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特許7529067データ提供システム、端末装置、データ提供方法、及びコンピュータプログラム
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  • 特許-データ提供システム、端末装置、データ提供方法、及びコンピュータプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】データ提供システム、端末装置、データ提供方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/60 20180101AFI20240730BHJP
【FI】
G16H10/60
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023012771
(22)【出願日】2023-01-31
(62)【分割の表示】P 2017150536の分割
【原出願日】2017-08-03
(65)【公開番号】P2023052786
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】横尾 崇史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】平野 直之
【審査官】中元 淳二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097817(JP,A)
【文献】特開2016-224571(JP,A)
【文献】特開2006-276922(JP,A)
【文献】特開2008-158820(JP,A)
【文献】特開2016-048553(JP,A)
【文献】特開2014-134934(JP,A)
【文献】国際公開第2016/165005(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の医療機関の利用に関わるデータであるレセプトデータに基づいた人物の医療参考データを格納するデータベースと、
搬送手段によって搬送される搬送対象者に関する医療参考データを検索するための検索条件の入力を受け付ける手段、前記検索条件に基づいて前記データベースから取得された医療参考データを受信する手段、及び前記データベースから取得された医療参考データを搬送先候補の医療機関の端末に出力する手段を有する端末装置と
を備えるデータ提供システム。
【請求項2】
前記検索条件は、保険者に関する情報を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載のデータ提供システム。
【請求項3】
前記搬送先候補の医療機関の端末は、受付装置を含み、
前記受付装置は、前記データベースから取得された医療参考データを受信したことを医療機関の関係者に報知する手段を備える
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のデータ提供システム。
【請求項4】
前記データベースから、消防機関の担当エリアに関連する個人の前記医療参考データを抽出して格納する個人医療データベースをさらに備え、
前記受信する手段は、前記データベースに代えて、前記個人医療データベースから、前記医療参考データを受信する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデータ提供システム。
【請求項5】
搬送手段によって搬送される搬送対象者に関する医療参考データを検索するための検索条件の入力を受け付ける手段と、
データベースから前記検索条件に基づいて検索された人物の医療参考データを受信する手段と、
前記人物の医療参考データを搬送先候補の医療機関の端末に出力する手段と
を備える端末装置。
【請求項6】
前記データベースは、個人の医療機関の利用に関わるデータであるレセプトデータに基づいた人物の医療参考データを格納する
ことを特徴とする、請求項5に記載の端末装置。
【請求項7】
端末装置が、
搬送手段によって搬送される搬送対象者に関する医療参考データを検索するための検索条件の入力を受け付け、
データベースから、前記検索条件に基づいて検索された人物の医療参考データを受信し、
前記人物の医療参考データを搬送先候補の医療機関の端末に出力する
ことを特徴とする、データ提供方法。
【請求項8】
前記データベースは、個人の医療機関の利用に関わるデータであるレセプトデータに基づいた人物の医療参考データを格納する
ことを特徴とする、請求項7に記載のデータ提供方法。
【請求項9】
コンピュータに、
