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特許7529216森林蓄積植物のペレットを利用した炭酸ガス、亜酸化窒素ガス及びメタンガスの吸収、固定、カーボンニュートラル、削減法。
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  • 特許-森林蓄積植物のペレットを利用した炭酸ガス、亜酸化窒素ガス及びメタンガスの吸収、固定、カーボンニュートラル、削減法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】森林蓄積植物のペレットを利用した炭酸ガス、亜酸化窒素ガス及びメタンガスの吸収、固定、カーボンニュートラル、削減法。
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/23 20180101AFI20240730BHJP
   A01G 24/42 20180101ALI20240730BHJP
【FI】
A01G24/23
A01G24/42
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021206722
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023091879
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】511161085
【氏名又は名称】有限会社最上蘭園
(73)【特許権者】
【識別番号】519328903
【氏名又は名称】宇井 拓男
(73)【特許権者】
【識別番号】520512409
【氏名又は名称】宇井 喜代美
(73)【特許権者】
【識別番号】519327803
【氏名又は名称】藤原 澄久
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇井 清太
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-011109(JP,A)
【文献】特開2007-112669(JP,A)
【文献】特開2006-341210(JP,A)
【文献】特開2020-011211(JP,A)
【文献】特開2004-321082(JP,A)
【文献】国際公開第2006/077652(WO,A1)
【文献】特開昭61-220727(JP,A)
【文献】特開2005-015534(JP,A)
【文献】特開2006-249397(JP,A)
【文献】特開2002-249389(JP,A)
【文献】特開2008-136950(JP,A)
【文献】特開2001-061368(JP,A)
【文献】江崎春雄ほか,バイオマスのペレット成形に関する研究(第2報),農業機械学会誌,1986年,Vol. 48, No. 1,pp. 83-90
【文献】山口彰ほか,木質土壌改良材の畑地使用時における木材成分の経時変化,森林総合研究所研究報告,1986年03月,Vol. 338,pp. 1-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 1/00 - 9/00
A01G 24/00 - 24/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
森林蓄積植物組織を粉砕して粒径0.3mm以下の粉末とし、この粉末を1000kgf/cm 以上の高圧で圧縮し、1.023を超える嵩密度の炭酸ガスの固定化用ペレットを、予め白色木材腐朽菌が散布された圃場に散布するか、又は前記ペレットが白色木材腐朽菌とともに圃場に散布される炭酸ガスの固定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質組織のペレットによる深海海底炭酸ガス固定及び陸上地下埋没による人為的化石化による炭酸ガス固定に関するものである。
さらに詳しく説明すると、本発明は、樹皮、形成層、木質部などの森林蓄積植物組織を高圧・摩擦熱でペレット化することを必須とし、さらに、複数の多様な新規な技術、技法を用いて、炭酸ガスだけでなく亜酸化窒素ガス及びメタンガスの「吸収」「固定」「削減」「カーボンニュートラル」を行うものである。
【背景技術】
【0002】
世界社会は18世紀に興った産業革命によって有限資源である地球の地下化石燃料をエネルギー源にして大量生産、大量消費の経済社会を構築して、人類は約200年間経済ファーストで有史以来最も豊かな生活を謳歌してきた。2019年の世界炭酸ガス排出量は335億トン、日本の炭酸ガス排出量は12.1億トンという膨大な炭酸ガスを排出し、地球環境変動を引き起こすまでになり、温暖化による気候変動、生物生態系の破壊、海洋汚染、農業圃場の農薬、硝酸塩による汚染、気候変動による農業圃場の荒廃砂漠化、全世界を襲う天災など憂慮すべき問題が、これまでの大量生産大量消費のツケとして21世紀に一挙に浮上した。
【0003】
