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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20240730BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240730BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240730BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240730BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B41J2/17 101
B41J2/165 401
B41J2/175 119
B41J2/175 113
B41J2/175 121
B41J2/175 503
B41J2/01 501
B41J2/18
B41J2/175 167
B41J2/175 175
B41J2/165 101
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023039425
(22)【出願日】2023-03-14
(65)【公開番号】P2023152812
(43)【公開日】2023-10-17
【審査請求日】2024-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2022061285
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】奥村 祐生
(72)【発明者】
【氏名】竹内 心咲
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-192751(JP,A)
【文献】特開2018-150495(JP,A)
【文献】特開2017-190374(JP,A)
【文献】特開2016-179615(JP,A)
【文献】特開2009-034876(JP,A)
【文献】特開2017-056651(JP,A)
【文献】特開2016-068314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、
上記カートリッジ装着部と第1流路によって連結されたタンクと、
ノズル面が有する開口であるノズルから液体を吐出するヘッドと、
上記タンクから上記ヘッドへ液体を供給する第2流路と、
上記ヘッドから液体を排出する排出機構と、
コントローラと、を備えており、
上記液体は、少なくとも保存液、保存液とは異なる第1液体、またはその混合物であり、上記カートリッジは、第1液体を貯留する第1液体カートリッジと、保存液を貯留する保存液カートリッジと、を含み、
上記コントローラは、
液体排出装置が保管モードにある状態で、
上記カートリッジ装着部に第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記第1流路を通じて上記タンクから第1液体カートリッジへ第1液体を返戻する返戻処理と、
上記返戻処理を実行した後、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから第1液体を排出する第1排出処理と、
上記カートリッジ装着部に保存液カートリッジが装着されている状態で、上記保存液カートリッジから上記タンクへ保存液を供給する保存液供給処理と、
上記保存液供給処理を実行した後、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから保存液を排出する第2排出処理と、を実行し、
上記第1液体は、色材としての顔料、樹脂微粒子、有機溶剤、界面活性剤、および水を含み、
上記保存液は、水溶性ポリマー、有機溶剤、界面活性剤、および水を含む液体排出装置。
【請求項2】
上記第1液体の粘度は、上記保存液の粘度より大きい請求項記載の液体排出装置。
【請求項3】
上記保存液が含む上記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である請求項に記載の液体排出装置。
【請求項4】
上記保存液が含む上記水溶性ポリマーの重量平均分子量は、8500から20000の範囲内である請求項に記載の液体排出装置。
【請求項5】
上記保存液が含む上記水溶性ポリマーは、構造中に芳香族アルキル基またはラクタム基を含有する請求項またはに記載の液体排出装置。
【請求項6】
液体を貯留するカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、
上記カートリッジ装着部と第1流路によって連結されたタンクと、
ノズル面が有する開口であるノズルから液体を吐出するヘッドと、
上記タンクから上記ヘッドへ液体を供給する第2流路と、
上記ヘッドから液体を排出する排出機構と、
コントローラと、を備えており、
上記液体は、少なくとも保存液、保存液とは異なる第1液体、またはその混合物であり、上記カートリッジは、第1液体を貯留する第1液体カートリッジと、保存液を貯留する保存液カートリッジと、を含み、
上記コントローラは、
液体排出装置が保管モードにある状態で、
上記カートリッジ装着部に第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記第1流路を通じて上記タンクから第1液体カートリッジへ第1液体を返戻する返戻処理と、
上記返戻処理を実行した後、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから第1液体を排出する第1排出処理と、
上記カートリッジ装着部に保存液カートリッジが装着されている状態で、上記保存液カートリッジから上記タンクへ保存液を供給する保存液供給処理と、
上記保存液供給処理を実行した後、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから保存液を排出する第2排出処理と、を実行し、し、
上記第1液体は、色材、有機溶剤、界面活性剤、および水を含み、
上記保存液は、有機溶剤、界面活性剤、および水を含み、
上記第1液体が含む上記有機溶剤は、プロピレンオキサイド基を有するグリコールエーテルを含み、
上記保存液が含む上記有機溶剤は、エチレンオキサイド基を有するグリコールエーテルを含む液体排出装置。
【請求項7】
上記第1液体が含む上記有機溶剤のうち、25℃において単体で液体として存在する有機溶剤は、液体全量に対して10重量%以下である請求項1または6に記載の液体排出装置。
【請求項8】
上記第1液体が含む上記樹脂微粒子は、アクリル系樹脂である請求項に記載の液体排出装置。
【請求項9】
液体を貯留するカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、
上記カートリッジ装着部と第1流路によって連結されたタンクと、
ノズル面が有する開口であるノズルから液体を吐出するヘッドと、
上記タンクから上記ヘッドへ液体を供給する第2流路と、
上記ヘッドから上記タンクへ液体を排出する第3流路と、
上記ヘッドから液体を排出する排出機構と、
コントローラと、を備えており、
上記液体は、少なくとも保存液、保存液とは異なる第1液体、またはその混合物であり、上記カートリッジは、第1液体を貯留する第1液体カートリッジと、保存液を貯留する保存液カートリッジと、を含み、
上記コントローラは、
液体排出装置が保管モードにある状態で、
上記カートリッジ装着部に第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記第1流路を通じて上記タンクから第1液体カートリッジへ第1液体を返戻する返戻処理と、
上記返戻処理を実行した後、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから第1液体を排出する第1排出処理と、
上記カートリッジ装着部に保存液カートリッジが装着されている状態で、上記保存液カートリッジから上記タンクへ保存液を供給する保存液供給処理と、
上記保存液供給処理を実行した後、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから保存液を排出する第2排出処理と、
上記第2排出処理の前に、上記タンクに貯留された保存液を上記第2流路および上記第3流路を通じて上記ヘッドとの間で循環する保存液循環処理と、を実行する液体排出装置。
【請求項10】
上記コントローラは、さらに、上記カートリッジ装着部に上記第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記タンクに貯留された第1液体を上記第2流路および上記第3流路を通じて上記ヘッドとの間で循環する第1液体循環処理を実行する請求項に記載の液体排出装置。
【請求項11】
上記コントローラは、さらに、上記保存液循環処理および上記第2排出処理を複数回繰り返して実行する請求項または10のいずれかに記載の液体排出装置。
【請求項12】
上記コントローラは、さらに、上記保存液供給処理において、上記保存液カートリッジから取得した識別情報に基づいて、上記カートリッジ装着部に上記保存液カートリッジが装着されているかどうかを判定する請求項1、6、9のいずれかに記載の液体排出装置。
【請求項13】
上記排出機構は、
被覆位置において上記ノズル面に当接し、待避位置において上記ノズル面から離間するキャップと、
上記キャップの内部空間に連通する第4流路と、を有しており、
上記コントローラは、さらに、上記キャップの内部空間および上記第4流路に洗浄液を流通する洗浄処理をさらに実行する請求項1、6、9のいずれかに記載の液体排出装置。
【請求項14】
液体を貯留するカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、
上記カートリッジ装着部と第1流路によって連結されたタンクと、
ノズル面が有する開口であるノズルから液体を吐出するヘッドと、
上記タンクから上記ヘッドへ液体を供給する第2流路と、
上記ヘッドから液体を排出する排出機構と、
コントローラと、を備えており、
上記液体は、少なくとも保存液、保存液とは異なる第1液体、またはその混合物であり、上記カートリッジは、第1液体を貯留する第1液体カートリッジと、保存液を貯留する保存液カートリッジと、を含み、
上記コントローラは、
液体排出装置が保管モードにある状態で、
上記カートリッジ装着部に第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記第1流路を通じて上記タンクから第1液体カートリッジへ第1液体を返戻する返戻処理と、
上記返戻処理を実行した後、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから第1液体を排出する第1排出処理と、
上記カートリッジ装着部に保存液カートリッジが装着されている状態で、上記保存液カートリッジから上記タンクへ保存液を供給する保存液供給処理と、
上記保存液供給処理を実行した後、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから保存液を排出する第2排出処理と、
上記第2排出処理を実行した後、保管状態であることを示す保管情報をメモリに記憶させて電源をオフにする液体排出装置。
【請求項15】
上記コントローラは、さらに、上記メモリに保管情報が記憶されており、かつ上記カートリッジ装着部に上記第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから保存液を排出する請求項14に記載の液体排出装置。
【請求項16】
上記コントローラは、さらに、上記メモリに保管情報が記憶されており、かつ上記カートリッジ装着部に第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記第1液体カートリッジから上記タンクへ第1液体を供給する請求項15に記載の液体排出装置。
【請求項17】
上記コントローラは、さらに、上記カートリッジ装着部に上記第1液体カートリッジが装着されている状態において所定の指示コマンドを受け付けたことに応じて、液体排出装置を上記保管モードに移行する請求項1、6、9、14に記載の液体排出装置。
【請求項18】
上記第1液体は、色材、有機溶剤、界面活性剤、および水を含み、
上記保存液は、有機溶剤、界面活性剤、および水を含む請求項9または14に記載の液体排出装置。
【請求項19】
上記コントローラは、上記返戻処理において、上記第1液体カートリッジから取得した識別情報に基づいて、上記カートリッジ装着部に上記第1液体カートリッジが装着されているかどうかを判定する請求項1、6、9、14に記載の液体排出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用を中断して長期保管するに適した液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドのノズルから液体を吐出してシートに印刷する液体吐出装置としては、例えば、特許文献1記載のインクジェット記録装置が知られている。特許文献1のインクジェット記録装置は、メンテナンス液タンクを有しており、メンテナンス液によりヘッドの内部を洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-130854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置では、ヘッドを一定時間使用しなかったときにメンテナンス液によりヘッドの内部を洗浄する。例えば産業用のインクジェット記録装置は、日常的に大量の被記録媒体に対して印刷を行うことから、印刷速度の向上やカートリッジ交換なしに連続印刷できる期間の長期化などが望まれる。そのような要望に応えるべく、インクタンクが大容量化されたり、ヘッドが大型化されたりする。そうすると、ヘッド内や流路内に残存するインク量も多くなり、保管時に廃棄されるインク量が多くなったり、ヘッドや流路を洗浄するために大量のメンテナンス液が必要となる。
【0005】
本発明の目的は、液体排出装置が保管状態とされるときに、装置内に残存するインクが好適に扱われ、保存液への置換が容易な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る液体排出装置は、液体を貯留するカートリッジが装着されるカートリッジ装着部と、上記カートリッジ装着部と第1流路によって連結されたタンクと、ノズル面が有する開口であるノズルから液体を吐出するヘッドと、上記タンクから上記ヘッドへ液体を供給する第2流路と、上記ヘッドから液体を排出する排出機構と、コントローラと、を備える。上記液体は、少なくとも保存液、保存液とは異なる第1液体、またはその混合物であり、上記カートリッジは、第1液体を貯留する第1液体カートリッジと、保存液を貯留する保存液カートリッジと、を含む。上記コントローラは、液体排出装置が保管モードにある状態で、上記カートリッジ装着部に第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記第1流路を通じて上記タンクから第1液体カートリッジへ第1液体を返戻する返戻処理と、上記返戻処理を実行した後、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから液体を排出する第1排出処理と、上記カートリッジ装着部に保存液カートリッジが装着されている状態で、上記保存液カートリッジから上記タンクへ保存液を供給する保存液供給処理と、上記保存液供給処理を実行した後、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから保存液を排出する第2排出処理と、を実行する。
【0007】
