(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
A63H 11/00 20060101AFI20240730BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A63H11/00 Z
B25J13/00 Z
(21)【出願番号】P 2023125437
(22)【出願日】2023-08-01
(62)【分割の表示】P 2020518993の分割
【原出願日】2019-02-25
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2018093670
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 邦在
(72)【発明者】
【氏名】中井 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】工藤 祐介
【審査官】鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-015435(JP,A)
【文献】特開2005-022065(JP,A)
【文献】特開2014-186421(JP,A)
【文献】特開2001-242892(JP,A)
【文献】特開2017-213112(JP,A)
【文献】国際公開第2009/107185(WO,A1)
【文献】特開2005-193330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0099693(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0150099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 11/00
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センシング情報に基づいて認識された外部環境の認識の難易度、及び、前記外部環境に基づいて行動を決定する際の前記行動の決定の難易度に基づいて、情動表現を行うか否かを判断する振舞管理部と、
前記振舞管理部の判断に基づいて、前記外部環境に基づいて決定された行動に対する前記情動表現に対応する行動の付加の実行を制御する駆動制御部と、
を備え、
前記駆動制御部は、ロボット装置の行動の実行を制御し、
前記振舞管理部は、さらに、ユーザからの前記ロボット装置への注目度に基づいて、前記情動表現を行うか否かを判断する、
制御装置。
【請求項2】
前記振舞管理部は、
前記センシング情報を取得するセンサの数若しくは種類、前記外部環境の複雑性、前記認識のアルゴリズム、及び、前記認識の結果の信頼性若しくは要求精度のうちの少なくとも1つ以上に基づいて、前記認識の難易度が高いと判断される場合、前記情動表現を行うことを判断する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記振舞管理部は、
取り得る前記行動の選択肢の数、優劣若しくは履歴の有無、及び、前記行動の決定の際の制約条件の数のうちの少なくとも1つ以上に基づいて、前記行動の決定の難易度が高いと判断される場合、前記情動表現を行うことを判断する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記行動を前記認識された前記外部環境に基づいて決定する行動決定管理部をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記情動表現は、前記行動決定管理部にて決定された前記行動の消費電力を増加させる表現である、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記情動表現は、前記行動決定管理部にて決定された前記行動の効率性を低下させる表現である、請求項4に記載の制御装置。
【請求項7】
前記情動表現に対応する行動は、前記外部環境に基づいて決定された行動を、慎重、不安定又は大げさに実行することである、請求項1~6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記情動表現は、慎重にゆっくり動く、一時停止を繰り返しながら動く、障害物から離れて大回りして移動する、及び、音を立てて大げさに動く、のうちの1つである、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記振舞管理部は、前記ユーザから前記ロボット装置への注目度が高いと判断される場合、前記情動表現を行うことを判断する、請求項1~8のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記ユーザから前記ロボット装置への注目度は、前記ユーザの画像に対する画像認識、前記ユーザの音声に対する音声認識若しくは文脈認識、及び、前記ユーザからの入力のうちの少なくとも1つ以上に基づいて判断される、請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記振舞管理部は、前記ユーザの属性にさらに基づいて、前記情動表現を行うか否かを判断する、請求項1~10のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記外部環境の認識の難易度、及び、前記外部環境に基づいて行動を決定する際の前記行動の決定の難易度の判断基準は、前記ユーザの属性に基づいて変更される、請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
前記センシング情報は、前記ロボット装置に備えられるセンサ部によって取得される、請求項1~12のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項14】
演算装置によって、
センシング情報に基づいて認識された外部環境の認識の難易度、及び、前記外部環境に基づいて行動を決定する際の前記行動の決定の難易度に基づいて、情動表現を行うか否かを判断することと、
前記判断に基づいて、前記外部環境に基づいて決定された行動に対する前記情動表現に対応する行動の付加の実行を制御することと、
を含む、制御方法であって、
前記制御において、ロボット装置の行動の実行を制御し、
前記判断において、さらに、ユーザからの前記ロボット装置への注目度に基づいて、前記情動表現を行うか否かを判断する、
ことを含む、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気的又は磁気的な作用を用いて生物の動作を模倣する機械装置であるロボット装置が広く普及している。例えば、工場における生産作業の自動化等を目的としたマニュピュレータロボット装置又は搬送ロボット装置等が広く普及している。
