(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ガラスのアルカリ消化
(51)【国際特許分類】
C03C 23/00 20060101AFI20240730BHJP
C01B 33/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C03C23/00 Z
C01B33/20
(21)【出願番号】P 2021526452
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 AU2019051258
(87)【国際公開番号】W WO2020097689
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-09
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】505167565
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ クイーンズランド
(73)【特許権者】
【識別番号】521206349
【氏名又は名称】コットン リサーチ アンド ディベロップメント コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ピリー リス
(72)【発明者】
【氏名】バットストーン ダミアン
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第91/019673(WO,A1)
【文献】米国特許第02182384(US,A)
【文献】特開2003-012319(JP,A)
【文献】特開2001-287974(JP,A)
【文献】MAVILIA, L. et al.,“High Added Value Products from Off-Quality Waste Glass”,Recycling and Reuse of Glass Cullet,p. 63-73,2001年
【文献】KEAWTHUN, M. et al.,“Conversion of Waste Glasses into Sodium Silicate Solutions”,International Journal of Chemical Science,2014年,vol. 12, no. 1,p. 83-91
【文献】MAVILIA, L. et al.,“Characterization and Valorization of the Solid Residue from Glass Extraction with an Alkali Solution”,Recycling and Reuse of Glass Cullet,2001年,p. 54-61
【文献】KOUASSI, S. et al.,“Dissolution of Waste Glass in High Alkaline Solutions”,Ceramics - Silikaty,vol. 54, no. 3,2010年,p. 235-240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00 - 23/00
C01B 33/00 - 33/193
B09B 1/00 - 5/00
B09C 1/00 - 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーダ石灰ガラスのアルカリ消化の方法であって、
a)ソーダ石灰ガラス及び水酸化物溶液の混合物を形成する工程であって、前記混合物は、H
2O1リットルあたり少なくとも100グラムのガラスを有し、前記水酸化物溶液は1M以上の濃度を有し、これにより、
大気圧で前記混合物中の前記ガラスを消化することにより、50g/L以上(SiO
2換算で算出される)のケイ酸塩濃度及び少なくとも1のSiO
2:M
2Oの比を有する水性ケイ酸ナトリウムフラクション
と、ケイ酸カルシウム水和物を含む固体材料とを形成し、M
2Oはアルカリ金属酸化物である工程と、
b)
前記ケイ酸カルシウム水和物を含む前記固体材料から、前記水性ケイ酸ナトリウムフラクション
を分離する工程と
c)前記ケイ酸カルシウム水和物を含む前記固体材料を酸で処理して、前記ケイ酸カルシウム水和物から可溶性金属を溶解させ、これにより液相と、固相とを生成し、前記固相はSiO
2
を含む工程と、
d)工程(c)の前記SiO