搬送手段によって搬送される搬送対象者に関する医療参考データを検索するための検索条件の入力を受け付ける処理と、
データベースから前記検索条件に基づいて検索された人物の医療参考データを受信する処理と、
前記人物の医療参考データを搬送先候補の医療機関の端末に出力する処理と
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急病人の病歴などの救急搬送に有効なデータを救急隊員や医療機関に提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
救急隊員が搬送対象者を医療機関に搬送する際に、意識が無い等の理由により搬送対象者から持病や掛かりつけ医などの情報を聞き出すことができず、このために、救急隊員が搬送先の医療機関を迅速に決定できない場合がある。
【0003】
特許文献1は、緊急時に、救急隊員に搬送対象者の医療データを提供するシステムの構成を開示している。特許文献1では、システムの利用者が、予め、氏名、住所、生年月日などの個人情報や、既往症情報や、アレルギー情報や、薬歴情報や、主治医情報などを含む医療データをシステムのサーバに登録する。これにより、システムのサーバは、その登録された医療データに対応する識別情報である二次元コードを発行する。発行された二次元コードを印した二次元コードシールは、例えば利用者の自宅の指定箇所に貼付される。利用者を自宅から救急搬送しなければならない事態が発生した際には、救急隊員は、二次元コードリーダーに二次元コードを読み込ませる。これにより、例えば救急車に搭載されているコンピュータがシステムのサーバにアクセスし、サーバは、二次元コードに対応する搬送対象の利用者の医療データを返信する。救急車のコンピュータは、サーバから受け取った医療データを画面表示することにより、救急隊員に搬送対象の利用者の医療データを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-099860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、利用者が自身の既往症情報や薬歴情報などの医療データを登録している。このため、システムに登録される医療データには、不正確な情報が含まれる虞がある。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するために考え出された。すなわち、本発明の主な目的は、救急隊員や医療機関に、急病人の病歴や主治医や薬歴などの正確な医療参考データを提供でき、適切な対処を迅速に行うことを可能にする技術を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のデータ提供システムは、
医療関係者からの情報に基づいた人物の医療参考データを格納するデータベースと、
検索条件の入力を受け付ける手段、検索条件に基づいてデータベースから取得された医療参考データを受信する手段、及び前記データベースから取得された医療参考データを他の端末に出力する手段を有する端末装置とを備える。
【0008】
本発明の端末装置は、
検索条件の入力を受け付ける手段と、
データベースから検索条件に基づいて検索された人物の医療参考データを受信する手段と、
人物の医療参考データを他の端末に出力する手段とを備える。
【0009】
本発明のデータ提供方法は、
端末装置が、
検索条件の入力を受け付け、
データベースから検索条件に基づいて検索された人物の医療参考データを受信し、
人物の医療参考データを他の端末に出力することを特徴とする。
【0010】
本発明のコンピュータプログラムは、コンピュータに、
検索条件の入力を受け付ける処理と、
データベースから検索条件に基づいて検索された人物の医療参考データを受信する処理と、
人物の医療参考データを他の端末に出力する処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、救急隊員や医療機関に、急病人の病歴や主治医や薬歴などの正確な医療参考データを提供でき、適切な対処を迅速に行うことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る第1実施形態のデータ提供システムを説明する図である。
図2】診療報酬明細書の一例を表す図である。
図3】第1実施形態における端末装置の検索画面の一例を表す図である。
図4】第1実施形態における端末装置の検索結果を表す画面の一例を表す図である。
図5】さらに、第1実施形態における端末装置の検索結果を表す画面の一例を表す図である。
図6】さらに、第1実施形態における端末装置の検索結果を表す画面の一例を表す図である。
図7】さらにまた、第1実施形態における端末装置の検索結果を表す画面の一例を表す図である。