ようやく世界社会は2050年を目標に、全産業が炭酸ガス排出ゼロ目標へ舵を切りつつあるが、革新的な炭酸ガス固定技術の開発が進行しない経済構造の改変を嘲笑うように、突如コロナウイルスが現れ、有史以来人類が築いてきた文明、文化、更に産業革命で作り上げた経済社会の構造までことごとく破壊した。一つのウイルスに産業革命が敗北したといっても過言ではない。さらに、炭酸ガス排出実質ゼロにする画期的な技術を人類が、科学で開発することができなければ、炭酸ガスにも敗北することになる。アフターコロナ時代は、ウイルスと炭酸ガスと食糧危機の克服という人類存亡の課題を背負う時代でもある。2020年から2050年の30年の間に、18世紀の産業革命を凌駕する新しい産業革命を構築しなければ、地下資源の枯渇、食糧不足、気候変動の天災激発、地球温暖化、海洋汚染、食糧の残留農薬汚染などの問題を解決できない。それ等の問題を解決することが新たな産業革命として、炭酸ガス排出ゼロ、産業革命以前のようなカーボンニュートラル社会構築を標榜している。ここまで大気に放出、蓄積してきた炭酸ガスを、どのような技術で固定して大気の組成を18世紀時代の濃度まで減少させることが出来るのか。現状維持でも困難と危惧される。人類の科学レベルが問われる時代に突入した。
【0004】
2050年の未来社会を予測すれば、炭酸ガス排出ゼロ、水素生産技術に、例え革命的な新発明が行われたとしても、バラ色の時代が来るものではない。2050年社会は、90億人に増加した人口を賄う十分な食糧生産がない飢餓社会になる。それを抑止するために気候変動の環境のなかで、このまま進行すれば農薬、化学肥料をさらに多く使用して食糧確保農業になる。多量に含有する残留農薬食糧によって免疫力は弱体化し、ウイルスなどの新規な感染症により、超高齢社会は病気多発社会となる。さらに、現在より天災が頻繁に起こる地球になる。これらの問題は、化学で唯単に炭酸ガス固定、水素生産を可能にしても解決できないものである。
【0005】
日本は世界第三位の森林大国でありながら、これまで森林、林業における炭酸ガス固定、削減政策を行ってこなかった。
これまで、世界社会が排出してきた335億トンの炭酸ガスを、吸収して地球を維持してきたのは人間の科学、化学ではなく、植物と土壌である。このことを考えれば、2050年炭酸ガス排出実質ゼロ目標達成には、化学的技術ではなく、地球の自然の法則を利用した植物、森林、土壌(地下地層)、水、海、菌根菌子嚢菌白色木材腐朽菌、農業、林業、新規なグリーン産業で行うのが望ましい自然な姿である。それは、化学的技術では炭酸ガス固定はできても、食糧飢餓、残留農薬、免疫課題を解決できないからである。
【0006】
従来、間伐材や木工製品の製造工程で発生する鋸屑や木片は、粉砕しペレット化してペレットストーブ用の燃料(特許文献1~4)、家畜の踏み草代用、ペットのトイレ用(特許文献5)などに利用されているが、最終的には焼却され、これらは全てカーボンニュートラルであり、大気中に蓄積されている炭酸ガスを積極的に、人為的に削減するものではない。
森林蓄積、産廃木質組織を利用し、カーボンニュートラルに留まらず、固定、削減する技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-050728号公報
【文献】特開2011-136312号公報
【文献】特開2018-083876号公報
【文献】特開2019-026730号公報
【文献】特開2021-516047号公報
【文献】特願2020-142873号
【文献】特願2020-216308号
【文献】特願2021-078944号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、植物を利用して多くの国が2050年を目標としている炭酸ガス排出実質ゼロの目標達成、さらに、日本政府が2050年を目標にした農業における「農薬50%削減」「化学肥料40%削減」「100万haの有機農業実施」による農業関連からの炭酸ガス排出削減目標を、先行知見、文献にない新規な革新的な炭酸ガス「固定」「削減」「カーボンニュートラル」技術を開発し達成することを目的とするものである。
【0009】
本発明は、森林の炭酸ガス固定による森林蓄積植物組識(樹皮、形成層、木質部)をペレット化することで、カーボンニュートラルのみでなく、産業革命以来今日まで大気中に排出、蓄積された、地球気候変動の原因とされる「炭酸ガス」を削減すると同時に、農業圃場に蓄積されているもう一つの地球気候変動の原因とされる「亜酸化窒素ガス」を削減する発明をも含むものである。
炭酸ガス排出量の約25%が農業関連から排出されており、炭酸ガス排出実質ゼロを達成するには、農業、圃場における地球温暖化ガスである亜酸化窒素ガスの発生を無視する事はできない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明では、森林蓄積植物組織を、まず粉砕して粉末化し、この粉末を高圧、高温で圧縮しペレット化して利用する。このようにして作成したペレットと森林蓄積植物組織を単に破砕してチップとしたものとの物性は、以下の表1に示す通りである
【0011】
【表1】
【0012】
このようなペレットを使用した本発明の主要な実施の態様は以下のとおりである。
(1)森林蓄積植物組織を粉砕して1000kgf/cm以上の圧力で圧縮し、海水の比重1.023を超える嵩密度、好ましくは1.3以上の嵩密度のペレットを利用する炭酸ガスの固定化方法。
(2)前記ペレットを圃場に散布する(1)記載の炭酸ガスの固定化方法。
(3)前記圃場が予め白色木材腐朽菌が散布された圃場であるか、又は前記ペレットを白色木材腐朽菌とともに圃場に散布する(2)記載の炭酸ガスの固定化方法。