【0003】
一方で、住環境その他の日常生活上の様々な場面において、人間のパートナーとして人的活動を支援する実用ロボット装置の開発が進められている。このような実用ロボット装置は、一定の動作を繰り返す産業用ロボット装置とは異なり、人間の生活環境の様々な局面に対して柔軟に適応する能力を備えることが求められる。
【0004】
このような実用ロボット装置としては、例えば、犬又は猫等の四足歩行を行う動物の身体メカニズムを模倣したペット型ロボット装置、又は二足直立歩行を行う人間の身体メカニズムを模倣した人間型ロボット装置等がすでに実用化されつつある。エンターテイメント性を重視した様々な動作を行うこれらのロボット装置は、特にエンターテイメントロボットとも称される。
【0005】
ここで、エンターテイメントロボットでは、エンターテイメント性をより高めるために、ユーザを飽きさせず、かつユーザからの興味を高めるような動作をすることが求められる。例えば、下記の特許文献1には、ロボット装置の動きのベクトルに、ユーザ等の他の動作主体の動きのベクトルを混合させて不規則なベクトルの動きを生成することで、ロボット装置に繰り返しの少ないランダムな動きを実行させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された技術では、ロボット装置にランダムな動きを実行させることが可能であるが、ロボット装置に特定の意味を持った動きを実行させることは困難であった。具体的には、特許文献1に開示された技術では、ユーザに対してロボット装置への愛着を抱かせるような、ロボット装置の情動、個性又は思考を示す動作を実行させることは困難であった。
【0008】
そこで、ロボット装置への愛着をユーザに抱かせる動作をより効果的にロボット装置に実行させる技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示によれば、センシング情報に基づいて認識された外部環境の認識の難易度、及び、前記外部環境に基づいて行動を決定する際の前記行動の決定の難易度に基づいて、情動表現を行うか否かを判断する振舞管理部と、前記振舞管理部の判断に基づいて、前記外部環境に基づいて決定された行動に対する前記情動表現に対応する行動の付加の実行を制御する駆動制御部と、を備え、前記駆動制御部は、ロボット装置の行動の実行を制御し、前記振舞管理部は、さらに、ユーザからの前記ロボット装置への注目度に基づいて、前記情動表現を行うか否かを判断する、制御装置が提供される。
【0010】
また、本開示によれば、演算装置によって、センシング情報に基づいて認識された外部環境の認識の難易度、及び、前記外部環境に基づいて行動を決定する際の前記行動の決定の難易度に基づいて、情動表現を行うか否かを判断することと、前記判断に基づいて、前記外部環境に基づいて決定された行動に対する前記情動表現に対応する行動の付加の実行を制御することと、を含む、制御方法であって、前記制御において、ロボット装置の行動の実行を制御し、前記判断において、さらに、ユーザからの前記ロボット装置への注目度に基づいて、前記情動表現を行うか否かを判断する、ことを含む、制御方法が提供される。
【0011】
さらに、本開示によれば、コンピュータを、センシング情報に基づいて外部環境を認識する認識部と、認識された外部環境に基づいて、実行される行動を決定する行動決定管理部と、前記認識部による認識の難易度、又は前記行動決定管理部による行動決定の難易度の少なくとも1つ以上に基づいて、情動表現を行うか否かを判断する振舞管理部と、前記振舞管理部の判断に基づいて、前記情動表現に対応する行動の実行を制御する駆動制御部と、として機能させる、プログラムが提供される。
【0012】
本開示によれば、親しみ又は愛着を想起させる行動をユーザがロボット装置に期待すると想定される状況下にて、ロボット装置に親しみ又は愛着を想起させる行動を選択的に実行させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本開示によれば、ユーザに愛着を想起させる動作をロボット装置により効果的に実行させることが可能である。
【0014】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、または本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】比較例に係る制御装置にて制御されたロボット装置の行動を示す説明図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る制御装置にて制御されたロボット装置の行動を示す説明図である。
【
図3】同実施形態に係る制御装置の機能構成を示したブロック図である。
【
図4】同実施形態に係る制御装置の動作全体の流れの一例を示すフローチャート図である。
【
図5】情動表現を実行するか否かの判断に係る流れの一例をより具体的に示すフローチャート図である。
【
図6】同実施形態に係る制御装置のハードウェア構成例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.制御装置の概要
2.制御装置の構成例
3.制御装置の動作例
3.1.動作全体の流れ
3.2.振舞判断の具体例
4.ハードウェア構成例
5.まとめ
【0018】
<1.制御装置の概要>
まず、
図1及び
図2を参照して、本開示の一実施形態に係る制御装置の概要について説明する。
図1は、比較例に係る制御装置にて制御されたロボット装置の行動を示す説明図であり、
図2は、本実施形態に係る制御装置にて制御されたロボット装置の行動を示す説明図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、制御装置が障害物5、6を避けて目的地Dに到達するロボット装置1の行動を制御する場合を考える。
【0020】
ロボット装置1は、愛玩用又は観賞用に用いられる、いわゆるエンターテイメントロボットであり、例えば、犬を模倣したペット型の四足歩行ロボット装置であってもよい。ただし、本開示に係る技術において、ロボット装置1の形状又は構造は特に限定されない。例えば、ロボット装置1は、猫又は鳥等の他の動物を模倣したペット型ロボット装置であってもよく、人間を模倣した直立二足歩行を行う人間型ロボット装置であってもよく、車輪にて移動を行うロボット装置であってもよい。障害物5、6は、ロボット装置1の進路を制限し得る立体構造物である。障害物5、6は、例えば、ロボット装置1と同程度の大きさの立体構造物であってもよい。
【0021】