図8】第1実施形態のデータ提供システムの動作例を説明するシーケンス図である。
図9】本発明に係るその他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態のデータ提供システムの構成を簡略化して表すブロック図である。第1実施形態のデータ提供システム1は、救急隊員や医療機関に、救急搬送対象者(傷病者)に関わる正確な医療参考データ(既往症、薬歴や主治医などのデータ)を提供することにより搬送先の迅速な決定を実現させるべく次のような構成を備えている。すなわち、データ提供システム1は、データ生成装置3と、データ提供装置4と、端末装置5とを備えている。
【0015】
データ生成装置3はコンピュータ装置であり、記憶装置であるマスタデータベース(以下、マスタDB(DataBase)とも記す)7に接続されている。マスタDB7には、複数種のデータベース(記憶装置)D1,D2,D3からそれぞれ収集される個人情報が格納される。データベースD1,D2,D3は、それぞれ、個人情報を格納するデータベースであり、ここでは、それらデータベースD1,D2,D3に格納されている個人情報はその内容が互いに異なる。
【0016】
例えば、データベースD1は、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)におけるデータベースであり、住民基本台帳における個人情報(主に、氏名、生年月日、住所などの住民票に記載されているデータ)が格納されている。データベースD2は、国民健康保険組合のシステムにおけるデータベースであり、国民健康保険組合に加入している加入者の個人情報(氏名、生年月日、住所、保険の利用状況など)が格納されている。なお、国民健康保険組合の加入者の個人情報には、その加入者の世帯に属する全ての者のデータをも加入者の個人情報として含まれている。
【0017】
データベースD3は、後期高齢者医療制度に係るシステムのデータベースであり、後期高齢者医療制度の利用者の個人情報(氏名、生年月日、住所、介護に関わるデータなど)が格納されている。
【0018】
データ生成装置3は、連携データベース(以下、連携DB(DataBase)とも記す)8にも接続されている。データ生成装置3は、医療機関10により生成されたレセプトデータを受領機関11の記憶装置15を介して受け取り、当該レセプトデータを連携DB8に書き込む機能を備えている。ここでのレセプトデータとは、患者が受けた保険診療について医療機関10が保険者(例えば国民健康保険団体連合会)に請求する医療報酬の明細書に記載されているデータ(つまり、医療機関の利用に関わるデータ)である。その医療報酬の明細書に記載される基本的な内容は予め定められている。なお、医療機関10から受領機関11に送信されるレセプトデータは、電子データである場合もあるし、紙媒体に記載されている場合もある。医療機関10から受領機関11に紙媒体でレセプトデータが送信された場合には、受領機関11にて、紙媒体のレセプトデータは電子データに変換される。
【0019】
図2は、レセプトデータに含まれている医療報酬の明細書の一例が表されている。この例に表されているように、レセプトデータには、被保険者の病歴のデータや、処方された医薬品のデータや、利用された医療機関の名称等のデータなどが含まれている。なお、医療報酬の明細書の提出先が国民健康保険組合等の場合には、世帯毎に月単位でまとめられた医療報酬の明細書(レセプトデータ)が生成される。
【0020】
データ生成装置3は、例えばETL(Extract Transform Load)などの技術を利用して、マスタDB7に格納されている複数種のデータベースD1,D2,D3の個人情報に基づき、個人の特定に利用可能な個人基礎データを生成する機能を備える。個人基礎データは、データベースD1,D2,D3の個人情報に基づいた最小単位毎に、各データベースD1,D2,D3に格納されているデータが分類され、同じ最小単位に分類されたデータが関連付けられているデータである。例えば、上述した例では、データベースD2は、国民健康保険組合のシステムのデータベースである。国民健康保険組合では、加入者の世帯毎にデータが管理されている。このようなデータベースD2の個人情報を利用する場合には、個人基礎データの最小単位は世帯となる。これにより、データ生成装置3は、マスタDB7に格納されている各データベースD1,D2,D3の個人情報を世帯毎に分類し、世帯毎に分類されたデータを互いに関連付けることにより、個人基礎データを生成する。例えば、個人基礎データには、氏名、性別、生年月日、住所、被保険者番号、加入している保険者の区分などが含まれる。
【0021】