ヘッド、タンク、第1流路、第2流路内の液体を保存液に置換することができる。また、返戻処理によりタンク内の液体を第1カートリッジへ戻すので、保管するときに廃棄される液体が少ない。また、ヘッド、第1流路、および第2流路の液体を保存液に置換することが容易となる。
【0008】
(2) 上記コントローラは、さらに、上記カートリッジ装着部に上記第1液体カートリッジが装着されている状態において指示コマンドを受け付けたことに応じて、液体排出装置を上記保管モードに移行してもよい。
【0009】
ユーザが任意のタイミングで指示コマンドを装置に入力することができるので、ユーザの使用予定に応じて、液体排出装置を保管モードにすることができる。
【0010】
(3) 上記第1液体は、色材、有機溶剤、界面活性剤、および水を含み、上記保存液は、有機溶剤、界面活性剤、および水を含んでもよい。
【0011】
(4) 上記第1液体は、上記色材としての顔料と、樹脂微粒子とをさらに含み、上記保存液は、水溶性ポリマーをさらに含んでもよい。
【0012】
被記録媒体において速乾性に優れる液体を保存液に置換する置換性に優れ、また、固化している液体を溶解する再分散性に優れる。
【0013】
(5) 上記第1液体の粘度は、上記保存液の粘度より大きいことが好ましい。
【0014】
(6) 上記保存液が含む上記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤であることが好ましい。
【0015】
(7) 上記保存液が含む上記水溶性ポリマーの重量平均分子量は、8500から20000の範囲内であることが好ましい。
【0016】
(8) 上記保存液が含む上記水溶性ポリマーは、構造中に芳香族アルキル基またはラクタム基を含有することが好ましい。
【0017】
(9) 上記第1液体が含む上記有機溶剤は、プロピレンオキサイド基を有するグリコールエーテルを含み、上記保存液が含む上記有機溶剤は、エチレンオキサイド基を有するグリコールエーテルを含むことが好ましい。
【0018】
(10) 上記第1液体が含む上記有機溶剤のうち、25℃において単体で液体として存在する有機溶剤は、液体全量に対して10重量%以下であることが好ましい。
【0019】
(11) 上記第1液体が含む上記樹脂微粒子は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0020】
(12) 上記コントローラは、上記返戻処理において、上記第1液体カートリッジから取得した識別情報に基づいて、上記カートリッジ装着部に上記第1液体カートリッジが装着されているかどうかを判定してもよい。
【0021】
(13) 上記液体排出装置は、上記ヘッドから上記タンクへ液体を排出する第3流路を更に備えており、上記コントローラは、さらに、上記第2排出処理の前に、上記タンクに貯留された保存液を上記第2流路および上記第3流路を通じて上記ヘッドとの間で循環する保存液循環処理を実行してもよい。
【0022】
(14) 上記コントローラは、さらに、上記カートリッジ装着部に上記第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記タンクに貯留された第1液体を上記第2流路および上記第3流路を通じて上記ヘッドとの間で循環する第1液体循環処理を実行してもよい。
【0023】
(15) 上記コントローラは、上記保存液処理および上記第2排出処理を複数回繰り返して実行してもよい。
【0024】
(16) 上記コントローラは、さらに、上記保存液供給処理において、上記保存液カートリッジから取得した識別情報に基づいて、上記カートリッジ装着部に上記保存液カートリッジが装着されているかどうかを判定してもよい。
【0025】
(17) 上記排出機構は、被覆位置において上記ノズル面に当接し、待避位置において上記ノズル面から離間するキャップと、上記キャップの内部空間に連通する第4流路と、を有しており、上記コントローラは、さらに、上記キャップの内部空間および上記第4流路に洗浄液を流通する洗浄処理をさらに実行してもよい。
【0026】
(18) 上記コントローラは、さらに、上記第2排出処理を実行した後、保管状態であることを示す保管情報をメモリに記憶させて電源をオフにしてもよい。
【0027】
(19) 上記コントローラは、さらに、上記メモリに保管情報が記憶されており、かつ上記カートリッジ装着部に上記第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記排出機構を駆動して上記ヘッドから保存液を排出してもよい。
【0028】
(20) 上記コントローラは、さらに、上記メモリに保管情報が記憶されており、かつ上記カートリッジ装着部に第1液体カートリッジが装着されている状態で、上記第1カートリッジから上記タンクへ第1液体を供給してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、液体排出装置が保管状態とされるときに、装置内に残存するインクが好適に扱われ、保存液への置換が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の実施形態に係る画像記録装置100の外観斜視図である。
図2図2は、図1のII-II断面を示す断面図であって、ヘッド38が記録位置であり、第1支持機構51が第1姿勢であり、メンテナンス機構60が待機位置である状態を示す。
図3図3は、図2において上筐体31が開位置となった状態を示す断面図である。
図4図4は、ヘッド38の底面図である。
図5図5は、メンテナンス機構60の斜視図である。
図6図6は、メンテナンス機構60の底面図である。
図7図7は、支持台61の液体流路153を液体流路153の流れ方向に平行な平面で切断した断面図である。
図8図8は、メンテナンス位置におけるキャップ62A,62B,62Cの断面図である。
図9図9は、インク回路113を示す模式図である。
図10図10は、画像記録装置100のブロック図である。
図11図11は、図1のII-II断面を示す断面図であって、ヘッド38が被キャッピング位置であり、第1支持機構51が第1姿勢であり、メンテナンス機構60がメンテナンス位置である状態を示す。
図12図12は、図1のII-II断面を示す断面図であって、ヘッド38が被ワイピング位置であり、第1支持機構51が第1姿勢であり、メンテナンス機構60がワイピング位置である状態を示す。
図13図13は、図1のII-II断面を示す断面図であって、ヘッド38が記録位置であり、第1支持機構51が第2姿勢であり、メンテナンス機構60が第1支持機構51に支持された位置である状態を示す。
図14図14は、図1のII-II断面を示す断面図であって、ヘッド38が記録位置であり、第1支持機構51が第2姿勢であり、メンテナンス機構60が待機位置である状態を示す。
図15図15は、保管処理を示すフローチャートである。
図16図16は、保管処理を示すフローチャートである。
図17図17は、復帰処理を示すフローチャートである。
図18図18は、復帰処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明においては、画像記録装置100が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、排出口33が設けられている側を手前側(前面)として前後方向8が定義され、画像記録装置100を手前側(前面)から見て左右方向9が定義される。
【0032】
[画像記録装置100の外観構成]
図1に示される画像記録装置100(液体排出装置の一例)は、インクジェット記録方式でロール体37(図2参照)をなすシートSに画像を記録する。
【0033】
図1に示されるように、画像記録装置100は、筐体30を備える。筐体30は、上筐体31及び下筐体32を備える。上筐体31及び下筐体32は、全体として概ね直方体形状であって、卓上に載置可能な大きさである。すなわち、画像記録装置100は、卓上に載置されて使用されるのに適している。もちろん、画像記録装置100は、床面やラックに載置されて使用されてもよい。
【0034】
図2に示されるように、筐体30は、上筐体31の内部に内部空間31Aが、下筐体32の内部に内部空間32Aが外部から区画される。
【0035】
図2図3に示されるように、上筐体31は、下筐体32によって回動可能に支持されている。上筐体31は、後下端部に設けられ且つ左右方向9に延びる回動軸15周りに、図2に示される閉位置と、図3に示される開位置とに回動可能である。
【0036】
図1に示されるように、下筐体32の前面32Fには、左右方向9に長いスリット状の排出口33が形成されている。排出口33からは、画像記録済みのシートS(図2参照)が排出される。
【0037】
上筐体31の前面31Fには、操作パネル44が設けられている。ユーザは、操作パネル44に、画像記録装置100を動作させたり各種設定を確定したりするための入力を行う。操作パネル44は、後述する蓋部材82が支持部材81に装着されていることを示す表示部44Aを有している。
【0038】
[画像記録装置100の内部構成]
図2に示されるように、内部空間31A,32Aには、ホルダ35、テンショナ45、搬送ローラ対36、搬送ローラ対40、ヘッド38、第1支持機構51、ヒータ39、支持部46、第2支持機構52、CIS25、カッターユニット26、インクタンク34、洗浄液タンク76、廃液タンク77、メンテナンス機構60、ワイパクリーニング機構80及びコントローラ130(図10参照)が配置されている。図2には示されていないが、内部空間32Aには、コントローラ130が配置されている。コントローラ130は、画像記録装置100の動作を制御するものである。
【0039】
内部空間32Aには、隔壁41が設けられている。隔壁41は、内部空間32Aの後下部を仕切って、シート収容空間32Cを区画する。シート収容空間32Cは、隔壁41、下筐体32により包囲される。
【0040】
シート収容空間32Cには、ロール体37が収容される。ロール体37は、芯管と、長尺のシートSとを有している。シートSは、芯管の軸芯の周方向にロール状に芯管に巻回されている。
【0041】
図2に示されるように、シート収容空間32Cには、左右方向9に沿って延びるホルダ35が位置する。装着時、ロール体37の芯管の軸芯が左右方向9に沿い、且つロール体37が軸芯の周方向に周りに回転可能に、ホルダ35はロール体37を支持する。ホルダ35は、搬送モータ53(図10参照)から駆動力が伝達されて回転する。ホルダ35の回転に伴って、ホルダ35に支持されているロール体37も回転する。
【0042】
図2に示されるように、シート収容空間32Cは、後部において上方へ向かって開口している。隔壁41と後面32Bとの間、すなわち、ロール体37の後端の上方に隙間42が形成されている。シートSは、搬送ローラ対36,40が回転することで、ロール体37の後端から上方に引き出され隙間42を介してテンショナ45へと案内される。
【0043】
テンショナ45は、内部空間32Aの後部において隔壁41よりも上方に位置する。テンショナ45は、下筐体32の外側を向いている外周面45Aを有している。外周面45Aの上端は、上下方向7において搬送ローラ対36のニップDと概ね同じ上下位置にある。
【0044】
外周面45Aには、ロール体37から引き出されたシートSが掛けられ当接する。シートSは、外周面45Aに沿って前方に湾曲して、搬送向き8Aに延びて搬送ローラ対36に案内される。搬送向き8Aは、前後方向8に沿う前向きである。
【0045】
テンショナ45の前方には、搬送ローラ対36が位置する。搬送ローラ対36は、搬送ローラ36Aとピンチローラ36Bとを有する。搬送ローラ36A、及びピンチローラ36Bは、外周面45Aの上端と概ね同じ上下位置で当接し合ってニップDを形成する。
【0046】
搬送ローラ対36の前方には、搬送ローラ対40が位置する。搬送ローラ対40は、搬送ローラ40Aとピンチローラ40Bとを有する。搬送ローラ40A、及びピンチローラ40Bは、外周面45Aの上端と概ね同じ上下位置で当接し合ってニップを形成する。
【0047】
搬送ローラ36A,40Aは、搬送モータ53(図10参照)から駆動力が伝達されて回転する。搬送ローラ対36は、テンショナ45から搬送向き8Aに延びるシートSをニップしつつ回転することにより、後述する搬送路43の搬送面43Aに沿う搬送向き8Aに送り出す。搬送ローラ対40は、搬送ローラ対36から送り出されたシートSをニップしつつ回転することにより搬送向き8Aに送り出す。また、搬送ローラ対36,40の回転により、シートSは、シート収容空間32Cから隙間42を通ってテンショナ45に向けて引き出される。
【0048】
図2に示されるように、内部空間32Aには、外周面45Aの上端から排出口33に至る搬送路43が形成されている。搬送路43は、搬送向き8Aに沿ってほぼ直線的に延びており、シートSが通過可能な空間である。詳細には、搬送路43は、搬送向き8A及び左右方向9に拡がり且つ搬送向き8Aに長い搬送面43Aに沿っている。なお、図2では、搬送面43Aは、搬送路43を示す二点鎖線で示されている。搬送路43は、上下方向7に離れて位置するガイド部材(不図示)や、ヘッド38、搬送ベルト101、支持部46、ヒータ39などによって区画されている。すなわち、ヘッド38、搬送ベルト101、支持部46、及びヒータ39は、搬送路43に沿って位置する。
【0049】
ヘッド38は、搬送路43の上方において搬送ローラ対36よりも搬送向き8Aの下流側に位置する。ヘッド38は、ノズル面50(図4参照)において開口する複数のノズル38Aを有する。複数のノズル38Aから、インクが搬送ベルト101に支持されたシートSへ向かって下方へ吐出される。これにより、シートSに画像が記録される。ヘッド38の構成は、後に説明される。
【0050】
第1支持機構51は、搬送路43の下方において搬送ローラ対36よりも搬送向き8Aの下流に位置する。第1支持機構51は、ヘッド38の下方に、ヘッド38と対向している。第1支持機構51は、搬送ベルト101と支持部材104を有する。搬送ベルト101は、搬送ローラ対36によって搬送向き8Aに搬送されてヘッド38の直下に位置するシートSを支持する。搬送ベルト101は、支持しているシートSを搬送向き8Aに搬送する。支持部材104は、メンテナンス機構60を支持可能である。
【0051】
第1支持機構51は、搬送ベルト101、駆動ローラ102、従動ローラ103、支持部材104、ギヤ105、及びギヤ106を備えている。なお、各図において、ギヤ105,106の歯の図示は省略されている。
【0052】
駆動ローラ102及び従動ローラ103は、支持部材104によって回転可能に支持されている。駆動ローラ102及び従動ローラ103は、前後方向8(搬送向き8A)に互いに離間している。搬送ベルト101は、無端ベルトである。搬送ベルト101は、駆動ローラ102、及び従動ローラ103に張架される。搬送ベルト101は、左右方向9において、搬送路43内に配置されている。
【0053】
駆動ローラ102は、搬送モータ53(図10参照)によって与えられる駆動力により回転し、搬送ベルト101を回動させる。搬送ベルト101の回動に伴い、従動ローラ103が回転する。搬送ベルト101は、搬送面108を有している。搬送面108は、搬送ベルト101の外周面における上側の部分であり、搬送向き8Aに沿って延びている。搬送面108は、搬送路43を挟んでヘッド38のノズル38Aと対向している。搬送面108は、搬送ローラ対36,40の間で搬送されるシートSを下方から支持しつつ、シートSに搬送力を与える。これによって、搬送ベルト101は、搬送路43に位置するシートSを搬送面108に沿う搬送向き8Aに搬送する。
【0054】
