(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】防犯機能付きデジタルサイネージ
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240730BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2024033522
(22)【出願日】2024-03-06
【審査請求日】2024-03-06
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515297076
【氏名又は名称】アースアイズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522000728
【氏名又は名称】Sabマネージメント有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165238
【氏名又は名称】中西 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 三郎
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第2023-0113877(KR,A)
【文献】特開2023-007309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影部と、利用者が質問事項を入力する情報入力部と、情報出力部と、演算処理部と、を備え、
前記演算処理部は、利用者支援部と、不審行動監視部と、を含んでなり、
前記利用者支援部は、利用者支援情報を生成する利用者支援情報生成手段として、ニューラルネットワークを有する機械学習型の情報処理装置、或いは、その他の人工知能(AI)を有し、
前記情報処理装置又は前記人工知能(AI)は、前記質問事項を入力値として、前記入力値に対応する前記利用者支援情報を出力し、
前記不審行動監視部は、前記撮影部が撮影した画像を解析することにより、前記画像中の人物の不審行動を抽出する不審行動抽出手段を有し、
前記情報出力部には案内者
を模した案内者アバター
又は警備員を模した警備員アバターが表示され、
前記不審行動が抽出されていない場合には、前記
案内者アバターが双方向コミュニケーションによる対話を行って前記利用者支援情報を前記
案内者アバターの発信する情報として出力し、
前記不審行動が抽出された場合には、
不審行動警戒情報の出力内容に応じて、前記
案内者アバターが
前記不審行動警戒情報を前記
案内者アバターの発信する情報として出力する
か、或いは、前記案内者アバターを前記警備員アバターに変更し前記不審行動警戒情報を前記警備員アバターの発信する情報として出力する、
防犯機能付きデジタルサイネージ。
【請求項2】
前記情報出力部は、前記不審行動警戒情報を出力する際に、前記防犯機能付きデジタルサイネージを設置している店舗内に配置されている案内者又は監視員、或いは、リモート作業で当該店舗を監視している監視員の情報処理端末にも前記不審行動警戒情報を同時に発信する、
請求項1に記載の防犯機能付きデジタルサイネージ。
【請求項3】
撮影部、利用者が質問事項を入力する情報入力部、情報出力部、及び、演算処理部が、通信可能に接続されてなる情報処理システムであって、
前記演算処理部は、利用者支援部と、不審行動監視部と、を含んでなり、
前記利用者支援部は、利用者支援情報を生成する利用者支援情報生成手段として、ニューラルネットワークを有する機械学習型の情報処理装置、或いは、その他の人工知能(AI)を有し、
前記情報処理装置又は前記人工知能(AI)は、前記質問事項を入力値として、前記入力値に対応する前記利用者支援情報を出力し、
前記不審行動監視部は、前記撮影部が撮影した画像を解析することにより、前記画像中の人物の不審行動を抽出する不審行動抽出手段を有し、
前記情報出力部には案内者
を模した案内者アバター
又は警備員を模した警備員アバターが表示され、
前記不審行動が抽出されていない場合には、前記
案内者アバターが双方向コミュニケーションによる対話を行って前記利用者支援情報を前記
案内者アバターの発信する情報として出力し、
前記不審行動が抽出された場合には、
前記不審行動警戒情報の出力内容に応じて、前記
案内者アバターが
前記不審行動警戒情報を前記
案内者アバターの発信する情報として出力する