また、データ生成装置3は、連携DB8からレセプトデータを読み出し当該レセプトデータに含まれている氏名や世帯のデータに基づいて個人基礎データを選択し、選択した個人基礎データにレセプトデータに含まれている医療機関の利用データを関連付ける機能を備える。利用データとは、利用された医療機関の名称や、病歴や、処方された医薬品名などである。
【0022】
データ生成装置3は、上述したように、レセプトデータに基づいた医療機関の利用データを個人基礎データに関連付けることにより、個人(世帯)の医療参考データを生成し、当該生成した医療参考データを連携DB8に蓄積していく。なお、レセプトデータ(医療報酬の明細書)は、多くの場合、月単位でまとめられ、医療機関10から月一回、受領機関11に向けて出力される。このことから、データ生成装置3は、例えば、月1回の設定のタイミングでレセプトデータを受け取り、当該レセプトデータに基づいて個人(世帯)の医療参考データを更新する。
【0023】
データ提供装置4は、消防機関12に属するコンピュータ装置である。データ提供装置4は、同じ消防機関12に属する個人医療データベース(以下、個人医療DB(DataBase)とも記す)14に接続されている。個人医療DB14には、連携DB8に格納されている医療参考データの中から選択された一部の医療参考データが格納されている。すなわち、消防本部等の消防機関12は、地方自治体に設置されており、消防機関12毎に担当のエリアが異なる。一方、連携DB8に格納されている医療参考データは、例えば、国民健康保険組合などのデータに基づいており、当該医療参考データに関連付けられている個人の所在地は、消防機関12における担当エリアよりも広範囲である。このことから、個人医療DB14が属している消防機関12の担当エリアに関連する個人(世帯)の医療参考データが連携DB8から選択(抽出)され、選択された医療参考データが個人医療DB14に格納されている。なお、連携DB8から抽出(選択)された医療参考データを個人医療DB14に書き込む処理は、データ提供装置4により行われてもよいし、消防機関12における他のコンピュータ装置により行われてもよい。また、前述したように、連携DB8の医療参考データは更新されることから、個人医療DB14の医療参考データに関しても、適宜なタイミングで更新される。
【0024】
データ提供装置4は、また、端末装置5に無線通信により接続されている。データ提供装置4は、端末装置5から検索条件のデータと検索要求を受信した場合には、その検索条件に該当する医療参考データを個人医療DB14から抽出し、抽出したデータを検索結果として端末装置5に返信する機能を備えている。
【0025】
データ提供装置4に接続されている端末装置5は、救急車や救急ヘリコプターなどの傷病者を搬送する搬送手段に搭載されている端末装置(コンピュータ装置)である。端末装置5は、搬送手段に固定されていてもよいが、利便性を高めるために携帯可能であってもよい。端末装置5には、救急隊員などの操作者がデータを入力する入力装置16と、データを表示する表示装置17とを備えている。具体例としては、入力装置16と表示装置17が一体化しているタッチパネルを端末装置5は備えている。なお、消防機関12に配置される端末装置5は1台に限定されるものではなく、複数台配置されてもよいものであり、それら配置される端末装置5は同様な機能を持つ。
【0026】
端末装置5は、救急隊員などの操作者が病人を医療機関10に搬送する際に、その搬送対象者である病人に関する医療参考データを表示装置17を利用して提供する機能と、その医療参考データを医療機関10に提供する機能とを備える装置である。すなわち、端末装置5の表示装置17は、例えば、図3のような病人の医療参考データを検索するために用いる検索条件の入力を操作者に促す画面(搬送者データ-検索画面)20を表示する。また、端末装置5は、入力装置(タッチパネルなど)16により操作者が検索条件を入力し、さらに、図3における『検索』21の表示を利用して検索要求が指示されたことを検知した場合には、入力された検索条件のデータと検索要求をデータ提供装置4に出力する機能を備える。
【0027】
また、端末装置5は、データ提供装置4から検索結果が返信されたことを検知した場合には、図4のように表示装置17に検索結果を表す画面23を表示する機能を備えている。なお、検索結果を表す画面23の表示態様は様々な態様を採り得り、特に限定されないが、次にその一例を述べる。例えば、図4の例では、検索により抽出された個人の氏名や生年月日や年齢等の基本データが表示されている。そして、図5に表されるように、検索された個人に関連する診療履歴や調剤履歴を表す画面(診療・調剤履歴画面)24が画面23とは別の画面として表示可能である。さらに、図6に表されるように、その調剤についての詳細データを表す画面25が画面24とは別の画面として表示可能である。さらにまた、図7に表されるように、診療についての詳細データを表す画面26が画面24とは別の画面として表示可能である。
