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特許7529187ガス分離システム及びメタン富化ガスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ガス分離システム及びメタン富化ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B01D53/22
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024532952
(86)(22)【出願日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2024001095
【審査請求日】2024-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古江 健祐
(72)【発明者】
【氏名】北井 翔大
(72)【発明者】
【氏名】福永 拓生
(72)【発明者】
【氏名】福田 叙彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 智英
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-117687(JP,A)
【文献】特開2020-163282(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056135(WO,A1)
【文献】特開2016-187769(JP,A)
【文献】特開2013-128868(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203994(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、CO2及びCH4を含む原料ガスからCH4富化ガスを製造するために用いられるガス分離システムであって、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に連結する原料ガス供給ラインと、
原料ガス供給ラインに介在配置した圧縮手段と、
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する第1ラインと、
第2ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と原料ガス供給ラインとを連結する第2ラインと、を備え、
前記第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2を、第1ガス分離膜ユニットの運転温度T1に比して低下させる冷却手段を設けた、ガス分離システム。
【請求項2】
40℃において、第1ガス分離膜ユニットのガス透過速度P1’CO2 (40)に比べて、第2ガス分離膜ユニットのガス透過速度P2’CO2 (40)が高い、請求項1に記載のガス分離システム。
【請求項3】
第1ガス分離膜ユニットの運転温度T1における二酸化炭素のガス透過速度P1’CO2 (T1)に比べて、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における二酸化炭素のガス透過速度P1’CO2 (T2)が大きい、請求項1に記載のガス分離システム。
【請求項4】
第2ガス分離膜ユニットに供給されるガス温度t2が30℃以下である、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項5】
第1ガス分離膜ユニットに供給されるガス温度t1よりも、第2ガス分離膜ユニットに供給されるガス温度t2が低い、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項6】
前記運転温度T1とT2との差T1-T2が10℃以上である、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項7】
前記原料ガス供給ラインに、第1ガス分離膜ユニットに供給する原料ガスを加熱する加熱手段を設けた、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項8】
前記ガス分離システムの運転時において、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P1’CO2/P1’CH4が15以上3000以下であり、且つCO2の透過速度P1’CO2が3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上80×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下である、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項9】
前記冷却手段が、第1ラインに介在している、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項10】
第1ガス分離膜ユニットへのガス供給流量のうち、第1ガス分離膜ユニットに還流された流量の割合が、10~60%である、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項11】
第3ガス分離膜ユニットを更に備え、
前記第3ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と、第3ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する第3ラインと、
第3ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と、前記原料ガス供給ラインとを連結する第4ラインを備えた、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項12】
第3ガス分離膜ユニットの運転温度よりも、第2ガス分離膜ユニットの運転温度が低い、請求項11に記載のガス分離システム。
【請求項13】
第2ガス分離膜ユニットの非透過ガスを更に冷却して液化する液化装置を備える、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項14】
冷却された第2ガス分離膜ユニットの非透過ガスを使用して、前記第2ガス分離膜ユニットの運転温度を低下させる、請求項1又は2に記載のガス分離システム。
【請求項15】
少なくともCO2及びCH4を含む原料ガスをガス分離システムに供給してCH4が富化された富化ガスを製造する方法であって、
前記ガス分離システムが、
少なくとも第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に連結する原料ガス供給ラインと、
原料ガス供給ラインに介在配置した圧縮手段と、
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する第1ラインと、
第2ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と原料ガス供給ラインとを連結する第2ラインと、を備え、
前記第2ガス分離膜ユニットの運転温度を、第1ガス分離膜ユニットの運転温度よりも低下させる冷却手段を設けたシステムである、富化ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のガス分離膜ユニットを用いてCO2及びメタン(CH4)を含む混合ガスを分離するガス分離システム及びそれを用いてCH4が富化された富化ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる2種類以上のガスを含む混合ガスを各ガスに分離する方法として、膜に対するガスの透過速度の差を利用した膜分離法が知られている。この方法では、透過ガス及び/又は非透過ガスを回収することにより、目的ガスである高純度の高透過性ガス及び/又は高純度の低透過性ガスを得ることができる。混合ガスに含まれる各ガスの膜に対する単位膜面積・単位時間・単位分圧差あたりの透過体積である透過速度は、P’(単位は、×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg)で表すことができる。また、膜のガス分離選択性は、(高透過性ガスの透過速度/低透過性ガスの透過速度)の比で表すことができる。
【0003】
一般にガス分離膜は、ガス分離選択性の高い膜はガス透過速度が低く、反対にガス透過速度が高い膜はガスの分離選択性が低い。したがって、一段のガス分離膜を用いて混合ガスから低透過性ガスを回収する場合、回収するガスの純度が一定のときには、ガス分離選択性が高い膜を用いた場合、回収率は高くなる。しかし、透過速度が低いため、膜面積を大きくするか、又は運転圧力を高くする必要がある。一方、透過速度が高い膜は、膜面積を大きくしたり、運転圧力を高くしたりする必要はないが、ガス分離選択性が低いため、回収率が低くなる。
【0004】
一般に、ガス選択透過性を有するガス分離膜は、少なくともガス入口、透過ガス排出口、非透過ガス排出口が備えられている容器内に当該ガス分離膜を収容してなるガス分離膜モジュールとして使用されている。ガス分離膜は、そのガス供給側とガス透過側の空間が隔離されるように、容器内に装着されている。ガス分離システムにおいては、通常、所要の膜面積とするために、複数のガス分離膜モジュールを並列に組み合わせたガス分離膜ユニットとして使用される。ガス分離膜ユニットを構成する複数のガス分離膜モジュールは、ガス入口、非透過ガス排出口、透過ガス排出口を共用するため、ガス分離膜ユニットは、実質的に大きいガス分離膜モジュールとして作用する。
【0005】
目的とする低透過性ガスを高純度かつ高回収率で回収するために、このガス分離膜ユニットを多段階に備えたシステムを用いる方法が知られている。多段階のガス分離システムとしては、純度を向上させるために、低透過性ガスが富化された1段目の非透過ガスを更に分離するものや、回収率を向上させるために、1段目の透過ガスに含まれる低透過性ガスを回収するものが挙げられる。
【0006】