か、或いは、前記案内者アバターを前記警備員アバターに変更し前記不審行動警戒情報を前記警備員アバターの発信する情報として出力する、
防犯機能付きデジタルサイネージ・システム。
【請求項4】
前記情報出力部は、前記不審行動警戒情報を出力する際に、前記防犯機能付きデジタルサイネージを設置している店舗内に配置されている案内者又は監視員、或いは、リモート作業で当該店舗を監視している監視員の情報処理端末にも前記不審行動警戒情報を同時に発信する、
請求項3に記載の防犯機能付きデジタルサイネージ・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「防犯機能付きデジタルサイネージ」に関する。本発明は、詳しくは、無人店舗等への設置によって、当該店舗利用客の利便性の向上及び防犯性の向上に併せて寄与することができる「防犯機能付きデジタルサイネージ」に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無人化、或いは、省人化の進む店舗等において、利用者の利便性を維持するために、各種の利用者支援情報を提供するデジタルサイネージが配置されている。ここで、「デジタルサイネージ」とは、表示と通信にデジタル技術を活用して平面ディスプレイ等によって映像や文字からなる情報を表示することができる情報表示装置のことを言う(特許文献1参照)。
【0003】
近年の「デジタルサイネージ」の活用例として、接客サービスを行う人員の代替として、接客サービスを行う案内者のアバター映像を介した双方向型のコミュニケーションによって、利用者に上記の利用者支援情報を提示するタイプの表示装置も広く普及しつつある(特許文献2参照)。
【0004】
一方で、無人化、或いは、省人化された上記店舗においては、利用者の利便性を確保することに加えて、万引きやレジの不正操作等の犯罪行為を防止するための防犯システム等を導入することも必須である(特許文献3参照)。
【0005】
無人化、或いは、省人化された店舗においては、利用者の利便性を維持するためのコストと防犯性を維持するためのコストが重ねて嵩むことについて、改善策が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6647612号公報
【文献】特開2023-7309号公報
【文献】特許第7039084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記状況に鑑み、無人化、或いは、省人化された店舗等において、利用者の利便性と、防犯性とを、従来よりも低コストで、併せて維持することができる技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、利用者支援機能を有する従来のデジタルサイネージに防犯機能を付加した「防犯機能付きデジタルサイネージ」とすることにより、上記課題を解決できることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0009】
(1) 撮影部と、情報出力部と、演算処理部と、を備え、前記演算処理部は、利用者支援部と、不審行動監視部と、を含んでなり、前記利用者支援部は、利用者支援情報を生成する利用者支援情報生成手段を有し、前記不審行動監視部は、前記撮影部が撮影した画像を解析することにより、前記画像中の人物の不審行動を抽出する不審行動抽出手段を有し、前記情報出力部は、前記不審行動が抽出されていない場合には前記利用者支援情報を出力し、前記不審行動が抽出された場合には不審行動警戒情報を出力する、防犯機能付きデジタルサイネージ。
【0010】
(1)の防犯機能付きデジタルサイネージによれば、無人化、或いは、省人化された店舗等において、利用者の利便性と、防犯性とを、従来よりも低コストで、併せて維持することができる。具体例として、無人コンビニ等における万引きによるロスを大幅に削減し、無人コンビニの安全性と利便性を向上させることができる。又、利用客の出現頻度は少ないが高額な貴金属や美術品等を展示する展示場等においてコンシェルジュサービスと警備サービスの両方を、この防犯機能付きデジタルサイネージの設置によって賄うことによって両者に係る人件費コストを併せて削減することができる。
【0011】
(2) 前記情報出力部には案内者のアバターが表示され、前記利用者支援情報は、前記アバターの発信する情報として出力される、(1)に記載の防犯機能付きデジタルサイネージ。