支持部材104は、軸109Aを備えている。軸109Aは、下筐体32によって回転可能に支持されている。軸109Aは、左右方向9(搬送向き8Aと直交し且つ吐出モジュール49のノズル面50と平行な方向)に延びている。軸109Aは、駆動ローラ102より搬送向き8Aの上流に設けられている。軸109Aは、搬送ローラ対36より下方に位置している。
【0055】
軸109Aは、軸モータ59(図10参照)から駆動力が伝達されて回転する。軸109Aが回転することによって、支持部材104は軸109A周りに回動する。第1支持機構51の回動先端51Aは、軸109Aよりも搬送向き8Aの下流に位置している。
【0056】
支持部材104は、吐出モジュール49のノズル面50に平行な第1姿勢(図2参照)と、第1姿勢から軸109Aを中心に傾き、回動先端51Aが軸109よりも下方に位置する第2姿勢(図13参照)とに姿勢変化可能である。
【0057】
図2に示されるように、第1支持機構51が第1姿勢のとき、搬送ベルト101の搬送面108は前後方向8に沿って延びている。これにより、搬送ベルト101は、搬送路43に位置するシートSを前方に搬送して支持部46に送ることが可能である。
【0058】
図13に示されるように、第1支持機構51が第2姿勢のとき、搬送ベルト101の搬送面108は、前方へ向かうにしたがって下方へ向かう傾斜方向6に沿って延びている。なお、傾斜方向6は、左右方向9に直交し且つ搬送向き8Aと交差する向きである。
【0059】
図2に示されるように、ギヤ105,106は、第1支持機構51の支持部材104によって回転可能に支持されている。ギヤ106は、直接的にまたは他のギヤなどを介して第1モータ55(図10参照)と繋がっており、第1モータ55から駆動力を付与される。
【0060】
ヒータ39は、搬送路43の下方においてヘッド38よりも搬送向き8Aの下流であって搬送ローラ対40よりも搬送向き8Aの上流に位置する。ヒータ39は、第1支持機構51より前方でフレームに支持され、左右方向9に延びる。ヒータ39は、伝熱プレート(不図示)と、フィルムヒータ(不図示)と、を有している。伝熱プレートは、金属製であり、搬送ベルト101の搬送面108と概ね同じ上下位置に、前後左右に拡がる支持面を有する。第1支持機構51から送り出されたシートSは、伝熱プレートの支持面上で前方へと搬送される。フィルムヒータは、伝熱プレートの下面に固定されており、コントローラ130の制御下で発熱する。この熱は、伝熱プレートを介して、伝熱プレート上のシートSに伝わる。また、ヒータ39からの熱は、ヒータ39の上方に配置されたダクト145によって回収される。
【0061】
ダクト145は、搬送路43の上方であって、ヘッド38の搬送向き8Aの下流かつ搬送ローラ対40の上流に配置されている。
【0062】
支持部46は、搬送路43の下方に位置している。支持部46は、ヘッド38及び第1支持機構51よりも搬送向き8Aの下流に位置する。支持部46の後部には、ヒータ39が位置している。支持部46の前部は、搬送ローラ40Aと対向している。支持部46は、カッターユニット26よりも搬送向き8Aの上流に位置する。
【0063】
支持部46は、下筐体32によって左右方向9に延びる軸(不図示)周りに回動可能に支持されている。図3に示されるように、上筐体31が開位置のとき、支持部46は、図3に実線で示される倒伏位置と、図3に破線で示される起立位置とに回動可能である。
【0064】
支持部46が倒伏位置のとき、支持部46の回動先端46Bは、回動基端46Aよりも前方(搬送向き8Aの下流)に位置している。支持部46が倒伏位置のとき、支持部46は、搬送路43の一部を構成しており、搬送ベルト101によって搬送向き8Aに搬送されてきたシートSを支持可能である。支持部46が起立位置のとき、支持部46の回動先端46Bは支持部46が倒伏位置のときよりも上方に位置しており、メンテナンス機構60が外部に露出可能である。支持部46の軸は、支持部46の後端部に設けられており、左右方向9に延びている。
【0065】
第2支持機構52は、傾斜方向6及び左右方向9に直交する直交方向10に移動可能に下筐体32に支持されている。第2支持機構52は、メンテナンス機構60を支持可能である。第2支持機構52は、全体として傾斜方向6に延びた状態で配置されており、不図示のボールネジによってワイパクリーニング機構80と接離する方向へ移動可能である。第2支持機構52は、メンテナンス機構60を支持して、メンテナンス機構60の移動をスライド自在に支持する。
【0066】
ギヤ118,119,120は、第2支持機構52の本体115によって回転可能に支持されている。ギヤ120は、ギヤ118,119に噛合している。ギヤ120が回転すると、ギヤ118,119は同方向に回転する。ギヤ120は、直接的にまたは他のギヤなどを介して第2モータ56(図10参照)と繋がっており、第2モータ56から駆動力を付与される。ギヤ118,119は、対向する位置にあるメンテナンス機構60のラック154と噛合可能である。
【0067】
CIS25は、搬送路43の上方において搬送ローラ対40よりも搬送向き8Aの下流に位置する。CIS25は、シートの印刷面の画像を読み取ることができる。
【0068】
カッターユニット26は、搬送路43の上方においてCIS25よりも搬送向き8Aの下流に位置する。カッターユニット26は、カッターキャリッジ27にカッター28が搭載されたものである。カッター28の移動によって、搬送路43に位置するシートSが左右方向9に沿って切断される。
【0069】
装着ケース110(カートリッジ装着部の一例)は、下筐体32の前端および下端付近に位置しており、前方を向いて開口する箱形状である。装着ケース110には、後向きへインクタンク34(第1液体カートリッジの一例)が挿入される。装着ケース110の後向きの終面111には、前方へ向かって延びるインクニードル112が位置する。インクニードル112の前端は開口しており、後端はインク回路113(図9参照)に連結されている。インク回路113は、インクニードル112の内部空間とヘッド38とをインクが流通可能に連結している。装着ケース110にインクタンク34が装着されると、インクニードル112がインクタンク34の流出口に挿入される。これにより、インクタンク34に貯留されたインクが、インクニードル112およびインク回路113を通じてヘッド38に供給される。インク回路113の構成は、後に説明される。終面111には、接点114が位置する。接点114は、装着ケース110にインクタンク34が装着された状態において、インクタンク34が有するIC基板70と電気的に接続される。コントローラ130は、接点114を通じてIC基板70の記憶領域にアクセス可能である。
【0070】
インクタンク34は、インクを貯留している。インクは、顔料などを含む液体である。インクタンク34の内部空間はインクを貯留する貯留室である。貯留室は、外部と大気連通されたものであってもよいし、パウチなどインクの流出に伴って収縮可能な袋状のものであってもよい。装着ケース110に装着されたインクタンク34からインク回路113を通じてインクがヘッド38に供給される。インクタンク34の後面には、IC基板70が位置する。IC基板70は、記憶領域にインクタンク34であることを示す識別情報を記憶している。
【0071】
図9に示される保存液タンク11(保存液カートリッジの一例)は、貯留する液体が保存液である点の他は、インクタンク34と同様の構成である。保存液タンク11も装着ケース110に装着可能である。装着ケース110に装着された保存液タンク11からインク回路113を通じて保存液がヘッド38に供給される。保存液タンク11の後面にはIC基板12が位置する。IC基板12は、記憶領域に保存液タンク11であることを示す識別情報を記憶している。
【0072】
図2に示されるように、洗浄液タンク76は、洗浄液を貯留している。洗浄液は、ヘッド38のノズル38Aを洗浄するためのものである。洗浄液タンク76は、後述する第2支持機構52よりも下方に位置する。洗浄液タンク76の内部空間はインクを貯留する貯留室である。貯留室は、外部と大気連通されたものであってもよいし、パウチなどインクの流出に伴って収縮可能な袋状のものであってもよい。廃液タンク77は、洗浄液が排出される容器であり、外部と大気連通されている。なお、洗浄液タンク76および廃液タンク77も、インクタンク34と同様に、画像記録装置100に対して着脱可能であってもよい。また、廃液タンク77は、洗浄液タンク76と同じ筐体に設けられてもよい。その場合、洗浄液がパウチに収容され、廃液はタンクの筐体の内部空間に貯留されてもよい。また、洗浄液タンク76は、洗浄液が貯留されるメインタンクと、メインタンクから供給された洗浄液を貯留するサブタンクとにより構成されてもよい。
【0073】
メンテナンス機構60は、ヘッド38のメンテナンスを行うためのものである。メンテナンス機構60は、移動可能に構成されており、ヘッド38のメンテナンスが行われるときにヘッド38の直下に移動される(図11,12参照)。
【0074】
ヘッド38のメンテナンスは、パージ処理、キャップ洗浄処理、及びワイピング処理などである。パージ処理は、図11に示されるように、メンテナンス機構60の後述するキャップ62によってノズル面50を被覆した上で吸引ポンプ74によってノズル38Aからインクを吸引する処理である。キャップ洗浄処理は、キャップ62によってノズル面50を被覆した状態でキャップ62の内部空間67A,67B,67Cに送り込んだ洗浄液によってヘッド38のノズル面50を洗浄する処理である。ワイピング処理は、図12に示されるように、メンテナンス機構60の後述するスポンジワイパ64によってヘッド38のノズル面50を払拭する処理である。メンテナンス機構60の構成は、後に説明される。
【0075】
ワイパクリーニング機構80は、メンテナンス機構60のキャップ62およびゴムワイパ63を清掃するためのものである。メンテナンス機構60は、キャップ62およびゴムワイパ63の清掃が行われるときにワイパクリーニング機構80の直下に移動される。ワイパクリーニング機構80においてメンテナンス機構60と対向する面はスポンジによって形成されており、メンテナンス液を保持している。ワイパクリーニング機構80は、待避位置に位置するリップ66及びゴムワイパ63に当接し得る。これにより、ワイパクリーニング機構80は、キャップ2のリップ66及びゴムワイパ63に付着したインクを拭う。
【0076】
[ヘッド38]
図2及び図4に示されるように、ヘッド38は、概ね左右方向9に長い直方体形状である。ヘッド38は、フレーム48と、3つの吐出モジュール49A,49B,49Cとを備えている。以下、3つの吐出モジュール49A,49B,49Cを総称して、吐出モジュール49とも称する。なお、吐出モジュール49の数は、3つに限らず、例えば1つでもよい。
【0077】
図2及び図4に示されるように、吐出モジュール49は、フレーム48によって支持されている。吐出モジュール49の下面は、下方に露出される。吐出モジュール49は、左右方向9において搬送路43内に配置されている。
【0078】
図4(A)に示されるように、吐出モジュール49A,49Bは、搬送向き8Aにおいて同位置に配置されている。吐出モジュール49A,49Bは、左右方向9に間隔を空けて配置されている。吐出モジュール49Cは、吐出モジュール49A,49Bよりも搬送向き8Aの下流側に配置されている。吐出モジュール49Cは、左右方向9において隣り合う2個の吐出モジュール49A,49Bの間に配置されている。吐出モジュール49Cの左端は、吐出モジュール49Aの右端より左方に位置している。吐出モジュール49Cの右端は、吐出モジュール49Bの左端より右方に位置している。つまり、左右方向9において、吐出モジュール49Cの端部と、吐出モジュール49A,49Bの端部とは重複している。
【0079】
各吐出モジュール49A,49B,49Cは、複数のノズル38Aを備えている。各ノズル38Aは、各吐出モジュール49A,49B,49Cのノズル面50に開口されている。ノズル面50は、前後方向8、及び左右方向9に拡がる面である。上述したように、複数のノズル38Aから、インクが第1支持機構51の搬送ベルト101に支持されたシートSへ向かって下方へ吐出されて、シートSに画像が記録される。
【0080】
図4(B)に示されるように、吐出モジュール49は、インク回路113と接続される流入ポート22と流出ポート23とを有する。流入ポート22および流出ポート23は、マニホールド24とそれぞれ接続されている。マニホールド24は複数のノズル38Aと接続されている。流入ポート22を通じてマニホールド24へ流入したインクは、各ノズル38Aに対応して位置する不図示のピエゾ素子が駆動することにより、ノズル38Aを通じて外部へ吐出される。マニホールド24内のインクは、流入ポート22および流出ポート23を通じて循環可能である。
【0081】
ヘッド38は、上下方向7に沿って、図13,14に示される記録位置、図11に示される被キャッピング位置、図12に実線で示される被ワイピング位置、及び図12に破線で示されるアンキャップ位置に移動する。記録位置は、搬送ベルト101に支持されたシートSに画像を記録するときのヘッド38の位置である。被キャッピング位置は、吐出モジュール49がメンテナンス機構60のキャップ62によって覆われるときのヘッド38の位置である。被キャッピング位置は、記録位置より上方の位置(記録位置よりも第1支持機構51から離れた位置)である。被ワイピング位置は、メンテナンス機構60のスポンジワイパ64が吐出モジュール49のノズル面50を払拭するときのヘッド38の位置である。被ワイピング位置は、被キャッピング位置より上方の位置である。アンキャップ位置は、ヘッド38をメンテナンス機構60から完全に離間させるときのヘッド38の位置である。アンキャップ位置は、被ワイピング位置より上方の位置である。
【0082】
図2に示されるように、ヘッド38は、ボールネジ29によって移動される。ボールネジ29は、ネジ軸29Aとナット部材29Bとを備える。ネジ軸29Aは、下筐体32によって、上下方向7に沿った軸周りに回転可能に支持されている。ネジ軸29Aは、ヘッドモータ54(図10参照)から駆動力を伝達されることによって回転する。ナット部材29Bは、ネジ軸29Aの正転によって上方へ移動し、ネジ軸29Aの逆転によって下方へ移動する。なお、ヘッド38が上下動するための構成は、ボールネジ29を用いた構成に限らず、公知の種々の構成が採用可能である。
【0083】
[メンテナンス機構60]
図5に示されるように、メンテナンス機構60(排出機構の一例)は、支持台61、スポンジワイパ64、ゴムワイパ63、及びキャップ62を備えている。なお、以下のメンテナンス機構60の説明では、メンテナンス機構60が第2姿勢の第1支持機構51及び第2支持機構52によって支持されているとする。
【0084】
支持台61は、底台61Aと、底台61Aに載置される本体61Bと、スポンジワイパ64及びゴムワイパ63を本体61Bに保持するワイパホルダ61Cと、を有する。底台61Aは、上方が開口された箱型形状を有する。底台61Aは、第1底板121と、第1底板121の周縁から上方へ立設された第1縁板122と、延出片125と、ラック154(図2参照)と、を備えている。
【0085】
第1底板121は、傾斜方向6及び左右方向9へ拡がる平板状である。第1底板121の上面および下面は、傾斜方向6よりも左右方向9に長い矩形状に形成されている。第1底板121の下面は、第1支持機構51の上面に上方から当接可能である。これにより、メンテナンス機構60は、第1支持機構51によって支持可能である。第1底板121の下面は、第2支持機構52の上面に上方から当接可能である。これにより、メンテナンス機構60は、第2支持機構52によって支持可能である。
【0086】
第1縁板122は、平面視において矩形枠状である。延出片125は、第1縁板122の右壁の下端部から右方へ延びている。延出片125は、第1縁板122の右壁の傾斜方向6の一端から他端まで延びている。
【0087】
