(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】アンテナ部品
(51)【国際特許分類】
H01Q 7/08 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H01Q7/08
(21)【出願番号】P 2023556146
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2022032360
(87)【国際公開番号】W WO2023074108
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2024-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2021175457
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 崇
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/186408(WO,A1)
【文献】特開2007-043588(JP,A)
【文献】国際公開第2012/153691(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体コアと、
前記磁性体コアに巻き付けられている1次コイルであって、第1端及び第2端を有している1次コイルと、
前記磁性体コアに巻き付けられている第1の2次コイルであって、コンデンサを介して前記第1端に電気的に接続される第3端、及び前記第2端に電気的に接続されている第4端を有している第1の2次コイルと、
前記第1端に電気的に接続されている第1端子と、
前記第2端に電気的に接続されている第2端子と、
を備えており、
前記第1端子及び前記第2端子を介して信号が入力し、
前記第4端から前記第3端に向かって見たときの前記第1の2次コイルの周回方向は、前記第1端から前記第2端に向かって見たときの前記1次コイルの周回方向と同じであり、
(A)又は(B)の構造を備えている、
アンテナ部品。
(A)
前記アンテナ部品は、
前記1次コイル及び前記第1の2次コイルと共に共振器を形成する前記コンデンサを、
更に備えている。
(B)
前記コンデンサは、前記アンテナ部品の外に設けられており、かつ、前記1次コイル及び前記第1の2次コイルと共に共振回路を形成する。
【請求項2】
前記磁性体コアは、前後方向に延びる棒形状を有しており、
前記第1の2次コイル及び前記1次コイルは、前から後へとこの順に並んでおり、
前記第1の2次コイルは、第1の2次コイル第1部分、第1の2次コイル第2部分を含んでおり、
前記第1の2次コイル第1部分及び前記第1の2次コイル第2部分は、直列に接続されていると共に、互いに間隔を開けた状態で前から後へとこの順に並んでいる、
請求項1に記載のアンテナ部品。
【請求項3】
前記アンテナ部品は、
前記磁性体コアに巻き付けられている第2の2次コイルであって、第5端及び第6端を有している第2の2次コイルを、
更に備えており、
前記第2の2次コイルは、前記コンデンサと直列に接続されており、
前記第3端は、前記コンデンサ及び前記第2の2次コイルを介して前記第1端に電気的に接続されており、
前記第5端は、前記コンデンサを介して前記第3端に電気的に接続されており、
前記第6端は、前記第1端に電気的に接続されており、
前記第6端から前記第5端に向かって見たときの前記第2の2次コイルの周回方向は、前記第1端から前記第2端に向かって見たときの前記1次コイルの周回方向と同じである、
請求項1に記載のアンテナ部品。
【請求項4】
前記磁性体コアは、前後方向に延びる棒形状を有しており、
前記第2の2次コイル、前記第1の2次コイル及び前記1次コイルは、前から後へとこの順に並んでいる、
請求項3に記載のアンテナ部品。
【請求項5】
前記コンデンサは、前記第1の2次コイルと前記第2の2次コイルとの間に位置している、
請求項4に記載のアンテナ部品。
【請求項6】
前記磁性体コアは、前後方向に延びる棒形状を有しており、