【0012】
(2)の防犯機能付きデジタルサイネージによれば、案内者のアバターが、現実の案内者とのコミュニケーションに近似した双方向コミュニケーションを行うことによって、利用者の利便性を高い水準で維持しながら、店舗の無人化、或いは、省人化を進めることができる。そして、そのような店舗の無人化、或いは、省人化を進めた際に課題となる防犯性についても、別途の防犯システムを導入することなく、好ましい水準に維持することができる。
【0013】
(3) 前記不審行動警戒情報は、前記アバターの発信する情報として出力される、(2)に記載の防犯機能付きデジタルサイネージ。
【0014】
(3)の防犯機能付きデジタルサイネージによれば、不審行動警戒情報が、通常、利用者支援情報を発信する案内者のアバターから発信されるので、不審者から警戒されずに当該不審者とこのシステムとの間の初期コミュニケーションを成立させることが比較的容易に可能となる。そして、当該コミュニケーション(例えば、リアルな店員による万引き防止の声かけに相当するコミュニケーション)によって、犯罪を未然に防止する可能性を高めることができる。(3)の防犯機能付きデジタルサイネージによれば、このような機能により、無人化、或いは、省人化の進んだ店舗等における防犯性を更に高めることができる。
【0015】
(4) 利用者が質問事項を入力する情報入力部を更に備え、前記利用者支援部は、利用者支援情報生成手段として、ニューラルネットワークを有する機械学習型の情報処理装置、或いは、その他の人工知能(AI)を有し、前記情報処理装置又は前記人工知能は、前記質問事項を入力値として、前記入力値に対応する前記利用者支援情報を出力する、(1)から(3)の何れかに記載の防犯機能付きデジタルサイネージ。
【0016】
(4)の防犯機能付きデジタルサイネージは、利用者が、現実の案内者のアバターとの双方向コミュニケーションをとれるようにされていることによって(1)から(3)の何れかに記載の防犯機能付きデジタルサイネージにおいて、当該店舗における利用者の利便性を更に高い水準に維持しながら、尚且つ、防犯性も高い水準に維持することができる。
【0017】
(5) 撮影部、情報出力部、及び、演算処理部が、通信可能に接続されてなる情報処理システムであって、前記演算処理部は、利用者支援部と、不審行動監視部と、を含んでなり、前記利用者支援部は、利用者支援情報を生成する利用者支援情報生成手段を有し、前記不審行動監視部は、前記撮影部が撮影した画像を解析することにより、前記画像中の人物の不審行動を抽出する不審行動抽出手段を有し、前記情報出力部は、前記不審行動が抽出されていない場合には前記利用者支援情報を出力し、前記不審行動が抽出された場合には不審行動警戒情報を出力する、防犯機能付きデジタルサイネージ・システム。
【0018】
(5)の防犯機能付きデジタルサイネージ・システムによれば、無人化、或いは、省人化された店舗等において、利用者の利便性と、防犯性とを、従来よりも低コストで、併せて維持することができる。具体例として、無人コンビニ等における万引きによるロスを大幅に削減し、無人コンビニの安全性と利便性を向上させることができる。又、利用客の出現頻度は少ないが高額な貴金属や美術品等を展示する展示場等においてコンシェルジュサービスと警備サービスとの両方を、この防犯機能付きデジタルサイネージの設置によって賄うことによって両者に係る人件費コストを併せて削減することができる。
【0019】
(6) 前記情報出力部には案内者のアバターが表示され、前記利用者支援情報は、前記アバターの発信する情報として出力される、(5)に記載の防犯機能付きデジタルサイネージ・システム。
【0020】
(6)の防犯機能付きデジタルサイネージ・システムによれば、案内者のアバターが、現実の案内者とのコミュニケーションに近似した双方向コミュニケーションを行うことによって、利用者の利便性を高い水準で維持しながら、店舗の無人化、或いは、省人化を進めることができる。そして、そのような店舗の無人化、或いは、省人化を進めた際に課題となる防犯性についても、別途の防犯システムを導入することなく、好ましい水準に維持することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、無人化、或いは、省人化された店舗等において、利用者の利便性と、防犯性とを、従来よりも低コストで、併せて維持することができる。具体例として、無人コンビニ等における万引きによるロスを大幅に削減し、無人コンビニの安全性と利便性を向上させることができる。又、利用客の出現頻度は少ないが高額な貴金属や美術品等を展示する展示場等においてコンシェルジュサービスと警備サービスとの両方を、この防犯機能付きデジタルサイネージの設置によって賄うことによって両者に係る人件費コストを併せて削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の防犯機能付きデジタルサイネージの構成要件を示すブロック図である。