ロボット装置1が目的地Dへ到達するための経路は、障害物5、6の存在によって複数の第1~第3のルートR1、R2、R3を取り得る。具体的には、第1のルートR1は、障害物5の外側を迂回して目的地Dへ向かう経路であり、第2のルートR2は、障害物5、6の間を通って目的地Dへ向かう経路であり、第3のルートR3は、障害物6の外側を迂回して目的地Dへ向かう経路である。このうち、第2のルートR2は、障害物5、6の間を通るため道幅が狭いものの、目的地Dまでの距離が最も短い経路である。また、第1のルートR1及び第3のルートR3は、障害物5、6の外側を迂回するため道幅は広いものの、目的地Dまでの距離が第2のルートR2よりも長くなる経路である。
【0022】
ここで、
図1に示すように、ロボット装置1が第2のルートR2をスムーズに通って目的地Dへ移動した場合、ロボット装置1の行動は、ユーザには親しみがないように感じられてしまうことがある。
【0023】
これは、第2のルートR2が目的地Dまでの距離が最短となる効率的な経路であるため、ユーザには、第2のルートR2を通過するロボット装置1の行動が無機質かつ機械的であるように感じられてしまうためである。また、第2のルートR2は、障害物5、6の間の狭い道幅を通る経路であるため、第2のルートR2を通るには、両側の障害物5、6の形状及び位置を高精度で認識することが重要となる。そのため、ロボット装置1が第2のルートR2をスムーズに通過することは、狭い道幅を通る際にユーザがロボット装置1に期待する慎重さを示すような振る舞いではないためである。
【0024】
一方で、
図2に示すように、ロボット装置1が第1~第3のルートR1、R2、R3のいずれの経路を選択するのか迷うような振る舞いをした後、第2のルートR2に近い第4のルートR4にて目的地Dに到達した場合、ロボット装置1は、ユーザに対して、ロボット装置1が目的地Dまでの経路を考え、悩んで行動しているという印象を与えることができる。また、障害物5、6の間を通過する際に、ロボット装置1が速度を低下させてゆっくりと行動した場合、ロボット装置1は、ユーザにロボット装置1が危うそうに、慎重に行動しているという印象を与えることができる。
【0025】
ロボット装置1は、このようなロボット装置1の情動、個性又は思考を示すような振る舞い(以下では、情動表現とも称する)をユーザに示すことによって、ユーザに対してロボット装置1への愛着又は親しみを想起させることができる。すなわち、制御装置は、最も効率的な行動から効率を低下させるような、冗長な振る舞いを付加した行動をロボット装置1に実行させることで、ロボット装置1に情動、個性又は思考があるかのような印象をユーザに感じさせることができる。これによれば、ロボット装置1は、ユーザに対して、無機質かつ機械的な印象ではなく、生物により近い親しみ又は愛着を想起させる印象を与えることが可能である。
【0026】
しかしながら、上述したようなロボット装置1の情動、個性又は思考を示すような振る舞いは、ロボット装置1の行動の効率性を低下させてしまう。そのため、ロボット装置1がこのような振る舞いを常に実行した場合、消費電力が大幅に増加してしまう。また、障害物5、6等がなく、行動選択又は行動実行の複雑性又は困難性が低い状況下で、ロボット装置1に上述したような冗長な振る舞いを実行させることは、ユーザに不快なもどかしさを感じさせてしまう可能性がある。
【0027】
したがって、
図2で示すような、ユーザに親しみ又は愛着を想起させるようなロボット装置1の行動は、ユーザがロボット装置1に対してこれらの行動を期待する場合に実行されることが効果的である。
【0028】
本実施形態に係る制御装置は、ロボット装置1の外部環境の認識の難易度、又はロボット装置1の行動決定の難易度の少なくとも1つ以上に基づいて、ユーザに親しみ又は愛着を想起させるような振る舞い(情動表現)を実行するか否かを判断する。これによれば、本実施形態に係る制御装置は、ロボット装置1が冗長な行動を実行することをユーザが許容し得る場合に、ロボット装置1に情動表現を実行させることが可能である。
【0029】
したがって、本実施形態に係る制御装置は、より効果的な状況下で、ユーザに親しみ又は愛着を想起させる情動表現をロボット装置1に実行させることができるため、ロボット装置1の消費電力を低減することが可能である。また、本実施形態に係る制御装置は、効率性が低く、冗長な情動表現をロボット装置1に実行させた場合でも、ユーザがもどかしさ又は煩わしさ等の不快感を抱く可能性を低下させることができる。
【0030】
また、本実施形態に係る制御装置では、ユーザからロボット装置1への注目度に基づいて、ロボット装置1での情動表現の実行の可否を判断してもよい。これによれば、本実施形態に係る制御装置は、ユーザがロボット装置1に注目しており、ロボット装置1の行動を認識していると判断される場合に、ロボット装置1に情動表現の実行させることができる。したがって、本実施形態に係る制御装置は、ユーザが着目している状況下において、ユーザに親しみ又は愛着を想起させる情動表現をより効果的にロボット装置1に実行させることが可能である。
【0031】
<2.制御装置の構成例>
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る制御装置の構成例について説明する。
図3は、本実施形態に係る制御装置100の機能構成を示したブロック図である。
【0032】
図3に示すように、制御装置100は、センサ部110からセンシング情報を取得する認識部120と、認識された認識情報を管理する認識情報管理部130と、認識情報に基づいて決定される行動を管理する行動決定管理部140と、ユーザに親しみ又は愛着を想起させる振る舞いである情動表現を管理する振舞管理部150と、ロボット装置1の駆動部170を制御する駆動制御部160と、を備える。制御装置100は、例えば、センサ部110が検出した外部環境のセンシング情報に基づいて行動を決定し、決定された行動を駆動部170によってロボット装置1に実行させる制御装置であってもよい。
【0033】
センサ部110は、各種センサを含み、外部環境の状態を測定し、測定したデータを認識部120に出力する。センサ部110は、例えば、ロボット装置1に搭載されてもよい。例えば、センサ部110は、外部環境の状態を測定するセンサとして、RGBカメラ、グレースケールカメラ、ステレオカメラ、デプスカメラ、赤外線カメラ又はToF(Time of Flight)カメラ等の各種カメラを含んでもよく、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)センサ又はRADAR(Radio Detecting and Ranging)センサなどの各種測距センサを含んでもよい。また、センサ部110は、外部環境の他の情報を測定するセンサとして、マイクロフォン、照度計、圧力計、温度計又は湿度計等を含んでもよい。ただし、センサ部110は、外部環境の状態を測定するセンサであれば、上述したセンサ以外の公知のセンサを含んでもよいことは言うまでもない。
