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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/33 20060101AFI20240730BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240730BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240730BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240730BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01G4/33 102
H01G4/30 541
H01F17/00 D
H01L27/04 C
H01L27/04 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023525681
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2022019748
(87)【国際公開番号】W WO2022255036
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2021090991
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中磯 俊幸
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-76483(JP,A)
【文献】国際公開第2014/69363(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/52839(WO,A1)
【文献】特開2002-305246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00 - 5/06
H01F 17/00 -21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23
H01F 27/26
H01F 27/28 -27/29
H01F 27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00 -38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
H01G 4/00 - 4/224
H01G 4/255- 4/40
H01G 13/00 -17/00
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された絶縁体層と、
前記絶縁体層を介して前記半導体基板と対向して形成された導電体層と、
前記絶縁体層を介して前記半導体基板と対向して形成された非導電体層と、
を備え、
前記導電体層によって、または前記導電体層及び前記非導電体層の一部によってパッシブコンポーネントが構成され、
前記絶縁体層には、当該絶縁体層を貫通して、前記導電体層と前記半導体基板とを導通させる導通路が形成され、
前記導電体層は導体パターンで構成されていて、
前記非導電体層の表面に形成された第1端子電極と、
前記非導電体層の表面に形成された第2端子電極と、
前記第1端子電極と前記導体パターンとを導通させる第1引出電極と、
前記第2端子電極と前記導体パターンとを導通させる第2引出電極と、
前記導体パターンと前記半導体基板とを導通させる導通路と、
を備え、
前記半導体基板を介して前記第1端子電極と前記第2端子電極とが電気的に接続されている、
電子部品。
【請求項2】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された絶縁体層と、
前記絶縁体層を介して前記半導体基板と対向して形成された導電体層と、
前記絶縁体層を介して前記半導体基板と対向して形成された非導電体層と、
を備え、
前記導電体層は、前記絶縁体層の上部に形成された下部電極と、前記非導電体層の上部に形成された上部電極とを有し、
前記非導電体層、当該非導電体層を挟む前記下部電極及び前記上部電極によってキャパシタが構成され、
前記絶縁体層には、当該絶縁体層を貫通して、前記導電体層と前記半導体基板とを導通させる導通路が形成されている、
電子部品。
【請求項3】
前記導通路は、複数個形成されている、
請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記非導電体層の表面に形成された第1端子電極と、
前記非導電体層の表面に形成された第2端子電極と、
前記第1端子電極と前記下部電極とを導通させる第1引出電極と、
前記第2端子電極と前記上部電極とを導通させる第2引出電極と、
を備えている、
請求項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記下部電極は互いに分離された第1下部電極と第2下部電極とを有し、