図6に示されるように、ラック154は、延出片125の下面に形成されている。ラック154は、延出片125の傾斜方向6の一端部から他端部の近傍まで延びている。ラック154は、第1支持機構51の上面と上下に対向可能である。
【0088】
ラック154は、第1支持機構51のギヤ105と噛合可能である。ラック154とギヤ105とが噛合した状態でギヤ105が回転することによって、メンテナンス機構60は、第1支持機構51の上面に沿ってスライドする。
【0089】
ラック154は、第2支持機構52のギヤ118、119と噛合可能である。ラック154とギヤ118及びギヤ119の少なくとも一方が噛合した状態でギヤ120が回転することによって、メンテナンス機構60は、第2支持機構52の上面に沿ってスライドする。
【0090】
これにより、メンテナンス機構60は、後述するように、図2に示される待機位置、図12に破線で示される待避位置、図11に示されるメンテナンス位置、及び図12に示されるワイピング位置に移動可能である。メンテナンス位置及びワイピング位置のメンテナンス機構60は、ヘッド38の吐出モジュール49のノズル面50と上下方向7に対向している。待機位置及び待避位置のメンテナンス機構60は、ノズル面50から離間した状態である。
【0091】
図5に示されるように、本体61Bは、上方が開放された略箱形形状である。本体61Bは、底台61Aに固定されている。本体61Bは、第2底板151と、第2底板151から上方へ立設された第2縁板152と、洗浄液タンク76に貯留される洗浄液を環流する液体流路153(図7参照)と、を備えている。
【0092】
図5及び図7に示されるように、第2底板151は、傾斜方向6及び左右方向9に拡がる平板状である。第2底板151の上面および下面は、傾斜方向6よりも左右方向に長い矩形状に形成されている。第2縁板152は、平面視において矩形枠状である。
【0093】
図7に示されるように、液体流路153は、第2底板151の上面に形成されている。液体流路153は、第2底板151の上面から下向きに凹んだ凹溝であり、上方に開口している。液体流路153は、平面視において、左右方向9に延びてUターンするように折り返すU字形状に連続した形状を有する。液体流路153は、凹溝上において配置されるスポンジワイパ64A、スポンジワイパ64B、およびスポンジワイパ64Cを直列に接続するように延びている。液体流路153は、第1流路153A、中間流路153B、及び第2流路153Cを有する。
【0094】
第1流路153Aは、液体流路153における洗浄液の流通向きの上流側に位置する。第1流路153Aは、本体61Bにおける前側において左右方向9に延びる部分である。
【0095】
中間流路153Bは、第1流路153Aの洗浄液の流通向きの下流に位置する。中間流路153Bは、第1流路153Aの下流端から本体61bの傾斜方向6の中間部まで前傾斜向き5に延びている。
【0096】
第2流路153Cは、液体流路153における洗浄液の流通向きの下流側に位置する。第2流路153Cは、中間流路153Bの下流端から右方に延びる。
【0097】
図9に示されるように、第1流路153Aの上流端における凹溝の内壁面には、洗浄液が第1流路153Aに流入する流入口171が開口している。流入口171には、第1供給チューブ175の一端が接続されている。第1供給チューブ175の他端は、第1支持機構51の外側に至り、洗浄液タンク76に接続され、洗浄液タンク76内に貯留される洗浄液の水面よりも低い位置において開口する。
【0098】
第2流路153Cの下流端における内壁面には、洗浄液が流出する流出口174が開口している。流出口174には、戻りチューブ176の一端が接続されている。戻りチューブ176の他端は、第1支持機構51の外側に至り、洗浄液タンク76に接続され、洗浄液タンク76内に貯留される洗浄液の水面よりも高い位置において開口する。戻りチューブ176には戻りポンプ75が設けられている(図2参照)。戻りポンプ75の駆動は、コントローラ130によって制御される。
【0099】
図5に示されるように、ワイパホルダ61Cは、スポンジワイパ64と、ゴムワイパ63と、を有している。スポンジワイパ64およびゴムワイパ63は、ワイパホルダ61Cによって本体61Bに支持されている。
【0100】
[スポンジワイパ64]
スポンジワイパ64は、スポンジによって形成されている。本実施形態では、スポンジワイパ64は、3つ(64A,64B,64C)が設けられている。以下、3つのスポンジワイパ64A,64B,64Cを総称して、スポンジワイパ64とも称する。スポンジワイパ64は、左右方向9の長さが傾斜方向6及び上下方向7の長さよりも長い直方体状に形成されている。スポンジワイパ64の上下方向7の長さは、傾斜方向6の長さよりも長い。
【0101】
スポンジワイパ64Aおよびスポンジワイパ64Bは、液体流路153の第1流路153Aに配置されている。スポンジワイパ64Aは、スポンジワイパ64Bよりも上流側に配置されている。スポンジワイパ64Cは、液体流路153の第2流路153Cに配置されている。
【0102】
スポンジワイパ64A、スポンジワイパ64B、およびスポンジワイパ64Cはそれぞれ、吐出モジュール49A、吐出モジュール49B、および吐出モジュール49Cに上下方向7に対応している。スポンジワイパ64Aおよびスポンジワイパ64Bは、互いに左右方向9に間隔を空けて位置する。スポンジワイパ64Cは、スポンジワイパ64Aおよびスポンジワイパ64Bよりも前傾斜向き5に間隔を空けて位置している。スポンジワイパ64Cは、左右方向9においてスポンジワイパ64Aとスポンジワイパ64Bとの間の中間に位置している。
【0103】
スポンジワイパ64Aは、吐出モジュール49Aに対応しており、吐出モジュール49Aと上下方向7に対向可能である。図5および図7に示されるように、スポンジワイパ64Aは、第1流路153Aの左右方向9の中央よりも右側に配置されている。
【0104】
[ゴムワイパ63]
ゴムワイパ63は、ゴムによって形成されている。本実施形態では、ゴムワイパ63は、3つ(63A,63B,63C)が設けられている。以下、3つのゴムワイパ63A,63B,63Cを総称して、ゴムワイパ63とも称する。
【0105】
ゴムワイパ63は、上下方向7及び左右方向9に拡がる平板状に形成されている。ゴムワイパ63の傾斜方向6の長さは、スポンジワイパ64の傾斜方向6の長さよりも短い。これにより、ゴムワイパ63は、ワイピング処理時において吐出モジュール49のノズル面50に当接したときに、屈曲しやすくなっている。ゴムワイパ63の左右方向9の長さは、スポンジワイパ64の左右方向9の長さよりも僅かに長い。ゴムワイパ63の支持台61からの長さは、スポンジワイパ64の支持台61からの長さよりも長い。ゴムワイパ63は、スポンジワイパ64の左右方向9の両端よりも左右方向9の外側に位置している。ゴムワイパ63の上端部は、先細りに形成されている。これにより、ゴムワイパ63の上端部が、ワイピング処理時において吐出モジュール49のノズル面50に接触しやすい。
【0106】
ゴムワイパ63Aおよびゴムワイパ63Bは、液体流路153の外側に配置されている。ゴムワイパ63A、ゴムワイパ63B、およびゴムワイパ63Cはそれぞれ、吐出モジュール49A、吐出モジュール49B、および吐出モジュール49Cに上下方向7に対応している。ゴムワイパ63Aは、ゴムワイパ63B、およびゴムワイパ63Cはそれぞれ、スポンジワイパ64A、スポンジワイパ64B、およびスポンジワイパ64Cから後傾斜向き4に間隔を空けて支持台61に配置されている。
【0107】
[キャップ62]
図5に示されるように、キャップ62は、支持台61に支持されている。キャップ62は、複数設けられている。本実施形態では、キャップ62は、3つのキャップ62A,62B,62Cで構成されている。以下、3つのキャップ62A,62B,62Cを総称して、キャップ62とも称する。
【0108】
キャップ62は、ゴムやシリコンなどの弾性体で構成されている。キャップ62は、上方が開放された箱形形状である。
【0109】
キャップ62A、キャップ62Bおよびキャップ62Cはそれぞれ、吐出モジュール49A、吐出モジュール49Bおよび吐出モジュール49Cに上下方向7に対向可能である。キャップ62A、キャップ62Bおよびキャップ62Cはそれぞれ、スポンジワイパ64A、スポンジワイパ64B、およびスポンジワイパ64Cから前傾斜向き5に間隔を空けて配置されている。キャップ62A、キャップ62Bおよびキャップ62Cはそれぞれ、メンテナンス機構60がメンテナンス位置に位置するときリップ66A,66B,66C(図8参照)がノズル面50に当接し内部空間67A,67B,67Cを封止する。キャップ62A、キャップ62Bおよびキャップ62Cはそれぞれ、内部空間67A,67B,67Cと外部とを連通するキャップ流路68A,68B,68Cを有している。キャップ流路68A,68B,68Cは、洗浄液がキャップ62の内部空間67A,67B,67Cに流入する供給流路20A,20B,20Cと、洗浄液がキャップ62A,62B,62Cの内部空間67A,67B,67Cから流出する排出流路21A,21B,21C(第4流路の一例)と、を有している。
【0110】
以下、3つのリップ66A,66B,66Cを総称して、リップ66とも称する。また、内部空間67A,67B,67C、キャップ流路68A,68B,68C、供給流路20A,20B,20C、及び、排出流路21A,21B,21Cについても同様に、それぞれ内部空間67、キャップ流路68、供給流路20、及び、排出流路21とも称する。
【0111】
図8に示されるように、キャップ62Aは、吐出モジュール49Aに対応しており、吐出モジュール49Aと上下方向7に対向可能である。キャップ62Aは、スポンジワイパ64Aから前傾斜向き5に間隔を空けて配置されている。キャップ62Aの底板69には、洗浄液がキャップ62Aに流入する供給流路20Aと洗浄液がキャップ62Aから流出する排出流路21Aとが形成されている。キャップ62Aの供給流路20Aには、第2供給チューブ177の一端が接続されている。第2供給チューブ177の他端は、メンテナンス機構60の外側に至り、洗浄液タンク76(図2参照)に接続されている。排出流路21Aには、第1廃液チューブ178の一端が接続されている。第1廃液チューブ178の他端は、メンテナンス機構60の外側に至り、廃液タンク77(図2参照)に接続されている。
【0112】
キャップ62Bは、吐出モジュール49Bに対応しており、吐出モジュール49Bと上下方向7に対向可能である。キャップ62Bは、スポンジワイパ64Bから前傾斜向き5に間隔を空けて配置されている。キャップ62Bの底板69には、洗浄液がキャップ62Bに流入する供給流路20Bと洗浄液がキャップ62Bから流出する排出流路21Bとが形成されている。供給流路20Bには、第2供給チューブ177から分岐した第3供給チューブ179の一端が接続されている。排出流路21Bには、第2廃液チューブ180の一端が接続されている。第2廃液チューブ180の他端は、メンテナンス機構60の外側において第1廃液チューブ178に合流している。
【0113】
キャップ62Cは、吐出モジュール49Cに対応しており、吐出モジュール49Cと上下方向7に対向可能である。キャップ62Cは、スポンジワイパ64Cから前傾斜向き5に間隔を空けて配置されている。キャップ62Cの底板69には、洗浄液がキャップ62Cに流入する供給流路20Cと洗浄液がキャップ62Cから流出する排出流路21Cとが形成されている。供給流路20Cには、第2供給チューブ177から分岐した第4供給チューブ201の一端が接続されている。排出流路21Cには、第3廃液チューブ202の一端が接続されている。第3廃液チューブ202の他端は、メンテナンス機構60の外側において第1廃液チューブ178に合流している。
【0114】
第2供給チューブ177における第3供給チューブ179及び第4供給チューブ201の分岐点よりも上流側にキャップ洗浄バルブ72(図9参照)が設けられている。キャップ洗浄バルブ72の開閉は、コントローラ130によって制御される。
【0115】
第1廃液チューブ178における第2廃液チューブ180及び第3廃液チューブ202には、合流点よりも上流側においてそれぞれ吸引ポンプ74(図2参照)が設けられている。3つの吸引ポンプ74は、1つの吸引ポンプモータ58(図10参照)によって駆動される。
【0116】
供給流路20Aの容積、排出流路21Aの容積および第1廃液チューブ178において吸引ポンプ74より上流の容積と、キャップ62Aの内部空間の容積と、の合計Taは、供給流路20Bの容積、排出流路21Bの容積および第2廃液チューブ180において吸引ポンプ74より上流の容積と、キャップ62Bの内部空間の容積と、の合計Tb、並びに、供給流路20Cの容積、排出流路21Cの容積および第3廃液チューブ202において吸引ポンプ74より上流の容積と、キャップ62Cの内部空間の容積と、の合計Tc、と同等である(合計Ta=合計Tb=合計Tc)。
【0117】
[インク回路113]
図9に示されるように、装着ケース110と吐出モジュール49とはインク回路113によって接続されている。インク回路113は、インクサブタンク181、流路182,183,184、大気流路185、バイパス流路186、補給バルブ187、パージ遮断バルブ188、バイパスバルブ189、大気開放バルブ190、正圧ポンプ191、および液面センサ192を有する。
【0118】
インクサブタンク181は、筐体30の内部空間において装着ケース110の上方に位置する。インクサブタンク181は、内部空間にインクを貯留する。インクサブタンク181の内部空間は、流路182(第1流路の一例)により装着ケース110のインクニードル112と連通されている。装着ケース110にインクタンク34が装着された状態において、インクタンク34が貯留するインクが流路182を通じてインクサブタンク181に流入可能である。また、装着ケース110に保存液タンク11が装着された状態において、保存液タンク11が貯留する保存液が流路182を通じてインクサブタンク181に流入可能である。流路182には、補給バルブ187が位置する。補給バルブ187は、コントローラ130により制御されて、流路182を開閉する。
【0119】
インクサブタンク181の内部空間と、吐出モジュール49の流入ポート22とは流路183(第2流路の一例)により連通されている。インクサブタンク181の内部空間に貯留されたインクまたは保存液は、流路183を通じて吐出モジュール49に供給可能である。流路183には、正圧ポンプ191が位置する。正圧ポンプ191は、コントローラ130がポンプモータ138(図10参照)の駆動を制御することにより動作する。
【0120】
インクサブタンク181の内部空間と、吐出モジュール49の流出ポート23とは流路184(第3流路の一例)により連通されている。吐出モジュール49のマニホールド24のインクまたは保存液は、流路184を通じてインクサブタンク181へ排出可能である。流路184には、パージ遮断バルブ188が位置する。パージ遮断バルブ188は、コントローラ130により制御されて、流路184を開閉する。
【0121】
流路183における正圧ポンプ191と流入ポート22との間と、流路184におけるパージ遮断バルブ188とインクサブタンク181との間と、はバイパス流路186により接続されている。バイパス流路186には、バイパスバルブ189が位置する。バイパスバルブ189は、コントローラ130により制御されて、バイパス流路186を開閉する。
【0122】
インクサブタンク181の内部空間と外部とは大気流路185により連通されている。大気流路185には、大気開放バルブ190が位置する。大気開放バルブ190は、コントローラ130により制御されて、大気流路185を開閉する。
【0123】