複数のガス分離膜ユニットを用いた膜分離により、CO2及びCH4を含む原料ガスからCH4富化ガスを製造する方法が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1には、0~-60℃まで冷却したバイオガスからCH4とCO2を分離することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US2017/0304769A1
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のガス分離システムは、高純度のCH4ガスを少ない膜面積で低コストに得る点で十分なものではない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものである。以下の構成を提供する。
【0010】
〔1〕第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、CO2及びCH4を含む原料ガスからCH4富化ガスを製造するために用いられるガス分離システムであって、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に連結する原料ガス供給ラインと、
原料ガス供給ラインに介在配置した圧縮手段と、
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する第1ラインと、
第2ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と原料ガス供給ラインとを連結する第2ラインと、を備え、
前記第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2を、第1ガス分離膜ユニットの運転温度T1に比して低下させる冷却手段を設けた、ガス分離システム。
【0011】
〔2〕40℃において、第1ガス分離膜ユニットのガス透過速度P1’CO2 (40)に比べて、第2ガス分離膜ユニットのガス透過速度P2’CO2 (40)が高い、〔1〕に記載のガス分離システム。
〔3〕第1ガス分離膜ユニットの運転温度T1における二酸化炭素のガス透過速度P1’CO2 (T1)に比べて、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における二酸化炭素のガス透過速度P1’CO2 (T2)が大きい、〔1〕又は〔2〕に記載のガス分離システム。
【0012】
〔4〕第2ガス分離膜ユニットに供給されるガス温度t2が30℃以下である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【0013】
〔5〕第1ガス分離膜ユニットに供給されるガス温度t1よりも、第2ガス分離膜ユニットに供給されるガス温度t2が低い、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【0014】
〔6〕前記運転温度T1とT2との差T1-T2が10℃以上である、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【0015】
〔7〕前記原料ガス供給ラインに、第1ガス分離膜ユニットに供給する原料ガスを加熱する加熱手段を設けた、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【0016】
〔8〕前記システムの運転時において、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P1’CO2/P1’CH4が15以上3000以下であり、且つCO2の透過速度P1’CO2が3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上80×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下である、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【0017】
〔9〕前記冷却手段が、第1ラインに介在している、〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【0018】
〔10〕第1ガス分離膜ユニットへのガス供給流量のうち、第1ガス分離膜ユニットに還流された流量の割合が、10~60%である、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【0019】
〔11〕第3ガス分離膜ユニットを更に備え、
前記第3ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と、第3ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する第3ラインと、
第3ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と、前記原料ガス供給ラインとを連結する第4ラインを備えた、〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【0020】
〔12〕第3ガス分離膜ユニットの運転温度よりも、第2ガス分離膜ユニットの運転温度が低い、〔11〕に記載のガス分離システム。
【0021】
〔13〕第2ガス分離膜ユニットの非透過ガスを更に冷却して液化する液化装置を備える、〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載のガス分離システム。
【0022】
〔14〕冷却された第2ガス分離膜ユニットの非透過ガスを使用して、前記第2ガス分離膜ユニットの運転温度を低下させる、〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載のガス分離システム。
〔15〕少なくともCO2及びCH4を含む原料ガスをガス分離システムに供給してCH4が富化された富化ガスを製造する方法であって、
前記ガス分離システムが、
少なくとも第1ガス分離膜ユニット及び第2ガス分離膜ユニットを備え、
各ガス分離膜ユニットは、ガス入口、透過ガス排出口及び非透過ガス排出口を少なくとも備え、
第1ガス分離膜ユニットのガス入口に連結する原料ガス供給ラインと、
原料ガス供給ラインに介在配置した圧縮手段と、
第1ガス分離膜ユニットの非透過ガス排出口と第2ガス分離膜ユニットのガス入口とを連結する第1ラインと、
第2ガス分離膜ユニットの透過ガス排出口と原料ガス供給ラインとを連結する第2ラインと、を備え、
前記第2ガス分離膜ユニットの運転温度を、第1ガス分離膜ユニットの運転温度よりも低下させる冷却手段を設けたシステムである、富化ガスの製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の第1実施形態におけるガス分離システムの構成を示す概略図である。
図2図2は、本発明のガス分離システムに用いられるガス分離膜モジュールの一例の構造を示す模式図である。
図3図3は、本発明の第2実施形態におけるガス分離システムの構成を示す概略図である。
図4図4は、本発明のさらに別の形態におけるガス分離システムの構成を示す概略図である。
図5図5は、本発明のさらに別の形態におけるガス分離システムの構成を示す概略図である。
図6図6は、本発明のさらに別の形態におけるガス分離システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書における数値の上限及び下限は、何ら限定なく組み合わせることができる。
図1及び図3~5に示す各ガス分離システムは、第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12を備えている。更に図3及び図5に示すガス分離システムは、更に第3ガス分離膜ユニット13を備えている。
【0025】
各ガス分離膜ユニット11、12及び13としては、例えば、図2に示すとおり、中空糸膜等からなり、ガス選択透過性を有するガス分離膜30をケーシング31内に収容してなるモジュール40を用いることができる。図1図3に示すガス分離膜ユニット11、12及び13は、例えば、図2に示すガス分離膜モジュール40を1本用いたものであるか、或いは、このモジュール40を複数本並列してなるものである。モジュール40におけるケーシング31は、対向する二面が開口して開口部32を形成している。この開口部32は、ガス分離膜30をケーシング31内に挿入するためのものであり、ガス分離膜30の開口部ではない点に留意すべきである。ガス分離膜30は、この開口部32を通じてケーシング31内に収容される。ガス分離膜30が中空糸膜束からなる場合、該ガス分離膜30はその収容状態において、ケーシング31の各開口部32の付近において中空糸膜の各端部が開口するように、ケーシング31内に収容される。
【0026】
ガス分離膜30がケーシング31内に収容された状態においては、中空糸膜の延びる方向であるY方向の両端部の位置において、ガス分離膜30が管板33及び34によってケーシング31の内壁に固定されている。ケーシング31の各開口部32は、蓋体35及び36によって閉塞されている。蓋体35にはガス入口37が設けられている。一方、蓋体36には非透過ガス排出口38が設けられている。分離対象となる混合ガスは、蓋体35のガス入口37からモジュール内に導入される。導入されたガスのうち、ガス分離膜30を透過したガスは、ケーシング31に設けられた透過ガス排出口39からモジュール外に排出される。一方、ガス分離膜30を透過しなかった非透過ガスは、蓋体36の非透過ガス排出口38からモジュール外に排出される。また、場合によっては、ケーシング31にパージガスの供給口(図示せず)を設けてもよい。以上、図2の分離膜モジュールを例に挙げて説明したが、当然ながら、本発明は他の構成の分離膜モジュールにも応用可能であり、例えば、シェルフィード型のモジュールにも応用できる。
【0027】
図1に戻ると、同図に示すとおり、第1ガス分離膜ユニット11と、第2ガス分離膜ユニット12とが直列に接続されている。具体的には、第1ガス分離膜ユニット11と、第2ガス分離膜ユニット12とは、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス排出口11bと、第2ガス分離膜ユニット12のガス入口12aとを第1ライン14によって連結することで接続されている。
【0028】
