(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両用マウント装置
(51)【国際特許分類】
B60K 5/12 20060101AFI20240730BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B60K5/12 Z ZHV
B60K5/12 F
F16F15/08 E
(21)【出願番号】P 2023538327
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2022024211
(87)【国際公開番号】W WO2023007978
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-01-09
(31)【優先権主張番号】P 2021122749
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼江洲 亨
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】鹿田 達郎
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/203621(WO,A1)
【文献】特開2020-138693(JP,A)
【文献】特開2015-140059(JP,A)
【文献】特開2012-144142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 5/12
B60K 1/00
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部の収容空間において、上方に高電圧部品が重ねて配置されるパワーユニットを車体に支持する車両用マウント装置であって、
車両の上下方向に締結部材が挿通されて前記パワーユニットに固定される第1部材と、
前記車体側に固定され、前記第1部材を弾性支持する第2部材と、
を備え、
前記第1部材は、前記締結部材に並んで設けられ、前記締結部材よりも上方に突出された板状のリブを有
し、
前記第1部材は、車両前後方向に間隔を空けて設けられた前後一対の前記締結部材で固定され、
前記リブは、前後一対の前記締結部材の間に設けられて、一方の前記締結部材から他方の前記締結部材に向かって車両前後方向に延在される、車両用マウント装置。
【請求項2】
前記リブは、車両前後方向に延在され、その上端には、車両前後方向前方から後方に向けて漸次高くなる傾斜面を有する、
請求項1に記載の車両用マウント装置。
【請求項3】
前記第1部材は、前記締結部材に並んで設けられ、前記締結部材よりも上方に突出された板状の他のリブを有し、
前記
他のリブは、前後一対の前記締結部材と車幅方向に並んで車両前後方向に延在され、前後一対の前記締結部材の間の間隔よりも車両前後方向前方及び後方に延びている、
請求項1又は2に記載の車両用マウント装置。
【請求項4】
前記第1部材は、車両前後方向で高さの異なる箇所を前後一対の前記締結部材で固定され、
前記締結部材が固定される前記箇所は、車両前方側より車両後方側の方が高い位置とされ、
前記リブの傾斜面は、前後一対の前記締結部材の間隔と高低差に合わせた傾斜とされる、
請求項2に記載の車両用マウント装置。
【請求項5】
前記
他のリブは、前記締結部材よりも車両前後方向前方側で車幅方向に延設される部位を含む、
請求項3に記載の車両用マウント装置。
【請求項6】
前記
他のリブは、前記締結部材に対して車幅方向に位置して車両前後方向に延設される部位と、前記締結部材に対して車両前後方向に位置して車幅方向に延設される部位とを有して、前記第1部材の外周縁に沿って設けられる、
請求項3に記載の車両用マウント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーユニットを車体に支持する車両用マウント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータとが組み合わされた駆動源(パワーユニット)が搭載されるハイブリッド車両(HV)やプラグインハイブリッド車両(PHEV)では、収容スペースや高電圧線のレイアウトの関係上、モータを制御するパワー制御ユニット等(インバータ等)の高電圧部品がパワーユニットの上方に配置されるレイアウトが採られているものがある。このような車両の場合、高電圧部品は車体(サイドメンバ)への支持構造上、サイドメンバ寄りに配置されるため、車両の前面衝突時など高電圧部品が変位(後退)した際に、パワーユニットを支持するマウント装置等と干渉する可能性がある。特にマウント装置のパワーユニット側に固定されるマウントアダプタがパワーユニットから突設されるスタッドボルトで固定される場合、車両の衝突によって高電圧部品が変位した際にスタッドボルトと干渉して高電圧部品の破損につながる虞があった。
