層間接続されたパターンで構成し、第1アンテナコイルパターン、第3アンテナコイルパターン、第2アンテナコイルパターン、及び第4アンテナコイルパターンの順に配置し、第1~第4アンテナコイルパターンを、第1~第4アンテナコイルパターンを流れる電流の向きが、コイルの軸に対して全て同じ向きとなるよう回巻し、コイルの径方向に対して、第1,第3アンテナコイルパターンの電流の向きが同一方向となるように回巻するとともに、第2,第4アンテナコイルパターンの電流の向きが第1,第3アンテナコイルパターンと逆方向となるように回巻したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモジュール基板用アンテナによれば、アンテナコイルの寄生容量を抑制して、コイルの合成インダクタンスを大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。
図2】第1の実施形態に係るモジュール基板を構成するアンテナパターンを説明するための平面図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。
図4】第2アンテナコイルパターンの巻き終わり領域を示す平面図である。
図5】第1アンテナコイルパターンの巻き始め領域を示す平面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係るモジュール基板を構成するアンテナパターンを説明するための平面図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。
図9】本発明の第4の実施形態に係るモジュール基板を構成するアンテナパターンを説明するための平面図である。
図10】変形例に係るモジュール基板の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図であり、図2は、本実施形態に係るモジュール基板を構成するアンテナパターンを説明するための平面図である。
【0012】
図1に示すように、モジュール基板1は、複数(本実施形態においては4層)の絶縁層3~6が積層された積層体2と、積層体2における最上層側に設けられたIC搭載用の絶縁層9と、積層体2における最下層側に設けられた絶縁層11とを備えている。
【0013】
絶縁層3~6は、例えば、非磁性体フェライトからなる非磁性体材料により形成されており、これらの絶縁層3~6が積層されることにより、積層体2が形成されている。
【0014】
非磁性体フェライトの主成分としては、例えば、Zn系フェライトの粉体を用いることができ、これらの成分の組成比は、Feが40.0~50.0モル%、ZnOが35.0~50.0モル%、及びCuOが5~20モル%であることが好ましい。
【0015】
また、各絶縁層3~6の厚みは、特に限定されないが、グリーンシートによる積層セラミック工法を行う場合には、20μm~100μmが好ましい。
【0016】
また、図1に示すように、積層体2における最上層の絶縁層3のIC搭載面側には、IC搭載用の絶縁層9が設けられており、この絶縁層9の外表面9aにIC搭載用電極12が設けられている。なお、絶縁層9は、上述の絶縁層3~6と同様に、例えば、非磁性体フェライトからなる非磁性体材料により形成することができる。
【0017】
また、図1に示すように、複数の絶縁層3~6の各々の表面には第1アンテナコイルパターン3a、第2アンテナコイルパターン5a、第3アンテナコイルパターン4a、及び第4アンテナコイルパターン6aが設けられている。この第1~第4アンテナコイルパターン3a~6aは、導電性材料により形成されており、矩形状に渦巻きされたアンテナパターンにより形成されている。
【0018】
また、図1に示すように、第1アンテナコイルパターン3aと第2アンテナコイルパターン5aにより第1コイル7が構成され、第1アンテナコイルパターン3aと第2アンテナコイルパターン5aは、直列に層間接続されている。
【0019】
また、同様に、第3アンテナコイルパターン4aと第4アンテナコイルパターン6aにより第2コイル8構成され、第3アンテナコイルパターン4aと第4アンテナコイルパターン6aは、直列に層間接続されている。
【0020】
また、図1に示すように、第1コイル7と第2コイル8は並列に接続される構成となっている。