前記第2の2次コイル、前記1次コイル及び前記第1の2次コイルは、前から後へとこの順に並んでいる、
請求項3に記載のアンテナ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアンテナ部品に関する発明としては、磁界発生回路が知られている。この磁界発生回路は、トランスと共振コンデンサとを備えている。トランスは、1次コイル及び2次コイルを含んでいる。共振コンデンサは、2次コイルに並列に接続されている。これにより、2次コイル及び共振コンデンサは、並列共振回路を形成している。交流電圧は、1次コイルに印加される。交流電圧の周波数は、並列共振回路の共振周波数と等しい。そのため、並列共振回路において共振が発生する。これにより、2次アンテナから効率よく磁界が放射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の磁界発生回路では、1次コイルと2次コイルとをより強く磁界結合させたいという要望がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、1次コイルと2次コイルとの磁界結合を強くすることができるアンテナ部品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るアンテナ部品は、
磁性体コアと、
前記磁性体コアに巻き付けられている1次コイルであって、第1端及び第2端を有している1次コイルと、
前記磁性体コアに巻き付けられている第1の2次コイルであって、コンデンサを介して前記第1端に電気的に接続される第3端、及び前記第2端に電気的に接続されている第4端を有している第1の2次コイルと、
前記第1端に電気的に接続されている第1端子と、
前記第2端に電気的に接続されている第2端子と、
を備えており、
前記第1端子及び前記第2端子を介して信号が入力し、
前記第4端から前記第3端に向かって見たときの前記第1の2次コイルの周回方向は、前記第1端から前記第2端に向かって見たときの前記1次コイルの周回方向と同じである、
(A)又は(B)の構造を備えている、
アンテナ部品。
【0007】
(A)
前記アンテナ部品は、
前記1次コイル及び前記第1の2次コイルと共に共振器を形成する前記コンデンサを、
更に備えている。
【0008】
(B)
前記コンデンサは、前記アンテナ部品の外に設けられており、かつ、前記1次コイル及び前記第1の2次コイルと共に共振回路を形成する。
【0009】
以下に、本明細書における用語の定義について説明する。本明細書において、前後方向に延びる軸や部材は、必ずしも前後方向と平行である軸や部材だけを示すものではない。前後方向に延びる軸や部材とは、前後方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸や部材のことである。同様に、上下方向に延びる軸や部材とは、上下方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸や部材のことである。左右方向に延びる軸や部材とは、左右方向に対して±45°の範囲で傾斜している軸や部材のことである。
【0010】
以下に、本明細書における部材の位置関係について定義する。XないしZは、アンテナ部品の部材又は部分である。本明細書において、前後方向に並ぶX及びYとは、以下の状態を示す。前後方向に垂直な方向にX及びYを見たときに、X及びYの両方が前後方向を示す任意の直線上に配置されている状態である。本明細書において、上下方向に見たときに前後方向に並ぶX及びYとは、以下の状態を示す。上下方向にX及びYを見たときに、X及びYの両方が前後方向を示す任意の直線上に配置されている。この場合、上下方向とは異なる左右方向からX及びYを見ると、X及びYのいずれか一方が前後方向を示す任意の直線上に配置されていなくてもよい。なお、XとYとが接触していてもよい。XとYとが離れていてもよい。XとYとの間にZが存在していてもよい。この定義は、前後方向以外の方向にも適用される。
【0011】
本明細書において、XがYの上に配置されるとは、以下の状態を指す。Xの少なくとも一部は、Yの真上に位置している。従って、上下方向に見て、Xは、Yと重なっている。この定義は、上下方向以外の方向にも適用される。
