(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電気自動車
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B60L15/20 K
(21)【出願番号】P 2023044466
(22)【出願日】2023-03-20
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勇 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】水谷 賢治
(72)【発明者】
【氏名】池上 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】安江 昭人
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-036824(JP,A)
【文献】特開2002-250636(JP,A)
【文献】特開2014-170390(JP,A)
【文献】特開2006-313002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸に連結された駆動軸にトルクを出力するモータと、
走行に要求される要求トルクが前記駆動軸に出力されるように前記モータを制御するモータ走行モードと、運転者のシフト操作に基づいて前記駆動軸に出力されるトルクがエンジンと有段変速機とを備えるエンジン車におけるトルクの挙動を模擬した模擬トルクとなるように前記モータを制御する変速走行モードと、を含む複数の走行モードから1つの前記走行モードを前記運転者の操作により選択するモード選択装置と、
前記モード選択装置により選択された前記走行モードで走行するように前記モータを制御する制御装置と、
を備える電気自動車であって、
前記制御装置は、前記変速走行モードが選択されている場合において、走行中は、前記模擬トルクの変更を禁止する
電気自動車。
【請求項2】
請求項1記載の電気自動車であって、
前記制御装置は、前記変速走行モードが選択されている場合において、シフトポジションが駐車レンジのときには、前記模擬トルクの変更を許可する
を備える電気自動車。
【請求項3】
請求項1記載の電気自動車であって、
前記制御装置は、前記変速走行モードが選択されている場合において、パーキングブレーキが作動しているときには、前記模擬トルクの変更を許可する
を備える電気自動車。
【請求項4】
請求項1記載の電気自動車であって、
情報を表示する表示装置
を備え、
前記制御装置は、前記変速走行モードが選択されている場合において、前記模擬トルクの変更指示を受け付ける変更受付画面を前記表示装置に表示し、走行中は、前記変更受付画面での受付を禁止する
電気自動車。
【請求項5】
請求項1記載の電気自動車であって、
情報を表示する表示装置
を備え、
前記制御装置は、前記変速走行モードが選択されている場合において、停車中は、前記模擬トルクの挙動の変更指示を受け付ける変更受付画面を前記表示装置に表示し、走行中は、前記変更受付画面を前記表示装置に表示しない
電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気自動車としては、車軸に連結された駆動軸に動力を出力するモータと、運転者の操作により、モータ走行モードと変速走行モードとを含む複数の走行モードから1つの走行モードを選択するモード選択装置と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。モータ走行モードは、走行に要求される要求トルクが駆動軸に出力されるように前記モータを制御する走行モードである。変速走行モードは、運転者のシフト操作に基づいて駆動軸に出力されるトルクがエンジンと有段変速機とを備えるエンジン車におけるトルクの挙動を模擬した模擬トルクとなるようにモータを制御する走行モードである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の電気自動車では、変速走行モードが選択されているときに、模擬トルクを変更することで、異なるエンジン車におけるトルクの挙動を模擬した走行が可能となる。しかし、模擬トルクを変更する際に、駆動軸に出力されるトルクが変動して、車両の挙動が急変することがある。
【0005】
本発明の電気自動車は、車両の挙動の急変を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電気自動車は、
車軸に連結された駆動軸にトルクを出力するモータと、
走行に要求される要求トルクが前記駆動軸に出力されるように前記モータを制御するモータ走行モードと、運転者のシフト操作に基づいて前記駆動軸に出力されるトルクがエンジンと有段変速機とを備えるエンジン車におけるトルクの挙動を模擬した模擬トルクとなるように前記モータを制御する変速走行モードと、を含む複数の走行モードから1つの前記走行モードを前記運転者の操作により選択するモード選択装置と、