以下では、第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12の各ガス入口、各排出口、供給されるガス、透過ガス、非透過ガスに対し、それぞれ「第1」、「第2」の語を付して説明する場合がある。後述する第3ガス分離膜ユニット13に関する構成についても同様である。また、下記でいう「上流」及び「下流」は原料ガス流れ方向に基づく。
また、システム10では、各ガス分離膜ユニットにおいて、CO2が、ガス分離膜に対する透過速度の大きいガス、つまり高透過性ガスであり、CH4が、ガス分離膜に対する透過速度の小さいガス、つまり低透過性ガスである。
【0029】
第1ガス分離膜ユニット11の第1ガス入口11aには、原料ガス源(図示せず)からの原料ガスを第1ガス分離膜ユニット11へ供給するための原料ガス供給ライン26が連結されている。原料ガス供給ライン26の途中には、圧縮手段21が介在配置されている。
第2ガス分離膜ユニット12の透過ガス排出口12cは、第2ライン17によって、原料ガス供給ライン26に連結している。具体的には、第2ライン17は、第2透過ガス排出口12cと、原料ガス供給ライン26の圧縮手段21の吸込側の位置と連結している。
【0030】
圧縮手段21は、原料ガス源から供給された原料ガスを加圧する目的で設置されている。また、第2ガス分離膜ユニット12から排出された第2透過ガスを、第2ライン17を通じて第1ガス分離膜ユニット11に帰還させるときに、該透過ガスを加圧する目的で設置されている。圧縮手段21としては、当該技術分野においてこれまで用いられてきた手段と同様のものを用いることができる。例えばコンプレッサ(圧縮機)を用いることができる。システムに供給される時点で原料ガスは通常水分を0~10質量%程度含有している。
【0031】
第2ガス分離膜ユニット12の非透過ガス排出口12bには、CH4が濃縮富化された非透過ガスを取り出すための回収ライン15が連結されている。回収ライン15には、非透過ガス排出口12bの下流側に、第2非透過ガス排出口12bから排出されたCH4ガス(CH4富化ガス)を液化する液化手段50が設けられていてもよい。液化メタン製造用のCH4ガスには、規格により不純物濃度を数十ppmv程度に抑えた高純度メタンが要求されるが、本発明では、低コストに当該純度を達成することができる。
【0032】
原料ガス供給ライン26における圧縮手段21の原料ガス流通方向の下流には、圧縮手段21により圧縮された原料ガスを冷却可能な冷却手段23が設けられている。また冷却手段23の下流には、冷却手段により冷却されて生じた水分等の凝縮流を原料ガス供給ライン26から分離して除去するための凝縮流ライン24、及び、前記凝縮流が分離された原料ガスを所望の温度に加熱する加熱手段25が設けられている。冷却手段23としては、従来公知のものを使用でき、熱交換器などがあげられる。加熱手段25としては、従来公知のヒーターが使用できる。
【0033】
本システム10は、第2ガス分離膜ユニット12の運転温度を、第1ガス分離膜ユニット11の運転温度よりも低下させる冷却手段22を設けたことを特徴の一つとする。ここでいう運転温度は、該当するガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の温度をいう。冷却手段22は、第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜を直接冷却してもよく、第2ガス分離膜ユニット12に供給される第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス(第2供給ガス)を冷却することで前記のガス分離膜を冷却してもよい。
本実施形態では、冷却手段22は第1ライン14に介在配置されて、第2供給ガスを冷却する。
【0034】
第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜モジュールのガス分離膜としては、例えば高分子材料からなるガス分離膜が用いられる。ガス分離膜は、例えばフィルム状の平膜や、中空繊維状の中空糸膜等の形態で用いることができる。特に、ガス分離膜として中空糸膜を用いて、これを複数本束ねた中空糸膜エレメントに構成して用いることが、処理量を高める点から好ましい。
【0035】
ガス分離膜を構成する高分子材料としては、CH4に対し、CO2の選択的な透過能を有するものが好ましく用いられる。そのような高分子材料としては、ガラス状ポリマー材料又はゴム状ポリマー材料が挙げられる。例えばガラス状ポリマー材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、酢酸セルロース等のセルロース系材料、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリカーボネートなどが挙げられる。ゴム状ポリマー材料としては、シリコーン樹脂やポリブタジエン樹脂等が挙げられる。
特に、本発明の効果が一層顕著なものとなる観点から、第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜としてポリイミドを用いることが好ましい。
また、第1ガス分離膜ユニット11、及び後述する第3ガス分離膜ユニット13を構成するガス分離膜の材料としてもポリイミドを用いることが好ましい。
【0036】
ガス分離膜としてポリイミドを用いる場合には、テトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを用いてポリアミド酸を合成し、このポリアミド酸を熱処理して脱水・イミド化することで得ることができる。
【0037】
テトラカルボン酸成分としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物や芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いることができる。一方、ジアミン成分としては、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンを用いることができる。
【0038】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル-3,3',4,4' -テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸-1,2:4,5-二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3;5,6-テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0039】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、好ましくは2~3個の芳香族環を有するものが好ましく、例えば、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4'-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ビス(無水フタル酸)(なお、この化合物は2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物ともいう。)、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、m-ターフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0040】
脂肪族ジアミンとしては、trans-1,4-ジアミノシクロへキサン、cis-1,4-ジアミノシクロへキサン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、重量平均分子量が500以下のポリオキシプロピレンジアミンなどが挙げられる。
【0041】
芳香族ジアミンとしては、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4'-オキシジアニリン、3,4'-オキシジアニリン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,4-トルエンジアミン、3,3'-ジヒドロキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、ビス(4-アミノ-3-カルボキシフェニル)メタン、2,4-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸、3,7-ジアミノ-2,8-ジメチルジベンゾチオフェン=5,5-ジオキシドを主成分とし、メチル基の位置が異なる異性体3,7-ジアミノ-2,6-ジメチルジベンゾチオフェン=5,5-ジオキシド、3,7-ジアミノ-4,6-ジメチルジベンゾチオフェン=5,5-ジオキシド、2,2’,5,5’-テトラクロロベンジジン、3,3’,5,5’-テトラクロロベンジジン、3,3’-ジクロロベンジジン、2,2’-ジクロロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサクロロベンジジン、2,2’,5,5’-テトラブロモベンジジン、3,3’,5,5’-テトラブロモベンジジン、3,3’-ジブロモベンジジン、2,2’-ジブロモベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサクロロベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメチル-ジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジエチル-ジフェニルスルホンなどが挙げられる。
【0042】
本発明においては、第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜の材料としてポリイミドを用いる場合、特に芳香族ポリイミドを用いてもよい。芳香族ポリイミドは、芳香族テトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミン成分とを用いて得ることができる。
【0043】
本発明においては、第1ガス分離膜ユニット11、及び後述する第3ガス分離膜ユニット13を構成するガス分離膜の材料としてとしてポリイミドを用いる場合、芳香族ポリイミドを用いてもよい。
【0044】
