(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電池ケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20240730BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/204
(21)【出願番号】P 2022056837
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷 沙織
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】銭谷 佑
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/024431(WO,A1)
【文献】特開2018-202946(JP,A)
【文献】特開2016-097851(JP,A)
【文献】特開2019-096385(JP,A)
【文献】特開2021-131996(JP,A)
【文献】中国実用新案第210897393(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/291
H01M 50/204
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の積層方向の端部を押さえるフレームと、
前記電池の積層方向に向けて配置されたクロスメンバと、
前記フレームと前記クロスメンバとを連結するクロスブラケットと、を備え、
前記クロスブラケットは、
前記フレームに接合されたベース部と、
前記ベース部から延びて前記クロスメンバの壁部を両側から挟み、前記壁部に接合された一対のコーナーブラケット部と、を備え、
前記一対のコーナーブラケット部のそれぞれの前記壁部の側の面と、前記ベース部の前記壁部の側の面とが交わる部位には、切り欠きが入れられている
ことを特徴とする電池ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の電池ケースにおいて、
前記壁部の端部は前記ベース部に接触している
ことを特徴とする電池ケース。
【請求項3】
請求項1に記載の電池ケースにおいて、
前記ベース部は、前記電池の積層方向からの側方視において両側の上端が丸められた長方形形状、或いは半楕円形状を有し、一方の下端から他方の下端までを繋ぐ一本の溶接線によって前記フレームに溶接されている
ことを特徴とする電池ケース。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の電池ケースにおいて、
前記一対のコーナーブラケット部のそれぞれは、前記電池の積層方向に垂直な方向からの側方視において先端部の上端が丸められた長方形形状、或いは四分楕円形状を有し、上側の前記切り欠きの付近から前記先端部の下端までを繋ぐ一本の溶接線によって前記壁部に溶接されている
ことを特徴とする電池ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池を収納する電池ケースに関し、特に、電池を積層方向に拘束するように構成された電池ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の電池は、電池の積層方向に加圧され、高い圧縮力を付与して長さを短縮した状態で車両に搭載される。車両に搭載された電池はその積層方向に伸長しようとするため、電池の伸長を阻むように積層方向に拘束しておく必要がある。特許文献1には、ロッカーパネルとフロアパネルとの間に掛け渡された一対のクロスメンバの間に車両の長さ方向に積層された電池を収納し、一対のクロスメンバによって電池を拘束する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、クロスメンバが電池から受けた拘束荷重は、クロスメンバとロッカーパネルとの接続部、及びクロスメンバとフロアパネルとの接続部に入力される。拘束荷重の入力によって各接続部には応力が発生するが、接続部の構造次第では応力集中が起きる可能性がある。しかし、特許文献1には応力を分散させる工夫については開示されていない。電池の拘束荷重によって生じる応力を上手く分散させることができない場合、電池の拘束荷重の許容限界を向上させることはで難しい。
【0004】
なお、本開示に関連する技術分野の技術水準を示す文献としては、特許文献1の他にも下記の特許文献2を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-062933号公報