前記モード選択装置により選択された前記走行モードで走行するように前記モータを制御する制御装置と、
を備える電気自動車であって、
前記制御装置は、前記変速走行モードが選択されている場合において、走行中は、前記模擬トルクの変更を禁止する
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の電気自動車では、変速走行モードが選択されている場合において、走行中は、模擬トルクの変更を禁止する。模擬トルクを変更する際に、駆動軸に出力されるトルクが変動することがある。走行中にこうしたトルク変動が発生すると、車両の挙動が急変することがあるが、走行中は、模擬トルクの変更を禁止することにより、車両の挙動の急変を抑制できる。
【0009】
こうした本発明の電気自動車において、 前記制御装置は、前記変速走行モードが選択されている場合において、シフトポジションが駐車レンジのときには、前記模擬トルクの変更を許可してもよいし、前記変速走行モードが選択されている場合においてパーキングブレーキが作動しているときには、前記模擬トルクの変更を許可してもよい。こうすれば、確実に停車しているときに模擬トルクの変更を許可するから、車両の挙動を急変させることなくて、模擬トルクを変更できる。
【0010】
また、本発明の電気自動車において、情報を表示する表示装置を備え、前記制御装置は、前記変速走行モードが選択されている場合において、前記模擬トルクの変更指示を受け付ける変更受付画面を前記表示装置に表示し、走行中は、前記変更受付画面での受付を禁止してもよい。これにより、走行中の変更の受付を行なわないから、車両の挙動の急変を抑制できる。
【0011】
さらに、本発明の電気自動車において、情報を表示する表示装置を備え、前記制御装置は、前記変速走行モードが選択されている場合において、停車中は、前記模擬トルクの挙動の変更指示を受け付ける変更受付画面を前記表示装置に表示し、走行中は、前記変更受付画面を前記表示装置に表示しないものとしてもよい。こうすれば、走行中の変更の受付を行なわないから、車両の挙動の急変を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【
図2】ECU50により実行される変更許否ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図3】ディスプレイ42により表示される変更受付画面S1の一例を示す説明図である。
【
図4】ディスプレイ42により表示されるマニュアルモード設定画面S2の一例を示す説明図である。
【
図5】ディスプレイ42により表示されるエンジン特性設定画面S3の一例を示す説明図である。
【
図6】変速走行モードで走行中にディスプレイ42により表示されるマニュアルモード設定画面S2の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例としての電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。図示するように、実施例の電気自動車20は、走行用のモータ32と、インバータ34と、バッテリ36と、ディスプレイ42と、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)50と、を備える。
【0015】
モータ32は、三相交流電動機として構成されており、回転子コアに永久磁石が埋め込まれた回転子と、固定子コアに三相コイルが巻回された固定子とを備える。モータ32の回転子は、駆動輪22a,22bにデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸26に接続されている。駆動軸26には、パーキングブレーキ27が取り付けられている。
【0016】
インバータ34は、モータ32の駆動に用いられる。インバータ34は、電力ライン38を介してバッテリ36に接続されており、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT11~T16と、6つのトランジスタT11~T16のそれぞれに並列に接続された6つのダイオードD11~D16とを有する。トランジスタT11~T16は、それぞれ、電力ライン38の正極側ラインと負極側ラインとに対してソース側とシンク側になるように2つずつペアで配置されている。各ペアの2つのトランジスタの接続点は、それぞれ、モータ32の対応する相(U相、V相、W相)のコイルに接続されている。したがって、インバータ34に電圧が作用しているときに、ECU50によって、対となるトランジスタT11~T16のオン時間の割合が調節されることにより、三相コイルに回転磁界が形成され、モータ32が回転駆動される。
【0017】
バッテリ36は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、電力ライン38を介してインバータ34に接続されている。電力ライン38には、平滑用のコンデンサ39が取り付けられている。
【0018】
