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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】光変調装置及び光変調方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/516 20130101AFI20240730BHJP
【FI】
H04B10/516
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022196794
(22)【出願日】2022-12-09
(65)【公開番号】P2024082736
(43)【公開日】2024-06-20
【審査請求日】2022-12-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(令和4年度総務省「グリーン社会に資する先端光伝送技術の研究開発 技術課題II大容量・高多重光アクセス網伝送技術ア)大容量光アクセス網伝送技術」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】湊 直樹
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/035662(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0275173(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/516 - 10/556
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多値数2n(nは3以上の整数)に従い光変調を行う光変調装置であって、
2n系統の情報ビット列を発生させる情報ビット列発生手段と、
前記情報ビット列のビット情報を用いて排他的論理和の演算を行う排他的論理和手段と、
前記情報ビット列発生手段で発生させたビット情報又は前記排他的論理和手段で演算されたビット情報のオンオフ動作を行う切替手段と、
光源から入力された光信号を分岐する分岐手段と、
前記分岐手段で分岐された光を、前記切替手段を介して入力されたビット情報に従い、各々4位相偏移変調する変調手段と、
前記変調手段で変調された光をコヒーレント結合する結合手段と
を有し、
前記排他的論理和手段は、前記情報ビット列の第1ビットと第2ビットの排他的論理和を演算する第1の排他的論理和部と、Kを2以上n-1以下の整数とすると、前記情報ビット列の第K+1ビットと第K-1の排他的論理和の出力ビットとを演算する第Kの排他的論理和部と、前記情報ビット列の第n+1ビットと第n+2ビットの排他的論理和を演算する第nの排他的論理和部と、前記情報ビット列の第K+n+1ビットと第K+n-2の排他的論理和の出力ビットとを演算する第K+n-1の排他的論理和部とを備え、
前記切替手段は、前記情報ビット列の第1ビットをオンオフする第1のスイッチ部と、第n+1ビットをオンオフする第n+1のスイッチ部と、K1を1以上n-1以下の整数とすると、第K1の排他的論理和部の出力ビットをオンオフする第K1+1のスイッチ部と、第K1+n-1の排他的論理和部の出力ビットをオンオフする第K1+n+1のスイッチ部とを備え、
前記変調手段は、K2を1以上n以下の整数とすると、第K2のスイッチ部の出力値に従って分岐された光の一つの一部を振幅変調し、第K2+nのスイッチ部の出力値に従って前記分岐された光の一つの残りの部分を振幅変調し、前記振幅変調された光を直交する位相関係でコヒーレントに結合する第K2の4位相変調偏移変調部を備える
ことを特徴とする光変調装置。
【請求項2】
前記切替手段は、制御信号によって各スイッチ部のオンオフ状態が切り替えられることを特徴とする請求項に記載の光変調装置。
【請求項3】
多値数2n(nは3以上の整数)に従い光変調を行う光変調装置に使用する光変調方法であって、
情報ビット列発生手段、排他的論理和手段、切替手段、分岐手段、変調手段、及び結合手段を有し、
前記情報ビット列発生手段は、2n系統の情報ビット列を発生させ、
前記排他的論理和手段は、前記情報ビット列のビット情報を用いて排他的論理和の演算を行い、
前記切替手段は、前記情報ビット列発生手段で発生させたビット情報又は前記排他的論理和手段で演算されたビット情報のオンオフ動作を行い、
前記分岐手段は、光源から入力された光信号を分岐し、
前記変調手段は、前記分岐手段で分岐された光を、前記切替手段を介して入力されたビット情報に従い、各々4位相偏移変調し、
前記結合手段は、前記変調手段で変調された光をコヒーレント結合し、
前記排他的論理和手段は、前記情報ビット列の第1ビットと第2ビットの排他的論理和を演算する第1の排他的論理和部と、Kを2以上n-1以下の整数とすると、前記情報ビット列の第K+1ビットと第K-1の排他的論理和の出力ビットとを演算する第Kの排他的論理和部と、前記情報ビット列の第n+1ビットと第n+2ビットの排他的論理和を演算する第nの排他的論理和部と、前記情報ビット列の第K+n+1ビットと第K+n-2の排他的論理和の出力ビットとを演算する第K+n-1の排他的論理和部とを備え、
前記切替手段は、前記情報ビット列の第1ビットをオンオフする第1のスイッチ部と、第n+1ビットをオンオフする第n+1のスイッチ部と、K1を1以上n-1以下の整数とすると、第K1の排他的論理和部の出力ビットをオンオフする第K1+1のスイッチ部と、第K1+n-1の排他的論理和部の出力ビットをオンオフする第K1+n+1のスイッチ部とを備え、
前記変調手段は、K2を1以上n以下の整数とすると、第K2のスイッチ部の出力値に従って分岐された光の一つの一部を振幅変調し、第K2+nのスイッチ部の出力値に従って前記分岐された光の一つの残りの部分を振幅変調し、前記振幅変調された光を直交する位相関係でコヒーレントに結合する第K2の4位相変調偏移変調部を備える
