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  • 特許-ステータ構造及び回転電機 図1
  • 特許-ステータ構造及び回転電機 図2
  • 特許-ステータ構造及び回転電機 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ステータ構造及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H02K5/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023004920
(22)【出願日】2023-01-17
(65)【公開番号】P2024101143
(43)【公開日】2024-07-29
【審査請求日】2024-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋平
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-114494(JP,A)
【文献】特開2007-068313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと前記ステータコアに巻かれたステータコイルとを有するステータと、
前記ステータコイルが接続されたバスバーを有し、外径が前記ステータコアの外径よりも大きいバスリングと、
前記ステータコアを径方向内側に収容し、軸方向一方側端で開口し軸方向他方側に延びる冷媒液の流路を有するフレームと、
前記フレームの軸方向一方側且つ前記バスリングの軸方向他方側に配置され、前記流路の開口を塞ぐとともに前記バスリングを保持する蓋部材と、
を備え、
前記蓋部材は、前記フレームに固定される、
ことを特徴とするステータ構造。
【請求項2】
前記流路の開口は、前記バスリングの外径よりも径方向内側に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載のステータ構造。
【請求項3】
前記ステータコアの軸方向一方側を、軸方向一方側及び径方向外側から覆うブラケットをさらに有し、
前記ブラケットは、前記フレーム又は前記蓋部材に固定される、
ことを特徴とする請求項1に記載のステータ構造。
【請求項4】
回転電機であって、
請求項1に記載のステータ構造と、
前記ステータコアの径方向内側に配置されたロータと、
前記ステータ構造の軸方向一方側に配置され、前記回転電機を駆動するインバータ部と、
を備えることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
自動車の駆動用であることを特徴とする請求項4に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ構造及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば三相交流モータにおいては、ステータコアに巻かれた各相のステータコイルを相ごとのバスバーで接続し、この相ごとのバスバーをバスリングでまとめる構造が知られている(例えば特許文献1)。バスバーは環状の導体である。
【0003】
また、モータの冷却構造としては、ステータの外周を覆うフレームに流路を設け、この流路に例えば水などの冷媒液を流すことでステータ等を冷却する構造が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-154084号公報
【文献】国際公開第2013/069321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータのフレームは、例えばアルミダイキャストのように鋳型を用いて製造される。この場合、フレーム内に流路を形成するには、型抜きのため、流路がフレームの外部に開口した形状にする必要がある。ステータを軸方向に亘って冷却するためには流路を軸方向に沿って延ばす必要があり、この場合、型抜きのための開口はフレームの軸方向端に配置されることになる。このフレームの軸方向端の開口は、ステータの軸方向端を覆うブラケットで蓋をすることによって、周方向に亘って塞ぐことができる。
【0006】
ところで、バスリングをステータコイルの軸方向端部であるコイルエンドの径方向外側に配置することで、モータの軸方向サイズの増大を防ぐことが望ましい。また、バスリングは、流れる電流の大きさや必要な機械的強度に応じて軸方向の厚さや径方向の幅が必要となる。ブラケットはバスリングを覆う大きさが必要であるため、バスリングが径方向に大きい場合、ブラケットで開口を塞ぐ流路も径方向外側に設けざるをえない。
【0007】
ステータコアは、その外周がフレームの内周に接して、フレームの流路に流れる冷媒液によって冷却されるが、上述のように流路を径方向外側に配置すると流路がステータコアから離れることになり、冷却効率が悪化するという問題があった。また、流路を径方向外側に配置するとフレームの径方向が厚くなるため、重量やサイズが増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、回転電機のフレームにおける冷媒液の流路の位置の自由度について改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るステータ構造は、ステータコアと前記ステータコアに巻かれたステータコイルとを有するステータと、前記ステータコイルが接続されたバスバーを有し、外径が前記ステータコアの外径よりも大きいバスリングと、前記ステータコアを径方向内側に収容し、軸方向一方側端で開口し軸方向他方側に延びる冷媒液の流路を有するフレームと、前記フレームの軸方向一方側且つ前記バスリングの軸方向他方側に配置され、前記流路の開口を塞ぐとともに前記バスリングを保持する蓋部材と、を備え、前記蓋部材は、前記フレームに固定される。