ディスプレイ42は、運転席の近傍に設置されている。ディスプレイ42は、各種情報を視認可能に表示するタッチパネル式の表示装置として構成されている。ディスプレイ42は、ECU50により制御されている。
【0019】
ECU50は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポートを有するマイクロコンピュータを備える。ECU50は、回転位置センサ32aからのモータ32の回転子の回転位置θm、電流センサ32u,32vからのモータ32のU相、V相の相電流Iu,Iv、電圧センサ36aからのバッテリ36の電圧Vb、電流センサ36bからのバッテリ36の電流Ib、電圧センサ39aからの電力ライン38(コンデンサ39)の電圧VLを入力する。スタートスイッチ60からのスタート信号、シフトポジションセンサ62からのシフトレバー61の操作位置であるシフトポジションSP、アクセルペダルセンサ64からのアクセルペダル63の踏込量であるアクセル開度Acc、ブレーキペダルセンサ66からのブレーキペダル65の踏込量であるブレーキペダルポジションBPも入力する。車速センサ67からの車速V、モード切替スイッチ68からのスイッチ信号、クラッチペダルセンサ71からのクラッチペダル(疑似クラッチペダル)70の踏込量Daも入力する。シフトレバー61は、手動変速機を搭載した車両が備えるシフト装置を模擬した構成となっている。シフトレバー61は、シフトポジションSPとして、模擬する手動変速機の変速段に対応する複数のシフトレンジ、例えば、模擬する1速レンジ~6速レンジおよびニュートラルレンジ、のうち1つのレンジを選択できる。モード切替スイッチ68は、オンされる毎に、モータ走行モードと変速走行モードとを切り替えるモード切替指示を出力する。モータ走行モード、変速走行モードについては後述する。パーキングスイッチ69は、シフトポジションSPを駐車レンジにするためのスイッチである。パーキングスイッチ69は、オンされる毎に、シフトポジションSPを駐車レンジとしたり、駐車レンジを解除する。クラッチペダル70は、模擬するエンジン車に搭載されるクラッチペダルを模擬した構成となっている。クラッチペダル70は、配置や操作感が、手動変速機を搭載した車両のクラッチペダルと同様に構成されている。ECU50からは、モータ32への制御信号やディスプレイ42への表示信号などが出力されている。
【0020】
実施例の電気自動車20では、ECU50は、走行に要求される走行要求トルクTd*をモータ32から出力して走行するモータ走行モードや、運転者のシフトレバー61の操作に基づいてモータ32から出力されるトルクの挙動をエンジンと有段変速機としての手動変速機とを備えるエンジン車におけるトルクの挙動として走行する変速走行モードで走行するように、モータ32(インバータ34)を制御する。
【0021】
モータ走行モードでは、シフトポジションSPやクラッチペダル70の踏込量Daによらず、走行に要求される(駆動軸26に要求される)走行要求トルクTd*をモータ32のトルク指令Tm*に設定し、モータ32がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ34のトランジスタT11~T16を制御する。ここで、走行要求トルクTd*は、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて設定される。こうして走行に要求される走行要求トルクTd*が駆動軸26に出力されるようにモータ32を制御することにより、走行要求トルクTd*をモータ32から出力して走行する。
【0022】
変速走行モードでは、駆動軸26の回転数Np(モータ32の回転数Nm)と、シフトポジションSPに対応するギヤ比(変速比)rと、クラッチペダル70の踏込量Daに基づくクラッチペダル70のスリップ率slipを用いて、模擬するエンジン車におけるエンジン回転数としての仮想エンジン回転数Neを設定し、アクセル開度Accと仮想エンジン回転数Neとに基づいて模擬するエンジン車のエンジンから出力される仮想エンジン出力トルクTeoutを設定する。クラッチペダル70のスリップ率slipに基づいてエンジンから手動変速機へのトルクの伝達率であるトルク伝達ゲインkに仮想エンジン出力トルクTeoutを乗じて、変速機入力トルクTmtinを算出する。トルク伝達ゲインkは、クラッチペダル70の踏込量Daが大きいときには小さいときに比して小さく設定され、クラッチペダル70の踏込量Daがエンジンと手動変速機との間でのトルク伝達ゲインkが値0となる最大踏込量のときには値0になるように設定される。そして、変速機入力トルクTmtinにシフトポジションSPに対応するギヤ比(変速比)rを乗じて変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutを算出し、変速機出力トルクTmtoutをモータ32のトルク指令Tm*に設定して、モータ32がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ34のトランジスタT11~T16を制御する。