ことを特徴とする光変調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調装置及び光変調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等のモバイルアプリケーションの発達、IoT(Internet of Things)技術の出現、リモートワークの普及によるWeb会議の増加等により通信需要が急速に増大しており、加入者系光ネットワークの伝送装置に大容量化が要求されている。そこで、従来基幹系光ネットワークに適用されていたコヒーレント光伝送装置を、加入者系光ネットワークに応用する研究が進められている。
【0003】
コヒーレント光伝送は、信号光の振幅と位相の両方を情報の送受に利用するため、既存の加入者系光ネットワークで用いられてきた強度変調直接検波方式の光伝送に比べて単位時間当りに運ぶ情報量が多く、大容量通信に適した方式である。以下、一般的なコヒーレント光伝送系の構成および動作について説明を行う。
【0004】
図2は、従来のコヒーレント光伝送系の一般的な構成を示す全体構成図である。図2において、光伝送システム10は、送信側伝送装置100、伝送路104、及び受信側伝送装置200を有する。
【0005】
送信側伝送装置100は、受信側伝送装置200に送信する情報に従って光変調し、その変調光を伝送路104に送出する。図2に示すように、送信側伝送装置100は、送信手段101、第1の光源102、光変調手段103を有する。さらに、送信手段101は、ビット列発生手段110と、シンボル変換手段111とを有する。
【0006】
送信手段101は、通報情報を含む電気信号を光変調手段103に与えるものである。ここで、電気信号とは、電流、電圧等の電気的な量の時間変化のことであり、その時間変化の仕方が情報を表す。加入者系光通信ネットワークでは、送信側伝送装置100と受信側伝送装置200との間で授受される通報情報は、2値(ビット)系列で表される。
【0007】
ビット列発生手段110は、通報情報としてのビット系列を発生して、ビット系列をシンボル変換手段111に与える。
【0008】
シンボル変換手段111は、ビット列発生手段110から出力されるビット系列を電気信号に変換して出力する。
【0009】
第1の光源102は、連続光を発生して、光変調手段103に与える。
【0010】
光変調手段103は、送信手段101から出力される電気信号に従って、第1の光源102から出力される連続光を変調する。このとき、光変調手段103から出力される出力光の振幅および位相の両方若しくはいずれか一方に、通報情報が含まれるよう、電気信号は光信号に変換される。その変調光は伝送路104に送出される。変調方式として、例えば、位相偏移変調(PSK;phase shift keying)は信号の位相を、直交振幅偏移変調(QAM; quadrature amplitude modulation)は信号の振幅および位相を情報の送受に用いる。
【0011】
受信側伝送装置200は、送信側伝送装置100から送出された信号光を、伝送路104を介して受光し、受光した信号光を逆変換(光復調)して情報を取得する。
【0012】
図2に示すように、受信側伝送装置200は、光コヒーレント検波手段106、第2の光源105、受信手段107を有する。さらに、受信手段107は、シンボル逆変換手段112と、ビット受信手段113とを有する。
【0013】
第2の光源105は、連続光を発生して、光コヒーレント検波手段106に与える。
【0014】
光コヒーレント検波手段106は、伝送路104から出力される信号光と、第2の光源105から出力される連続光とのビート成分を電気信号として出力する。このとき、入力された信号光の振幅および位相に関する情報が電気信号に変換される。
【0015】
受信手段107は、光コヒーレント検波手段106から出力された電気信号から通報情報を復元する。
【0016】
シンボル逆変換手段112は、光コヒーレント検波手段106からの電気信号をビット列に変換してビット受信手段113に与える。
【0017】
ビット受信手段113は、通報情報の届け先であり、シンボル逆変換手段112からのビット系列(通報情報)を受信する。
【0018】
次に、上述のシンボル変換手段111での動作について補足説明を行う。入力ビット系列は複数ビットを1単位として処理される。この単位に含まれるビット数は多値数と呼ばれる。例えば、16QAMフォーマットでは、多値数は4である。
【0019】
続いて、シンボル変換手段111は、入力ビット系列を複数種類の値のいずれかに対応させる。例えば16QAMフォーマットでは、4ビットを1単位(多値数を4)として、入力ビット系列を16(=2の4乗)種類の値のいずれか一つに対応させる。その16種類の中のいずれかの値を保持するものがシンボルであり、シンボルを時系列であらわしたものがシンボル系列である。シンボル変換手段111をFPGA、ASIC、等のデジタル装置で実現する場合、シンボル系列は複数のビット系列を一組としたもので表現される。この組の系列数は桁数と呼ばれる。
【0020】
後段の光変調手段103への入力は、アナログ信号であるので、デジタル-アナログ変換器(digital-to-analog converter;DAC)を用いて前記シンボル系列をアナログ信号に変換する。例えば非特許文献1では、オフライン処理ではあるが16QAMフォーマットでシンボル系列を発生させ、6桁のDACを用いてそのシンボル系列をアナログ信号に変換して光変調を実現している。
【0021】
16QAMフォーマットのシンボル系列は各シンボルが16種類の中のいずれかの値をとると述べたが、実際には各シンボルは4種類の中のいずれかの値と4種類の中のいずれかの値との組で表される。このシンボル系列をアナログ信号に変換すると、電気領域では2系統の振幅変調信号、光領域では互いに直交する2種類の振幅変調光信号となる。上述のシンボル値の組の片方を横軸に、もう片方を縦軸にして平面上にプロットしたものをコンスタレーションマップと呼ぶ。例えば、非特許文献1の図6の左上に16QAMシンボル系列のコンスタレーションマップが示されている。雑音や歪みが無ければ、16QAMシンボル系列のコンスタレーションマップは4×4の正方形格子状に並んだ点で表される。シンボル系列が歪んでいるとその正方形格子の形が歪み、シンボル系列に雑音が付加されていると十分に多数のシンボルを重ね描きしたとき、前述格子状の点のそれぞれが無雑音時の信号点を中心に信号対雑音比(SN比)で決まるある範囲に広がって分布する。
【0022】