【0012】
本明細書において、XがYより上に配置されるとは、Xの少なくとも一部がYの真上に位置している場合、及びXがYの真上に位置せずにXがYの斜め上に位置している場合を含む。この場合、上下方向に見て、Xは、Yと重なっていなくてもよい。斜め上とは、例えば、左上、右上である。この定義は、上下方向以外の方向にも適用される。
【0013】
本明細書において、特に断りのない場合には、Xの各部について以下のように定義する。Xの前部とは、Xの前半分を意味する。Xの後部とは、Xの後半分を意味する。Xの左部とは、Xの左半分を意味する。Xの右部とは、Xの右半分を意味する。Xの上部とは、Xの上半分を意味する。Xの下部とは、Xの下半分を意味する。Xの前端とは、Xの前方向の端を意味する。Xの後端とは、Xの後方向の端を意味する。Xの左端とは、Xの左方向の端を意味する。Xの右端とは、Xの右方向の端を意味する。Xの上端とは、Xの上方向の端を意味する。Xの下端とは、Xの下方向の端を意味する。Xの前端部とは、Xの前端及びその近傍を意味する。Xの後端部とは、Xの後端及びその近傍を意味する。Xの左端部とは、Xの左端及びその近傍を意味する。Xの右端部とは、Xの右端及びその近傍を意味する。Xの上端部とは、Xの上端及びその近傍を意味する。Xの下端部とは、Xの下端及びその近傍を意味する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンテナ部品の構造を複雑化することを抑制しつつ、1次コイルと1次コイル及び2次コイルを含む共振コイルとの磁界結合を強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】
図3は、比較例に係るアンテナ部品110の回路図である。
【
図4】
図4は、比較例に係るアンテナ部品110の上面図である。
【
図5】
図5は、共振回路の共振周波数と等しい周波数の高周波信号をアンテナ部品110に入力したときの共振電流I2の波形である。
【
図6】
図6は、共振回路の共振周波数と等しい周波数の高周波信号をアンテナ部品10に入力したときの共振電流I2の波形である。
【
図7】
図7は、アンテナ部品10aの上面図である。
【
図8】
図8は、アンテナ部品10bの回路図である。
【
図9】
図9は、アンテナ部品10bの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
[アンテナ部品10の構造]
以下に、本発明の一実施形態に係るアンテナ部品10の構造について図面を参照しながら説明する。
図1は、アンテナ部品10の回路図である。
図2は、アンテナ部品10の上面図である。
【0017】
以下では、
図2に示すように、1次コイルL1及び第1の2次コイルL2-1が並ぶ方向を前後方向と定義する。また、磁性体コア14は、上主面及び下主面を有する平板形状を有している。磁性体コア14の上主面及び下主面の法線方向を上下方向と定義する。左右方向は、前後方向及び左右方向に直交している。また、前後方向、左右方向及び上下方向は、便宜上、定義した方向であり、アンテナ部品10の実使用時の前後方向、左右方向及び上下方向と一致している必要はない。
【0018】
アンテナ部品10は、VLF帯(3kHz~30kHz)やLF帯(30kHz~300kHz)等の近距離通信システムの送信用のアンテナ部品である。アンテナ部品10は、主に車両ドアの施解錠を遠隔操作するキーレスエントリーシステムに用いられる。また、アンテナ部品10は、NFC(Near Field Communication)に用いられてもよいし、磁界共鳴方式ワイヤレス給電システムに用いられてもよい。
【0019】
アンテナ部品10は、
図1及び
図2に示すように、本体12、磁性体コア14、第1端子T1、第2端子T2、1次コイルL1、第1の2次コイルL2-1及びコンデンサCを備えている。
【0020】
本体12は、