第1ガス分離膜ユニット11、第2ガス分離膜ユニット12及び第3ガス分離膜ユニット13としてポリイミドからなるガス分離膜を用いる場合には、該ガス分離膜として非対称膜を用いてもよい。非対称膜は一般に、目的とするガスの分離を行う緻密な構造のスキン層と、それを支える多孔質層の2層構造を有している。
【0045】
第1ガス分離膜ユニット11、第2ガス分離膜ユニット12、及び第3ガス分離膜ユニット13を構成するガス分離膜として、特に好適に用いられるものは、スキン層の厚さが10nm以上200nm以下であり、多孔質層の厚さが20μm以上200μm以下の非対称構造を持ち、内径が30μm以上500μm以下程度であるポリイミドの中空糸ガス分離膜である。
【0046】
以上の構成を有する本実施形態のガス分離システム10の動作について説明する。分離対象となるCH4及びCO2を含む原料ガスは、原料ガス源(図示せず)から原料ガス供給ライン26を通じて第1ガス分離膜ユニット11に供給される。原料ガスは、圧縮手段21によって加圧され、その圧力が上昇する。
【0047】
原料ガスは、圧縮手段21にて圧縮された後に、冷却手段23にて冷却され、水分を含む凝縮物53が凝縮流ライン24を通じて原料ガスから分離除去される。凝縮物53が分離除去された原料ガスは加熱手段25にて一定温度に加熱された状態で第1ガス分離膜ユニット11内に供給される。
【0048】
圧縮手段21によって加圧された原料ガスが第1ガス分離膜ユニット11に供給されると、ガス分離膜に対する透過速度の差に起因して、ガス分離膜を透過したガスである第1透過ガスと、ガス分離膜を透過しなかったガスである第1非透過ガスとに分離される。
【0049】
第1ガス分離膜ユニット11から排出された第1非透過ガスは、原料ガスに比べてCH4が濃縮されたものである。第1非透過ガスは、第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス排出口11bから排出され、第1ライン14を通じて第2ガス分離膜ユニット12に供給される。
一方、第1ガス分離膜ユニット11から排出された第1透過ガスは、原料ガスに比べてCO2が濃縮されたものである。第1透過ガスは、第3ライン18を通じてシステム外に取り出される。
【0050】
第1ガス分離膜ユニット11から排出された第1非透過ガスは、冷却手段22により冷却されて、第1ガス分離膜ユニット11の運転温度T1よりも、低い温度で第2ガス分離膜ユニット12に供給され、第2ガス分離膜ユニット12のガス分離膜に接触する。これにより、第2ガス分離膜ユニット12の運転温度T2は、第1ガス分離膜ユニット11の運転温度よりも低温となる。この温度条件にて、第1非透過ガス(第2供給ガス)は、第2ガス分離膜ユニット12のガス分離膜によって第2透過ガスと第2非透過ガスとに分離される。第2ガス分離膜ユニット12から排出された第2非透過ガスは、CH4が更に濃縮富化されている。第2非透過ガスは、同ユニット12の第2非透過ガス排出口12bから回収ライン15を通じて液化装置50に供給されて更に冷却され、液化されてもよい。
一方、第2透過ガスは、第2ガス分離膜ユニット12の第2透過ガス排出口12cから排出され、該排出口12cに接続されている第2ライン17を経由して、原料ガス供給ライン26における圧縮手段21の吸込側に帰還される。
【0051】
第2ガス分離膜ユニット12から排出され,第2ライン17を経由して帰還された第2透過ガスは、原料ガスと混合された後に、圧縮手段21によって加圧される。
【0052】
以上の通り、本発明のガス分離システムは、冷却手段22により、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2を、第1ガス分離膜ユニット11の運転温度T1よりも低下させる。第2ガス分離膜ユニット12では、運転温度の低下に伴い、CO2とCH4の分離選択性が向上する。これに起因して、第2ライン17を通じて原料ガス供給ライン26に合流する第2透過ガスの量(以下、第1ガス分離膜ユニット11以外のユニットから原料ガスに合流されるガス量合計を「還流量」ともいう)を低減させながら、第2非透過ガスの高いCH4純度を実現させることができる。還流量の低減により圧縮動力を低減できるため、本発明により、低コストにて高い純度のCH4を製造できる。本実施形態では従来用いられていたポリイミドの中空糸膜を第2ガス分離膜ユニット12のガス分離膜に用いて、運転温度を制御することでCH4純度を効果的に向上させることができる。
【0053】
第1ガス分離膜ユニット11に供給される原料ガス(第1供給ガス)の温度よりも、第2ガス分離膜ユニットに供給される第1非透過ガス(第2供給ガス)の温度が低くなるように冷却手段22で第2供給ガスを冷却することが、簡便なシステムで第2ガス分離膜ユニット12の運転温度を低下させる点で好ましい。なお、本明細書において、各ガス分離膜ユニットへの供給ガスの温度とは、各ガス分離膜ユニットのガス入口に供給される時点の温度をいう。
【0054】
本発明では、第1ガス分離膜ユニット11の運転温度T1が第2ガス分離膜ユニット12の運転温度T2よりも高く設定される。これにより、第1ガス分離膜ユニット11のCO2及びCH4の透過速度が高いことに起因して少ない膜面積でも高い処理能力が得られるため、設備コストを低減できる。
【0055】
更に、本実施形態では、冷却手段22により既に一定程度温度が低下した第2非透過ガスを、液化装置50にて冷却することもできる。この場合、液化装置での液化に必要なエネルギーを低減させることができ、液化メタンを低コストに製造することができる。
【0056】
第2非透過ガス中のCH4純度を一層高める点から、第2供給ガスの温度t2は、当該ガス中の水の露点超であることが好ましい。上述した、冷却手段23、凝縮流ライン24、及び加熱手段25を用いることにより、第2供給ガスの水の露点を十分に低下させることができる。第2供給ガスの温度t2は、第2ガス分離膜ユニット12に供給される時点の第1非透過ガスのガス温度を指す。一方、本明細書でいう、第1供給ガス温度t1とは、第1ガス分離膜ユニット11に供給される時点の、原料ガスのガス温度を指す。ユニットに供給するガス温度により分離膜の温度を制御する場合には、第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12の運転温度は、それぞれ第1供給ガスの温度t1及び第2供給ガスの温度t2と同じ温度とみなすことができる。
【0057】
第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCO2の透過速度P2’CO2 (T2)は、運転温度T1における第1ガス分離膜ユニットを構成するCO2の透過速度P1’CO2 (T1)に対し、0.5以上であることが好ましく、0.65以上がより好ましく、0.75以上がより好ましい。特に、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCO2の透過速度P2’CO2 (T2)は、運転温度T1における第1ガス分離膜ユニットを構成するCO2の透過速度P1’CO2 (T1)に比して大きいことが、膜面積を低下させる点で好ましい。この観点から、P2’CO2 (T2)がP1’CO2 (T1)に対し、1超が好ましく、1.4以上が更に好ましく、1.5以上が更に好ましく、1.7以上が特に好ましい。一方、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCO2の透過速度P2’CO2 (T2)は、運転温度T1の温度における第1ガス分離膜ユニットを構成するCO2の透過速度P1’CO2 (T1)に対する比が、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5以下が更に一層好ましく、4以下が特に好ましい。
前記を勘案すると、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCO2の透過速度P2’CO2 (T2)は、第1ガス分離膜ユニットを構成するCO2の透過速度P1’CO2 (T1)に対し、0.5以上7以下であることが好ましく、0.65以上7以下がより好ましく、0.75以上7以下が更に好ましく、1超7以下が特に好ましく、1.4以上6以下であることが更に一層好ましく、1.5以上5以下であることが特に好ましく、1.7以上4以下であることが最も好ましい。
このようなCO2の透過速度とすることで、低コストに高純度CH4ガスを得る効果を一層高めることができる。
【0058】
更に、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P2’CO2/P2’CH4 (T2)が、第1ガス分離膜ユニットの運転温度T1における第1ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P1’CO2/P1’CH4 (T1)に対し、0.4以上13以下であることが、膜面積を効果的に低下させるとともに圧縮動力を低下させて低コストに高純度CH4ガスが得られる点で好ましく、0.5以上12以下であることがより好ましく、0.6以上7以下であることが更に好ましく、特に圧縮動力を低下する点から、0.7以上5以下であることが特に好ましい。
このような分離選択性及びCO2の透過速度とすることで、低コストに高純度CH4ガスを得る効果を一層高めることができる。
【0059】
また、40℃において、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の透過速度P2’CO2 (40)が、第1ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の透過速度P1’CO2 (40)に比して、高いことが第2ガス分離膜ユニット12の膜面積を低減する点で好ましい。この点から、40℃における第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜の透過速度P2’CO2 (40)が、40℃における第1ガス分離膜ユニット11を構成するガス分離膜の透過速度P1’CO2 (40)を1としたときに1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.4以上であることが更に好ましい。また、40℃におけるP2’CO2 (40)は、40℃における第1ガス分離膜ユニット11を構成するガス分離膜の透過速度P1’CO2 (40)を1としたときに12以下であることが、ガス分離膜の入手容易性の点で好ましく、CH4ガス純度の点で5以下であることが好ましい。
