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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電気自動車の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B60L15/20 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022084632
(22)【出願日】2022-05-24
(65)【公開番号】P2023172668
(43)【公開日】2023-12-06
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】勇 陽一郎
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-036845(JP,A)
【文献】特開2020-068549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源としての回転機と、
エンジン、前記エンジンに連結されかつ複数の変速段を設定できる変速機、および前記エンジンと駆動輪とのトルクの伝達を遮断する発進クラッチを設けた仮想車両のモデルデータと、車速に基づいて前記モデルデータ上での前記エンジンの回転速度、および前記エンジンの回転速度に基づいて前記モデルデータ上での前記エンジンで発生させるエンジントルクを求める算出部とを有し、前記エンジンの回転速度、および前記エンジントルクに応じて前記回転機のトルクを制御するコントローラとを備えた電気自動車の制御装置であって、
前記コントローラは、
前記モデルデータ上での前記エンジンと前記駆動輪との回転速度比が、前記変速機によって設定された回転速度比に向けて変化している過渡期に、前記モデルデータ上での前記エンジンの回転速度の変化率を定めるためのパラメータを、前記過渡期でない場合の値から変更するように構成されている
ことを特徴とする電気自動車の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電気自動車の制御装置であって、
前記モデルデータ上での前記変速機の変速段を変更するシフト機構を更に備え、
前記過渡期は、前記シフト機構が操作されたことにより前記モデルデータ上での前記エンジンの回転速度を、変更された変速段の変速比に応じた回転速度に変更する変速過渡期を含む
ことを特徴とする電気自動車の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気自動車の制御装置であって、
前記パラメータは、前記エンジンの慣性モーメント値を含み、
前記コントローラは、
前記変速過渡期における前記慣性モーメント値を、前記変速過渡期でない場合と比較して減少させる
ことを特徴とする電気自動車の制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電気自動車の制御装置であって、
前記パラメータは、前記エンジントルクを含み、
前記コントローラは、
前記変速過渡期における前記エンジントルクの大きさを、前記変速過渡期でない場合と比較して増加させる
ことを特徴とする電気自動車の制御装置。
【請求項5】
駆動力源としての回転機と、
運転者に操作されて変速操作を模擬するシフト機構と、
エンジン、前記エンジンに連結されかつ複数の変速段を設定できる変速機、および前記エンジンと駆動輪とのトルクの伝達を遮断する発進クラッチを設けた仮想車両のモデルデータと、車速に基づいて前記モデルデータ上での前記エンジンの回転速度、および前記エンジンの回転速度に基づいて前記モデルデータ上での前記エンジンで発生させるエンジントルクを求める算出部とを有するコントローラとを備えた電気自動車の制御装置であって、
前記コントローラは、
前記モデルデータ上での前記エンジンの回転速度を前記シフト機構が操作されたことにより変更された変速段の変速比に応じた回転速度に変更する変速過渡期に、所定の変化率で前記エンジンの回転速度を変更するように構成され、
前記所定の変化率は、前記変速過渡期以外において前記エンジンの回転速度を求めるためのパラメータである基準エンジントルク値と基準慣性モーメントと以外のパラメータに基づいて求められる変化率である
ことを特徴とする電気自動車の制御装置。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれか一項に記載の電気自動車の制御装置であって、
前記シフト機構は、前記変速機で設定可能な変速段のうちの所定の変速段を選択する変速操作を模擬するシフトレバーを含む
ことを特徴とする電気自動車の制御装置。
【請求項7】
請求項2ないし5のいずれか一項に記載の電気自動車の制御装置であって、
前記シフト機構は、前記変速機で設定する変速段を一段階ずつ変更する変速操作を模擬するパドルスイッチを含む
ことを特徴とする電気自動車の制御装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電気自動車の制御装置であって、
前記過渡期は、前記モデルデータ上での前記発進クラッチを係合して前記電気自動車が発進する発進過渡期を含む
ことを特徴とする電気自動車の制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電気自動車の制御装置であって、
前記パラメータは、前記エンジンの慣性モーメント値を含み、
前記コントローラは、
前記発進過渡期における前記慣性モーメント値を、前記発進過渡期でない場合と比較して増加させる
ことを特徴とする電気自動車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機を駆動力源とした電気自動車において、内燃機関、および内燃機関と駆動輪とのトルクの伝達を選択的に遮断する発進クラッチを搭載した車両の挙動を模擬する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駆動力源としての回転機と駆動輪とがギヤ機構やプロペラシャフトを介して連結された電気自動車によって、エンジンと駆動輪との間に、運転者によるシフト操作に応じた変速段を設定する手動変速機を備えたMT車両の挙動を模擬するように構成された制御装置が記載されている。この電気自動車は、運転者によって操作される動作要求入力装置としてのアクセルペダル、シフトレバー、およびクラッチペダルを備えていて、制御装置は、それらの動作要求入力装置の操作量に応じて回転機の出力トルクを定めるように構成されている。具体的には、制御装置は、動作要求入力装置の操作量に応じて模擬する対象としたMT車両の仮想の出力トルクを求め、実際の電気自動車の出力トルクが、仮想の出力トルクとなるように回転機のトルクを制御するように構成されている。なお、制御装置は、実際の電気自動車に設けられたシフトレバーとクラッチペダルとの操作と同一の操作をMT車両で行った場合における仮想のエンジン回転速度を求め、その仮想のエンジン回転速度とアクセルペダルの操作量とに基づいて仮想のエンジントルクを求め、その仮想のエンジントルクとシフトレバーの位置から定められる変速機構の変速比とに基づいて仮想の出力トルクを求めるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6787507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された制御装置は、クラッチペダルの操作量に基づいて仮想のエンジン回転速度を求めるように構成されている。