【0021】
ここで、本実施形態においては、図1に示すように、積層体2において、第1~第4アンテナコイルパターン3a~6aが、第1アンテナコイルパターン3a、第3アンテナコイルパターン4a、第2アンテナコイルパターン5a、及び第4アンテナコイルパターン6aの順に配置されている点に特徴がある。
【0022】
従って、第1アンテナコイルパターン3aと第2アンテナコイルパターン5aの間に第3アンテナコイルパターン4aが配置され、第3アンテナコイルパターン4aと第4アンテナコイルパターン6aの間に第2アンテナコイルパターン5aが配置されることになり、直列コイルの層間に別の直列コイルの層が挟まれることになるため、直列コイルの層間を2倍に広くすることができる。その結果、1つの直列コイルの寄生容量を1/2にすることができるため、並列に接続された第1、第2コイル7,8の合成インダクタンスを大きくすることができる。
【0023】
また、図1に示すように、積層体2における最下層の絶縁層6側には、取り回し配線用の絶縁層11が設けられており、この絶縁層11の表面に、第1コイル7の端と第2コイル8の端を並列に接続するとともに、スルーホールを経由して、第1コイル7と第2コイル8をIC搭載用電極12に接続するための取り回し配線16が設けられている。
【0024】
絶縁層11は、上述の絶縁層3~6と同様に、例えば、非磁性体フェライトからなる非磁性体材料により形成することができる。また、取り回し配線16を形成する材料は、特に限定されず、例えば、上述のアンテナコイルパターン3a~6aを形成する導電材料を使用することができる。
【0025】
また、絶縁層3~6には、絶縁層3~6を厚み方向に貫通する層間接続導体12a,12bが設けられており、第1アンテナコイルパターン3aと第2アンテナコイルパターン5aが層間接続導体12aを介して電気的に接続されるとともに、第3アンテナコイルパターン4aと第4アンテナコイルパターン6aが層間接続導体12bを介して電気的に接続されている。
【0026】
また、絶縁層3~6、及び絶縁層9,11には、絶縁層3~6、及び絶縁層9,11を厚み方向に貫通する層間接続導体22aが設けられており、取り回し配線16は、層間接続導体22aを介して、IC搭載用電極12に電気的に接続されている。また、第1アンテナコイルパターン3aと第3アンテナコイルパターン4aは層間接続導体22bを介して、IC搭載用電極12に電気的に接続されており、第2アンテナコイルパターン5aと第4アンテナコイルパターン6aは層間接続導体22c~22dを介して、取り回し配線16に電気的に接続されている。
【0027】
なお、第1~第4アンテナコイルパターン3a~6a、及び層間接続導体12a~12b,20a~20dを形成する材料は、特に限定されず、例えば、銀、銅等を使用することができる。
【0028】
そして、本実施形態においては、上述のごとく、第1アンテナコイルパターン3aと第2アンテナコイルパターン5aが直列に層間接続され、第3アンテナコイルパターン4aと第4アンテナコイルパターン6aが直列に層間接続されているが、各直列コイルの端の層(即ち、第1アンテナコイルパターン3aと第3アンテナコイルパターン4a、及び第2アンテナコイルパターン5aと第4アンテナコイルパターン6a)が近接しているため、図1に示すように、第1コイル7と第2コイル8を並列に接続するための取り回し配線16を短くすることができる。従って、接続配線に生じる寄生容量を抑制することができる。
【0029】
また、図2に示すように、第1~第4アンテナコイルパターン3a~6aを流れる電流の向き(図中の矢印の向き)が、コイルの軸に対して全て同じ向き(即ち、全て時計回り)となるように第1~第4アンテナコイルパターン3a~6aを回巻し、コイルの径方向に対して第1,第3アンテナコイルパターン3a,4aの電流の向きが同一方向(即ち、平面視において、内側から外側)となるように回巻するとともに、第2,第4アンテナコイルパターン5a,6aの電流の向きが第1,第3アンテナコイルパターン3a,4aと逆方向(即ち、平面視において、外側から内側)となるように回巻している。
【0030】