【0003】
そのため、高電圧部品(パワー制御ユニット)を支持するトレーにガイド部を設けて高電圧部品の変位をコントロールするものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する高電圧部品(パワー制御ユニット)の支持構造では、トレーが大型となる上、構造が複雑となり、コストや重量の面で不利であった。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、パワーユニットの上方に高電圧部品が配置される車両において、車両の衝突によって高電圧部品がマウント装置と干渉したとしてもスタッドボルト等の締結部材と干渉するのを防止して高電圧部品の保護性能を向上させることができる車両用マウント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る車両用マウント装置は、車両前部の収容空間において、上方に高電圧部品が重ねて配置されるパワーユニットを車体に支持する車両用マウント装置であって、車両の上下方向に締結部材が挿通されて前記パワーユニットに固定される第1部材と、前記車体側に固定され、前記第1部材を弾性支持する第2部材と、を備え、前記第1部材は、前記締結部材に並んで設けられ、前記締結部材よりも上方に突出された板状のリブを有する。
【0008】
上記(1)の構成によれば、車両の衝突によって高電圧部品が車両前後方向後方下方域に後退した場合でも、高電圧部品が締結部材よりも上方に突出された板状のリブにガードされるので、高電圧部品が締結部材に干渉するのを抑制できる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品の保護性能を向上することができる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、前記リブは、車両前後方向に延在され、その上端には、車両前後方向前方から後方に向けて漸次高くなる傾斜面を有する。
【0010】
上記(2)の構成によれば、車両の衝突によって高電圧部品が車両前後方向後方下方域に後退した場合でも、高電圧部品がリブの車両前後方向前方から後方に向けて漸次高くなる傾斜面にガイドされるので、高電圧部品の下降が制限され、高電圧部品が締結部材に干渉するのを抑制できる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品の保護性能を向上させることができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、前記第1部材は、車両前後方向に間隔を空けて設けられた前後一対の前記締結部材で固定され、前記リブは、前後一対の前記締結部材の間に設けられて、一方の前記締結部材から他方の前記締結部材に向かって車両前後方向に延在される。
【0012】
上記(3)の構成によれば、車両の衝突によって高電圧部品が車両前後方向後方下方域に後退した場合でも、車両前後方向一方(前方)の締結部材から他方(後方)の締結部材に向かって車両前後方向に延在するリブに高電圧部品が確実にガードされるので、高電圧部品が締結部材に干渉するのを確実に抑制できる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品の保護性能を向上させることができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、前記第1部材は、車両前後方向に間隔を空けて設けられた前後一対の前記締結部材で固定され、前記リブは、前後一対の前記締結部材と車幅方向に並んで車両前後方向に延在され、前後一対の前記締結部材の間の間隔よりも車両前後方向前方及び後方に延びている。
【0014】
上記(4)の構成によれば、車両の衝突によって高電圧部品が車両前後方向後方下方域に後退した場合でも、前後一対の締結部材と車幅方向に並んで車両前後方向に延在され、前後一対の締結部材の間の間隔よりも車両前後方向前方及び後方に延びているリブに高電圧部品がガードされるので、高電圧部品が締結部材に干渉するのを確実に抑制できる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品の保護性能を向上させることができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、前記第1部材は、車両前後方向で高さの異なる箇所を前後一対の前記締結部材で固定され、前記締結部材が固定される前記箇所は、車両前方側より車両後方側の方が高い位置とされ、前記リブの傾斜面は、前後一対の前記締結部材の間隔と高低差に合わせた傾斜とされる。