一方、MT車両は、変速時にクラッチペダルを踏み込んで、エンジンと駆動輪とを切り離した状態で変速機構の変速段(変速比)を変更し、また発進走行時には、クラッチペダルの踏み込み量を次第に低下させてエンジンと駆動輪とを連結する。すなわち、変速過渡期や発進過渡期には、エンジンと駆動輪との回転速度比がシフトレバーの位置に基づく変速機構の変速比に一致せず、また連続的に変化する。そのような場合には、クラッチペダルを踏み込んでいない仮想の変速機構の係合時の仮想エンジン回転速度や、クラッチペダルを完全に踏み込んで仮想の変速機構が解放されかつアイドル回転速度に設定された仮想エンジン回転速度を基準として、仮想エンジン回転速度の変化量を求めることが考えられる。すなわち、MT車両におけるエンジンの慣性モーメントなどの諸元を予め数値化しておき、仮想エンジントルクや慣性モーメントなどから仮想エンジン回転速度の変化率を求めることが考えられる。
【0005】
上記のようにMT車両におけるエンジンの慣性モーメントに基づいて仮想エンジン回転速度を変更する場合には、MT車両の挙動の再現性を向上させることができる。しかしながら、設定された慣性モーメントが大きい場合には、変速過渡期のエンジン回転速度の変化率が、慣性モーメントが小さい場合と比較して遅くなるため、変速時間が長くなる可能性がある。それとは反対に、設定された慣性モーメントが小さい場合には、発進過渡期にエンジンに作用する抵抗トルク(エンジン回転速度を減じる方向のトルク)が大きいと、エンジンストールとなる回転速度までエンジン回転速度が瞬時に低下する可能性がある。すなわち、駆動力源としての回転機と駆動輪との間に、トルクの伝達を遮断する発進クラッチを備えていない実際の電気自動車であっても、車両の挙動の変化がMT車両の諸元に依拠してしまう可能性があり、加速応答性などの車両の機敏性や、車両の発進性などを向上させるために改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、仮想エンジンと駆動輪との回転速度比が変化する過渡期における仮想エンジン回転速度を目標回転速度に迅速に変更することができ、または仮想エンジン回転速度が低下することを抑制することができる電気自動車の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために、駆動力源としての回転機と、エンジン、前記エンジンに連結されかつ複数の変速段を設定できる変速機、および前記エンジンと駆動輪とのトルクの伝達を遮断する発進クラッチを設けた仮想車両のモデルデータと、車速に基づいて前記モデルデータ上での前記エンジンの回転速度、および前記エンジンの回転速度に基づいて前記モデルデータ上での前記エンジンで発生させるエンジントルクを求める算出部とを有し、前記エンジンの回転速度、および前記エンジントルクに応じて前記回転機のトルクを制御するコントローラとを備えた電気自動車の制御装置であって、前記コントローラは、前記モデルデータ上での前記エンジンと前記駆動輪との回転速度比が、前記変速機によって設定された回転速度比に向けて変化している過渡期に、前記モデルデータ上での前記エンジンの回転速度の変化率を定めるためのパラメータを、前記過渡期でない場合の値から変更するように構成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明においては、前記モデルデータ上での前記変速機の変速段を変更するシフト機構を更に備え、前記過渡期は、前記シフト機構が操作されたことにより前記モデルデータ上での前記エンジンの回転速度を、変更された変速段の変速比に応じた回転速度に変更する変速過渡期を含んでよい。
【0009】
本発明においては、前記パラメータは、前記エンジンの慣性モーメント値を含み、前記コントローラは、前記変速過渡期における前記慣性モーメント値を、前記変速過渡期でない場合と比較して減少させてよい。
【0010】
本発明においては、前記パラメータは、前記エンジントルクを含み、前記コントローラは、前記変速過渡期における前記エンジントルクの大きさを、前記変速過渡期でない場合と比較して増加させてよい。
【0011】
また、本発明は、駆動力源としての回転機と、運転者に操作されて変速操作を模擬するシフト機構と、エンジン、前記エンジンに連結されかつ複数の変速段を設定できる変速機、および前記エンジンと駆動輪とのトルクの伝達を遮断する発進クラッチを設けた仮想車両のモデルデータと、車速に基づいて前記モデルデータ上での前記エンジンの回転速度、および前記エンジンの回転速度に基づいて前記モデルデータ上での前記エンジンで発生させるエンジントルクを求める算出部とを有するコントローラとを備えた電気自動車の制御装置であって、前記コントローラは、前記モデルデータ上での前記エンジンの回転速度を前記シフト機構が操作されたことにより変更された変速段の変速比に応じた回転速度に変更する変速過渡期に、所定の変化率で前記エンジンの回転速度を変更するように構成され、前記所定の変化率は、前記変速過渡期以外において前記エンジンの回転速度を求めるためのパラメータである基準エンジントルク値と基準慣性モーメントと以外のパラメータに基づいて求められる変化率であることを特徴としている。
【0012】
本発明においては、前記シフト機構は、前記変速機で設定可能な変速段のうちの所定の変速段を選択する変速操作を模擬するシフトレバーを含んでよい。
【0013】
本発明においては、前記シフト機構は、前記変速機で設定する変速段を一段階ずつ変更する変速操作を模擬するパドルスイッチを含んでよい。
【0014】
本発明においては、前記過渡期は、前記モデルデータ上での前記発進クラッチを係合して前記電気自動車が発進する発進過渡期を含んでよい。
【0015】
本発明においては、前記パラメータは、前記エンジンの慣性モーメント値を含み、前記コントローラは、前記発進過渡期における前記慣性モーメント値を、前記発進過渡期でない場合と比較して増加させてよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、駆動力源としての回転機を備え、エンジン、変速機、および発進クラッチを設けた仮想車両のモデルデータ上でのエンジンの回転速度と、エンジン回転速度に基づくエンジントルクとを算出し、そのエンジン回転速度やエンジントルクに応じて回転機のトルクが制御される。そのエンジン回転速度は、モデルデータ上でのエンジンと駆動輪との回転速度比が、変速機によって設定された回転速度比に向けて変化している過渡期に、モデルデータ上でのエンジンの回転速度の変化率を定めるためのパラメータを、過渡期でない場合の値から変更する。そのため、変速過渡期にパラメータを変更することにより、変速前のエンジン回転速度から変速後のエンジン回転速度までエンジン回転速度を迅速に変更することができ、変速時間を短縮することができる。したがって、変速挙動を再現することによる駆動力の低下時間を短縮すること、言い換えると、加速応答性を向上させることができる。また、発進過渡期にパラメータを変更することにより、エンジン回転速度の変化率を小さくすることができ、その結果、エンジン回転速度がエンジンストールに至る回転速度まで低下することを抑制できる。すなわち、エンジンストールを模擬することによる駆動力の低下が生じることを抑制でき、車両の発進性を向上させることができる。