このように、運転者のシフトレバー61の操作に基づいて駆動軸26に出力されるトルクがエンジンと有段変速機とを備えるエンジン車におけるトルクの挙動を模擬した変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtouとなるようにモータ32を制御することにより、運転者のシフトレバー61の操作に基づいてモータ32から出力されるトルクの挙動をエンジンと手動変速機とを備えるエンジン車におけるトルクの挙動とすることが可能になる。即ち、エンジンと手動変速機とを備えるエンジン車を模擬した走行が可能となり、エンジンと手動変速機とを備えるエンジン車を運転しているかのような操作感を演出できる。また、変速走行モードでは、ECU50は、予め録音されているエンジンの回転数毎のエンジン音から仮想エンジン回転数Neに連動したサウンド(エンジン音)が出力されるように図示しないスピーカを制御する。こうしたスピーカからのサウンドにより、あたかもエンジンと手動変速機とを備えるエンジン車を運転しているかのような操作感を演出している。
【0023】
次に、こうして構成された実施例の電気自動車20の動作、特に、変速走行モードにおいて変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutを変更する際の動作について説明する。
図2は、ECU50により実行される変更許否ルーチンの一例を示すフローチャートである。本ルーチンは、モード切替スイッチ68で変速走行モードが選択されたときに、所定時間毎(例えば、数msec毎など)に実行される。
【0024】
本ルーチンが実行されると、ECU50のCPUは、変更受付画面S1をディスプレイ42に表示する処理を実行する(ステップS100)。
図3は、ディスプレイ42により表示される変更受付画面S1の一例を示す説明図である。変更受付画面S1は、乗員による変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更指示を受け付けるための画面である。変更受付画面S1は、変速走行モードが選択されているときにディスプレイ42に表示される。変更受付画面S1では、
図3に示すように、マニュアルモード設定ボタンB1など乗員が選択可能な複数のボタンが表示されている。
【0025】
続いて、走行中であるか否かを判定する(ステップS110)。走行中でないときには、パーキングスイッチ69がシフトポジションSPを駐車レンジにしているか否かとパーキングブレーキ27が作動しているか否かを判定する(ステップS120)。シフトポジションSPを駐車レンジであるか、または、パーキングブレーキ27が作動しているときには、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を許可して(ステップS130)、本ルーチンを終了する。
【0026】
図4は、ディスプレイ42により表示されるマニュアルモード設定画面S2の一例を示す説明図である。
図5は、ディスプレイ42により表示されるエンジン特性設定画面S3の一例を示す説明図である。ECU50は、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を許可したときには、乗員により変更受付画面S1のマニュアルモード設定ボタンB1が選択されると、変更受付画面S1に代えて、
図4に示すマニュアルモード設定画面S2が表示される。マニュアルモード設定画面S2では、変速走行モードで模擬するエンジンのトルク特性を設定するのエンジン設定ボタンB20、模擬する手動変速機を設定するためのトランスミッション設定ボタンB21、模擬するエンジン音を選択するためのサウンド設定ボタンB22、エンジンと手動変速機とを備える複数の車種から1つの車種を選択するためのセット設定ボタン23が表示されている。
【0027】
マニュアルモード設定画面S2で乗員によりエンジン設定ボタンB20が選択されると、マニュアルモード設定画面S2に代えて、
図5に示すエンジン特性設定画面S3が表示される。エンジン特性設定画面S3には、横軸をエンジン回転数としたトルク特性と出力特性を示したエンジン性能曲線が表示された性能表示画面S30と、エンジン性能曲線において最大出力、最大トルク、最高回転数を入力するための入力ボタンB30、B31、B32とが表示されている。入力ボタンBb0、B31、B32により最大出力、最大トルク、最高回転数が入力されると、入力された数値に応じて性能表示画面S30に表示されるエンジン性能曲線が変更される。変速走行モードでは、模擬するエンジンの性能曲線を性能表示画面S30で表示されるエンジン性能曲線として、アクセル開度Accと仮想エンジン回転数Neとに基づいて模擬するエンジン車のエンジンから出力される仮想エンジン出力トルクTeoutを設定する。このように、ディスプレイ42に表示される画面により、模擬するエンジン車のエンジンのトルク特性を変更できる。これにより、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutを変更できる。