インクサブタンク181には、液面センサ192が位置する。液面センサ192は、インクサブタンク181の内部空間の所定の高さにおいてインクの有無を検知する。液面センサ192は、検知信号をコントローラ130に出力する。液面センサ192は、インクを検知したときに検知信号としてON信号を出力し、インクを検知しないときに検知信号としてOFF信号を出力する。コントローラ130は、液面センサ192が出力する検知信号に基づいて、インクサブタンク181の内部空間において所定の高さに液面が到達したかを判定する。
【0124】
インクサブタンク181には、減圧ポンプ193が接続されている。減圧ポンプ193は、インクサブタンク181の内部空間の気体を外部へ排出することにより、インクサブタンク181の内部空間を減圧する。
【0125】
[コントローラ130]
図10に示されるように、コントローラ130は、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、及びASIC135を備えており、これらは内部バス137によって接続されている。ROM132には、CPU131の各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0126】
ASIC135には、搬送モータ53、ヘッドモータ54、第1モータ55、第2モータ56、戻りポンプモータ47、吸引ポンプモータ58、ポンプモータ138,139、軸モータ59、上下駆動モータ163、操作パネル44、表示部44A、接点114、及び液面センサ192が接続されている。また、ASIC135には、キャップ洗浄バルブ72、補給バルブ187、パージ遮断バルブ188、バイパスバルブ189、および大気開放バルブ190が接続されている。なお、各バルブは、バルブを駆動するための駆動回路を介してASIC135と接続されている。
【0127】
ASIC135は、各モータを回転させるための駆動信号を生成し、この駆動信号を元に各モータを制御する。各モータは、ASIC135からの駆動信号によって正転又は逆転する。コントローラ130は、搬送モータ53の駆動を制御して、ホルダ35、搬送ローラ36A、搬送ローラ40A、及び駆動ローラ102を回転させる。コントローラ130は、ヘッドモータ54の駆動を制御して、ネジ軸29Aを回転させ、ヘッド38を上下方向7に沿って移動させる。コントローラ130は、軸モータ59の駆動を制御して、第1支持機構51を回動させる。コントローラ130は、第1モータ55の駆動を制御して、第1支持機構51のギヤ106を回転させる。コントローラ130は、上下駆動モータ163の駆動を制御して、ネジ軸161を回転させ、第2支持機構52を直交方向10に沿って移動させる。コントローラ130は、第2モータ56の駆動を制御して、第2支持機構52のギヤ120を回転させる。コントローラ130は、戻りポンプモータ78の駆動を制御して、戻りポンプ75を駆動させる。コントローラ130は、吸引ポンプモータ58の駆動を制御して、3つの吸引ポンプ74を駆動させる。コントローラ130は、ポンプモータ138の駆動を制御して、正圧ポンプ191を駆動させる。コントローラ130は、ポンプモータ139の駆動を制御して、減圧ポンプ193を駆動させる。
【0128】
ASIC35には、操作パネル44、表示部44A、接点114、液面センサ192、および圧電素子(不図示)が接続されている。操作パネル44は、ユーザによる操作に応じた操作信号をコントローラ130に出力する。操作パネル44は、例えば、押ボタンを有していてもよいし、ディスプレイに重畳されたタッチセンサを有していてもよい。表示部44Aは、蓋部材82が支持部材81に装着されていることを表示する。コントローラ130は接点114を通じて、インクタンク34のIC基板70または保存液タンク11のIC基板12の記憶領域に対して読み出しまたは書き込みを行う。コントローラ130は、液面センサ192から検知信号を受信する。圧電素子は、不図示のドライブ回路を介してコントローラ130により給電されることで動作する。コントローラ130は、圧電素子への給電を制御し、複数のノズル38Aから選択的にインク滴を吐出させる。
【0129】
[インク]
以下、インクの詳細が説明される。インクは、樹脂微粒子、色材、有機溶剤、界面活性剤、及び水を有する。インクは、樹脂微粒子、色材、及び有機溶剤が水に溶けた水性インクである。
【0130】
インクは、コート紙、プラスチック、フィルム、OHPシート等の疎水性の記録媒体への濡れ性があるが、これに限定されるものではなく、例えば、普通紙、光沢紙、マット紙等の疎水性の記録媒体以外の画像記録に好適なものであってもよい。「コート紙」とは、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙等のパルプを主要な構成要素とした普通紙に、平滑性、白色度、光沢度等の向上を目的として、コート剤を塗布したものを言い、具体的には、上級コート紙、中級コート紙等があげられる。
【0131】
樹脂微粒子としては、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸の少なくとも一方をモノマーとして含むものを用いることができ、例えば、市販品を用いてもよい。樹脂微粒子は、例えば、モノマーとして、さらに、スチレン、塩化ビニル等を含んでもよい。樹脂微粒子は、例えば、エマルジョンに含まれるものであってもよい。エマルジョンは、例えば、樹脂微粒子と、分散媒(例えば、水等)とで構成されるものである。樹脂微粒子は、分散媒に対して溶解状態ではなく、特定の粒子径の範囲で分散している。樹脂微粒子としては、例えば、アクリル酸系樹脂、マレイン酸系エステル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、カーボネート型樹脂、ポリカーボネート型樹脂、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの共重合体樹脂等が挙げられるが、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0132】
樹脂微粒子としては、例えば、0℃以上200℃以下の範囲内においてガラス転移温度(Tg)を有する樹脂が用いられる。より好ましくは、ガラス転移温度(Tg)は、20℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは、30℃以上150℃以下である。
【0133】
エマルジョンとしては、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス(登録商標)870」(Tg:71℃)、「スーパーフレックス(登録商標)150」(Tg:40℃)、ジャパンコーティングレジン(株)製の「モビニール(登録商標)6760」(Tg:-28℃)、「モビニール(登録商標)DM774」(Tg:33℃)、昭和電工(株)製の「ポリゾール(登録商標)AP-3270N」(Tg:27℃)、星光PMC(株)製の「ハイロース-X(登録商標)KE-1062」(Tg:112℃)、「ハイロース-X(登録商標)QE-1042」(Tg:69℃)等が挙げられる。
【0134】
樹脂微粒子の平均粒子径は、例えば、30nm以上200nm以下の範囲内である。平均粒子径は、例えば、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB-550」を用いて、算術平均径として測定可能である。
【0135】
インク全量における樹脂微粒子の含有量(R)は、例えば、0.1wt%以上30wt%以下の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは0.5wt%以上20wt%以下の範囲内であり、特に好ましくは1.0wt%以上15.0wt%以下の範囲内である。樹脂微粒子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0136】
色材は、例えば、顔料分散用樹脂(樹脂分散剤)によって、水に分散可能な顔料である。色材としては、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等が挙げられる。
【0137】
インク全量における色材の固形分含有量は、特に限定されず、例えば、所望の光学濃度又は彩度等により、適宜決定できる。色材の固形分含有量は、例えば、0.1wt%以上20.0wt%以下の範囲内が好ましく、更に好ましくは1.0wt%以上15.0wt%以下の範囲内である。色材の固形分含有量は、顔料のみの重量であり、樹脂微粒子の重量は含まない。色材は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0138】
有機溶剤としては、特に限定はなく、任意のものが使用できる。有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,2-ブタンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、プロピレンオキサイド基を有するグリコールエーテルが好ましい。その他の有機溶剤の例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの炭素数1~4のアルキルアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2~6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン、エチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテルなどのアルキレングリコール類の低級アルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0139】
インク全量における有機溶剤の含有量は、25℃において単体で液体として存在する有機溶剤が、インク全量に対して10wt%以下であることが好ましく、更に好ましくは9wt%である。
【0140】
水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。インク全量における水の含有量は、例えば、15wt%以上95wt%以下の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは25wt%以上85wt%以下の範囲内である。水の含有量は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
【0141】
インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防腐剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤、ノズル乾燥防止剤、エマルジョンなどのポリマー成分、染料等が挙げられる。界面活性剤は、さらに、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、またはノニオン性界面活性剤を含んでもよい。これら界面活性剤は、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1010」、「オルフィン(登録商標)E1006」、「オルフィン(登録商標)E1004」、「シルフェイスSAG503A」、及び「シルフェイスSAG002」等が挙げられる。インク全量における界面活性剤の含有量は、例えば、5wt%以下、3wt%以下、0.1wt%~2wt%である。粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等が挙げられる。
【0142】
インクは、例えば、樹脂微粒子と、色材と、有機溶剤と、水と、必要に応じて他の添加剤とを、従来公知の方法で均一に混合し、フィルタ等で不溶解物を除去することにより調製できる。
【0143】
[保存液]
保存液は、水溶性ポリマーと、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、水と、を含む。
【0144】
水溶性ポリマーとしては、特に限定なく、任意のものが使用できる。水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどがあげられる。その他の水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ポリアクリル酸類、スチレン-アクリル酸共重合体類、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体類などがあげられる。水溶性ポリマーとしては市販品を用いてもよい。市販品としては、BASF社製のジョンクリル(登録商標)、日本触媒社製のアクアリック(登録商標)、東亜合成社製のアロン(登録商標)などがあげられる。水溶性ポリマーとしては、構造中に芳香族アルキル基またはラクタム基を含有することが好ましい。水溶性ポリマーの重量平均分子量は、8500から20000の範囲内であることが好ましい、更に好ましくは、9000から15000の範囲内である。
【0145】
水溶性有機溶剤としては、特に限定はなく、任意のものが使用できる。水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,2-ブタンジオール、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,6-ヘキサンジオール等が挙げられ、エチレンオキサイド基を有するグリコールエーテルが好ましい。その他の有機溶剤の例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの炭素数1~4のアルキルアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基が2~6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン、エチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル)エーテル、テトラエチレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル、ヘキシル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、トリプロピレングリコールモノメチル(またはエチル、プロピル、ブチル)エーテル、テトラプロピレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテルなどのアルキレングリコール類の低級アルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。
【0146】
水溶性有機溶剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。メンテナンス液全量における水溶性有機溶剤の含有量は、例えば5wt%以上50wt%以下の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは25wt%以上35wt%以下の範囲内である。
【0147】
界面活性剤としては、例えば、市販品を用いてもよい。市販品のアニオン性界面活性剤としては、例えば、ライオン社製のサンノール(登録商標)、花王社製のエマール(登録商標)、三洋化成社製のサンデット(登録商標)、ビューライト(登録商標)などがあげられる。アニオン性界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。保存液全量におけるアニオン性界面活性剤の含有量は、例えば0.01wt%以上10wt%以下の範囲内であることが好ましく、更に好ましくは0.1wt%以上10wt%以下の範囲内である。
【0148】