前記導通路は、前記第1下部電極と前記半導体基板とを導通させる第1導通路と、前記第2下部電極と前記半導体基板とを導通させる第2導通路と、を有する、
請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記半導体基板はシリコン基板であり、前記非導電体層は前記シリコン基板の熱酸化膜である、
請求項1から5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
前記半導体基板は不純物半導体による基板である、
請求項1又は2に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板を備える、キャパシタやインダクタ等の電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、薄膜キャパシタ等のパッシブコンポーネントが半導体基板上に形成された半導体装置が示されている。このようなパッシブコンポーネントを備える半導体基板に端子電極を形成することによって表面実装型の電子部品が得られる。
【0003】
半導体基板を備える一般的な表面実装型の電子部品においては半導体基板自体に電気的な機能がなく、半導体基板は全体の形状を保持するための基材として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5458514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の半導体装置では、半導体基板の導電性に起因して、パッシブコンポーネント(機能部)に高周波電流が流れると、その高周波電流により発生する磁界が半導体基板に印加されることにより半導体基板に渦電流が流れる。その結果、この渦電流によって高周波信号の損失が増加する。
【0006】
そこで、本発明の目的は、半導体基板に流れる渦電流を抑制することで、高周波信号の損失を抑制した電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(A)本開示の一例としての電子部品は、
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された絶縁体層と、
前記絶縁体層を介して前記半導体基板と対向して形成された導電体層と、
前記絶縁体層を介して前記半導体基板と対向して形成された非導電体層と、
を備え、
前記導電体層によって、または前記導電体層及び前記非導電体層の一部によってパッシブコンポーネントが構成され、
前記絶縁体層には、当該絶縁体層を貫通して、前記導電体層と前記半導体基板とを導通させる導通路が形成された、ことを特徴とする。
【0008】
(B)本開示の一例としての電子部品は、
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された非導電体層と、
前記非導電体層を介して前記半導体基板と対向して形成された導電体層と、
を備え、
前記非導電体層、当該非導電体層を挟む前記半導体基板及び前記導電体層によってキャパシタが構成された、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体基板に流れる渦電流が抑制されて、高周波信号の損失が抑制された電子部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(A)は第1の実施形態に係る電子部品101の平面図であり、図1(B)は図1(A)におけるB-B部分での断面図である。
図2図2は電子部品101の製造工程(1)~(6)における断面図である。
図3図3は電子部品101の製造工程(7)~(10)における断面図である。
図4図4は電子部品101の製造工程(11)(12)における断面図である。
図5図5(A)は第2の実施形態に係る電子部品102の平面図であり、図5(B)は図5(A)におけるB-B部分での断面図である。
図6図6(A)は第3の実施形態に係る電子部品103の平面図であり、図6(B)は図6(A)におけるB-B部分での断面図である。
図7図7(A)、図7(B)、図7(C)は第4の実施形態に係る電子部品104の構造を示す図である。
図8図8は電子部品104の製造工程(1)~(6)における断面図である。
図9図9は電子部品104の製造工程(7)~(10)における断面図である。
図10図10は電子部品104の製造工程(11)(12)における断面図である。
図11図11(A)、図11(B)は、第1の実施形態の比較例としての電子部品の構成を示す図である。
図12図12(A)、図12(B)は、第4の実施形態の比較例としての電子部品の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上、複数の実施形態に分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0012】