既存の加入者系光ネットワークで用いられてきた強度変調直接検波方式の光伝送では光信号強度が2種類(発光又は消光)のいずれかをとるのに対し、コヒーレント光伝送系では2種類以上の振幅のいずれかをとり、転送効率を向上させようとするほどより多種類の振幅のいずれかをとる。それらの振幅の違いは受信側で区別されなければならない。設計の簡素化等を考慮すると、通常、電気領域で十分区別ができる振幅差のシンボル系列を発生し、その間隔を保って光信号に変換する。即ち、コヒーレント光伝送系では光変調手段103での電気/光変換の過程で線形性が求められる。
【0023】
この点、非特許文献2では、以下のようにして光変調手段の非線形性の影響を緩和している。
【0024】
非特許文献2の図8では、従来の64QAM光変調手段の一例(64QAM変調器)が示されている。まず、光源から出力された連続光は、3つに等分岐されそれぞれマッハツェンダー型のIQ(in-phase and quadrature)変調器を用いてQPSK(quaternary PSK)変調される。QPSKが多値数2のフォーマットなので、2つのビット系列を入力することでその変調器から変調光が得られる。そのため、多値数が6である64QAM変調の入力ビット系列を処理するには、単位の6ビットを2ビットずつそれら3つのQPSK変調器の入力に割り当てることができる。得られた3系統のQPSK変調光は振幅比が1対2対4、つまりパワー比が1対4対16になるようにパワー調整を行う。パワー比の比率が2の累乗なので等分岐光方向性結合器を用いて容易にパワー調整できる。それら3系統のQPSK変調光をコヒーレントに結合することにより、64QAM変調光が得られる。
【0025】
また、非特許文献2の図11では、QPSK、8PSK、8QAM、および16QAMの変調フォーマットを切り替える多値数可変光変調器が示されている。
【0026】
QPSK変調光は2相のBPSK(binary PSK)変調光を結合したものなので、電気/光変換の過程はBPSK変調と同等である。
【0027】
非特許文献3の図2・3には、BPSK光変調の原理が示さている。入力印加電圧と出力光振幅との関係は正弦波状である。例えば、入力ビット値が1の場合印加電圧を正弦波の山に、入力ビット値が0の場合印加電圧を正弦波の谷になるように動作点を設定することで、連続光をBPSKフォーマットに変調することができる。ここで、BPSKフォーマットの光信号はπラジアン位相が異なる2種類の光パルスの時系列である。それら位相を便宜上0ラジアンおよびπラジアンとする。又は振幅の大きさと位相をひとまとめにしてそれぞれプラス(+)の振幅、マイナス(-)の振幅と表現する場合もある。動作点付近での入出力特性はビット1,0いずれに対しても、印加電圧が少々異なってもほぼ同じ振幅の変調光が得られる。また、印加電圧を正弦波の山と谷の中間になるように動作点を設定することで、変調器の出力光を消光にすることができる。
【0028】
2つのBPSK変調器出力光をπ/2ラジアンの位相差をつけてコヒーレント結合することでQPSK信号が得られる。
【0029】
図3は、64QAM光変調手段における64QAM光変調の片相当りの入出力関係を示す説明図である。図3では、最左3列の入力ビット(QPSK1入力ビット~QPSK3入力ビット)に中央3列の入力電気信号振幅(QPSK1入力振幅~QPSK3入力振幅)を対応させるとする。QPSK1、QPSK2、QPSK3は、非特許文献2の図8に対応し、数値はそれらの振幅を表す。出力光の振幅は、最右一列(64QAM光出力振幅)の数値で示されている。
【0030】
電気信号振幅および光信号振幅は任意スケールであり、”プラス”、”マイナス”の表記である。得られる光振幅は片相で-7,-5,-3,-1,+1,+3,+5,+7の8値である。両相の位相差をπ/2ラジアンとすると、非特許文献2の図8の光変調手段全体の出力に描かれているように、シンボル時間毎に一つの点が描け、十分長い時間では複素平面状で64(=8x8)値の点が描ける。なお、前述例の一点を信号点と呼び、十分長い時間での信号点の集合として表した図は、先に説明したコンスタレーションマップである。64QAMは多値数6のフォーマットであり、出力光信号のコンスタレーションマップは64個の信号点が正方形格子状に並んだ形をしている。
【0031】
以上のように電気/光変換を直接処理する部分をQPSK変調器とすることで、従来の強度変調直接検波方式と同等の線形性を光変調器に要求すればよい。また、シンボル変換手段入力のビット系列を直接NRZ(non-return-to-zero)化した電気アナログ信号を光変調器への電気入力としているのでDACが不要となる。
【0032】
上述のQPSK、16QAM、及び64QAMフォーマットのシンボル系列はいずれもコンスタレーションマップに表すと正方形格子状の信号点になる。平均信号パワーを一定にしてそれらフォーマットを比較すると、信号点の間隔はQPSK、16QAM、64QAMの順に広くなる。よってSN比を一定にして比較すると、雑音付加によるシンボル判定誤りの確率はQPSK、16QAM、64QAMの順に小さくなる。シンボル判定誤りが少なければ上位レイヤーでの再送手順の発生数が少なくなるので、QPSK、16QAM、64QAMの順に低遅延通信となるとも解釈できる。一方、多値数、つまり同一時間に送受信できるビット数はQPSK、16QAM、64QAMの順に小さくなる。したがって、QPSK、16QAM、64QAMの3種類のフォーマットを比較すると、高品質伝送・低遅延通信を求めるのであればQPSKが、高速・大容量伝送を求めるのであれば64QAMが有利となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【文献】F. Pittala, et al., “ 400-Gbit/s DP-16-QAM Transmission Over 40-km Unamplified SSMF With Low-Cost PON Lasers,” IEEE Photonics Technology Letters, vol. 31, no. 15, pp. 1229-1232, 2019.
【文献】美野真司,他,「PLC-LN ハイブリッド集積技術を用いた高速多値光変調器」,NTT技術ジャーナル,2011年3月.
