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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両情報提供システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/21 20240101AFI20240730BHJP
   B67D 7/22 20100101ALI20240730BHJP
   G01D 7/00 20060101ALI20240730BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20240730BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20240730BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240730BHJP
   G16Y 20/30 20200101ALI20240730BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240730BHJP
【FI】
B60K35/21
B67D7/22 Z
G01D7/00 K
G16Y40/30
G16Y40/10
G16Y20/20
G16Y20/30
G16Y10/40
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022075449
(22)【出願日】2022-04-28
(65)【公開番号】P2023164110
(43)【公開日】2023-11-10
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】星原 光太郎
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-72685(JP,A)
【文献】特開2019-97333(JP,A)
【文献】特開2004-249753(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2813399(EP,A1)
【文献】特開2001-213286(JP,A)
【文献】特開2012-224094(JP,A)
【文献】特開2021-75322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/21
B67D 7/22
G01D 7/00
G16Y 40/30
G16Y 40/10
G16Y 20/20
G16Y 20/30
G16Y 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の駆動エネルギ源が選択的に使用可能な駆動力源を搭載した車両の情報を提供する車両情報提供システムであって、
駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する駆動エネルギ源情報特定部と、
前記駆動エネルギ源情報特定部によって特定された前記駆動エネルギ源の情報に応じた車両情報の提供形態を指示するための指示情報を作成する指示情報作成部と、
前記指示情報作成部によって作成された前記指示情報に従って、前記車両情報の提供形態を変更する情報提供手段と、を備えていることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両情報提供システムにおいて、
前記情報提供手段は、車室内に設置されたインストルメントパネルであって、前記車両情報の提供形態の変更は、前記インストルメントパネルの表示色の変更であることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項3】
請求項1記載の車両情報提供システムにおいて、
前記情報提供手段は、前記車両の外面に設置された表示ランプであって、前記車両情報の提供形態の変更は、前記表示ランプの点灯と消灯との間での変更、および、前記表示ランプの表示色の変更のうち少なくとも一方であることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項4】
請求項1記載の車両情報提供システムにおいて、
前記情報提供手段は、前記車両の車体色の変更が可能な車体色変更手段であって、前記車両情報の提供形態の変更は、前記車体色変更手段による車体色の変更であることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項5】
請求項1記載の車両情報提供システムにおいて、
前記駆動力源は内燃機関であって、前記駆動エネルギ源は前記内燃機関の駆動に使用される燃料であることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項6】
請求項1記載の車両情報提供システムにおいて、
前記駆動力源は電動モータであって、前記駆動エネルギ源は前記電動モータの駆動に使用される電力であることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項7】
請求項1記載の車両情報提供システムにおいて、
前記駆動エネルギ源情報特定部は、サービスステーションにおける前記車両の前記駆動エネルギ源貯留部への前記駆動エネルギ源の供給時に当該駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっていることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項8】
請求項7記載の車両情報提供システムにおいて、
前記サービスステーションには、前記車両の前記駆動エネルギ源貯留部への前記駆動エネルギ源の供給動作を撮影するカメラが設置されており、
前記駆動エネルギ源情報特定部は、前記カメラが撮影した前記供給動作の撮影画像の情報を受信し、該受信した撮影画像の情報に基づいて前記駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっていることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項9】
請求項7記載の車両情報提供システムにおいて、
前記駆動エネルギ源情報特定部は、前記車両の前記駆動エネルギ源貯留部への前記駆動エネルギ源の供給の完了後の決済情報を受信し、該決済情報から前記駆動エネルギ源の単価を算出し、当該単価に基づいて前記駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっていることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項10】
請求項7記載の車両情報提供システムにおいて、
前記駆動エネルギ源情報特定部は、前記車両の前記駆動エネルギ源貯留部に供給された前記駆動エネルギ源の生成時の情報を受信し、該生成時の情報に基づいて前記駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっていることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項11】
請求項1記載の車両情報提供システムにおいて、
前記駆動エネルギ源情報特定部は、前記駆動力源の駆動中における車両搭載センサの出力値に基づいて前記駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっていることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項12】
請求項11記載の車両情報提供システムにおいて、
前記車両搭載センサは、前記駆動力源の駆動に伴って排出されるガス中に含まれている特定物質の量に基づいて前記駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっていることを特徴とする車両情報提供システム。
【請求項13】
請求項1~12のうち何れか一つに記載の車両情報提供システムにおいて、