【0034】
なお、センサ部110は、ロボット装置1の状態を測定するセンサを含んでもよい。ロボット装置1の状態を測定したデータは、例えば、制御装置100がロボット装置1の行動を決定又は制御する際に用いられ得る。例えば、センサ部110は、ロボット装置1の状態を測定するセンサとして、エンコーダ、電圧計、電流計、歪みゲージ、ジャイロセンサ、加速度センサ、IMU(Inertial Measurement Unit)又はGNSS(Global Navigation Satellite System)センサ等を含んでもよい。
【0035】
認識部120は、例えば、人認識部121、音声認識部122及び空間認識部123を含み、センサ部110が測定したデータに基づいて、外部環境を認識する。
【0036】
具体的には、人認識部121は、センサ部110が測定した画像情報又は音声情報に基づいて、周囲の空間における人の存在の有無を認識してもよい。また、人認識部121は、周囲の空間に存在する人の個人特定を行ってもよく、存在を認識した人の視線又は表情をさらに認識してもよい。音声認識部122は、センサ部110が測定した音声情報に基づいて、周囲の空間に存在するユーザの発話又は会話の内容(すなわち、コンテキスト)を認識してもよい。空間認識部123は、センサ部110が測定した画像情報又は測距情報等に基づいて、障害物認識、形状認識(すなわち、壁認識又は床認識)又は物体認識を行い、周囲の空間における物体又は形状を認識してもよい。空間認識部123は、例えば、目的地までの通行可能な経路、及び幅、距離又は表面凹凸等の該経路の特徴をさらに認識してもよい。認識部120が含む人認識部121、音声認識部122又は空間認識部123の各々が行う認識は、例えば、所定のルールに基づいて行われてもよく、DNN(Deep Neural Network)などの機械学習アルゴリズムに基づいて行われてもよい。これらの認識は、公知の認識技術を用いることでも行うことが可能である。
【0037】
認識情報管理部130は、認識部120によって認識された各情報を行動決定管理部140又は振舞管理部150の利用に適した情報に変換する。
【0038】
具体的には、認識情報管理部130は、認識部120による人の存在の有無の認識結果、又は存在する人の個人の特定結果に基づいて、周囲の空間におけるロボット装置1のユーザの検出結果を生成してもよい。また、認識情報管理部130は、認識部120による人の表情若しくは視線等の認識結果に基づいて、ユーザからロボット装置1への注目度を算出してもよい。例えば、認識情報管理部130は、ユーザの視線又は視野がロボット装置1に向いている否かに基づいて、ユーザからロボット装置1への注目度を算出してもよい。
【0039】
また、認識情報管理部130は、認識部120による発話内容の認識結果に基づいて、ユーザからロボット装置1への注目度を算出してもよい。例えば、認識情報管理部130は、ユーザの発話の文脈にロボット装置1が含まれているか否か、又はユーザがロボット装置1に話しかけているか否かに基づいて、ユーザからロボット装置1への注目度を算出してもよい。
【0040】
なお、認識情報管理部130が算出したユーザからロボット装置1への注目度は、後述する振舞管理部150において、ロボット装置1にユーザに愛着を想起させる情動表現を実行するか否かの判断要素の1つとして用いられ得る。
【0041】
例えば、認識情報管理部130は、ユーザがロボット装置1を直視している場合、ユーザが聴覚などでロボット装置1の動きを把握していると判断される場合、ユーザの発話内容にロボット装置1が含まれている場合、ユーザがロボット装置1に話しかけている場合、又はユーザがロボット装置1を操作している場合に、ユーザからロボット装置1への注目度が高いと判断してもよい。このような場合、後述する振舞管理部150は、ロボット装置1に情動表現を実行させることを判断してもよい。
【0042】
また、認識情報管理部130は、ユーザがロボット装置1を周辺視野に入れている場合、又は音等によってユーザにロボット装置1の存在を認識させることが可能な場合に、ユーザからロボット装置1への注目度が中程度であると判断してもよい。このような場合、後述する振舞管理部150は、ユーザからロボット装置1への注目度は高くないものの、ユーザにロボット装置1を注目させる余地があると判断し、ロボット装置1に情動表現を実行させることを判断してもよい。
【0043】
さらに、認識情報管理部130は、ユーザが不在の場合、ユーザがロボット装置1以外の事柄に注目している場合、又はロボット装置1が繰り返し同じ行動をしているため、ユーザがロボット装置1に興味を抱いていないと判断される場合に、ユーザからロボット装置1への注目度が低いと判断してもよい。このような場合、後述する振舞管理部150は、ロボット装置1に情動表現を実行させないことを判断してもよい。
【0044】
さらに、認識情報管理部130は、認識部120による周囲の空間の認識結果に基づいて、周囲の空間の地図を生成してもよい。例えば、認識情報管理部130は、通過可能な領域を示す障害物地図又は移動領域地図を生成してもよく、種々の物体の存在位置を示す物体地図を生成してもよく、各領域の名称、関連性又は意味づけを示すトポロジカル地図を生成してもよい。
【0045】
また、認識情報管理部130は、認識部120によって認識された各情報に基づいて、認識部120による認識の難易度を算出する。認識情報管理部130が算出した認識部120による認識の難易度は、後述する振舞管理部150において、ロボット装置1にユーザに愛着を想起させる情動表現を実行するか否かの判断要素の1つとして用いられ得る。
【0046】
具体的には、認識情報管理部130は、センサ部110に含まれるセンサの数若しくは種類、認識部120が認識した外部環境の複雑性、認識部120による認識のアルゴリズム、又は認識部120による認識結果の信頼性若しくは要求精度の少なくとも1つ以上に基づいて、認識部120による認識の難易度を算出してもよい。
【0047】
より具体的には、認識情報管理部130は、以下の表1で示す要素の少なくとも1つ以上に基づいて、認識部120による認識の難易度を算出してもよい。例えば、認識情報管理部130は、以下の表1で示す要素の各々ごとに認識の難易度の高低を判断することで、認識部120による認識の難易度を算出してもよい。また、認識情報管理部130は、以下の表1で示す要素の各々に重み付けをして総合的に難易度の高低を判断することで、認識部120による認識の難易度を算出してもよい。なお、認識情報管理部130は、上述した方法以外の任意の方法によって、認識部120による認識の難易度を算出してもよい。