【文献】電子情報通信学会「知識ベース」,9群,6編,3章.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
ところで、加入者系光ネットワークは、基幹系光ネットワークに比べて、ネットワーク数が多くゆえに全体の伝送装置の数が多い一方、1つの装置間伝送に含まれる通信チャネルの多重数が少ないという特徴がある。1つの装置間伝送では、多重数が少ないため統計多重効果が得られず、時間毎の通信トラヒックのばらつきが大きい。したがって、大きくばらつく通信トラヒックに適応した伝送方式を設計し伝送制御をしないと伝送効率が悪く装置当り消費電力の浪費が大きくなり、全体の伝送装置数が多いのでネットワーク全体としての消費電力が大きくなる。
【0035】
1つの装置間伝送で伝送効率を向上させる方法として例えば以下の方法が考えられる。ネットワーク内で通信トラヒック量が大きい時間帯では伝送装置は高多値数のフォーマットの変調光を送受信することで大容量の通信要求を処理する。通信トラヒック量が小さい時間帯では伝送装置は低多値数のフォーマットだが十分高速変調された光を送受信することで伝送誤りによる再送回数を減らして通信要求の開始から完了までの時間を低減する。そのように各チャネルの通信時間が低減されると、局社側多重伝送装置の一つに複数の細切れになった通信要求を集約することができ、不使用の伝送装置の稼働をオフにすることで、消費電力の削減を図ることができる。
【0036】
そのため、変調信号光の多値数を可変することができ、DACが不要、かつ電気/光変換過程の非線形性の影響が少ない光変調装置及び光変調方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0037】
第1の本発明は、多値数2n(nは3以上の整数)に従い光変調を行う光変調装置であって、(1)2n系統の情報ビット列を発生させる情報ビット列発生手段と、(2)前記情報ビット列のビット情報を用いて排他的論理和の演算を行う排他的論理和手段と、(3)前記情報ビット列発生手段で発生させたビット情報又は前記排他的論理和手段で演算されたビット情報のオンオフ動作を行う切替手段と、(4)光源から入力された光信号を分岐する分岐手段と、(5)前記分岐手段で分岐された光を、前記切替手段を介して入力されたビット情報に従い、各々4位相偏移変調する変調手段と、(6)前記変調手段で変調された光をコヒーレント結合する結合手段とを有し、(7)前記排他的論理和手段は、前記情報ビット列の第1ビットと第2ビットの排他的論理和を演算する第1の排他的論理和部と、Kを2以上n-1以下の整数とすると、前記情報ビット列の第K+1ビットと第K-1の排他的論理和の出力ビットとを演算する第Kの排他的論理和部と、前記情報ビット列の第n+1ビットと第n+2ビットの排他的論理和を演算する第nの排他的論理和部と、前記情報ビット列の第K+n+1ビットと第K+n-2の排他的論理和の出力ビットとを演算する第K+n-1の排他的論理和部とを備え、(8)前記切替手段は、前記情報ビット列の第1ビットをオンオフする第1のスイッチ部と、第n+1ビットをオンオフする第n+1のスイッチ部と、K1を1以上n-1以下の整数とすると、第K1の排他的論理和部の出力ビットをオンオフする第K1+1のスイッチ部と、第K1+n-1の排他的論理和部の出力ビットをオンオフする第K1+n+1のスイッチ部とを備え、(9)前記変調手段は、K2を1以上n以下の整数とすると、第K2のスイッチ部の出力値に従って分岐された光の一つの一部を振幅変調し、第K2+nのスイッチ部の出力値に従って前記分岐された光の一つの残りの部分を振幅変調し、前記振幅変調された光を直交する位相関係でコヒーレントに結合する第K2の4位相変調偏移変調部を備えることを特徴とする。
【0038】
第2の本発明は、多値数2n(nは3以上の整数)に従い光変調を行う光変調装置に使用する光変調方法であって、情報ビット列発生手段、排他的論理和手段、切替手段、分岐手段、変調手段、及び結合手段を有し、(1)前記情報ビット列発生手段は、2n系統の情報ビット列を発生させ、(2)前記排他的論理和手段は、前記情報ビット列のビット情報を用いて排他的論理和の演算を行い、(3)前記切替手段は、前記情報ビット列発生手段で発生させたビット情報又は前記排他的論理和手段で演算されたビット情報のオンオフ動作を行い、(4)前記分岐手段は、光源から入力された光信号を分岐し、(5)前記変調手段は、前記分岐手段で分岐された光を、前記切替手段を介して入力されたビット情報に従い、各々4位相偏移変調し、(6)前記結合手段は、前記変調手段で変調された光をコヒーレント結合し、(7)前記排他的論理和手段は、前記情報ビット列の第1ビットと第2ビットの排他的論理和を演算する第1の排他的論理和部と、Kを2以上n-1以下の整数とすると、前記情報ビット列の第K+1ビットと第K-1の排他的論理和の出力ビットとを演算する第Kの排他的論理和部と、前記情報ビット列の第n+1ビットと第n+2ビットの排他的論理和を演算する第nの排他的論理和部と、前記情報ビット列の第K+n+1ビットと第K+n-2の排他的論理和の出力ビットとを演算する第K+n-1の排他的論理和部とを備え、(8)前記切替手段は、前記情報ビット列の第1ビットをオンオフする第1のスイッチ部と、第n+1ビットをオンオフする第n+1のスイッチ部と、K1を1以上n-1以下の整数とすると、第K1の排他的論理和部の出力ビットをオンオフする第K1+1のスイッチ部と、第K1+n-1の排他的論理和部の出力ビットをオンオフする第K1+n+1のスイッチ部とを備え、(9)前記変調手段は、K2を1以上n以下の整数とすると、第K2のスイッチ部の出力値に従って分岐された光の一つの一部を振幅変調し、第K2+nのスイッチ部の出力値に従って前記分岐された光の一つの残りの部分を振幅変調し、前記振幅変調された光を直交する位相関係でコヒーレントに結合する第K2の4位相変調偏移変調部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、変調信号光の多値数を可変することができ、DACが不要、かつ電気/光変換過程の非線形性の影響が少ない光変調装置及び光変調方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】実施形態に係る光変調装置の構成を示すブロック図である。
