(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】導電特性を有する繊維製品を提供するためのプロセスと導電性複合繊維製品
(51)【国際特許分類】
D06M 16/00 20060101AFI20240730BHJP
D06M 15/05 20060101ALI20240730BHJP
C12P 19/04 20060101ALI20240730BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
D06M16/00 Z
D06M15/05
C12P19/04 Z
C12N1/20 Z
(21)【出願番号】P 2021517471
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2019076104
(87)【国際公開番号】W WO2020064961
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-06-30
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】オズギュル シバノグル
(72)【発明者】
【氏名】イトカ イルマズ
(72)【発明者】
【氏名】エジェ セネル
(72)【発明者】
【氏名】デニズ イイドアン
(72)【発明者】
【氏名】セミ カザンシュ
(72)【発明者】
【氏名】エルドアン バルシュ オッデン
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0314193(US,A1)
【文献】国際公開第2008/020187(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0140848(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0297878(US,A1)
【文献】国際公開第2018/166477(WO,A1)
【文献】特開昭63-308804(JP,A)
【文献】米国特許第04895620(US,A)
【文献】特表2005-539150(JP,A)
【文献】特表2004-510067(JP,A)
【文献】国際公開第2009/054415(WO,A1)
【文献】特開2009-007721(JP,A)
【文献】小玉操一 外,繊維及び繊維製品の帯電性,繊維機械学会誌,1972年,Vol.25, No.9,P587(13)~P600(26)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M、C12P、C12N、B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセスであって、繊維製品(2、5)の少なくとも一部は、微生物によって産生される生体高分子(3)を備えており、前記生体高分子(3)の少なくとも一部は、導電性材料(4)を備えており、
前記繊維製品(2、5)の少なくとも一部に前記生体高分子(3)を供給する工程は、前記繊維製品(2、5)の少なくとも一部を生体高分子産生微生物の培養物と接触させ、前記生体高分子産生微生物を培養する工程を含み、これにより、前記繊維製品(2、5)上に前記生体高分子(3)が産生され
、前記生体高分子(3)の少なくとも一部に、少なくとも1種類の電気絶縁性ポリマーを供給する工程をさらに備えていることを特徴とする導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項2】
前記生体高分子産生微生物の前記培養物は、前記導電性材料(4)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項3】
前記導電性材料(4)は、前記生体高分子(3)が前記繊維製品(2、5)上で産生された後、前記生体高分子(3)に供給されることを特徴とする請求項1に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項4】
繊維製品(2、5)の少なくとも一部は、微生物によって産生される生体高分子(3)を備え、前記生体高分子(3)の少なくとも一部は、導電性材料(4)を備え、前記繊維製品(2、5)の少なくとも一部は、別に産生された生体高分子(3)と結合しており、前記生体高分子(3)が、前記繊維製品(2、5)に供給される前に溶解され
ることはなく、前記生体高分子(3)の少なくとも一部に、少なくとも1種類の電気絶縁性ポリマーを供給する工程をさらに備えていることを特徴とする導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項5】
前記別に産生された生体高分子(3)は、前記繊維製品(2、5)に結合する前または後に、前記導電性材料(4)とともに、少なくとも部分的に供給されることを特徴とする請求項4に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項6】
前記生体高分子(3)は、パターンに沿って前記繊維製品(2、5)に供給されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項7】
前記導電性材料(4)は、パターンに沿って前記生体高分子(3)に適用されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項8】
前記繊維製品(2、5)は、糸(5)、布地(2)、衣服からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項9】
前記繊維製品(2、5)は、糸(5)であり、前記糸(5)は、少なくとも部分的に、前記生体高分子(3)を備えていることを特徴とする請求項8に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項10】
前記生体高分子(3)は、微生物セルロース、微生物コラーゲン、セルロース/キチン共重合体、微生物シルク、およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項11】
前記導電性材料(4)は、活性炭、高表面積炭素、グラフェン、グラファイト、活性木炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、活性炭ファイバー、グラファイトファイバー、グラファイトナノファイバー、カーボンブラックおよびこれらの混合物からなるグループから選択される炭素質材料であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項12】
前記生体高分子(3)の少なくとも一部に少なくとも柔軟剤を供給する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項13】