【0048】
【0049】
なお、認識情報管理部130は、ユーザの属性に基づいて、認識部120による認識の難易度の算出基準を変更してもよい。具体的には、認識情報管理部130は、ユーザの年齢若しくは性別、ユーザの趣味若しくは嗜好、又はユーザが有するロボット装置1への知識量に基づいて、認識部120による認識の難易度の算出基準を変更してもよい。例えば、認識情報管理部130は、ロボット等に関して興味が高いユーザに対しては、算出される認識の難易度がより低くなるように算出基準を変更してもよい。また、認識情報管理部130は、ロボット等に関する興味が低いユーザに対しては、算出される認識の難易度がより高くなるように算出基準を変更してもよい。
【0050】
認識の難易度の算出基準の変更に用いるユーザの属性は、例えば、ユーザの登録情報から判断されてもよく、ユーザに対するアンケート等にて入力された情報から判断されてもよく、SNS(Social Networking Service)等に公開されている情報から判断されてもよい。
【0051】
行動決定管理部140は、認識情報管理部130にて変換された認識情報に基づいて、ロボット装置1の行動を生成し、行動決定の難易度を算出する。具体的には、行動決定管理部140は、認識情報管理部130にて加工された外部環境の認識結果に基づいて、ロボット装置1が実行する行動を決定する。例えば、行動決定管理部140は、認識情報管理部130が生成した周囲の空間の地図に基づいて、ロボット装置1が目的地まで移動するための経路を決定してもよい。また、行動決定管理部140は、ロボット装置1の移動以外にも、ロボット装置1の種々の行動を決定してもよい。行動決定管理部140による行動決定は、例えば、所定のルールに基づいて行われてもよく、DNN(Deep Neural Network)などの機械学習アルゴリズムに基づいて行われてもよい。
【0052】
また、行動決定管理部140は、ロボット装置1の行動を決定した後、該行動決定の難易度を算出する。行動決定管理部140が算出した行動決定の難易度は、後述する振舞管理部150において、ロボット装置1にユーザに愛着を想起させる情動表現を実行するか否かの判断要素の1つとして用いられ得る。
【0053】
具体的には、行動決定管理部140は、行動決定の複雑性若しくは制約条件、行動決定の際に考慮された行動の選択肢の数、優劣若しくは履歴の有無の少なくとも1つ以上に基づいて、行動決定の難易度を算出してもよい。
【0054】
より具体的には、行動決定管理部140は、以下の表2で示す要素の少なくとも1つ以上に基づいて、行動決定の難易度を算出してもよい。例えば、行動決定管理部140は、以下の表2で示す要素の各々ごとに行動決定の難易度の高低を判断することで、行動決定の難易度を算出してもよい。また、行動決定管理部140は、以下の表2で示す要素の各々に重み付けをして総合的に難易度の高低を判断することで、行動決定の難易度を算出してもよい。なお、行動決定管理部140は、上述した方法以外の任意の方法によって、行動決定の難易度を算出してもよい。
【0055】
【0056】
なお、行動決定管理部140は、認識情報管理部130と同様に、ユーザの属性に基づいて、行動決定の難易度の算出基準を変更してもよい。具体的には、行動決定管理部140は、ユーザの年齢若しくは性別、ユーザの趣味若しくは嗜好、又はユーザが有するロボット装置1への知識量に基づいて、行動決定の難易度の算出基準を変更してもよい。例えば、行動決定管理部140は、ロボット等に関して興味が高いユーザに対しては、算出される行動決定の難易度がより低くなるように算出基準を変更してもよい。また、行動決定管理部140は、ロボット等に関する興味が低いユーザに対しては、算出される行動決定の難易度がより高くなるように算出基準を変更してもよい。
【0057】
行動決定の難易度の算出基準の変更に用いるユーザの属性は、例えば、ユーザの登録情報から判断されてもよく、ユーザに対するアンケート等にて入力された情報から判断されてもよく、SNS(Social Networking Service)等に公開されている情報から判断されてもよい。
【0058】
振舞管理部150は、振舞決定部151、振舞生成部152、及び振舞制御部153を含み、ユーザにロボット装置1への愛着を想起させる情動表現を実行するか否かを判断し、かつ情動表現に対応する行動を生成する。
【0059】
まず、振舞決定部151は、認識情報管理部130にて算出された認識の難易度、又は行動決定管理部140にて算出された行動決定の難易度の少なくとも1つ以上に基づいて、ユーザにロボット装置1への愛着を想起させる情動表現を実行するか否かを判断する。具体的には、振舞決定部151は、認識部120による認識の難易度が高く、ロボット装置1による状況把握又は状況判断が難しいとユーザが想定し得る状況において、ロボット装置1に情動表現を実行させることを判断してもよい。また、振舞決定部151は、行動決定管理部140による行動決定の難易度が高く、ロボット装置1による行動選択が難しいとユーザが想定し得る状況において、ロボット装置1に情動表現を実行させることを判断してもよい。
【0060】
また、振舞決定部151は、周囲の空間にユーザが存在するか否かに基づいて、ロボット装置1に情動表現を実行させるか否かを判断してもよく、ユーザからロボット装置1への注目度にさらに基づいて、ロボット装置1に情動表現を実行させるか否かを判断してもよい。ユーザからロボット装置1への注目度は、例えば、上述したように認識情報管理部130によって算出され得る。これによれば、振舞決定部151は、ロボット装置1が実行した行動をユーザが確実に視認する状況下で、情動表現に対応する行動をロボット装置1に実行させることができる。
【0061】
具体的には、振舞決定部151は、ユーザからロボット装置1への注目度が高い場合に、ロボット装置1に情動表現を実行させることを判断してもよい。また、振舞決定部151は、ユーザからロボット装置1への注目度が低い場合に、ロボット装置1に情動表現を実行させないことを判断してもよい。これらのユーザからロボット装置1への注目度の高低の閾値は、例えば、あらかじめ設定されていてもよい。また、閾値は、ユーザによって変更されてもよい。
【0062】
さらに、振舞決定部151は、ユーザからロボット装置1への注目度が中程度であり、かつ所定の条件を満たす場合に、ロボット装置1に情動表現を実行させることを判断してもよい。ここで、所定の条件とは、ロボット装置1がユーザの興味を惹く可能性がある状況を示す条件であり、例えば、ユーザ及びロボット装置1の距離、又はユーザからロボット装置1が視認可能であることなどであってもよい。