前記駆動エネルギ源の情報は、当該駆動エネルギ源の使用時における環境負荷の大きさの情報または環境負荷の大きさに相関のある情報、或いは、当該駆動エネルギ源の生成時における環境負荷の大きさの情報または環境負荷の大きさに相関のある情報であることを特徴とする車両情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両情報提供システムに係る。特に、本発明は、複数種類の駆動エネルギ源(例えば複数種類の燃料)が選択的に使用可能な駆動力源(例えば内燃機関)を搭載した車両の情報を提供するシステムに関する。尚、本明細書では同一種の(例えば名称が同じ)駆動エネルギ源であっても生成工程が互いに異なるものは種類の異なる駆動エネルギ源として扱う場合もある。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の情報を提供するシステムとして特許文献1に開示されている車両情報提供システムが知られている。この特許文献1に開示されている車両情報提供システムは、データセンタにおいて車両モデル毎のCO2排出量情報(車両モデルCO2排出量情報)を生成し、クライアント端末において、車両モデルCO2排出量情報に関する表示情報を表示するようにしている。これにより、同一車両モデルの開発に際して該車両モデルの前記表示情報を利用でき、また、各車両モデル毎の前記表示情報から各車両モデルそれぞれが環境に与える影響を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-206167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数種類の駆動エネルギ源が選択的に使用可能な駆動力源を搭載した車両にあっては、同一車両モデルであったとしても、使用している駆動エネルギ源が異なれば、実際のCO2排出量は異なる場合がある。特許文献1に係る車両情報提供システムは、車両モデル毎にCO2排出量情報が予め生成されるものであり、同一車両モデルにおいて使用する駆動エネルギ源の種類に応じたCO2排出量の変化については考慮されていない。
【0005】
本発明の発明者らは、この点に鑑み、複数種類の駆動エネルギ源が選択的に使用可能な駆動力源を搭載した車両であっても適切な情報(例えば環境に配慮した車両であることの適切な情報等)の提供を可能にすることに鑑み本発明に至った。
【0006】
また、使用している駆動エネルギ源が異なることに起因する状況の変化(前述の場合はCO2排出量の変化)としては前述したものに限らず、車両の走行状態において種々の変化(例えば駆動エネルギ源の種類に応じた車両の走行性能の変化や燃料消費率の変化等)が想定される。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、適切な車両情報を提供することができる車両情報提供システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、複数種類の駆動エネルギ源が選択的に使用可能な駆動力源を搭載した車両の情報を提供する車両情報提供システムを前提とする。そして、この車両情報提供システムは、駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する駆動エネルギ源情報特定部と、前記駆動エネルギ源情報特定部によって特定された前記駆動エネルギ源の情報に応じた車両情報の提供形態を指示するための指示情報を作成する指示情報作成部と、前記指示情報作成部によって作成された前記指示情報に従って、前記車両情報の提供形態を変更する情報提供手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
尚、本発明でいう車両は、自動車以外のモビリティ車両を含む概念である。例えば、電動キックボード等種々の移動体を含む概念である。
【0010】
この特定事項により、駆動エネルギ源情報特定部によって特定された駆動エネルギ源(駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている駆動エネルギ源)の情報に応じた指示情報(車両情報の提供形態を指示するための指示情報)を指示情報作成部が作成する。そして、この指示情報に従って情報提供手段は車両情報の提供形態を変更する。これにより、駆動エネルギ源の情報(例えば駆動エネルギ源の種類の情報や駆動エネルギ源の生成時に係る情報等)に応じた車両情報(例えば環境に配慮した車両であるか否かの情報等)の提供形態を実現することができる。つまり、同一車両モデルであっても、使用している駆動エネルギ源が異なれば状況(環境に与える影響等)が異なる場合があることを考慮した適切な車両情報を提供することが可能になる。
【0011】
また、前記情報提供手段の具体例としては以下のものが挙げられる。先ず、前記情報提供手段を車室内に設置されたインストルメントパネルとした場合、前記車両情報の提供形態の変更としては、前記インストルメントパネルの表示色を変更することが挙げられる。
【0012】
これによれば、車両の運転者が、インストルメントパネルの表示色と駆動エネルギ源に起因する状況(例えば環境負荷の大きさ)との関係を予め認識していることを条件として、適切な車両情報を運転者に提供することが可能になる。
【0013】
また、前記情報提供手段を車両の外面に設置された表示ランプとした場合、前記車両情報の提供形態の変更としては、前記表示ランプの点灯と消灯との間での変更、および、前記表示ランプの表示色の変更のうち少なくとも一方とすることが挙げられる。
【0014】
これによれば、表示ランプの状態と駆動エネルギ源に起因する状況との関係が周知されていることを条件として、適切な車両情報を車外に向けて(例えば通行人に向けて)提供することが可能になる。
【0015】
また、前記情報提供手段を車両の車体色の変更が可能な車体色変更手段とした場合、前記車両情報の提供形態の変更としては、前記車体色変更手段によって車体色を変更することが挙げられる。
【0016】
これによれば、車体色と駆動エネルギ源に起因する状況との関係が周知されていることを条件として、適切な車両情報を車外に向けて提供することが可能になる。
【0017】
また、前記駆動力源および前記駆動エネルギ源の具体例としては、以下のものが挙げられる。先ず、駆動力源を内燃機関とした場合、前記駆動エネルギ源は前記内燃機関の駆動に使用される燃料である。また、前記駆動力源を電動モータとした場合、前記駆動エネルギ源は前記電動モータの駆動に使用される電力である。
【0018】
これらにより、駆動エネルギ源を具体的に特定できると共に、当該駆動エネルギ源の情報に応じた適切な車両情報の提供形態を得ることができる。
【0019】
また、前記駆動エネルギ源情報特定部は、サービスステーションにおける前記車両の前記駆動エネルギ源貯留部への前記駆動エネルギ源の供給時に当該駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっている。
【0020】
これによれば、駆動エネルギ源貯留部への駆動エネルギ源の供給中や供給完了時に、情報提供手段における情報提供形態を、供給された駆動エネルギ源の情報に従ったものに変更することが可能になる。このため、適切な車両情報の提供形態を早期に実現することができ、過去に駆動エネルギ源貯留部に供給された駆動エネルギ源(例えば、既にある程度消費された駆動エネルギ源)の情報に起因する車両情報(適切でない車両情報)の提供形態が継続されてしまうといったことを抑制できる。
【0021】
また、前記サービスステーションには、前記車両の前記駆動エネルギ源貯留部への前記駆動エネルギ源の供給動作を撮影するカメラが設置されており、前記駆動エネルギ源情報特定部は、前記カメラが撮影した前記供給動作の撮影画像の情報を受信し、該受信した撮影画像の情報に基づいて前記駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっている。
【0022】
これにより、駆動エネルギ源情報特定部による駆動エネルギ源の情報の特定に高い信頼性を得ることができ、それに伴って、提供される車両情報の信頼性も高めることができる。
【0023】
また、前記駆動エネルギ源情報特定部は、前記車両の前記駆動エネルギ源貯留部への前記駆動エネルギ源の供給の完了後の決済情報を受信し、該決済情報から前記駆動エネルギ源の単価を算出し、当該単価に基づいて前記駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっている。
【0024】
これは、駆動エネルギ源毎に単価(単位量当たりの価格)が異なっていることに着目して、駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている駆動エネルギ源を判別するものである。これによっても、駆動エネルギ源情報特定部による駆動エネルギ源の情報の特定に高い信頼性を得ることができ、それに伴って、提供される車両情報の信頼性も高めることができる。
【0025】
また、前記駆動エネルギ源情報特定部は、前記車両の前記駆動エネルギ源貯留部に供給された前記駆動エネルギ源の生成時の情報を受信し、該生成時の情報に基づいて前記駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっている。
【0026】
これは、駆動エネルギ源の生成時の条件を考慮した車両情報を提供することに鑑みたものである。例えば、駆動エネルギ源の生成時における環境負荷の大きさについても車両情報として提供できるものとしている。つまり、同一名称の駆動エネルギ源(燃料)であり、使用時(例えば燃料の燃焼時)における環境負荷は同等であったとしても(例えばCO2排出量は同等であったとしても)、その生成時において環境負荷が大きい状況で生成されたものと環境負荷が小さい状況で生成されたものとではLCA(Life Cycle Assessment)に差が生じているので、そのことを反映させた車両情報を提供できるようにしたものである。これにより、よりいっそう詳細な車両情報を提供することが可能になる。