前記電気絶縁性ポリマーは、PU、PA、PP、PLA、PBT、PET、およびシリコーンからなるグループから選択され
ることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の導電性複合繊維製品(1)を製造するためのプロセス。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載のプロセスで得られる導電性複合繊維製品(1)であって、繊維製品(2、5)および微生物によって産生される生体高分子(3)を備え、前記生体高分子(3)の少なくとも一部は、導電性材料(4)を備えて
おり、前記生体高分子(3)の少なくとも一部は、少なくとも1種類の電気絶縁性ポリマーでコーティングされていることを特徴とする導電性複合繊維製品(1)。
【請求項15】
前記導電性材料(4)は、導電性材料(4)のパターンとして前記生体高分子(3)に供給されることを特徴とする請求項14に記載の導電性複合繊維製品(1)。
【請求項16】
前記生体高分子(3)は、生体高分子(3)のパターンとして前記繊維製品(2、5)に供給されることを特徴とする請求項14または15に記載の導電性複合繊維製品(1)。
【請求項17】
前記繊維製品(2、5)は、糸(5)、布地(2)、および衣服からなるグループから選択されることを特徴とする請求項14から16のいずれか1項に記載の導電性複合繊維製品(1)。
【請求項18】
前記電気絶縁性ポリマーは、PU、PA、PP、PLA、PBT、PET、およびシリコーンからなるグループから選択され
ることを特徴とする請求項14から17のいずれか1項に記載の導電性複合繊維製品(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維製品の分野、特に繊維製品に導電特性を付与するのに適するプロセスと導電性複合繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーマトリックス内に分散した導電性不純物を含む導電性製品は、当該技術分野において公知である。
【0003】
このような公知の導電性製品は、例えば、電極、ひずみゲージ、静電容量センサーなどの様々な用途における使用に適している。
【0004】
上記のように、公知の製品では、例えば、炭素、グラフェン、金属ナノ粒子(NP)、ナノシート/ロッド/チューブなどの導電性不純物が、合成ポリマーマトリックス中に分散している。公知の合成ポリマーマトリックスは、例えば、ポリウレタン(PU)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)およびポリブチレンテレフタレート(PBT)マトリックスである。
【0005】
しかし、このような公知の製品には、いくつかの欠点がある。
【0006】
例えば、合成ポリマーマトリックスは、通常、物品全体にわたり満足のいく導電性能を得ることが困難になるような長さ、および/または重合度の繊維を有している。さらに、合成マトリックスと導電性不純物の組み合わせにおいて、そのすべてが、確実に導電性を有する製品となるわけではない。
【0007】
また、公知の導電性製品の製造は、通常、人体に有害となる恐れのある化学薬品の使用を伴っている。さらに、公知の製品で信頼できる導電特性を得るためには、マトリックスと導電性不純物の組み合わせ(すなわち、不純物の種類とマトリックス中の不純物の最終濃度)の微調整が必要である。
【0008】
公知の導電性製品の製造プロセスにおける別の欠点としては、マトリックス中において導電性不純物を適切に分散させることが難しいということがある。
【0009】
繊維品の分野における生体高分子の使用は、例えば、本願の出願人の名前で出願されている、特許文献1~3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2017/186584号
【文献】国際公開第2017/186583号
【文献】国際出願番号PCT/EP2019/058800号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、導電特性を有する製品の製造を、迅速かつ費用対効果の高い方法で可能にするプロセスを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、信頼性があり、いくつかの用途に使用することができる導電特性を有する製品を得ることができるプロセスを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、導電性材料をマトリックスに容易に含ませることができるプロセスを提供することである。
【0014】
これらの目的は、本発明の目的である請求項1に記載のプロセスによって達成される。
【0015】
また、本発明の目的は、請求項14に記載の導電性複合繊維製品の提供である。
【0016】
本発明のさらなる目的は、請求項19に記載の、少なくとも部分的に導電性材料を備える生体高分子からなるか、または本質的にその生体高分子からなる糸、布地、または衣服である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を示している。
【0018】
本発明は、導電性複合繊維製品を製造するためのプロセスに関する。ここで、繊維製品の少なくとも一部は、生体高分子を備えており、生体高分子の少なくとも一部は、導電性材料を備えている。
【0019】
驚くべきことに、本発明のプロセスを通して、信頼性のある導電性製品、特に、信頼性のある導電特性を有する複合繊維製品を得ることができることが見出された。
【0020】
有利なことに、本発明のプロセスは、繊維産業で使用するのに適した製品の製造、例えば、簡単、迅速、かつ費用対効果の高い方法で、導電特性を有する衣服、衣料品、または他の物品を製造することができる。
【0021】
さらに、生体高分子は、特に持続可能な方法で得ることができる。
【0022】
実施形態によれば、繊維製品の少なくとも一部に生体高分子を供給する工程は、繊維製品の少なくとも一部を生体高分子産生微生物の培養物と接触させ、生体高分子産生微生物を培養する工程を含んでいる。これにより、繊維製品上に少なくとも1種類の生体高分子が産生される。
【0023】
このようにして、有利なことに、繊維製品上に直接増殖する生体高分子は、繊維製品に密着している。この場合、有利なことに、繊維製品からの生体高分子の剥離が防止されるか、または実質的に防止される。
【0024】
さらに、生体高分子の増殖を細かく調整することができるので、特定の厚さを有する生体高分子を、例えば、繊維製品上に直接得ることができる。
【0025】
本明細書で使用する場合、「生体高分子」および「微生物高分子」という用語は、微生物が産生することができるポリマーを指している。