保存液に含まれる界面活性剤は、アニオン性界面活性剤のみであってもよいし、アニオン性界面活性剤に加え、さらに、カチオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤を含んでもよい。
【0149】
水は、イオン交換水又は純水であることが好ましい。保存液全量における水の含有量は、例えば、10質量%~90質量%、20質量%~80質量%である。水の含有量は、例えば、他の成分の残部としてもよい。
【0150】
保存液は、着色剤を含まないことが好ましいが、着色剤を含んでもよい。メンテナンス液が着色剤を含む場合には、記録画像に影響を与えない程度の量であることが好ましい。
【0151】
保存液は、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、湿潤剤、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防黴剤等があげられる。粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロール、水溶性樹脂等があげられる。
【0152】
保存液は、例えば、水溶性ポリマーと、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、水とを、従来公知の方法で均一に混合することにより調製できる。
【0153】
保存液の粘度は、インクの粘度より小さいことが好ましい。インクおよび保存液の粘度は、例えばコーンプレート型回転式粘度計により測定できる。
【0154】
以下、メンテナンス機構60の動作についてパージ処理および洗浄処理、ワイピング処理、画像記録処理とともに説明する。本実施形態において、上記の処理とともに洗浄液の供給及び排出が行われる。
【0155】
[パージ処理および洗浄処理]
画像記録処理が実行されていないときの画像記録装置100は待機状態である。待機状態のとき、図11に示されるように、ヘッド38は被キャッピング位置に位置しており、第1支持機構51はメンテナンス機構60を支持した状態で第1姿勢に位置しており、メンテナンス機構60はメンテナンス位置に位置している。このとき、キャップ62は、ノズル面50を覆っている。
【0156】
待機状態のときに、コントローラ130は、パージ処理を、所定タイミングでまたは外部からの命令を受け取ったときに実行する。以下では、画像記録装置100が待機状態のときに、コントローラ130が外部からパージ処理を実行する旨の命令を受け取ったときの処理が説明される。
【0157】
パージ処理において、コントローラ130は、パージ遮断バルブ188およびバイパスバルブ189を開いた状態、かつ補給バルブ187、大気開放バルブ190、およびおよびキャップ洗浄バルブ72を閉じた状態で、吸引ポンプ74を駆動させる。これにより、ノズル38A内のインクが吸引されて、キャップ62の内部空間67A,67B,67Cから排出流路21A,21B,21Cを通って第1廃液チューブ178、第2廃液チューブ180、及び第3廃液チューブ202を通ってインクが廃液タンク77に排出される。このとき、キャップ洗浄バルブ72が閉じられているので、洗浄液タンク76から第2供給チューブ177、第3供給チューブ179、及び第4供給チューブ201を通してキャップ62A,62B,62Cに洗浄液が供給されることはない。
【0158】
コントローラ130は、洗浄処理を、所定タイミングでまたは外部からの命令を受け取ったときに実行する。以下では、画像記録装置100が待機状態のときにおいてパージ処理が行われた後に、コントローラ130が洗浄処理を実行するときの処理が説明される。
【0159】
洗浄処理において、コントローラ130は、キャップ洗浄バルブ72を開き、かつ補給バルブ187、パージ遮断バルブ188、バイパスバルブ189、および大気開放バルブ190を閉じた状態で吸引ポンプ74を駆動させる。これにより、洗浄液タンク76から第2供給チューブ177、第3供給チューブ179、及び第4供給チューブ201を通してキャップ62A,62B,62Cの内部空間に洗浄液が供給される。パージ遮断バルブ188およびバイパスバルブ189が閉じられているので、ヘッド38のノズル38Aからキャップ62A,62B,62Cの内部空間へインクは排出されない。
【0160】
つづいて、コントローラ130は、ヘッド38をアンキャップ位置に移動してから、キャップ洗浄バルブ72を閉じた状態で吸引ポンプ74を駆動させる。これにより、キャップ62の内部空間67A,67B,67Cから排出流路21A,21B,21Cを通って第1廃液チューブ178、第2廃液チューブ180、及び第3廃液チューブ202を通って洗浄液が廃液タンク77に排出される。これにより、キャップ62の内部空間67A,67B,67C、排出流路21A,21B,21C、第1廃液チューブ178、第2廃液チューブ180、及び第3廃液チューブ202に残存したインクが洗浄液により洗い流される。
【0161】
また、画像記録処理が実行されていないときの画像記録装置100は待機状態であるが、待機状態となるときに、コントローラ130は、キャップ洗浄バルブ72を開き、かつ補給バルブ187、パージ遮断バルブ188、バイパスバルブ189、および大気開放バルブ190を閉じた状態で吸引ポンプ74を駆動させる洗浄液供給処理を実行する。洗浄液供給処理により、洗浄液タンク76から第2供給チューブ177、第3供給チューブ179、及び第4供給チューブ201を通してキャップ62A,62B,62Cの内部空間に洗浄液が供給される。パージ遮断バルブ188およびバイパスバルブ189が閉じられているので、ヘッド38のノズル38Aからキャップ62A,62B,62Cの内部空間へインクは排出されない。
【0162】
[ワイピング処理]
コントローラ130は、スポンジワイパ64A,64B,64Cに洗浄液を含浸させた状態でワイピング処理を実行する。以下、ワイピング処理が説明される。
【0163】
ワイピング処理において、コントローラ130は、戻りポンプ75を駆動する。これにより、洗浄液タンク76から洗浄液が第1供給チューブ175を通して支持台61に供給される。支持台61に供給された洗浄液は、流入口171を通して液体流路153における第1流路153Aに流入する。第1流路153Aに流入した洗浄液は、中間流路153B、及び第2流路153Cを順に流通し、流出口174から排出される。このとき、スポンジワイパ64A,64B,64Cに洗浄液が含浸しスポンジワイパ64A,64B,64Cは、洗浄液を十分に含んだ状態になる。液体流路153へ供給された洗浄液は洗浄液タンク76へ戻される。
【0164】
コントローラ130は、ヘッド38を下方へ移動させることによって図12において破線で示されるアンキャップ位置から実線で示される被ワイピング位置へ移動させる。
【0165】
メンテナンス位置のメンテナンス機構60は、第1支持機構51に支持されているが、このとき、ラック154が、ギヤ105と噛合している。この状態で第1モータ55が駆動されて、ギヤ106が図11において時計回りに回転すると、ギヤ105が図11において反時計回りに回転する。これにより、メンテナンス位置のメンテナンス機構60は、前後方向8(搬送向き8A)に沿って前方(搬送向き8Aの下流)へ移動し、ワイピング位置に到達する(図12参照)。
【0166】
メンテナンス機構60がメンテナンス位置からワイピング位置へ移動する過程において、スポンジワイパ64及びゴムワイパ63の先端部(上端部)が吐出モジュール49のノズル面50に当接しつつノズル面50に対してスライドする。具体的には、スポンジワイパ64A,64B,64C及びゴムワイパ63A,63B,63Cが吐出モジュール49A、49B、49Cのノズル面50に対して接触した状態でスライドする。これにより、各吐出モジュール49A,49B,49Cのノズル面50が、スポンジワイパ64A,64B,64Cに払拭された後、ゴムワイパ63A,63B,63Cに払拭される。その結果、ノズル面50及びノズル面50に開口されたノズル38Aに付着した異物などが取り除かれる。
【0167】
メンテナンス機構60がワイピング位置のとき、第1モータ55が駆動されて、ギヤ106が図12において反時計回りに回転すると、ギヤ105が図12において時計回りに回転する。これにより、ワイピング位置のメンテナンス機構60は、後方(搬送向き8Aの上流)へ移動し、メンテナンス位置に到達する(図11参照)。
【0168】
コントローラ130は、軸モータ59を駆動して第1支持機構51を第1姿勢から第2姿勢に姿勢変化させる(図13参照)。
【0169】
[メンテナンス機構60の移動]
図13及び図14に示されるように、メンテナンス機構60は、第1支持機構51および第2支持機構52に支持された状態で第2姿勢の第1支持機構51および第2支持機構52に対してスライド移動することによって傾斜方向6に沿って待機位置に移動可能である。つまり、第1支持機構51および第2支持機構52は、メンテナンス位置、待機位置、及びこれらの両位置の間に位置するメンテナンス機構60を支持可能である。
【0170】
具体的には、コントローラ130は、まず、第1モータ55を駆動する。これにより、ギヤ106が図19において時計回りに回転するため、ギヤ105が反時計回りに回転し、メンテナンス位置のメンテナンス機構60は、前傾斜向き5へ移動して第2支持機構52上に受け渡される。
【0171】
コントローラ130は、第2モータ56を駆動する。これにより、ギヤ120が図20において時計回りに回転するため、ギヤ118,119が反時計回りに回転し、第1支持機構51からスライド移動したメンテナンス機構60が第2支持機構52上の待機位置に到達する(図14参照)。
【0172】
コントローラ130は、上下駆動モータ163を駆動する。これにより、ネジ軸161が回転するため第2支持機構52が待機位置から直交方向10に沿って上方に移動し、メンテナンス機構60が待避位置に到達する。これによりワイパクリーニング機構80に、キャップ62A、62B、62Cのリップ66A,66B,66C及びゴムワイパ63A,63B,63Cが当接する。
【0173】
[画像記録処理]
以下に、シートSに画像が記録されるときの処理(画像記録処理)が説明される。
【0174】
コントローラ130は、操作パネル44や、画像記録装置100とLANなどによって接続された情報処理装置などの外部から、シートSに画像を記録する旨の命令を受け取ると、上述したようにメンテナンス機構60をメンテナンス位置から待機位置へ移動させる。そして、コントローラ130は、上下駆動モータ163を駆動し、メンテナンス機構60を待機位置から待避位置に移動させる。コントローラ130は、軸モータ59を駆動し、第1支持機構51を第2姿勢から第1姿勢へ姿勢変化させる。
【0175】
次に、コントローラ130は、ヘッド38を下方へ移動させることによって被キャッピング位置から記録位置へ移動させる。そして、シートSの搬送を開始して、当該シートSがヘッド38の直下に位置する状態でノズル38Aからインクを吐出する。これによりシートSに画像が記録される。シートS上に付着したインクは、ヒータ39を通過する際に加熱されることによってシートSに定着する。更に搬送されたシートSは、CIS25によって記録された画像をチェックされた後、カッターユニット26によって所定のサイズに切断されて排出される。
【0176】
シートSへの画像記録処理の後、メンテナンス機構60がメンテナンス位置に移動するときは、上述の逆の工程が行われる。
【0177】
画像記録処理において、インクサブタンク181と吐出モジュール49との間においてインクを循環するインク循環処理が実行される。コントローラ130は、バイパスバルブ189および補給バルブ187を閉状態とし、正圧ポンプ191を駆動する。正圧ポンプ191が駆動されると、流路183を通じて、インクサブタンク181から吐出モジュール49へインクが供給される。吐出モジュール49の流入ポート22からマニホールド24へ流入したインクは、流出ポート23から流路184を通じてインクサブタンク181へ戻る。すなわち、インクサブタンク181と吐出モジュール49との間でインクが循環する。
【0178】
[保管処理]
以下に保管処理を図15および図16を参照しつつ説明する。保管処理は、ユーザにより保管処理の実行が指示された際に画像記録装置100において実行される。ユーザが保管処理の実行を指示する場合として、長期にわたって画像記録装置100を使用しないときなどがあげられる。長期とは、例えば1ヶ月間以上であるが、これに限定されない。
【0179】
画像記録装置100は待機状態である。待機状態において、コントローラ130は、操作パネル44の入力に基づく保管指示コマンドを受け取ったときに保管モードに移行して保管処理を実行する。コントローラ130は、保管指示コマンドを受け取ると、操作パネル44の表示部44Aに、保管モードである旨、およびインクタンク34を取り外さない旨の表示を行う。
【0180】
図15および図16に示されるように、コントローラ130は、搬送モータ53を一定期間だけ逆向きに駆動して、駆動ローラ102、ホルダ35、搬送ローラ36A、40Aを搬送向き8Aと逆向きに回転する(S10)。これにより、搬送路43に位置するシートSが搬送向き8Aと逆向きに移動してロール体37に巻き取られる。
【0181】
コントローラ130は、搬送モータ53を停止した後、装着ケース110にインクタンク34が装着されているかを判定する(S11)。具体的には、接点114を通じてIC基板70の記憶領域に記憶された識別情報を読み出すことによって、装着ケース110にインクタンク34が装着されているかを判定する。コントローラ130は、装着ケース110にインクタンク34が装着されていないと判定したことに応じて(S11:No)、表示部44Aにインクタンク34を装着する旨の表示を行い、インクタンク34が装着されるまで待機する。
【0182】
コントローラ130は、装着ケース110にインクタンク34が装着されていると判定したことに応じて(S11:Yes)、補給バルブ187および大気開放バルブ190を開状態にする(S12、返戻処理の一例)。これにより、重力に伴ってインクサブタンク181に貯留されているインクが流路182を通じてインクタンク34に返戻され、インクサブタンク181にインクが貯留されていない状態となる。なお、インクサブタンク181においては、インクが完全に無くなっていなくてもよい。例えば、インクサブタンク181の内部空間に開口する流路182の位置より下方のインクは、重力によってインクタンク34に戻らないが、このようにインクサブタンク181の内部空間に若干のインクが残っていてもよい。
【0183】
コントローラ130は、パージ遮断バルブ188、バイパスバルブ189および大気開放バルブ190を開状態とし、補給バルブ187およびキャップ洗浄バルブ72を閉状態とする(S12-1)。その後、コントローラ130は、吸引ポンプ74を一定期間だけ駆動する(S12-2、第1排出処理の一例)。吸引ポンプ74が駆動されると、キャップ62の内部空間67が負圧となり、流路183、184、186に残留するインクがマニホールド24、ノズル38Aを通じて吐出モジュール49からキャップ62の内部空間67へ排出され、さらに流路178を通じて、廃液タンク77に排出される。この際、補給バルブ187が閉じられているので、インクタンク34に貯留されているインクは、流路182を通じてインクサブタンク181へ供給されない。このようにして、流路183、184、186、マニホールド24、ノズル38A、キャップ62の内部空間67内に残留するインクは流路178を通じてほとんど廃液タンク77に排出される。
【0184】