【0018】
さらに、変速過渡期に、モデルデータ上でのエンジン回転速度を予め定められた所定の変化率で変更することによって、変速前のエンジン回転速度から、変速後のエンジン回転速度まで意図した変化率でエンジン回転速度を変更することができる。したがって、変速挙動を再現することによる駆動力の低下時間を短縮するなど、予め定められたパラメータに依拠した車両の挙動に限らず、意図した車両の挙動を出現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態における電気自動車の構成を模式的に示す図である。
図2】ECUの構成を機能ブロックで示す図である。
図3】変速過渡期に演算用慣性モーメント値を変更する制御例を説明するためのフローチャートである。
図4】変速過渡期に演算用エンジントルク値を変更する制御例を説明するためのフローチャートである。
図5】ダウンシフト操作されたことによって図3および図4に示す制御例を実行した場合における変速フラグ、演算用慣性モーメント値、演算用エンジントルク値、および仮想エンジン回転速度の変化を示すタイムチャートである。
図6】発進過渡期に演算用慣性モーメント値を変更する制御例を説明するためのフローチャートである。
図7】発進過渡期に発進走行開始時の仮想エンジン出力トルクを維持する制御例を説明するためのフローチャートである。
図8】発進走行時に図6および図7に示す制御例を実行した場合における発進フラグ、演算用慣性モーメント値、演算用エンジントルク値、および仮想エンジン回転速度の変化を示すタイムチャートである。
図9】変速過渡期における仮想エンジン回転速度の変化率を予め定めた変化率に設定する制御例を説明するためのフローチャートである。
図10図9に示す制御例を実行した場合における変速フラグ、および仮想エンジン回転速度の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を具体化した場合の一例に過ぎないのであって、本発明を限定するものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態における電気自動車(以下、車両と記す。)の一例を模式的に示しており、この車両Veは、駆動力源としてのモータ(MG)1を備え、そのモータ1から一対の前輪2にトルクを伝達して走行するフロントドライブ式の車両である。このモータ1は、従来知られている電気自動車やハイブリッド車両に設けられたモータと同様に、蓄電装置(BATT)3から電力が供給されることにより駆動トルクを出力するモータとしての機能に加えて、外部から伝達されるトルクによって強制的に回転させられて発電する発電機としての機能を備えた、いわゆるモータ・ジェネレータによって構成することができる。具体的には、永久磁石式の同期回転機や誘導モータを使用することができる。なお、このモータ1が、本発明の実施形態における「回転機」に相当する。
【0022】
モータ1の出力軸4はギヤ機構5に連結され、そのギヤ機構5は更にプロペラシャフト6を介して終減速機であるデファレンシャルギヤ機構7に連結されている。そして、モータ1の出力トルクは、このデファレンシャルギヤ機構7を介して左右のドライブシャフト8に分配され、それらのドライブシャフト8に連結された一対の前輪(駆動輪)2がモータ1によって駆動されて車両Veが走行するように構成されている。すなわち、この車両Veは、エンジン、エンジンに連結される変速機、およびエンジンと駆動輪とのトルクの伝達を遮断できる発進クラッチを備えていない。また、各車輪2には、従来の車両と同様に、それぞれの車輪2に制動トルクを付与するブレーキ機構Bが設けられている。
【0023】
なお、図1に示す車両Veは、フロントドライブ式の車両であるが、本発明における電気自動車は、モータ1から一対の後輪9にトルクを伝達して走行するリヤドライブ式の電気自動車であってもよく、また、トランスファを設けて、モータ1から一対の前輪2および一対の後輪9にトルクを伝達して走行する四輪駆動車であってもよい。
【0024】
上記のモータ1に通電する電流の大きさや、各相に通電する電流の周波数を制御するためのインバータ(INV)10が設けられ、そのインバータ10には、直流電流を出力する蓄電装置(BATT)3が接続されている。なお、インバータ10に加えて、蓄電装置3から出力された電圧を増幅するためのコンバータなどの他の電気機器を設けていてもよく、また蓄電装置3は、リチウムイオン電池などの二次電池に加えて、キャパシタなどの蓄電部材を備えていてよい。
【0025】
上記のインバータ10のスイッチング素子やブレーキ機構Bを制御するための電子制御装置(以下、ECUと記す。)11が設けられている。このECU11は、本発明の実施形態における「コントローラ」に相当するものであって、従来知られている車両に設けられたECUと同様にマイクロコンピュータを主体に構成されていて、種々のセンサから信号が入力され、その入力された信号や、予め記憶されている演算式、あるいはマップなどに基づいて演算を行い、その演算の結果を制御信号としてインバータ10やブレーキ機構Bを制御する図示しないアクチュエータ、あるいは図示しないスピーカーなどの各装置に出力するように構成されている。
【0026】
図1に示す車両Veは、運転者(図示せず)が加減速操作(出力増減操作)するため、言い換えると、車両Veの駆動要求量を定めるためのアクセルペダル12と、その踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ13とを備えている。また、減速あるいは停車のために運転者が踏み込み操作し、その踏み込み量などに応じてブレーキ機構Bの制動トルクを定めるためのブレーキペダル14と、その踏み込み量やその踏力を検出するブレーキセンサ15とが設けられている。さらに、プロペラシャフト6の回転速度(すなわち、車速)を検出する車速センサ(回転速度センサ)16などが設けられている。これらのセンサ13,15,16はECU11に接続され、それぞれの検出信号(検出したデータ)がECU11に入力されている。
【0027】
さらに、図1に示す車両Veは、手動変速操作を模擬するための機器を備えている。先ず、実際には存在しない複数の前進段や後進段ならびにニュートラルポジションなどを手動によって選択操作するシフトレバーもしくはパドルスイッチなどを主体とするシフト機構17が設けられている。
【0028】
シフトレバーを搭載した車両において変速操作する場合、ギヤの連結やその解除を可能にするために、またシフトショックを低減するために、エンジンなどの駆動力源と駆動輪との間のトルクの伝達を発進クラッチによって一時的に遮断する。その発進クラッチは、通常、クラッチペダルによって切断・接続(断続)するようになっている。図1に示す車両Veでは、このようなシフトレバーを搭載した車両を模して、発進クラッチを操作するクラッチ操作部としてのクラッチペダル18を更に備えている。したがって、シフトレバーを搭載した車両の変速操作を模擬する場合には、クラッチペダル18を踏み込み、その状態で、シフトレバーを操作することにより、変速機で設定可能な変速段のうちの所定の変速段を選択する。このクラッチ操作部は、クラッチペダル18に限らず、クラッチペダル18に代替したクラッチ操作部を、ステアリングホイールに設けてもよい。