【0026】
本明細書で使用する場合、「微生物」という用語は、肉眼では見るには小さすぎるけれども、顕微鏡では見ることができる小さな単細胞または多細胞生物を指し、細菌、酵母、真菌、ウイルスおよび藻類を包含している。本明細書で使用する場合、「微生物」という用語は、遺伝子組換えがされていない(すなわち、野生型)微生物および遺伝子組換えがされた微生物を包含している。例えば、遺伝子組換えがされていない微生物の場合(すなわち、野生型微生物の場合)、その微生物が産生しない生体高分子を産生させるために、同じ微生物を遺伝子組換えすることができる。
【0027】
実施形態によれば、繊維製品の少なくとも一部は、別個に産生された生体高分子と結合することができる。
【0028】
例えば、公知の方法によって生体高分子を産生することができ、次に、生体高分子を繊維製品に架橋することによって、または縫製することによって、生体高分子を繊維製品、例えば、織布と結合することができる。実施形態によれば、別個に産生された生体高分子、例えば、微生物セルロースを、繊維製品に供給する前に溶解することは必要とされない。
【0029】
一つの特徴によると、本発明のプロセスは、導電性生体高分子、例えば、導電性微生物セルロースを得ることができる。特に、導電性材料を含む生体高分子は、導電性材料を含まない同じ生体高分子と同じ構造特性(例えば、結晶構造、ナノ多孔質ネットワーク構造)を実質的に保持している。
【0030】
実施形態によれば、生体高分子をパターンに沿って繊維製品に供給する。
【0031】
実施形態では、生体高分子を、例えば、パターンに沿って繊維製品に供給する場合、導電性材料を、例えば、含浸によって、生体高分子全体に、または実質的に生体高分子全体に供給することができる。
【0032】
実施形態によれば、導電性材料を、パターンに沿って生体高分子に適用する。
【0033】
実施形態によれば、繊維製品は、少なくとも部分的に導電性材料のパターンを備えている生体高分子を備えることができる。
【0034】
例えば、繊維製品を、生体高分子、例えば、生体高分子の層でコーティングまたは実質的にコーティングすることができる。ここで、生体高分子は、導電性材料のパターンを備えている。
【0035】
例えば、導電性材料のパターンを、印刷(例えば、スクリーン印刷および/またはデジタル印刷)によって、または局所的な含浸によって、生体高分子(例えば、生体高分子層)に提供することができる。
【0036】
生体高分子および/または導電性材料の例示的なパターンは、1つ以上のストライプ、正方形または円またはグリッドなどの他の任意の形状の連続模様とすることができる。
【0037】
有利なことに、実施形態では、生体高分子および/または導電性材料は、任意の形状の連続層として供給することができる。この場合、有利なことに、導電性複合繊維製品は、タップおよびタッチスイッチの製造に特に適しているという結果になる。
【0038】
本明細書で使用する場合、「導電性材料」という用語は、電流を流すことができる材料、すなわち、導電特性を有する材料を指している。この導電性材料により、この材料を備えた繊維製品を通して電流を流すことができる。
【0039】
実施形態によれば、繊維製品は、糸、布地、衣服からなるグループから選択される。
【0040】
実施形態によれば、繊維製品は、少なくとも部分的に、生体高分子を備えることができる糸である。
【0041】
公知の方法によって、糸は、生体高分子を備えることができる。例えば、生体高分子産生微生物を糸で直接培養することによって、糸は、少なくとも部分的に生体高分子を備えることができる。生体高分子産生微生物を含む培養物は、公知の方法、例えば、生体高分子産生微生物を含む培養物を糸に噴霧するか、または糸をこの培養物に浸漬することによって、糸に供給することができる。
【0042】
実施形態によれば、繊維製品は、少なくとも部分的に、生体高分子でコーティングすることができる糸である。
【0043】
実施形態によれば、繊維製品は、布地、好ましくは織布であり、より好ましくはデニム生地である。
【0044】
実施形態によれば、布地は、天然糸、および/または合成糸、および/または再生糸、または再生繊維、および/または混紡糸を含むことができる。
【0045】
本明細書において、天然糸は、綿、羊毛、亜麻、ケナフ、ラミー、大麻、麻、およびこれらの混合物から選択することができる天然繊維を含む糸である。
【0046】
本明細書において、合成糸は、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ライクラ(lycra(登録商標))、エラスタン、およびこれらの混合物から選択することができる合成繊維を含む糸である。
【0047】
本明細書において、再生糸は、再生繊維を含む糸である。再生繊維、または人造繊維は市販されている。例えば、好適な再生繊維は、レーヨン、リヨセル、モダール、ビスコース、竹、およびこれらの混合物から選択することができる。
【0048】
実施形態によれば、布地は、再生糸または再生繊維、および/またはブレンド糸、すなわち、再生繊維および天然繊維(例えば、綿)および/または合成繊維を含む糸を含むことができる。実施形態によれば、糸は、再生繊維、および/または再生繊維と天然繊維(例えば、綿)とをブレンドした繊維、および/または合成繊維を含むことができる。再生セルロース繊維と綿繊維とを含む好適な糸は、例えば、本願の出願人の名前で同時係属中の欧州特許出願番号EP18184992.8に開示されている。
【0049】
本明細書において、混紡糸は、天然繊維(例えば、綿)および合成繊維の両方を含む糸である。
【0050】
実施形態によれば、繊維製品は、弾性繊維製品、すなわち伸縮性繊維製品とすることができる。
【0051】
実施形態によれば、繊維製品は、弾性繊維製品、すなわち、伸縮性繊維製品、好ましくは弾性布地、より好ましくは弾性織布、さらにより好ましくは弾性デニム生地である。
【0052】
実施形態によれば、繊維製品は、弾性糸、すなわち伸縮性糸とすることができる。
【0053】
例えば、繊維製品が織布である場合、緯糸方向の弾性、または経糸方向の弾性、あるいはその両方向の弾性は、ASTM D3107に準拠して測定すると、1%~370%、好ましくは3%~100%、より好ましくは5%~50%の範囲とすることができる。
【0054】
本開示では、ASTM D3107に準拠した伸縮性は、3.0ポンド(1.36Kg)の錘によって測定した。
【0055】
有利なことに、実施形態によれば、繊維製品に供給される導電性生体高分子のパターンの特性に応じて、繊維製品を選択することができる。
【0056】
実施形態によれば、布地を使用した衣服を着用するときに、導電性材料を備えた生体高分子を、その布地の外側の目視することができる布地の面に供給することができる。
【0057】