【0027】
また、サービスステーション等の外部からの情報を利用するものに限らず、車両自身が(車両の内部情報によって)駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっていてもよい。具体的には、前記駆動エネルギ源情報特定部が、前記駆動力源の駆動中における車両搭載センサの出力値に基づいて前記駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっているものである。
【0028】
これによれば、サービスステーション等の外部からの情報を利用する必要なしに駆動エネルギ源の情報を特定することができる。つまり、外部(サービスステーション等)との通信を必要とすることなしに適切な車両情報を提供することが可能になる。
【0029】
より具体的には、前記車両搭載センサは、前記駆動力源の駆動に伴って排出されるガス中に含まれている特定物質の量に基づいて前記駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている前記駆動エネルギ源の情報を特定する構成となっている。
【0030】
本解決手段は、例えば駆動力源が内燃機関であった場合、駆動エネルギ源である燃料に応じて排気ガス中に含まれている特定物質の量(例えばPM排出量等)に差が生じることを利用して駆動エネルギ源の情報を特定するようにしたものである。これにより、既存の車両搭載センサ(PMセンサ等)を有効利用して駆動エネルギ源の情報を特定することが可能になる。
【0031】
また、前記駆動エネルギ源の情報は、当該駆動エネルギ源の使用時における環境負荷の大きさの情報または環境負荷の大きさに相関のある情報、或いは、当該駆動エネルギ源の生成時における環境負荷の大きさの情報または環境負荷の大きさに相関のある情報である。
【0032】
ここでいう環境負荷の大きさの情報の例としては駆動エネルギ源の使用時における単位量当たりのCO2排出量や駆動エネルギ源の生成時に排出された単位生成量当たりのCO2排出量等といった直接的に環境負荷の大きさを表す情報が挙げられ、環境負荷の大きさに相関のある情報の例としては駆動エネルギ源の名称や生成方法等といった間接的に環境負荷の大きさを表す情報が挙げられる。
【0033】
これによれば、使用している駆動エネルギ源が環境に与えている影響(環境負荷の大きさ)や生成時に環境に与えていた影響を、車両情報として情報提供手段から提供することができる。このため、車室内に車両情報を提供する場合(前述したインストルメントパネルの表示色を変更する場合等)にあっては、運転者に環境負荷を小さくする運転(急発進や急加速を避ける運転)を意識させたり、運転者に社会的ステータスの高さを意識させたりすることができる。また、車外に車両情報を提供する場合(前述した表示ランプの状態を変更する場合や車体色を変更する場合等)にあっては、環境に配慮した車両であることや車両の商品性の高さを外部へアピールすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明では、駆動エネルギ源貯留部に蓄えられている駆動エネルギ源の情報を特定し、この特定された駆動エネルギ源の情報に応じた指示情報を作成して、該指示情報に従って情報提供手段における車両情報の提供形態を変更するようにしている。これにより、駆動エネルギ源の情報に応じた車両情報の提供形態を得ることができ、同一車両モデルであっても、使用している駆動エネルギ源が異なれば状況が異なる場合があることを考慮した適切な車両情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施形態に係るサービスステーションに設置された計量機の前に車両が給油のために停車した状態を示す図である。
図2】実施形態に係る計量機を示す正面図である。
図3】車室内のインストルメントパネルの表示状態を示し、図3(a)は第1表示状態を、図3(b)は第2表示状態を、図3(c)は第3表示状態をそれぞれ示す図である。
図4】車両の後面に配設されたエコランプの表示状態を示し、図4(a)は第1表示状態を、図4(b)は第2表示状態を、図4(c)は第3表示状態をそれぞれ示す図である。
図5】実施形態に係る車両情報提供システムのブロック図である。
図6】車両の排気系に備えられたPMセンサの構成を模式的に示す図である。
図7】燃料の種類に応じたPMセンサのセンサ出力変化の一例を示す図である。
図8】車両情報提供処理の手順を示すフローチャート図である。
図9】変形例1における車両の側面を示し、図9(a)は第1表示状態を、図9(b)は第2表示状態を、図9(c)は第3表示状態をそれぞれ示す図である。
図10】変形例2におけるPMセンサのセンサ出力変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、内燃機関(駆動力源)を搭載した車両において、燃料タンク(駆動エネルギ源貯留部)内に蓄えられている燃料(駆動エネルギ源)の種類に応じて車両内外の表示部(情報提供手段)の表示形態(車両情報の提供形態)を変更するようにした場合を例に挙げて説明する。
【0037】
本実施形態に係る車両情報提供システムはサービスステーションおよび車両によって構築されている。サービスステーションは複数種類の燃料の提供が可能となっている。また、本車両情報提供システムを構築する車両はサービスステーションにおいて給油可能な燃料のうち複数種類の燃料(例えば後述する軽油およびe-diesel)の使用が可能(軽油およびe-dieselの何れによっても駆動可能)な内燃機関(ディーゼルエンジン)を搭載している。
【0038】
-サービスステーション-
図1は、本実施形態に係る車両情報提供システム1を構築するサービスステーションSSに設置された計量機(給油装置)2の前に車両Vが給油のために停車した状態を示す図である。また、図2は、計量機2を示す正面図である。
【0039】
これらの図に示すように、計量機2は、車両Vに給油する燃料としてレギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油、および、e-diesel(合成燃料)が選択可能に構成されている。軽油およびe-dieselはディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという場合もある)を搭載した車両Vに対して選択的に給油される燃料である。
【0040】
e-dieselは、周知の如く、CO2とH2とを合成して生成された複数の炭化水素化合物の集合体で成る合成燃料であって、燃焼時の環境負荷が小さい(軽油に比べてCO2排出量が少ない)ものである。また、このe-dieselを生成するに当たってH2は水の電気分解によって製造されることになるが、この際に使用される電力の生成(発電)のためのエネルギによっては環境負荷が大きくなってしまう(当該e-dieselのLCAが大きくなってしまう)可能性がある。例えば火力発電によって生成された電力を使用してH2が製造されていた場合には、電力生成時のCO2排出量が多くなり環境負荷が大きくなる傾向となる。これに対し、風力発電、太陽光発電、地熱発電といった再生可能エネルギによる発電によって生成された電力を使用してH2が製造れていた場合には、電力生成時のCO2排出量を少なくできて環境負荷を小さくすることができる。このため、前記e-dieselの生成に当たってのH2の製造は再生可能エネルギによる発電を利用したものであることが好ましい。尚、燃料をe-dieselや、公知のe-gasolineや、これらの総称であるe-fuelと呼ぶ場合、当該燃料は、H2の製造に再生可能エネルギによる発電電力を利用したものであることが一般的である。
【0041】
計量機2は、各燃料種類毎に個別の給油ノズル22,23,24,25を備えている。また、計量機2は、給油する燃料を選択するためのタッチパネル式の液晶ディスプレイ等で成る操作パネル21を備えている。このため、給油者(サービスステーションSSの作業者、サービスステーションSSがセルフスタンドの場合には車両Vの運転者)は、操作パネル21の操作によって給油する燃料を選択し、その選択した種類の燃料(油種)の給油ノズル22,23,24,25を把持して車両Vの給油口から給油を行うことになる。
【0042】
図1に示すように、本実施形態におけるサービスステーションSSには、計量機2の操作パネル21およびその周辺を撮影するためのカメラ(監視カメラ)3が設置されている。例えば、計量機2の上部に設置された屋根(サービスステーションSSの屋根:キャノピーとも呼ばれる)Rの下面にカメラ3が設置されている。このカメラ3は、サービスステーションSSに複数台の計量機2が設置されている場合に各計量機2それぞれに応じた専用のカメラとして設置されていてもよいし(1台の計量機2に対して1台のカメラ3が設置される構成)、1台のカメラ3で複数の計量機2それぞれの操作パネル21が撮影可能とされたものであってもよい。