【0063】
また、振舞決定部151は、ユーザの属性にさらに基づいて、ロボット装置1に情動表現を実行させるか否かを判断してもよい。具体的には、振舞決定部151は、ユーザの年齢若しくは性別、ユーザの趣味若しくは嗜好、又はユーザが有するロボット装置1への知識量に基づいて、ロボット装置1に情動表現を実行させるか否かの判断基準を変更してもよい。例えば、振舞決定部151は、生物又は子供等が好きであると判断されるユーザに対しては、ロボット装置1が情動表現を実行する頻度が高くなるように、ロボット装置1に情動表現を実行させるか否かの判断基準を変更してもよい。これによれば、振舞決定部151は、ユーザの期待又は好みを反映させることで、よりユーザに最適化された状況下で、情動表現に対応する行動をロボット装置1に実行させることができる。
【0064】
振舞生成部152は、ロボット装置1が実行する情動表現に対応する行動を生成する。
【0065】
情動表現に対応する行動とは、例えば、ロボット装置1の情動、個性又は思考を示す又は模倣する行動であってもよい。このような行動を実行することにより、ロボット装置1は、ユーザに対してロボット装置1に意思があるかのような印象を与えることができるため、ユーザにロボット装置1への親しみ又は愛着を想起させることができる。より具体的には、情動表現に対応する行動とは、ロボット装置1の行動の効率を低下させるような冗長な行動であってもよい。例えば、情動表現に対応する行動とは、行動選択時に行動を思考、躊躇又は懊悩するような行動であってもよく、行動実行時により慎重、不安定又は大げさに行動を実行することであってもよい。
【0066】
例えば、情動表現に対応する行動とは、以下の表3に示すような行動であってもよい。これらの行動は、あらかじめロボット装置1に記憶されていてもよく、DNN(Deep Neural Network)などの機械学習アルゴリズムに基づいて生成されてもよい。振舞生成部152は、情動表現に対応する行動を実行するか否かの判断に用いた各種パラメータに基づいて、これらの行動の中からロボット装置1に実行させる情動表現に対応する行動を決定してもよい。または、振舞生成部152は、これらの行動の中からロボット装置1に実行させる情動表現に対応する行動をランダムに決定してもよい。
【0067】
【0068】
振舞制御部153は、振舞生成部152にて生成された、情動表現に対応する行動の実行順序又はタイミングを制御する。具体的には、振舞制御部153は、行動決定管理部140が決定した行動に対して、情動表現に対応する行動をどのように付加するか、又はどのタイミングで実行するかを制御する。すなわち、振舞制御部153は、ユーザに愛着を想起させる情動表現に対応する行動と、行動決定管理部140が決定した行動とが全体として調和した行動となるように、情動表現に対応する行動の実行順序又はタイミングを制御する。
【0069】
駆動制御部160は、行動決定管理部140にて決定された行動と、振舞管理部150にて生成された情動表現に対応する行動とを実行させる制御指令を駆動部170に出力する。具体的には、駆動制御部160は、実行させる行動に対応するロボット装置1の状態と、ロボット装置1の現在の状態との差を算出し、算出された差が縮小するように制御指令を駆動部170に出力する。これにより、駆動制御部160は、決定された行動をロボット装置1に実行させることができる。なお、駆動制御部160は、制御指令を階層的又は段階的に生成し、駆動部170に出力してもよい。
【0070】
駆動部170は、駆動制御部160からの制御指令等に基づいて、ロボット装置1を駆動させる。駆動部170は、実空間への出力を行うモジュールであり、例えば、エンジン、モータ、スピーカ、プロジェクタ、ディスプレイ、又は発光器(例えば、電球、LED又はレーザ等)などを含んでもよい。駆動制御部160からの制御指令に基づいて、駆動部170の各構成が駆動することによって、行動決定管理部140及び振舞生成部152によって生成されたロボット装置1の行動が実行される。
【0071】
以上の構成によれば、制御装置100は、ユーザにとって意図又は意味が理解しやすく、親しみ又は愛着を想起させる行動(すなわち、情動表現に対応する行動)をロボット装置1に実行させることができる。また、制御装置100は、親しみ又は愛着を想起させる行動をユーザがロボット装置1に期待する状況下において、これらの行動をロボット装置1に実行させることができる。これによれば、制御装置100は、ユーザからロボット装置1への興味又は愛着を効果的に高めることができる。また、制御装置100は、ユーザが親しみ又は愛着を想起させる行動を効果的なタイミングでロボット装置1に実行させることで、ロボット装置1の消費電力を抑制することも可能である。
【0072】
<3.制御装置の動作例>
続いて、
図4及び
図5を参照して、本実施形態に係る制御装置100の動作例について説明する。
図4は、本実施形態に係る制御装置100の動作全体の流れの一例を示すフローチャート図である。
図5は、情動表現を実行するか否かの判断に係る流れの一例をより具体的に示すフローチャート図である。
【0073】
(3.1.動作全体の流れ)
まず、
図4を参照して、本実施形態に係る制御装置100の動作全体の流れの一例について説明する。
【0074】
図4に示すように、まず、認識部120は、センサ部110にて測定されたデータに基づいて、外部環境を認識する(S101)。続いて、行動決定管理部140は、認識された外部環境に基づいて、ロボット装置1が実行する行動を算出する(S103)。その後、認識情報管理部130は、上述した方法によって、認識の難易度の算出(S105)、及びユーザのロボット装置1への注目度の算出を実行する(S109)。さらに、行動決定管理部140は、行動決定の難易度を算出する(S107)。
【0075】
なお、認識の難易度の算出(S105)及びユーザの注目度の算出(S109)は、認識(S103)から情動表現を実行するか否かの判断(S120)までの間のいずれかのタイミングで行われればよい。また、行動決定の難易度の算出(S105)は、行動決定(S103)から情動表現を実行するか否かの判断(S120)までの間のいずれかのタイミングで行われればよい。また、認識の難易度の算出(S105)、ユーザの注目度の算出(S109)、及び行動決定の難易度の算出(S105)は、順番に行われてもよく、並行して行われてもよい。
【0076】
次に、振舞決定部151は、ユーザの注目度、認識の難易度及び行動決定の難易度に基づいて、ユーザに愛着を想起させる情動表現を実行するか否かを判断する(S120)。振舞決定部151にて情動表現を実行しないと判断された場合(S120/No)、駆動制御部160は、行動決定管理部140が決定した行動を実行するように駆動部170を制御する(S113)。