2
を含む前記固相を、前記液相から分離する工程と、
e)前記SiO
2
を含む分離された前記固相の少なくとも一部を、工程(a)に戻す工程と、
を含む方法。
【請求項2】
工程(a)で形成された前記混合物が、H
2O1リットルあたり100~1500gのガラ
スを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の前記混合物中に存在する前記ソーダ石灰ガラスが粒子状であ
り、
前記ソーダ石灰ガラスが、50mmの最大粒子サイズを有する粒度分布を有するガラス粒子の形態で提供される請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ソーダ石灰ガラスが、廃ガラス又はリサイクルガラスを含む請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水酸化物溶液が、アルカリ金属水酸化物溶液を含む請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属水酸化物溶液が、1M~10
Mの水酸化物濃度を有する請求項
4又は請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
工程(a)で形成されたガラスとアルカリ金属水酸化物との前記混合物が前記ガラスの消化をもたらし、工程(a)における滞留時間が、1時間
超である請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)が
、50℃~前記混合物の沸点の温度
で行われる請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)の前記混合物が、水、ソーダ石灰ガラス及びアルカリ金属水酸化物の添加が、前記ケイ酸ナトリウム溶液中の所望のSiO
2:M
2Oと一致する化学量論比で起こるように制御される請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ガラス及びアルカリ金属水酸化物の両方を考慮したSiO
2:Na
2Oのモル比が1:1~4:1であり、SiO
2
+Na
2
Oの合計モル濃度が5
M超である請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記水性ケイ酸ナトリウムを固形物から分離する前記工程が
、50℃~105
℃の温度で行われる請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記水性ケイ酸ナトリウムを
工程(b)の前記固体材料から分離する前記工程が、分離を強化するために追加の水を加えることをさらに含む請求項1から請求項
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)の前記固相がSiO
2ゲルを含む請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
工程(d)において、前記固相から分離された前記液相が、溶存金属を含有する浸出液を含み、前記浸出液が前記固相から分離された後、前記浸出液が、金属化合物を沈殿させ、任意に前記金属化合物を前記液相から分離するために処理される請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
酸を用いてpHを3未満に低下させ、続いて固形
の前記SiO
2
を希酸溶液中で洗浄することにより、前記
SiO
2
ゲルから鉄塩を浸出させることで、前記
SiO
2
ゲルの純度が向上される請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
工程(e)において、前記SiO
2が未消化のガラスも含有し、前記SiO
2及び未消化のガラスの一部又は全部が工程(a)に戻される請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)の前記混合物中に存在する前記ソーダ石灰ガラスの少なくとも一部が、少なくとも384μmのサイズを有する粒子の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程(a)の前記混合物中に存在する前記ソーダ石灰ガラスが、粒子の形態であり、前記粒子の粒度分布が少なくとも384μmのd(0.9)を有する請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業的に関連するケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)を生成するための、ガラスのアルカリ消化のためのプロセスに関する。いくつかの実施形態では、当該プロセスは、ケイ酸カルシウム水和物(CSH)フラクションも生成する。ガラスは、本発明のいくつかの実施形態では、廃ガラスであってもよい。ガラスは、好適には、ソーダ石灰ガラスである。