【0028】
マニュアルモード設定画面S2で乗員によりトランスミッション設定ボタンB21が選択されると、マニュアルモード設定画面S2に代えて、図示しないトランスミッション特性設定画面が表示される。トランスミッション特性設定画面には、横軸を車速(速度)として駆動力特性とエンジンの回転数特性を示した変速特性曲線が表示された性能表示画面と、各変速段の変速比を入力するための入力ボタンとが表示されている。入力ボタンにより、各変速段の変速比が入力されると、入力された数値に各変速段の変速比を変更すると共に、入力された数値に応じて変速特性曲線が変更される。変速走行モードでは、模擬する手動変速機の変速特性曲線の性能表示画面とで表示される変速特性曲線として、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutを算出する。このように、ディスプレイ42に表示される画面により、模擬するエンジン車のトランスミッションの特性を変更できる。これにより、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutを変更できる。
【0029】
マニュアルモード設定画面S2で乗員によりサウンド設定ボタンB22が選択されると、マニュアルモード設定画面S2に代えて、図示しないサウンド設定画面が表示される。このサウンド設定画面で、エンジン音の音量を変更できる。
【0030】
マニュアルモード設定画面S2で乗員によりセット設定ボタンB23が選択されると、マニュアルモード設定画面S2に代えて、図示しない模擬車両設定画面が表示される。この模擬車両設定画面で、既存の車両から変速走行モードで模擬するエンジン車を変更できる。これにより、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutを変更できる。
【0031】
このように、変速走行モードで停車中であって、シフトポジションSPが駐車レンジであるか、または、パーキングブレーキ27が作動しているときに、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutを許可して変更受付画面S1での変更を受け付けることにより、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutやサウンドを変更できる。シフトポジションSPが駐車レンジのときやパーキングブレーキ27が作動しているときには、電気自動車20が確実に停車しているから、車両の挙動を急変させることなくを変更できる。
【0032】
ステップS110で電気自動車20が走行中のときや、ステップS110で停車中であってもステップS120でシフトポジションSPが駐車レンジでなく、且つ、パーキングブレーキ27が作動していないときには、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を禁止して(ステップS140)、本ルーチンを終了する。この場合、ディスプレイ41に表示されている変更受付画面S1において、マニュアルモード設定ボタンB1が選択されても、表示が変更されず、変更受付画面S1の表示が維持されて、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutやサウンドを変更できない。このように、変速走行モードでの走行中や、停車中であってもシフトポジションSPが駐車レンジでなく、且つ、パーキングブレーキ27が作動していないときには、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を禁止すると共にサウンドの変更を禁止することにより、走行中や確実に停車していないときの車両の挙動の急変を抑制できる。
【0033】
以上説明した実施例の電気自動車20では、変速走行モードが選択されている場合において、走行中は、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を禁止することにより、車両の挙動の急変を抑制できる。
【0034】
また、実施例の電気自動車20では、変速走行モードが選択されている場合において、停車中、且つ、シフトポジションSPが駐車レンジのときまたはパーキングブレーキ27が作動しているときには、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を許可することにより、車両の挙動を急変させることなくて、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutを変更できる。
【0035】
さらに、実施例の電気自動車20では、変速走行モードが選択されている場合において、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更指示を受け付ける変更受付画面S1をディスプレイ42に表示し、走行中は、変更受付画面S1での受付を禁止することにより、車両の挙動の急変を抑制できる。
【0036】