【0010】
上記の一態様のステータ構造において、前記流路の開口は、前記バスリングの外径よりも径方向内側に位置する。
【0011】
上記の一態様のステータ構造において、前記ステータコアの軸方向一方側を、軸方向一方側及び径方向外側から覆うブラケットをさらに有し、前記ブラケットは、前記フレーム又は前記蓋部材に固定される。
【0012】
本発明の一態様に係る回転電機は、上記のステータ構造と、前記ステータコアの径方向内側に配置されたロータと、前記ステータ構造の軸方向一方側に配置され、前記回転電機を駆動するインバータ部と、を備える。
【0013】
上記の一態様の回転電機は、自動車の駆動用である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、回転電機のフレームにおける冷媒液の流路の位置の自由度について改善することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るステータ構造の概略を示す分解斜視図である。
図2図1のステータ構造100を組み立てた状態を示す側断面図である。
図3図1の蓋部材120を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るステータ構造について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。また、各構成を見易さのため、実際の形状と異なる概略で示している。
【0017】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、X軸方向は、図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち図1の上下方向とする。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向の両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0018】
また、以下の説明においては、X軸方向の負の側(-X側)を「一方側」と呼び、X軸方向の正の側(+X側)を「他方側」と呼ぶ。なお、一方側及び他方側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(X軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。
【0019】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(X軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(X軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。
【0020】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るステータ構造の概略を示す分解斜視図である。ステータ構造100は、回転電機の一例であるモータのステータ周りを構成する。ステータ構造100は、例えば三相交流モータを構成する。ステータ構造100は、ステータ110と、蓋部材120と、フレーム130と、バスリング113と、端子台114と、を有して構成される。ステータ構造100を有するモータは、ステータ110の径方向内側に配置されたロータを有するが、このロータの図示は省略している。
【0021】
ステータ110は、円筒形状のステータコア111と、ステータコア111に巻かれた相ごとのステータコイル112と、を有する。バスリング113は、相ごとのバスバー113aを有する。相ごとのステータコイル112の端部のそれぞれは、相ごとのバスバー113aのそれぞれに電気的に接続される。バスリング113の外径は、ステータコア111の外径よりも大きい。バスリング113の外周端は、ステータコア111の外周端よりも径方向外側に位置する。
【0022】
端子台114は、相ごとのバスバー113aそれぞれの端子113bを保持し、外部との接続が容易に行えるようにする。ステータ構造100を有するモータの軸方向一方側には、このモータを駆動するインバータ部が配置され、端子台114の各端子はこのインバータ部に電気的に接続される。ステータ構造100を有するモータは、例えば自動車の駆動用である。
【0023】
フレーム130は、円筒形状であって、径方向内側にステータコア111を収容する。フレーム130とステータコア111とは、例えば焼嵌めによって固定される。フレーム130は、冷媒液の流路である流路131を有する。冷媒液は例えば水である。流路131は、フレーム130の軸方向一方側端で開口し、この開口から軸方向他方側に延びる。フレーム130は、例えばアルミダイキャストのように鋳型を用いて製造される。流路131がフレーム130の軸方向一方側端に開口を有することで、フレーム130を製造する際に流路131の形状の型抜きを可能にする。
【0024】