(4)前記ペレットを深海に沈降させ、又は地中に埋設する、(1)記載の炭酸ガスの固定化方法。
【0013】
第1の本発明における「森林蓄積」とは、森林を構成する樹木の幹の体積を意味し、「森林蓄積植物組織」とは、竹を含む樹木の「樹皮」、「形成層」、「木質部」をいう。
本発明のペレットの原料である森林蓄積植物組織としては、間伐材、木工製品の廃棄物や製造工程で発生する残余物などが利用できるが、植物組織であっても、草本の組織は原則として使用しない。その理由は、草本植物では、後述する腐朽菌分解後、フルボ酸、ヒューミン、腐植酸の産生が5%以下であり炭酸ガス固定という目的から望ましい原料とはいえないからである。
【0014】
さらに、本発明に使用するペレットは、針葉樹、広葉樹の木質組織に、広葉樹生木の「樹皮」と「形成層」を約20%混合して製造することが好ましい。その理由は、広葉樹の形成層、樹皮には多量な「樹脂」「生理活性物質」「微量要素」「ケイ酸」などを含み、より堅固なペレットとなり、形状持続性、崩壊性、分解性などを良好にすると同時に、農業圃場に投与した場合に、形成層を含むペレットの場合、白色木材腐朽菌のエサになる養分が含有するために、白色木材腐朽菌の繁殖が早く、炭酸ガスを固定するフルボ酸、腐植酸などの産生を促進することが出来る。さらに、樹皮にはより多くのフルボ酸、ヒューミン、腐植酸を作る強固なリグニン、セルロース、微量要素、ケイ酸を含有していることから、木質組織単用ペレットより約2から4%多く炭酸ガス固定出来るという利点があるからである。
そのため、本発明のペレットを製造するに当たり、針葉樹木質を原料にする場合、あるいは建築、家具、ノコクズ、廃屋解体木質、竹を原料にする場合は、広葉樹の形成層、樹皮からなる組織を約20%混合し、広葉樹木質を原料にする場合は形成層、樹皮、木質部を含む全木を使用する必要がある。
【0015】
本発明における「粉砕」とは、上記森林蓄積植物組織を、適宜、粉砕機で平均粒径0.3mm程度以下の粉末状にすることを言い、ここまで微小な紛末にすれば、細胞内の空気をほぼ完全に脱気することが出来、より緻密で堅牢なペレットにすることが出来る。
本発明における「ペレット」とは、粉末状の森林蓄積植物組織を1000kgf/cm以上の圧力で、海水の比重1.023g/cmを超える嵩密度、好ましくは1.3g/cm以上、さらに好ましくは1.5g/cm以上の嵩密度に圧縮したものをいい、1.3g/cm以上まで嵩密度を高めると真水や海水中で速やかに沈降する。なお、樹木の種類によっては、海水に沈降する嵩比重になるまでの圧力が異なり、3000~5000kgf/cmに調整する場合もあるので、製造中に海水中の沈降試験を実施しながら圧力を調整して製造する。
【0016】
ペレット製造機を1000kgf/cm以上の圧力に調整した場合のペレットの温度は120~150℃程度となる。
この摩擦熱で針葉樹、広葉樹の樹皮のセルロースが溶融し、樹皮、形成層に含有する「樹脂」「ペクチン」と溶融混和し、粉状の0.1~0.3mm径の木質粒子を接着することで、水中、多湿条件下でも崩壊しない微細な穴を有する多孔質でありながら堅固なペレットにすることが出来る。一方、これよりも低い温度で製造したペレットは、脆弱なものとなり、水を与えた場合、膨張より早く崩壊が生じ、海中、廃坑、土中での炭酸ガス固定を完璧に達成することができない。
さらに、この摩擦熱と高圧で木質組織由来の病害虫はほとんど全て死滅し、使用後に病害虫による地球環境破壊は起こらない。
【0017】
本発明のペレットの形状は、直径6~8mmの球形又は長さ10~20mmの円筒状が、望ましい。
【0018】
また、本発明のペレットは、原料が森林蓄積植物組織単用であり、1000kgf/cm以上の圧力と120℃以上の高温で製造されるので、水を含むと体積が約200%膨張する。本発明のペレットを地中に埋設した場合、この膨張によってペレット層が空気遮断を行い、ペレット層内部の好気性菌による急速な分解を抑止し、人為的な木質ペレットによる「化石化」が行える。一方、内部には大きな空間が生まれ、多くの水分を保存することができるので、圃場に投与した場合、この水分によって好気性菌、白色木材腐朽菌の繁殖に適度水分と、形成層由来の養分で、ペレットを速やかに分解し、フルボ酸、ヒューミン、腐植酸を産生する。そしてペレット分解後、地表には「フルボ酸」、「ヒューミン」、「腐植酸」が残留するが、これらフルボ酸、ヒューミン、腐植酸には、その50%の炭素が含有され、難分解性で、完全に分解するのに300~3000年を要するといわれており、その期間、炭素固定が行えることになる。
この激しい膨張を確実にするためには、1000kgf/cm以上、樹木によっては3000、5000kgf/cmに調整する必要がある。
【0019】
本発明は、この膨張するペレットに着目し、ペレット自体の膨張力で嫌気性条件の作成による炭素含有化合物の分解遅延と、ペレット自体の膨張によるペレット粒子間の間隙拡大による外部表面からの空気の侵入、保水による好気性白色木材腐朽菌の繁殖促進でフルボ酸、ヒューミン、腐植酸などの難分解性炭素含有化合物の産生により、炭酸ガス固定を行うという、相反する機能を具備したペレット製造に成功したことにより完成したものである。