また、40℃において、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P2’CO2/P2’CH4 (40)が、第1ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P1’CO2/P1’CH4 (40)に比して、低いことが第2ガス分離膜ユニット12の膜面積の低減の点で好ましい。
第2ガス分離膜ユニット12の膜面積を一層効果的に低減するために、40℃における第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜の分離選択性P2’CO2/P2’CH4 (40)が、40℃における第1ガス分離膜ユニット11を構成するガス分離膜の分離選択性P1’CO2/P1’CH4 (40)を1としたときに0.8以下であることが好ましく、0.75以下であることがより好ましく、0.70以下であることが更に好ましく、0.60以下であることが特に好ましい。また、40℃におけるP2’CO2/P2’CH4 (40)は、40℃における第1ガス分離膜ユニット11を構成するガス分離膜の分離選択性P1’CO2/P1’CH4 (40)を1としたときに0.2以上であることが、ガス分離膜の入手容易性の点で好ましく、CH4ガス純度の点では0.3以上であることが好ましい。
40℃はCO2及びCH4を膜分離する一般的な運転温度であるため、本形態では指標としてこの温度での選択性も規定する。
【0060】
第1供給ガスt1の温度は0~60℃が好ましく、10~50℃がより好ましく、20~40℃が更に好ましい。第1供給ガスの温度t1を前記の範囲内とすることで、CO2透過速度を調整して膜面積を抑制しながらCH4純度を高めやすい点で好ましい。また、本形態の第1ガス分離膜ユニット11のガス分離膜は通常、CH4に比べてH2Oガスの選択性が高いので、第1供給ガスをこのような温度域とすることで、第1ガス分離膜ユニット11中での水分凝縮を防ぎ、ユニット内の水分透過が実現できるため、第2供給ガス中の水分含量を低減し、露点を低下させることができる。
第1ガス分離膜ユニット11の運転温度T1の好ましい温度範囲としては第1供給ガスt1の温度の好ましい範囲と同様の範囲が挙げられ、0~60℃が好ましく、10~50℃がより好ましく、20~40℃が更に好ましい。
【0061】
第2供給ガスの温度t2は、30℃以下であることが、第2非透過ガス中のCH4純度及び所要圧縮動力低下効果に一層優れるため好ましい。この観点から、第2供給ガスの温度は30℃以下が好ましく、25℃以下がより好ましく、20℃以下が更に好ましく、10℃以下が特に好ましい。また、第2供給ガスの温度t2は、-50℃以上であることが、第2ガス分離膜ユニット12のガス分離機能が低下することを回避する点や、第2ガス分離膜ユニット12に供給される第1非透過ガスにおける水の露点以上の温度にしやすい点で好ましく、-40℃以上がより好ましく、-30℃以上が更に好ましく、-20℃以上が特に好ましい。
第2ガス分離膜ユニット12の運転温度T2の好ましい温度範囲としては第2供給ガスの温度t2の好ましい範囲と同様の範囲が挙げられ、-50~30℃が好ましく、-40~25℃がより好ましく、-30~20℃が更に好ましく、-20℃~10℃が特に好ましい。
【0062】
第1供給ガスの温度t1と第2供給ガスt2の温度差t1-t2は、10℃以上であることが、所要圧縮動力が少なく低コストで高純度のCH4ガスを得る効果を高める点で更に好ましく、15℃以上であることが特に好ましい。温度差t1-t2は大きくしすぎないことでガス分離膜の機能低下を防止する点や膜面積を低下する点から110℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、55℃以下が特に好ましい。
第1ガス分離膜ユニット11の運転温度T1と第2ガス分離膜ユニット12の運転温度T2との温度差T1-T2としてはt1-t2と同様に、10℃以上110℃以下が好ましく、15℃以上90℃以下がより好ましく、15℃以上55℃以下が更に好ましい。
【0063】
更に、システムに供給される原料ガスの温度T0と圧縮手段21に吸い込みされる時点の原料ガスの温度T0’との温度差T0-T0’は2℃以上であることが所要圧縮動力を下げやすく低コストで高純度のCH4ガスを得る効果を高める点で好ましく、3℃以上であることがより好ましく、7℃以上であることがさらに好ましく、10℃以上であることが特に好ましい。温度差T0-T0’は大きくしすぎないことで原料ライン内の凍結・閉塞を防止する観点から30℃以下が好ましい。
【0064】
限定されるものではないが、例えば第2ガス分離膜ユニット12に供給されるガス(以下「第2供給ガス」ともいう。)の水の露点は-70℃以上0℃以下が好ましく、-50℃以上-8℃以下がより好ましい。この露点は、第2ガス分離膜ユニット12に供給される圧力下での温度である。
ここで、第2供給ガスの水の露点は、還流量を低下させると、第2供給ガスの中の水の露点は低下する傾向にある。この理由は還流量を低下させることで第1供給ガスの水分量が低下しやすいため、これに伴い、第2供給ガスの水の露点が低下する。
このような理由によって、本発明では高純度CH4ガスが一層得やすいものとなる。
【0065】
本実施形態において、第1ガス分離膜ユニットへのガス供給流量(第1供給ガスの流量F1)のうち、第1ガス分離膜ユニット以外のガス分離膜ユニットから還流された流量(F4)の割合(以下、「還流率」ともいう)が60%以下であることが、一層運転コストを低減する点で好ましく、50%以下であることがより好ましい。また、還流率は例えばその下限が10%以上であると、膜面積を抑制できる点で好ましく、20%以上がより好ましい。
【0066】
本発明においては、効率よく高回収率で高純度のCH4を得るために、40℃における第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜のガス分離選択性(CO2透過速度P1’CO2/CH4の透過速度P1’CH4 (40))は、30以上150以下であることが好ましく、35以上130以下であることがより好ましく、40以上120以下が更に好ましく、50以上110以下が特に好ましい。
【0067】
本発明においては、圧縮動力及び膜面積を抑制しつつ、高回収率で高純度のCH4を得るために、40℃における第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜の二酸化炭素の透過速度P1CO2 (40)は、1.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上100×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、2×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上45×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがより好ましく、3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上25×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが更に好ましく、7×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上15×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下が特に好ましい。
【0068】
本発明においては、圧縮動力及び膜面積を抑制しつつ、高純度のCH4を得るために、40℃における第1ガス分離膜ユニットのガス分離膜のCH4の透過速度P1CH4 (40)は、0.03×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、0.05×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上0.8×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがより好ましく、0.05×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上0.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下が更に好ましく、0.08×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上0.2×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが特に好ましい。
【0069】
第1ガス分離膜ユニットの運転温度T1における第1ガス分離膜ユニット11の分離選択性、CO2、CH4の透過速度の好ましい範囲としては、上記の40℃での分離選択性、CO2、CH4の透過速度の好ましい範囲と同様の範囲が挙げられる。
【0070】
本発明においては、効率よく高回収率で高純度のCH4を得るために、40℃における第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜のガス分離選択性(二酸化炭素の透過速度P2CO2/CH4の透過速度P2CH4 (40))は、5以上150以下であることが好ましく、10以上90以下であることがより好ましく、15以上65以下であることが更に好ましく、20以上55未満であることが特に好ましい。
【0071】