蓋部材120は、流路131に冷媒液を流す際に、フレーム130の軸方向一方側端の開口から冷媒液が漏れるのを防ぐように、この開口に蓋をして塞ぐ部材である。蓋部材120は、フレーム130の軸方向一方側且つバスリング113の軸方向他方側に配置される。蓋部材120は、円環状の部材であって、フレーム130の軸方向一方側端の開口と対向する位置に面を有することで、フレーム130の軸方向一方側端に固定された際に開口を塞ぐ。開口の周囲において、フレーム130と蓋部材120との間には液状ガスケット等によるシール部を設けるのが望ましい。ステータ110は、流路131に冷媒液が流れることで、冷却される。流路131内の冷媒液は、例えばフレーム130の側面に設けた流入口及び流出口を介し例えばポンプ等によって循環される。
【0025】
ステータ構造100は、ボルト120cを有する。蓋部材120は、ボルト120cが挿入されるボルト穴120bを有する。フレーム130は、ボルト120cが挿入されるボルト穴130aを有する。ボルト120cは、蓋部材120の軸方向他方側の面がフレーム130の軸方向一方側の面に接するように、蓋部材120をフレーム130に固定して保持する。ボルト120c、ボルト穴120b及びボルト穴130aは、蓋部材120をフレーム130に保持する保持構造の一例である。ボルト120c、ボルト穴120b及びボルト穴130aは、周方向に複数設けられる。
【0026】
ステータ構造100は、ボルト113dを有する。バスリング113は、ボルト113dが挿入されるボルト穴113cを有する。蓋部材120は、ボルト113dが挿入されるボルト穴120aを有する。ボルト113dは、バスリング113の軸方向他方側の面が蓋部材120の軸方向一方側の面に接するように、バスリング113を蓋部材120に固定して保持する。ボルト113、ボルト穴113c及びボルト穴120aは、バスリング113を蓋部材120に保持する保持構造の一例である。ボルト113、ボルト穴113c及びボルト穴120aは、周方向に複数設けられる。
【0027】
ステータ構造100は、ボルト114aを有する。蓋部材120は、ボルト114aが挿入されるボルト穴120dを有する。端子台114は、ボルト114aによって蓋部材120に固定される。ボルト114a及びボルト穴120dは、端子台114の周方向両側に設けられる。
【0028】
図2は、図1のステータ構造100を組み立てた状態を示す側断面図である。図2は、中心軸Jを通り、Z軸と直交する面で切断して示している。ステータコア112の軸方向一方側は、軸方向一方側及び径方向外側からブラケットで覆われるようにしてもよい。このブラケットは、フレーム130と蓋部材120とのボルト固定位置とは異なる箇所において、フレーム130又は蓋部材120にボルト固定される。
【0029】
バスリング113は、ステータコイル112の軸方向一方側のコイルエンドの径方向外側に配置される。バスリング113は、少なくとも一部が軸方向で蓋部材120と重なる。蓋部材120は、少なくとも一部が軸方向でフレーム130と重なる。また、流路131は、軸方向一方側の径方向長さよりも軸方向他方側の径方向長さの方が短い。このような形状にすることで、フレーム130を製造する際に流路131の形状の型抜きをスムーズにする。
【0030】
図3は、図1の蓋部材120を示す斜視図である。本実施形態では、蓋部材120においてボルト穴120bを周方向に6つ配置している。すなわち、ボルト120c、ボルト穴120b及びボルト穴130aの組み合わせを、周方向に6つ配置している。ボルト120c、ボルト穴120b及びボルト穴130aの数は、これに限られるものではなく、蓋部材120により、フレーム130の流路131の開口を安定して塞ぐことができるものであればよい。
【0031】
また、本実施形態では、蓋部材120においてボルト穴120aを周方向に3つ配置している。すなわち、ボルト113d、ボルト穴113c及びボルト穴120aの組み合わせを、周方向に3つ配置している。ボルト113d、ボルト穴113c及びボルト穴120aの数は、これに限られるものではなく、バスリング113を蓋部材120に安定して保持することができるものであればよい。
【0032】
なお、ボルト穴120aは、蓋部材120の軸方向一方側の面から軸方向一方側に突出する突出部120aaに設けられている。このように構成することで、蓋部材120は、バスリング113を軸方向で離間して保持することができ、バスリング113の形状の自由度を高めることができる。
【0033】
本実施形態では、バスリング113は、フレーム130に直接保持されるのではなく、蓋部材120に保持される。これにより、バスリング113を保持する保持構造は、径方向で流路131の開口の位置を避ける必要がなく、バスリングやフレームの自由度を改善することができる。これにより、モータのサイズを小型化し、重量を低減することができる。
【0034】
また、本実施形態では、フレーム130における流路131の開口は、ブラケットで塞がずに蓋部材120で塞ぐことができるため、流路131の径方向位置は、バスリング113の形状によらずに定めることができる。したがって、フレーム130の内径側、すなわちステータコア111に近い側に流路131を配置することができ、冷却効率を向上するとともに、モータの小型化、軽量化が可能となる。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
100…ステータ構造、110…ステータ、120…蓋部材、113…バスリング、130…フレーム

図1
図2
図3