【0043】
-車両-
次に、本実施形態に適用される車両Vについて説明する。この車両Vは、駆動力源としてディーゼルエンジンを搭載したものである。このディーゼルエンジンは、前述したように燃料として軽油およびe-dieselが使用可能であり、給油する燃料としては、これら軽油およびe-dieselのうち給油者が任意に選択可能となっている。つまり、当該車両Vに給油するに当たって、軽油を給油する場合には、給油者が計量機2の操作パネル21の操作によって軽油を選択し、軽油の給油ノズル24を把持して車両Vの給油口から給油を行うことになる。また、e-dieselを給油する場合には、給油者が計量機2の操作パネル21の操作によってe-dieselを選択し、e-dieselの給油ノズル25を把持して車両Vの給油口から給油することになる。
【0044】
本実施形態に適用される車両Vは、車室内の前席前方に配設されたインストルメントパネルの背景色が変更可能となっている。図3(a)は、インストルメントパネル4の一例を示している。この図3(a)に示すように、インストルメントパネル4は、カラー液晶パネルとして構成されている。そして、このインストルメントパネル4内における表示エリアとしては、車速表示エリア41、シフト位置表示エリア42、フューエルゲージエリア43、エネルギモニタエリア44、時計表示エリア45等が配置されており、それ以外のエリアは背景エリア46とされている。車速表示エリア41、シフト位置表示エリア42、フューエルゲージエリア43、エネルギモニタエリア44、時計表示エリア45それぞれの表示形態は公知であるのでここでの説明は省略する。
【0045】
背景エリア46は、例えば3色の表示切り替え(本発明でいう車両情報の提供形態の変更)が可能となっている。例えば背景エリア46の一部または全体に背景エリア表示用の複数種類のLED素子(図示省略)を配置させておき、これらLED素子に通電を行わないことで黒色(消灯状態の色)に表示される第1表示状態、背景エリア46を構成する青色LED素子に通電を行うことで該青色LED素子を点灯させて背景(背景エリア46)を青色にする第2表示状態、背景エリア46を構成する緑色LED素子に通電を行うことで該緑色LED素子を点灯させて背景(背景エリア46)を緑色にする第3表示状態の間での背景色の切り替えが可能となっている(この背景色の切り替え動作については後述する)。尚、各色に応じたLED素子を使用する場合に代えて、背景エリア表示用のLED素子を白色発光のものとし該LED素子からの光をカラーフィルタに透過させる(各色のカラーフィルタ毎にLED素子を配置し、点灯させるLED素子を選択する)ことでインストルメントパネル4の背景色を変更する構成としてもよい。尚、この背景エリア46の範囲および色(背景色)としては、それ以外のエリア41,42,43,44,45の表示の視認性を低下させないように予め設定されている。また、各表示状態における色は前述したものには限定されず任意に設定可能である。
【0046】
また、図4(a)に示すように、本実施形態に適用される車両Vは、後面にエコランプ(本発明でいう表示ランプ)5が設けられている。このエコランプ5は、車両Vの後面に設けられたテールランプTLの下側に配設されている。このエコランプ5も例えば3色の表示切り替え(本発明でいう車両情報の提供形態の変更)が可能となっている。例えば複数種類のLED素子(図示省略)を配置させておき、これらLED素子に通電を行わないことで黒色または白色(消灯状態の色)に表示される第1表示状態、エコランプ5を構成する青色LED素子に通電を行うことで該青色LED素子を点灯させてエコランプ5を青色にする第2表示状態、エコランプ5を構成する緑色LED素子に通電を行うことで該緑色LED素子を点灯させてエコランプ5を緑色にする第3表示状態の間での切り替えが可能となっている(このエコランプ5の切り替え動作についても後述する)。尚、この場合も、各色に応じたLED素子を使用する場合に代えて、エコランプ5を白色発光のLED素子とし該LED素子からの光をカラーフィルタに透過させる(各色のカラーフィルタ毎にLED素子を配置し、点灯させるLED素子を選択する)ことでエコランプ5の色を変更する構成としてもよい。尚、各表示状態における色は前述したものには限定されず任意に設定可能である。また、エコランプ5は、その点灯時に、テールランプTLを構成するストップランプやバックランプの点灯との誤認を招かないように色や光量が予め設定されている。また、エコランプ5の配設位置としては車両Vの後面に限定されることなく、任意に設定可能である。例えば、車両Vの前面におけるヘッドランプの下側に配設したり、車両Vの側面に配置してもよい。また、エコランプ5の配設個数も任意に設定可能である。
【0047】
-車両情報提供システム-
次に、本実施形態に係る車両情報提供システム1について説明する。図5は、車両情報提供システム1のブロック図である。この図5に示すように、車両情報提供システム1は、サービスステーションSSに設置されたシステムサーバ100、および、車両Vに搭載された車両表示制御装置200を備えている。
【0048】
(システムサーバ)
システムサーバ100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、制御プログラムを記憶するROM(Read-Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random-Access Memory)、および、入出力ポート等を備えている。
【0049】
そして、このシステムサーバ100は、前記カメラ3および後述する情報入力装置6が情報の送受信が可能に接続されていると共に、前記制御プログラムによって実現される機能部として、画像情報送受信部101、決済情報送受信部102、駆動エネルギ源生成情報送受信部103を備えている。
【0050】
画像情報送受信部101は、カメラ3が撮影した画像(計量機2の操作パネル21およびその周辺の撮影画像)の情報を受信し、該画像情報を車両Vの車両表示制御装置200に送信する。つまり、車両Vへの給油に当たり計量機2の操作パネル21の操作状況や何れの給油ノズルが使用されたかの画像情報が車両Vの車両表示制御装置200に送信されることになる。
【0051】
この場合に、サービスステーションSSに複数の計量機2が設置されていたとしても、画像情報に係る計量機(カメラ3によって撮影されている画像中の計量機)2によって給油されている車両Vと当該画像情報を受信する車両(当該画像情報を受信する車両表示制御装置200を搭載している車両)Vとは同一の車両Vであることが必要である。
【0052】
このため、システムサーバ100と車両表示制御装置200との通信は、画像情報を受信して利用する車両Vが特定されるような通信形態によって行われる。例えば、1台の計量機2に対して1台のカメラ3が設置される構成となっている場合には、給油が行われる車両Vの停車エリアを特定しておき(計量機2の前の車両1台分の範囲を停車エリアとして特定しておき)、画像情報の送信元であるカメラ3と停車エリアとを予め関連付けておき、画像情報の送信元であるカメラ3に対応する停車エリアのみに限定して当該画像情報を送信することで、画像情報に係る計量機2によって給油されている車両Vと当該画像情報を受信する車両Vとを同一車両Vとする構成となっている。また、1台のカメラ3で複数の計量機2それぞれの操作パネル21が撮影可能とされた構成となっている場合には、車両Vの給油開始時に当該車両Vの固体情報(ID情報)をシステムサーバ100が取得し(例えば近距離無線通信を行うことで固体情報を取得し)、送信する画像情報に当該固体情報を関連付け(紐付け)ておくようにすることで、画像情報を受信した車両Vの車両表示制御装置200が自身の給油に係る画像情報であるか否かを判断できるようにしておき、自身の給油に係る画像情報のみを抽出する(他の車両の給油に係る画像情報を削除する)構成とする。
【0053】
決済情報送受信部102は、車両Vの給油後に運転者が決済(料金の支払い)を行った際の情報(給油量と決済金額との情報)を受信し、該決済情報を車両Vの車両表示制御装置200に送信する。つまり、システムサーバ100に備えられた決済機能部が認識している給油量と決済金額との情報を決済情報送受信部102が受信し、該情報を車両Vの車両表示制御装置200に送信するものとなっている。これは、一般に各燃料はそれぞれ単価(単位量当たりの価格)が異なっているので、給油量と決済金額との情報から燃料の単価を算出することができるため、これを利用して給油された燃料の種類を求めるためのものである。
【0054】