図2に示すように、枠部12a及び実装部12bを含んでいる。枠部12aは、上下方向に見て、長方形状の外縁を有する枠形状を有している。枠部12aの長辺は、前後方向に延びている。枠部12aの短辺は、左右方向に延びている。実装部12bは、板形状を有している。そのため、実装部12bは、上主面及び下主面を有している。実装部12bは、上下方向に見て、長方形状を有している。実装部12bの長辺は、前後方向に延びている。実装部12bの短辺は、左右方向に延びている。実装部12bの前短辺は、枠部12aの後短辺に接している。このような枠部12a及び実装部12bは、一体成型されており、単一の部材である。本体12の材料は、絶縁材料である。本体12の材料は、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等の樹脂である。
【0021】
磁性体コア14は、前後方向に延びる棒形状を有している。より詳細には、磁性体コア14は、板形状を有している。そのため、磁性体コア14は、上主面及び下主面を有している。磁性体コア14は、上下方向に見て、長方形状を有している。磁性体コア14の長辺は、前後方向に延びている。磁性体コア14の短辺は、左右方向に延びている。磁性体コア14は、枠部12aに取り付けられている。磁性体コア14は、上下方向に見て、枠部12aに囲まれている。磁性体コア14の材料は、磁性体材料である。磁性体コア14の材料は、例えば、Mn-Zn系フェライトやそれ以外のアモルファス系磁性体である。
【0022】
1次コイルL1は、磁性体コア14に巻き付けられている。本実施形態では、1次コイルL1は、磁性体コア14及び枠部12aに巻き付けられている。また、1次コイルL1は、第1端t1及び第2端t2を有している。第1端t1は、第2端t2より後に位置している。従って、第1端t1は、1次コイルL1の後端である。第2端t2は、1次コイルL1の前端である。1次コイルL1は、前方向に見て、時計回り方向に周回しながら、前方向に進行する螺旋形状を有している。従って、1次コイルL1は、第1端t1から第2端t2に向かって見たときに、時計回り方向に周回している。1次コイルL1は、銅等の導電性材料により作製された導線である。
【0023】
第1の2次コイルL2-1は、1次コイルL1の前に位置している。すなわち、第1の2次コイルL2-1及び1次コイルL1は、前から後へとこの順に並んでいる。第1の2次コイルL2-1は、磁性体コア14に巻き付けられている。第1の2次コイルL2-1は、磁性体コア14及び枠部12aに巻き付けられている。第1の2次コイルL2-1は、第3端t3及び第4端t4を有している。第3端t3は、第4端t4より前に位置している。従って、第3端t3は、第1の2次コイルL2-1の前端である。第4端t4は、第1の2次コイルL2-1の後端である。第3端t3は、後述するコンデンサCを介して第1端t1に電気的に接続されている。第4端t4は、第2端t2に電気的に接続されている。第1の2次コイルL2-1は、前方向に見て、時計回り方向に周回しながら、前方向に進行する螺旋形状を有している。従って、第1の2次コイルL2-1は、第4端t4から第3端t3に向かって見たときに、時計回り方向に周回している。これにより、第4端t4から第3端t3に向かって見たときの第1の2次コイルL2-1の周回方向は、第1端t1から第2端t2に向かって見たときの1次コイルL1の周回方向と同じである。また、第1の2次コイルL2-1の巻き数は、1次コイルL1の巻き数より多い。第1の2次コイルL2-1は、銅等の導電性材料により作製された導線である。
【0024】
第1端子T1は、第1端t1に電気的に接続されている。第1端子T1は、実装部12bの上主面の右部に固定されている。第1端子T1は、実装部12bから後方向に突出している。第2端子T2は、第2端t2に電気的に接続されている。第2端子T2は、実装部12bの上主面の左部に固定されている。第2端子T2は、実装部12bから後方向に突出している。第1端子T1は、単一の金属部材である。第2端子T2は、単一の金属部材である。第1端子T1の材料及び第2端子T2の材料は、銅等の導電性材料である。
【0025】
コンデンサCは、1次コイルL1及び第1の2次コイルL2-1と共に共振器を形成している。1次コイルL1及び第1の2次コイルL2-1を共振コイルL0と定義する。従って、コンデンサCは、共振コイルL0と共に共振器を形成している。コンデンサCは、例えば、チップ型電子部品である。コンデンサCは、