【0016】
上記(5)の構成によれば、リブの傾斜面は前後一対の締結部材の間隔と高低差に合わせた傾斜(傾き)とされるので、第1部材から突出された板状のリブの高さを制限しつつ、車両の衝突によって高電圧部品が車両前後方向下方に後退した場合でも、リブが高電圧部品の締結部材への干渉を防止して高電圧部品を第1部材の上方側に誘導することができる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品の保護性能を向上させることができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(2)から(5)のいずれか一つの構成において、前記リブは、前記締結部材よりも車両前後方向前方側で車幅方向に延設される部位を含む。
【0018】
上記(6)の構成によれば、リブは、締結部材よりも車両前後方向前方側で車幅方向に延設される部位を含むので、車両の衝突によって高電圧部品が車両前後方向後方下方域に後退した場合でも、高電圧部品がリブの車幅方向に延設される部位にガードされるので、高電圧部品が締結部材に干渉するのを抑制できる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品の保護性能を向上させることができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)から(6)のいずれか一つの構成において、前記リブは、前記締結部材に対して車幅方向に位置して車両前後方向に延設される部位と、前記締結部材に対して車両前後方向に位置して車幅方向に延設される部位とを有して、前記第1部材の外周縁に沿って設けられる。
【0020】
上記(7)の構成によれば、リブは、締結部材に対して車幅方向に隣り合う位置に位置して車両前後方向に延設される部位と、締結部材に対して車両前後方向に隣り合う位置に位置して車幅方向に延設される部位とを有して、第1部材の外周縁に沿って設けられるので、車両の衝突によって高電圧部品が車両前後方向下方に後退した場合でも、リブが高電圧部品の締結部材への干渉を防止して高電圧部品を第1部材の上方側に誘導することができる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品の保護性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、
車両衝突時における高電圧部品の保護性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用マウント装置と周辺構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した車両用マウント装置を含む周辺構成の拡大斜視図である。
【
図3】
図2に示した車両用マウント装置を含む周辺構成の平面図である。
【
図4】
図2に示した車両用マウント装置を含む周辺構成の左側面図である。
【
図5】車両の衝突前における高電圧部品、パワーユニット及びマウントアダプタの位置関係を示す図である。
【
図6】車両の衝突後における高電圧部品、パワーユニット及びマウントアダプタの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用マウント装置1とその周辺構成を概略的に示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車両用マウント装置1は、車両前部に設けられたエンジンルーム2(収容空間)において、パワーユニット3を車体に支持するためのものである。本発明の実施形態に係る車両用マウント装置1では、パワーユニット3の上方に高電圧部品4が重ねて配置されている。パワーユニット3は、例えば、エンジン、トランスアスクル、ジェネレータ及びモータによって構成されるが、これら全てを備えるものに限られるものではない。
【0025】
本発明の実施形態に係る車両用マウント装置1は、マウントアダプタ5(第1部材)とマウント本体6(第2部材)とを備える。マウントアダプタ5及びマウント本体6は、エンジンルーム2において、パワーユニット3(
図2参照)を車体部材23にマウントするための部材である。
【0026】
本発明の実施形態に係るマウントアダプタ5及びマウント本体6は、パワーユニット3を吊り下げた状態で車体部材23にマウントするものであり、本発明の実施形態に係るマウントアダプタ5の車両前後方向前方上方域には高電圧部品4が配置されている(