【0029】
なお、シフト機構17としてパドルスイッチを搭載した車両において変速操作する場合、パドルスイッチを操作することにより自動的に発進クラッチが制御されて、エンジンなどの駆動力源と駆動輪との間のトルクの伝達が一時的に遮断される。すなわち、発進クラッチの係合および解放あるいは伝達するトルク容量などを変更するための操作は、運転者によって行われない。したがって、シフト機構17としてパドルスイッチを搭載した場合には、上記のクラッチペダル18を設けていなくてもよい。このようにパドルスイッチを搭載した車両は、パドルスイッチを操作する都度、変速機で設定する変速段が一段階ずつ変更される。そのため、そのような変速操作を模擬する場合には、アップシフトやダウンシフトを要求するために、パドルスイッチを操作することになる。
【0030】
そして、図1に示す例では、シフト機構17によって選択された変速段などのポジション(もしくはモード)を検出するシフトポジションセンサ19と、クラッチペダル18の踏み込み量を検出するクラッチポジションセンサ20とが設けられている。これらのセンサ19,20は上述したECU11に接続されていて、それぞれの検出信号(検出したデータ)がECU11に入力されている。
【0031】
上述した車両Veは、アクセル開度として表される運転者の駆動要求に応じて駆動ならびに制動を行うようにモータ1のトルク制御を行う通常のEV走行に加えて、エンジン、そのエンジンに連結される変速機(手動変速機)、および発進クラッチを備えた車両(以下、MT車両と記す。)の走行およびシフト操作を模擬した走行ならびにシフト操作時の挙動を出現させることが可能なように構成されている。そのMT車両を模擬した走行のための制御は、前掲の特許文献1に記載されている制御であってよく、これを以下に簡単に説明する。
【0032】
模擬しようとするMT車両のモデルを予め設定し、これを数値化したモデルデータとしてECU11に記憶させておき、この数値化されているMT車両に、前述したアクセルポジションセンサ13で検出された実際のアクセル開度(踏み込み量)や、シフトポジションセンサ19によって検出されたシフト機構17上でのシフトポジション、ならびにクラッチポジションセンサ20によって検出されたクラッチペダル18の実際の踏み込み量、および回転速度センサ16によって検出されたプロペラシャフト6の実際の回転速度などを適用して、モータ1が出力するべきトルク(駆動トルクおよび制動トルク)を求め、そのトルクを実現するように、ECU11によってインバータ10を制御する。
【0033】
モデルデータ上でのMT車両(以下、仮想車両と記す。)は、内燃機関(エンジン)とその出力側に連結された複数の変速段を設定できる有段変速機とを備えており、そのエンジンの回転速度である仮想エンジン回転速度が、前述した各センサ13,19,20,16から入力される実際の運転状態に基づいて算出される。一例として、回転速度センサ16によって検出されているプロペラシャフト6の回転速度(または車速)に、シフト機構17によって選択されているシフトポジション(変速段)での変速比を乗算し、さらにクラッチポジションセンサ20によって検出されたクラッチペダル18の踏み込み量に応じたスリップ率を乗算することにより、仮想エンジン回転速度を求めることができる。仮想車両が、パドルスイッチを設けた車両の場合には、クラッチポジションセンサ20によって検出されたクラッチペダル18の踏み込み量に応じたスリップ率に代えて、パドルスイッチが操作されてからの経過時間などに応じて発進クラッチを制御する出力値などを求め、その出力値に応じたスリップ率を採用して仮想エンジン回転速度を算出してもよい。
【0034】
また、プロペラシャフト6の回転速度が0(ゼロ)であり、アクセルポジションセンサ13によって検出されたアクセル開度が0%であり、クラッチポジションセンサ20によって検出されたクラッチペダル18の踏み込み量が所定量以上であって仮想車両における発進クラッチがトルクを伝達しない程度まで踏み込まれている場合には、仮想のエンジンがアイドリング中であることを想定して、仮想エンジン回転速度を所定のアイドリング回転速度として求めることができる。仮想車両が、パドルスイッチを設けた車両の場合には、プロペラシャフト6の回転速度が0(ゼロ)であり、アクセルポジションセンサ13によって検出されたアクセル開度が0%である場合に、仮想エンジン回転速度をアイドリング回転速度として求めてもよい。
【0035】
このような演算を行う機能的手段あるいは機能ブロックを「仮想エンジン回転速度算出部110」として図2に示してある。なお、仮想エンジン回転速度算出部110で演算された仮想エンジン回転速度は、例えば、図示しないスピーカーに出力され、エンジン音を模擬した音をスピーカーから発する。
【0036】
仮想車両に搭載していると想定してある仮想のエンジンは、排気量や回転速度と出力トルクとの関係、効率などが設計上決めたエンジンであるから、仮想エンジン回転速度が算出されれば、その値と、アクセルポジションと、出力トルクとの関係を定めてあるマップに基づいて仮想のエンジンの出力トルクを算出することができる。このような演算を行う機能的手段あるいは機能ブロックを「仮想エンジン出力トルク算出部111」として図2に示してある。なお、上記の仮想エンジン回転速度算出部110と、仮想エンジン出力トルク算出部111とが、本発明の実施形態における「算出部」に相当する。
【0037】
仮想車両における発進クラッチは、伝達トルク容量が連続的に変化する摩擦クラッチであることが想定されている。したがって、クラッチペダル18の踏み込み量と、伝達トルク容量との間には、設計上決めた所定の関係が成立しており、その関係をマップとして予め用意し、ECU11に記憶させておくことができる。例えば、伝達トルク容量を「0」から「1」まで変化するゲインとして設定し、クラッチペダル18の踏み込み量が「0」から所定値までの間はゲインが「1」となり、それ以上に踏み込み量が増大することにより、踏み込み量に応じてゲインが次第に(直線的に、もしくは比例的に)減少するマップとすることができる。したがって、仮想車両に搭載されていることが想定されている仮想の発進クラッチから出力されるトルクは、上記のゲインによって決まり、そのゲインは、上記のマップと、クラッチポジションセンサ20によって検出された実際のクラッチペダル18の踏み込み量とに基づいて算出することができる。なお、仮想車両が、パドルスイッチを設けた車両の場合には、パドルスイッチが操作されてからの時間に基づいて発進クラッチの伝達トルク容量を定めてもよく、仮想車両を模擬するための他の制御によって定められた伝達トルク容量を採用してもよい。
【0038】
このような演算を行う機能的手段あるいは機能ブロックを「トルク伝達ゲイン算出部112」として図2に示してある。
【0039】
仮想車両に搭載が想定されている手動変速機に入力されるトルクは、仮想エンジン出力トルクを上記のゲインに応じて変化させたトルク、すなわちクラッチ出力トルクである。したがって、そのクラッチ出力トルクは、上記の仮想エンジン出力トルク算出部111で算出した仮想エンジン出力トルクに、トルク伝達ゲイン算出部112で算出したゲインを乗算することにより算出することができる。このような演算を行う機能的手段あるいは機能ブロックを「クラッチ出力トルク算出部113」として図2に示してある。