実施形態によれば、生体高分子産生微生物を含む培養物は、導電性材料をさらに含んでいる。
【0058】
例えば、繊維製品を、生体高分子産生微生物および導電性材料を含む培養物と接触させることができる。微生物を培養して、導電性材料を含む生体高分子を産生することができ、これにより、繊維製品は、導電性材料を含む生体高分子を備えることになる。この場合、有利なことに、本発明のプロセスは、ワンステッププロセスとして行うことができる。
【0059】
実施形態によれば、生体高分子産生微生物を含む培養物が導電性材料を含む場合、培養物中の導電性材料の量は、培地総重量の0.00005重量%~3重量%、好ましくは0.0001重量%~1重量%の範囲である。
【0060】
実施形態によれば、生体高分子が繊維製品上に産生された後に、導電性材料をこの生体高分子に供給することができる。
【0061】
例えば、布地を、少なくとも片方の面で生体高分子産生微生物の培養物と接触させることができ、布地上に生体高分子を産生するために、この微生物を培養することができる。次に、生体高分子に導電性材料を、含浸または印刷(例えば、スクリーン印刷および/またはデジタル印刷)することができる。
【0062】
実施形態によれば、繊維製品は、導電性材料を備えることができる。例えば、繊維製品上の生体高分子に導電性材料を含浸させると、導電性材料の一部は、繊維製品に到達する、および/または接触することができる。また、例えば、生体高分子を備えた繊維製品を導電性材料の分散液または溶液に浸漬させると、生体高分子と繊維製品の両方に導電性材料を含浸させることができる。
【0063】
これは、例えば、繊維製品が親水性の繊維または糸を含む場合、特に当てはまる。
【0064】
上記のように、実施形態では、繊維製品の少なくとも一部は、別に産生された生体高分子と結合している。
【0065】
したがって、実施形態では、別に産生された生体高分子を、この繊維製品に結合する前または後に、導電性材料とともに少なくとも部分的に供給する。
【0066】
例えば、実施形態では、公知の方法で、生体高分子産生微生物を培養することによって、生体高分子、例えば、微生物セルロースを産生することができる。生体高分子は、例えば、浸漬または印刷によって導電性材料を備えることができ、次に、例えば、架橋および/または縫製によって布地と結合することができる。
【0067】
実施形態では、例えば、生体高分子、例えば、微生物セルロースを、産生し、布地に結合することができる(例えば、架橋および/または縫製によって)。次に、導電性材料を、例えば、印刷または浸漬によって、布地の生体高分子に供給することができる。
【0068】
実施形態によれば、生体高分子は、微生物セルロース、微生物コラーゲン、セルロース/キチン共重合体、微生物シルク、およびこれらの混合物から選択される。
【0069】
これらの生体高分子は、それ自体は、当該技術分野で公知である。
【0070】
実施形態によれば、生体高分子産生微生物は、細菌、藻類、酵母、真菌、およびこれらの混合物から選択される。
【0071】
好ましくは、生体高分子産生細菌は、グルコナセトバクター、アエロバクター、アセトバクター、アクロモバクター、アグロバクテリウム、アゾトバクター、サルモネラ、アルカリゲネス、シュードモナス、リゾビウム、サルシナ、ストレプトコッカスおよびバチルス属、およびこれらの混合物から選択され、生体高分子産生藻類は、褐藻、紅藻、黄色藻、およびこれらの混合物から選択される。
【0072】
導電性材料を、公知の方法によって、例えば、含浸または印刷によって、生体高分子に供給することができる。
【0073】
実施形態によれば、導電性材料は、炭素質材料、例えば、炭素質材料を含む炭素ベースの導電性インクである。好ましくは、炭素質材料は、活性炭、高表面積炭素、グラフェン、グラファイト、活性木炭、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、活性炭ファイバー、グラファイトファイバー、グラファイトナノファイバー、カーボンブラックおよびこれらの混合物からなるグループから選択される。
【0074】
炭素ベースの導電性インクは、それ自体が当該技術分野で公知である。
【0075】
有利なことに、生体高分子の少なくとも一部に供給される導電性材料の量を調整して、正確かつ信頼できる方法で、所望の電気抵抗値を得ることができる。
【0076】
有利なことに、導電性材料の量を調整することにより、導電性複合繊維製品の導電性を較正することができる。例えば、導電性複合繊維製品は、102 Ohm/sq~約109 Ohm/sqの範囲のシート抵抗(「表面抵抗率」とも呼ばれる)を有することができる。
【0077】
導電性複合繊維製品が導電性複合布地または衣服である場合、シート抵抗は、TS EN 1149-1:2006に準拠して測定することができる。
【0078】
例えば、導電性複合繊維製品が導電性複合糸である場合、単位長さあたりの電気抵抗を、標準のAATCC試験方法84-2005、AATCC試験方法84-2011、AATCC 76-2011、またはBS EN 1149-1:2006に準拠して測定することができる。
【0079】
有利なことに、生体高分子および/または導電性材料をパターンに沿って供給する場合、各パターンについて、所望の電気抵抗値を得るために、生体高分子および/または導電性材料の寸法、および/または量を調整することができる。
【0080】
繊維製品が導電性材料を含む生体高分子を備えた後、導電性複合繊維製品を乾燥させて、乾燥しているか、または実質的に乾燥している導電性複合繊維製品を得る。
【0081】
好ましくは、繊維製品上で生体高分子産生微生物を培養することによって、繊維製品上で生体高分子を産生する場合、この導電性複合繊維製品を洗浄し、乾燥する前に、残留微生物を除去する。
【0082】
実施形態によれば、本発明のプロセスは、生体高分子の少なくとも一部に少なくとも柔軟剤、好ましくはシリコーン柔軟剤を供給する工程をさらに含んでいる。
【0083】
この場合、有利なことに、生体高分子は、特に滑らかで柔軟性を有しているという結果になる。
【0084】
好適な柔軟剤は、例えば、本願の出願人の名前で出願されている欧州特許出願番号EP17198751.4に基づき優先権を主張している、欧州特許出願番号EP3476996A1「発明の名称:微生物によって産生された生体高分子層を含む複合繊維製品を調製するためのプロセス」に開示されている。
【0085】
例えば、柔軟剤を生体高分子に噴霧することによって、または、例えば、少なくとも生体高分子を液体の柔軟剤に、または柔軟剤を含む溶液または分散液に浸漬することで生体高分子に柔軟剤を含浸させることによって、柔軟剤を生体高分子に適用することができる。
【0086】
実施形態によれば、1種類以上の繊維軟化剤を、生体高分子産生微生物の培地に含むことができ、これにより、生体高分子が柔軟剤の存在下で産生(すなわち、増殖)されることで、柔軟剤を含む生体高分子が提供される。