【
図2】本発明の防犯機能付きデジタルサイネージの具体的な形態の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<防犯機能付きデジタルサイネージ>
以下、本発明を実施するための最良の形態について適宜図面を参照しながら説明する。本発明の「防犯機能付きデジタルサイネージ」は、利用者の利便性を維持するために、各種の利用者支援情報を提供することができる公知の「デジタルサイネージ」に、更に、防犯性を高めるための監視装置としての機能を合わせて付与したハイブリッド型のデジタルサイネージである。
【0024】
尚、「デジタルサイネージ」は、通常、内蔵記憶装置に多数の表示情報を保持することで必要ならば秒単位で表示内容を切り替えることや、動画表示を行う等、多様な映像表現が可能とされている。この多様な映像表現機能を利用して、利用者に対して、疑似的な案内者として機能するアバター映像を介して上記の利用者支援情報の提供を双方向コミュニケーションによって実現することも既に広く行われている。本発明の「防犯機能付きデジタルサイネージ」においても、実施形態の一例として、
図2に例示されている防犯機能付きデジタルサイネージ1のように、アバター100を介した双方向コミュニケーションによって、利用者への情報提供や不審者への警告を行う実施形態が、好ましい実施形態の一例とされている。
【0025】
[全体構成]
本発明の「防犯機能付きデジタルサイネージ」の好ましい実施形態の一例である防犯機能付きデジタルサイネージ1の基本構成は、
図1のブロック図に示す通りである。防犯機能付きデジタルサイネージ1は、少なくとも、撮影部10、情報出力部30、及び、利用者支援部41と不審行動監視部42とを有する演算処理部40を含んで構成される。又、防犯機能付きデジタルサイネージ1は、上記各構成に加えて、更に、情報入力部20を備えるものであることが好ましい。
【0026】
本発明の「防犯機能付きデジタルサイネージ」は、具体的形態の一例として、
図2に示す防犯機能付きデジタルサイネージ1のような形態とすることができる。防犯機能付きデジタルサイネージ1は、
図2に示すように、撮影部10(一例として、動画撮影用デジタルカメラ)と、情報出力部30(一例として、モニター等の画像表示手段とスピーカー等の音声出力手段)と、情報入力部20(一例として、マイク又はタッチパネル)とが一体化されている構成の装置である。演算処理部40については、外部装置として通信可能に接続し分散配置することも可能だが、一体化されている上記装置内に更に演算処理部40も内
蔵されている構成とすることもできる。これにより、本発明の「防犯機能付きデジタルサイネージ」を全構成が一体化されている一体化型の情報処理装置とすることができる。
【0027】
一方で、本発明は、
図1に示す防犯機能付きデジタルサイネージ1の各構成要件の全部又は一部を、他の構成要件とは離間した任意の適切な場所に分散して配置することによって、防犯機能付きデジタルサイネージ1と同様の作用効果を発揮し得る、分散型の情報処理システム、即ち、「防犯機能付きデジタルサイネージ・システム」として実施することもできる。例えば、情報出力部30を有し、撮影部10は有さない従来型の「デジタルサイネージ」の近傍周辺に、1又は2以上の台数のデジタルカメラを撮影部10として配置し、更に、クラウド上にある演算処理部40によって、これらの各部を適切に制御させるようにすることによって、本発明の「防犯機能付きデジタルサイネージ・システム」を構成することもできる。本発明を、このように分散配置型のシステムとして構成する場合、上記各部は、専用の通信ケーブルを利用した有線接続、有線LAN、無線LAN、近距離無線通信、或いは、携帯電話回線等の各種の通信手段によって通信可能に接続されていればよい。
【0028】
[撮影部]