【文献】特開2008-004289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、電池の拘束荷重の許容限界値を向上させることのできる電池ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電池ケースは、電池の積層方向の端部を押さえるフレームと、電池の積層方向に向けて配置されたクロスメンバと、フレームとクロスメンバとを連結するクロスブラケットとを備える。クロスブラケットは、フレームに接合されたベース部と、ベース部から延びてクロスメンバの壁部を両側から挟み、クロスメンバの壁部に接合された一対のコーナーブラケット部とを備える。一対のコーナーブラケット部のそれぞれのクロスメンバの壁部の側の面と、ベース部のクロスメンバの壁部の側の面とが交わる部位には、切り欠きが入れられている。電池の拘束荷重によってクロスブラケットに負荷される応力は、切り欠きによって分散される。
【0008】
本開示の電池ケースにおいて、クロスメンバの壁部の端部はベース部に接触してもよい。壁部の端部とベース部との間に隙間がないことで、衝突時の空走距離を低減することができる。
【0009】
本開示の電池ケースにおいて、ベース部は、電池の積層方向からの側方視において両側の上端が丸められた長方形形状、或いは半楕円形状を有していてもよい。また、ベース部は一方の下端から他方の下端までを繋ぐ一本の溶接線によってフレームに溶接されていてもよい。これによれば、クロスブラケットとフレームとをアーク溶接する際の溶接の始端及び終端の数を最小にすることができるとともに、ロボットによるアーク溶接が可能になる。
【0010】
本開示の電池ケースにおいて、一対のコーナーブラケット部のそれぞれは、電池の積層方向に垂直な方向からの側方視において先端部の上端が丸められた長方形形状、或いは四分楕円形状を有していてもよい。また、一対のコーナーブラケット部のそれぞれは、上側の切り欠きの付近から先端部の下端までを繋ぐ一本の溶接線によってクロスメンバの壁部に溶接されていてもよい。これによれば、クロスブラケットとクロスメンバとをアーク溶接する際の溶接の始端及び終端の数を最小にすることができるとともに、ロボットによるアーク溶接が可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の電池ケースによれば、電池の拘束荷重によってクロスブラケットに負荷される応力は、一対のコーナーブラケット部のそれぞれのクロスメンバの壁部の側の面と、ベース部のクロスメンバの壁部の側の面とが交わる部位に入れられた切り欠きによって分散される。これにより、クロスブラケットに生じる応力集中は緩和され、電池の拘束荷重の許容限界値を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る電池ケースを示す斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るクロスブラケットによるサイドフレームとインナークロスとの連結構造を示す斜視図である。
【
図3】本開示の実施形態に係るクロスブラケットによるサイドフレームとインナークロスとの連結構造を示す平面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係るクロスブラケットにおける応力分布と比較例のクロスブラケットにおける応力分布とを対比して示す応力解析図である。
【
図5】本開示の実施形態に係るクロスブラケットと別の比較例のクロスブラケットとを対比して示す平面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係るクロスブラケットとサイドフレーム及びインナークロスとの溶接構造を示す平面図である。
【
図7】本開示の実施形態に係るクロスブラケットとサイドフレーム及びインナークロスとの溶接構造を示す斜視図である。
【
図8】比較例のサイドフレームとインナークロスとの溶接構造を示す斜視図である。
【
図9】別の比較例のクロスブラケットとサイドフレーム及びインナークロスとの溶接構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。ただし、以下に示す実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本発明が限定されるものではない。また、以下に示す実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本発明に必ずしも必須のものではない。
