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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 43/10 20060101AFI20240730BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B62D43/10
B62D25/20 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022021359
(22)【出願日】2022-02-15
(65)【公開番号】P2023118417
(43)【公開日】2023-08-25
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】畠山 幹生
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-062784(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0050734(US,A1)
【文献】特開2006-213252(JP,A)
【文献】特開2021-165065(JP,A)
【文献】特開2018-161960(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第69302764(DE,T2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 43/00-43/10
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置にスペアタイヤが載置されるリアフロアパネルと、
前記リアフロアパネル上に固定された電気部品と、
前記リアフロアパネル上に固定されて、前記電気部品を覆うカバー部材とを有し、
前記カバー部材は、前記所定位置から押し出された前記スペアタイヤと衝突するように前記リアフロアパネルに対して傾斜した傾斜面を備え、
前記リアフロアパネルの耐荷重は、前記カバー部材の耐荷重より低く、
前記リアフロアパネルを挟んだ前記電気部品の下部には、前記電気部品が押し込まれる空間が設けられている、
車体構造。
【請求項2】
前記カバー部材及び前記リアフロアパネルは、板金構造を有し、
前記カバー部材の板厚は、前記リアフロアパネルの板厚より厚い、
請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記カバー部材の引張り強さは、前記リアフロアパネルの引張り強さより大きい、
請求項1または2に記載の車体構造。
【請求項4】
前記電気部品は、前記スペアタイヤのホイールの下部に位置する、
請求項1乃至3の何れかに記載の車体構造。
【請求項5】
前記傾斜面には、前記傾斜面の傾斜方向に沿って第1リブが設けられている、
請求項1乃至4の何れかに記載の車体構造。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記リアフロアパネルに対して前記傾斜面を支持する支持部を有し、
前記支持部には、支持方向に沿って第2リブが設けられている、
請求項1乃至5の何れかに記載の車体構造。
【請求項7】
前記リアフロアパネルに取り付けられる板状の一対のブラケットを有し、
前記カバー部材は、前記電気部品の一端側の部分を覆い、前記一対のブラケットを介して前記リアフロアパネルに固定され、
前記リアフロアパネルの正面視において、前記一対のブラケットは、前記カバー部材から露出した前記電気部品の他端側の部分を挟み込む、
請求項1乃至6の何れかに記載の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スペアタイヤを搭載可能なリアフロアパネルを車体の後部に備えた構造がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-17123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スペアタイヤの近傍に例えば電気コネクタなどの電気部品が取り付けられる場合がある。この場合、車体の後方衝突によりスペアタイヤが搭載位置から車体の前方側に押し出されて電気部品に衝突し、電気部品が損傷するおそれがある。