撮影部10は、利用者或いは撮影部の撮影可能領域内に存在するその他の人物を撮影することができる各種のカメラによって構成することができる。撮影部10を構成するカメラは、撮影した画像(以下、「監視画像」とも言う)を、演算処理部40で演算処理することができるようにデジタル形式の画像データとして出力する機能を有するものとすることが好ましい。具体的には、既存の各種の動画撮影機能を有するデジタルカメラを、撮影部10を構成するカメラとして特段の制限なく用いることができる。
【0029】
又、撮影部10を構成するカメラとしては、撮影可能領域とする3次元空間を2次元の画像として連続的に撮影することができる一般的な単眼のカメラを用いることができる。或いは、撮影可能領域とする空間内の3次元位置情報を直接的に取得できる3Dカメラを、撮影部10を構成するカメラとして用いることもできる。
【0030】
撮影部10を構成するカメラとして、上記の単眼カメラを用いる場合、防犯機能付きデジタルサイネージ1は、「監視画像」中の位置を撮影可能領域である3次元空間内における実際の位置と関連付けて特定可能な座標を設定する座標設定部(
図1における図示は省略)を、更に備える構成とすることがより好ましい。座標設定部は撮影部10に内蔵されていてもよいし、演算処理部40内に組み込まれていてもよい。2次元の画像情報から3次元座標を生成可能な座標設定部を設けることにより、高価な3Dカメラを導入することなく、廉価で取得可能な単眼カメラによって取得可能な2次元情報のみを有する画像からであっても、高い精度で人の動作の検出を実行することができる。
【0031】
撮影部10は、例えば、
図2に示すように、小型カメラが撮影部10として情報出力部30に接合或いは内
蔵されている構成、即ち、防犯機能付きデジタルサイネージ1の一部として装置内に組み込まれている構成とすることができる。
図2に示すカメラ付きの防犯機能付きデジタルサイネージ1においては、監視対象領域は、撮影部(カメラ)10の撮影対象領域となる。この場合、このような装置(防犯機能付きデジタルサイネージ)を必要に応じて複数の箇所に適切な方向を向けて配置することで、任意の領域を、監視対象領域とすることができる。
【0032】
[情報入力部]
情報入力部20は、利用者によって入力される質問事項に対応する回答として利用者支援情報を生成する際に、利用者が上記質問事項を演算処理部40(利用者支援部41)に入力値として入力することを可能とする各種入力用デバイスによって構成される。具体的には、利用者の音声を集音するマイク、或いは、タッチパネル式の入力装置等によって情報入力部20を構成することができる。
【0033】
[情報出力部]
情報出力部30は、利用者支援部41が生成した「利用者支援情報」、或いは、「不審行動警戒情報」を、利用者(防犯機能付きデジタルサイネージ1の視聴者)に対して表示する装置である。例えば、プラズマディスプレイ、LEDディスプレイ、VFDディスプレイ、その他各種のプロジェクタ等、文字・動画・静止画を表示可能な装置及び音声を出力可能な各種のスピーカーによって情報出力部30を構成することができる。
【0034】
本発明の好ましい実施形態としては、店舗内に配置される縦横がそれぞれ1m以上2m以下程度のサイズの一般的な販売促進用のデジタルサイネージと同様の形状・サイズの表示装置であって、本願特有の防犯機能を発揮させるための各構成が付加されている装置が想定されている。但し、情報出力部30を構成する上記各種ディスプレイの表示面の面積は特段限定されない。例えば、自動販売機内蔵の小窓部のような数cm四方の小さなサイズのディスプレイから、建造物の壁面に設置される数10m四方規模の巨大ディスプレイにまで、本発明の適用が可能である。
【0035】
情報出力部30による「利用者支援情報」のうち、
図2に示すようなアバター100を通じて出力することできる音声情報等は、アバター100の発信する情報として、アバター100を通じて出力する出力態様とすることが好ましい。
【0036】
情報出力部30による「不審行動警戒情報」の出力は、
図2に示すようなアバター100の発信する情報として、アバター100を通じて出力する出力態様とすることもできる。これにより、不審行動警戒情報が、通常、利用者支援情報を発信する案内者のアバターから発信されることとなり、不審者から警戒されずに当該不審者とこのシステムとの間の初期コミュニケーションを成立させることが比較的容易に可能となる。そして、当該コミュニケーション(例えば、リアルな店員による万引き防止の声かけに相当するコミュニケーション)によって、犯罪を未然に防止する可能性を高めることができる。