図2】従来のコヒーレント光伝送系の一般的な構成を示す全体構成図である。
図3】従来の光変調手段における64QAM光変調の片相当りの入出力関係を示す説明図である。
図4】実施形態に係る光変調装置における変調フォーマット毎の入力ビットと出力光振幅との対応を示す説明図(その1)である。
図5】実施形態に係る光変調装置における変調フォーマット毎の入力ビットと出力光振幅との対応を示す説明図(その2)である。
図6】実施形態に係る光変調装置における変調フォーマット毎の入力ビットと出力光振幅との対応を示す説明図(その3)である。
図7】実施形態に係る光変調装置における変調フォーマット毎の入力ビットと出力光振幅との対応を示す説明図(その4)である。
図8】実施形態に係る変調フォーマット毎の各スイッチの設定を示す説明図である。
図9】実施形態に係る変調フォーマット毎の出力光信号のコンスタレーションマップを示す説明図(その1)である。
図10】実施形態に係る変調フォーマット毎の出力光信号のコンスタレーションマップを示す説明図(その2)である。
図11】変形形態に係る光変調装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明に係る光変調装置及び光変調方法の一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、光伝送装置に本発明の光変調装置を適用する場合を例示する。
【0042】
(A-1)実施形態の構成
図1は、実施形態に係る光変調装置の構成を示すブロック図である。
【0043】
図1において、光変調装置1は、連続光源11、分岐手段12、第1の変調手段13、第2の変調手段14、第3の変調手段15、第4の変調手段16、結合手段17、情報ビット列発生手段18、第1の排他的論理和手段19、第2の排他的論理和手段20、第3の排他的論理和手段21、第4の排他的論理和手段22、第5の排他的論理和手段23、第6の排他的論理和手段24、第1のスイッチ25、第2のスイッチ26、第3のスイッチ27、第4のスイッチ28、第5のスイッチ29、第6のスイッチ30、第7のスイッチ31、及び第8のスイッチ32を有する。
【0044】
光変調装置1は、図1に例示する構成要素を搭載した専用のICチップ等をハードウェアとして適用してもよいし、又は、CPUと、CPUが実行するプログラムを中心としてソフトウェア的に構成しても良いが、機能的には、図1で表すことができる。
【0045】
連続光源11は、連続光を発生して、分岐手段12に出力する手段である。
【0046】
分岐手段12は、連続光源11から入力(入射)された連続光を、4つに分岐する手段である。分岐手段12は、連続光を4つに分岐した1つの光を第1の変調手段13に出力し、分岐したもう1つの光を第2の変調手段14に出力し、さらに、分岐したもう1つの光を第3の変調手段15に出力し、分岐した残りの光を第4の変調手段16に出力する。
【0047】
第1の変調手段13は、分岐手段12からの光(分岐手段12の出力ポートの1つの光)を入力し、後述の第1のスイッチ25の出力値及び第5のスイッチ29の出力値に従って、QPSK変調して出力する手段である。第1の変調手段13は、QPSK変調した光を結合手段17に出力する。
【0048】
第2の変調手段14は、分岐手段12からの光(分岐手段12の出力ポートの1つの光)を入力し、後述の第2のスイッチ26の出力値及び第6のスイッチ30の出力値に従って、QPSK変調して出力する手段である。第2の変調手段14は、QPSK変調した光を結合手段17に出力する。
【0049】
第3の変調手段15は、分岐手段12からの光(分岐手段12の出力ポートの1つの光)を入力し、後述の第3のスイッチ27の出力値及び第7のスイッチ31の出力値に従って、QPSK変調して出力する手段である。第3の変調手段15は、QPSK変調した光を結合手段17に出力する。
【0050】
第4の変調手段16は、分岐手段12からの光(分岐手段12の出力ポートの1つの光)を入力し、後述の第4のスイッチ28の出力値及び第8のスイッチ32の出力値に従って、QPSK変調して出力する手段である。第4の変調手段16は、QPSK変調した光を結合手段17に出力する。
【0051】
結合手段17は、第1の変調手段13の出力光と、第2の変調手段14の出力光と、第3の変調手段15の出力光と、第4の変調手段16の出力光とを結合して出力する手段である。結合手段17は、結合した光を出力信号Oとして外部に出力する。
【0052】
情報ビット列発生手段18は、送受信する時系列の2値情報を発生する手段である。情報ビット列発生手段18では、8系統の2値情報が並列に発生し、8系統のそれぞれを第1のビット18B-1、第2のビット18B-2、…、第8のビット18B-8とする。なお、送受信する2値情報時系列が直列等、8系統の並列になっていない場合、予め並列数の変換をした出力が本手段であるとする。
【0053】
制御信号Sは後述の各スイッチ(第1のスイッチ25~第8のスイッチ32)のオンオフを設定するための信号であり、変調フォーマットがその信号値に対応する。制御信号Sは、例えば、図示しない上位装置から送信される。
【0054】
第1の排他的論理和手段19は、情報ビット列発生手段18から出力される2値情報時系列の第1のビット18B-1と、第2のビット18B-2との排他的論理和を演算し、その演算結果の2値情報時系列を出力する。
【0055】