【0028】
ところで、救急隊員は、救急搬送のために出動した場合には、出動の報告書(搬送票、活動報告書など、名称は様々にある)を作成する。消防機関12には、その報告書を作成する報告書作成装置(コンピュータ装置)28(図1参照)が設置されている場合がある。なお、報告書作成装置28は、報告書を作成する専用のアプリケーションが搭載されている場合もあるし、汎用の文書作成アプリケーションが搭載されている場合もある。
【0029】
端末装置5は、報告書作成装置28と接続し、データ提供装置4から取得した搬送対象者の医療参考データを報告書作成装置28に出力する機能を備えていてもよい。例えば、端末装置5の表示装置17には、図5に表されるように、医療参考データを報告書作成装置28に出力することを指示する『書類作成・送信』旨のアイコン30が表示される。このアイコン30が操作者によりタッチされることにより、端末装置5は、搬送対象者の医療参考データを報告書作成装置28に出力する。
【0030】
また、端末装置5は、データ提供装置4から取得した搬送対象者の医療参考データを搬送先候補の医療機関10に送信する機能をさらに備えてもよい。さらに、また、端末装置5は、カメラを搭載し、当該カメラによる撮影画像を報告書作成装置28や医療機関10に向けて出力する機能を備えていてもよい。
【0031】
医療機関10には端末装置5から出力された医療参考データを受信する受付装置32が備えられる。受付装置32は、端末装置5から医療参考データを受信したことを医療機関10の関係者に報知すると共に、受信した医療参考データを画面に表示する機能を備える。
【0032】
以下に、第1実施形態のデータ提供システム1における動作例を図8のシーケンス図を利用して説明する。
【0033】
データ生成装置3は、各種データベースD1,D2,D3に格納されている個人情報と、受領機関11から取得したレセプトデータとに基づいて、医療参考データを生成する(ステップS101)。つまり、データ生成装置3は、収集したデータベースD1,D2,D3の個人情報に基づいて個人の特定に利用可能な個人基礎データを生成する。そして、データ生成装置3は、レセプトデータ(個人の医療機関の利用に関わる利用データ)に含まれている個人の医療データ(病歴、薬歴など)を個人基礎データに関連付けることにより、医療参考データを生成する。
【0034】
データ生成装置3は、生成した医療参考データを連携DB8に格納する(ステップS102)。このようなデータの収集と、医療参考データの生成および格納(更新)とは、例えば予め設定されたタイミング毎に行われる。データ提供装置4は、連携DB8に格納されている医療参考データを利用して、予め設定された更新タイミング毎に個人医療DB14に格納されている医療参考データを更新すべく医療参考データを取り込む(ステップS103)。
【0035】
ここで、救急隊員が病人を救急搬送するために出動し、搬送対象者(病人)の搬送先を決定するために搬送対象者の医療参考情報を取得すべく検索条件を端末装置5に入力したとする。端末装置5は、その検索条件を受け付け(ステップS104)、検索条件と検索要求をデータ提供装置4に送信する(ステップS105)。データ提供装置4は、検索条件と検索要求を受け取ると、受け取った検索条件に基づいて個人医療DB14を検索し、検索結果を端末装置5に返信する(ステップS106)。
【0036】
端末装置5は、検索結果を受信すると、その受信した検索結果を表示する(ステップS107)。
【0037】
また、端末装置5は、搬送対象者の搬送先あるいは搬送先候補の医療機関10に搬送対象者の医療参考データを送信する指示が救急隊員により出されたことを検知すると(ステップS108)、指定された医療機関10に医療参考データを送信する(ステップS109)。
【0038】
さらにまた、端末装置5は、救急搬送の活動を報告すべく報告書作成装置28に搬送者の医療参考データを送信する指示が救急隊員により出されたことを検知すると(ステップS110)、報告書作成装置28に医療参考データを送信する(ステップS111)。
【0039】
第1実施形態のデータ提供システム1は上記のように構成されている。このデータ提供システム1は、住基ネットや国民健康保険組合のシステムなどの個人情報と、医療機関が作成するレセプトデータとを利用して、個人(世帯)の医療参考データを生成する。このため、データ提供システム1は、医療参考データを個人が生成し登録する場合に比べて、正確性および信頼性の高い医療参考データを救急隊員や医療機関10に提供することができる。このように正確なデータを迅速に得ることが可能になるので、救急隊員は搬送対象者を搬送する医療機関10を迅速に決定することができるようになる。