図2に示すように、実装部12bの上主面に実装されている。コンデンサCは、第1コンデンサ電極C1及び第2コンデンサ電極C2を含んでいる。第1コンデンサ電極C1は、第3端t3に電気的に接続されている。第2コンデンサ電極C2は、第1端t1に電気的に接続されている。より詳細には、第2コンデンサ電極C2は、第1端子T1に電気的に接続されることにより、第1端子T1を介して第1端t1に電気的に接続されている。
【0026】
以上のような構造を有するアンテナ部品10では、1次コイルL1と共振コイルL0とは、互いに磁界結合することによって、トランスを形成している。より詳細には、第1端子T1及び第2端子T2は、
図1に示すように、信号源100に接続される。信号源100は、高周波信号を発生する。高周波信号の周波数は、共振回路の共振周波数と等しい。本明細書において、2つの周波数が等しいとは、数Hz程度のずれを許容する意味である。これにより、第1端子T1及び第2端子T2を介して高周波信号(信号)が入力する。そして、第1端t1から第2端t2へと1次コイルL1に入力電流I1が流れた場合に、第1端t1から第2端t2と第4端t4を介して第3端t3へと共振コイルL0に共振電流I2が流れるように、1次コイルL1と第1の2次コイルL2-1とが磁界結合している。
【0027】
具体的には、第1端t1から第2端t2へと1次コイルL1に入力電圧V1を印加し、入力電流I1が流れると、1次コイルL1は、後ろ方向に磁界を発生する。第1の2次コイルL2-1内を磁界が通過するため、第3端t3に1次コイルL1と共振コイルL0との電圧変成比(巻数と結合係数によって決まる)に依る相互誘導起電力V2が発生する。この相互誘導起電力によりコンデンサCには、2πfCV2となる電流が流れる。共振状態の場合は、共振コイルL0とコンデンサCとの間に並列共振電流が流れる。並列教師電流の値は、I2=V2/2πfL=2πfCV2であり、入力インピーダンスは極大となる。その結果、アンテナ部品10は、少ない入力電流I1により大きな共振電流I2を得ることができる。そして、アンテナ部品10は、強い磁界を空中に放射できる。なお、アンテナ部品10は、磁界を受信することもできる。
【0028】
[効果]
アンテナ部品10では、1次コイルL1は、入力コイル及び共振コイルとして共用されている。そのため、入力コイルと共振コイルとを極めて近接させて配置することができる。その結果、アンテナ部品10では、1次コイルL1と共振コイルL0との磁界結合を強くすることができる。
【0029】
また、アンテナ部品10によれば、以下の理由によっても、1次コイルL1と第1の2次コイルL2-1との磁界結合を強くすることができる。より詳細には、第4端t4から第3端t3に向かって見たときの第1の2次コイルL2-1の周回方向は、第1端t1から第2端t2に向かって見たときの1次コイルL1の周回方向と同じである。これにより、共振電流I2が流れる事により、1次コイルL1に発生する磁界の方向と、第1の2次コイルL2-1に発生する磁界の方向とが一致するようになる。これにより、1次コイルL1と第1の2次コイルL2-1との磁界結合が強くなる。
【0030】
1次コイルL1と共振コイルL0との磁界結合が強くなると、共振コイルL0が放射する磁束密度の波形に歪が発生することが抑制される。以下に、図面を参照しながら説明する。
図3は、比較例に係るアンテナ部品110の回路図である。
図4は、比較例に係るアンテナ部品110の上面図である。
【0031】
アンテナ部品110では、2次コイルL12とコンデンサCとが共振回路を形成している。共振回路の共振周波数と等しい周波数を有する高周波信号が1次コイルL1に入力する。1次コイルL11と2次コイルL12とが磁界結合している。電磁誘導により電流が2次コイルL12に流れる。ここで、高周波信号の周波数が共振回路の周波数と等しいので、共振回路において共振が発生する。その結果、2次コイルL12が磁界を空中に放射する。ただし、アンテナ部品110では、一般的に、1次コイルL11と2次コイルL12との磁界結合が弱い。
【0032】