【0005】
これに対し、例えば電気部品をプロテクタで覆うことによりスペアタイヤから保護することが考えられる。しかし、スペアタイヤから受ける荷重に耐えられるプロテクタの強度を確保するには、例えば素材及び板厚などの各種の厳しい設計条件を満たす必要があるため、プロテクタのコストが増加する。
【0006】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、スペアタイヤの衝突による電気部品の損傷を抑制することができる低コストの車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に記載の車体構造は、所定位置にスペアタイヤが載置されるリアフロアパネルと、前記リアフロアパネル上に固定された電気部品と、前記リアフロアパネル上に固定されて、前記電気部品を覆うカバー部材とを有し、前記カバー部材は、前記所定位置から押し出された前記スペアタイヤと衝突するように前記リアフロアパネルに対して傾斜した傾斜面を備え、前記リアフロアパネルの耐荷重は、前記カバー部材の耐荷重より低く、前記リアフロアパネルを挟んだ前記電気部品の下部には、前記電気部品が押し込まれる空間が設けられている。
【0008】
上記の構成において、前記カバー部材及び前記リアフロアパネルは、板金構造を有し、前記カバー部材の板厚は、前記リアフロアパネルの板厚より厚くてもよい。
【0009】
上記の構成において、前記カバー部材の引張り強さは、前記リアフロアパネルの引張り強さより大きくてもよい。
【0010】
上記の構成において、前記電気部品は、前記スペアタイヤのホイールの下部に位置してもよい。
【0011】
上記の構成において、前記傾斜面には、前記傾斜面の傾斜方向に沿って第1リブが設けられてもよい。
【0012】
上記の構成において、前記カバー部材は、前記リアフロアパネルに対して前記傾斜面を支持する支持部を有し、前記支持部には、支持方向に沿って第2リブが設けられてもよい。
【0013】
上記の構成において、前記リアフロアパネルに取り付けられる板状の一対のブラケットを有し、前記カバー部材は、前記電気部品の一端側の部分を覆い、前記一対のブラケットを介して前記リアフロアパネルに固定され、前記リアフロアパネルの正面視において、前記一対のブラケットは、前記カバー部材から露出した前記電気部品の他端側の部分を挟み込んでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車体構造のコストを抑えるとともに、スペアタイヤの衝突による電気部品の損傷を抑制することできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】上面視における車体後部の構造の一例を示す図である。
図2】プロテクタの一例を示す平面図である。
図3図1のA-A線に沿った車体後部の構造の断面図である。
図4】スペアタイヤが前方に押し出されたときの様子の一例を示す車体後部の構造の断面図である。
図5】電気コネクタが押し込み空間に押し込まれたときの様子の一例を示す車体後部の構造の断面図である。
図6】電気コネクタ、プロテクタ、及びブラケットの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(車体後部の構造)
図1は、上面視における車体後部の構造9の一例を示す図である。図1には、車体の前方、後方、右側、及び左側が「前」、「後」「右」、及び「左」でそれぞれ示されている。
【0017】
車体後部の構造9は車体構造の一例である。構造9は、車室90との間に設けられたクロス部材92、ラゲッジスペース91の床であるリアフロアパネル93、電気コネクタ2、及び電気コネクタ2を覆うプロテクタ1を備える。リアフロアパネル93は、板金構造を有し、鉄などにより形成された板状部材である。リアフロアパネル93には、スペアタイヤ(点線参照)8を搭置するリアフロアパン930が設けられている。リアフロアパン930は、リアフロアパネル93の他部分より下側に凹んだ凹部である。
【0018】
スペアタイヤ8はホイール80及びタイヤ81を有する。スペアタイヤ8の中心は、正面視におけるリアフロアパン930の略中央に設けられた固定具95に固定シャフトを介して固定されている。スペアタイヤ8は、車体の左右方向において、リアフロアパン930の幅に収まっている。また、タイヤ81の前方側の一部はリアフロアパン930からはみ出ている。スペアタイヤ8は、リアフロアパン930の延びる方向に対し傾斜した状態で固定具95の位置に載置されている。