この場合にも、サービスステーションSSに複数の計量機2が設置されていたとしても、決済情報に係る計量機(給油に伴って決済が行われる計量機)2によって給油された車両Vと当該決済情報を受信する車両(当該決済情報を受信する車両表示制御装置200を搭載している車両)Vとは同一の車両Vであることが必要である。このため、前述した画像情報送受信部101からの画像情報の送信の場合と同様の構成によって、決済情報に係る計量機2によって給油された車両Vと当該決済情報を受信する車両Vとを同一車両Vとする構成となっている。
【0055】
駆動エネルギ源生成情報送受信部103は、給油された燃料(駆動エネルギ源)の生成時の情報を受信する。システムサーバ100には、サービスステーションSSに設置されて当該サービスステーションSSの作業者が情報入力可能な情報入力装置6が設置されている。この情報入力装置6に入力される情報は、各種の燃料それぞれにおける個別の情報であって、単価および燃料生成時情報等が挙げられる。単価は、前述した如く燃料の単位量当たりの価格であって、任意に設定が可能となっている。燃料生成時情報は、燃料の生成工程の情報である。例えば、e-dieselの場合、前述したように生成するに当たってH2が水の電気分解によって製造されることになるが、この際に使用される電力の生成(発電)のためのエネルギが再生可能エネルギによるものであるか否かといった情報が燃料生成時情報に相当する。つまり、当該e-dieselを生成した際における環境負荷の大きさの指標が燃料生成時情報(当該燃料のLCAの情報に相当)として情報入力装置6に入力されることになる。
【0056】
より具体的には、サービスステーションSSの作業者が燃料の元売会社等から燃料生成時情報を取得して情報入力装置6のキーボードから燃料生成時情報(例えば環境負荷の大きさの指標としての数値)を入力するようになっていてもよいし、燃料の元売会社からの納品伝票に付されている2次元コードや3次元コードに燃料生成時情報が書き込まれており、コードリーダによってその情報を読み取ることで当該情報が情報入力装置6に入力されるようになっていてもよい。このようにして情報入力装置6に入力された燃料生成時情報は情報入力装置6から駆動エネルギ源生成情報送受信部103に送信されることになる。また、情報入力装置6に入力された燃料の単価の情報は情報入力装置6から前記決済情報送受信部102に送信されることになる。
【0057】
(車両表示制御装置)
車両表示制御装置200も前記システムサーバ100と同様、例えばCPU等のプロセッサ、制御プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、および、入出力ポート等を備えている。
【0058】
そして、この車両表示制御装置200は、前記制御プログラムによって実現される機能部として、駆動エネルギ源情報受信部201、駆動エネルギ源情報特定部202、提供情報レベル特定部203、指示情報作成部204、指示情報出力部205を備えている。
【0059】
駆動エネルギ源情報受信部201は、画像情報送受信部101からの画像情報(車両Vへの給油に当たり計量機2の操作パネル21の操作状況や何れの給油ノズルが使用されたかの画像情報)、決済情報送受信部102からの決済情報(車両Vの給油後に運転者が決済を行った際の情報(給油量と決済金額の情報))、駆動エネルギ源生成情報送受信部103からの駆動エネルギ源生成情報(単価および燃料生成時情報等)を受信する。
【0060】
また、駆動エネルギ源情報受信部201は、車両Vに搭載されているセンサ(以下、車両搭載センサという場合もある)7の出力値(以下、センサ出力という場合もある)であって、燃料の種類に応じて出力特性が変化するセンサ出力の情報を受信する。以下、具体的に説明する。ここでは、車両搭載センサ7としてディーゼルエンジンの排気系に設けられたPMセンサを例に挙げて説明する。
【0061】
図6は、排気系に備えられたPMセンサ(車両搭載センサ)7の構成を模式的に示す図である。この図6に示すように、排気管71には、排気(排気ガス)中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter:PM(本発明でいう、駆動力源の駆動に伴って排出されるガス中に含まれている特定物質))の濃度を測定可能なPMセンサ7が配設されている。このPMセンサ7は、排気の流れEXを受けるように排気管71内にプロトン導電体72を配設し、その一方の面(図では左面)に測定電極73を、他方の面には基準電極74をそれぞれ設けたものである。2つの電極73,74の間には電気回路75から所定の電圧が印加されており、排気中に含まれるPMが測定電極73に付着すると、その付着量に応じた信号を出力する。すなわち、測定電極73の表面において付着したPMが電気化学反応によって消費されると、生成されたプロトンがプロトン導電体72の内部を他方の面に向かって移動する。これにより測定電極73と基準電極74との間に電流が流れて、その電流値に対応する信号が電気回路75から出力される。尚、PMセンサ7としては、一対の電極間で堆積したPMによる抵抗値の変化を検出する抵抗測定式のものであってもよい。
【0062】
一般にディーゼルエンジンにおいては、軽油を使用する場合に比べてe-dieselを使用する場合の方がPM排出量は少なくなる。このため、PMセンサ7のセンサ出力としては、軽油を使用する場合に比べてe-dieselを使用する場合の方が低くなる傾向となる。図7は、燃料の種類に応じたPMセンサ7のセンサ出力変化の一例を示す図である。この図7では、燃料タンク内に軽油のみが蓄えられている場合のセンサ出力の変化の一例を一点鎖線で示し、燃料タンク内に軽油およびe-dieselの両方が蓄えられている場合のセンサ出力の変化の一例を実線で示し、燃料タンク内にe-dieselのみが蓄えられている場合のセンサ出力の変化の一例を破線で示している。このように、ディーゼルエンジンの始動後の所定時間経過以降にあっては、燃料全体に対するe-dieselの割合が多いほどセンサ出力の変化勾配(時間の経過に伴うセンサ出力の増加量)としては小さくなる傾向にある。このため、図中に実線で示したセンサ出力の変化勾配も、燃料タンク内における軽油とe-dieselとの割合に応じて異なるものとなる。
【0063】
駆動エネルギ源情報特定部202は、駆動エネルギ源情報受信部201が受信した各種情報から、車両Vに給油された燃料の種類を特定する。例えば、軽油が給油される状況では、画像情報送受信部101からの画像情報に基づいて、計量機2の操作パネル21において軽油が選択される操作が行われたことや軽油の給油ノズル24から給油が行われたことが判断され、決済情報送受信部102からの決済情報に基づいて算出された燃料の単価が軽油に該当するものとなる。前記画像情報に基づいた前記判断は周知の画像マッチング処理等を利用して行われる。また、その後、ディーゼルエンジンが始動されてからの所定時間経過以降にあっては、PMセンサ7のセンサ出力の変化勾配としては軽油に相当したものが得られることになる。一方、e-dieselが給油される状況では、画像情報送受信部101からの画像情報に基づいて、計量機2の操作パネル21においてe-dieselが選択される操作が行われたことやe-dieselの給油ノズル25から給油が行われたことが判断され、決済情報送受信部102からの決済情報に基づいて算出された燃料の単価がe-dieselに該当するものとなる。また、駆動エネルギ源生成情報送受信部103からの燃料生成時情報に基づいて、当該e-dieselの生成に当たっての環境負荷の大きさのレベル(例えばH2の製造に当たって使用された電力の生成のためのエネルギが再生可能エネルギであったか否かの情報に基づく環境負荷の大きさのレベル)が特定されることになる。また、その後、ディーゼルエンジンが始動されてからの所定時間経過以降にあっては、PMセンサ7のセンサ出力の変化勾配としてはe-dieselに相当したものが得られることになる。尚、燃料タンク内に軽油が残っている場合には、軽油とe-dieselとの混合割合に応じたPMセンサ7のセンサ出力の変化勾配が得られることになる。
【0064】
提供情報レベル特定部203は、駆動エネルギ源情報特定部202によって特定された燃料(車両Vに給油された燃料の種類)において、その環境に与える影響度合いのレベル(提供情報レベル)を特定する。本実施形態では、当該レベルを3段階のうちの一つに特定するようにしている。
【0065】
先ず、駆動エネルギ源情報特定部202によって特定された燃料が軽油であった場合には、提供情報レベル特定部203は提供情報レベルを「レベル1」として特定する。この「レベル1」は、ディーゼルエンジンに使用される燃料(軽油およびe-diesel)のうち最も環境負荷が大きい燃料であることを意味している。具体的には、画像情報送受信部101からの画像情報に基づいた燃料の判定動作、および、決済情報送受信部102からの決済情報に基づいた燃料の判定動作の両方において燃料が軽油であると判定された場合に、提供情報レベル特定部203は提供情報レベルを「レベル1」として特定する。尚、何れか一方の判定で燃料が軽油であると判定され、他方の判定で燃料が特定されない場合においても、提供情報レベル特定部203が提供情報レベルを「レベル1」として特定するようになっていてもよい。