【背景技術】
【0002】
世界市場規模が89億米ドル、生産能力が1,000万トンと推定されるケイ酸ナトリウムは、商業及び家庭の場面の両方で最も広く使用されている化学物質の1つである。生態学的に問題のある特性は知られていないことと、費用対効果の高い結合剤、pH調整剤、洗浄剤、及び沈降シリカの原料としての有用性との組み合わせにより、ケイ酸ナトリウムは、洗剤、コンクリート硬化剤、ゼオライト、ジオポリマーコンクリート、タイヤ、セラミック、紙及び段ボールを含む多くの製品の不可欠な部分となっている。
【0003】
一般に水ガラスと呼ばれるケイ酸ナトリウムは、通常は高純度の石英の形をした結晶性シリカと、酸化ナトリウム(Na2O)とを組み合わせて商業的に製造される。Na2Oは、結晶性シリカの溶融温度を2300℃から1500℃に下げ、その結果得られるガラス製品は水溶性である。あるいは、高温高圧の条件下で結晶性シリカを水酸化ナトリウムに直接溶解させることで、液体ケイ酸ナトリウムを製造することができる。
【0004】
ケイ酸ナトリウムは、典型的には、まず、ケイ酸:酸化ナトリウムのモル比(SiO2:Na2O)によって記述され、2:1の比率の製品が洗浄剤やゼオライトの製造に一般的に使用されている。水熱ルートは、<2.5SiO2:1Na2Oのケイ酸ナトリウムを製造するための経済的な代替手段である。
【0005】
3.3:1のSiO2:Na2O製品(炉ルート)及び2:1のSiO2:Na2O製品(水熱ルート)の2つの製造ルートのエネルギー必要量の推定値は同等であり、乾燥固形物1トン当たり、それぞれ10.95GJ及び11.19GJである。このエネルギー必要量と母材の焼成プロセスの組み合わせにより、カーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)は1.514kg CO2-e/kgと実質的に推定され、これはオーストラリアの数字であり、輸送を含むが、原材料の抽出に費やされたエネルギーは含まれない。
【0006】
ソーダ石灰ガラス(ソーダ石灰シリカガラス、ソーダライムシリカガラスとも呼ばれる)は、世界で製造されるガラスの約85%~90%を占める。ソーダ石灰ガラスは通常、シリカ(典型的には石英)、炭酸ナトリウム、石灰(水酸化カルシウム)及び/又は炭酸カルシウム等のカルシウム材料、並びに少量のアルミナを高炉で混合し、1500℃超の温度に加熱して製造される。
【0007】
板ガラスと容器ガラスというソーダ石灰ガラスの2つのカテゴリーが、世界の生産量の85~90%を占める。ソーダ石灰ガラスのエネルギー必要量は、1トンあたり5.75~9.00GJの間で変わる。その結果、容器ガラス及び板ガラスのライフサイクル全体のフットプリントは、それぞれ0.97~1.3(米国)kg CO2-e/kg及び1.2kg CO2-e/kg(EU)と推定される。
【0008】
理論的には、ガラスは無限にリサイクル可能である。しかしながら、固形廃棄物の流れからガラスをリサイクルする現実は、様々な種類のガラスの化学組成が変化し、ガラスの色選別は10mm以上の粒子でしかできないということから、まったく異なる様相を呈している。2013年にオーストラリアで消費された約120万トンの容器ガラスのうち、リサイクルされたのは45.3%に過ぎず、65万7千トンのガラスが備蓄されているか又は埋立てられている。廃ガラスは、高所得国の固形廃棄物の流れの7%を占めると推定されており、廃ガラスを埋立てに回すことは、世界中で関心が高まっている問題である。
【0009】
先行技術出版物が本明細書で参照される場合、この参照は、その出版物がオーストラリア又は任意の他の国の技術分野における共通一般知識の一部を形成することを認めるものではないことが明確に理解されるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ソーダ石灰ガラスのアルカリ消化のためのプロセスに向けられており、このプロセスは、上述の欠点の少なくとも1つを少なくとも部分的に克服することができ、あるいは消費者に有用な又は商業的な選択を提供することができる。