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係る電子部品101の平面図であり、図1(B)は図1(A)におけるB-B部分での断面図である。
【0013】
この電子部品101は、半導体基板1と、この半導体基板1上に形成された絶縁体層2と、絶縁体層2を介して半導体基板1と対向して形成された導電体層3と、絶縁体層2を介して前記半導体基板と対向して形成された誘電体層4と、を備える。誘電体層4は本発明に係る非導電体層の一部に対応する。導電体層3は、絶縁体層2の上部に形成された下部電極31と誘電体層4の上部に形成された上部電極32を含む。この例では、誘電体層4は下部電極31の上面に形成されている。
【0014】
本発明において、「導電体層」は例えば電極及び導電体パターンを含む概念の名称である。また、「非導電体層」は絶縁体層及び誘電体層を含む概念の名称である。
【0015】
絶縁体層2には、この絶縁体層2を貫通して下部電極31と半導体基板1とを導通させる複数の導通路5が形成されている。なお、本実施形態では、下部電極31と半導体基板1とを導通させる導通路5が複数存在する例を示したが、少なくとも半導体基板1をバイパスする単一の電流経路を形成する導通路5が存在すればよい。
【0016】
半導体基板1の表面には、絶縁体層2、下部電極31、誘電体層4及び上部電極32を覆うパッシベーション層6が形成されている。
【0017】
パッシベーション層6の表面には第1端子電極81及び第2端子電極82が形成されている。第1端子電極81と下部電極31との間には両者を導通させる第1引出電極71が形成されていて、第2端子電極82と上部電極32との間には両者を導通させる第2引出電極72が形成されている。
【0018】
パッシベーション層6の表面、第1端子電極81の表面の一部及び第2端子電極82の表面の一部はソルダーレジスト膜9で覆われている。
【0019】
誘電体層4、この誘電体層4を挟む下部電極31及び上部電極32によって、キャパシタとしてのパッシブコンポーネントが構成されている。つまり、電子部品101は第1端子電極81及び第2端子電極82を表面実装用の接続端子とするキャパシタである。
【0020】
ここで、本実施形態の比較例としての電子部品の構成を図11(A)、図11(B)に示す。図11(A)は比較例としての電子部品の平面図であり、図11(B)は図11(A)におけるB-B部分での断面図である。この比較例としての電子部品においては、下部電極31と半導体基板1とを導通させる導通路5が形成されていない。
【0021】
図11(A)、図11(B)において、第1端子電極81と第2端子電極82との間に高周波電圧が印加されると、下部電極31に高周波電流が流れる。図11(A)、図11(B)中の矢印C31はその高周波電流を概念的に示している。これに伴い、半導体基板1には矢印F31で示す高周波磁界が生じる。この高周波磁界により、半導体基板1に渦電流が誘導される。
【0022】
これに対して、本実施形態の電子部品101では、絶縁体層2に、下部電極31と半導体基板1とを導通させる複数の導通路5が形成されているので、半導体基板1は下部電極31に対して並列接続される。したがって、下部電極31に流れる電流とほぼ同方向に半導体基板1に電流が流れる。図1(A)、図1(B)中の矢印C31は下部電極31に流れる電流を概念的に表していて、矢印C1は半導体基板1に流れる電流を概念的に表している。このように、半導体基板1は孤立した導体ではなく、図11(B)に矢印F31で示した磁束を発生させる電流の経路である下部電極31と複数箇所で導通しているので、半導体基板1に発生する渦電流は抑制される。半導体基板1に流れる電流(矢印C1)はキャパシタに流れる電流の経路の一部であるので、この電流は渦電流とは異なり、損失とはならない。
【0023】
半導体基板1は例えばシリコン基板であり、シリコン真性半導体基板又はシリコン不純物半導体基板である。絶縁体層2はシリコン基板の熱酸化膜であるSiO膜である。下部電極31及び上部電極32はAl膜又はCu膜であり、誘電体層4はSiO膜である。パッシベーション層6は、SiN膜とこのSiN膜上に形成された有機材料の膜である。または、パッシベーション層6はSiN膜である。第1引出電極71及び第2引出電極72は、下地をTi膜とするCu膜(Cu/Ti膜)である。第1端子電極81及び第2端子電極82は、下地をNiとするAu膜(Au/Ni膜)である。ソルダーレジスト膜9は有機材料の膜である。
【0024】
上記各部の材料と厚さ寸法の例を次に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
次に、電子部品101の製造方法の一例について、図2から図4に基づいて示す。
【0027】
図2は工程(1)~(6)における断面図、図3は工程(7)~(10)における断面図、図4は工程(11)(12)における断面図である。但し、いずれの図も1つの電子部品単位について表している。
【0028】
工程(1)は基板投入工程であり、半導体基板1としてのシリコン基板を製造装置に投入する。
【0029】
工程(2)は絶縁体層形成工程であり、半導体基板1の表面を熱酸化させることにより、絶縁体層2としてのSiO膜を形成する。