図5参照)。換言すると、高電圧部品4の車両前後方向後方下方域にマウントアダプタ5が配置され、車両の衝突によってエンジンルーム2の前部に設けられた車体部材21に押されて高電圧部品4がマウントアダプタ5に接近する(
図6参照)。
【0027】
高電圧部品4は、例えば、パワードライブユニット(以下「PDU」という)であり、例えば、インバータと可変電圧システムで構成され、高電圧バッテリ(図示せず)から高電圧電力(直流電力)が供給される。高電圧部品4は、例えば、フロントブラケット41及びサイドブラケット43に支持され、エンジンルーム2の前部に設けられた車体部材21及びエンジンルーム2の側部に設けられた車体部材23に対して固定される。
【0028】
本発明の実施形態に係るパワーユニット3は、複数のスタッドボルト31~34(締結部材)が設けられたパワーユニット3であって、マウントアダプタ5は、車両の上下方向に複数のスタッドボルト31~34が挿通されてパワーユニット3に固定される。複数のスタッドボルト31~34の先端は作業性の観点から尖っており、マウントアダプタ5のセットやナット掛けを容易にしている。複数のスタッドボルト31~34は、例えば、四本のスタッドボルトであり、二本のスタッドボルト31,32が車両前後方向前方に設けられ、残りの二本のスタッドボルト33,34が車両前後方向後方に前記二本のスタッドボルト31,32と間隔を空けて設けられる。四本のスタッドボルト33~34は、パワーユニット3のマウントアダプタ5の設置位置の形状に合わせて設けられ、車両前後方向後方の二本のスタッドボルト33,34は、前方の二本のスタッドボルト31,32よりも高い位置に設けられている。
【0029】
マウント本体6は、車体側に固定され、マウントアダプタ5を弾性支持する。マウント本体6は、門型の金具61及びマウントゴム62により構成され、車体とマウントアダプタ5との間、及びマウントアダプタ5と門型の金具61との間にマウントゴム62を介在させることにより、マウントアダプタ5を弾性支持する。
【0030】
図2は、
図1に示した車両用マウント装置1を含む周辺構成の拡大斜視図である。
図3は、
図2に示した車両用マウント装置1を含む周辺構成の平面図であり、
図4は、
図2に示した車両用マウント装置1を含む周辺構成の左側面図である。
【0031】
図2に示すように、マウントアダプタ5はパワーユニット3のマウントアダプタ5の設置位置の形状に合わせて設けられ、パワーユニット3に設けられた複数のスタッドボルト31~34に対応する位置に貫通穴が設けられている。マウントアダプタ5は、例えば、車両前後方向前方側よりも後方側が高くなるように設けられ、スタッドボルト33~34が貫通しナット7が着座する座面がスタッドボルト33~34と直交するように、階段状に設けられている(
図4参照)。
【0032】
マウントアダプタ5は、車両前後方向に間隔を空けて設けられた前後一対のスタッドボルト31(32),33(34)で固定される。例えば、マウントアダプタ5は、車両前後方向に間隔を空けて設けられた前後一対の貫通穴を貫通した前後一対のスタッドボルト31(32),33(34)にナット7を嵌合させることで、固定される。
【0033】
図2に示すように、マウントアダプタ5は複数のリブ51~53を有している。複数のリブ51~53の各々は、板状であって、スタッドボルト31~34(スタッドボルト31~34が貫通する穴)に並んで設けられ、スタッドボルト31~34よりも突出する(
図4参照)。
図2に示す例では、複数のリブは三つのリブであり、そのうち二つのリブ51,52は、スタッドボルト31~34(スタッドボルト31~34が貫通する穴)に対して車両前後方向に並んで設けられ、残りの一つのリブ53は、三つのスタッドボルト31~34(スタッドボルト31~34が貫通する穴)に対して隣り合うように並んで設けられる。このように構成すれば、車両の衝突によって高電圧部品4が車両前後方向後方に後退した場合でも、高電圧部品4がスタッドボルト31~34よりも上方に突出された板状のリブ51~53にガードされるので、高電圧部品4がスタッドボルト31~34に干渉するのを抑制できる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品4の保護性能を向上させることができる。
【0034】
図2及び