一方、アンテナ部品10では、共振コイルL0とコンデンサCが共振回路を形成している。共振コイルの一部が1次コイルL1と共有されており、この共有部においては双方のコイルは完全に磁界結合している。更に、共振電流I2が1次コイルL1を流れる方向と、共振電流I2が第1の2次コイルL2-1を流れる方向とが一致している。これにより、1次コイルL1と共振コイルL0との結合度は極めて高くなっている。1次コイルL1と共振コイルL0との磁界結合が強くなると、アンテナ部品10において、不要なインダクタンス成分が発生することが抑制される。すなわち、アンテナ部品10ではアンテナ部品110よりも不要なインダクタンス成分が発生しにくくなっている。その結果、アンテナ部品10ではアンテナ部品110より異常発振が発生しにくい。よって、アンテナ部品10では、第1の2次コイルL2-1が放射する磁界の強度の波形に歪が発生することが抑制される。
【0033】
ここで、本願発明者は、アンテナ部品10が奏する効果をより明確にするために、実機による測定を行った。具体的には、アンテナ部品110,10に高周波信号を入力し、共振電流I2を測定した。ただし、放射される磁束密度は共振電流I2に比例する。この際、アンテナ部品110,10のそれぞれには、共振回路の共振周波数と等しい周波数の高周波信号を入力した。なお、高周波信号は、Hi期間とLow期間とを有する矩形波である。
【0034】
図5は、共振回路の共振周波数と等しい周波数の高周波信号をアンテナ部品110に入力したときの共振電流I2の波形である。
図6は、共振回路の共振周波数と等しい周波数の高周波信号をアンテナ部品10に入力したときの共振電流I2の波形である。
図5及び
図6では、縦軸は電流値を示し、横軸は時刻を示す。
【0035】
図5に示すように、アンテナ部品110では、共振電流の出力パターンに異常な歪みが生じていることが分かる。
【0036】
一方、
図6に示すように、アンテナ部品10では、共振電流の出力パターンに異常な歪みは見られない。このように、1次コイルL1と第1の2次コイルL2-1との磁界結合が強くなることにより、第1の2次コイルL2-1が空中に放射する磁界の強度の波形に歪が発生することが抑制されることが分かる。
【0037】
このように、トランス構造を持つアンテナでは1次コイルと2次コイルとの磁界結合を強くする事が求められる。一般的な方法としては、例えば、1次コイルが2次コイルに重なるように2次コイルに1次コイルを巻き付ける方法が挙げられる。この場合、2次コイル上に1次コイルを巻き付ける構造がアンテナ部品に必要になる。そのため、1次コイルと2次コイルとを絶縁するための部品や1次コイルと2次コイルとの距離を所定の値に保つための部品等が必要になり、アンテナ部品の部品点数が増加する。また、1次コイルを2次コイルに均一に巻き付ける必要があり、アンテナ部品の製造工程が複雑になる。その結果、アンテナ部品の製造が難しくなる。
【0038】
一方、
図8のように1次コイルL1と第1の2次コイルL2-1を重ねずに配置しても、アンテナ部品10では、1次コイルL1と共振コイルL0の磁界結合を強くすることができるので、第1の2次コイルL2-1に1次コイルL1を巻き付ける必要がない。そのため、アンテナ部品10の部品点数の増加が抑制されると共に、アンテナ部品10の製造工程が単純になる。その結果、アンテナ部品10の製造が容易になる。これにより、アンテナ部品10のコストダウン及び品質向上が図られる。
【0039】
(第1変形例)
以下に第1変形例に係るアンテナ部品10aについて図面を参照しながら説明する。
図7は、アンテナ部品10aの上面図である。
【0040】
アンテナ部品10aは、第1の2次コイルL2-1が、第1の2次コイル第1部分L21、第1の2次コイル第2部分L22及び第1の2次コイル第3部分L23を含んでいる点において、アンテナ部品10と相違する。第1の2次コイル第1部分L21、第1の2次コイル第2部分L22及び第1の2次コイル第3部分L23は、直列に接続されていると共に、互いに間隔を開けた状態で前から後へとこの順に並んでいる。アンテナ部品10aのその他の構造は、アンテナ部品10と同じであるので説明を省略する。また、アンテナ部品10aは、アンテナ部品10と同じ作用効果を奏することができる。