実施例の電気自動車20では、変速走行モードが選択されている場合において、走行中は、変更受付画面S1での受付を禁止することにより、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を禁止している。しかし、ディスプレイ41に表示されている変更受付画面S1において、マニュアルモード設定ボタンB1が選択されると、変更受付画面S1に代えてマニュアルモード設定画面S2を表示し、
図6に示すように、マニュアルモード設定画面S2において、エンジン設定ボタンB20やトランスミッション設定ボタンB21、サウンド設定ボタンB22、セット設定ボタン23をグレーにする(図中、ハッチングを施している)と共に各ボタンを選択できないようにすることで、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を禁止してもよい。
【0037】
実施例の電気自動車20では、変速走行モードが選択されている場合において、走行中であるか否かに拘わらず、変更受付画面S1をディスプレイ42に表示しているが、走行中は、変更受付画面S1をディスプレイ42に表示しないものとしてもよい。
【0038】
実施例の電気自動車20では、ディスプレイ42をタッチパネル式の表示装置とし、変速走行モードが選択されている場合において、変更受付画面S1、マニュアルモード設定画面S2における各選択や、エンジン特性設定画面S3やトランスミッション特性設定画面、サウンド設定画面、模擬車両設定画面における各変更を乗員がディスプレイ42上で選択することに行なっている。しかし、変更受付画面S1、マニュアルモード設定画面S2における各選択や、エンジン特性設定画面S3やトランスミッション特性設定画面、サウンド設定画面、模擬車両設定画面における各変更を乗員が携帯しECU50と通信可能な携帯端末で行なってもよい。この場合、走行中は、携帯端末からの指示を受け付けないことにより、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を禁止すればよい。
【0039】
実施例の電気自動車20では、変速走行モードが選択されている場合において、停車中、且つ、駐車レンジのときまたはパーキングブレーキ27が作動しているときには、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を許可している。しかし、停車中であるか否かは考慮せずに、駐車レンジのときまたはパーキングブレーキ27が作動しているときには、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を許可してもよいし、駐車レンジおよびパーキングブレーキ27の作動の一方のみに基づいて変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を許可してもよい。また、駐車レンジやパーキングブレーキ27の作動に拘わらず、停車中は、変速機出力トルク(模擬トルク)Tmtoutの変更を許可してもよい。
【0040】
実施例の電気自動車20では、シフトポジションSPを、運転者のシフトレバー61の操作により変更している。しかし、ステアリング近傍に配置された2つのパドルスイッチを備え、パドルスイッチからのパドル信号に基づいてアップシフトまたはダウンシフトすることでシフトポジションSPを変更する場合にも、本発明を適用することができる。
【0041】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ32が「モータ」に相当し、モード切替スイッチ68が「モード選択装置」に相当し、ECU50が「制御装置」に相当する。
【0042】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0043】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、電気自動車の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
20 電気自動車、22a,22b 駆動輪、27 パーキングブレーキ、32 モータ、34 インバータ、36 バッテリ、42 ディスプレイ、50 電子制御ユニット(ECU)、68 モード切替スイッチ、69 パーキングスイッチ。
【要約】
【課題】車両の挙動の急変を抑制する。
【解決手段】走行に要求される要求トルクが駆動軸に出力されるようにモータを制御するモータ走行モードと、運転者のシフト操作に基づいて駆動軸に出力されるトルクがエンジンと有段変速機とを備えるエンジン車におけるトルクの挙動を模擬した模擬トルクとなるようにモータを制御する変速走行モードと、を含む複数の走行モードから1つの走行モードを運転者の操作により選択するモード選択装置と、モード選択装置により選択された走行モードで走行するようにモータを制御する制御装置と、を備える電気自動車であって、制御装置は、変速走行モードが選択されている場合において、走行中は、模擬トルクの変更を禁止する。
【選択図】
図2