【0040】
仮想車両における手動変速機で設定されるギヤ比(変速比)を模擬するために、その手動変速機でのギヤ比を、上記の車両Veの実際の走行状態から算出する。ギヤ比は、仮想車両におけるエンジン回転速度と手動変速機の出力回転速度(具体的にはプロペラシャフト6の回転速度)との比であり、その仮想車両におけるエンジン回転速度に前述した仮想エンジン回転速度が相当し、また出力回転速度には前述した回転速度センサ16によって検出されたプロペラシャフト6の回転速度が相当する。したがって、ギヤ比は、仮想エンジン回転速度をプロペラシャフト6の回転速度で除算することにより求められる。このような演算を行う機能的手段あるいは機能ブロックを「ギヤ比算出部114」として図2に示してある。
【0041】
上記の車両Veの挙動を仮想車両の挙動に一致もしくは近似させるためには、例えばプロペラシャフト6のトルクが、仮想車両における手動変速機の出力トルクに一致もしくは近似するように、モータ1の出力トルクを制御することになる。したがって、仮想車両における手動変速機の出力トルクを算出する必要があり、これは、図2に「変速機出力トルク算出部115」として記載してある機能的手段もしくは機能ブロックによって行われる。具体的には、手動変速機は入力されたトルクを変速比に応じて増減して出力するから、変速機出力トルクは、手動変速機に入力される前述したクラッチ出力トルクに変速比を乗算して算出される。そのクラッチ出力トルクは、上記のトルク伝達ゲイン算出部112で求められたゲインを反映したトルクであるから、発進クラッチの断続に伴う伝達トルク容量に応じたトルクとなる。したがって、変速機出力トルク算出部115で算出されたトルク(プロペラシャフト6でのトルク)を実現するようにインバータ10をECU11によって制御することにより、仮想車両の挙動を上記の実際の車両Veで出現させることができる。
【0042】
上述した仮想車両における変速操作は、シフト機構としてシフトレバーを設けている場合には、発進クラッチがトルクを伝達しない程度までクラッチペダルを踏み込み、その状態でシフトレバーを操作する。そして、エンジン回転速度が変速後の回転速度相当まで変化した後に、クラッチペダルの踏み込み量を減じて変速が完了する。また、シフト機構としてパドルスイッチを設けている場合には、パドルスイッチを操作する。そのようにパドルスイッチが操作されると、発進クラッチが解放され、エンジン回転速度が変速後の回転速度相当まで変化した後に、発進クラッチが係合されて変速が完了する。
【0043】
そのような変速過渡期において発進クラッチがトルクを伝達しない解放状態の間の仮想エンジン回転速度は、仮想エンジン出力トルクと、予め定められた仮想のエンジンの慣性モーメントとに基づいて求めることができる。具体的には、仮想エンジン出力トルクと、予め定めた仮想のエンジンの慣性モーメントとに基づいて仮想エンジン回転速度の変化率を求め、その仮想エンジン回転速度の変化率と経過時間とを乗算した値を、発進クラッチが解放された時点の仮想エンジン回転速度に加算することによって仮想エンジン回転速度を求めることができる。すなわち、仮想エンジン回転速度と、前輪2の回転速度との回転速度比が、変速後の回転速度比に向けて変化している過渡期、つまり仮想車両の変速過渡期の挙動を出現することができる。
【0044】
一方、仮想車両における変速過渡期には、仮想のエンジンと駆動輪とのトルクの伝達が遮断されているため、変速過渡期であってエンジン回転速度を変更している間には、駆動輪にトルクが伝達されない。したがって、仮想車両の変速過渡期の挙動を忠実に再現するとすれば、変速過渡期には、モータ1の出力トルクが0(ゼロ)に設定され、変速時間が長くなるほど、加速応答性などが低下する可能性がある。
【0045】
そのため、本発明の実施形態における制御装置は、演算される変速時間を短縮するように、変速過渡期における仮想エンジン回転速度を算出するために用いる慣性モーメントの値(以下、演算用慣性モーメント値と記す)を、予め定められた仮想のエンジンの慣性モーメント値(以下、基準慣性モーメント値と記す)と異ならせるように構成されている。または、上記の演算用慣性モーメント値を基準慣性モーメント値と異ならせることに代えて、もしくは演算用慣性モーメント値を基準慣性モーメント値と異ならせることに加えて、変速過渡期における仮想エンジン回転速度を算出するために用いる仮想エンジン出力トルクの値(以下、演算用エンジントルク値と記す)を、上記の仮想エンジン出力トルク算出部111によって演算される仮想エンジン出力トルク(以下、基準エンジントルク値と記す)と異ならせるように構成されている。
【0046】
その制御の一例を説明するためのフローチャートを図3に示してある。この図3に示す制御例は、変速時に演算用慣性モーメント値を基準慣性モーメント値と異ならせるように構成された制御例であり、したがって、まず、変速中であるか否かを判断する(ステップS1)。このステップS1は、車両Veがシフトレバーおよびクラッチペダル18を備えている場合には、クラッチペダル18が所定量以上踏み込まれかつシフトレバーの位置が変化したか否かに基づいて判断することができる。また、車両Veがパドルスイッチを備えている車両Veの場合には、パドルスイッチが操作されたか否かに基づいて判断することができる。なお、このステップS1における「変速」には、変速比を大きくするダウンシフト、および変速比を小さくするアップシフトが含まれる。
【0047】
変速中でないことによりステップS1で否定的に判断された場合は、演算用慣性モーメント値として基準慣性モーメント値を採用して(ステップS2)、このルーチンを一旦終了する。それとは反対に、変速中であることによりステップS1で肯定的に判断された場合は、演算用慣性モーメント値として、基準慣性モーメント値よりも予め定められた所定値α、小さい値を採用して(ステップS3)、このルーチンを一旦終了する。
【0048】
このステップS3は、変速前の変速比に応じた仮想エンジン回転速度から変速後の変速比に応じた仮想エンジン回転速度まで、予め定められた時間内に仮想エンジン回転速度を変更できる演算用慣性モーメント値を定めるためのステップである。したがって、ステップS3における所定値αは、固定値であってもよく、例えば、変速前後の仮想エンジン回転速度の変化量を目標変速時間で除算した値(すなわち、仮想エンジン回転速度の目標変化率)で、変速前の仮想エンジン回転速度に基づいて求められた仮想エンジン出力トルクを除算し、その除算された値から基準慣性モーメント値を減算して求めてもよい。なお、ステップS3では、変速時における演算用慣性モーメント値を基準慣性モーメント値よりも小さくすることができればよく、所定値αは適宜設定してよい。
【0049】
上述した図3に示す制御例では、変速過渡期における演算用慣性モーメント値として基準慣性モーメント値から所定値αを減算した値を採用する。その結果、仮想エンジン出力トルクを一定と仮定すると、演算される仮想エンジン回転速度の変化率が大きくなる。そのため、変速前の仮想エンジン回転速度から、変速後の仮想エンジン回転速度まで迅速に仮想エンジン回転速度を変更することができ、変速時間を短縮することができる。したがって、変速挙動を再現することによる駆動力の低下時間を短縮すること、言い換えると、加速応答性を向上させることができる。また、ダウンシフトを模した変速操作を行った場合には、エンジンブレーキを模した制動トルクを迅速に増加させて前輪2に作用させることができる。