【0030】
工程(3)は絶縁体層エッチング工程であり、絶縁体層2の所定箇所をエッチングすることにより、後に示す導通路形成用の孔を形成する。
【0031】
工程(4)は下部電極形成工程であり、絶縁体層2にAl又はCuをスパッタリングすることにより、導通路5及び下部電極31を形成する。
【0032】
工程(5)は誘電体層形成工程であり、下部電極31の上面に誘電体層4としてのSiO2 膜を形成する。
【0033】
工程(6)は上部電極形成工程であり、誘電体層4の上面にAl又はCuをスパッタリングすることにより、上部電極32を形成する。
【0034】
工程(7)はパッシベーション層形成工程であり、半導体基板1の表面、絶縁体層2、下部電極31、誘電体層4及び上部電極32をパッシベーション膜で覆うことにより、パッシベーション層6を形成する。
【0035】
工程(8)はパッシベーション層開口工程であり、後に示す第1引出電極及び第2引出電極を形成する位置等に開口APを形成する。
【0036】
工程(9)は給電膜形成工程であり、パッシベーション層6の表面にTi膜をスパッタリングし、その上にCu膜をスパッタリングすることにより給電膜E0を形成する。
【0037】
工程(10)はパッド電極形成工程であり、給電膜E0上にNi膜をスパッタリングし、その上にAu膜をスパッタリングすることによりパッド電極E1,E2を形成する。
【0038】
工程(11)は給電膜エッチング工程であり、工程(10)で示した給電膜E0の露出部をエッチング除去することにより第1引出電極71、第2引出電極72、第1端子電極81及び第2端子電極82を形成する。
【0039】
工程(12)はソルダーレジスト膜形成工程であり、パッシベーション層6の表面、第1端子電極81の表面の一部及び第2端子電極82の表面の一部にソルダーレジスト膜9を被覆する。
【0040】
以上に示した例では、第1端子電極81及び第2端子電極82を備える電子部品について例示したが、下部電極31、誘電体層4及び上部電極32によって構成されるキャパシタを含む電子部品に同様に適用できる。
【0041】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、パッシブコンポーネントに流れる電流の経路の一部が半導体基板の一部で構成された電子部品について例示する。
【0042】
図5(A)は第2の実施形態に係る電子部品102の平面図であり、図5(B)は図5(A)におけるB-B部分での断面図である。
【0043】
この電子部品102は、半導体基板1と、この半導体基板1上に形成された絶縁体層2と、絶縁体層2を介して半導体基板1と対向して形成された第1下部電極31A、第2下部電極31Bと、絶縁体層2を介して半導体基板1と対向して形成された誘電体層4と、を備える。誘電体層4は本発明に係る非導電体層の一部に対応する。絶縁体層2の上部に形成された第1下部電極31A、第2下部電極31B、及び誘電体層4の上部に形成された上部電極32は本発明に係る導電体層の一部である。
【0044】
本実施形態の電子部品102は、その下部電極が第1下部電極31Aと第2下部電極31Bとに分離されていて、誘電体層4は第1下部電極31Aの上面に形成されている。
【0045】
絶縁体層2には、この絶縁体層2を貫通して、第1下部電極31Aと半導体基板1とを導通させる第1導通路5Aが形成されている。また、絶縁体層2には、この絶縁体層2を貫通して、第2下部電極31Bと半導体基板1とを導通させる第2導通路5Bが形成されている。
【0046】
半導体基板1の表面には、絶縁体層2、第1下部電極31A、第2下部電極31B、誘電体層4及び上部電極32を覆うパッシベーション層6が形成されている。
【0047】
パッシベーション層6の表面には第1端子電極81及び第2端子電極82が形成されている。第1端子電極81と第2下部電極31Bとの間には両者を導通させる第1引出電極71が形成されていて、第2端子電極82と上部電極32との間には両者を導通させる第2引出電極72が形成されている。
【0048】
パッシベーション層6の表面、第1端子電極81の表面の一部及び第2端子電極82の表面の一部はソルダーレジスト膜9で覆われている。
【0049】
誘電体層4、この誘電体層4を挟む第1下部電極31A及び上部電極32によって、キャパシタとしてのパッシブコンポーネントが構成されている。第1下部電極31Aと第2下部電極31Bとの間には、第1下部電極31A-第1導通路5A-半導体基板1-第2導通路5B-第2下部電極31Bの電流経路が構成されている。つまり、電子部品102は第1端子電極81及び第2端子電極82を表面実装用の接続端子とするキャパシタである。
【0050】
半導体基板1はシリコン不純物半導体基板である。本実施形態の電子部品102では、半導体基板1がパッシブコンポーネントに流れる電流経路の一部を構成する。したがって、下部電極31に流れる電流とほぼ同方向に半導体基板1に電流が流れる。この半導体基板1に流れる電流はキャパシタに流れる電流の経路の一部であるので、この電流は渦電流とは異なり、損失とはならない。