コントローラ130は、インクサブタンク181の液面センサ192の検知信号がOFF信号であると(S13:Yes)、表示部44Aにインクタンク34に代えて保存液タンク11を装着する旨の表示を行い、装着ケース110に保存液タンク11が装着されているかを判定する(S14)。具体的には、接点114を通じてIC基板12の記憶領域に記憶された識別情報を読み出すことによって、装着ケース110に保存液タンク11が装着されているかを判定する。コントローラ130は、装着ケース110に保存液タンク11が装着されていないと判定したことに応じて(S14:No)、表示部44Aに保存液タンク11を装着する旨の表示を行い、保存液タンク11が装着されるまで待機する。
【0185】
コントローラ130は、装着ケース110に保存液タンク11が装着されていると判定したことに応じて(S14:Yes)、キャップ洗浄バルブ72、パージ遮断バルブ188、バイパスバルブ189、および大気開放バルブ190を閉状態にする(S15)。その後、コントローラ130は、減圧ポンプ193を駆動する(S16、保存液供給処理の一例)。
【0186】
減圧ポンプ193が駆動されると、インクサブタンク181の内部空間が負圧となることにより、保存液タンク11に貯留されている保存液が、流路182を通じてインクサブタンク181へ供給される。
【0187】
コントローラ130は、インクサブタンク181の液面センサ192の検知信号がOFF信号であると(S17:No)、減圧ポンプ193の駆動を継続する(S16)。コントローラ130は、液面センサ192の検知信号がON信号であると(S17:Yes)、減圧ポンプ193の駆動を停止する(S18)。液面センサ192がON信号となることにより、インクサブタンク181の所定の高さまで保存液が貯留された状態となっている。
【0188】
次いで、コントローラ130は、バイパスバルブ189および補給バルブ187を閉状態とし(S19)、正圧ポンプ191を一定期間だけ駆動する(S20、保存液循環処理の一例)。正圧ポンプ191が駆動されると、流路183を通じて、インクサブタンク181から吐出モジュール49へ保存液が供給される。吐出モジュール49の流入ポート22からマニホールド24へ流入した保存液は、流出ポート23から流路184を通じてインクサブタンク181へ戻る。すなわち、インクサブタンク181と吐出モジュール49との間で保存液が循環する。なお、ノズル38Aの内径が小さく、また、キャップ62の内部空間67が負圧でないことにより、吐出モジュール49においてマニホールド24からノズル38Aへは保存液が進入し難い。
【0189】
コントローラ130は、正圧ポンプ191を停止した後、補給バルブ187およびバイパスバルブ189を開状態とする(S21)。その後、コントローラ130は、吸引ポンプ74を一定期間だけ駆動する(S22、第2排出処理の一例)。吸引ポンプ74が駆動されると、キャップ62の内部空間67が負圧となり、ノズル38Aを通じて吐出モジュール49から保存液がキャップ62の内部空間67へ排出され、流路178を通じて、保存液が廃液タンク77に排出される。これに伴い、流路183,184を通じてインクサブタンク181から吐出モジュール49へ保存液が供給される。また、保存液タンク11に貯留されている保存液が、流路182を通じてインクサブタンク181へ供給される。
【0190】
コントローラ130は、吸引ポンプ74を停止した後、反復回数Nを1だけカウントアップし(N=N+1、S23)、カウントアップした反復回数Nが閾値であるかを判定する(S24)。閾値は、例えば3回のようにコントローラ130のEEPROM134などに予め設定されて記憶されている。
【0191】
コントローラ130は、反復回数Nが閾値でないと判定したことに応じて(S24:No)、キャップ洗浄バルブ72および補給バルブ187を閉状態にし、パージ遮断バルブ188、バイパスバルブ189および大気開放バルブ190を開状態にする(S25)。その後、コントローラ130は、吸引ポンプ74を駆動する(S26)。
【0192】
吸引ポンプ74が駆動されると、キャップ62の内部空間67が負圧となり、ノズル38Aを通じて吐出モジュール49から保存液がキャップ62の内部空間67へ排出される。これに伴い、流路183,184を通じてインクサブタンク181から保存液が吐出モジュール49へ移動して、同様に、ノズル38Aを通じてキャップ62の内部空間67へ排出され、流路178を通じて、保存液が廃液タンク77に排出される。なお、キャップ洗浄バルブ72が閉状態なので、洗浄液タンク76からキャップ62へ洗浄液は供給されない。
【0193】
コントローラ130は、インクサブタンク181の液面センサ192の検知信号がOFF信号でないと(S27:No)、吸引ポンプ74の駆動を継続する(S26)。コントローラ130は、液面センサ192の検知信号がOFF信号であると(S27:Yes)、吸引ポンプ74を一定期間だけ駆動した後停止する(S28)。液面センサ192がOFF信号となることにより、インクサブタンク181において保存液の液面が所定の高さ未満となり、さらに吸引ポンプ74が駆動されることにより、インクサブタンク181に貯留されている保存液が殆ど廃液タンク77に排出された状態となる。なお、補給バルブ187が閉状態なので、保存液タンク11からインクサブタンク181へ保存液は供給されない。その後、コントローラ130は、ステップS15からステップS24を実行する。
【0194】
コントローラ130は、反復回数Nが閾値であると判定したことに応じて(S24:Yes)、反復回数Nをリセットし、キャップ洗浄バルブ72を開状態とし(S29)、吸引ポンプ74を一定期間だけ駆動する(S30、洗浄処理の一例)。これにより、洗浄液タンク76から第2供給チューブ177を通じて洗浄液がキャップ62の内部空間67に供給され、また、内部空間67から第1廃液チューブ178を通じて洗浄液が廃液タンク77に排出される。
【0195】
コントローラ130は、吸引ポンプ74を停止した後、EEPROM134に記憶されている保管フラグをONに更新して(S31)、画像記録装置100の電源をOFFにする(S32)。これにより保管処理が終了する。
【0196】
[復帰処理]
以下に復帰処理を図17および図18を参照しつつ説明する。復帰処理は、画像記録装置100が保管状態にあるときに、ユーザが使用を再開すると判断し、画像記録装置100の電源をONにしたときに実施される。
【0197】
画像記録装置100は保管状態であり、かつ待機状態である。保管状態かつ待機状態において、コントローラ130は、ユーザの電源ONの操作を受けて復帰処理を実行する。コントローラ130は、表示部44Aにインクタンク34を装着する旨の表示を行う。
【0198】
図16に示されるように、コントローラ130は、EEPROM134に記憶されている保管フラグがONであるかを判定する(S40)。コントローラ130は、保管フラグがONでないと判定したことに応じて(S40:No)、待機状態を維持する(S61)。
【0199】
コントローラ130は、保管フラグがONであると判定したことに応じて(S40:Yes)、装着ケース110にインクタンク34が装着されているかを判定する(S41)。具体的には、接点114を通じてIC基板70の記憶領域に記憶された識別情報を読み出すことによって、装着ケース110にインクタンク34が装着されているかを判定する。コントローラ130は、装着ケース110にインクタンク34が装着されていないと判定したことに応じて(S41:No)、表示部44Aにインクタンク34を装着する旨の表示を行い、インクタンク34が装着されるまで待機する。
【0200】
コントローラ130は、装着ケース110にインクタンク34が装着されていると判定したことに応じて(S41:Yes)、パージ遮断バルブ188、バイパスバルブ189、および大気開放バルブ190を開状態とし、キャップ洗浄バルブ72および補給バルブ187を閉状態にする(S42)。その後、コントローラ130は、吸引ポンプ74を駆動する(S43)。
【0201】
吸引ポンプ74が駆動されると、キャップ62の内部空間67が負圧となり、ノズル38Aを通じて吐出モジュール49から保存液がキャップ62の内部空間67へ排出される。これに伴い、流路183,184を通じてインクサブタンク181から保存液が吐出モジュール49へ移動して、同様に、ノズル38Aを通じてキャップ62の内部空間67へ排出され、流路178を通じて、保存液が廃液タンク77に排出される。なお、キャップ洗浄バルブ72が閉状態なので、洗浄液タンク76からキャップ62へ洗浄液は供給されない。また、補給バルブ187が閉状態なので、インクタンク34からインクサブタンク181へインクは供給されない。
【0202】
コントローラ130は、インクサブタンク181の液面センサ192の検知信号がOFF信号でないと(S44:No)、吸引ポンプ74の駆動を継続する(S43)。コントローラ130は、液面センサ192の検知信号がOFF信号であると(S44:Yes)、吸引ポンプ74を一定期間だけ駆動した後停止する(S45)。液面センサ192がOFF信号となることにより、インクサブタンク181において保存液の液面が所定の高さ未満となり、さらに吸引ポンプ74が駆動されることにより、インクサブタンク181に貯留されている保存液が殆ど廃液タンク77に排出された状態となる。なお、補給バルブ187が閉状態なので、インクタンク34からインクサブタンク181へインクは供給されない。
【0203】
コントローラ130は、吸引ポンプ74を停止した後、パージ遮断バルブ188、バイパスバルブ189、および大気開放バルブ190を閉状態とし、補給バルブ187を開状態にする(S46)。その後、コントローラ130は、減圧ポンプ193を駆動する(S47)。
【0204】
減圧ポンプ193が駆動されると、インクサブタンク181の内部空間が負圧となることにより、インクタンク34に貯留されているインクが、流路182を通じてインクサブタンク181へ供給される。
【0205】
コントローラ130は、インクサブタンク181の液面センサ192の検知信号がOFF信号であると(S48:No)、減圧ポンプ193の駆動を継続する(S47)。コントローラ130は、液面センサ192の検知信号がON信号であると(S48:Yes)、減圧ポンプ193の駆動を停止する(S49)。液面センサ192がON信号となることにより、インクサブタンク181の所定の高さまでインクが貯留された状態となっている。
【0206】
コントローラ130は、バイパスバルブ189および補給バルブ187を閉状態とし(S50)、正圧ポンプ191を一定期間だけ駆動する(S51)。正圧ポンプ191が駆動されると、流路183を通じて、インクサブタンク181から吐出モジュール49へインクが供給される。吐出モジュール49の流入ポート22からマニホールド24へ流入したインクは、流出ポート23から流路184を通じてインクサブタンク181へ戻る。すなわち、インクサブタンク181と吐出モジュール49との間でインクが循環する。なお、ノズル38Aの内径が小さく、また、キャップ62の内部空間67が負圧でないことにより、吐出モジュール49においてマニホールド24からノズル38Aへはインクが進入し難い。
【0207】
コントローラ130は、正圧ポンプ191を停止した後、補給バルブ187およびバイパスバルブ189を開状態とする(S52)。その後、コントローラ130は、吸引ポンプ74を一定期間だけ駆動する(S53)。吸引ポンプ74が駆動されると、キャップ62の内部空間67が負圧となり、ノズル38Aを通じて吐出モジュール49からインクがキャップ62の内部空間67へ排出され、流路178を通じて、インクが廃液タンク77に排出される。これに伴い、流路183,184を通じてインクサブタンク181から吐出モジュール49へインクが供給される。また、インクタンク34に貯留されているインクが、流路182を通じてインクサブタンク181へ供給される。
【0208】
コントローラ130は、吸引ポンプ74を停止した後、反復回数Nを1だけカウントアップし(N=N+1、S54)、カウントアップした反復回数Nが閾値であるかを判定する(S55)。閾値は、例えば3回のようにコントローラ130のEEPROM134などに予め設定されて記憶されている。
【0209】
コントローラ130は、反復回数Nが閾値でないと判定したことに応じて(S55:No)、キャップ洗浄バルブ72、大気開放バルブ190および補給バルブ187を閉状態にし、パージ遮断バルブ188、バイパスバルブ189、および大気開放バルブ190を開状態にする(S56)。その後、コントローラ130は、吸引ポンプ74を駆動する(S57)。
【0210】
吸引ポンプ74が駆動されると、キャップ62の内部空間67が負圧となり、ノズル38Aを通じて吐出モジュール49からインクがキャップ62の内部空間67へ排出される。これに伴い、流路183,184を通じてインクサブタンク181からインクが吐出モジュール49へ移動して、同様に、ノズル38Aを通じてキャップ62の内部空間67へ排出され、流路178を通じて、インクが廃液タンク77に排出される。なお、キャップ洗浄バルブ72が閉状態なので、洗浄液タンク76からキャップ62へ洗浄液は供給されない。
【0211】
コントローラ130は、インクサブタンク181の液面センサ192の検知信号がOFF信号でないと(S58:No)、吸引ポンプ74の駆動を継続する(S57)。コントローラ130は、液面センサ192の検知信号がOFF信号であると(S58:Yes)、吸引ポンプ74を一定期間だけ駆動した後停止する(S59)。液面センサ192がOFF信号となることにより、インクサブタンク181においてインクの液面が所定の高さ未満となり、さらに吸引ポンプ74が駆動されることにより、インクサブタンク181に貯留されているインクが殆ど廃液タンク77に排出された状態となる。なお、補給バルブ187が閉状態なので、インクタンク34からインクサブタンク181へインクは供給されない。その後、コントローラ130は、ステップS46からステップS55を実行する。
【0212】
コントローラ130は、反復回数Nが閾値であると判定したことに応じて(S55:Yes)、反復回数Nをリセットし、EEPROM134に記憶されている保管フラグをOFFに更新して(S60)、待機状態となる(S61)。これにより復帰処理が終了する。
【0213】
[実施形態における作用効果]
前述された実施形態によれば、被記録媒体において速乾性に優れるインクを保存液に置換する置換性に優れ、また、インクが乾燥した固形乾燥物を再び溶媒に分散させる再分散性に優れる。
【0214】
また、ユーザが任意のタイミングで、吐出モジュール49内のインクを保存液に置換することができる。これにより、ユーザの使用予定に応じて、画像記録装置100を保管状態にすることができる。
【0215】
また、保管処理において、インクサブタンク181内のインクをインクタンク34へ戻すので、保管するときに廃棄されるインクが少ない。また、吐出モジュール49および各流路182,183,184などのインクを保存液に置換することが容易となる。
【0216】
また、保管処理において、保存液タンク11からインクサブタンク181へ保存液を供給する処理と、インクサブタンク181に貯留された保存液を吐出モジュール49との間で循環する処理と、が実行されるので、インクタブタンク181、吐出モジュール49、流路183,184に残存するインクが保存液に分散される。
【0217】
また、保管処理において、吐出モジュール49から保存液が排出される処理と、保存液タンク11からインクサブタンク181へ保存液を供給する処理と、インクサブタンク181に貯留された保存液を吐出モジュール49との間で循環する処理と、が繰り返し実行されるので、インクタブタンク181、吐出モジュール49、流路183,184に残存するインクを保存液に置換する置換率が高くなる。
【0218】
また、保管処理において、保存液がインクサブタンク181から保存液タンク11に戻されないので、インクと混合した保存液が保存液タンク11に戻り、次の保管処理において、保存液タンク11からインクが混合した保存液が使用されることがない。
【0219】
[変形例]