【0011】
上記を考慮して、本発明は、1つの態様において、ソーダ石灰ガラスのアルカリ消化の方法であって、
a)ソーダ石灰ガラス及び水酸化物溶液の混合物を形成する工程であって、この混合物は、H2O1リットルあたり少なくとも100グラムのガラスを有し、上記水酸化物溶液は1M以上の濃度を有し、これにより、上記ソーダ石灰ガラスを消化して、50g/L以上(SiO2当量として算出される)のケイ酸塩濃度及び少なくとも1のSiO2:M2Oの比を有する水性ケイ酸ナトリウムフラクションを形成し、M2Oはアルカリ金属酸化物である工程と、
b)上記水性ケイ酸ナトリウムフラクションを固形物から分離する工程と
を含む方法に広く存在する。
【0012】
1つの実施形態では、上記水酸化物溶液は、アルカリ金属水酸化物溶液を含む。このアルカリ金属水酸化物溶液は、水酸化ナトリウムの溶液、水酸化カリウムの溶液、又は水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを含む溶液を含んでもよい。便宜上、本明細書の以降では、この水酸化物溶液をアルカリ金属水酸化物溶液と記載する。
【0013】
1つの実施形態では、工程(a)で形成された混合物は、H2O1リットルあたり100~1500gのガラス、H2O1リットルあたり100~1000gのガラス、又は100~900gのガラス/L H2O、又は100~800gのガラス/L H2O、又は100~775gのガラス/L H2O、150~1000gのガラス/L H2O、又は200~1000gのガラス/L H2O、又は300~1000gのガラス/L H2O、又は350~1000gのガラス/L H2O、又は400~1000gのガラス/L H2O、又は450~1000gのガラス/L H2O、又は150~775gのガラス/L H2Oのガラス、又は200~775gのガラス/L H2O、又は300~775gのガラス/L H2O、又は350~775gのガラス/L H2O、又は400~775g/Lのガラス、又は450~775g/Lのガラスを含む。本発明のプロセスの具体例は、上記混合物中に182gのガラス/L H2O、250gのガラス/L H2O、350gのガラス/L H2O、500gのガラス/L H2O、417.2gのガラス/L H2O、450gのガラス/L H2O、772.5gのガラス/L H2O、750gのガラス/L H2O及び1000gのガラス/L H2Oを利用した。
【0014】
工程(a)の混合物中に存在するソーダ石灰ガラスは、粒子状で提供されてもよい。いくつかの実施形態では、上記ガラスは、50mmの最大粒子サイズ、又は40mmの最大粒子サイズ、又は30mmの最大粒子サイズ、又は25mmの最大粒子サイズ、又は20mmの最大粒子サイズ、又は10mmの最大粒子サイズを有する粒度分布を有するガラス粒子の形態で提供される。いくつかの実施形態では、ガラス粒子のすべてが、10mm未満のサイズ、又は5mm未満のサイズ、又は1mm未満のサイズであるガラスが提供される。
【0015】
いくつかの実施形態では、ソーダ石灰ガラスは、廃ガラス又はリサイクルガラスを含む。これらの実施形態では、このリサイクルガラス又は廃ガラスが10mm以下の最大粒子サイズを有することがとりわけ有用である。というのも、この最大粒子サイズのリサイクルガラス又は廃ガラスは、現在、光学的手段を用いて容易に分離することができず、従って一般的に廃棄物として扱われるフラクションを表しているからである。
【0016】
いくつかの実施形態では、ソーダ石灰ガラスは、1mm未満の粒子サイズを有する廃ガラス又はリサイクルガラスを含む。
【0017】
理論に拘束されることを望むものではないが、上記混合物に添加されるソーダ石灰ガラスがより小さな粒子サイズを有すると、反応速度が改善されうることが予想される。
【0018】
アルカリ金属水酸化物溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物を含んでもよい。他のアルカリ金属水酸化物も使用してよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記アルカリ金属水酸化物溶液は、1M~10M、又は1M~9M、又は1M~8M、又は1M~7M、又は1M~6M、又は1M~5M、又は1M~4M、又は1M~3.5M、又は1M~2M、又は1M~1.8M、又は1.5M~6M、又は1.5M~5M、又は1.5M~4M、又は1.5M~3.5M、又は1.5M~2Mの水酸化物濃度を有してもよい。いくつかの実施形態では、上記アルカリ金属水酸化物溶液は、1.8M~7.5Mの範囲内の濃度を有していてもよい。水酸化物の溶解度限界に近づく濃度(約10M)も使用することができようが、結果として得られる溶液の達成可能なSiO2:Na2O比を制限する可能性がある。