【0040】
さらに、搬送対象者を受け入れる医療機関10は、搬送対象者に適切な受け入れ態勢を取ることができるようになる。つまり、データ提供システム1は、医療機関10での救急搬送者に対する適切な治療の早期着手を実現可能にする。
【0041】
また、端末装置5が医療参考データを報告書作成装置28に出力する機能を備えることにより、救急隊員が報告書作成装置28により報告書を作成する際に、医療参考データを利用できるので、データの手入力作業を軽減できる。これにより、データ提供システム1は、報告書の作成作業の効率化に寄与することができる。なお、救急隊員が報告書を手書きにより作成する場合にも、端末装置5に表示されている医療参考データを参照しながら報告書を作成することにより、報告書の作成の効率化が図られる。
【0042】
さらに、端末装置5が医療参考データを医療機関10に出力する機能を備えていることにより、医療機関10では、救急搬送者のデータを電子カルテなどのシステムに登録する作業に医療参考データが利用可能となり、登録作業の軽減を図ることができる。
【0043】
<その他の実施形態>
なお、本発明は第1実施形態に限定されず、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第1実施形態では、データ生成装置3は、3種類のデータベースD1,D2,D3の個人情報に基づいて個人基礎データを生成している。これに代えて、データ生成装置3が個人基礎データの生成に利用する個人情報は、2種類のデータベースの個人情報であってもよいし、4種類以上のデータベースの個人情報であってもよく、利用する個人情報を格納するデータベースの種類と数は複数であれば限定されない。
【0044】
また、第1実施形態では、連携DB8に格納されている医療参考データの一部が消防機関12の個人医療DB14に格納され、データ提供装置4は、個人医療DB14の医療参考データを端末装置5に提供している。これに代えて、例えば、データ提供装置4の性能や通信容量などを考慮して、連携DB8が個人医療データベースとして機能し、データ提供装置4は、連携DB8から医療参考データを検索してもよい。
【0045】
ところで、救急隊員などによって作成される救急搬送の報告書は、消防機関12を管轄する自治体によって異なる。このため、報告書に利用することをも考慮した医療参考データを生成する場合には、自治体によって、医療参考データに含む必須の個人情報の項目が異なる。このことから、データ提供装置4は、予め定められている担当エリアである自治体に応じて定められた医療参考データに含ませる個人情報の項目をデータ生成装置3に出力する機能をさらに備えてもよい。そして、データ生成装置3は、データ提供装置4から受け取った個人情報の項目に基づいて、生成する医療参考データを自治体(担当エリア)に応じてカスタマイズする機能をさらに備えてもよい。
【0046】
さらに、本発明のデータ提供システムは、図9のような構成をも採り得る。すなわち、図9におけるデータ提供システム40は、データ生成装置41と、データ提供装置42と、端末装置43とを備える。データ生成装置41は、個人情報を格納する互いに異なる複数種のデータベースからそれぞれ収集された個人情報に基づき個人の特定に利用可能な個人基礎データを生成する機能を備える。また、データ生成装置41は、医療機関により生成された個人の医療機関の利用に関わる利用データを取得し当該利用データに含まれている個人の医療データを個人基礎データに関連付けることにより、個人の医療参考データを生成する機能をさらに備える。
【0047】
端末装置43は、取得対象の医療参考データを検索する検索条件を出力する機能を備える。
【0048】
データ提供装置42は、データ生成装置3により生成された医療参考データが格納されている個人医療データベース45から、端末装置43から受け取った検索条件に該当する医療参考データを読み出す機能を備える。さらに、データ提供装置42は、読み出した医療参考データを端末装置43に返信する機能を備える。
【0049】
このような構成を備えることにより、データ提供システム40は、救急隊員や医療機関に、急病人の病歴や主治医や薬歴などの正確な医療参考データを提供でき、適切な対処を迅速に行うことを可能にする。
【符号の説明】
【0050】
1,40 データ提供システム
3,41 データ生成装置
4,42 データ提供装置
5,43 端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9