第2の排他的論理和手段20は、情報ビット列発生手段18から出力される2値情報時系列の第3のビット18B-3と、第1の排他的論理和手段19の出力値との排他的論理和を演算し、その演算結果の2値情報時系列を出力する。
【0056】
第3の排他的論理和手段21は、情報ビット列発生手段18から出力される2値情報時系列の第4のビット18B-4と、第2の排他的論理和手段20の出力値との排他的論理和を演算し、その演算結果の2値情報時系列を出力する。
【0057】
第4の排他的論理和手段22は、情報ビット列発生手段18から出力される2値情報時系列の第5のビット18B-5と、第6のビット18B-6との排他的論理和を演算し、その演算結果の2値情報時系列を出力する。
【0058】
第5の排他的論理和手段23は、情報ビット列発生手段18から出力される2値情報時系列の第7のビット18B-7と、第4の排他的論理和手段22との出力値の排他的論理和を演算し、その演算結果の2値情報時系列を出力する。
【0059】
第6の排他的論理和手段24は、情報ビット列発生手段18から出力される2値情報時系列の第8のビット18B-8と、第5の排他的論理和手段23の出力値との排他的論理和を演算し、その演算結果の2値情報時系列を出力する。
【0060】
第1のスイッチ25は、情報ビット列発生手段18から出力される2値情報時系列の第1のビット18B-1を入力し、制御信号Sに従って入力信号値である正負いずれかの値(オン)か零値(オフ)を出力する。
【0061】
第2のスイッチ26は、第1の排他的論理和手段19から出力される2値情報時系列を入力し、制御信号Sに従って入力信号値である正負いずれかの値(オン)か零値(オフ)を出力する。
【0062】
第3のスイッチ27は、第2の排他的論理和手段20から出力される2値情報時系列を入力し、制御信号Sに従って入力信号値である正負いずれかの値(オン)か零値(オフ)を出力する。
【0063】
第4のスイッチ28は、第3の排他的論理和手段21から出力される2値情報時系列を入力し、制御信号Sに従って入力信号値である正負いずれかの値(オン)か零値(オフ)を出力する。
【0064】
第5のスイッチ29は、情報ビット列発生手段18から出力される2値情報時系列の第5のビット18B-5を入力し、制御信号Sに従って入力信号値である正負いずれかの値(オン)か零値(オフ)を出力する。
【0065】
第6のスイッチ30は、第4の排他的論理和手段22から出力される2値情報時系列を入力し、制御信号Sに従って入力信号値である正負いずれかの値(オン)か零値(オフ)を出力する。
【0066】
第7のスイッチ31は、第5の排他的論理和手段23から出力される2値情報時系列を入力し、制御信号Sに従って入力信号値である正負いずれかの値(オン)か零値(オフ)を出力する。
【0067】
第8のスイッチ32は、第6の排他的論理和手段24から出力される2値情報時系列を入力し、制御信号Sに従って入力信号値である正負いずれかの値(オン)か零値(オフ)を出力する手段である。
【0068】
上述の情報ビット列発生手段18、及び各排他的論理和手段(第1の排他的論理和手段19~第6の排他的論理和手段24)は、2値情報系列を処理・演算する手段であるので、例えば、ASIC、FPGA等のデジタル信号処理装置で実現することができる。また、上述の各スイッチ(第1のスイッチ25~第8のスイッチ32)、例えば光変調用ドライバアンプ等の電気の増幅器を用い、制御信号Sの入力をその増幅器の直流電源に入力してオンオフ動作をさせることで実現することができる。
【0069】
(A-2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する本実施形態に係る光変調装置1の動作を説明する。
【0070】
図4図7は、実施形態に係る光変調装置における変調フォーマット毎の入力ビットと出力光振幅との対応を示す説明図である。なお、変調フォーマットについては、制御信号Sを変化させ図8のように各スイッチの設定を切り替えることにより、出力光信号Oの変調フォーマットを切り替えることができる。
【0071】
(A-2-1)256QAMフォーマットの動作
まず、256QAMフォーマットの光変調信号を発生する場合について図4を用いて説明する。なお、256QAMフォーマットでは同相成分と直交成分の動作が同一であるため、以下同相成分のみ動作を詳述する。
【0072】
図4(A)では、情報ビット列発生手段18から発生するビット系列が示されている。同相成分の光信号を発生するのに必要な並列数は4である。発生する4つの並列ビット系列は同期しているとし、同期している4ビットを図のように同一列に示すものとする。
【0073】
各スイッチ(第1のスイッチ25~第8のスイッチ32)は全てオン状態に設定する。入力ビットが”1”の場合、各スイッチは正振幅を、入力ビットが”0”の場合、各スイッチは負振幅を出力するように動作させる。
【0074】
各変調手段(第1の変調手段13~第4の変調手段16)に連続光を入力し、各スイッチの出力振幅が正振幅の場合、各変調手段が位相0ラジアンの光を、各スイッチの出力振幅が負振幅の場合各変調手段が位相πラジアンの光を出力するように各変調手段を動作させる。
【0075】
図4(B)~(E)では、結合手段17の片相あたりの入力光信号振幅が示されている。光位相が0ラジアンの場合振幅を正、光位相がπラジアンの場合振幅を負に表記している。振幅のスケールを任意とし、第1の入力光の振幅は+8か-8の値、第2の入力光の振幅は+4か-4の値、第3の入力光の振幅は+2か-2の値、第4の入力光の振幅は+1か-1の値をとるとする。前記のような振幅比を得るには例えば、分岐手段12のパワー分岐比を前記振幅比の2乗に設定する、各変調手段に印加する電気信号(各スイッチの出力)の振幅を前記振幅比に設定する、分岐手段12と結合手段17の間の光路に前記振幅比の2乗に等しいパワー損失比をもつ減衰器を挿入する等の方法が存在する。又は結合手段17に入力する4系統の光の振幅を等しくし結合手段17のパワー結合比を前記振幅比の2乗に設定しても良い。