【0019】
リアパネル94はリアフロアパネル93の後方に設けられている。リアパネル94は、車体の左右方向に延びる板状の外装パネルである。
【0020】
電気コネクタ2は電気部品の一例である。電気コネクタ2はホイール80の下部においてリアフロアパネル93に固定されている。電気コネクタ2は、2つの電気ケーブル70,71の間を電気的に接続する。電気コネクタ2は、略円柱形状を有し、その長手方向が車体の前後方向に沿うようにリアフロアパン930に固定されている。一例として、一方の電気ケーブル70は電気コネクタ2から車体の前方に向かうように配線されており、他方の電気ケーブル71は電気コネクタ2から車体の後方に向かった後、車体の右側に向かって曲がるように配線されている。
【0021】
プロテクタ1はカバー部材の一例である。プロテクタ1は、車体の後方側の電気コネクタ2の一部を覆っている。例えばプロテクタ1は、電気コネクタ2を上部及び両側部から覆う。なお、プロテクタ1の詳細な形状については後述する。
【0022】
プロテクタ1は板状の一対のブラケット30,31を介してリアフロアパネル93に固定される。ブラケット30,31は、リアフロアパネル93の正面視においてプロテクタ1の左右両側でリアフロアパネル93に取り付けられている。
【0023】
例えば車体が後方から他の車体に衝突された場合、スペアタイヤ8には後方から前方に向かう力Fが作用する。これにより、スペアタイヤ8は、リアフロアパン930内の載置位置から前方に押し出される。これにより、ホイール80の内周面やタイヤ81の下端部がプロテクタ1に接触する。
【0024】
このとき、スペアタイヤ8から受ける荷重に耐えられるプロテクタ1の強度を確保するには、例えば素材及び板厚などの各種の厳しい設計条件を満たす必要があるため、プロテクタ1のコストが増加する。そこで、以下に述べるように、リアフロアパネル93の耐荷重をプロテクタ1の耐荷重より低下させ、スペアタイヤ8からプロテクタ1に加わる荷重の一部をリアフロアパン930に分散してリアフロアパネル93を陥没させ、電気コネクタ2を下方に押し込むことで電気コネクタ2を保護する。
【0025】
(プロテクタの構成)
図2は、プロテクタ1の一例を示す平面図である。図2には、プロテクタ1を車体の後方から視た正面視の形状、プロテクタ1を車体の左側面から視た側面視の形状、及びプロテクタ1を車体の上方から視た上面視の形状が示されている。なお、各形状の図には、車体の前後方向、上下方向、及び左右方向が付されている。
【0026】
プロテクタ1は、板金構造を有し、例えば鉄板を板金加工することにより形成される。プロテクタ1は、電気コネクタ2をリアフロアパン930の上方から覆うように正面視で略コ字形状を有する。
【0027】
プロテクタ1は、天板10、傾斜板11、側板12~15、及び固定板16,17を有する。固定板16,17は、リアフロアパン930に対して略平行に延び、ブラケット30,31をそれぞれ介してリアフロアパン930に固定される。
【0028】
固定板16,17は、上下方向に貫通する貫通孔160,170をそれぞれ有する。貫通孔160,170は、例えば車体の前後方向における固定板16,17の端部に設けられている。貫通孔160,170には、ボルトなどの締結部材がブラケット30,31の貫通孔とともに挿通される。これにより、固定板16,17は、ブラケット30,31をそれぞれ介してリアフロアパン930に固定される。
【0029】
側板12,14は、固定板16,17の端部から天板10の端部まで延びるように立設されている。側板12,14は、上下方向において固定板16,17に対して天板10をそれぞれ支持する。側板12,14は、固定板16,17及び天板10に対して直交せず、互いの間隔が天板10から固定板16,17に向かって左右方向に略ハ字状に広がるように傾斜している。
【0030】