【0037】
情報出力部30による「不審行動警戒情報」の出力は、或いは、出力内容等に応じて必要或いは有効な場合には、上述した通り、秒単位で表示内容を切り替えることや、動画表示を行う等、多様な映像表現が可能なデジタルサイネージの機能を利用して、案内者を模した
図2のアバター100を、瞬時に、警備員を模したアバターに変更し、警備員を模した当該アバターの発信する情報として、当該アバターを通じて出力する出力態様とすることもできる。
【0038】
[演算処理部]
演算処理部40は、利用者支援部41、及び、不審行動監視部42を必須の構成として備える。利用者支援部41は、利用者支援情報を生成するための演算処理を行い、不審行動監視部42は、撮影部10が撮影した画像(「監視画像」)中の人物の不審行動を抽出するための画像解析に係る演算処理を行う。そのために、利用者支援部41は、利用者支援情報生成手段を有し、不審行動監視部42は、不審行動抽出手段を有する。
【0039】
演算処理部40は、不審行動が抽出されていない場合(通常時)においては、利用者支援部41が生成した利用者支援情報が情報出力部30から出力されるように防犯機能付きデジタルサイネージ1の動作を制御する。又、演算処理部40は、不審行動監視部42によって不審行動が抽出された場合(非常時)には、不審行動警戒情報が情報出力部30から出力されるように防犯機能付きデジタルサイネージ1の全体動作を制御する。
【0040】
演算処理部40は、本発明の実施に係る上記の動作に特化した専用の情報処理装置として構成することができる。或いは、演算処理部40は、パーソナルコンピュータやタブレット端末、スマートフォン等を利用して構成することもできる。又、演算処理部40は、利用者支援部41及び不審行動監視部42として作動し得る情報処理装置を、サーバーとしてクラウド上に構成して、これを多数のクライアントで共有する構成とすることもできる。
【0041】
上記の何れの構成においても、演算処理部40は、CPU、メモリ、通信部等のハードウェアを備えるコンピュータ等公知の各種の情報処理装置によって構成することができる。そして、上記構成を備える演算処理部40は、コンピュータ用の「プログラム」により、防犯機能付きデジタルサイネージ1の各種動作を具体的に実行することができる。
【0042】
(利用者支援部)
利用者支援部41は、画像情報及び/又は音声情報として情報出力部30から出力される各種の利用者支援情報を生成することができる利用者支援情報生成手段を有する。利用者支援情報とは、当該店舗等における利用者の利便性に寄与し得る各種の案内情報全般のことを言う。利用者支援情報には、利用者の求めによらず、プログラムによって自動的に適宜出力される情報、及び、情報入力部20を通じて利用者によって入力される質問事項(入力値)に対応する回答として生成され出力される情報が含まれる。
【0043】
利用者の求めによらず、プログラムによって自動的に適宜出力される利用者支援情報の具体例としては、本願発明者による特許第6647612号公報(特許文献1)に開示されている「販売促進用コンテンツ(お勧め商品の動画情報)」を挙げることができる。又、このような種類の利用者支援情報の生成についても上記特許文献1に開示されている方法も含め、公知の各種の映像及び音声コンテンツ生成方法によることができる。
【0044】
又、情報入力部20を通じて利用者によって入力される質問事項に対応する回答として生成され出力される利用者支援情報を生成するためには、利用者支援部41を、ニューラルネットワークを有する機械学習型の情報処理装置、或いは、その他各種の人工知能(AI)を備えるものとすることが好ましい。このような人工知能(AI)等として、クラウド上にある各種の人工知能システムを利用することも可能である。これにより、例えば、アバター100を介した双方向コミュニケーションによって、防犯機能付きデジタルサイネージ1が設置される店舗等における利用者の利便性を更に高い水準に維持することができる。又、併せて、上記の店舗等における防犯性の向上にも寄与することができる。
【0045】
(不審行動監視部)