【0076】
直交成分の光信号を発生する動作も同様であり、情報ビット列発生手段18の第5のビット18B-5~第8のビット18B-8から直交成分の光信号を得る。
【0077】
結合手段17により入力された4系統の光はコヒーレントに結合され、結合手段17は、図4(F)に示すように片相あたり16種類の振幅をもつ光を出力する。その出力光が出力光信号Oである。
【0078】
(A-2-2)64QAMフォーマットの動作
次に、64QAMフォーマットの光変調信号を発生する場合について図5を用いて説明する。64QAMフォーマットも256QAMフォーマットと同様、同相成分と直交成分の動作が同一であるため、以下同相成分のみ動作を詳述する。
【0079】
図5(A)では、情報ビット列発生手段18から発生するビット系列が示されている。同相成分の光信号を発生するのに必要な並列数は3である。そのため第4のビット18B-4は用いない。使用しない第4のビット18B-4の値を、便宜上「x」と表記する。発生する並列3ビット系列は同期しているとし、同期している3ビットを図のように同一列に示すものとする。
【0080】
各スイッチについて、第1のスイッチ25~第3のスイッチ27をオン状態に、第4のスイッチ28をオフ状態に設定する。第1のスイッチ25~第3のスイッチ27では256QAMフォーマットでの動作と同様入力ビットが”1”の場合各スイッチは正振幅を、入力ビットが”0”の場合各スイッチは負振幅を出力するように動作させる。第4のスイッチ28は零振幅を出力するように動作させる。
【0081】
各変調手段に連続光を入力し、256QAMフォーマットでの動作と同様、各スイッチの出力振幅が正振幅の場合各変調手段が位相0ラジアンの光を、各スイッチの出力振幅が負振幅の場合、各変調手段が位相πラジアンの光を出力するように各変調手段を動作させる。各スイッチの出力振幅が零振幅の場合各変調手段の出力が消光となるように動作させる。
【0082】
図5(B)~(E)では、結合手段17の片相あたりの入力光信号振幅が示されている。256QAMフォーマットでの動作と同様、光振幅は任意スケールで、光位相が0ラジアンの場合振幅を正、光位相がπラジアンの場合振幅を負に表記している。各変調手段の出力が消光である場合、振幅値は0である。
【0083】
直交成分の光信号を発生する動作も同様であり、情報ビット列発生手段18の第5のビット18B-5~第7のビット18B-7から直交成分の光信号を得る。
【0084】
結合手段17により入力された4系統の光はコヒーレントに結合され、結合手段17は図5(F)に示すように片相あたり8種類の振幅をもつ光を出力する。その出力光が出力光信号Oである。
【0085】
(A-2-3)16QAM及びQPSKフォーマットの動作
次に、16QAM、QPSKフォーマットの光変調信号を発生する場合について、それぞれ図6図7を用いて説明する。64QAMフォーマットと同様、同相成分と直交成分の動作が同一であるため、以下同相成分のみ動作を詳述する。
【0086】
情報ビット列発生手段18から発生するビットを図6(A)、図7(A)にそれぞれ示す。同相成分の光信号を発生するのに必要な並列数は16QAMフォーマットの場合には2で、QPSKフォーマットの場合には1である。そのため64QAMフォーマットの動作と同様不使用の並列レーンが存在し、その不使用ビットの値を「x」と表記する。発生する並列ビット系列は同期しているとし、同期しているビットを図のように同一列に示すものとする。
【0087】
各スイッチに関しては、16QAMフォーマットの場合、第1のスイッチ25、第2のスイッチ26をオン状態に、第3のスイッチ27、第4のスイッチ28をオフ状態に設定する。一方、QPSKフォーマットの場合、第1のスイッチ25をオン状態に、第2のスイッチ26~第4のスイッチ28をオフ状態に設定する。64QAMフォーマットでの動作と同様に各スイッチは正振幅、負振幅、あるいは零振幅を出力する。
【0088】
各変調手段は64QAMフォーマットの場合と同様の動作をする。結合手段17の片相あたりの入力光信号振幅を16QAMフォーマットの場合、図6(B)~(E)、QPSKフォーマットの場合、図7(B)~(E)に示すものとする。
【0089】
直交成分の光信号を発生する動作も同様である。
【0090】
結合手段17により入力された4系統の光はコヒーレントに結合され、16QAMフォーマットの場合には図6(F)に示すように片相あたり4種類の振幅を、QPSKフォーマットの場合には図7(F)に示すように片相あたり2種類の振幅をもつ光を結合手段17は出力する。その出力光が出力光信号Oである。
【0091】
(A-2-4)出力光信号Oのコンスタレーションマップ
図9図10は、実施形態に係る変調フォーマット毎の出力光信号のコンスタレーションマップを示す説明図である。
【0092】
図9に示す256QAMフォーマットの場合、1マスの幅は2でありマスの中心が信号点の位置である。よって最小信号点間隔は2である。マスの中に示したビット値はその信号点に対応するビットパターンであり、上段は左から順に第1、第2、第3、第4のビット、下段は左から順に第5、第6、第7、第8ビットを示す。また、図10(A)に示す64QAMフォーマットの場合、1マスの幅は4でありマスの中心が信号点の位置である。よって最小信号点間隔は4である。マスの中に示したビット値はその信号点に対応するビットパターンであり、左から順に第1、第2、第3、第5、第6、第7のビットを示す。
【0093】
図10(B)に示す16QAMフォーマットの場合、1マスの幅は8でありマスの中心が信号点の位置である。よって最小信号点間隔は8である。マスの中に示したビット値はその信号点に対応するビットパターンであり、左から順に第1、第2、第5、第6ビットを示す。そして、図10(C)に示すQPSKフォーマットの場合、1マスの幅は16でありマスの中心が信号点の位置である。よって最小信号点間隔は16である。マスの中に示したビット値はその信号点に対応するビットパターンであり、左から順に第1、第5ビットを示す。図からわかるように、いずれの変調フォーマットでも隣接信号点に対応するビットパターン間で異なるビットの数はいずれの信号点に対しても1であり、グレイ符号化されている。