【0077】
一方、振舞決定部151にて情動表現を実行すると判断された場合(S120/Yes)、振舞生成部152は、情動表現に対応する行動を生成する(S111)。続いて、駆動制御部160は、行動決定管理部140が決定した行動と、情動表現に対応する行動とを実行するように駆動部170を制御する(S113)。なお、行動決定管理部140が決定した行動に対して、情動表現に対応する行動を実行するタイミングは、振舞制御部153によって制御される。
【0078】
(3.2.振舞判断の具体例)
次に、
図5を参照して、
図4で示した情動表現を実行するか否かの判断に係る流れ(S120)の一例についてより具体的に説明する。
【0079】
S101~S109の動作が実行された後、
図5に示すように、振舞決定部151は、まず、ロボット装置1の行動を視認させる対象となるユーザが周囲の空間に存在するか否かを判断する(S121)。対象となるユーザが周囲の空間に存在しないと判断された場合(S121/No)、振舞決定部151は、情動表現を実行しないと判断し、その後、駆動制御部160は、行動決定管理部140が決定した行動を実行するように駆動部170を制御する(S113)。
【0080】
一方、対象となるユーザが周囲の空間に存在すると判断された場合(S121/Yes)、振舞決定部151は、ユーザのロボット装置1に対する注目度が高いか否か(S122)、行動決定の難易度が高いか否か(S123)、及び認識の難易度が高いか否か(S124)をそれぞれ判断する。S121~S123の判断のいずれも「No」である場合、振舞決定部151は、情動表現を実行しないと判断し、その後、駆動制御部160は、行動決定管理部140が決定した行動を実行するように駆動部170を制御する(S113)。ここで、S121~S123の判断のいずれかが「Yes」である場合、振舞決定部151は、情動表現を実行すると判断する。このような場合、振舞生成部152は、情動表現に対応する行動を生成し(S111)、駆動制御部160は、行動決定管理部140が決定した行動と、情動表現に対応する行動とを実行するように駆動部170を制御する(S113)。
【0081】
なお、振舞決定部151による情動表現を実行するか否かの判断は、
図5で示す動作の流れに限定されず、他の動作の流れによって行われてもよい。例えば、振舞決定部151は、ユーザのロボット装置1に対する注目度が高いか否か、行動決定の難易度が高いか否か、及び認識の難易度が高いか否かを総合的に判断することで、情動表現を実行するか否かを判断してもよい。
【0082】
以上のような動作によれば、制御装置100は、親しみ又は愛着を想起させる行動をユーザがロボット装置1に期待する状況下において、これらの行動をロボット装置1に選択的に実行させることができる。
【0083】
<4.ハードウェア構成例>
続いて、
図6を参照して、本実施形態に係る制御装置100のハードウェア構成について説明する。
図6は、本実施形態に係る制御装置100のハードウェア構成例を示したブロック図である。
【0084】
図6に示すように、制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)901と、ROM(Read Only Memory)902と、RAM(Random Access Memory)903と、ブリッジ907と、内部バス905及び906と、インタフェース908と、入力装置911と、出力装置912と、ストレージ装置913と、ドライブ914と、接続ポート915と、通信装置916と、を備える。
【0085】
CPU901は、演算処理装置として機能し、ROM902等に記憶された各種プログラムに従って、制御装置100の動作全般を制御する。ROM902は、CPU901が使用するプログラム、演算パラメータを記憶し、RAM903は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。例えば、CPU901は、認識部120、認識情報管理部130、行動決定管理部140、振舞管理部150及び駆動制御部160の機能を実行してもよい。
【0086】
これらCPU901、ROM902及びRAM903は、ブリッジ907、内部バス905及び906等により相互に接続されている。また、CPU901、ROM902及びRAM903は、インタフェース908を介して入力装置911、出力装置912、ストレージ装置913、ドライブ914、接続ポート915及び通信装置916とも接続されている。
【0087】
入力装置911は、タッチパネル、キーボード、マウス、ボタン、マイクロフォン、スイッチ及びレバーなどの情報が入力される入力装置を含む。また、入力装置911は、入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力するための入力制御回路なども含む。
【0088】
出力装置912は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)表示装置、液晶表示装置及び有機EL(Organic ElectroLuminescence)表示装置などの表示装置を含む。さらに、出力装置912は、スピーカ及びヘッドホンなどの音声出力装置を含んでもよい。
【0089】
ストレージ装置913は、制御装置100のデータ格納用の記憶装置である。ストレージ装置913は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記憶する記憶装置、記憶媒体からデータを読み出す読み出し装置、及び記憶されたデータを削除する削除装置を含んでもよい。
【0090】
ドライブ914は、記憶媒体用リードライタであり、制御装置100に内蔵又は外付けされる。例えば、ドライブ914は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク又は半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体に記憶されている情報を読み出し、RAM903に出力する。ドライブ914は、リムーバブル記憶媒体に情報を書き込むことも可能である。
【0091】
接続ポート915は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、イーサネット(登録商標)ポート、IEEE802.11規格ポート及び光オーディオ端子等のような外部接続機器を接続するための接続ポートで構成された接続インタフェースである。
【0092】