従って、それぞれのコイルパターンから発生する磁界が互いに干渉しないため、インダクタンスが低下することがなく、アンテナの交信感度を高くすることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。なお、上記第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図3に示すように、本実施形態のモジュール基板20においては、上述の、第1アンテナコイルパターン3a、第3アンテナコイルパターン4a、第2アンテナコイルパターン5a、及び第4アンテナコイルパターン6aの順に配置されることにより構成された第1、第2コイル7,8が複数(本実施形態においては各2個)設けられている点に特徴がある。
【0033】
そして、このような構成により、上述の第1の実施形態において説明した効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
【0034】
即ち、第1コイル7が直列に層間接続された第1アンテナコイルパターン3aと第2アンテナコイルパターン5aの繰り返しであり、第2コイル8が直列に層間接続された第3アンテナコイルパターン4aと第4アンテナコイルパターン6aの繰り返しであるため、図3に示すように、第1アンテナコイルパターン3aの巻き始め3bと第2アンテナコイルパターン5aの巻き終わり5bを揃えることができるとともに、第3アンテナコイルパターン4aの巻き始め4bと第4アンテナコイルパターン6aの巻き終わり6bを揃えることができる。
【0035】
従って、絶縁層3~6において、配線可能な範囲を最大限利用することができるため、第1~第4アンテナコイルパターン3a~6aの巻き数を多くすることができ、結果として、並列に接続された第1,第2コイル7,8の合成インダクタンスを大きくすることが可能になる。
【0036】
また、第1アンテナコイルパターン3aの巻き始め3bと第2アンテナコイルパターン5aの巻き終わり5bを揃えることができるとともに、第3アンテナコイルパターン4aの巻き始め4bと第4アンテナコイルパターン6aの巻き終わり6bを揃えることができるため、層間接続導体12a~12bを短くすることができる。その結果、層間接続導体12a~12bに生じる寄生容量を抑止することが可能になる。
【0037】
なお、「第1アンテナコイルパターン3aの巻き始め3bと第2アンテナコイルパターン5aの巻き終わり5bが揃う」とは、図4図5に示す平面視において、第1アンテナコイルパターン3aの巻き始め領域3cの一部と第2アンテナコイルパターン5aの巻き終わり領域5cの一部が重畳する状態を言い、平面視において、第1アンテナコイルパターン3aの巻き始め3bと第2アンテナコイルパターン5aの巻き終わり5bが重畳している状態に限られない。
【0038】
コイルの軸における巻き始め領域3cと巻き終わり領域5cの長さは特に限定されないが、コイルの一周分の長さの4分の1以下が好ましい。
【0039】
また、「第3アンテナコイルパターン4aの巻き始め4bと第4アンテナコイルパターン6aの巻き終わり6bが揃う」についても、上述の「第1アンテナコイルパターン3aの巻き始め3bと第2アンテナコイルパターン5aの巻き終わり5bが揃う」と同様に、平面視において、第3アンテナコイルパターン4aの巻き始め領域の一部と第4アンテナコイルパターン6aの巻き終わり領域の一部が重畳する状態を言い、平面視において、第3アンテナコイルパターン4aの巻き始め4bと第4アンテナコイルパターン6aの巻き終わり6bが重畳している状態に限られない。
【0040】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図6は、本発明の第3の実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。なお、上記実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、本実施形態のモジュール基板30においては、上述の第1の実施形態における第1コイル7と第2コイル8に加えて、第5アンテナコイルパターン13aと第6アンテナコイルパターン14aにより構成された第3コイル15が設けられている。
【0042】
より具体的には、絶縁層4,5の間に絶縁層13が設けられ、当該絶縁層13の表面に第5アンテナコイルパターン13aが設けられている。また、絶縁層6と絶縁層11との間に絶縁層14が設けられ、当該絶縁層14の表面に第6アンテナコイルパターン14aが設けられている。