本発明においては、圧縮動力及び膜面積を抑制しつつ、高回収率で高純度のCH4を得るために、40℃における第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜の二酸化炭素の透過速度P2CO2 (40)は、1.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上100×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、7×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上90×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがより好ましく、15×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上80×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが特に好ましく、20×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg超75×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが最も好ましい。
【0072】
本発明においては、圧縮動力及び膜面積を抑制しつつ、高純度のCH4を得るために、40℃における第2ガス分離膜ユニットのガス分離膜のCH4の透過速度P2CH4 (40)は、0.03×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、0.08×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上2.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがより好ましく、0.3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上1.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下が更に好ましく、0.8×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg超1.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下が特に好ましい。
【0073】
更に、第2ガス分離膜ユニット12の運転温度T2において、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P2’CO2/P2’CH4 (T2)が、15以上3000以下であるように第2供給ガスを冷却することが、膜面積を効果的に低下させるとともに圧縮動力を低下させて低コストに高純度CH4ガスが得られる点で好ましく、20以上1400以下であるように第2供給ガスを冷却することがより好ましく、30以上800以下であることが更に好ましく30以上700以下であることが特に好ましい。第2供給ガスの温度t2においても、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P2’CO2/P2’CH4 (T2)と同様の数値範囲であることが好ましい。
【0074】
また第2ガス分離膜ユニット12の運転温度T2において、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCO2の透過速度P2’CO2 (T2)が3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上80×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下となるように、第2供給ガスを冷却することが、膜面積を効果的に低下させるとともに圧縮動力を低下させて低コストに高純度CH4ガスが得られる点で好ましく、4×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上60×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下となるように、第2供給ガスを冷却することがより好ましく、5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上55×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下となることが更に好ましく、6×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上50×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下となることが特に好ましい。第2供給ガスの温度t2においても、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCO2の透過速度P2’CO2 (T2)と同様の数値範囲であることが好ましい。
【0075】
また第2ガス分離膜ユニット12の運転温度T2において、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCH4の透過速度P2’CH4が0.002×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上1×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下となるように、第2供給ガスを冷却することが、膜面積を効果的に低下させるとともに所要圧縮動力を低下させて低コストに高純度CH4ガスが得られる点で好ましく、0.005×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上0.8×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下となるように、第2供給ガスを冷却することがより好ましく、0.01×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上0.6×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下となることが更に好ましく、0.01×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上0.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下となる事が特に好ましい。第2供給ガスの温度t2においても、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCO2の透過速度P2’CO2 (T2)と同様の数値範囲であることが好ましい。
【0076】
本発明では、得られる第2非透過ガス中のCO2濃度が体積基準で100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。このように不純物の少ない高純度CH4ガスであることで、液化が可能となるためである。
【0077】
また、得られる第2非透過ガス中のH2O濃度が体積基準で50ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましい。このように不純物の少ない高純度CH4ガスであることで、液化が可能となるためである。
【0078】
本発明で用いる原料ガスは、少なくともCO2とCH4を含むガスであり、例えば、バイオガス、ランドフィルガスや天然ガスなどが挙げられる。なおバイオガスとは、バイオマス原料を嫌気性の条件下で微生物と接触させて微生物によるCH4発酵等の発酵処理を行うことに伴い発生するガスである。バイオマス原料としては食品廃棄物、農業残渣、下水汚泥、畜産系廃棄物等の有機物が挙げられる。ランドフィルガスは、廃棄物埋立地において有機物の微生物分解等により発生するガスを指す。バイオガスやランドフィルガスは通常、主にCO2とCH4から構成される。
【0079】
本発明において原料ガスは、CH4を30mol%以上含むものであることが好ましく、40~95mol%含むことが特に好ましい。また本発明において原料ガスは、CO2を3~70mol%含むものであることが、本発明のガス分離システムの技術的意義が高い点で好ましく、5~60mol%含むものであることが特に好ましい。
第1透過ガスのCO2濃度が85~99mol%であることが好ましく、88~98mol%であることがより好ましい。
第1非透過ガスのCO2濃度が5~45mol%であることが好ましく、8~40mol%であることがより好ましい。
第2透過ガスのCO2濃度が20~85mol%であることが好ましく、25~80mol%であることがより好ましい。
【0080】
なお、圧縮手段21の圧力は、通常第1ガス分離膜ユニット11に供給されるガスの圧力として、0.2MPaG以上3.0MPaG以下が好ましく、0.3MPaG以上2.4MPaG以下が更に好ましい。
【0081】
次に、図3に基づき、本発明の第2実施形態であるガス分離システム10’を説明する。第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0082】
図3に示すガス分離システム10’は、第1ガス分離膜ユニット11と、第3ガス分離膜ユニット13とが直列に接続されている。具体的には、第1ガス分離膜ユニット11と、第3ガス分離膜ユニット13とは、第1ガス分離膜ユニット11の透過ガス排出口11cと、第3ガス分離膜ユニット13のガス入口13aとを第3ライン18によって連結することで接続されている。第3ガス分離膜ユニット13を構成するガス分離膜モジュールとしては第1ガス分離膜ユニット11と、第2ガス分離膜ユニット12と同様のものを採用できる。
【0083】
第3ガス分離膜ユニット13においては、その非透過ガス排出口13bが、第4ライン41によって原料ガス供給ライン26と連結している。図3の形態では、第4ライン41は、原料ガス供給ライン26における圧縮手段21の吸込側の位置に連結している。図3の例では、第3ガス分離膜ユニット13の透過ガス排出口13cに第3透過ガス排出ライン19を連結している。
【0084】
圧縮手段21は、ガス源から供給された原料ガスや第2ガス分離膜ユニット12から帰還した第2透過ガスのほか、第3ガス分離膜ユニット13から帰還した第3非透過ガスを加圧する目的で設置されている。
【0085】
以上の構成を有する本実施形態のガス分離システム10’におけるガス分離のための運転時のガス経路について図3に基づき説明する。分離対象となる原料ガスは、混合ガス源(図示せず)から原料ガス供給ライン26を通じて第1ガス分離膜ユニット11に供給される。供給に先立ち、原料ガスは、圧縮手段21によって加圧され、その圧力が上昇する。
【0086】