この相反する特性を創るには森林蓄積木質組織単用でなければならない。それ以外の原料では製造することは不可能である。白色木材腐朽菌を削除、生息しないことを利用して炭酸ガス固定し、白色木材腐朽菌を利用して炭酸ガス固定を行う方法を、本発明のペレットを利用して行うものである。
【0020】
第2の本発明で「ペレットを圃場に散布する」とは、本発明のペレットを畑などの地表に薄く投与することを言う。
本発明のペレットは、ペレット製造時に1000kgf/cm2以上の圧力で圧縮し穴から押し出した場合、摩擦熱が約120~150℃にもなるが、この加熱によって、植物組織の細胞と細胞を接着していたペクチンが分解され、細胞はバラバラとなる。リグニンは難分解性の植物組織であるが、リグニンを形成している強固組織は、ペクチンによる接着であることから、ペクチンの変質によって、リグニン組織も細胞がばらばらとなり脆弱になる。本発明が森林蓄積木質組織を単用で製造しているのは、この摩擦熱によって「リグニン」を加熱分解脆弱化出来ることを発見し利用したものである。
【0021】
本発明のペレットには、上述したように多糖類ペクチンが熱分解したものが含有することから、白色木材腐朽菌のエサとしての「糖源」となる。このエサを白色木材腐朽菌が食べることで、速やかにペレットのリグニン、セルロースを分解し「フルボ酸」「ヒューミン」「腐植酸」を産生する。つまり、ペクチンは植物の光合成で作られる澱粉を原料にして作られている「他多糖類」であり、自然界では、枯葉、風倒木などでは、白色木材腐朽菌によってリグニンの接着剤であるペクチンを、白色木材腐朽菌の分解酵素ペクチナーゼで分解することで(生分解)土に還し(炭素循環)、この時産生されるブドウ糖を菌根菌白色木材腐朽菌が根に供給する。このように、光合成補完されることで、気候変動があったとしても安定した作物栽培が可能となる。
【0022】
本発明のようにペレット化せず木質組織を破砕しただけのチップやバークでは、ペクチンが変質していないので、木材腐朽菌の繁殖に必要な窒素源が不足することになり、木質組織の分解に長期間を要してしまう。一方、本発明のペレットの場合、上述したように短期間で分解するだけでなく、広葉樹生木の「樹皮」と「形成層」を約20%混合して製造されたペレットを使用すれば、樹木の樹皮や形成層には作物の養分となる成分が含まれているので、難分解性の成分が安定した土壌構造にするというメリットがある。
【0023】
このような難分解物による炭素固定は、自然界で行われてきたことである。すなわち、森林の林床地表には毎年蓄積される「落ち葉」、「植物死骸」の木材腐朽菌による分解後に滞留する難分解性有機物である「フルボ酸」、「ヒューミン」、「腐植酸」による炭素固定が行われている。このように、地球の悠久の大自然は、森林に「光合成による炭酸ガスの吸収」だけでなく「フルボ酸」、「ヒューミン」、「腐植酸」による炭素固定も行っていたのである。
第2の本発明は、この大自然の法則を、森林蓄積植物組織をペレット化し、林床地表を農場圃場に置き換えて実現しようとするものである。
【0024】
第3の本発明は、難分解性有機物である「フルボ酸」、「ヒューミン」、「腐植酸」による炭素固定だけにとどまらず、本発明のペレットを白色木材腐朽菌のエサとして利用することにより、積極的に白色木材腐朽菌を繁殖させ、ペレットを散布した圃場や水田に残留する化学肥料やバーク肥料中の硝酸態窒素を分解し、また、水田におけるメタン菌の繁殖を抑制し、亜酸化窒素ガスやメタンガスの発生を削減するものである。
木材腐朽菌の中でも、白色木材腐朽菌、特に発明者らが発見し、特許出願(特許文献6~8)した菌根菌子嚢菌白色木材腐朽菌である白トリュフTuber菌やラン菌の一種であるPezizales sp.菌が好ましく、白トリュフTuber菌やPezizales sp.菌などの白色木材腐朽菌による「森林蓄積形成層含有木質組織ペレット」の分解による炭酸循環栽培法によるカーボンニュートラル及び、分解後に残る「フルボ酸」「ヒューミン」「腐植酸」による炭酸ガス固定、削減を図りながら、本菌の抗菌作用による土壌病害菌失活による「減農薬」、さらに、本菌が土壌に繁殖することによる菌糸体の「空中窒素固定」及び菌糸体死滅後に土壌に残る菌糸体由来のタンパク質、アミノ酸による残留窒素による「減肥料栽培」、すなわち白色木材腐朽菌が森林蓄積形成層含有木質ペレットを分解し、リグニン、セルロース、形成層含有植物性活性物質を分解することでブドウ糖、ピルビン酸、植物ホルモン インドール 3 酢酸などを産生し、これを菌根菌の菌糸が作物の根に供給し、生育促進、高温障害を防止することで減肥料栽培を可能にする。したがって、農業圃場に用いるペレットとしては、森林蓄積形成層含有木質組織ペレット、特に広葉樹生木の「樹皮」と「形成層」を約20%混合して製造されたペレットが好ましい。
白トリュフTuber菌やPezizales sp.菌などの白色木材腐朽菌が、他の微生物の生育を抑制し、土壌中の残留農薬や硝酸態窒素分の分解能力、及びブドウ糖、ピルビン酸、植物ホルモン インドール 3 酢酸などを産生する能力を有していることは発明者らによって確認されている(特許文献6~8)。
【0025】
第4の本発明において「深海に沈降させる」とは、海面近くの上部の海流とは交わることはない水深1000m程度の深海に沈降させることをいう。深海では難破した木造船が数百年も分解、腐敗することなく原形を保ち続けているように、深海海底に沈降したペレットの森林蓄積植物組織は分解しないので炭素固定が行える。沈降したペレットは海水中で2倍程度に膨張するが、組織内に気泡を含まないので浮上しない。