【0020】
工程(a)で形成されたガラスとアルカリ金属水酸化物との混合物は、ガラスの消化(アルカリ分解)をもたらす。消化工程は、バッチ式、半連続式、又は連続式の操作として行われてもよい。いくつかの実施形態では、消化工程における滞留時間は、1時間超、又は1時間~240時間、又は1時間~200時間、又は1時間~150時間、又は1時間~100時間、又は1時間~75時間、又は1時間~50時間、又は1時間~24時間である。いくつかの実施形態では、滞留時間は24時間未満である。
【0021】
消化工程は、好適には、大気圧で行われる。
【0022】
上記消化工程は、高温で、又は50℃~上記混合物の沸点の温度で、又は50℃~105℃の温度で、又は60℃~105℃の温度で、又は70℃~105℃の温度で、又は80℃~105℃の温度で、又は90℃~105℃の温度で、又は50℃~90℃の温度で、又は50℃~80℃の温度で、又は50℃~70℃の温度で、又は50℃~60℃の温度で行われる。理想的な条件では、上記反応は90℃~95℃の間で行われ、最大化された溶解速度とプロセスエネルギー必要量のバランスがとられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記混合物は、消化中に撹拌又は高速撹拌(揺動撹拌)される。この混合物は、インペラ又はスターラーを用いて撹拌されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、工程(a)の混合物は、水、ソーダ石灰ガラス及びアルカリ金属水酸化物の添加が、上記ケイ酸ナトリウム溶液中の所望のSiO2:M2Oと一致する化学量論比で起こるように制御される。
【0025】
具体的には、いくつかの実施形態では、ガラスとアルカリ金属水酸化物の両方を考慮したSiO2:Na2Oのモル比は1:1~4:1であり、SiO2+Na2Oの合計モル濃度は5M L-1 H2O超である。
【0026】
いくつかの実施形態では、上記ガラスを消化することは、固体材料も形成する。いくつかの実施形態では、この固体材料は、ケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)を含む。理論に拘束されることを望むものではないが、ケイ酸カルシウム水和物は、ソーダ石灰ガラスのアルカリ消化中に沈殿すると考えられる。
【0027】
ケイ酸カルシウム水和物は、セメントの水和に見られる結合材料である。ケイ酸カルシウム水和物はポゾラン性を有し、ケイ酸カルシウム水和物は何らかの商業的価値を有する可能性がある。従って、本発明の1つの実施形態では、当該プロセスは、水性アルカリケイ酸ナトリウムを上記ケイ酸カルシウム水和物から分離する工程を含む。当該プロセスは、上記水性アルカリケイ酸ナトリウムを回収又は貯蔵する工程と、上記ケイ酸カルシウム水和物を回収又は貯蔵する工程とをさらに含んでもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、水性ケイ酸ナトリウムを固形物から分離する工程は、遠心分離、重力分離、又は濾過を含む。当業者に公知の他の固/液分離工程も使用することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、固/液分離工程は、高温で行われてもよい。水性ケイ酸ナトリウムの粘度は、高温では低くなる可能性が高く、それゆえ、固相と液相の分離が促進されることが期待される。いくつかの実施形態では、固/液分離工程は、50℃~105℃、又は50℃~90℃、又は50℃~80℃、又は50℃~70℃、又は50℃~60℃の温度で操作される。
【0030】
いくつかの実施形態では、固/液分離工程は、分離を強化するために追加の水を加えることをさらに含んでもよい。この段階で追加の水を加えることは、溶液中のケイ酸ナトリウムの濃度に影響を与え、また、溶液中のSiO2:M2Oの比に影響を与える可能性もあることが理解されるであろう。
【0031】
本発明者は、ソーダ石灰ガラスの消化から回収された固体材料をさらに処理してシリカを回収できることも見出した。
【0032】