【0051】
以上に示した例では、第1端子電極81及び第2端子電極82を備える電子部品について例示したが、第1下部電極31A、誘電体層4及び上部電極32によって構成されるキャパシタを含む電子部品に同様に適用できる。
【0052】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、パッシブコンポーネントに流れる電流の経路の一部が半導体基板の一部で構成された電子部品について例示する。
【0053】
図6(A)は第3の実施形態に係る電子部品103の平面図であり、図6(B)は図6(A)におけるB-B部分での断面図である。
【0054】
この電子部品103は、半導体基板1と、この半導体基板1上に形成された誘電体層4及び基板電極34と、を備える。誘電体層4は本発明に係る非導電体層の一部に対応する。誘電体層4の上面には誘電体層電極35が形成されている。この誘電体層電極35は本発明に係る導電体層の一例である。
【0055】
本実施形態の電子部品103においては、誘電体層4の下部に電極が形成されておらず、半導体基板1が誘電体層4の下部電極として作用する。
【0056】
半導体基板1の表面には、基板電極34、誘電体層4及び誘電体層電極35を覆うパッシベーション層6が形成されている。
【0057】
パッシベーション層6の表面には第1端子電極81及び第2端子電極82が形成されている。第1端子電極81と基板電極34との間には両者を導通させる第1引出電極71が形成されていて、第2端子電極82と誘電体層電極35との間には両者を導通させる第2引出電極72が形成されている。
【0058】
パッシベーション層6の表面、第1端子電極81の表面の一部及び第2端子電極82の表面の一部はソルダーレジスト膜9で覆われている。
【0059】
誘電体層4、この誘電体層4を挟む半導体基板1及び誘電体層電極35によって、キャパシタとしてのパッシブコンポーネントが構成されている。つまり、電子部品103は第1端子電極81及び第2端子電極82を表面実装用の接続端子とするキャパシタである。
【0060】
半導体基板1はシリコン不純物半導体基板である。本実施形態の電子部品103では、半導体基板1がパッシブコンポーネント(キャパシタ)に流れる電流経路の一部を構成する。この電流は渦電流とは異なり、損失とはならない。
【0061】
以上に示した例では、第1端子電極81及び第2端子電極82を備える電子部品について例示したが、半導体基板1、誘電体層4、誘電体層電極35及び基板電極34によって構成されるキャパシタを含む電子部品に同様に適用できる。
【0062】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、インダクタを備える電子部品について例示する。
【0063】
図7(A)、図7(B)、図7(C)は第4の実施形態に係る電子部品104の構造を示す図である。図7(A)は電子部品104の平面図、図7(B)は図7(A)におけるB-B部分での断面図であり、図7(C)は図7(A)におけるC-C部分での断面図である。
【0064】
この電子部品104は、半導体基板1と、この半導体基板1上に形成された絶縁体層21,22と、絶縁体層21の上部に形成された導体パターン36A,36Bと、絶縁体層22の上部に形成された導体パターン37A,37Bと、絶縁体層21に形成された導体パターン38A,38Bと、を備える。導体パターン36A,36B,37A,37B,38A,38Bは本発明に係る導体パターンに対応する。
【0065】
絶縁体層21には、この絶縁体層21を貫通して、導体パターン36A,36Bと半導体基板1とを導通させる導通路5A,5Bが形成されている。
【0066】
半導体基板1の表面には、絶縁体層21,22及び導体パターン37A,37Bを覆うパッシベーション層6が形成されている。
【0067】
パッシベーション層6の表面には第1端子電極81及び第2端子電極82が形成されている。第1端子電極81と導体パターン37Aとの間には両者を導通させる第1引出電極71が形成されていて、第2端子電極82と導体パターン37Bとの間には両者を導通させる第2引出電極72が形成されている。
【0068】
パッシベーション層6の表面、第1端子電極81の表面の一部及び第2端子電極82の表面の一部はソルダーレジスト膜9で覆われている。
【0069】
半導体基板1はシリコン不純物半導体基板である。導体パターン36A,36B,37A,37B及び半導体基板1の一部によって、インダクタとしてのパッシブコンポーネントが構成されている。つまり、電子部品104は第1端子電極81及び第2端子電極82を表面実装用の接続端子とするインダクタである。
【0070】
ここで、本実施形態の比較例としての電子部品の構成を図12(A)、図12(B)に示す。図12(A)は比較例としての電子部品の平面図であり、図12(B)は図12(A)におけるB-B部分での断面図である。この比較例としての電子部品においては、導体パターン36と半導体基板1とを導通させる導通路が形成されていない。
【0071】