【0014】
1.電池ケースの構造
図1は本開示の実施形態に係る電池ケース10の構成を示す斜視図である。ただし、
図1に示される電池ケース10はアッパーカバーを取り外されている。車両への搭載時には、電池ケース10の内部に電池を収納された状態でアッパーカバーが取り付けられる。収納される電池は、多数の電池セルが積層されて構成される電池スタックである。電池セルは、充放電可能な二次電池、例えば、リチウムイオン二次電池である。
【0015】
電池ケース10は、車両への搭載時に車両の前側に位置するフロントフレーム30、車両の後側に位置するリアフレーム40、及び車両の横側に位置する一対のサイドフレーム20を備える。これら4本のフレームからなる枠の中には、複数本のインナークロス(クロスメンバ)200が設置されている。インナークロス200はフロントフレーム30及びリアフレーム40と並行に等間隔で配列されている。フレーム及びインナークロスは軽金属、具体的にはアルミを材料とするダイカスト製品である。フレームで造られた長方形の枠の下面にはベースプレート50が接合されている。
【0016】
上記のような構成を有する電池ケース10内に、電池はその積層方向を車両の車幅方向に向けて搭載される。両側のサイドフレーム20と隣接する2本のインナークロス200とで囲まれた空間、及び両側のサイドフレーム20とリアフレーム40と最後列のインナークロス200とで囲まれた空間が電池の搭載場所となる。
【0017】
電池はその積層方向に加圧され、高い圧縮力を付与して長さを短縮した状態で電池ケース10内に収納される。電池ケース10内に搭載されたとき、電池はその積層方向に伸長しようとするが、電池の積層方向への伸長は複数のインナークロス200によって連結された両側のサイドフレーム20によって阻まれる。このとき、サイドフレーム20が受ける電池の拘束荷重は、フロントフレーム30及びリアフレーム40とともに、両側のサイドフレーム20を連結するインナークロス200によって負担される。
【0018】
拘束荷重はサイドフレーム20とインナークロス200との接合部に作用する。電池は熱によって積層方向に膨張するため、運転時には接合部に作用する拘束荷重は増大する。このため、接合部の接合強度が弱い場合には、接合部が電池の拘束荷重に耐えられなくなるおそれがある。そこで、サイドフレーム20とインナークロス200とは、クロスブラケット100を介して連結されている。次の章では、クロスブラケット100によるサイドフレーム20とインナークロス200との連結構造について説明する。
【0019】
2.クロスブラケットによるサイドフレームとインナークロスとの連結構造
図2はクロスブラケット100によるサイドフレーム20とインナークロス200との連結構造を示す斜視図である。クロスブラケット100は、サイドフレーム20に接合されたベース部110と、ベース部110から延びてインナークロス200の壁部210を両側から挟む一対のコーナーブラケット部120とを備えている。コーナーブラケット部120のそれぞれは、クロスメンバ200の壁部210に接合されている。
【0020】
図3は上記の連結構造をより詳細に示す平面図である。クロスメンバ200の壁部210は、クロスブラケット100のベース部110に押し当てられている。すなわち、壁部210の端面212と、ベース部110の側面(壁部210の側の面)112とは隙間なく接触している。このような位置関係のもとで、壁部210の側面214と、コーナーブラケット部120の側面(壁部210の側の面)122とが接合されている。
【0021】
電池の拘束荷重が作用したとき、ベース部110とコーナーブラケット部120との間には引張力が作用する。引張力によって生じる応力は面と面とが交わる角度が小さいコーナー部に発生しやすい。応力集中は破損の原因になり電池の拘束荷重の許容限界を下げることになる。このため、クロスブラケット100には、応力集中を起こりにくくするための形状上の工夫がなされている。
【0022】
クロスブラケット100の形状上の工夫として、コーナーブラケット部120の側面122と、ベース部110の側面112とが交わる部位、すなわち、コーナー部に切り欠き130が入れられている。コーナー部に切り欠き130が入れられることで、引張力によって生じる応力は分散され、応力集中は緩和される。
【0023】