第1実施形態と同様に、圧縮手段21によって加圧された状態の原料ガスが第1ガス分離膜ユニット11に供給されると、第1透過ガスと、第1非透過ガスとに分離される。第1ガス分離膜ユニット11から排出された第1透過ガスは、第3ライン18を通じて第3ガス分離膜ユニット13に供給される。第3ガス分離膜ユニット13に導入された第1透過ガスは、同ユニット13によって第3透過ガスと第3非透過ガスとに分離される。第3透過ガスは、第3ガス分離膜ユニット13に導入された第1透過ガスに比べて、CO2が更に濃縮富化されており、同ユニット13の透過ガス排出口13cから第3透過ガス排出ライン19を通じてシステム外に取り出される。一方、第3非透過ガスは、第3ガス分離膜ユニット13の非透過ガス排出口13bから排出され、該排出口13bに接続されている第4ライン41を経由して、原料ガス供給ライン26における圧縮手段21の吸込側に帰還される。ライン41を通じて帰還された第3非透過ガスは、原料ガスと混合された後に、圧縮手段21によって加圧される。
【0087】
第3ライン18には、第2の圧縮手段が介在していても、介在していなくてもよい。
【0088】
本実施形態のガス分離システム10’は、冷却手段22により、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2を、第3ガス分離膜ユニット13の運転温度T3よりも低下させることが好ましい。これにより、第3ガス分離膜ユニット13のCO2及びCH4の透過速度を高めて第3ガス分離膜ユニット13の膜面積を低減できるため、設備コストを低減できる。
第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2を、第3ガス分離膜ユニット13の運転温度T3よりも低下させるために、第3ガス分離膜ユニット13に供給される第1透過ガス(第3供給ガス)の温度t3よりも、第2ガス分離膜ユニットに供給される第2供給ガスの温度t2が低くなるように冷却手段22で第2供給ガスを冷却することが、システムを簡便なものとする点で好ましい。
【0089】
第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCO2の透過速度P2’CO2 (T2)は、運転温度T3における第3ガス分離膜ユニットを構成するCO2の透過速度P3’CO2 (T3)に対し、0.5以上であることが好ましく、0.65以上がより好ましく、0.75以上がより好ましい。さらに、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCO2の透過速度P2’CO2 (T2)は、運転温度T3における第3ガス分離膜ユニットを構成するCO2の透過速度P3’CO2 (T3)に比して大きいことが、膜面積を低下させる点で好ましい。この観点から、P2’CO2 (T2)がP3’CO2 (T3)に対し、1超が好ましく、1.4以上が更に好ましく、1.5以上が更に好ましく、1.7以上が特に好ましい。一方、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜のCO2の透過速度P2’CO2 (T2)は、運転温度T3における第3ガス分離膜ユニットを構成するCO2の透過速度P3’CO2 (T3)に対する比が、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5以下が更に一層好ましく、4以下が特に好ましい。
このようなCO2の透過速度とすることで、低コストに高純度CH4ガスを得る効果を一層高めることができる。
【0090】
更に、第2供給ガスの温度において、第2ガス分離膜ユニットの運転温度T2における第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P2’CO2/P2’CH4 (T2)が、第3ガス分離膜ユニットの運転温度T3における第3ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P3’CO2/P3’CH4 (T3)に対し、0.4以上13以下であることが、膜面積を効果的に低下させて低コストに高純度CH4ガスが得られる点で好ましく、0.5以上12以下であることがより好ましく、圧縮動力を低下する点から、0.6以上7以下であることがさらに好ましく、0.7以上5以下であることが特に好ましい。
【0091】
40℃において、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の透過速度P2’CO2 (40)が、第3ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の透過速度P3’CO2 (40)に比して、高いことが第2ガス分離膜ユニット12の膜面積を低減する点で好ましい。この点から、40℃における第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜の透過速度P2’CO2 (40)が、40℃における第3ガス分離膜ユニット13を構成するガス分離膜の透過速度P3’CO2 (40)を1としたときに1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.4以上であることが更に好ましい。また、40℃におけるP2’CO2 (40)は、40℃における第3ガス分離膜ユニット13を構成するガス分離膜の透過速度P3’CO2 (40)を1としたときに12以下であることが、ガス分離膜の入手容易性の点で好ましく、CH4ガス純度の点で5以下であることが好ましい。
40℃において、第2ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P2’CO2/P2’CH4 (40)が、第3ガス分離膜ユニットを構成するガス分離膜の分離選択性P3’CO2/P3’CH4 (40)に比して、低いことが好ましい。このような構成にすることで、第2ガス分離膜ユニット12の膜面積を一層低減できる。
40℃はCO2及びCH4を膜分離する一般的な運転温度であるため、本形態では指標としてこの温度での選択性を規定する。
第2ガス分離膜ユニット12の膜面積を一層効果的に低減するために、40℃における第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜の分離選択性P2’CO2/P2’CH4 (40)が、40℃における第3ガス分離膜ユニット13を構成するガス分離膜の分離選択性P3’CO2/P3’CH4 (40)を1としたときに0.8以下であることが好ましく、0.75以下であることがより好ましく、0.70以下であることが更に好ましく、0.60以下であることが特に好ましい。また、40℃における第2ガス分離膜ユニット12を構成するガス分離膜の分離選択性P2’CO2/P2’CH4 (40)は、40℃における第3ガス分離膜ユニット13を構成するガス分離膜の分離選択性P3’CO2/P3’CH4 (40)を1としたときに0.2以上であることが、ガス分離膜の入手容易性の点で好ましく、CH4ガス純度の点では0.3以上であることが好ましい。
【0092】
第3供給ガスの温度t3は0~60℃が好ましく、10~50℃がより好ましく、20~40℃がさらに好ましい。第3供給ガスの温度t3を前記の範囲内とすることで、CO2透過速度を調整して膜面積を抑制しながらCH4純度を高めやすい点で好ましい。
第3ガス分離膜ユニット13の運転温度の好ましい温度範囲としては第3供給ガスの温度t3の好ましい範囲と同様の範囲が挙げられる。
【0093】
第3供給ガスの温度t3と第2供給ガスt2の温度差t3-t2は10℃以上であることが圧縮動力を低下させて低コストで高純度のCH4ガスを得る効果を高める点で好ましく、15℃以上であることがより好ましい。温度差t3-t2は大きくしすぎないことでガス分離膜の機能低下を防止する点や膜面積を低下する点から110℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、55℃以下が特に好ましい。
また、第3ガス分離膜ユニット13の運転温度T3と第2ガス分離膜ユニット12の運転温度T2との温度差T3-T2としてはt3-t2と同様に、10℃以上110℃以下が好ましく、15℃以上90℃以下がより好ましく、15℃以上55℃以下が更に好ましい。
【0094】
本形態では、第1ガス分離膜ユニットへのガス供給流量(第1供給ガスの流量F1)のうち、第1ガス分離膜ユニット以外のガス分離膜ユニットから還流された流量(F4)の割合(以下、「還流率」ともいう)が、70%以下であることが、一層運転コストを低減する点で好ましく、60%以下であることがより好ましい。また、還流率は例えばその下限が10%以上であると、膜面積の低下の点で好ましく、20%以上であることが好ましい。本形態では、F4は、第2ガス分離膜ユニット12の第2透過ガス及び第3ガス分離膜ユニット13の第3非透過ガスの合計量をいう。
【0095】
本発明においては、効率よく高回収率で高純度のCH4を得るために、40℃における第3ガス分離膜ユニットのガス分離膜のガス分離選択性(P3CO2/CH4の透過速度P3CH4 (40))は、30以上150以下であることが好ましく、35以上130以下であることがより好ましく、40以上120以下が更に好ましく、50以上110以下が特に好ましい。
【0096】
本発明においては、圧縮動力及び膜面積を抑制しつつ、高回収率で高純度のCH4を得るために、40℃における第3ガス分離膜ユニットのガス分離膜の二酸化炭素の透過速度P3CO2 (40)は、1.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上100×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、2×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上45×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがより好ましく、3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上25×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが更に好ましく、7×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上15×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下が特に好ましい。