【0066】
次に、駆動エネルギ源情報特定部202によって特定された燃料がe-dieselであった場合に、駆動エネルギ源生成情報送受信部103から受信した燃料生成時情報として、H2が水の電気分解によって製造されるに当たって使用された電力が再生可能エネルギ以外のエネルギによって発電されたものであるとの情報が含まれている場合には、提供情報レベル特定部203は提供情報レベルを「レベル2」として特定する。この「レベル2」は、ディーゼルエンジンに使用される燃料として軽油を使用する場合に比べて環境負荷が小さい燃料であることを意味している。
【0067】
そして、駆動エネルギ源情報特定部202によって特定された燃料がe-dieselであった場合に、駆動エネルギ源生成情報送受信部103から受信した燃料生成時情報として、H2が水の電気分解によって製造されるに当たって使用された電力が再生可能エネルギによって発電されたものであるとの情報が含まれている場合には、提供情報レベル特定部203は提供情報レベルを「レベル3」として特定する。この「レベル3」は、ディーゼルエンジンに使用される燃料のうち最も環境負荷が小さい燃料であることを意味している。この場合における燃料がe-dieselであることの判定は、画像情報送受信部101からの画像情報に基づいた燃料の判定動作、および、決済情報送受信部102からの決済情報に基づいた燃料の判定動作の両方において燃料がe-dieselであると判定された場合に、e-dieselであるとされる(提供情報レベルとしては「レベル2」または「レベル2」であると特定する)。尚、何れか一方の判定で燃料がe-dieselであると判定され、他方の判定で燃料が特定されない場合においても、e-dieselであるとされる(提供情報レベルとしては「レベル2」または「レベル2」であると特定する)ようになっていてもよい。
【0068】
指示情報作成部204は、提供情報レベル特定部203によって特定された提供情報レベルに応じた情報提供形態を指示するための指示情報を作成する。具体的には、インストルメントパネル4に対する背景色の指示情報、および、エコランプ5に対する指示情報を作成する。
【0069】
インストルメントパネル4に対する背景色の指示情報として、提供情報レベルが「レベル1」に特定されている場合には、第1表示状態(LED素子に通電を行わないことで黒色(消灯状態の色)に表示される第1表示状態)とする指示情報を作成する。この場合、インストルメントパネル4は、図3(a)に示す第1表示状態となる。この図3(a)では、背景エリア46を白抜きにしていることで消灯状態の色を表している。また、提供情報レベルが「レベル2」に特定されている場合には、第2表示状態(背景エリア46を構成する青色LED素子に通電を行うことで該青色LED素子を点灯させて背景(背景エリア46)を青色にする第2表示状態)とする指示情報を作成する。この場合、インストルメントパネル4は、図3(b)に示す第2表示状態となる。この図3(b)では、背景エリア46にドットを付していることで青色となっていることを表している。また、提供情報レベルが「レベル3」に特定されている場合には、第3表示状態(背景エリア46を構成する緑色LED素子に通電を行うことで該緑色LED素子を点灯させて背景(背景エリア46)を緑色にする第3表示状態)とする指示情報を作成する。この場合、インストルメントパネル4は、図3(c)に示す第3表示状態となる。この図3(c)では、背景エリア46に図3(b)よりも密にドットを付していることで緑色となっていることを表している。
【0070】
一方、エコランプ5に対する指示情報として、提供情報レベルが「レベル1」に特定されている場合には、第1表示状態(エコランプ5を構成するLED素子に通電を行わないことで黒色または白色(消灯状態の色)に表示される第1表示状態)とする指示情報を作成する。この場合、エコランプ5は、図4(a)に示す第1表示状態となる。この図4(a)では、エコランプ5を白抜きにしていることで消灯状態の色を表している。また、提供情報レベルが「レベル2」に特定されている場合には、第2表示状態(エコランプ5を構成する青色LED素子に通電を行うことで該青色LED素子を点灯させてエコランプ5を青色にする第2表示状態)とする指示情報を作成する。この場合、エコランプ5は、図4(b)に示す第2表示状態となる。この図4(b)では、エコランプ5にドットを付していることで青色となっていることを表している。また、提供情報レベルが「レベル3」に特定されている場合には、第3表示状態(エコランプ5を構成する緑色LED素子に通電を行うことで該緑色LED素子を点灯させてエコランプ5を緑色にする第3表示状態)とする指示情報を作成する。この場合、エコランプ5は、図4(c)に示す第3表示状態となる。この図4(c)では、エコランプ5に図4(b)よりも密にドットを付していることで緑色となっていることを表している。これら図4(a)~(c)は一つの実施形態であり、他の表示形態であってもよい。
【0071】
指示情報出力部205は、指示情報作成部204によって作成された前記指示情報(インストルメントパネル4およびエコランプ5それぞれに対する指示情報)を受信し、その指示情報を指令信号としてインストルメントパネル4およびエコランプ5それぞれに出力する。これにより、インストルメントパネル4およびエコランプ5それぞれは、前述したように指示情報に応じた車両情報の提供形態となる。
【0072】
-車両情報提供処理の手順-
次に、前述の如く構成された車両情報提供システム1における車両情報提供処理の手順について説明する。尚、以下の説明は、ディーゼルエンジンを搭載した車両Vの場合である。図8は、車両情報提供処理の手順を示すフローチャート図である。このフローチャートは、前記車両表示制御装置200において所定時間毎に繰り返して実施される。
【0073】
先ず、ステップST1において、現在、車両Vのスタートスイッチ(IGスイッチ)がONとなっているか否かを判定する。
【0074】
スタートスイッチ(IGスイッチ)がONとなっておらず、ステップST1でNO判定された場合には、ステップST2に移り、現在、給油中であるか否かが判定される。この判定は、例えば、車両Vの給油口のリッドの開閉状態を検知するセンサやスイッチの検知信号に基づいて行われる。
【0075】
給油中であって、ステップST2でYES判定された場合には、ステップST3に移り、給油が完了したか否かを判定する。例えば給油口のリッドの閉鎖がセンサによって検知された場合に給油が完了したと判定される。
【0076】
給油が完了し、ステップST3でYES判定された場合には、ステップST4に移り、システムサーバ100から各種情報を受信する。具体的には、画像情報送受信部101からの画像情報(計量機2の操作パネル21の操作状況や何れの給油ノズルが使用されたかの画像情報)、決済情報送受信部102からの決済情報(運転者が決済を行った際の情報(給油量と決済金額の情報))、駆動エネルギ源生成情報送受信部103からの情報(単価および燃料生成時情報等)を、車両表示制御装置200の駆動エネルギ源情報受信部201が受信する。尚、これらの情報のうち、画像情報送受信部101からの画像情報および駆動エネルギ源生成情報送受信部103からの情報については給油中(ステップST2でYES判定された時点からステップST3でYES判定されるまでの期間中)に受信されるようになっていてもよい。
【0077】
ステップST5では、駆動エネルギ源情報受信部201が受信した情報に基づいて燃料の種類が特定される(駆動エネルギ源情報特定部202による燃料の種類の特定動作)。ここでは、ディーゼルエンジンに給油された燃料が軽油であるのかe-dieselであるのかが特定される(燃料がe-dieselであった場合には、H2の製造に当たって使用された電力の生成のためのエネルギが再生可能エネルギであったか否かの特定も含む)。
【0078】
その後、ステップST6に移り、ステップST5で特定された燃料のエコレベルの特定を行う。具体的には、ステップST5で特定された燃料が軽油であった場合には「レベル1」として特定する。また、ステップST5で特定された燃料がe-dieselであった場合において、そのe-dieselに係る燃料生成時情報として、H2が水の電気分解によって製造されるに当たって使用された電力が再生可能エネルギ以外のエネルギによって発電されたものであることの情報が含まれている場合には「レベル2」として特定し、再生可能エネルギによって発電されたものであることの情報が含まれている場合には「レベル3」として特定する。
【0079】
このようにして燃料のエコレベルの特定を行った後、ステップST7に移り、当該エコレベルに応じた情報提供形態を指示するための指示情報を作成(指示情報作成部204によって指示情報を作成)すると共に、指示情報に応じた指令信号をインストルメントパネル4およびエコランプ5それぞれに出力する(指示情報出力部205による指令信号の出力)。
【0080】