不審行動監視部42は、撮影部10が撮影した画像(「監視画像」)を解析することにより、「監視画像」中の人物(以下「監視対象者」とも言う)の不審行動を抽出する不審行動抽出手段を有する。不審行動抽出手段としては、公知の各種の監視装置で採用されている画像解析手段であって、画像解析によって、「監視対象者」の特定の動きや動作を抽出することができる公知の各種の画像解析手段を特段の限定なく適宜選択して採用することができる。
【0046】
一例として、撮影部10が撮影した画像(「監視画像」)から「監視対象者」の不審行動に該当する「特定動作」を検出するための画像解析手段は、ニューラルネットワークを有する各種の機械学習型の画像解析装置(所謂「ディープラーニング技術を用いた画像認識装置」)を用いて構成することができる。尚、ディープランニングを用いた画像認識技術の具体例については、下記に公開されている。
「ディープラーニングと画像認識、オペレーションズ・リサーチ」
(http://www.orsj.o.jp/archive2/or60-4/or60_4_198.pdf)
【0047】
又、「監視画像」中の「監視対象者」の動作の詳細を機械的に認識するために、一例として、「OpenPose」と称される公知の画像解析技術を用いることができる。本願発明者が特許第6534499号公報において開示しているように、「OpenPose」を用いることにより、上記画像中の人の骨格情報を抽出し、骨格を構成する各特徴点の位置や速度を解析することによって、上記画像中の人の動作を認識することができる。
【0048】
又、「OpenPose」等の画像解析技術を用いることにより、「監視画像」から「監視対象者」の手の動きと、「監視画像」中の商品等(以下、「監視対象物品」とも言う)の動きとをそれぞれ独立した情報として「監視画像」から抽出することもできる。このような機能を利用して、「監視対象者」の手の動きと「監視対象物品」のそれぞれの動きや両者の動きの差分等を解析することによって、「監視対象者」の「監視対象物品」に対する動作の詳細を機械的に検出することができる。これにより、例えば、「人が物を掴んでそのまま持ち去る」というような「人」の「物」に対する動作の不審度を統合的に判定することができる。
【0049】
不審行動監視部42の具体的な構成の一例として、本願発明者が特許第6534499号公報において開示している「監視装置」と同様に、「監視画像」中の「監視対象者」及び「監視対象物品」を特定することができる「監視対象特定部」、これらの監視対象の骨格を抽出する「骨格抽出部」、骨格抽出部が抽出した特徴点の位置を特定する「位置特定部」、特徴点の位置の変動に係る情報に基づいて、監視対象の運動を認識する「運動認識部」、及び、「運動認識部」により認識された監視対象とされている「人」や「物」の速度ベクトルと所定の閾値との比較により、監視対象の運動の不審度を判定して出力する「不審運動判定部」を、備える情報処理装置或いは情報処理システムを、不審行動監視部42の有する不審行動抽出手段として用いる構成を挙げることができる。
【0050】
又、不審行動監視部42を、個々の「監視対象者」のID情報(好ましくは顔認証情報)と当該「監視対象者」の過去の行動履歴と各行動の不審度の判定結果との組合せを、記憶手段に記憶しておくことができるように、各種のID情報取得手段、及び、各種の記憶装置等により構成するデータベースからなる判定履歴記憶手段を更に有する構成とすることもできる。これにより記憶されている「監視対象者」の行動履歴も参照して、不審度の判定結果を調整するようにして不審度判定の精度を更に高めることができる。一例として、行動履歴を参照した結果、要注意顧客であると判定された「監視対象者」に対しては、不審行動であると判定する基準となる閾値を下げる調整を行ってもよいし、或いは、当該「監視対象者」の現在の動作の不審度の判定結果にかかわらず、別途「要注意顧客である」というアラート情報を、監視作業者等に向けて発信するようにしてもよい。
【0051】
[防犯機能付きデジタルサイネージの動作]
防犯機能付きデジタルサイネージ1においては、監視撮影ステップ、及び、不審行動抽出ステップが恒常的に行われる。そして、不審行動抽出ステップによって不審行動が抽出されていない場合(通常時)においては、利用者支援情報出力ステップが行われる。一方、不審行動抽出ステップによって不審行動が抽出された場合(非常時)においては、不審行動警戒情報出力ステップが行われる。
【0052】
(監視撮影ステップ)
監視撮影ステップでは、撮影部10によって、「監視対象者」の動作が撮影される。監視撮影ステップにおいて撮影された「監視画像」は、デジタル形式の画像データとして出力され演算処理部40に入力されて所定の演算処理に処される。