【0087】
実施形態によれば、本発明のプロセスは、例えば、生体高分子の少なくとも一部を、少なくとも1種類の電気絶縁性ポリマーでコーティングする工程をさらに含んでいる。
【0088】
有利なことに、例えば、導電性材料を備えている生体高分子の少なくとも一部を、少なくとも1種類の電気絶縁性ポリマーでコーティングすることによって、導電性複合繊維製品は、外部の電気的妨害から保護されているか、または実質的に保護されている。
【0089】
実施形態によれば、電気絶縁性ポリマーは、PU、PA、PP、PLA、PBT、PET、およびシリコーンからなるグループから選択することができる。
【0090】
有利なことに、本発明のプロセスを介して、導電性複合布地を得ることができる。
【0091】
本発明の別の目的は、繊維製品および生体高分子を備える導電性複合繊維製品であって、生体高分子の少なくとも一部は、導電性材料を備えている。
【0092】
実施形態によれば、導電性複合繊維製品は、乾燥しているか、または実質的に乾燥している。
【0093】
実施形態によれば、導電性材料を、導電性材料のパターンとして生体高分子に供給することができる。
【0094】
言い換えれば、導電性材料を、選択されたパターン、例えば、ストライプに沿って、生体高分子の少なくとも一部に供給することができる。
【0095】
実施形態によれば、乾燥導電性複合繊維製品中の導電性材料は、導電性複合繊維の重量の0.005重量%~7.5重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%の範囲である。
【0096】
実施形態によれば、生体高分子を、生体高分子のパターンとして繊維製品に供給することができる。
【0097】
言い換えれば、生体高分子を、選択されたパターン、例えば、ストライプに沿って、繊維製品、例えば、布地の少なくとも一部に供給することができる。
【0098】
有利なことに、本発明の導電性複合繊維製品は、例えば、静電容量式近接センサー、静電容量式スワイプセンサー、静電容量式タッチパッド、位置感知式タッチセンサー、およびひずみゲージの製造に使用することができる。
【0099】
実施形態によれば、繊維製品は、糸、布地、および衣服からなるグループから選択される。
【0100】
実施形態によれば、導電性複合繊維製品は、少なくとも部分的に生体高分子を備えた糸であり、生体高分子は、少なくとも1種類の導電性材料を含んでいる。実施形態によれば、導電性複合繊維製品は、生体高分子で少なくとも部分的にコーティングされた糸であり、生体高分子は、少なくとも1種類の導電性材料を含んでいる。
【0101】
実施形態によれば、生体高分子の少なくとも一部は、少なくとも1種類の電気絶縁性ポリマー、好ましくはシリコーン絶縁性ポリマーでコーティングされている。
【0102】
本発明の一態様によれば、導電性材料が少なくとも部分的に供給された生体高分子、すなわち導電性生体高分子を、繊維品(例えば、糸、布地、衣料品)の製造に使用することができる。なお、必要に応じて、ベース部(すなわち、支持部)の繊維製品には供給されない。
【0103】
例えば、導電性生体高分子は、衣料品、例えば、衣服に仕立てること、または糸に加工することができる。
【0104】
したがって、本発明の目的は、生体高分子、すなわち、少なくとも部分的に導電性材料を備えた微生物が産生することができる生体高分子からなる、または本質的にこの生体高分子からなる、糸、布地、または衣服である。
【0105】
本明細書によれば、繊維製品または繊維品を「本質的に生体高分子からなる」と定める場合、繊維製品の本質的な構造は、生体高分子によって作られるが、繊維製品または繊維品の他の構成要素は、他の材料で作ることができることを意味する。例えば、1種類以上の導電性生体高分子の各部分を、綿糸を使用して一緒に縫製することで、衣服を提供することができる。
【0106】
上記のように、生体高分子を増殖させて、それに導電性材料を備えることができる。導電性材料を備える前および/または後に、生体高分子を、それ自体当該技術分野で公知の方法によって、糸、布地、または衣服に加工することができる。
【0107】
次に、一例として、本発明を、添付の図面を参照して説明する。これらの図面は、本発明の例示的な実施形態の例示的かつ非限定的な模式図として解釈されなければならない。また、一般的な慣例により、図面の種々の構成は、必ずしも縮尺通りとなっていない。さらに、種々の構成の寸法は、理解しやすさを考慮して、適宜に拡大または縮小がなされている。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】本発明の導電性複合繊維製品の実施形態を示す図である。
【
図2】生体高分子が生体高分子のパターンとして供給されている、本発明の導電性複合繊維製品の実施形態を示す図である。
【
図3】導電性材料が導電性材料のパターンとして供給されている、本発明の導電性複合繊維製品の実施形態を示す図である。
【
図4】生体高分子が生体高分子のパターンとして供給されている、本発明の導電性複合繊維製品の実施形態を示す図である。
【
図5】繊維製品が糸である本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0109】
本明細書において、布地に言及する場合、この布地とは、衣服または衣料品に使用される布地を含んでいる。
【0110】
図1は、本発明による例示的な導電性複合繊維製品1の一部分を模式的に示す斜視図である。
【0111】
図1によると、繊維製品は、布地2、特に織布である。
【0112】
布地2は、生体高分子3、例えば導電性材料4、すなわち炭素ベースの導電性インクを含む微生物セルロースを備えている。
【0113】
図1に示す実施形態では、生体高分子3の全体または実質的に全体に、均質または実質的に均質になるように導電性材料4を備えている。
【0114】
実施形態によれば、導電性複合繊維製品1中の導電性材料4は、乾燥後、導電性複合繊維製品1の重量の0.005重量%~7.5重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%の範囲となっている。
【0115】
例えば、少なくとも生体高分子3に導電性材料を含浸させることによって、導電性材料4を適用することができる。
【0116】
実施形態によれば、生体高分子3を、布地2上に直接増殖させることができる。
【0117】
例えば、布地2を、少なくとも部分的に、生体高分子産生微生物の培養物と接触させることができ、この生体高分子産生微生物を培養して、布地2上に少なくとも1種類の生体高分子3を産生することができる。
【0118】
実施形態によれば、生体高分子3は、微生物セルロースである。
【0119】