【0043】
絶縁層13,14は、例えば、上述の非磁性体フェライトからなる非磁性体材料により形成されている。
【0044】
また、第5~第6アンテナコイルパターン13a~14aは、上述の第1~第4アンテナコイルパターン3a~6aと同様に、導電性材料により形成されており、矩形状に渦巻きされたアンテナパターンにより形成されている。
【0045】
そして、モジュール基板30は、複数(本実施形態においては6層)の絶縁層3~6,13~14が積層された積層体2を備えており、第3コイル15は、第1、第2コイル7,8に並列に接続されている。
【0046】
ここで、本実施形態においては、図6に示すように、積層体2において、第1アンテナコイルパターン3a、第3アンテナコイルパターン4a、第5アンテナコイルパターン13a、第2アンテナコイルパターン5a、第4アンテナコイルパターン6a、及び第6アンテナコイルパターン14aの順に配置されている点に特徴がある。
【0047】
従って、第1アンテナコイルパターン3aと第2アンテナコイルパターン5aの間に第3アンテナコイルパターン4aと第5アンテナコイルパターン13aが配置され、第3アンテナコイルパターン4aと第4アンテナコイルパターン6aの間に第5アンテナコイルパターン13aと第2アンテナコイルパターン5aが配置され、第5アンテナコイルパターン13aと第6アンテナコイルパターン14aの間に第2アンテナコイルパターン5aと第4アンテナコイルパターン6aが配置され、直列コイルの層間に別の直列コイルの層を挟むことになる。従って、直列コイルの層間を3倍広くすることができるため、1つの直列コイルの寄生容量を1/3にすることができる。その結果、並列に接続された第1,第2,第3コイル7,8,15の合成インダクタンスを大きくすることができる。
【0048】
また、積層体2には、層間接続導体12cが設けられており、第5アンテナコイルパターン13aと第6アンテナコイルパターン14aは、層間接続導体12cを介して電気的に接続されている。
【0049】
また、モジュール基板30には、層間接続導体22eが設けられており、第6アンテナコイルパターン14aは層間接続導体22eを介して、取り回し配線16に電気的に接続されている。
【0050】
なお、アンテナコイルパターン13a~14a、及び層間接続導体22d,22eを形成する材料は、特に限定されず、例えば、銀、銅等を使用することができる。
【0051】
そして、本実施形態においては、上述のごとく、第1アンテナコイルパターン3aと第2アンテナコイルパターン5aが直列に層間接続され、第3アンテナコイルパターン4aと第4アンテナコイルパターン6aが直列に層間接続され、第5アンテナコイルパターン13aと第6アンテナコイルパターン14aが直列に層間接続されているが、各直列コイルの端の層(即ち、第1アンテナコイルパターン3aと第3アンテナコイルパターン4aと第5アンテナコイルパターン13a、及び第2アンテナコイルパターン5aと第4アンテナコイルパターン6aと第6アンテナコイルパターン14a)が近接しているため、図6に示すように、第1コイル7と第2コイル8と第3コイル15を並列に接続するための取り回し配線16を短くすることができる。従って、接続配線に生じる寄生容量を抑制することができる。
【0052】
また、図2図7に示すように、第1~第6アンテナコイルパターン3a~6a,13a,14aを流れる電流の向き(図中の矢印の向き)が、コイルの軸に対して全て同じ向き(即ち、全て時計回り)となるように第1~第6アンテナコイルパターン3a~6a,13a,14aを回巻し、コイルの径方向に対して第1,第3,第5アンテナコイルパターン3a,4a,13aの電流の向きが同一方向(即ち、平面視において、内側から外側)となるように回巻するとともに、第2,第4,第6アンテナコイルパターン5a,6a,14aの電流の向きが第1,第3,第5アンテナコイルパターン3a,4a,13aと逆方向(即ち、平面視において、外側から内側)となるように回巻している。
【0053】
従って、それぞれのコイルパターンから発生する磁界が互いに干渉しないため、インダクタンスが低下することがなく、アンテナの交信感度を高くすることができる。