応力集中を緩和する一般的な方法としてコーナー部にR加工を施す方法が知られている。しかし、切り欠き130を入れる場合に比較して、R加工を施すことによる応力集中の緩和効果は限定的である。
図4(A)はコーナー部に切り欠き130を入れた場合の応力分布を示す応力解析図であり、
図4(B)はコーナー部にR加工132を施した場合の応力分布を示す応力解析図である。両者の比較から分かるように、R加工132を施した場合では応力集中が起きているのに対し、切り欠き130を入れた場合には応力を分散させることができている。応力の最大値においても、切り欠き130を入れた場合にはR加工132を施した場合の略半分に抑えることができることが確認された。
【0024】
なお、単に応力集中を緩和することが目的であるならば、R加工でもその目的を達することができる。
図5に点線で示すようにコーナー部に曲率を小さくしたR加工134を施すことで、切り欠き130を入れる場合と同等の応力集中の緩和効果が期待される。ところが、このような加工をコーナー部に行ってしまった場合、クロスメンバ200の壁部210の端面212とベース部110の側面112との間に大きな隙間が生じてしまう。この隙間は車両の側突時の空走距離を増大させることになる。ゆえに、側突時の空走距離を最小限に抑えながら応力集中の緩和効果を得る上では、切り欠き130を入れることは最も好適な方法であると言える。
【0025】
3.クロスブラケットとサイドフレーム及びインナークロスとの溶接構造
クロスブラケット100とサイドフレーム20との接合には溶接が用いられる。また、クロスブラケット100とインナークロス200との接合にも溶接が用いられる。使用される溶接方法はロボットによるアーク溶接である。
【0026】
図6はクロスブラケット100とサイドフレーム20及びインナークロス200との溶接構造を示す平面図である。クロスブラケット100のベース部110とサイドフレーム20とは、ポイントP11とポイントP12とを繋ぐ溶接線L1によって溶接されている。ポイントP11とポイントP12のいずれか一方が溶接線L1の始端で他方が終端である。また、クロスブラケット100の一方のコーナーブラケット部120と壁部210とは、ポイントP21とポイントP22とを繋ぐ溶接線L2によって溶接されている。ポイントP21とポイントP22のいずれか一方が溶接線L2の始端で他方が終端である。クロスブラケット100のもう一方のコーナーブラケット部120と壁部210とは、ポイントP31とポイントP32とを繋ぐ溶接線L3によって溶接されている。ポイントP31とポイントP32のいずれか一方が溶接線L3の始端で他方が終端である
【0027】
アーク溶接における溶接線の始端と終端はアークが不安定で溶接強度が相対的に低いために破壊の起点となりやすい。ゆえに、溶接線の始端と終端の数はできるだけ少なくしたい。
図6に示す例では、サイドフレーム20とインナークロス200とをクロスブラケット100を介して連結するために必要な溶接線の始端と終端の数は合計で6個に抑えられている。ただし、溶接線の始端と終端の数を少なくしたとしても、溶接線の合計長さが短い場合には十分な溶接強度を得ることはできない。
【0028】
溶接線の長さを長くとる方法としては、溶接対象の輪郭に沿って溶接を行うことが考えられる。しかし、アーク溶接を行うロボットは、直線的な動きか、緩やかなカーブを描く動きでしか正確に溶接線を描くことができない。つまり、溶接対象の外形形状次第では長い溶接経路を採用することが難しい。そこで、クロスブラケット100には、ロボットによるアーク溶接において長い溶接線をとるための形状上の工夫がなされている。
【0029】
図7はクロスブラケット100とサイドフレーム20及びインナークロス200との溶接構造を示す斜視図である。クロスブラケット100のベース部110は、電池の積層方向からの側方視において両側の上端116が丸められた長方形形状、いわゆる蒲鉾形状を有している。上端116の曲率半径は例えば15mm以上である。ベース部110をこのような形状に形成することにより、ベース部110の一方の下端にポイントP11をとり、他方の下端にポイントP12をとって、ポイントP11とポイントP21とを繋ぐ緩やかにカーブする長い一本の溶接線L1をとることができる。これによれば、クロスブラケット100とサイドフレーム20とをアーク溶接する際の溶接の始端及び終端の数を最小にすることができるとともに、ロボットによる効率的なアーク溶接が可能になる。なお、ベース部110の形状は、電池の積層方向からの側方視において半楕円形状であってもよい。
【0030】