これにより、ステップST8では、インストルメントパネル4およびエコランプ5それぞれにおいて情報提供動作が実行されることになる。具体的に、給油された燃料が軽油であったことで提供情報レベルが「レベル1」に特定されている場合には、インストルメントパネル4にあっては背景エリア46のLED素子に通電を行わないことで背景色を黒色(消灯状態の色)に表示される第1表示状態となり(図3(a)に示す状態となり)、エコランプ5にあっても、LED素子に通電を行わないことで黒色または白色(消灯状態の色)に表示される第1表示状態となる(図4(a)に示す状態となる)。
【0081】
また、給油された燃料がe-dieselであり且つH2が水の電気分解によって製造されるに当たって使用された電力が再生可能エネルギ以外のエネルギによって発電されたものであることの情報が含まれていることで提供情報レベルが「レベル2」に特定されている場合には、インストルメントパネル4にあっては背景エリア46を構成する青色LED素子に通電を行うことで該青色LED素子を点灯させて背景(背景エリア46)を青色にする第2表示状態となり(図3(b)に示す状態となり)、エコランプ5にあっても、青色LED素子に通電を行うことで該青色LED素子を点灯させて青色にする第2表示状態となる(図4(b)に示す状態となる)。
【0082】
また、給油された燃料がe-dieselであり且つH2が水の電気分解によって製造されるに当たって使用された電力が再生可能エネルギによって発電されたものであることの情報が含まれていることで提供情報レベルが「レベル3」に特定されている場合には、インストルメントパネル4にあっては背景エリア46を構成する緑色LED素子に通電を行うことで該緑色LED素子を点灯させて背景(背景エリア46)を緑色にする第3表示状態となり(図3(c)に示す状態となり)、エコランプ5にあっても、緑色LED素子に通電を行うことで該緑色LED素子を点灯させて緑色にする第3表示状態となる(図4(c)に示す状態となる)。
【0083】
一方、スタートスイッチ(IGスイッチ)がONとなっており、ステップST1でYES判定された場合には、ステップST9に移り、PMセンサ7からセンサ出力(出力値)を受信し、その情報を記憶する。
【0084】
また、ステップST2でNO判定された(給油中でない)場合には、車両Vが信号待ち等で停車している場合が想定されるため、そのままリターンされる。
【0085】
ステップST10では、前回の給油から所定時間以上エンジンが駆動したか否かを判定する。この動作は、ステップST2でYES判定されたタイミングでリセットされるタイマを備えさせておき、エンジンの駆動中(エンジントルクによる走行中およびアイドリング運転中を含む)の積算時間を計測することによって行われる。ここで規定される所定時間は、PMセンサ7のセンサ出力の変化勾配が燃料の種類を判別できる変化勾配として現れる時間であって、実験やシミュレーションによって設定されたものである。
【0086】
そして、前回の給油からのエンジンの駆動時間が所定時間未満である場合には、未だ燃料の種類に応じたPMセンサ7からのセンサ出力は得られていない(燃料の種類が判定できる程度のセンサ出力の変化勾配が得られていない)としてNO判定され、そのままリターンされる。
【0087】
一方、前回の給油から所定時間以上エンジンが駆動しており、ステップST10でYES判定された場合には、ステップST5に移り、PMセンサ7からのセンサ出力の変化勾配に基づいて燃料の種類が特定される(駆動エネルギ源情報特定部202による燃料の種類の特定動作)。その後のステップST6~ステップST8の動作は前述と同様に行われ、提供情報レベルに応じてインストルメントパネル4およびエコランプ5それぞれにおいて情報提供動作が実行されることになる。このPMセンサ7からのセンサ出力の変化勾配に基づいた燃料の種類の特定および提供情報レベルに応じた情報提供動作は、燃料タンクへの給油が行われた時点(ステップST2でYES判定された時点)で解除され、ステップST4以降の動作による情報提供動作に切り替えられることになる。
【0088】
以上の動作が繰り返される。
【0089】
-実施形態の効果-
以上説明したように本実施形態では、燃料タンクに蓄えられている燃料の種類を特定し、この特定された燃料の種類に応じた指示情報を作成して、該指示情報に従ってインストルメントパネル4およびエコランプ5における車両情報の提供形態を変更するようにしている。これにより、燃料の種類に応じた車両情報の提供形態を得ることができ、同一車両モデルであっても、使用している燃料の種類が異なれば環境に与える影響(環境負荷)が異なる場合があることを考慮した適切な車両情報(環境に配慮した車両であるか否かの情報)を提供することができる。
【0090】
また、本実施形態では、車両情報の提供形態としてインストルメントパネル4の表示色を変更するようにしていることから、車両Vの運転者が、インストルメントパネル4の表示色と燃料の種類に起因する環境負荷の大きさとの関係を予め認識していることを条件として、適切な車両情報(環境に配慮した車両Vであるか否かの情報)を運転者に提供することが可能になる。また、運転者に環境負荷を小さくする運転(急発進や急加速を避ける運転)を意識させたり、運転者に社会的ステータスの高さを意識させたりすることもできる。
【0091】
また、本実施形態では、車両情報の提供形態としてエコランプ5の点灯状態を変更するようにしていることから、エコランプ5の点灯状態と燃料の種類に起因する環境負荷の大きさとの関係が周知されていることを条件として、適切な車両情報(環境に配慮した車両Vであるか否かの情報)を車外に向けて(例えば通行人に向けて)提供することが可能になる。また、環境に配慮した車両Vであることや車両Vの商品性の高さを外部へアピールすることもできる。
【0092】
また、本実施形態では、サービスステーションSSにおける車両Vへの給油中や供給完了時に燃料の種類を特定し、それに応じた車両情報の提供を可能にしていることから、適切な車両情報の提供形態を早期に実現することができる。このため、過去に燃料タンクに供給された燃料(既にある程度消費された燃料)の情報に起因する車両情報(適切でない車両情報)の提供形態が継続されてしまうといったことを抑制できる。
【0093】
また、本実施形態では、燃料の生成時情報を反映させた車両情報の提供を可能にしている。同一名称の燃料であっても、環境負荷が大きい状況で生成されたものと環境負荷が小さい状況で生成されたものとではLCAに差が生じていることになるが、本実施形態では、そのことを反映させた車両情報を提供でき、よりいっそう詳細な車両情報を提供することが可能になる。
【0094】
また、本実施形態では、ディーゼルエンジンの始動後の所定時間経過以降にあっては、PMセンサ7のセンサ出力の変化勾配を利用して燃料を特定するようにしている。このため、サービスステーションSS等の外部からの情報を利用する必要なしに燃料の情報を特定することができる。つまり、外部との通信を必要とすることなしに車両情報を提供することが可能になる。
【0095】
-変形例1-
次に変形例1について説明する。本変形例は、車両情報の提供形態が前述した実施形態のものと異なっている。このため、ここでは、車両情報の提供形態についてのみ説明する。
【0096】
本変形例に係る車両Vは、車体の色を変更可能とする公知の車体色変更手段を備えたものであり、車両情報の提供形態としては、この車体色変更手段によって車体の色を変更するようにしたものである。
【0097】
車体の色を変更するための車体色変更手段としては、例えば、車体パネルの表面全体に、負に帯電した特定色の顔料と正に帯電した他の特定色の顔料を含んだマイクロカプセルを設け、車体パネルの磁界を変化させることで、一方の色の顔料を車体パネルの表面側に集めることで車体の色を変更するといったものが挙げられる。また、車体パネルに対する消磁を行うことで車体の色を更に他の色(マイクロカプセルに含まれる顔料以外の色)に変更することもできる。この技術を利用し、提供情報レベルに応じて車体の色を変更するようにしている。
【0098】
図9は、前述した実施形態の場合と同様に3種類の提供情報レベルに応じて車体の色を変更するようにしたものであり、図9(a)は提供情報レベルが前述した「レベル1」に特定された場合の第1表示状態(例えば車体の色を白色とした状態)を示しており、図9(b)は提供情報レベルが前述した「レベル2」に特定された場合の第2表示状態(例えば車体の色を青色とした状態)を示しており、図9(c)は提供情報レベルが前述した「レベル3」に特定された場合の第3表示状態(例えば車体の色を緑色とした状態)を示している。また、各表示状態における色は前述したものには限定されず任意に設定可能である。
【0099】
本変形例においては、車体の色と燃料の種類に起因する環境負荷の大きさとの関係が周知されていることを条件として、適切な車両情報を車外に向けて(例えば通行人に向けて)提供することが可能になる。また、環境に配慮した車両Vであることや車両Vの商品性の高さを外部へアピールすることもできる。
【0100】
-変形例2-