また、深海の海流は、海面近くの上部の海流とは交わることはないから、海底に固定されたペレット又はその膨張物は海面付近の環境に影響を与えることもない。
【0026】
第5の本発明において「地中に埋設する」とは、人為的に掘った深穴や石炭や各種鉱石を採掘した廃坑内に本発明のペレットを投入保存することを言う。木材腐朽菌が生息しない地中深く埋設すれば、ペレットは分解することなく、炭素固定が行える。廃坑を利用すればコストが安く済み、投入したペレットを、空気を遮断した状態で保存することにより植物組織の分解が抑制され、炭素固定が行える。地下に固定されていた石炭を掘って燃焼させた結果大気中の炭酸ガス濃度が高くなったのであるから、人為的に逆のことを行っていることになる。1年間の森林蓄積植物組織の増加分を本発明の方法で炭素固定すれば、森林資源を維持したまま炭素削減が可能である。
また、白色木材腐朽菌が生息する地表近くでも、人為的に掘った穴に本発明のペレットを投入し、埋め返しておけば、ペレットは土壌水分で約200%膨張し、周囲の土壌との界面部が圧縮されるので、ペレットの周囲に気密性が形成される。その結果、空気のペレット内部への侵入が遮断され、木材腐朽菌の活動が抑制されるので、ペレットによる炭素固定の期間を長引かせることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は単に炭酸ガス排出問題を解決するものではなく、炭酸ガスの問題は言い換えれば、自然災害から地球、国土を保全することであり、それは「治水治山」である。これまで日本の「治水治山」の多くは「林業」従事者によって行われてきた。
本発明は、炭酸ガスの吸収、固定、カーボンニュートラル、削減を行うのに、森林蓄積植物組織をペレット化して利用するので、林業が活性化し、新規な産業の創出に繋がる。
さらに、本発明は、林業と農業をドッキングされる技術でもある。すなわち林業の産物である森林蓄積植物組織をペレット化したものを農業圃場に投与することで、農地を、「炭酸ガス固定、削減、カーボンニュートラル工場」に変質させ、農業に新たな価値を創出するとともに、持続可能な圃場を「フルボ酸」、「ヒューミン」、「腐植酸」によって「作物が喜ぶ土壌に改良」するとともに、ペレット化した森林蓄積植物組織を分解する白色木材腐朽菌の生息によって安定した食糧生産を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】森林蓄積形成層含有木質組織ペレット投与によるイチゴ栽培試験
図2】森林蓄積形成層含有木質組織ペレット投与によるラン(シンビジウム)栽培試験
図3】森林蓄積形成層含有木質組織ペレット投与によるワイン用ブドウ栽培試験
図4】森林蓄積形成層含有木質組織ペレットによる白トリュフTuber菌生息分解圃場改良資材の製造試験
図5】試験例4における培養土製造工程図
図6】形成層含有木質組織ペレットと形成層を含まない木質組織ペレットの写真
図7】木質ペレットの海水(塩濃度3.4%水)中での沈降試験
図8】木質ペレットを嫌気条件に埋没する試験
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0029】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0030】
<木質ペレットの製造>
本発明に使用する木質組織ペレットは、原料となる木質組織を予め粉砕しておけば、ペレットストーブ用ペレット製造プラントで、加圧条件(ペレット燃料の嵩密度は通常1以下)を変更することで、容易に製造可能である。
【0031】
<農業圃場による森林蓄積組織炭素循環を利用した炭酸ガス固定>
第2の本発明は、森林蓄積木質組織をペレット化し、圃場に散布することにより、自然界の木材腐朽菌により炭素循環栽培法を行い、カーボンニュートラル農業を行いながら、最終産物のフルボ酸、ヒューミン、腐植酸の土壌滞留を利用して炭酸ガス固定、削減を行うものである。
また、第3の本発明は、ペレット化した森林蓄積木質組織に白色木材腐朽菌を担持生息させておくか、ペレットを投与する圃場に予め白色木材腐朽菌を散布し生息させておき、炭酸ガス固定、削減を行うものである。
これらの発明では、ペレットの原料として、草本作物の残渣、下水浄化残渣、食品残渣、繊維、衣類などの生分解有機なども利用可能であるが、このような原料では分解が早いため、これらの原料による炭酸ガス固定はほとんど期待できず、原料が分解され最終産物として産生される難分解性有機化合物による炭酸ガス固定が期待できる。
【0032】
畑1ha当たり、ペレット最大約10tの投与が可能であり、投与されたペレットは、木材腐朽菌が約2年で分解するので、約10年投与を継続した場合、1ha当たり23tのフルボ酸、ヒューミン、腐植酸が滞留することになる。ペレットを投与可能な畑の総面積が約200haであれば、必要な森林蓄積木質ペレットは年間2000万tである。
我が国における竹林も含めた森林蓄積は年間4700万tであるから、年間森林蓄積の約1/2を農業に利用することで、畑を新規な「有機農業」を実施しながら、圃場を炭酸ガス固定、削減工場にすることが可能である。