【0053】
(不審行動抽出ステップ)
不審行動抽出ステップでは、監視撮影ステップで得た「監視画像」の画像解析処理により、「監視対象者」の「特定動作」が抽出される。そして、抽出された「特定動作」の不審度が所定の閾値を超えている場合には、不審行動警戒情報出力ステップが行われる。上記「特定動作」の不審度が所定の閾値を超えていない場合には、監視撮影ステップに戻り監視作業が継続される。
【0054】
(利用者支援情報出力ステップ)
利用者支援情報出力ステップでは、各種の利用者支援情報が、利用者支援部41において生成されて情報出力部30から出力される。利用者支援情報は、一例として、商品の購買意欲喚起に有効な関連物品の画像を含んで構成される「販売促進用コンテンツ」である。利用者支援情報出力ステップにおいては、上記の「販売促進用コンテンツ」等の利用者支援情報の生成と併せて、当該利用者支援情報の表示のタイミングを制御する「表示スケジュール」も自動的に生成されることが好ましい。
【0055】
又、利用者支援情報出力ステップにおける利用者支援情報の出力は、情報出力部30に表示されるアバター100の発信する情報として、出力することができる。又、情報入力部20を通じて利用者によって入力される質問事項に対応する回答として生成され出力される利用者支援情報を、アバター100の発信する情報として、出力することもできる。
【0056】
(不審行動警戒情報出力ステップ)
不審行動警戒情報出力ステップでは、不審行動抽出ステップにおける判定の結果、「監視対象者」の「特定動作」の不審度が所定の閾値を超えている場合に、「監視対象者」の不審度に応じた適切な不審行動警戒情報が情報出力部30から出力される。一例として、店舗内に配置されている防犯機能付きデジタルサイネージ1の情報出力部30に表示されているアバター100が、不審行動警戒情報の内容に応じて、不審者に対して、「何かお困りですか?」等といった声掛けをすることによって、犯罪の発生を未然に防止する運用も有効である。
【0057】
又、不審行動警戒情報出力ステップにおいては、防犯機能付きデジタルサイネージを設置している店舗内に配置されている案内者又は監視員、或いは、リモート作業で当該店舗を監視している監視員等の情報処理端末にも不審行動警戒情報を同時に発信するようにすることが好ましい。このように、不審行動警戒情報を監視対象店舗等の案内者又は監視員等に対してそれぞれ犯罪の抑止に有効な内容の情報として伝達することもできる。
【0058】
(アバターの動作)
防犯機能付きデジタルサイネージ1においては、情報出力部30に表示されるアバター100に利用者への対応を行わせることで、店舗等の無人化或いは省人化を促進することができる。利用者は、案内者に代替するアバター100と双方向コミュニケーションによる対話を行い自分の購買ニーズに合わせた商品情報や商品の場所店舗情報等の利用者支援情報を得ることができる。又、アバター100は、万引等の犯罪に繋がる不審な行動が検出された場合に、自動的に利用者(不審者)に声掛けをすることによって、犯罪の発生を未然に抑止することもできる。尚、アバター100による利用者への対応は、操作員によるアバターのリモート操作による対応、AI(人工知能)によるアバターの完全自動制御による対応、若しくは、それらを併用するハイブリット型の対応によることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 防犯機能付きデジタルサイネージ
10 撮影部
20 情報入力部
30 情報出力部
40 演算処理部
41 利用者支援部
42 不審行動監視部
100 アバター
【要約】
【課題】無人化、或いは、省人化された店舗等において、利用者の利便性と、防犯性とを、従来よりも低コストで、併せて維持すること。
【解決手段】撮影部10と、情報出力部30と、演算処理部40と、を備え、演算処理部40は、利用者支援部41と、不審行動監視部42と、を含んでなり、利用者支援部41は、利用者支援情報を生成する利用者支援情報生成手段を有し、不審行動監視部42は、撮影部10が撮影した画像を解析することにより、画像中の人物の不審行動を抽出する不審行動抽出手段を有し、情報出力部30は、不審行動が抽出されていない場合には利用者支援情報を出力し、不審行動が抽出された場合には不審行動警戒情報を出力する、防犯機能付きデジタルサイネージ1とする。
【選択図】
図1