【0041】
また、アンテナ部品10aは、第1の2次コイル第1部分L21、第1の2次コイル第2部分L22及び第1の2次コイル第3部分L23は、直列に接続されていると共に、互いに間隔を開けた状態で前から後へとこの順に並んでいる。これにより、第1の2次コイル第1部分L21と第1の2次コイル第2部分L22との間隔又は第1の2次コイル第2部分L22と第1の2次コイル第3部分L23との間隔を調整することにより、1次コイルL1と第1の2次コイルL2-1との磁界結合の強さを調整することができる。
【0042】
(第2変形例)
以下に第2変形例に係るアンテナ部品10bについて図面を参照しながら説明する。
図8は、アンテナ部品10bの回路図である。
図9は、アンテナ部品10bの上面図である。
【0043】
アンテナ部品10bは、第2の2次コイルL2-2を更に備えている点において、アンテナ部品10と相違する。より詳細には、第2の2次コイルL2-2は、磁性体コア14に巻き付けられている。第2の2次コイルL2-2、第1の2次コイルL2-1及び1次コイルL1は、前から後へとこの順に並んでいる。また、コンデンサCは、第1の2次コイルL2-1と第2の2次コイルL2-2との間に位置している。
【0044】
第2の2次コイルL2-2は、コンデンサCと直列に接続されている。第3端t3は、コンデンサC及び第2の2次コイルL2-2を介して第1端t1に電気的に接続されている。第2の2次コイルL2-2は、第5端t5及び第6端t6を有している。第5端t5は、コンデンサCを介して第3端t3に電気的に接続されている。第6端t6は、第1端t1に電気的に接続されている。第6端t6から第5端t5に向かって見たときの第2の2次コイルL2-2の周回方向は、第1端t1から第2端t2に向かって見たときの1次コイルL1の周回方向と同じである。
【0045】
以上のようなアンテナ部品10bでは、第1端t1から第2端t2へと1次コイルL1に入力電流I1が流れた場合に、第1端t1から第6端t6へと1次コイルL1,第1の2次コイルL2-1及び第2の2次コイルL2-2に共振電流I2が流れるように、1次コイルL1と共振コイルL0(1次コイルL1、第1の2次コイルL2-1及び第2の2次コイルL2-2)とが磁界結合している。アンテナ部品10bのその他の構造は、アンテナ部品10と同じであるので説明を省略する。
【0046】
アンテナ部品10bでは、コンデンサCは、第1の2次コイルL2-1と第2の2次コイルL2-2との間に位置している。これにより、第1の2次コイルL2-1及び第2の2次コイルL2-2を磁性体コア14の全体に位置させることができる。そのため、磁界の放射効率を低下させることなく、アンテナ部品10bの前後方向の長さを抑制できる。
【0047】
(第3変形例)
以下に第3変形例に係るアンテナ部品10cについて図面を参照しながら説明する。
図10は、アンテナ部品10cの回路図である。
図11は、アンテナ部品10cの上面図である。
【0048】
アンテナ部品10cは、1次コイルL1の位置において、アンテナ部品10bと相違する。より詳細には、第2の2次コイルL2-2、1次コイルL1及び第1の2次コイルL2-1は、前から後へとこの順に並んでいる。また、コンデンサCは、実装部12bの上主面に実装されている。そして、第1の2次コイルL2-1の第3端t3は、コンデンサCに電気的に接続されている。第1の2次コイルL2-1の第4端t4は、1次コイルL1の第1端t1及び第1端子T1に電気的に接続されている。第2の2次コイルL2-2の第5端t5は、コンデンサCに電気的に接続されている。第2の2次コイルL2-2の第6端t6は、1次コイルL1の第2端t2及び第2端子T2に電気的に接続されている。アンテナ部品10cのその他の構造は、アンテナ部品10bと同じであるので説明を省略する。アンテナ部品10cは、アンテナ部品10bと同じ作用効果を奏することができる。
【0049】