次に変形例2について説明する。本変形例は、PMセンサ7のセンサ出力変化に基づいて燃料の種類を特定する動作が前述した実施形態のものと異なっている。このため、ここでは、PMセンサ7のセンサ出力変化に基づいた燃料の種類の特定動作についてのみ説明する。
【0101】
本変形例では、燃料タンク内に軽油およびe-dieselの両方が存在している状態から燃料が消費されていくのに伴って提供情報レベルが変更されていき、インストルメントパネル4、エコランプ5および車体色変更手段の少なくとも一つを利用して車両情報の提供形態を変更するようにしたものである。
【0102】
図10は、本変形例2におけるPMセンサ7のセンサ出力変化の一例を示す図である。この図10に示すセンサ出力変化は、初期状態では、燃料タンク内における軽油の量がe-dieselよりも多くなっており、その後、燃料の消費に伴って(特に軽油が優先的に消費されることに伴って)次第にe-dieselの割合が多くなっていくことで、センサ出力が次第に低下していく状況である。
【0103】
そして、本変形例では、センサ出力が図中におけるOP1以上である場合には提供情報レベルを「レベル1」として特定し、センサ出力が図中におけるOP1未満で且つOP2以上である場合には提供情報レベルを「レベル2」として特定し、センサ出力が図中におけるOP2未満である場合には提供情報レベルを「レベル3」として特定するようにしている。
【0104】
図10からも判るように、燃料の消費に伴ってe-dieselの割合が多くなっていくことで、提供情報レベルは「レベル1」→「レベル2」→「レベル3」と推移していく。これにより、例えばインストルメントパネル4、エコランプ5および車体色変更手段による車体の色も「第1表示状態」→「第2表示状態」→「第3表示状態」と変化していくことになる。
【0105】
このように、本変形例では、燃料タンクへの給油が行われることなく、燃料の消費に伴って車両情報の提供形態が変更していくようになっている。これにより、環境に与える影響(環境負荷)をリアルタイムで適切に提供することができる。
【0106】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態および前記各変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0107】
例えば、前記実施形態および前記各変形例では、車両情報提供システム1を構築する車両Vとしては内燃機関のみを駆動力源とする所謂コンベンショナル車両としていた。本発明はこれに限らず、電気自動車であってもよい。この場合、駆動エネルギ源は電力であり、駆動力源は電動モータである。そして、駆動エネルギ源である電力の生成時における環境負荷の大きさの情報に応じて、インストルメントパネル4やエコランプ5や車体色変更手段を使用した車両情報の提供形態を変更することになる。また、車両Vとしてプラグインハイブリッド車両を適用した場合には、駆動エネルギ源は燃料および電力であり、駆動力源は内燃機関および電動モータである。そして、燃料の種類、当該燃料の生成時における環境負荷の大きさの情報、電力の生成時における環境負荷の大きさの情報に応じて、インストルメントパネル4やエコランプ5や車体色変更手段を使用した車両情報の提供形態を変更することになる。また、車両Vとして水素をエネルギ源とする車両(例えば燃料電池や水素エンジン等を搭載した車両)を適用した場合には、駆動エネルギ源は水素であり、駆動力源は燃料電池スタックおよび電動モータである。そして、水素の生成時における環境負荷の大きさの情報に応じて、インストルメントパネル4やエコランプ5や車体色変更手段を使用した車両情報の提供形態を変更することになる。尚、車両Vとしてハイブリッド車両を適用した場合には、駆動エネルギ源は燃料であり、駆動力源は内燃機関および電動モータである。この場合、前記実施形態と同様に、燃料の種類、当該燃料の生成時における環境負荷の大きさの情報に応じて、インストルメントパネル4やエコランプ5や車体色変更手段を使用した車両情報の提供形態を変更することになる。
【0108】
また、前記実施形態および前記各変形例では、変更可能な提供情報レベルとして3つのレベルを設定していた。本発明はこれに限らず、2つのレベルや4つ以上のレベルに設定されるものであってもよい。つまり、インストルメントパネル4の背景色を2パターンや4パターン以上の表示状態で切り替えるものや、エコランプ5の色を2パターンや4パターン以上の表示状態で切り替えるものや、車体色を2パターンや4パターン以上の表示状態で切り替えるものとしてもよい。
【0109】
また、前記実施形態および前記各変形例では、提供情報レベルは環境負荷の大きさに応じたものであった。本発明はこれに限らず、使用している駆動エネルギ源(燃料等)が異なることに起因する種々の状況の変化に応じたものとすることもできる。例えば燃料の種類によって車両の燃焼特性(走行性能等に影響)が変化する場合に、その走行性能を車両情報としてその提供形態を変更することが挙げられる。この場合におけるインストルメントパネル4やエコランプ5や車体色の例としては、燃焼特性の変化により判断し、色を変更する。例えば、走行性能が低い場合の色を緑色とし、走行性能が高い場合の色を赤色とすること等が挙げられる。また、燃料の種類によって燃料消費率が変化する場合に、その燃料消費率を車両情報としてその提供形態を変更することも挙げられる。この場合におけるインストルメントパネル4やエコランプ5や車体色の例としては、燃料消費率が高い場合の色を赤色とし、燃料消費率が低い場合の色を緑色とすること等が挙げられる。これらの色は任意に設定可能である。
【0110】
また、前記実施形態および前記各変形例では、システムサーバ100はサービスステーションSSに設置されたものとしていた。本発明はこれに限らず、複数のサービスステーションSSの情報を統括的に管理するクラウドサーバに前記システムサーバ100としての機能を付加する構成としてもよい。また、前記駆動エネルギ源情報受信部201、駆動エネルギ源情報特定部202、提供情報レベル特定部203、指示情報作成部204、指示情報出力部205は車両Vに搭載される(車両Vに搭載された車両表示制御装置200の機能部として構成される)場合に限らず、システムサーバ100に搭載された構成としてもよい。
【0111】
また、前記実施形態および前記各変形例では、選択される燃料としては軽油およびe-dieselとしていた。本発明はこれに限らず、ガソリンとe-gasolineとを選択的に給油する場合や、周知のGTL(Gas To Liqid)と他の燃料とを選択的に給油する場合においても本発明は適用が可能である。このGTLとは、天然ガスをCOとH2に分解した後、分子構造を組み替えて生成される周知の液体燃料である。
【0112】
また、前記実施形態では、インストルメントパネル4およびエコランプ5それぞれにおいて車両情報を提供するようにしていた。つまり、車室内および車外の両方に向けて車両情報を提供するようにしていた。本発明はこれに限らず、車室内および車外のうち一方のみに車両情報を提供するようにしてもよい。
【0113】
また、前記実施形態および前記各変形例では、車両Vの内部情報によって燃料を特定するに際し、PMセンサ7からのセンサ出力を利用するようにしていた。本発明はこれに限らず、他の手段によって燃料を特定するようにしてもよい。例えば、燃料の種類によってエンジンの気筒内への燃料噴射量に対するエンジントルクが変化する場合には、この燃料噴射量とエンジントルクとの関係から燃料を特定するようにしてもよい。また、燃料の種類によって燃料消費率が変化する場合には、この燃料消費率から燃料を特定するようにしてもよい。
【0114】
また、前記実施形態および前記各変形例では、同じ名称の駆動エネルギ源(e-diesel等)であっても生成工程が互いに異なるものについては種類の異なる駆動エネルギ源(提供情報レベルが異なるものとする駆動エネルギ源)としていた。本発明はこれに限らず、名称が異なるの駆動エネルギ源のみを種類の異なる駆動エネルギ源として扱うようにしてもよい。
【0115】
尚、本発明でいう車両は、自動車以外のモビリティ車両を含む概念である。例えば、電動自転車、電動キックボード等種々の移動体を含む概念である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、複数種類の駆動エネルギ源が選択的に使用可能な駆動力源を搭載した車両の情報を提供するシステムに適用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 車両情報提供システム
3 カメラ
4 インストルメントパネル(情報提供手段)
46 背景エリア
5 エコランプ(情報提供手段)
100 システムサーバ
101 画像情報送受信部
102 決済情報送受信部
103 駆動エネルギ源生成情報送受信部
200 車両表示制御装置
202 駆動エネルギ源情報特定部
204 指示情報作成部
SS サービスステーション
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10