側板13,15は支持部の一例である。側板13,15は、固定板16,17の端部から傾斜板11の端部まで延びるように立設されている。ここで傾斜板11は天板10から前方に延びるように設けられている。側板13,15は、上下方向において固定板16,17に対して傾斜板11をそれぞれ支持する。側板13,15は、固定板16,17に対して直交せず、互いの間隔が傾斜板11から固定板16,17に向かって左右方向に略ハ字状に広がるように傾斜している。また、側板13,15は、天板10を支持する側板12,14から前方に向けて互いの間隔が狭まるように設けられている。
【0031】
傾斜板11は、所定位置から押し出されたスペアタイヤ8と衝突するようにリアフロアパン930に対して傾斜した傾斜面Sを備える。例えば傾斜面Sは、ホイール80内周面と対向するように後方に傾斜している。ここでリアフロアパン930の表面に対する傾斜面Sの角度αは、例えば22.8度である。傾斜面Sは、プロテクタ1の外表面であり、車体の上方向、及び、後方から車体への衝突時にスペアタイヤ8が押し出される方向に対向する。
【0032】
側板12~15、天板10、及び傾斜板11により囲まれた空間19には、電気コネクタ2の後方側の端部が配置される。側板12~15は電気コネクタ2の後方側の端部を左右方向から覆う。電気コネクタ2の後方側の端部は、電気部品の一端側の部分の一例である。
【0033】
天板10及び傾斜板11は電気コネクタ2の後方の端部を上方向及び後方から覆う。このため、プロテクタ1は、前方に押し出されたスペアタイヤ8から電気コネクタ2を保護することができる。本例において、プロテクタ1は電気コネクタ2の後方側の端部のみを覆うため、電気コネクタ2の全体を覆う場合よりプロテクタ1の長さを短くすることができ、プロテクタ1のコストが低減される。なお、プロテクタ1は、これに限定されず、電気コネクタ2の前方側の端部を含む全体を覆ってもよい。
【0034】
車体の後方向からの衝突(追突など)が発生したとき、スペアタイヤ8は固定具95から外れて前方に押し出されてプロテクタ1の傾斜面Sに衝突する場合がある。この場合、プロテクタ1は、衝突したスペアタイヤ8から傾斜面Sに加わる荷重の一部をリアフロアパン930に分散させる。
【0035】
プロテクタ1は、スペアタイヤ8の衝突に備えて強度を向上するため、複数のリブ100,110,130,150を有する。リブ100は、側板12,14及び天板10にわたって設けられている。リブ100は、天板10において左右方向に沿って延び、側板12,14において天板10に対する支持方向に沿って延びる。このため、スペアタイヤ8の衝突による側板12,14及び天板10の変形が抑制される。
【0036】
また、リブ110は第1リブの一例である。リブ110は、傾斜板11において傾斜面Sの傾斜方向に沿って設けられている。このため、スペアタイヤ8の衝突による傾斜面Sの変形が抑制される。なお、リブ110は天板10まで延びてリブ100と接続されている。
【0037】
また、リブ130,150は第2リブの一例である。リブ130,150は、側板13,15において傾斜板11に対する支持方向に沿って延びる。このため、スペアタイヤ8の衝突による側板13,15の変形が抑制される。
【0038】
(スペアタイヤ衝突時の動作)
次にスペアタイヤ8が車体前方側に押し出されてプロテクタ1と衝突した場合の動作を説明する。
【0039】
図3は、図1のA-A線に沿った車体後部の構造9の断面図である。ここで、スペアタイヤ8の断面は、便宜上、模式的に示されている。スペアタイヤ8は、上面視におけるホイール80の略中央部に接続された固定シャフト96を介してリアフロアパン930の固定具95に固定されている。
【0040】
電気コネクタ2はホイール80の下部に位置する。このように電気コネクタ2を配置することで、ラゲッジスペース91のような狭い収納スペースにも電気コネクタ2を収容することができる。
【0041】
電気コネクタ2は前方コネクタ20及び後方コネクタ21を有する。前方コネクタ20は、電気ケーブル70と電気的に接続された端子を備え、後方コネクタ21は、電気ケーブル71と電気的に接続された端子を備える。なお、図3において、電気ケーブル70,71の図示は省略する。前方コネクタ20及び後方コネクタ21は互いに接続されている。これにより、電気ケーブル70,71同士が互いに電気的に接続されている。
【0042】
また、後方コネクタ21には、前方コネクタ20及び後方コネクタ21の間の接続を解除するためのレバー22が設けられている。レバー22は、後方コネクタ21の両側面から上部を跨ぐように設けられている。
【0043】