【0054】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図8は、本発明の第4の実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。なお、上記実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図8に示すように、本実施形態のモジュール基板50においては、上述の第3の実施形態における第1~第3コイル7,8,15に加えて、第7アンテナコイルパターン17aと第8アンテナコイルパターン18aにより構成された第4コイル19が設けられている。
【0056】
より具体的には、絶縁層13,5の間に絶縁層17が設けられ、当該絶縁層17の表面に第7アンテナコイルパターン17aが設けられている。また、絶縁層14と絶縁層11との間に絶縁層18が設けられ、当該絶縁層18の表面に第8アンテナコイルパターン18aが設けられている。
【0057】
絶縁層17,18は、例えば、上述の非磁性体フェライトからなる非磁性体材料により形成されている。
【0058】
また、第7~第8アンテナコイルパターン17a~18aは、上述の第1~第6アンテナコイルパターン3a~6a,13a,14aと同様に、導電性材料により形成されており、矩形状に渦巻きされたアンテナパターンにより形成されている。
【0059】
そして、モジュール基板50は、複数(本実施形態においては8層)の絶縁層3~6,13~14,17~18が積層された積層体2を備えており、第4コイル19は、第1、第2コイル7,8、及び第3コイル15に並列に接続されている。
【0060】
ここで、本実施形態においては、図8に示すように、積層体2において、第1アンテナコイルパターン3a、第3アンテナコイルパターン4a、第5アンテナコイルパターン13a、第7アンテナコイルパターン17a、第2アンテナコイルパターン5a、第4アンテナコイルパターン6a、第6アンテナコイルパターン14a、及び第8アンテナコイルパターン18aの順に配置されている点に特徴がある。
【0061】
従って、第1アンテナコイルパターン3aと第2アンテナコイルパターン5aの間に第3アンテナコイルパターン4aと第5アンテナコイルパターン13aと第7アンテナコイルパターン17aが配置され、第3アンテナコイルパターン4aと第4アンテナコイルパターン6aの間に第5アンテナコイルパターン13aと第7アンテナコイルパターン17aと第2アンテナコイルパターン5aが配置され、第5アンテナコイルパターン13aと第6アンテナコイルパターン14aの間に第7アンテナコイルパターン17aと第2アンテナコイルパターン5aと第4アンテナコイルパターン6aが配置され、第7アンテナコイルパターン17aと第8アンテナコイルパターン18aの間に第2アンテナコイルパターン5aと第4アンテナコイルパターン6aと第6アンテナコイルパターン14aが配置され、直列コイルの層間に別の直列コイルの層を挟むことになる。従って、直列コイルの層間を4倍広くすることができるため、1つの直列コイルの寄生容量を1/4にすることができる。その結果、並列に接続された第1,第2,第3,第4コイル7,8,15,19の合成インダクタンスを大きくすることができる。
【0062】
また、積層体2には、層間接続導体12dが設けられており、第7アンテナコイルパターン17aと第8アンテナコイルパターン18aは、層間接続導体12dを介して電気的に接続されている。
【0063】
また、第8アンテナコイルパターン18aは層間接続導体22eを介して、取り回し配線16に電気的に接続されている。
【0064】
なお、アンテナコイルパターン17a~18aを形成する材料は、特に限定されず、例えば、銀、銅等を使用することができる。
【0065】
そして、本実施形態においては、上述のごとく、第1アンテナコイルパターン3aと第2アンテナコイルパターン5aが直列に層間接続され、第3アンテナコイルパターン4aと第4アンテナコイルパターン6aが直列に層間接続され、第5アンテナコイルパターン13aと第6アンテナコイルパターン14aが直列に層間接続され、第7アンテナコイルパターン17aと第8アンテナコイルパターン18aが直列に層間接続されているが、各直列コイルの端の層(即ち、第1アンテナコイルパターン3aと第3アンテナコイルパターン4aと第5アンテナコイルパターン13aと第7アンテナコイルパターン17a、及び第2アンテナコイルパターン5aと第4アンテナコイルパターン6aと第6アンテナコイルパターン14aと第8アンテナコイルパターン18a)が近接しているため、図8に示すように、第1コイル7と第2コイル8と第3コイル15と第4コイル19を並列に接続するための取り回し配線16を短くすることができる。従って、接続配線に生じる寄生容量を抑制することができる。