また、アンテナ部品10cでは、第2の2次コイルL2-2、1次コイルL1及び第1の2次コイルL2-1は、前から後へとこの順に並んでいる。これにより、第1の2次コイルL2-1及び第2の2次コイルL2-2は、1次コイルL1と隣り合うようになる。その結果、第1の2次コイルL2-1及び第2の2次コイルL2-2は、1次コイルL1とより強く磁界結合するようになる。
【0050】
(第4変形例)
以下に第4変形例に係るアンテナ部品10dについて図面を参照しながら説明する。
図12は、アンテナ部品10dの回路図である。
【0051】
アンテナ部品10dは、コンデンサCを備えていない点において、アンテナ部品10と相違する。より詳細には、コンデンサCは、アンテナ部品10dの外に設けられている。アンテナ部品10dは、第3端子T3を更に備えている。第3端子T3は、2次コイルの第3端t3に電気的に接続されている。そして、コンデンサCは、第1端子T1と第3端子T3とに接続される。第1コンデンサ電極C1は、第3端子T3に電気的に接続される。第2コンデンサ電極C2は、第1端子T1に電気的に接続される。これにより、コンデンサCは、1次コイルL1及び第1の2次コイルL2-1と共に共振回路を形成する。アンテナ部品10dのその他の構造は、アンテナ部品10と同じであるので説明を省略する。アンテナ部品10dは、アンテナ部品10と同じ作用効果を奏することができる。
【0052】
(その他の実施形態)
本発明に係るアンテナ部品は、アンテナ部品10,10a~10dに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。また、アンテナ部品10,10a~10dの構造を任意に組み合わせてもよい。
【0053】
なお、アンテナ部品10,10aにおいて、前方向に見て、第1の2次コイルL2-1の周回方向は、1次コイルL1の周回方向と逆方向であってもよい。この場合、第1の2次コイルL2-1の前端(
図8でt3端の位置)は、第2端子T2に電気的に接続される。第1の2次コイルL2-1の後端は、コンデンサCに電気的に接続される。
【0054】
なお、アンテナ部品10bにおいて、前方向に見て、第1の2次コイルL2-1の周回方向は、1次コイルL1の周回方向と逆方向であってもよい。この場合、第2の2次コイルL2-2の前端は、第2端子T2に電気的に接続される。第1の2次コイルL2-1の後端は、第1端子T1に電気的に接続される。
【0055】
なお、アンテナ部品10cにおいて、前方向に見て、第1の2次コイルL2-1の周回方向は、1次コイルL1の周回方向と逆方向であってもよい。この場合、第1の2次コイルL2-1の後端は、第2端子T2に電気的に接続される。第1の2次コイルL2-1の前端は、コンデンサCに電気的に接続される。
【0056】
なお、磁性体コア14の形状は、棒形状に限らない。磁性体コア14の形状は、円筒形状や断面が楕円な筒形状であってもよい。
【0057】
なお、アンテナ部品10bにおいて、コンデンサCは、第1の2次コイルL2-1と第2の2次コイルL2-2との間に位置していなくてもよい。
【0058】
なお、アンテナ部品10aにおいて、第1の2次コイルL2-1は、少なくとも第1の2次コイル第1部分L21及び第1の2次コイル第2部分L22を含んでいればよい。また、第1の2次コイルL2-1は、4個以上の2次コイル部分を含んでいてもよい。
【0059】
なお、信号源100は、一般的に、出力端とグランド端を有する。しかしながら、出力端が第1端子T1に接続され、グランド端が第2端子T2に接続されてもよいし、グランド端が第1端子T1に接続され、出力端が第2端子T2に接続されてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10,10a~10d:アンテナ部品
12:本体
12a:枠部
12b:実装部
14:磁性体コア
100:信号源
C:コンデンサ
C1:第1コンデンサ電極
C2:第2コンデンサ電極
I1:入力電流
I2:共振電流
L1:1次コイル
L2-1:第1の2次コイル
L2-2:第2の2次コイル
L0:共振コイル
L21:第1の2次コイル第1部分
L22:第1の2次コイル第2部分
L23:第1の2次コイル第3部分
T1:第1端子
T2:第2端子
T3:第3端子
t1:第1端
t2:第2端
t3:第3端
t4:第4端
t5:第5端
t6:第6端