従って、さらなる態様では、本発明は、ソーダ石灰ガラスのアルカリ消化から回収されるケイ酸カルシウム水和物(「CSH」)を処理するプロセスであって、CSHを酸と混合して、これにより上記CSHから可溶性金属を溶解させる工程と、液相を固相から分離する工程であって、この固相はSiO2を含む工程とを含むプロセスを提供する。
【0033】
1つの実施形態では、上記固相は、SiO2ゲルを含む。
【0034】
1つの実施形態では、上記酸は無機酸である。1つの実施形態では、この酸はCl-イオン又はNO3-イオンを含む。これらのアニオンを含む酸は、その誘導体塩の均一な溶解性をもたらす。1つの実施形態では、上記酸は塩酸又は硝酸を含む。
【0035】
1つの実施形態では、上記酸は、CSH中に存在する可溶性金属の量よりも過剰に添加される。これは、CSH中に存在する可溶性金属の完全な溶解が起こりやすいことを保証するのに役立つ。
【0036】
1つの実施形態では、CSHは、酸と接触する前又は接触中に、水又は溶液に懸濁される。
【0037】
1つの実施形態では、上記固相は、その固相が上記液相から分離された後に洗浄される。固相は水で洗浄されてもよく、又は希酸で洗浄され、続いて水で洗浄されてもよい。
【0038】
理論に縛られることを望まないが、反応は以下のように進行すると考えられる。
1)酸に含まれるアニオン(Cl-、NO3
-)が溶液中に浸出するCSH成分と可溶性金属塩(例えばMgCl2、CaCl2、AlCl3)を形成し、CSHの緩衝能が尽きると、CSHをpH7.78~5.38から急速に崩壊させる。最終生成物は、溶存金属塩と、不溶性の鉄塩を含むSiO2ゲルからなる。
2)混合物をさらに酸性化(<pH3)すると、FeCl3の溶解性が促進され(pHに関連した色の変化からもわかる)、FeCl3が浸出することが可能になる。
【0039】
本発明の第2の態様のプロセスにおいて固相から分離された液相は、溶存金属を含有する浸出液を含む。固相から浸出液が分離された後、この浸出液は、金属化合物を沈殿させ、任意にその金属化合物を液相から分離するために処理されてもよい。
【0040】
1つの実施形態では、上記浸出液のpHを上昇させることにより、金属化合物は沈殿される。これは、アルカリ金属水酸化物若しくはアルカリ土類金属水酸化物材料等のアルカリ材料を添加することによって、又は石灰、ドロマイト(苦灰石)、マグネシア等の塩基性材料を添加することによって起こりうる。
【0041】
さらなる実施形態では、可溶性金属を分離し、最終的なゲル沈殿物の純度を高めるために、上記沈殿工程は複数パートの沈殿として行われてもよい。1つの実施形態では、沈殿プロセスの最初の工程は、酸を添加してpHを7.78~3の間、又は7~3.5の間のpH、又は6~3.5の間のpHに調整することを伴う。理想的には、CSHの緩衝能力を使い果たし、即時の完全な溶解を促進するために、pHは5.38~3.26の間に調整される。この即時の完全な溶解は、さらなる分離のために望ましい。
【0042】
さらなる実施形態では、液相は遠心分離によってシリカゲル固形物から除去されることが可能で、溶存金属化合物は、アルカリ化合物の添加によって沈殿させることができる。さらなる実施形態では、酸を用いてpHを3未満に低下させ、続いて固形物シリカを希酸溶液中で洗浄することにより、シリカゲルから鉄塩を浸出させることで、シリカゲル沈殿物の純度を向上させることができる。
【0043】
鉄含有化合物及び他の金属含有化合物の沈殿を引き起こすために、当業者に周知の多数のプロセスがある。当業者に公知のこれらのプロセスのすべてが、本発明のこの態様で使用されてもよい。
【0044】
溶存金属(Mg、Ca、Fe及びAl)のさらなる分離は、不溶性のCaSO4/Ca3(PO4)2及び可溶性のMg塩の形成をもたらす硫酸又はリン酸の添加によるMg及びCaの分離のような、当該技術分野で周知の酸-塩基反応を介して達成することができる。
【0045】
本発明の1つの実施形態では、当該プロセスは、
a)ソーダ石灰ガラス及びアルカリ金属水酸化物溶液の混合物を形成する工程であって、この混合物は、H2O1リットルあたり少なくとも100グラムのガラスを有し、上記アルカリ金属水酸化物溶液は1M以上の濃度を有する工程と、
b)上記混合物中のガラスを消化してケイ酸カルシウム水和物を含む固体材料を形成することにより、50g/L以上(SiO2換算で(SiO2等価物として)算出される)のケイ酸塩濃度及び少なくとも1のSiO2:M2Oの比を有する水性ケイ酸ナトリウムフラクションを形成する工程であって、M2Oはアルカリ金属酸化物である工程と、