【0097】
本発明においては、圧縮動力及び膜面積を抑制しつつ、高純度のCH4を得るために、40℃における第3ガス分離膜ユニットのガス分離膜のCH4の透過速度P3CH4 (40)は、0.03×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上3×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが好ましく、0.05×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上0.8×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることがより好ましく、0.05×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上0.5×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下が更に好ましく、0.08×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以上0.2×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHg以下であることが特に好ましい。
【0098】
第1透過ガスのCO2濃度が80~99mol%であることが好ましく、83~95mol%であることがより好ましい。
第1非透過ガスのCO2濃度が5~30mol%であることが好ましく、10~25mol%であることがより好ましい。
第2透過ガスのCO2濃度が25~65mol%であることが好ましく、30~60mol%であることがより好ましい。
第3透過ガスのCO2濃度が95~99.8mol%であることが好ましく、98~99.5mol%であることがより好ましい。
第3非透過ガスのCO2濃度が55~90mol%であることが好ましく、60~85mol%であることがより好ましい。
【0099】
第3ガス分離膜ユニットの運転温度T3における第3ガス分離膜ユニット13の分離選択性、CO2、CH4の透過速度の好ましい範囲としては、上記の40℃での分離選択性、CO2、CH4の透過速度の好ましい範囲と同様の範囲が挙げられる。
【0100】
なお、圧縮手段21の圧力は、通常第3ガス分離膜ユニット13に供給されるガスの圧力として、0.05MPaG以上1.2MPaG以下が好ましく、0.1MPaG以上1.0MPaG以下がより好ましい。
【0101】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。例えば上記実施形態では、各ガス分離膜ユニットの一例として、中空糸膜を有するガス分離膜モジュールで構成されるユニットを用いたが、これに代えて他の形態のガス分離膜ユニットを用いてもよい。
【0102】
また、上記の実施形態における圧縮手段に加えて、各ガス分離膜ユニットの何れか1つ又は2つの透過側に減圧手段を設けることで各ガス分離膜ユニットに供給される混合ガスに分離膜を通過する動力を付与してもよい。そのような減圧手段としては公知の真空ポンプ等を用いることができる。
【0103】
例えば、バイオガスを原料ガスに用いる場合には、原料ガスに、シロキサン、揮発性有機化合物、C2以上の有機化合物等の不純物を除去する前処理を行った後に、除去後の原料ガスをシステム10に供給するようにしてもよい。
【0104】
また、冷却された第2非透過ガスを、第2ガス分離膜ユニット12の運転温度を低下させることに用いてもよい。
例えば図4に示すように、冷却された第2非透過ガスを、回収ライン15から分岐したライン52を通じて熱交換装置54に導入して、別途同装置54に導入された液媒55を冷却する。冷却された液媒55を、ライン56を通じて冷却手段22の冷却に用いるという方法が挙げられる。液媒55の冷却に使用した第2非透過ガスは、ライン53を通じて回収ライン15に帰還させる。或いは、図5に示すように、冷却された第2非透過ガスとして、液化装置50で液化された第2非透過ガスを、ライン59を通じてメタン気化装置となる熱交換装置54に導入し、液化した第2非透過ガスの気化熱によって液媒55を冷却してもよい。
【0105】
或いは図6のように、液化装置50で液化した第2非透過ガスを、ライン57を通じて冷却手段22に供給して冷却手段22の冷却用冷媒として用い、第1非透過ガスと熱交換させて冷却してもよい。
図4図6の形態において上記以外の点はそれぞれ図1図3の形態と同様である。
【実施例
【0106】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかし本発明の範囲はこれら実施例により制限されない。各実施例及び比較例において、得られたガス製品(第2非透過ガス)中のH2O濃度は体積基準で2ppm以下であった。また、各実施例及び比較例において、第1供給ガス温度は40℃である。
【0107】
<ガス分離膜モジュール>
実施例及び比較例において用いたガス分離膜モジュールの40℃でのガス分離特性を表1に示す。このガス分離膜モジュールは、芳香族ポリイミド中空糸膜から構成されるガス分離膜をケース内に収容したものである。ガス分離膜モジュールAは、ガス分離膜モジュールBよりガス分離選択性が高くガス透過速度が小さいガス分離膜により構成されている。
表1中のP’CO2及びP’CH4の単位は、×10-5cm3(STP)/cm2・sec・cmHgである。
【0108】
【表1】
【0109】
[比較例1]
図1に示すガス分離システム10を用いて、二酸化炭素及びCH4を含む混合ガスの分離を行い、製品ガスとしてCH4を得た。
原料ガスとしては、CO2が39.8モル%、CH4が59.7モル%、H2Oが0.5モル%の組成のものを用い、システムに流入する流量は200Nm3/hとした。
冷却手段22は稼働させなかった。第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12はいずれもガス分離膜モジュールAで構成した。同システム10における圧縮手段21としては圧縮機を用いた。
【0110】
[実施例1-1~1-4]
冷却手段22を稼働させ、第2供給ガスの温度を表2の温度降下度(第1非透過ガス⇒第2供給ガス)に示すように変更することで、第2ガス分離膜ユニット12の運転温度を第1ガス分離膜ユニット11の運転温度よりも低下させた。その点以外は比較例1と同様にして製品ガスを得た。なお、表2の温度降下度は、第1ガス分離膜ユニット11から排出された非透過ガスの温度から、第2ガス分離膜ユニット12ユニットに供給された第2供給ガスの温度を引いた値である。
【0111】
[比較例2]
第2ガス分離膜ユニット12をガス分離膜モジュールBで構成した以外は比較例1と同様にして製品ガスを得た。
【0112】
[実施例2-1~2-4]
冷却手段22を稼働させ、第2供給ガス温度を表2の温度降下度(第1非透過ガス⇒第2供給ガス)に示すように変更することで、第2ガス分離膜ユニット12の運転温度を第1ガス分離膜ユニット11の運転温度よりも低下させた。その点以外は比較例2と同様にして製品ガスを得た。
【0113】
[比較例3]
図3に示すガス分離システム10’を用いた以外は比較例1と同様とした。第3ガス分離膜ユニット13はガス分離膜モジュールAで構成した。同システム10における圧縮手段21としては圧縮機を用いた。原料ガスとしては、CO2が39.8モル%、CH4が59.7モル%、H2Oが0.5モル%の組成のものを用いた。システムに流入する原料ガスの流量は200Nm3/hとした。
【0114】
[実施例3-1~3-4]
冷却手段22を稼働させ、第2供給ガス温度を表3の温度降下度(第1非透過ガス⇒第2供給ガス)に示すように変更することで、第2ガス分離膜ユニット12の運転温度を第1ガス分離膜ユニット11の運転温度及び第3ガス分離膜ユニット13の運転温度よりも低下させた。その点以外は比較例3と同様にして製品ガスを得た。
【0115】
[比較例4]
第2ガス分離膜ユニット12をガス分離膜モジュールBで構成した以外は比較例3と同様にして製品ガスを得た。
【0116】
[実施例4-1~4-4]
冷却手段22を稼働させ、第2供給ガス温度を表3の温度降下度(第1非透過ガス⇒第2供給ガス)に示すように変更することで、第2ガス分離膜ユニット12の運転温度を第1ガス分離膜ユニット11の運転温度及び第3ガス分離膜ユニット13の運転温度よりも低下させた。その点以外は比較例4と同様にして製品ガスを得た。
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
表2及び表3の結果から、本発明のガス分離システムは、所要圧縮動力を低減しながら二酸化炭素とCH4を含む原料ガスから、液化可能な程度に高純度のCH4を得られるものであることが判る。また40℃における第2ガス分離膜ユニットの分離選択性を同温での第1ガス分離膜ユニットの分離選択性より低下させることで、回収するCH4の純度、回収率及び圧縮動力を維持したまま第2ガス分離膜ユニットで使用するガス分離膜モジュールの本数を低減することができ、高純度としながら、低圧縮動力と低面積とを両立できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明によれば、CO2及びCH4を含む原料ガスから、高純度のCH4を少ない膜面積で低コストに得ることができる。
【要約】
第1ガス分離膜ユニット11及び第2ガス分離膜ユニット12を備え、CO2及びCH4を含む原料ガスからCH4富化ガスを製造するために用いられるガス分離システム10であって、
第1ガス分離膜ユニット11のガス入口11aに連結する原料ガス供給ライン26と、
原料ガス供給ライン26に介在配置した圧縮手段21と、
第1ガス分離膜ユニット11の非透過ガス排出口11bと第2ガス分離膜ユニット12のガス入口12aとを連結する第1ライン14と、
第2ガス分離膜ユニット12の透過ガス排出口12cと原料ガス供給ライン26とを連結する第2ライン17と、を備え、
第2ガス分離膜ユニットの運転温度を、第1ガス分離膜ユニットの運転温度に比して低下させる冷却手段22を設けた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6