例えば、微生物セルロースは、アセトバクター・キシリナムの菌株などのアセトバクター菌の菌株を培養することによって、および/またはグルコナセトバクター・ハンセニの菌株などのグルコナセトバクターの菌株を培養することによって産生することができる。
【0120】
生体高分子産生微生物を含む培養物を、公知の方法によって、繊維製品に供給することができる。例えば、繊維製品の少なくとも一部を、微生物を含む培養物に浸漬し、培養物を含浸させることができる。他の例では、微生物の培養物を、繊維製品に注ぐか、または噴霧することができる。次に、導電性複合繊維製品1を洗浄して、残留微生物を除去し、乾燥させることができる。
【0121】
図1では、布地2は、導電性材料4を含む生体高分子3のストライプを備えている。
【0122】
本発明の実施形態によれば、生体高分子3を、パターンに沿って、および/または所定の定められた形状に沿って繊維製品に供給する場合、公知の方法で、成形された容器内で生体高分子産生微生物を培養することによって、生体高分子3を産生することができ、次に、生体高分子3を繊維製品、例えば、布地2に適用することができる。
【0123】
実施形態によれば、生体高分子3を、パターンに沿って、および/または所定の定められた形状に沿って繊維製品に供給する場合、生体高分子3を、繊維製品上で直接増殖することができる。例えば、生体高分子産生微生物を含む培養物を、テンプレート、すなわちステンシルを通して繊維製品の少なくとも一部に注ぐか、または噴霧することができる。次に、生体高分子産生微生物を増殖させて、繊維製品上に成形された生体高分子3を得ることができる。
【0124】
有利なことに、生体高分子を繊維製品、例えば布地上で増殖させた後に、テンプレートまたはステンシルを取り去ると、定められた形状および/またはパターンを有する生体高分子を得ることができる。
【0125】
図1では、布地2は、導電性材料4を含む生体高分子3のストライプを備えている。
【0126】
上記のように、生体高分子3の少なくとも一部に導電性材料4を含浸させることによって、例えば、生体高分子3の少なくとも一部を炭素ベースの導電性インクと接触させることによって、導電性材料4を生体高分子3に供給することができる。
【0127】
実施形態によれば、生体高分子産生微生物を含む培養物は、導電性材料をさらに含んでいる。この場合、有利なことに、本発明の導電性複合繊維製品1を、ワンステッププロセスによって得ることができる。
【0128】
実施形態によれば、生体高分子産生微生物および導電性材料を含む培養物を使用する場合、その培養物中の導電性材料4は、培地の総重量の0.00005重量%~3重量%、好ましくは0.0001重量%~1重量%の範囲とすることができる。
【0129】
例えば、必要に応じて、テンプレートまたはステンシルを使用して、布地2を、生体高分子産生微生物および導電性材料4を含む培養物と接触させることができる。次に、導電性材料4を含む生体高分子3を産生させるために、微生物を増殖することができる。
【0130】
実施形態によれば、生体高分子3の少なくとも一部は、少なくとも柔軟剤を備えることができる。
【0131】
実施形態によれば、生体高分子産生微生物を含む培養物は、柔軟剤をさらに備えることができる。
【0132】
例えば、柔軟剤を含む生体高分子3を布地2上に直接産生するために、布地2を生体高分子産生微生物および柔軟剤を含む培養物と接触させることができる。
【0133】
実施形態によれば、生体高分子産生微生物を含む培養物は、導電性材料4および柔軟剤をさらに備えることができる。
【0134】
実施形態によれば、生体高分子産生微生物を含む培養物が柔軟剤を含む場合、培養物は、繊維品に適用する最終培養物の重量の0.5重量%~2重量%、好ましくは0.8重量%~1.2重量%の範囲の柔軟剤を備えている。
【0135】
好適な柔軟剤は、例えば、本願の出願人の名前で出願されている欧州特許出願番号EP17198751.4に基づき優先権を主張している、欧州特許出願番号EP3476996A1「発明の名称:微生物によって産生された生体高分子層を含む複合繊維製品を調製するためのプロセス」に開示されている。
【0136】
好ましくは、柔軟剤は、シリコーン柔軟剤である。好ましいシリコーン柔軟剤は、マイクロシリコーン柔軟剤である。
【0137】
例えば、好適なマイクロシリコーン柔軟剤は、マイクロシリコーンエマルジョンであり、マイクロシリコーンは、80nm未満~10nm、好ましくは60nm未満~10nm、より好ましくは40nm~10nmの範囲の粒子サイズを有しており、この粒子サイズは、動的光散乱によって測定される。たとえば、Ceraperm(登録商標)3P Liq.およびSANSIL MIC 3145は、本発明のプロセスで使用するのに適した例示的なマイクロシリコーンエマルジョンである。Ceraperm(登録商標)3P Liq.およびSANSIL MIC 3145は、現在市販されている。
【0138】
柔軟剤を生体高分子3に噴霧することができ、その後、その生体高分子を、繊維製品、例えば、布地2に供給する。追加的または代替的に、例えば、液体の柔軟剤、あるいはその柔軟剤を含む溶液または分散液に浸漬することによって、生体高分子2に柔軟剤を含浸させることができる。
【0139】
実施形態によれば、柔軟剤を布地2にも供給することができる。例えば、必要に応じて、導電性材料4を含む生体高分子3を備える布地2に、柔軟剤を含浸させることができる。
【0140】
実施形態によれば、導電性複合繊維製品1は、導電性材料4を含む生体高分子3の複数のストライプを備えることができ、少なくとも2つのストライプは、異なる配向を有している。
【0141】
例えば、布地2は、導電性材料4を含む生体高分子3の第1のストライプと、必要に応じて、少なくとも第2のストライプとを備えることができ、この第2のストライプは、この第1のストライプに対して所定の角度に配向している。
【0142】
また、例えば、布地2は、導電性材料4を含む生体高分子3の第1のストライプおよび第2のストライプを備えることができ、第2のストライプは、第1のストライプに対し直交することができる。必要に応じて、布地2は、導電性材料4を含む生体高分子3の第3のストライプをさらに含むことができ、この第3のストライプは、第1のストライプおよび第2のストライプの両方に対して所定の角度に配向している。
【0143】
実施形態によれば、導電性複合繊維製品1は、可撓性を有している。この場合、有利なことに、導電性複合繊維製品1が、導電性材料4を含む生体高分子3の1種以上のストライプを備えている場合、導電性複合繊維製品1は、ひずみゲージの製造に特に適しているという結果になる。
【0144】
伸び計としても知られているひずみゲージは、それ自体が当該技術分野で公知のデバイスであり、対象物のひずみを測定するのに、すなわち、基準長さに対する対象物の変形を測定するのに適している。