c)上記固体材料から上記水性ケイ酸ナトリウムフラクションを分離する工程と、
d)保存又はさらなる使用のために、上記水性ケイ酸ナトリウムを回収し、上記ケイ酸カルシウム水和物を回収する工程と
を含む。
【0046】
本発明の第1の態様のプロセスから回収されるCSHは、SiO2又はSiO2ゲルを回収するために、本発明の第2の態様を参照して記載したように処理されてもよい。あるいは、本発明の第1の態様のプロセスから回収されるCSHはCSHとして使用してもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、消化後に得られた固体材料は、未消化のガラスも含んでよい。
【0048】
さらなる態様では、本発明は、ソーダ石灰ガラスのアルカリ消化の方法であって、
a)ソーダ石灰ガラス及び水酸化物溶液の混合物を形成する工程であって、この混合物は、H2O1リットルあたり少なくとも100グラムのガラスを有し、上記水酸化物溶液は1M以上の濃度を有し、これにより、上記混合物中のガラスを消化することにより、50g/L以上(SiO2換算で算出される)のケイ酸塩濃度及び少なくとも1のSiO2:M2Oの比を有する水性ケイ酸ナトリウムフラクションを形成し、M2Oはアルカリ金属酸化物である工程と、
b)上記水性ケイ酸ナトリウムフラクションを固形物フラクションから分離する工程であって、この固形物フラクションは未消化のガラスを含む工程と、
c)未消化のガラスを含む上記固形物フラクションの少なくとも一部を、工程(b)から工程(a)へリサイクルする工程と
を含む方法を提供する。
【0049】
この態様の実施形態では、ガラスを消化することを伴う工程(a)は固体材料も形成し、この固体材料はケイ酸カルシウム水和物(CSH)を含み、工程(b)で分離された固形物フラクションはケイ酸カルシウム水和物を含み、このCSHは酸で処理されてCSHから可溶性金属が溶解され、液相が固相から分離され、この固相はSiO2を含む。この実施形態における固形物フラクションは、未消化のガラス及びCSHを含むことが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、当該方法は、CSHを酸と接触させる前に、未消化のガラスをCSHから分離することをさらに含んでもよく、未消化のガラスの少なくとも一部は工程(a)に戻される。未消化のガラス及びCSHは、粒子状CSHと未消化のガラスとの間の密度及びサイズの差に基づいて分離されてもよい。
【0050】
SiO2がCSHから生成される実施形態では、SiO2の少なくとも一部が工程(a)に戻されてもよい。いくつかの実施形態では、SiO2は未消化のガラスも含有し、SiO2及び未消化のガラスの混合物の一部又は全部が工程(a)に戻される。
【0051】
上記SiO2は、シリカゲルの形態であってもよい。
【0052】
未消化のガラス及び/又はSiO2を工程(a)に戻すリサイクルは、本発明の方法におけるケイ酸ナトリウムの回収を強化する可能性がある。
【0053】
段落[0049]及び[0050]に記載の方法は、バッチプロセスとして行われてもよいし、又は連続プロセスとして行われてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、SiO2の少なくとも一部が工程(a)に戻される。いくつかの実施形態では、このSiO2は、未消化のガラスも含んでいてもよく、SiO2及び未消化のガラスの混合物が工程(a)に戻されてもよい。
【0055】
本明細書に記載された特徴のいずれも、本発明の範囲内で、本明細書に記載された他の特徴のいずれか1つ以上と任意の組み合わせで組み合わせることができる。
【0056】
本明細書における任意の先行技術への言及は、先行技術が共通一般知識の一部を形成していることを認めるものではないし、示唆するものでもなく、また、認めるもの、示唆するものと解釈されるべきでもない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の様々な実施形態を、以下の図面を参照して説明する。
【0058】
【
図1】
図1は、実施例で使用されたガラスのサイズクラスによる粒度分布のグラフを示す。
【
図2】
図2は、772.5gガラスL-1と5MのNaOHという同じ初期反応物の負荷で、50℃、70℃、90℃で操作された反応器について、溶液中のSiO
2濃度(gL
-1)対時間(時間)のグラフを示す。矢印は、50~150mLの水の添加を示す。