図4に示すように、複数のリブ51~53の各々は、車両前後方向に延在され、その上端には、車両前後方向前方から後方に向けて漸次高くなる傾斜面51a~53aを有している。このように構成すれば、車両の衝突によって高電圧部品4が車両前後方向後方に後退した場合でも、高電圧部品4がリブ51~53の車両前後方向前方から後方に向けて漸次高くなる傾斜面51a~53aにガイドされるので、高電圧部品4の下降が制限され、高電圧部品4がスタッドボルト31~34に干渉するのを抑制できる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品4の保護性能を向上させることができる。
【0035】
図2に示す例では、複数のリブ51~53は三つのリブであり、二つのリブ52,53の傾斜面52a,53aは車幅方向において同一の高さであり、同一の傾斜角度で漸次高くなるように設けられ、残りの一つのリブ51の傾斜面51aも頂上付近で車幅方向において二つのリブ52,53の傾斜面52a,53aと同一高さとなり、同一の傾斜角度で漸次高くなるように設けられている(
図4参照)。このように構成すれば、高電圧部品4からの荷重を二つのリブ52,53又は三つのリブ51~53で負担するので、応力の集中が回避され、高電圧部品4が損傷するのを抑制できる。
【0036】
図2及び
図3に示すように、複数のリブ51~53のうち二つのリブ51,52の各々は、車両前後方向に配置された一対のスタッドボルト31~34(スタッドボルト31~34が貫通する穴)の間に設けられる。
図2に示す例では、二つのリブ51,52の各々が一対のスタッドボルト31~34の間に設けられて、一方(前方)のスタッドボルト31,32から他方(後方)のスタッドボルト33,34に延在する。尚、
図3に示すように、二つのリブ51,52のうち一方のリブ51は車両前後方向に対して傾いているが、車両前後方向に配置された一対のスタッドボルト31,33の間に設けられることに変わりはない。このように構成すれば、車両の衝突によって高電圧部品4が車両前後方向後方下方域に後退した場合でも、車両前後方向一方(前方)のスタッドボルト31(32)から他方(後方)のスタッドボルト33(34)に向かって車両前後方向に延在するリブ51(52)に高電圧部品4がリブ51,52に確実にガードされるので、高電圧部品4がスタッドボルト31~34に干渉するのを確実に抑制できる(
図6参照)。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品4の保護性能を向上させることができる。
【0037】
複数のリブ51~53のうち一つのリブ53は、車両前後方向に配置された一対のスタッドボルト32,34と車幅方向に並んで車両前後方向に延在され、一対のスタッドボルト32,34の間の間隔よりも車両前後方向前方及び後方に延びている。このように構成すれば、車両の衝突によって高電圧部品4が車両前後方向後方下方域に後退した場合でも、前後一対のスタッドボルト32,34と車幅方向に並んで車両前後方向に延在され、前後一対のスタッドボルト32,34の間の間隔よりも車両前後方向前方及び後方に延びているリブ53に高電圧部品4がガードされるので、高電圧部品4がスタッドボルト32,34に干渉するのを確実に抑制できる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品4の保護性能を向上させることができる。
【0038】
図2及び
図4に示すように、スタッドボルト31~34は、車両前後方向において高さの異なる複数のスタッドボルト31~34を含み、マウントアダプタ5は、車両前後方向で高さの異なる箇所を前後一対のスタッドボルト31(32),33(34)で固定される。複数のスタッドボルト31~34で固定される箇所は、車両前方側よりも車両後方側の方が高い位置とされる。そして、リブ51~53の傾斜面51a~53aは、前後一対のスタッドボルト31(32),33(34)の間隔と高低差に合わせた傾斜とされる。このような構成によれば、リブ51~53の傾斜面51a~53aは前後一対のスタッドボルト31(32),33(34)の間隔と高低差に合わせた傾斜(傾き)とされるので、マウントアダプタ5から突出された板状のリブ51~53の高さを制限しつつ、車両の衝突によって高電圧部品4が車両前後方向下方に後退した場合でも、リブ51~53が高電圧部品4のスタッドボルト31~34への干渉を防止して高電圧部品4をマウントアダプタ5の上方側に誘導することができる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品4の保護性能を向上させることができる。
【0039】
図2及び
図3に示すように、複数のリブ51~53のうち一つのリブ53は車幅方向に沿って延設される部位533を含む。
図2及び