【0094】
(A-3)実施形態の効果
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0095】
光変調装置1は、送信するビット系列を直接アナログ化した2値の電気信号で光変調手段を駆動することで電気/光変換が実現できる。よってビット系列をシンボル系列に変換するシンボルマッパやDACといった手段が不要になり、簡素な構成で装置化することが可能となる。
【0096】
また、個々の光振幅変調手段は、2値の電気信号で駆動され、その出力光シンボルは2種類であり、互いに位相がπラジアン異なるが、共に振幅が同じである。よって、電気/光変換過程の非線形性の影響が緩和され、良好な波形の光を送信することで受信信号の品質が向上する。
【0097】
さらに、隣接信号点間で、割り当てられている4ビットのパターンが1ビットしか異ならない。よって、1つのシンボル誤りが複数のビット誤りに変換されないビット/シンボル変換であり、良好な誤り特性をもつ伝送が達成できる。
【0098】
光変調装置1は、制御信号Sの値を時間変化させることにより、変調フォーマットを可変することができる。そのため、通信トラヒック量の変動に応じて伝送容量、伝送品質、稼働する装置の数を可変し運用効率の良い通信を実現することで、ネットワーク全体の省電力化を達成できる。
【0099】
非特許文献2に示される64QAM光変調器では、隣接信号点に対応するビットパターン間で異なるビットの数が1を超える場合がある。例えば、上述の図3を用いて説明すると、片相の振幅が等しくもう片相の振幅が+5と+3である2つの信号点に対応するビットパターンはそれぞれ”110abc”、”101abc”である。ここで”abc”は振幅が等しい方の相の振幅に対応するビットパターンである。両者を比べると、異なるビットの数は2である。一方、本実施形態ではグレイ符号化されているので、隣接信号点に対応するビットパターン間で異なるビットの数は1である。信号点の認識が隣接信号点に誤る場合、非特許文献2の64QAM光変調器では2ビット誤りになる場合があるのに対し、本実施形態に係る光変調装置1では1ビット誤りになるので、本実施形態に係る光変調装置1の方が伝送品質が良好である。
【0100】
QPSK変調器を複数用いて多値変調光を生成するため、所望の変調光を生成するにはQPSK変調器間の変調タイミングの同期が重要である。本実施形態に係る光変調装置1と非特許文献2に記載の多値数可変光変調器とでQPSK変調器の数は同じである。非特許文献2に記載の多値数可変光変調器では、QPSK変調器を直列に接続することにより多値変調光を生成する。非特許文献2ではQPSK変調器を2つ用い16QAMまでの変調器を示しているが、さらに多値数を増加させるとQPSK変調器の数が増加する。それらQPSK変調間でタイミングの同期がとれるようQPSK変調器間の光路長が設定される。最初のQPSK変調器と2番目のQPSK変調器との間の光路長に誤差があると、その誤差は最初のQPSK変調器と3番目以降のQPSK変調器との間の変調タイミングにも影響する。よって最初のQPSK変調器と最後のQPSK変調器との間の変調タイミングの誤差は、QPSK変調器間の光路長誤差を積算したものに比例する。一方、本実施形態に係る光変調装置1では、QPSK変調器を並列に接続することにより多値変調光を生成する。その場合、QPSK変調器間の変調タイミングの誤差はQPSK変調器を含む分岐手段12から結合手段17間光路の当該光路長差にのみ依存し、それが全ての組み合わせのQPSK変調器間に当てはまる。したがって、本実施形態に係る光変調装置1の方がQPSK変調器間の変調タイミングの誤差の最大値が小さく、変調タイミングを調整しやすいという利点が存在する。
【0101】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0102】
上記実施形態では256QAM、64QAM、16QAM、QPSKの変調フォーマットを可変する光伝送装置1について説明を行った。変形例として(拡張として)、多値数を2nとし図11に示す構成の光変調装置1Aを用いることができる。
【0103】
図11において、光変調装置1Aは、連続光源11、分岐手段12、変調手段13(13-1~13-n)、結合手段17、情報ビット列発生手段18、排他的論理和手段19(19-1~19-(2n-2))、及びスイッチ25(25-1~25-2n)を有する。図11の各構成手段は、図1の各構成手段と同一又は類似のため、詳細な説明を省略する。
【0104】
各構成手段を上記実施形態と同様の動作をさせると、任意偶数の多値数をもつ直交振幅偏移変調フォーマットを可変にすることができる。
【符号の説明】
【0105】
1、1A…光変調装置、10…光伝送システム、11…連続光源、12…分岐手段、13…第1の変調手段、14…第2の変調手段、15…第3の変調手段、16…第4の変調手段、17…結合手段、18…情報ビット列発生手段、18B-1~18B-8…第1のビット~第8のビット、19…第1の排他的論理和手段、20…第2の排他的論理和手段、21…第3の排他的論理和手段、22…第4の排他的論理和手段、23…第5の排他的論理和手段、24…第6の排他的論理和手段、25…第1のスイッチ、26…第2のスイッチ、27…第3のスイッチ、28…第4のスイッチ、29…第5のスイッチ、30…第6のスイッチ、31…第7のスイッチ、32…第8のスイッチ、S…制御信号、O…出力信号。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11