通信装置916は、例えば、ネットワーク920に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。また、通信装置916は、有線または無線LAN対応通信装置であっても、有線によるケーブル通信を行うケーブル通信装置であってもよい。
【0093】
なお、制御装置100に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアに対して、上述した本実施形態に係る制御装置の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供することが可能である。
【0094】
<5.まとめ>
以上にて説明したように、本実施形態に係る制御装置100によれば、ロボット装置1に対して、ユーザにとって意図又は意味が理解しやすく、親しみ又は愛着を想起させる行動(すなわち、情動表現に対応する行動)を実行させることができる。また、制御装置100は、親しみ又は愛着を想起させる行動をユーザがロボット装置1に期待する状況下において、これらの行動をロボット装置1に実行させることができる。これによれば、制御装置100は、ユーザからロボット装置1への興味又は愛着を効果的に高めることができる。また、制御装置100は、ユーザが親しみ又は愛着を想起させる行動を効果的なタイミングでロボット装置1に実行させることで、ロボット装置1の消費電力を抑制することも可能である。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0096】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0097】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
センシング情報に基づいて外部環境を認識する認識部と、
認識された外部環境に基づいて、実行される行動を決定する行動決定管理部と、
前記認識部による認識の難易度、又は前記行動決定管理部による行動決定の難易度の少なくとも1つ以上に基づいて、情動表現を行うか否かを判断する振舞管理部と、
前記振舞管理部の判断に基づいて、前記情動表現に対応する行動の実行を制御する駆動制御部と、
を備える、制御装置。
(2)
前記情動表現は、前記行動決定管理部にて決定された行動の効率性を低下させる表現である、前記(1)に記載の制御装置。
(3)
前記振舞管理部は、前記認識部による認識の難易度が高いと判断される場合、前記情動表現を行うことを判断する、前記(1)又は(2)に記載の制御装置。
(4)
前記認識部による認識の難易度は、前記センシング情報を取得するセンサの数若しくは種類、前記外部環境の複雑性、前記認識部による認識のアルゴリズム、又は前記認識部による認識結果の信頼性若しくは要求精度の少なくとも1つ以上に基づいて判断される、前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の制御装置。
(5)
前記振舞管理部は、前記行動決定管理部による行動決定の難易度が高いと判断される場合、前記情動表現を行うことを判断する、前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の制御装置。
(6)
前記行動決定管理部による行動決定の難易度は、実行される前記行動の選択肢の数、優劣若しくは履歴の有無、又は前記行動決定管理部による行動決定の複雑性若しくは制約条件の少なくとも1つ以上に基づいて判断される、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の制御装置。
(7)
前記駆動制御部は、愛玩用又は観賞用のロボット装置の行動の実行を制御する、前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の制御装置。
(8)
前記情動表現は、前記ロボット装置の情動を示す表現である、前記(7)に記載の制御装置。
(9)
前記情動表現は、前記ロボット装置のユーザに愛着を想起させる表現である、前記(7)又は(8)に記載の制御装置。
(10)
前記振舞管理部は、前記ロボット装置のユーザの存在にさらに基づいて、前記情動表現を行うか否かを判断する、前記(7)~(9)のいずれか一項に記載の制御装置。
(11)
前記振舞管理部は、前記ユーザから前記ロボット装置への注目度にさらに基づいて、前記情動表現を行うか否かを判断する、前記(10)に記載の制御装置。
(12)
前記振舞管理部は、前記ユーザから前記ロボット装置への注目度が高いと判断される場合、前記情動表現を行うことを判断する、前記(11)に記載の制御装置。
(13)
前記ユーザから前記ロボット装置への注目度は、前記ユーザの画像に対する画像認識、前記ユーザの音声に対する音声認識若しくは文脈認識、又は前記ユーザからの入力の少なくとも1つ以上に基づいて判断される、前記(11)又は(12)に記載の制御装置。
(14)
前記振舞管理部は、前記ユーザの属性にさらに基づいて、前記情動表現を行うか否かを判断する、前記(10)~(13)のいずれか一項に記載の制御装置。
(15)
前記認識部による認識の難易度、又は前記行動決定管理部による行動決定の難易度の判断基準は、前記ユーザの属性に基づいて変更される、前記(10)~(13)のいずれか一項に記載の制御装置。
(16)
前記センシング情報は、前記ロボット装置に備えられるセンサ部によって取得される、前記(7)~(15)のいずれか一項に記載の制御装置。
(17)
演算装置によって、
センシング情報に基づいて外部環境を認識することと、
認識された外部環境に基づいて、実行される行動を決定することと、
前記認識の難易度、又は前記行動決定の難易度の少なくとも1つ以上に基づいて、情動表現を行うか否かを判断することと、
前記判断に基づいて、前記情動表現に対応する行動の実行を制御することと、
を含む、制御方法。
(18)
コンピュータを、
センシング情報に基づいて外部環境を認識する認識部と、
認識された外部環境に基づいて、実行される行動を決定する行動決定管理部と、
前記認識部による認識の難易度、又は前記行動決定管理部による行動決定の難易度の少なくとも1つ以上に基づいて、情動表現を行うか否かを判断する振舞管理部と、
前記振舞管理部の判断に基づいて、前記情動表現に対応する行動の実行を制御する駆動制御部と、
として機能させる、プログラム。
【符号の説明】
【0098】
1 ロボット装置
5、6 障害物
100 制御装置
110 センサ部
120 認識部
121 人認識部
122 音声認識部
123 空間認識部
130 認識情報管理部
140 行動決定管理部
150 振舞管理部
151 振舞決定部
152 振舞生成部
153 振舞制御部
160 駆動制御部
170 駆動部