図3に示す例では、複数のリブ51~53のうち一つのリブ53は、車両前後方向前方の設けられたスタッドボルト31~34よりも車両前後方向前方側で車幅方向に延設される部位533を含む。このように構成すれば、リブ53は、スタッドボルト31~34よりも車両前後方向前方側で車幅方向に延設される部位533を含むので、車両の衝突によって高電圧部品4が車両前後方向後方下方域に後退した場合でも、高電圧部品4がリブの車幅方向に延設される部位533にガードされるので、高電圧部品4がスタッドボルト31~34に干渉するのを抑制できる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品4の保護性能を向上させることができる。
【0040】
また、車幅方向に沿って延設される部位533は、傾斜面53aに連続する、車両前後方向前方から後方に漸次高くなる傾斜面を有している。
【0041】
複数のリブ51~53のうち一つのリブ53は、スタッドボルト31~34に対して車両前後方向に延設される部位531と、スタッドボルト31~34に対して車両前後方向に位置して車幅方向に延設される部位533を有する。そして、これら部位531,533はマウントアダプタ5の外周縁に沿って設けられる。このように構成すれば、リブ53は、スタッドボルト31~34に対して車幅方向に隣り合う位置に位置して車両前後方向に延設される部位531と、スタッドボルト31~34に対して車両前後方向に隣り合う位置に位置して車幅方向に延設される部位533とを有して、マウントアダプタ5の外周縁に沿って設けられるので、車両の衝突によって高電圧部品4が車両前後方向下方に後退した場合でも、リブ53が高電圧部品4のスタッドボルト31~34への干渉を防止して高電圧部品4をマウントアダプタ5の上方側に誘導することができる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、車両衝突時における高電圧部品4の保護性能を向上させることができる。
【0042】
図5は、車両の衝突前のおける高電圧部品4、パワーユニット3及びマウントアダプタ5の位置関係を示す図であり、
図6は、車両の衝突後における高電圧部品4、パワーユニット3及びマウントアダプタ5の位置関係を示す図である。
【0043】
図5に示すように、車両の衝突前は、パワーユニット3を吊り下げた状態で車体部材(図示せず)にマウントするマウントアダプタ5の車両前後方向上方前方域に高電圧部品4が配置される。高電圧部品4は、フロントブラケット41及びサイドブラケット(図示せず)に支持され、エンジンルーム2の前部に設けられた車体部材21及びエンジンルーム2の側部に設けられた車体部材(図示せず)に対して固定される。よって、車両の衝突前は、高電圧部品4とマウントアダプタ5との間に十分な間隔があり、高電圧部品4がマウントアダプタ5やパワーユニット3に干渉することはない。
【0044】
図6に示すように、車両が衝突すると、エンジンルーム2の前部に設けられた車体部材(図示せず)に押されてフロントブラケット41及びサイドブラケット(図示せず)が変形し、高電圧部品4が後退し、高電圧部品4がマウントアダプタ5に接近する。そして、高電圧部品4がマウントアダプタ5に衝突した場合であっても、高電圧部品4はマウントアダプタ5に設けられたリブ51~53にガードされ、リブ51~53の傾斜面51a~53aにガイドされながら後退する。よって、高電圧部品4がスタッドボルト31~34に干渉することなく、高電圧部品4の下降が抑制される。
【0045】
上述した実施形態に係るマウントアダプタ5によれば、車両の衝突によって高電圧部品4が車両前後方向後方下方に後退した場合でも、高電圧部品4がスタッドボルト31~34に干渉するのを抑制できる。これにより、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、
車両衝突時における高電圧部品4の保護性能を向上させることができる。
【0046】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0047】
なお、本出願は、2021年7月27日出願の日本特許出願(特願2021-122749)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0048】
1 車両用マウント装置
2 エンジンルーム(収容空間)
21 車体部材
23 車体部材
3 パワーユニット
31,32,33,34 スタッドボルト(締結部材)
4 高電圧部品
41 フロントブラケット
43 サイドブラケット
5 マウントアダプタ(第1部材)
51,52,53 リブ
51a,52a,53a 傾斜面
531 車両前後方向に延設される部位
533 車幅方向に延設される部位
6 マウント本体(第2部材)
61 門型の金具
62 マウントゴム
7 ナット