【0050】
図4には、変速時に演算用エンジントルク値を基準エンジントルク値と異ならせるように構成された制御例を示してあり、したがって、図3に示す制御例と同様に、まず、変速中であるか否かを判断し(ステップS1)、変速中でないことによりステップS1で否定的に判断された場合は、演算用エンジントルク値として基準エンジントルク値を採用して(ステップS11)、このルーチンを一旦終了する。それとは反対に、変速中であることによりステップS1で肯定的に判断された場合は、演算用エンジントルク値として、基準エンジントルク値の大きさに予め定められた所定値βを加算した値を採用して(ステップS12)、このルーチンを一旦終了する。
【0051】
このステップS12は、変速前の変速比に応じた仮想エンジン回転速度から変速後の変速比に応じた仮想エンジン回転速度まで、予め定められた時間内に仮想エンジン回転速度を変更できる演算用エンジントルク値を定めるためのステップである。ここで、仮想車両においてダウンシフト操作した場合には、エンジンの出力トルクによってエンジン回転速度を増加させ、それとは反対にアップシフト操作した場合には、エンジンのフリクショントルクなどの制動トルクによってエンジン回転速度を低下させる。したがって、エンジン回転速度を迅速に変更するためには、ダウンシフトの場合には、エンジントルクを増加させ、アップシフトの場合には、エンジンの制動トルクを増加させる。すなわち、エンジンのトルクの絶対値を大きくすることによってエンジン回転速度の変化率を増加させることができる。具体的には、ダウンシフトの場合には、基準エンジントルク値に正の値の所定値βを加算し、アップシフトの場合には、基準エンジントルク値に負の値の所定値βを加算させる。この所定値βは、固定値に限らず、例えば、変速前後の仮想エンジン回転速度の変化量を目標変速時間で除算した値に、演算用慣性モーメント値を乗算し、その乗算された値の大きさから基準エンジントルク値の大きさを減算して求めてもよい。なお、ステップS12では、変速時における演算用エンジントルク値を基準エンジントルク値よりも大きくすることができればよく、所定値βは適宜設定してよい。
【0052】
上述した図4に示す制御例では、変速過渡期における演算用エンジントルク値として基準エンジントルク値の大きさを所定値β増加させた値を採用する。その結果、演算用慣性モーメント値を一定と仮定すると、演算される仮想エンジン回転速度の変化率が大きくなる。そのため、変速前の仮想エンジン回転速度から、変速後の仮想エンジン回転速度まで迅速に仮想エンジン回転速度を変更することができ、変速時間を短縮することができる。したがって、変速挙動を再現することによる駆動力の低下時間を短縮すること、言い換えると、加速応答性を向上させることができる。また、ダウンシフトを模した変速操作を行った場合には、エンジンブレーキを模した制動トルクを迅速に増加させて前輪2に作用させることができる。
【0053】
なお、図3および図4に示す制御例を組み合わせて実行してもよい。すなわち、変速中には、演算用慣性モーメント値を基準慣性モーメント値よりも小さい値に設定するとともに、演算用エンジントルク値を、基準エンジントルク値の大きさを増加させた値に設定して、仮想エンジン回転速度の変化率を増加させるように構成してもよい。その場合には、仮想エンジン回転速度の変化率が、目標変化率となるように、所定値αや所定値βを調整してよい。
【0054】
図5は、ダウンシフト操作されたことによって図3および図4に示す制御例を実行した場合における変速フラグ、演算用慣性モーメント値、演算用エンジントルク値、および仮想エンジン回転速度の変化を示すタイムチャートである。なお、比較例として、変速時に基準慣性モーメント値を演算用慣性モーメント値として採用し、かつ基準エンジントルク値を演算用エンジントルク値として採用した場合における各パラメータの変化を破線で示してある。
【0055】
図5に示す例では、t0時点では変速操作されていないことにより変速フラグがオフであり、したがって、演算用慣性モーメント値として基準慣性モーメント値が採用されかつ一定に保たれている。一方、図5に示す例では、車速の低下に伴って仮想エンジン回転速度が低下している。なお、ここでは、便宜上、基準エンジントルク値が一定であるものとして示してある。
【0056】
t1時点で、例えば、パドルスイッチが操作されて変速が要求されることにより変速フラグがオンに切り替わっている。そのため、図3および図4に示すステップS1で肯定的に判断されることにより、演算用慣性モーメント値は、基準慣性モーメント値から所定値αを減じた値に設定され、演算用エンジントルク値は、基準エンジントルク値の大きさを所定値β、増加させた値に設定されている。
【0057】
その結果、図5に実線で示すように算出される仮想エンジン回転速度の変化率が、演算用慣性モーメント値や演算用エンジントルク値を変更しない場合における仮想エンジン回転速度の変化率(破線)よりも大きくなり、迅速に仮想エンジン回転速度が増加する。そのため、図5に実線で示すように演算用慣性モーメント値や演算用エンジントルク値を変更した場合には、t2時点で変速が完了しているのに対して、演算用慣性モーメント値や演算用エンジントルク値を変更しない場合には、t3時点で変速が完了する。すなわち、演算用慣性モーメント値や演算用エンジントルク値を変更することによって、変速時間を短縮することができる。したがって、加速応答性を向上させることやエンジンブレーキ力を模して制動力を迅速に増加させることができる。
【0058】
なお、仮想車両に搭載されたエンジンは、エンジンのトルクおよび慣性モーメントのみのパラメータによってエンジン回転速度の変化率が定まるものではなく、エンジンの内部やエンジンの出力軸に連結された部材のフリクショントルクなどの他の要因も、エンジン回転速度の変化率に影響を来す。そのような他の要因を含めて仮想エンジン回転速度を演算する場合には、変速過渡期に他の要因についてのパラメータを変更することによって、仮想エンジン回転速度の変化率を増加させるようにしてもよい。さらに、通常、エンジンには、エンジンのトルクの脈動を低減するためのフライホイールなどのマスダンパが設けられているため、上記の慣性モーメントには、エンジンの構造で定まる慣性モーメントに加えて、エンジンと一体に回転する回転部材の慣性モーメントを含んでよい。
【0059】
また、上述した仮想車両における発進操作は、クラッチペダルを設けている場合には、アクセルペダルを踏み込んだ状態でクラッチペダルの踏み込み量を次第に減じて発進クラッチを係合させる。さらに、仮想車両がクラッチペダルを設けていない場合には、ブレーキペダルの踏み込み量を所定量以下まで減じることにより、自動的にエンジントルクが所定トルクに制御されるとともに、発進クラッチが次第に係合されて発進する。なお、ブレーキペダルの踏み込み量を0(ゼロ)にしてアクセルペダルが踏み込まれた場合には、そのアクセルペダルの踏み込み量に応じてエンジントルクが制御される。
【0060】