画像記録装置100では、支持台61に3つのキャップ62A,62B,62Cが設けられたが、キャップ62の数は、吐出モジュール49Aの数に対応していれば、特に限定されることはない。例えば、キャップ62の数は、4つ以上でもよく、2つ以下でもよい。また、スポンジワイパ64やゴムワイパ63は必須の構成ではない。
【0220】
画像記録装置100では、メンテナンス機構60は前後方向8に沿って移動するが、メンテナンス機構60の移動は特に限定されない。また、吐出モジュール49がメンテンス機構60に対して移動してもよい。
【0221】
画像記録装置100では、インクタンク34と保存液タンク11とが別であり、装着ケース110に対して交換されていたが、インクタンク34と保存液タンク11とが一体に構成されて装着ケース110に装着されてもよい。
【0222】
なお、保管処理および復帰処理は、ユーザの指示により実行される他、画像記録装置100に対する入力などが一定期間されていないことを条件として実行されてもよい。この場合、復帰処理は、例えば印刷指示コマンドを受け付けたことを条件として実行されてもよい。ただし、画像記録装置100が長期にわたって使用されないときには、電源プラグが抜かれるなどにより画像記録装置100に給電されないことが想定され、給電されないことによりコントローラ130も機能しないことが想定されるので、ユーザの都合により保管処理が実行できると利便性がよい。
【0223】
また、第1排出処理、第2排出処理において、吸引ポンプ74に加え、正圧ポンプ191も駆動してもよい。
【0224】
また、前述された実施形態では、インクが液体の一例として説明されているが、例えば、インクに代えて、印刷時にインクに先立って用紙などに吐出される前処理液や用紙に付着したインクをオーバコートする後処理液であってもよい。また、保存液は、ヘッド38を洗浄するための洗浄液として用いられてもよい。
【実施例
【0225】
以下、本発明の実施例が示される。
【0226】
[顔料分散液A]
顔料(カーボンブラック)20wt%、スチレン-アクリル酸共重合体の水酸化ナトリウム中和物7wt%(酸価175mgKOH/g、重量平均分子量10000)に、純水を加えて全体を100wt%とし、攪拌混合して混合物を得た。この混合物を、0.3mm径ジルコニアビーズを充填した湿式サンドミルに入れて、6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータにより取り除き、孔径3.0μmセルローズアセテートフィルタでろ過することにより、顔料分散液Aを得た。なお、スチレン-アクリル酸共重合体は、一般に顔料の分散液として用いられる水溶性のポリマーである。
【0227】
(実施例1:水性インク)
顔料固形分としてカーボンブラックが5wt%となる顔料分散液A、樹脂微粒子として10.0wt%のモビニール6899D(Tg=49℃、46wt%)、有機溶剤として5.0wt%1,2-ヘキサンジオール(25℃で液体)および2.0wt%のジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(25℃で液体)、界面活性剤として2.0wt%シルフェイスSAG503A、及びイオン交換水を残部として含むものを水性インクとして用いた。
【0228】
(実施例2:水性インク)
有機溶剤として、7.0wt%1,2-ヘキサンジオール(25℃で液体)および3.0wt%のジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(25℃で液体)を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。
【0229】
(実施例3:水性インク)
有機溶剤として、8.0wt%1,2-ヘキサンジオール(25℃で液体)および3.0wt%のジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(25℃で液体)を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。
【0230】
(実施例4:水性インク)
有機溶剤として、5.0wt%1,2-ヘキサンジオール(25℃で液体)および2.0wt%のプロピレングリコールモノブチルエーテル(25℃で液体)を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。
【0231】
(実施例5:水性インク)
有機溶剤として、5.0wt%1,2-ヘキサンジオール(25℃で液体)および2.0wt%のトリエチレングリコールモノブチルエーテル(25℃で液体)を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。
【0232】
(実施例6:水性インク)
樹脂微粒子として、11.0wt%モビニール6969D(Tg=71℃、42wt%)を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。
【0233】
(実施例7:水性インク)
樹脂微粒子として、15.3wt%スーパーフレックス820(Tg=46℃、30wt%)を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。
【0234】
(実施例8:水性インク)
有機溶剤として、7.0wt%1,2-ヘキサンジオール(25℃で液体)、1.0wt%1,6-ヘキサンジオール(25℃で固体)、3.0wt%ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(25℃で液体)を用いたほかは、実施例1と同様の組成とした。
【0235】
(実施例11:保存液)
水溶性ポリマーとして0.2wt%ポリビニルピロリドン(PVP、重量平均分子量10,000)、湿潤剤として40.0wt%グリセリン、有機溶剤として5.0wt%トリエチレングリコールモノブチルエーテル、界面活性剤として3.0wt%のサンノールNL-1430(28wt%)、及びイオン交換水を残部として含むものを保存液として用いた。
【0236】
(実施例12:保存液)
水溶性ポリマーとして0.6wt%ジョンクリル62(重量平均分子量8,500、34wt%)を用いたほかは、実施例11と同様の組成とした。
【0237】
(実施例13:保存液)
水溶性ポリマーとして0.2wt%ポリエチレングリコール20000(重量平均分子量20,000)を用いたほかは、実施例11と同様の組成とした。
【0238】
(実施例14:保存液)
水溶性ポリマーとして0.4wt%ジョンクリル57(重量平均分子量4,900、45wt%)を用いたほかは、実施例11と同様の組成とした。
【0239】
(実施例15:保存液)
水溶性ポリマーとして0.2wt%ポリエチレングリコール35000(重量平均分子量35,000)を用いたほかは、実施例11と同様の組成とした。
【0240】
(実施例16:保存液)
有機溶剤として5.0wt%ジエチレングリコールモノブチルエーテルを用いたほかは、実施例11と同様の組成とした。
【0241】
(実施例17:保存液)
有機溶剤として5.0wt%ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルを用いたほかは、実施例11と同様の組成とした。
【0242】
(実施例18:保存液)
界面活性剤として3.0wt%オルフィンE1010を用いたほかは、実施例11と同様の組成とした。
【0243】
(比較例1:水性インク)
顔料固形分としてカーボンブラックが5wt%となる顔料分散液A、樹脂微粒子は含まず、有機溶剤として5.0wt%1,2-ヘキサンジオール(25℃で液体)および2.0wt%のジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(25℃で液体)、界面活性剤として2.0wt%シルフェイスSAG002、及びイオン交換水を残部として含むものを水性インクとして用いた。
【0244】
(比較例2:水性インク)
顔料固形分としてカーボンブラックが5wt%となる顔料分散液A、樹脂微粒子として10.0wt%のモビニール6899D(Tg=49℃)、有機溶剤を含まず、界面活性剤として2.0wt%シルフェイスSAG002、及びイオン交換水を残部として含むものを水性インクとして用いた。
【0245】
(比較例11:保存液)
水溶性ポリマーを含まず、湿潤剤として40.0wt%グリセリン、有機溶剤として5.0wt%トリエチレングリコールモノブチルエーテル、界面活性剤として3.0wt%のサンノールNL-1430、及びイオン交換水を残部として含むものを保存液として用いた。
【0246】
(比較例12:保存液)
水溶性ポリマーとして0.2wt%ポリビニルピロリドン(PVP、重量平均分子量10,000)、湿潤剤として40.0wt%グリセリン、有機溶剤として5.0wt%トリエチレングリコールモノブチルエーテル、界面活性剤を含まず、及びイオン交換水を残部として含むものを保存液として用いた。
【0247】
[印刷方法]
以下では、画像記録装置100及び水性インクを用いてコート紙に水性インクを吐出し、ヒータにより加熱することにより、コート紙に水性インクによる膜を形成した。
【0248】
[速乾性試験]
水性インクによる膜を形成したコート紙を綿棒で擦って汚れを以下の評価基準で目視判定した。
A:加熱直後に擦ったときに汚れがない
B:加熱後2秒経過してから擦ったときに汚れがない
C:加熱後5秒経過してから擦ったときに汚れがない
D:加熱後10秒経過してから擦ったときに汚れがある
【0249】
[再分散性試験]
水性インクと保存液とを、割合10:90または割合5:95で混合し、ポリプロピレン製の平板に12μL滴下して、温度60℃、湿度30%の環境下に7日間放置した。放置後に、凝集した混合液に純水を20mL滴下して手動で振動を与えた上で、以下の評価基準で目視判定した。
A:倍率200倍の光学顕微鏡で観察して液体中に乾燥固形物がない
B:目視観察において液体中に乾燥固形物がない
C:目視観察において液体中に乾燥固形物全体の5割以上が純水滴下後に分散しているD:目視観察において液体中に乾燥固形物全体の5割未満が純水滴下後に分散している
【0250】
[置換性試験]
画像記録装置100にインクタンク34を装着して画像記録を行った状態とした。その画像記録装置100において保存液を用いて保管処理(反復回数1回)を実行し、実行後におけるインクサブタンク181内の液体の置換率を測定した。置換率は、置換後の液体の吸光度(500nm)を、吸光光度計(島津製作所、UV-3600)用いて測定し、水性インク単体の吸光度に対する割合(1-置換後の液体の吸光度/水性インク単体の吸光度)として算出した。
A:置換率が9割以上であった
B:置換率が9割未満8割以上であった
【0251】
[速乾性試験結果]
実施例1-8及び比較例1-2の速乾性試験結果を表1に示す。表1に示されるように、比較例1-2の評価がDであるのに対して、実施例1-8は評価がA~Cであり、実施例1-8の水性インクの速乾性が優れていることがわかる。水性インクに含まれるアクリル系の樹脂微粒子は、ウレタン系などの他の樹脂微粒子と比較して速乾性に優れ、また、保存安定性が高く、さらに膜の硬度が高いので耐擦性が高い。
【0252】
また、有機溶剤としてプロピレンオキサイド基を有するグリコールエーテルを含む実施例1-4,6-8が、有機溶剤がプロピレンオキサイド基を有するグリコールエーテルを含まない実施例5よりも速乾性に優れた。水性インクが含むプロピレンオキサイド基を有するグリコールエーテルは、樹脂微粒子の増膜助剤効果があることから速乾性に優れると考えられる。さらに、25℃において液体である有機溶剤が全量に対して占める割合が10%以下である実施例1,2,4,6-8の速乾性が特に優れていた。水性インクが紙面に定着する際に、液体成分が多いと水性インクの流動性がなくなるまで時間を要するので、速乾性が悪くなると考えられる。
【0253】
【表1】
【0254】
[再分散試験結果]
実施例11-18および比較例3-4の組成および粘度が表2に示される。再分散試験結果および置換性試験が表3に示される。実施例1の水性インクに対する再分散性は、比較例11-12が評価Dであるのに対して、実施例11-18は評価がA~Cであり、実施例11-18の保存液が再分散性に優れていることがわかる。また、実施例4,5,7の水性インクに対して実施例11の保存液を用いても評価がA~Cと優れていた。また、アニオン性界面活性剤であるサンノールNL-1430を含む実施例11-17が、ノニオン性界面活性剤であるオルフィンE1010を含む実施例18と比較して優れていた。流路内やヘッド内において、残留した水性インクと保存液との混合液が固まった乾燥固形物を水に再分散させる際、電荷を有する界面活性剤は、乾燥固形物等の粒子に吸着した際に粒子間の水中での相互反発力を高め、乾燥固形物を再分散させやすいと考えられる。
【0255】
また、重量平均分子量8500~20000の水溶性ポリマーを含む実施例11-13が、重量平均分子量が8500~20000の範囲外である水溶性ポリマーを含む実施例14、15と比較して優れていた。流路内やヘッド内において、残留した水性インクと保存液との混合液が乾燥する際に、溶媒量が減るにつれて水性インク中の顔料粒子の粒子間距離が接近していく。水溶性ポリマーは、接近する顔料粒子間において立体障害物となるので、再分散性を向上するものと考えられる。また、芳香族やラクタムなどの嵩高い構造をもつ水溶性ポリマーの方が、立体障害物として機能しやすいと考えられる。また、水溶性ポリマーの分子量が小さければ立体障害物として機能し難くなり、一方、分子量が大きければ乾燥後に溶媒に再溶解し難くなると考えられる。
【0256】
また、有機溶剤としてエチレンオキサイド基を有するグリコールエーテルを含む実施例11-16,18が、有機溶剤がエチレンオキサイド基を有するグリコールエーテルを含まない実施例17よりも再分散性に優れていた。エチレンオキサイド基を有するグリコールエーテルを含む有機溶剤は水溶性が高いので、乾燥固形物や顔料、樹脂微粒子などの疎水性が高い物質を、水に再溶解または再分散させるための助剤の役割を果たすと考えられる。
【0257】
【表2】
【0258】
【表3】
【0259】
[置換性試験]
表3に示されるように、実施例1の水性インクに対する置換性は、実施例11-18の保存液、および比較例3-4の保存液ともに優れていた。ただし、実施例1の水性インクの粘度より粘度が大きい実施例15の保存液の置換性は評価Bであり、他の実施例および比較例よりも評価が劣った。粘度が異なる液体(水性インクと保存液)が接した際に、粘度が低い液体が粘度が高い液体中へ移動しながら混合されると考えられる。水性インクを保存液に置換する際に、流路内やヘッド内の細部に水性インクが残ると、残った水性インクが固まるおそれがある。したがって、流路内やヘッド内の細部においても水性インクが保存液に置換されることが望まれるので、保存液の粘度が水性インクの粘度より低い方が置換性がよくなるものと考えられる。また、保存液の粘度が低いほど、キャップ62より下流側の流路における水性インクが廃液タンク77へ流れやすい。
【符号の説明】
【0260】
11・・・保存液タンク(保存液カートリッジ)
21・・・排出流路(第4流路)
34・・・インクタンク(液体カートリッジ)
38A・・・ノズル
49・・・吐出モジュール(ヘッド)
60・・・メンテナンス機構(排出機構)
62・・・キャップ
100・・・画像記録装置(液体排出装置)
110・・・装着ケース(カートリッジ装着部)
130・・・コントローラ
134・・・EEPROM(メモリ)
181・・・インクサブタンク(タンク)
182・・・流路(第1流路)
183・・・流路(第2流路)
184・・・流路(第3流路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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