【0145】
実施形態によれば、導電性材料4を含む生体高分子3の1種以上のストライプを備えている場合、導電性複合繊維製品1は、ひずみゲージの製造に特に適している。例えば、生体高分子3の複数のストライプを、例えば、星、例えば、5角星を形成するために、複数の異なる方向に向けて布地2に設けることができる。
【0146】
実施形態によれば、生体高分子3および/または導電性材料4を、リング状に沿って布地2に供給することができる。
【0147】
上記のように、実施形態によれば、生体高分子3を、パターンに沿って布地2に供給することができる。例えば、生体高分子3を、生体高分子3の複数のストライプとして布地2に供給することができる。
【0148】
実施形態によれば、生体高分子3および/または導電性材料4を、例えば、
図2に示すように、平行なストライプのパターンに沿って供給することができる。
図2は、本発明による導電性複合繊維製品1の例示的な実施形態の部分的斜視図を示している。
【0149】
特に、
図2は、導電性材料4を含む、生体高分子3の平行なストライプのパターンを備える布地2を示している。
【0150】
図1と同様に、
図2に示されている実施形態においても、生体高分子3の各ストライプでは、生体高分子3の全体または実質的に全体に、均質または実質的に均質になるように導電性材料4を備えている。
【0151】
実施形態によれば、生体高分子3をパターンに沿って繊維製品に供給する場合、パターンの各部分を、異なる寸法および/または異なる厚さにすることができ、および/または異なる量の導電性材料4を含むことができる。
【0152】
この場合、有利なことに、各パターンおよびその要素について、正確かつ信頼できる方法で、所望の値の電気抵抗を得ることができる。
【0153】
たとえば、パターンの要素が異なれば、電気抵抗は、異なる値を有することができる。たとえば、パターンの各要素は、102 Ohm/sq~約109 Ohm/sqの範囲のシート抵抗(「表面抵抗率」とも呼ばれる)を有することができる。
【0154】
例えば、
図2に模式的に示された実施形態を考慮すると、生体高分子3のストライプは、異なる寸法および/または異なる厚さを有することができる。ストライプは、異なる量の導電性材料4を含むことができる。例えば、各ストライプは、導電性複合繊維の重量の0.005重量%~7.5重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%の範囲の導電性材料4を含むことができる。
【0155】
有利なことに、導電性材料4を平行なストライプのパターンに沿って供給する場合、本発明の導電性複合繊維製品1は、一方向タッチパッドの製造に特に適しているという結果になる。例えば、
図2の例示的な実施形態を考慮すると、導電性材料4を含む生体高分子3のストライプは、例えば、単独で、感知デバイスに接続されて、各ストライプの容量を測定することができる。
【0156】
図3は、本発明による導電性複合繊維製品1の別の実施形態の部分的斜視図を示している。
【0157】
図3は、布地2の一方の面に布地2の全体を実質的に覆うように生体高分子3が設けられた布地2を、模式的に示している。
【0158】
図3の実施形態では、生体高分子3を、連続層の形態として、すなわち、布地2を連続的に(すなわち、実質的に間断なく、または間断なく)覆う生体高分子3の層として模式的に示している。
【0159】
図3の実施形態では、導電性材料4を、パターンに沿って、特に複数の平行なストライプとして生体高分子に供給している。
【0160】
上記のように、生体高分子産生微生物を布地2上で直接培養することによって、生体高分子3の層を、布地2上で直接産生することができる。次に、導電性材料4を生体高分子3の少なくとも一部に供給することができる。導電性材料4をパターンに沿って生体高分子3に供給する場合、導電性材料4を、好ましくは、印刷によって生体高分子3に適用する。
【0161】
例えば、炭素ベースの導電性インクのパターンを、選択されたパターンおよび/または形状に沿って、生体高分子3、例えば、微生物セルロースに印刷することができる。
【0162】
実施形態では、導電性材料4を、例えば、複数の平行なストライプとして、パターンに沿って生体高分子2に供給することができる。
【0163】
実施形態では、導電性材料4を、例えば、印刷によって生体高分子3に供給することができ、次に、導電性材料4を含む生体高分子3を、繊維製品、例えば、布地2と結合することができる。
【0164】
実施形態では、繊維製品、例えば、布地2は、生体高分子3を備えており、次に、導電性材料4を、生体高分子3の少なくとも一部に適用する。
【0165】
図2に示す実施形態と同様に、
図3に示す本発明の導電性複合繊維製品1の例示的な実施形態も、一方向タッチパッドの製造に適している。
【0166】
実際、
図3の実施形態では、導電性材料4を、各ストライプの容量を測定するために感知デバイスに接続することができる複数の平行なストライプとして、生体高分子3に供給している。
【0167】
図4は、導電性材料4を含む生体高分子3のパターン備える導電性複合繊維製品1のさらなる例示的な実施形態の部分的斜視図である。
【0168】
特に、
図4では、布地2は、直交する行および列に沿って配置された、生体高分子3の複数の正方形要素を備えている。
【0169】
図4は、導電性複合繊維製品1の実施形態を模式的に示しており、各正方形要素において、生体高分子3は、均質または実質的に均質になるように導電性材料4を備えている。
【0170】
実施形態では、生体高分子3の要素は、すべて同じ量または実質的に同じ量の導電性材料4を含むことができる。
【0171】
実施形態では、生体高分子3の要素は、異なる量の導電性材料4を含むことができる。例えば、生体高分子3の各要素は、導電性複合繊維の重量の0.005重量%~7.5重量%、好ましくは0.01重量%~5重量%の範囲の導電性材料4を含むことができる。
【0172】
実施形態では、生体高分子3の要素は、異なる寸法および/または異なる厚さを有することができる。
【0173】
図4は、生体高分子3のパターンの要素が実質的に正方形を有する実施形態を模式的に示している。
【0174】
実施形態によれば、生体高分子3のパターンの要素は、任意の幾何学的形状を有することができる。例えば、生体高分子3のパターンの1つ以上の要素は、多角形(長方形、正方形、三角形、不定形など)、または湾曲状(例えば、円形、卵形、楕円形)、または直線部と曲線部の両方を備える形状を有することができる。
【0175】
実施形態によれば、生体高分子3を、布地2に対して連続的または実質的に連続的な層として供給することができ、導電性材料4を、所望のパターン、例えば、行および列、好ましくは直交する行および列に配置された複数の要素に沿って、このような生体高分子3の少なくとも一部に供給することができる。