【0066】
また、図2図7図9に示すように、第1~第8アンテナコイルパターン3a~6a,13a,14a,17a,18aを流れる電流の向き(図中の矢印の向き)が、コイルの軸に対して全て同じ向き(即ち、全て時計回り)となるように第1~第8アンテナコイルパターン3a~6a,13a,14a,17a,18aを回巻し、コイルの径方向に対して第1,第3,第5,第7アンテナコイルパターン3a,4a,13a,17aの電流の向きが同一方向(即ち、平面視において、内側から外側)となるように回巻するとともに、第2,第4,第6,第8アンテナコイルパターン5a,6a,14a,18aの電流の向きが第1,第3,第5,第7アンテナコイルパターン3a,4a,13a,17aと逆方向(即ち、平面視において、外側から内側)となるように回巻している。
【0067】
従って、それぞれのコイルパターンから発生する磁界が互いに干渉しないため、インダクタンスが低下することがなく、アンテナの交信感度を高くすることができる。
【0068】
なお、上記実施形態は、以下のように変形してもよい。
【0069】
上記第2の実施形態(図3)においては、第1、第2コイル7,8を複数(各2個)設ける構成としたが、図10に示すモジュール基板40ように、図3に示すモジュール基板20から、絶縁層11側の2層(絶縁層5,6)を取り除いた構成としてもよい。この様な構成においても、上述のモジュール基板20と同様の効果を得ることができる。
【0070】
また、上記実施形態においては、第1~第4コイルを備えたモジュール基板用アンテナを挙げたが、本発明のモジュール基板用アンテナにおいては、コイルの数は特に限定されず、5つ以上のコイルが並列に接続されているものであってもよい。
【0071】
また、図3の場合と同様に、図6に示す、第1アンテナコイルパターン3a、第3アンテナコイルパターン4a、第5アンテナコイルパターン13a、第2アンテナコイルパターン5a、第4アンテナコイルパターン6a、及び第6アンテナコイルパターン14aの順に配置されることにより構成された第1~第3コイル7,8,15を複数設ける構成としてもよい。
【0072】
また、同様に、図8に示す、第1アンテナコイルパターン3a、第3アンテナコイルパターン4a、第5アンテナコイルパターン13a、第7アンテナコイルパターン17a、第2アンテナコイルパターン5a、第4アンテナコイルパターン6a、第6アンテナコイルパターン14a、及び第8アンテナコイルパターン18aの順に配置されることにより構成された第1~第4コイル7,8,15,19を複数設ける構成としてもよい。
【0073】
このような構成により、第1、第2コイル7,8が複数設けられた、図3に示すモジュール基板20と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のモジュール基板は、ICチップ等が実装され、無線通信用のアンテナとして機能する積層型コイル部品(ダイナミックタグ)を内蔵するモジュール基板として有効に利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 モジュール基板
2 積層体
3a 第1アンテナコイルパターン
4a 第3アンテナコイルパターン
5a 第2アンテナコイルパターン
6a 第4アンテナコイルパターン
7 第1コイル
8 第2コイル
12 IC搭載用電極
13a 第5アンテナコイルパターン
14a 第6アンテナコイルパターン
15 第3コイル
16 取り回し配線
17a 第7アンテナコイルパターン
18a 第8アンテナコイルパターン
19 第4コイル
20 モジュール基板
30 モジュール基板
40 モジュール基板
50 モジュール基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10