プロテクタ1は、前方コネクタ20をリアフロアパン930の上方向から覆う。天板10はレバー22の上部に位置する。このため、スペアタイヤ8がレバー22に衝突することで前方コネクタ20及び後方コネクタ21の間の接続が解除されることが抑制される。
【0044】
また、傾斜板11は後方コネクタ21の後端部を斜め上方より覆う。リアフロアパン930からの傾斜面Sの高さは、前方から後方に向かって低くなる。傾斜面Sはホイール80の後方側の内周面80a、及びホイール80の裏面80bに対向している。このため、スペアタイヤ8が固定具95から外れて前方に移動したとき、傾斜面Sにホイール80の後方側の内周面80aが接触する。
【0045】
また、リアフロアパネル93の耐荷重はプロテクタ1の耐荷重より低くなるように設けられている。このため、リアフロアパネル93はプロテクタ1より脆弱となる。つまり、リアフロアパネル93は、荷重を受けたときにプロテクタ1より変形しやすい。
【0046】
例えばプロテクタ1の板厚Dbはリアフロアパネル93の板厚Daより厚くすることによりプロテクタ1及びリアフロアパネル93の耐荷重の差を容易に設けることができる。この場合、一例として、プロテクタ1の板厚Dbを2(mm)に設定し、リアフロアパネル93の板厚Daを0.65(mm)に設定することができる。
【0047】
また、板厚Da,Dbの差に加え、もしくは、板厚Da,Dbの差に代えて、プロテクタ1の引張り強さは、リアフロアパネル93の引張り強さより大きくしてもよい。この場合、プロテクタ1及びリアフロアパネル93が鉄により形成されると仮定し、一例として、プロテクタ1の引張り強さを440(MPa)に設定し、リアフロアパネル93の引張り強さを270(MPa)に設定することができる。
【0048】
リアフロアパネル93の下部には、各種の機器類Eが設置されているが、リアフロアパン930を挟んだ電気コネクタ2の下部には、電気コネクタ2が押し込まれる空間K(以下、押し込み空間Kと表記)が設けられている。電気コネクタ2が固定されたリアフロアパン930は、スペアタイヤ8がプロテクタ1に衝突したとき、スペアタイヤ8の荷重により下方に凹む。これにより、電気コネクタ2がプロテクタ1とともにリアフロアパン930ごと押し込み空間Kに押し込まれる。このため、押し込み空間Kは、プロテクタ1及び電気コネクタ2と実質的に同等の体積を有する。
【0049】
例えば車体が後方から他の車体に衝突されたとき、スペアタイヤ8には後方から前方に向かう力Fが作用する。これにより、スペアタイヤ8は、リアフロアパン930内の載置位置から前方に押し出される。
【0050】
図4は、スペアタイヤ8が前方に押し出されたときの様子の一例を示す車体後部の構造9の断面図である。図4において、図3と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0051】
符号Pで示されるように、プロテクタ1の傾斜面Sはホイール80の内周面80aと接触している。このとき、プロテクタ1は、スペアタイヤ8から傾斜面Sに、前方に向かう荷重を受ける。
【0052】
しかし、傾斜面Sはリアフロアパン930に対して傾斜しているため、スペアタイヤ8の荷重の一部がリアフロアパン930に分散される。これにより、リアフロアパン930は下方向の分散荷重Fzを受ける。このため、電気コネクタ2の下部のリアフロアパン930が変形して、電気コネクタ2が押し込み空間Kに押し込まれる。なお、傾斜面Sのリアフロアパン930に対する角度αは、スペアタイヤ8が実質的にリアフロアパン930に対して平行に設置されている場合、十分な分散荷重Fzがリアフロアパン930に加わるように45度以下に設定するのが好ましいが、これに限定されない。
【0053】
図5は、電気コネクタ2が押し込み空間Kに押し込まれたときの様子の一例を示す車体後部の構造9の断面図である。図5において、図3と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0054】
電気コネクタ2の下部のリアフロアパン930は、プロテクタ1から受けた分散荷重Fzにより変形して押し込み空間Kの中に凹んでいる。プロテクタ1の耐荷重はリアフロアパン930の耐荷重より高いため、プロテクタ1は、スペアタイヤ8の衝突時、リアフロアパン930と比べると変形量が少なく、電気コネクタ2を覆った状態でリアフロアパン930とともに押し込み空間Kに押し込まれる。