【0176】
実施形態によれば、生体高分子3および/または導電性材料4を、生体高分子3および/または導電性材料4のグリッドとして布地2に供給することができる。
【0177】
有利なことに、導電性材料4、または導電性材料4を含む生体高分子3を、要素の行および列、好ましくは直交する行および列のパターンに沿って、またはグリッドパターンに沿って供給する場合、本発明の導電性複合繊維製品1は、双方向タッチパッドの製造に特に適しているという結果になる。例えば、
図4の例示的な実施形態を考慮すると、導電性材料4を含む生体高分子3の正方形要素を、生体高分子3の各要素の容量を測定するために、単独で、感知デバイスに接続することができる。
【0178】
図1~
図4に示す実施形態では、好ましくは、導電性材料4のパターンを検出デバイスに電気的に接続するようになっている電気的接続(図示せず)を備えることができる。
【0179】
例えば、検出デバイスは、タッチイベントの静電容量感知のために、導電性材料4の1つ以上のパターンの静電容量値を評価することができるようになっている。
【0180】
好適な検出デバイスおよびその関連する用途は、欧州特許出願番号EP18172676.1に基づき優先権を主張している、欧州特許出願番号EP19174913.4「発明の名称:位置に敏感な静電容量式タッチセンシング用複合糸」、および欧州特許出願番号EP18196531.0に基づき優先権を主張している、欧州特許出願番号EP19199244.5「発明の名称:静電容量式タッチセンサー」に開示されている。このような欧州特許出願は、本願の出願人の名前で出願されており、これらの内容は、あたかもその全体が記載されているものとして、参照のために本明細書に組み込まれるものとする。
【0181】
図5は、繊維製品が糸5である本発明の例示的な実施形態を示している。特に、
図5(A)は、糸5の断面を模式的に示しており、
図5(B)は、生体高分子3でコーティングされた(すなわち、
図5(B)および
図5(C)の場合には、コーティングされた)糸5の断面を模式的に示しており、
図5Cは、本発明による導電性複合繊維製品1の断面を模式的に示している。ここで、繊維製品は、導電性材料4を含む生体高分子3でコーティングされた糸5である。
【0182】
図5によれば、糸5は、生体高分子3、すなわち糸5を実質的に包む生体高分子3のコーティングを備えることができる。次に、導電性材料4を適用することができる。
【0183】
例えば、生体高分子3を糸5に直接増殖するために、培養することができる生体高分子産生微生物の培養物で、糸5を、含浸させることができる。次に、生体高分子3を備える糸5に導電性材料4、例えば導電性インクを含浸させて、導電特性を有する複合繊維1、この場合は導電特性を有する複合糸を得ることができる。
【0184】
実施形態では、生体高分子産生微生物の培養物は、少なくとも導電性材料4を含むことができる。この場合、有利なことに、糸5は、導電性材料4を含む生体高分子3を、ワンステッププロセスによって、備えることができる。
【0185】
上記のように、生体高分子産生微生物を含み、必要に応じて、導電性材料4を含む培養物を、公知の方法によって糸に供給することができる。
【0186】
実施形態によれば、生体高分子産生微生物を含み、必要に応じて、導電性材料4を含む培養物を、本願の出願人の名前で出願されている国際出願PCT/EP2018/065506に基づき優先権を主張している、欧州特許出願番号EP19179217.5「発明の名称:微生物の培養物を細長い要素に供給するためのプロセス」に開示されているプロセスにより、糸に供給することができる。
【0187】
たとえば、欧州特許出願番号EP19179217.5および国際出願PCT/EP2018/065506によれば、生体高分子産生微生物を含む培養物を出口から投与するための出口を有する供給デバイスと、その供給デバイスに糸を供給するための糸供給源とを備える装置によって、生体高分子産生微生物を含む培養物を糸に供給することができ、この装置は、培養物が出口から投与されるときに、微生物を含む培養物が糸の少なくとも一部に接触するようになっている。この場合、一定量の培養物を糸に供給すると、一定量の培養物が出口から投与されるため、一定量の培養物を糸に供給することで、過剰な培養物が無駄になるのを避けながら、糸に十分な量の培養物を供給することができる。言い換えれば、有利なことに、培養物が糸を包み込むが、培養物が糸から落下したり、出口で乾燥したりするのを防ぐために、選択した流量で供給デバイスの出口から培養物を投与することにより、培養物の投与を調整することができる。
【0188】
上記のように、生体高分子産生微生物を含む培養物は、必要に応じて、導電性材料4および/または柔軟剤をさらに含むことができる。この場合、好ましくは、培養物は、培地の総重量の0.0001重量%~1重量%の範囲の導電性材料を含むことができる。
【0189】
有利なことに、繊維製品が糸5である場合、本発明のプロセスは、導電性複合糸、すなわち、導電特性を有する糸を製造することができる。このような導電性複合糸は、現在利用可能な導電性糸に加えて、またはその代替として使用することができる。
【0190】
本発明の一態様によれば、導電性生体高分子は、導電性材料を含まない場合の生体高分子と同じ、または実質的に同じ構造特性(例えば、結晶構造、ナノ多孔質ネットワーク構造)を維持している。有利なことに、実施形態では、生体高分子は、均質または実質的に均質になるように導電性材料を備えることができる。言い換えれば、導電性材料の濃度は、生体高分子またはその一部において実質的に一定にすることができる。
【0191】
実施形態によれば、導電性生体高分子は、衣料品、例えば、衣服に仕立てること、または糸に加工することができる。
【0192】
実施形態によれば、物品、特に、例えば、糸、布地、または衣服、またはそれらの一部などの繊維品は、導電性生体高分子から作るか、または本質的にこれから作ることができる。
【0193】
上記のように、生体高分子を、増殖させて、生体高分子に導電性材料を備えることができる。導電性材料を供給する前および/または後に、生体高分子は、それ自体当該技術分野で公知の方法によって、糸、布地、または衣服に加工することができる。
【0194】
本発明は、いくつかの利点を提供する。例えば、本発明は、簡単、迅速、かつ費用対効果の高い方法で、導電性を有する製品を製造することができる。
【0195】
さらに、本発明は、信頼性があり、いくつかの用途、特に繊維品分野で使用することができる導電特性を有する製品を得ることができる。
【0196】
さらに、本発明によれば、導電性材料が生体高分子の構造を危険にさらすことなく、生体高分子は、導電性材料を容易に含むことができる。
【符号の説明】
【0197】
1 導電性複合繊維製品
2 布地
3 生体高分子
4 導電性材料
5 糸