そのような発進過渡期において発進クラッチの伝達トルク容量が次第に変化している間のエンジン回転速度の変化率は、仮想エンジン出力トルクと、予め定めた仮想のエンジンの慣性モーメントとに基づく仮想エンジン回転速度の変化率を求め、その仮想エンジン回転速度の変化率と経過時間とを乗算した値を、発進クラッチが係合し始める時点の仮想エンジン回転速度に加算することによって求めることができる。すなわち、仮想エンジン回転速度と、前輪2の回転速度との回転速度比が、変速後の回転速度比に向けて変化している過渡期、つまり仮想車両の発進過渡期の挙動を出現することができる。
【0061】
一方、仮想車両における発進過渡期に発進クラッチを介して駆動輪側からエンジン回転速度を低下させる方向の抵抗トルクが作用すると、エンジン回転速度が次第に低下し、またそのエンジン回転速度の低下に伴ってエンジントルクが低下する可能性があり、そのような場合には、エンジンストールに至る可能性がある。すなわち、仮想車両の発進走行の挙動を忠実に再現すると、車両Veの発進性が低下する可能性がある。
【0062】
そのため、本発明の実施形態における制御装置は、発進過渡期に演算される仮想エンジン回転速度の低下を抑制するように、発進過渡期における演算用慣性モーメント値を、基準慣性モーメント値と異ならせるように構成されている。または、上記の演算用慣性モーメント値を基準慣性モーメント値と異ならせることに代えて、もしくは演算用慣性モーメント値を基準慣性モーメント値と異ならせることに加えて、発進過渡期における演算用エンジントルク値を、仮想エンジン出力トルクと異ならせるように構成されている。
【0063】
その制御の一例を説明するためのフローチャートを図6に示してある。この図6に示す制御例は、発進過渡期に演算用慣性モーメント値を基準慣性モーメント値と異ならせるように構成された制御例であり、したがって、まず、発進中であるか否かを判断する(ステップS20)。このステップS20は、車両Veがシフトレバーおよびクラッチペダル18を備えている場合には、シフトレバーの位置がニュートラルポジションではなく、またクラッチペダル18の踏み込み量が次第に低下しているか否かに基づいて判断することができる。また、車両Veがパドルスイッチを備えている車両Veの場合には、ブレーキペダル14の踏み込み量が所定量(例えば、0(ゼロ))以下であり、かつアクセルペダル12が所定量以上であるか否かに基づいて判断することができる。
【0064】
発進中でないことによりステップS20で否定的に判断された場合は、演算用慣性モーメント値として基準慣性モーメント値を採用して(ステップS21)、このルーチンを一旦終了する。それとは反対に、発進中であることによりステップS20で肯定的に判断された場合は、演算用慣性モーメント値として、基準慣性モーメント値よりも予め定められた所定値γ、大きい値を採用して(ステップS22)、このルーチンを一旦終了する。
【0065】
このステップS22は、発進過渡期に仮想エンジン回転速度が変化することを抑制できる演算用慣性モーメント値を設定するためのステップである。したがって、ステップS22における所定値γは、固定値であってもよく、仮想エンジン出力トルクの大きさに応じて適宜変更して定めてもよい。また、例えば、車両Veが登坂路に停車している状態から発進する場合には、時間の経過に伴って発進クラッチの伝達トルク容量が増加し、それに伴ってエンジン回転速度を低下させる方向に作用するトルク値(抵抗トルク値)が演算されるため、ステップS22では、上記の仮想エンジン出力トルクから抵抗トルク値を減算し、その減算された値に基づいて所定値γを定めてもよい。
【0066】
上述した図6に示す制御例では、発進過渡期における演算用慣性モーメント値として基準慣性モーメント値に所定値γを加算した値を採用する。そのため、基準慣性モーメント値を採用して仮想エンジン回転速度を求めるよりも、仮想エンジン回転速度の変化率を小さくすることができる。その結果、仮想エンジン回転速度がエンジンストールに至る回転速度まで低下することを抑制できる。すなわち、エンジンストールを模擬することによる駆動力の低下が生じることを抑制でき、車両Veの発進性を向上させることができる。
【0067】
図7には、発進過渡期に演算用エンジントルク値を基準エンジントルク値と異ならせるように構成された制御例を示してあり、したがって、図6に示す制御例と同様に、まず、発進中であるか否かを判断し(ステップS20)、発進中でないことによりステップS20で否定的に判断された場合は、演算用エンジントルク値として基準エンジントルク値を採用して(ステップS31)、このルーチンを一旦終了する。それとは反対に、発進中であることによりステップS20で肯定的に判断された場合は、演算用エンジントルク値として、発進開始時における仮想エンジン出力トルクを採用して(ステップS32)、このルーチンを一旦終了する。すなわち、発進走行開始時の仮想エンジン出力トルクを維持する。
【0068】
このステップS32は、発進走行するために発進クラッチの伝達トルク容量が増加して、仮想エンジン回転速度を低下させる方向の反力トルクが作用することにより、演算用エンジントルク値が不足して仮想エンジン回転速度が低下し、さらにその仮想エンジン回転速度の低下に伴って基準エンジントルク値が低下することを抑制するためのステップである。したがって、ステップS32では、演算用エンジントルク値を一定に維持することに代えて、基準エンジントルク値に所定の係数を乗算するなどによって反力トルクを相殺できるように演算用エンジントルク値を基準エンジントルク値以上となるように演算してもよい。
【0069】
上述した図7に示す制御例では、発進過渡期における演算用エンジントルク値を、発進走行開始時における基準エンジントルク値に維持する。そのため、発進クラッチの伝達トルク容量が増加することに伴って仮想エンジン回転速度が低下することを抑制できる。その結果、仮想エンジン回転速度がエンジンストールに至る回転速度まで低下することを抑制できる。すなわち、エンジンストールを模擬することによる駆動力の低下が生じることを抑制でき、車両Veの発進性を向上させることができる。
【0070】
なお、図6および図7に示す制御例を組み合わせて実行してもよい。すなわち、発進中には、演算用慣性モーメント値を基準慣性モーメント値よりも大きい値に設定するとともに、演算用エンジントルク値を、発進走行開始時の基準エンジントルク値に維持して、仮想エンジン回転速度の変化率を低下させるように構成してもよい。その場合には、仮想エンジン回転速度が一定になるように、所定値γを調整してよい。
【0071】
図8は、発進走行時に図6および図7に示す制御例を実行した場合における発進フラグ、演算用慣性モーメント値、演算用エンジントルク値、および仮想エンジン回転速度の変化を示すタイムチャートである。なお、比較例として、発進走行時に基準慣性モーメント値を演算用慣性モーメント値として採用し、かつ基準エンジントルク値を演算用エンジントルク値として採用した場合における各パラメータの変化を破線で示してある。
【0072】
図8に示す例では、t10時点では停車していること、すなわち発進操作されていないことにより発進フラグがオフである。したがって、演算用慣性モーメント値として基準慣性モーメント値が採用され、演算用エンジントルク値として基準エンジントルク値が採用され、かつそれぞれのパラメータが一定に保たれている。そのため、仮想エンジン回転速度がアイドル回転速度程度に維持されている。
【0073】