【0033】
産業革命以前のCO濃度はおよそ280ppmであったが、1998年にはすでに365ppmと30%以上増加しており、このままでは21世紀の終りまでには540~970ppm(1750年比90~250%の増加)になると予測されている。
一方、植物にはCOを吸収して炭水化物として固定する光合成の働きがあり、特に、樹木は増加しつつある大気中のCOの吸収源として重要な役割を担っている。樹種、地域差、日照量などにより樹木のCO吸収量は異なっているが、単純化して近似的な概算値として算出することができる。
1m当たりの葉の年間吸収量=2.6kgCO/m
植物はこの能力で、森林蓄積で炭酸ガスを固定している。本発明は、人為的に炭酸ガスを吸収して蓄積された木質組織を圃場に投与することで、農業圃場を地球大自然の地表土壌化に復元するとともに農場圃場を炭酸ガス固定工場にすることである。
【0034】
圃場1ha当たり約23tの「フルボ酸」「ヒューミン」「腐植酸」含有は、これらの有機物の炭素含有量が50%とすれば約12tの炭素を固定していることになる。これらは、約300年から数千年分解しないことから、カーボンニュートラルばかりか、さらに大気中の炭酸ガス濃度を削減できることを示唆している。つまり、産業革命以降に大中に炭酸ガスを排出して現在の気候変動などの問題が生じたものであるなら、農業と林業が連携して森林蓄積世界第三位の森林王国日本が、森林蓄積木質組織ペレットでカーボンニュートラル、炭素循環農業によるフルボ酸、ヒューミン、腐植酸による炭酸固定で、大気中に残留している炭酸ガスを少しずつでも削減すること可能である。
【0035】
さらに、本発明はカーボンニュートラルに満足するものではない。
圃場に毎年継続して森林蓄積形成層含有木質組織をペレット化して投与することで、圃場には「フルボ酸」「ヒューミン」「腐植酸」などの数百年から数千年分解しない炭素化合物が残るが、作物は、「フルボ酸」「ヒューミン」「腐植酸」を多量に含有する土壌を好む。
別な見方をすれば、「フルボ酸」「ヒューミン」「腐植酸」を多量に含有する土壌が優良な土壌であり、圃場である。
【0036】
第3の本発明で利用する白色木材腐朽菌は、土壌内の残留硝酸態窒素を窒素源として食べ菌糸を土壌内に生育させることで、土壌に残留した硝酸態窒素含有土壌を清浄化し、地球温暖化ガスである亜酸化窒素ガスの排出を抑止する。
この亜酸化窒素ガスは炭酸ガスの約300倍温暖化するガスであることから、本発明の効果は大きく、この発明によって土壌残留農薬も分解清浄化し、土壌病害菌、葉圏病害菌を失活させる強い抗菌性を具備している。
このような、白色木材腐朽菌が生息する森林蓄積形成層含有木質組織ペレット分解物は、残留農薬や病原菌を含まず、作物に必要な養分を多く含むので、炭酸ガスを固定したまま培養土としても使用することができる。
【0037】
フルボ酸(フルビック酸、fulvic acid)とは、植物などが微生物により分解される最終生成物である腐植物質のうち、酸によって沈殿しない無定形高分子有機酸。土壌や天然水中に広く分布している。
土壌由来のフルボ酸の例では、炭素を35~42重量%、水素を3~6重量%、窒素を約1重量%、硫黄を約0.3~0.7重量%含有する。
【0038】
フミン酸(腐植酸)、すなわち、フミン酸は不定形の高分子物質であり、その分子量は102~106の範囲であるといわれている。分子を構成する元素としては、炭素、酸素、水素が主たるものであるが、そのほかに若干の窒素、硫黄、リン等が認められている。窒素、硫黄、リン等は起源とされる動植物の構成物質(蛋白質など)の名残であるとされている。おおよその元素組成範囲は、以下のとおりである。

炭素 C: 50 ~ 67%
水素 H: 3 ~ 6%
酸素 O: 28 ~ 45%
窒素 N: 1.5 ~ 3%
硫黄 S: < 1%
リン P: < 1%
【0039】
[試験例1]
<本発明の森林蓄積形成層含有木質組織ペレットによるイチゴ栽培>
イチゴの畑1mあたり森林蓄積形成層含有木質組織ペレット1kgを投与し、白色木材腐朽菌として白トリュフTuber菌を生息させた圃場に、イチゴを2020年5月に植え付け、慣行イチゴ栽培の約20%減の1株当たり緩効性肥料「ロング」6gを元越えに施肥し、白トリュフTuber菌培養懸濁液30倍希釈液を約15日間隔で葉面散布した。図1(1)は、その1年後の5月1日に写真撮影した画像である。
イチゴはバラ科植物であり、世界の作物の中で最も農薬散布回数が多く、通常50から80回散布している。リンゴでさえ約14回だから、イチゴ栽培で完全無農薬栽培というのは有機栽培でも絶対不可能とされてきた。しかし、本発明では、白トリュフTuber菌による炭素循環栽培法で「減肥料、減農薬、完全無農薬栽培」が可能であった。
図1(2)から明らかなように、本発明の方法で栽培したイチゴは、慣行イチゴ栽培ではありえない草丈の高さ大きさで、葉の光沢も素晴らしく、茎が固く元気であった。
【0040】
[試験例2]
<本発明の森林蓄積形成層含有木質組織ペレットによるラン栽培>
一株あたり2kg毎年株もとにペレットをパラパラとかれ落ち葉が地表に舞い落ちたように地表に撒いた。この作業を毎年4,5月に実施したランの生育状況を観察した(図2(1))。