図12(A)、図12(B)において、第1端子電極81と第2端子電極82との間で高周波電流が流れると、導体パターン36,37A,37Bに高周波電流が流れる。これに伴い、半導体基板1に高周波磁界が生じ、この高周波磁界により半導体基板1に渦電流が誘導される。
【0072】
これに対して、本実施形態の電子部品104では、半導体基板1は孤立した導体ではなく、半導体基板1がパッシブコンポーネント(インダクタ)に流れる電流経路の一部を構成する。この電流は渦電流とは異なり、損失とはならない。
【0073】
上記電子部品104の各部の材料と厚さ寸法の例を次に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
次に、電子部品104の製造方法の一例について、図8から図10に基づいて示す。
【0076】
図8は工程(1)~(6)における断面図、図9は工程(7)~(10)における断面図、図10は工程(11)(12)における断面図である。但し、いずれの図も1つの電子部品単位について表している。
【0077】
工程(1)は基板投入工程であり、半導体基板1としてのシリコン基板を製造装置に投入する。
【0078】
工程(2)は絶縁体層形成工程であり、半導体基板1の表面を熱酸化させることにより、絶縁体層2としてのSiO膜を形成する。
【0079】
工程(3)は絶縁体層エッチング工程であり、絶縁体層2の所定箇所をエッチングすることにより、後に示す導通路形成用の孔を形成する。
【0080】
工程(4)は下部導体パターン形成工程であり、絶縁体層2にAl又はCuをスパッタリングすることにより、導通路5A,5B及び導体パターン36A,36Bを形成する。
【0081】
工程(5)は絶縁体層形成・エッチング工程であり、導体パターン36A,36Bの上面及び絶縁体層21の上面に絶縁体層22としてのSiO2 膜を形成する。
【0082】
工程(6)は導体パターン形成工程であり、絶縁体層22の上面にAl又はCuをスパッタリングすることにより、導体パターン37A,37Bを形成する。
【0083】
工程(7)はパッシベーション層形成工程であり、半導体基板1の表面、絶縁体層21,22及び導体パターン37A,37Bをパッシベーション膜で覆うことにより、パッシベーション層6を形成する。
【0084】
工程(8)はパッシベーション層開口工程であり、後に示す第1引出電極及び第2引出電極を形成する位置等に開口APを形成する。
【0085】
工程(9)は給電膜形成工程であり、パッシベーション層6の表面にTi膜をスパッタリングし、その上にCu膜をスパッタリングすることにより給電膜E0を形成する。
【0086】
工程(10)はパッド電極形成工程であり、給電膜E0上にNi膜をスパッタリングし、その上にAu膜をスパッタリングすることによりパッド電極E1,E2を形成する。
【0087】
工程(11)は給電膜エッチング工程であり、工程(10)で示した給電膜E0の露出部をエッチング除去することにより第1引出電極(図7(A)に表れている第1引出電極71)、第2引出電極72、第1端子電極81及び第2端子電極82を形成する。
【0088】
工程(12)はソルダーレジスト膜形成工程であり、パッシベーション層6の表面、第1端子電極81の表面の一部及び第2端子電極82の表面の一部にソルダーレジスト膜9を被覆する。
【0089】
以上に示した例では、第1端子電極81及び第2端子電極82を備える電子部品について例示したが、導体パターン36A,36B,37A,37B,38A,38B、絶縁体層21,22によって構成されるインダクタを含む電子部品に同様に適用できる。
【0090】
なお、第1、第2、第3の実施形態ではパッシブコンポーネントとしてキャパシタを備える電子部品を示し、第4の実施形態ではパッシブコンポーネントとしてインダクタを備える電子部品を示したが、キャパシタとインダクタの両方を含むパッシブコンポーネントを備える電子部品を同様に構成できる。また、複数のキャパシタ、複数のインダクタを含むパッシブコンポーネントを備える電子部品についても同様に構成できる。
【0091】
最後に、本発明は上述した各実施形態に限られるものではない。当業者によって適宜変形及び変更が可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変形及び変更が含まれる。
【符号の説明】
【0092】
AP…開口
E0…給電膜
E1,E2…パッド電極
1…半導体基板
2…絶縁体層
3…導電体層
4…誘電体層(非導電体層)
5…導通路
5A…第1導通路
5B…第2導通路
6…パッシベーション層(非導電体層)
9…ソルダーレジスト膜(非導電体層)
21,22…絶縁体層
31…下部電極
31A…第1下部電極
31B…第2下部電極
32…上部電極
34…基板電極
35…誘電体層電極
36,36A,36B,37A,37B,38A,38B…導体パターン
71…第1引出電極
72…第2引出電極
81…第1端子電極
82…第2端子電極
101,102,103,104…電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12