一対のコーナーブラケット部120のそれぞれは、電池の積層方向に垂直な方向からの側方視において先端部の上端126が丸められた長方形形状、いわゆる半蒲鉾形状を有している。上端126の曲率半径は例えば15mm以上である。このような形状によれば、一方のコーナーブラケット部120の上側の切り欠き130の付近にポイントP21をとり、先端部の下端にポイントP22をとって、両ポイントP21,P22を繋ぐ緩やかにカーブする長い一本の溶接線L2をとることができる。また、もう一方のコーナーブラケット部120の上側の切り欠き130の付近にポイントP31をとり、先端部の下端にポイントP32をとって、両ポイントP31,P32を繋ぐ緩やかにカーブする長い一本の溶接線L3をとることができる。これによれば、クロスブラケット100とインナークロス200とをアーク溶接する際の溶接の始端及び終端の数を最小にすることができるとともに、ロボットによる効率的なアーク溶接が可能になる。なお、コーナーブラケット部120の形状は、電池の積層方向に垂直な方向からの側方視において四分楕円形状であってもよい。
【0031】
以上のように、クロスブラケット100に対してなされた形状上の工夫により、ロボットによる高品質且つ高効率なアーク溶接が実現できるとうメリットが得られる。このメリットは以下に説明する2つの比較例との対比によってより明らかにすることができる。
【0032】
図8に示す1つ目の比較例では、サイドフレーム20にインナークロス200を突き合わせて、サイドフレーム20とインナークロス200とを直接溶接している。この場合、インナークロス200の壁部210の端部の両側がサイドフレーム20と溶接線L11及び溶接線L12によって溶接される。また、インナークロス200の両側の底部220とサイドフレーム20とが溶接線L13及び溶接線L14によって溶接される。
【0033】
1つ目の比較例では、溶接線の始端と終端の数は合計で8個に抑えられている。しかし、各溶接線が短いために強度が不足する。つまり、一つ目の比較例は、クロスブラケット100を使用する場合に比較して強度において劣っており、電池の拘束荷重の許容限界値を向上させるという目的を達成することができない。
【0034】
図9に示す2つ目の比較例では、クロスブラケット300を介してサイドフレーム20とインナークロス200とが連結されている。クロスブラケット300はクロスブラケット100と異なり、各所が直角に加工された単純な形状を有している。クロスブラケット300のベース部310は電池の積層方向からの側方視において単純な長方形形状である。コーナーブラケット部320は電池の積層方向に垂直な方向からの側方視において単純な長方形形状である。
【0035】
2つ目の比較例のように直角に折れ曲がった形状に沿って溶接線を設定しようとしても、ロボットはそれには追従することはできない。このため、辺ごとに溶接線を設定して溶接せざるを得ない。サイドフレーム20とベース部310との溶接では、横方向の溶接線L21と、縦方向の2本の溶接線L22,L23の合計3本の溶接線が必要となる。インナークロス200の壁部210とコーナーブラケット部320との溶接では、横方向の2本の溶接線L24,L26と、縦方向の2本の溶接線L25,L27の合計4本の溶接線が必要となる。
【0036】
結果、クロスブラケット300を用いる場合には、合計で7本の溶接線が必要となり、溶接線の始端と終端の数は合計で14個まで増大してしまう。始端及び終端は破壊の起点となりやすいため、2つ目の比較例は、クロスブラケット100を使用する場合に比較して品質の面おいて劣っていると言える。また、溶接線の数が増えるほど工程数が増えることになるため、2つ目の比較例は、クロスブラケット100を使用する場合に比較して効率の面おいても劣っていると言える。
【0037】
以上の2つの比較例との比較結果から明らかなように、クロスブラケット100によれば、溶接線の数を最小限にして破壊の起点となりやすい始端及び終端の数を最小限に抑えながら、各溶接線の長さを長くとることができる。これにより、高い溶接強度を確保しながら、ロボットによる高品質且つ高効率なアーク溶接を実現することができる。
【符号の説明】
【0038】
10 電池ケース
20 サイドフレーム(フレーム)
30 フロントフレーム
40 リアフレーム
50 ベースプレート
100 クロスブラケット
110 ベース部
120 コーナーブラケット部
130 切り欠き
200 インナークロス(クロスメンバ)
210 壁部
L1,L2,L3 溶接線
P11,P12,P21,P22,P31,P31 ポイント(始端或いは終端)