ラン菌である菌根菌子嚢菌白色木材腐朽菌は、本発明のペレットを約24ヶ月で分解し、フルボ酸、ヒューミン、腐植酸の形で圃場に残した。毎年ペレットを圃場に補充することで、圃場のフルボ酸、ヒューミン、腐植酸は増加する。図2(2)はこのようにして産生したフルボ酸、ヒューミン、腐植酸を含む2年後の土壌である。
【0041】
[試験例3]
<本発明の森林蓄積形成層含有木質組織ペレットによるワイン用ブドウ栽培>
ワイン用ブドウ栽培は、良好なワインを製造するためには、原料となるブドウの品質がきわめて重要である。多収穫を狙った多肥料、多農薬栽培では、ワインに残留硝酸態窒素、残留農薬含有ワインになる。
以上のようなことから、フランスのワインブドウの生産に倣い、森林蓄積形成層含有木質組織ペレット投与による栽培を実施した。10aあたり森林蓄積形成層含有木質組織ペレット10t、白トリュフTuber菌培養懸濁液30倍希釈液を300L4月5日に投与し「炭素循環栽培」によるカーボンニュートラル及び、フルボ酸、ヒューミン、腐植酸による炭酸ガス固定を実施した。
赤ワインブドウ品種カベルネ・ソーヴィニヨンの苗木を森林蓄積形成層含有木質組織ペレットによる単用栽培を行った(図3(1))。白トリュフTuber菌の生息で怖い病害である「根頭癌腫病」を防止できるメリットがある。
図3(2)は、森林蓄積形成層含有木質組織ペレットを5年継続して投与したブドウ畑である。この土壌にはフルボ酸、ヒューミン、腐植酸が多量に産生され「黒い粒子」が多く含有していることが目視で確認された。このようにして栽培されたワインブドウを原料にした「赤ワイン」には残留農薬、硝酸態窒素が含有しないことから、貯蔵中に起こる「変質ワイン」が起こらない。
【0042】
[試験例4]
<本発明の森林蓄積形成層含有木質組織ペレットによる白トリュフTuber菌生息木質組織培養土製造>
製材所の廃棄樹皮、木質組織は難分解であることから、これまで農業にほとんど利用されなかった。バーク堆肥製造も行われているが長期間(数か月から一年)を要することから、その利用はごく一部に限られ、山に投棄、又は焼却されている。
これまで森林蓄積形成層含有木質組織を利用した作物「培養土」は製造されていない。窒素飢餓、又は畜産排泄物混合醗酵のため、窒素過剰が起こり生育不良の問題があったからである。
本試験例では、形成層含有木質組織のペレットに、白トリュフTuber菌を担持させることにより、これらの問題点を解決し、究極ともいえる「培養土」の製造に成功した。
本試験例の製造工程を図5にて説明する。
【0043】
工程1 排水の良い土地を選んでフラットに整地する。
工程2 地面に白トリュフTuber菌懸濁液の30倍希釈液1L当たり白砂糖5~15g、繁殖用肥料3g添加し、1m当たり1Lジョウロ又は動噴で散布する。この散布で地面にTuber 菌が生息繁殖して雑菌の侵入、生息、繁殖を抑止する。
工程3 竹、及び竹の地下茎を粉砕し、5から30mm程度のペレットに圧縮した粒子を地面に約10~15cmの高さに投入する。
工程4 Tuber 菌のエサとして生菜種粕を1m当たり500cc程度全面に散布する。(厳守)
工程5 白トリュフTuber菌懸濁液を工程2と同様に散布する。
竹粒子が濡れる程度、全ての粒子に担持させることが望ましい。この場合は地面に竹粒子を投入するとき噴霧すると良い。また、平らにしてから噴霧する場合は全面に丁寧にムラのないように散布する。
工程6 保湿の為に、竹破砕粒子の全面をアルミ反射シートで被覆する。
工程7 約10日から15日で白トリュフTuber 菌は竹粒子に菌糸を(白い)伸ばす。Tuber 菌の繁殖温度は0~50℃、最適温度15~35℃、8℃では約10日前後であり、30℃で約7日前後であった。
工程8 竹粒子に菌が繁殖(図4(1))すれば完成品。
工程9 袋は保湿のためビニール袋を使用する。
工程10 保存は冷暗所の屋内にすること。このように保存することにより、約1年菌は生存する。
工程11 畑への施与。本資材の施与によって土壌病害菌の繁殖を抑止し、失活させることができ、土壌病害を抑止することができる。茎葉の病害には白トリュフTuber 菌懸濁液の葉面散布で「農薬を含まない作物」の生産が可能となる。
【0044】
このようにして製造された白トリュフTuber菌生息分解圃場改良資材を利用して、本わさび(図面4(2))及びイチゴ(図4(3)(4))を栽培した。
本わさびの栽培は難しく、一年にわたって水温12℃、豪雨でも水が汚れないワサビ田で栽培されている。この「本わさび」が、本発明の森林蓄積形成層含有木質組織培養土を使用した、露地「鉢底吸水栽培法」おいても優れた生育を示した。
【0045】
<植物組織ペレット化による深海炭酸ガス固定>
第4の本発明は、木質組織を粉砕し、高圧高温でペレット化すると水、海水に沈むだけでなく、ペレットが水分を吸収し約2倍に膨張した後も浮上しないという事実によって達成した。
本発明の理想的な技術は第2の発明の森林、林業と農業のドッキングによる森林蓄積を利用した炭素循環栽培による土壌炭素固定と圃場カーボンニュートラルである。
しかし、森林、竹林蓄積は年間約4700万tであり農業圃場に投与できる形成層含有ペレットは約2000万tである。
本発明に用いる木質組織ペレットには2種類ある。樹皮を含有したバージン全木ペレットのような森林蓄積形成層含有木質組織ペレット(図6(1))と、形成層を含有しない樹木木質、家具工場、製材所、家屋解体木質、紙、セルロース繊維などの産業廃棄物ペレット(図6(2))である。作物栽培のための養分を多く含む形成層の含まない木質組織、例えば形成層の含まない森林木材、建築、家具関連から生まれる木材、廃屋解体から生まれる木質廃棄物は圃場によるカーボンニュートラルには不向きである。