【0055】
電気コネクタ2はプロテクタ1とともにリアフロアパン930に固定されている。したがって、電気コネクタ2も押し込み空間Kに押し込まれるため、スペアタイヤ8の衝突を回避して損傷を抑制することができる。なお、押し込み空間Kの高さは、プロテクタ1より高いほうが好ましいが、これに限定されず、電気コネクタ2がスペアタイヤ8の衝突を避けることができる程度の高さであれば良い。
【0056】
また、プロテクタ1は板状の一対のブラケット30,31を介してリアフロアパン930に固定されている。本例のようにプロテクタ1が電気コネクタ2の後方側の端部のみを覆う場合、プロテクタ1から露出した電気コネクタ2の前方側の端部の左右両側をブラケット30,31で挟み込むことによって、その部分を十分に押し込み空間Kに押し込むことができる。
【0057】
図6は、電気コネクタ2、プロテクタ1、及びブラケット30,31の上面図である。図6において、図1及び図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0058】
ブラケット30,31は、一例として、略矩形の平板形状を有する。ブラケット30,31の長辺の両端の角部には、締結孔300,310が設けられている。ブラケット30,31は、ボルトなどの締結部材を締結孔300,310に締結させることによりリアフロアパン930に取り付けられている。
【0059】
また、ブラケット30,31の前方側の一部は、プロテクタ1の固定板16,17にそれぞれ重ね合わせられる。固定板16,17はブラケット30,31を介してリアフロアパン930にそれぞれ固定されている。このため、スペアタイヤ8からプロテクタ1の傾斜面Sに加わる荷重は、上記の分散荷重Fzとしてブラケット30,31に加わる。
【0060】
また、ブラケット30,31は電気コネクタ2及びプロテクタ1の左右両側で前後方向に延びるように設けられている。車体の前後方向においてプロテクタ1の長さは電気コネクタ2の長さより短いため、電気コネクタ2の前方側の端部Wはプロテクタ1から露出している。ここで、リアフロアパン930の正面視において、一対のブラケット30,31は、電気コネクタ2の前方側の端部Wを左右両側から挟み込んでいる。
【0061】
したがって、ブラケット30,31は、電気コネクタ2の前方側の端部Wの左右両側のリアフロアパン930に分散荷重Fzを加えて変形させることができる。このため、電気コネクタ2の前方側の端部Wを、ブラケット30,31が設けられていない場合より十分に押し込み空間Kに押し込むことができる。
【0062】
これまで述べたように、車体後部の構造9において、プロテクタ1は、リアフロアパン930内の所定位置から押し出されたスペアタイヤ8と衝突するようにリアフロアパン930に対して傾斜した傾斜面Sを備え、リアフロアパン930の耐荷重は、プロテクタ1の耐荷重より低く、リアフロアパン930を挟んだ電気コネクタ2の下部には押し込み空間Kが設けられている。
【0063】
したがって、プロテクタ1は、スペアタイヤ8から傾斜面Sに加わる荷重をリアフロアパン930に分散し、その分散荷重Fzによって耐荷重の低いリアフロアパン930を押し込み空間Kに向けて押し下げるように変形させることができる。このため、電気コネクタ2は、下部のリアフロアパン930ごと押し込み空間Kに押し込まれるため、スペアタイヤ8による電気コネクタ2の損傷が抑制される。
【0064】
また、上記の構造9によると、リアフロアパン930の耐荷重をプロテクタ1の耐荷重より低く設定することができるため、プロテクタ1に要求される強度を緩和することができる。このため、例えばプロテクタ1の素材及び板厚などの設計条件が緩和されて、プロテクタ1のコストの低減が可能となる。
【0065】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 プロテクタ(カバー部材)
2 電気コネクタ(電気部品)
8 スペアタイヤ
9 構造(車体構造)
30,31 ブラケット
80 ホイール
93 リアフロアパネル
100,110,130,150 リブ(第1及び第2リブ)
930 リアフロアパン
S 傾斜面
K 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6