t11時点で、例えば、シフトレバーの位置が所定の変速段の位置に操作され、かつクラッチペダル18の踏み込み量が低下して発進操作され始めたことにより、発進フラグがオンに切り替わっている。そのため、図6および図7に示すステップS20で肯定的に判断されることにより、演算用慣性モーメント値は、基準慣性モーメント値に所定値γを加算した値に設定され、演算用エンジントルク値は、発進走行開始時の基準エンジントルク値に維持されている。その結果、図8に実線で示すように算出される仮想エンジン回転速度は一定に保たれている。そして、t12時点でクラッチペダル18の操作量が0(ゼロ)になるなどによって発進走行が完了して発進フラグがオフに切り替わることにより、演算用慣性モーメント値が基準慣性モーメント値に設定され、かつ演算用エンジントルク値が基準エンジントルク値に設定されている。なお、図8に示す例では、仮想エンジン回転速度が一定に保たれていることにより、その仮想エンジン回転速度に基づいて求められる演算用エンジントルク値も一定に維持されている。
【0074】
一方、図8に破線で示すように、発進過渡期における演算用慣性モーメント値を基準慣性モーメント値に設定し、かつ演算用エンジントルク値を基準エンジントルク値に設定した場合には、発進操作が開始されたt11時点で、発進クラッチの伝達トルク容量の増加に伴って仮想エンジン回転速度を低下させるようにトルクが作用することにより、仮想エンジン回転速度が低下している。それに伴って、仮想エンジン回転速度に基づいて演算される基準エンジントルク値が低下している。そのように発進時には発進クラッチの伝達トルク容量が次第に増加し、また仮想エンジン回転速度の低下に伴って基準エンジントルク値が低下するため、仮想エンジン回転速度が低下し続ける。
【0075】
そのため、図8に実線で示すように演算用慣性モーメント値や演算用エンジントルク値を基準慣性モーメント値や基準エンジントルク値から変更することにより、発進過渡期に仮想エンジン回転速度が低下することや、その仮想エンジン回転速度の低下に基づいて演算される仮想エンジン出力トルクが低下することを抑制できる。すなわち、発進過渡期にエンジンストールを模擬した挙動が生じることや、発進過渡期における駆動力の低下を抑制することができる。
【0076】
なお、仮想車両に搭載されたエンジンは、エンジンのトルクおよび慣性モーメントのみのパラメータによってエンジン回転速度の変化率が定まるものではなく、エンジンの内部やエンジンの出力軸に連結された部材のフリクショントルクなどの他の要因も、エンジン回転速度の変化率に影響を来す。そのような他の要因を含めて仮想エンジン回転速度を演算する場合には、発進過渡期に他の要因についてのパラメータを変更することによって、仮想エンジン回転速度が低下することを抑制するようにしてもよい。さらに、通常、エンジンには、エンジンのトルクの脈動を低減するためのフライホイールなどのマスダンパが設けられているため、上記の慣性モーメントには、エンジンの構造で定まる慣性モーメントに加えて、エンジンと一体に回転する回転部材の慣性モーメントを含んでよい。
【0077】
上述した図3図4に示す制御例では、仮想エンジン回転速度を求めるための慣性モーメントやトルクなどのパラメータを変更することによって、仮想エンジン回転速度の変化率を向上させるように構成されている。一方、変速時には、慣性モーメントやトルクなどに基づいて仮想エンジン回転速度を求めずに定めてもよい。すなわち、発進時には、シフト機構17を操作していない通常走行時、言い換えると、仮想エンジンと駆動輪との回転速度比がシフト機構17の操作位置に応じた回転速度比となっている時の仮想エンジン回転速度を求めるためのロジックから離脱して、仮想エンジン回転速度を設定するように構成してもよい。
【0078】
図9には、その制御の一例を説明するためのフローチャートを示してある。図9に示す制御例では、図3図4に示す制御例と同様に、まず、変速中であるか否かを判断し(ステップS1)、変速中でないことによりステップS1で否定的に判断された場合は、基準エンジントルク値や基準慣性モーメント値を用いて仮想エンジン回転速度を演算して(ステップS41)、このルーチンを一旦終了する。それとは反対に、変速中であることによりステップS1で肯定的に判断された場合は、予め定められた回転速度の変化率で仮想エンジン回転速度を変化させて(ステップS42)、このルーチンを一旦終了する。
【0079】
このステップS42は、仮想エンジン回転速度の変化率を仮想車両の諸元などに応じて演算することなく、一律に定めるものであって、例えば、変速開始時における仮想エンジン回転速度と、車速および変速後の変速比に応じた仮想エンジン回転速度との差を求め、その回転速度差と変速のための目標時間とに基づいて仮想エンジン回転速度の変化率を定めるように構成されている。
【0080】
図9に示す制御例を実行した場合における変速フラグ、および仮想エンジン回転速度の変化を示すタイムチャートを図10に示してある。なお、比較例として、変速時に仮想エンジンの慣性モーメント、および仮想エンジン出力トルクを用いた場合における仮想エンジン回転速度の変化を破線で示してある。
【0081】
図10に示す例では、t20時点では変速操作されていないことにより変速フラグがオフであり、したがって、仮想エンジンの慣性モーメント、および仮想エンジン出力トルクを用いて仮想エンジン回転速度が演算されている。なお、図10に示す例では、車速の低下に伴って仮想エンジン回転速度が低下している。
【0082】
t21時点で、例えば、パドルスイッチが操作されて変速が要求されることにより変速フラグがオンに切り替わっている。そのため、図10に示すステップS1で肯定的に判断されることにより、仮想エンジン回転速度は、予め定められた変化率で変化し、目標変速時間の経過時であるt22時点で変速が完了している。一方、仮想エンジンの慣性モーメント、および仮想エンジン出力トルクを用いて仮想エンジン回転速度を演算した場合には、慣性モーメントや仮想エンジン出力トルクに依拠して仮想エンジン回転速度が定められるため、図10に破線で示すように変速後の変速比に応じた回転速度まで仮想エンジン回転速度が上昇するために比較的長い時間を要し、したがって、t23時点で変速が完了している。
【0083】
上述したように変速過渡期における仮想エンジン回転速度の変化率を、仮想エンジンの慣性モーメント、および仮想エンジン出力トルクを用いることなく設定することにより、変速前の仮想エンジン回転速度から、変速後の仮想エンジン回転速度まで迅速に仮想エンジン回転速度を変更することができ、変速時間を短縮することができる。したがって、変速挙動を再現することによる駆動力の低下時間を短縮すること、言い換えると、加速応答性を向上させることができる。なお、仮想エンジンの慣性モーメント、および仮想エンジン出力トルクを用いて仮想エンジン回転速度の変化率を求めた場合よりも緩やかに仮想エンジン回転速度の変化率を設定することもできる。
【符号の説明】
【0084】
1 モータ
2,9 車輪
11 電子制御装置(ECU)
12 アクセルペダル
14 ブレーキペダル
17 シフト機構
18 クラッチペダル
110 仮想エンジン回転速度算出部
111 仮想エンジン出力トルク算出部
112 トルク伝達ゲイン算出部
113 クラッチ出力トルク算出部
114 ギヤ比算出部
115 変速機出力トルク算出部
B ブレーキ機構
Ve 電気自動車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10