【0046】
このような植物組織、木質廃棄物をこれまでは焼却処分して炭酸をガス排出してきた。本発明では、これらの木質廃棄物を「ペレット化」することで「海水に沈む」、膨張しても再浮上しない木質組織に改質できることを利用した。
これによって、ペレット化した木質組織を深海に沈殿することで、永年にわたり炭酸ガス固定が可能である。
世界には臨海エリアに上記の森林、木材産業が発達している国もあることから、このようなエリアでは、この技術は有効に利用できる。日本では陸地からすぐに深海になる駿河湾などがあり、1000m級の海底に沈殿させることで、海面近くの海水を汚染することなく永年にわたり炭酸ガスの固定が可能である。
ペレットが海中で膨張することが好ましくない場合は、水ガラス、液状ガス溶液に浸漬、または噴霧コーティングすることで膨張を抑止することができる。深海に沈殿させる手段としては、ガラス繊維、炭素繊維などの海水で劣化しない容器、袋などに充填し海底に固定することで達成できる。
1000m級の深海の海流は海面近くの上部の海流とは交わることはないから、海底に固定されたペレットは海水汚染することはない。
【0047】
[試験例5]
<木質ペレットの海水塩濃度3.4%塩水での沈殿試験>
本発明のように粉末状木質組織を高圧、高温下で圧縮しペレット化することで比重0.5の木質組織を比重1.3にすることが可能で、このペレットは、真水、海水に沈む。本発明では深海の海底にも硬質ペレットを沈殿固定することで炭酸ガス固定する発明であることから、ペレット化した木質組織が海水の塩濃度条件下で沈降する試験を実施した。
本発明で使用されるペレット(図7(1))を、精製水100ccに食塩3.4gを溶解させたほぼ海水に近い水溶液を作成し、これにペレットを投入したところ図7(2)のように沈降した。図7(3)はその10日後の状態で、ペレットは水を吸収し膨張して崩壊するが、植物の組織は高圧で破壊し、内部に気泡が存在しないので再浮上しない。
一方、圧縮されていない木質組織は当然ながら浮いたままである(図7(4))。
【0048】
第5の本発明は、木質組織の高圧ペレット化による組織内空気の「脱気」により比重1.2~1.3に改質し、地下に埋設することによる炭酸ガス固定を達成するものである。
本発明は、地球の石炭紀を人為的に再現し、森林蓄積、または。4項記載の有機物組織産業廃棄物をペレット化して、白色木材腐朽菌の生息不可能な陸上地下深層に埋没することで、白色木材腐朽菌による分解を遮断することで人為的な「化石化」することで永年にわたり炭酸ガス固定するものである。
この技術は、地下資源である石炭を燃やすことで大気中の炭酸ガス濃度を高くしたのであれば、逆に、大気中の炭酸ガスを植物によって固定し、その組織を圧縮、ペレット化して組織内に含有する酸素を削除することで、埋没後の白色木材腐朽菌の活動を抑止し分解防止することで逆に地下に埋没し、炭酸ガス固定できる。理論的には、石炭の採掘量の約1,3倍の植物組織を埋没すれば、カーボンニュートラルとなる。この場合に使用する植物組織は木質が望ましい。
海から離れた内陸部、海を持たない国における森林蓄積を利用した炭酸ガス固定には有効な技術である。本発明を実施する場合は、安定した地層、地下水の問題がない地下地層で行うことが必須条件である。
【0049】
[試験例6]
陶器のツボに、針葉樹木質組織ペレット(図8(1)、(2))、及び広葉樹木質組織ペレット(図8(3)、(4))を、それぞれ充填、その後水を与えて陸上地下2mの嫌気状態地層に1年間埋めてペレットの分解試験を実施した。
針葉樹木質組織ペレットを陶器のツボに充填したツボを1年後掘り出したところ、図8(1)の写真のように、ペレットは水分を含んで膨張し、固まったままであった。図8(2)の写真は、これを崩した状態で、膨張したペレットの形状が維持され、分解されていなかった。図8(3)は、広葉樹木質組織ペレットを充填したツボを、1年後掘り出し破壊した内部の状態、図8(4)は、これを崩した状態で、針葉樹木質組織ペレットと同様、ペレットがほぼそのままの状態で保存されていたことが判る。
これは、酸素のない嫌気条件下では、白色木材腐朽菌が生息できないために、木質組織のリグニンが分解されなかったためである。これは、白色木材腐朽菌が生息できない深海においても当てはまる。
本発明により、木質組織をペレット化して陸上地下深層、あるいは、深海底に埋没させることで白色木材腐朽菌による分解を遮断することにより、人為的な「石炭化」「亜炭化」が期待できる。この場合、木質組織をペレット化し、組織内から空気を脱気することが必須条件であり、廃坑道などを利用することは、埋没坑道を遮断するなど嫌気性に保つことが容易に行えるので望ましい。
この試験によって廃坑などにペレットを充填し湿度を与えれば、廃坑の空間形状に超密度状態で埋め込むことが可能になることが判明した。これにより、空気が遮断され、白色木材腐朽菌のいない、又は活動出来ない状態となり、永年に渡り「炭酸ガス固定」が可能になり、長い年月後に「褐炭状態」になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8