【
図3】
図3は、第2組の実験から得られた温度と液相中のSiO
2の蓄積量とのグラフを示す。エラーバーは95%CIを示す。
【
図4】
図4は、様々な操作条件(5M NaOH、1.82M KOH、70℃及び50℃)下で、ガラスの異なる開始濃度(772.5gL
-1、417.6gL
-1、318.0gL
-1及び182.0gL
-1)で操作された反応器についての、溶液中のSiO
2濃度(gL
-1)対時間(時間)のグラフを示す。矢印は、50~150mLの水の添加を示す。
【
図5】
図5は、第2組の実験から得られたガラスの濃度と液相中のSiO
2の蓄積量とのグラフを示す。エラーバーは95%CIを示す。
【
図6】
図6は、772.5gガラスL
-1と3.5M NaOH、5M NaOH、3.5M KOH及び5M KOHの処理を用いて50℃で操作された反応器についての、溶液中のSiO
2濃度(gL
-1)対時間(時間)のグラフを示す。
【
図7】
図7は、417.2gガラスL
-1と5M KOH及び5M NaOHの処理を用いて70℃で操作された反応器についての、溶液中のSiO
2濃度(gL
-1)対時間(時間)のグラフを示す。
【
図8】
図8は、第2組の実験から得られたNaOH濃度と液相中のSiO
2の蓄積量とのグラフを示す。エラーバーは95%CIを示す。
【
図9】
図9は、実験番号13から得られた、SiO
2濃度(gL
-1)、溶存固形物の重量%(=%固形物/10)、Na
2O濃度(gL
-1)及びSiO
2:Na
2O対時間(時間)の関係を示す。反応器は、772.5gガラスL
-1及び5M NaOHを用いて90℃で操作された。矢印は、50~150mLの水の添加を示す。
図4~9のデータは、プロセスの反応速度論を評価し、従ってバッチの反応速度論をフルスケールの連続プロセスに変換することを可能にするために、一次モデルを用いてフィッティングされたことに留意されたい。
【
図10】
図10は、消化工程で異なる濃度のNaOH及びKOHを用いたガラスのアルカリ消化についての(SiO
2:Na
2O+K
2O)のモル比対時間のグラフを示す。
【
図11】
図11は、溶液のpHとCSHの懸濁液への5M HClの累積添加量との関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、100gの湿ったCSHケーキに対する5M HClの累積添加量のpHへの影響のグラフを示す。エラーバーは±95%CIを示す。
【
図13】
図13は、本発明の第1の態様及び本発明の第2の態様の実施形態である循環型資源利用の可能性を示す、ガラス消化及びCSH処理プラントの簡略化されたレイアウトを示す。これはモデルレイアウトに過ぎず、所望の最終製品に応じて代替の構成及び設備を採用できることに留意されたい。
【
図14】
図14は、
図13のレイアウトを実施するための1つの可能なプラントを示す、より詳細なフローシートである。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態に係る連続プロセスについてのプロセスフローシートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
標準大気圧における廃ソーダ石灰ガラスのアルカリ消化の反応速度論を調べる2組の実験を行った。第1の実験の組では、いくつかの商業的に関連するケイ酸ナトリウム溶液が、0~>500g-1L-1の範囲の溶存SiO2等価物及び0~>4.2のSi2O:Na2O+K2O比で得られた。33g SiO2 L-1hr-1という最高の蓄積速度が、90℃の5M NaOH中で772.5gの混合廃ガラス(300μm以下)L-1を連続的に撹拌したときに1~4.25時間の間に得られた。平均して(n=20)、最終溶液中の溶存金属酸化物の99.41%±0.14%(95%CI)は、Na2O、K2O、又はSiO2であった。これらの実験の詳細は、以下の実施例に示されている。
【0060】
第2の実験の組では、温度(50℃、70℃、及び90℃)並びにガラス濃度(250、500、750、1000gL-1 H2O)及びアルカリ濃度(2.5、5、及び7.5M NaOH)が反応速度に及ぼす影響を試験した。24~25.5時間、45~45.5時間、44~46時間後の液体(ケイ酸ナトリウム)又は固形物(CSH)中の出発固形物の回収率を決定するために、破壊的サンプリングの前に3回の消化(分解)を行った。前述のように、液相中のケイ素の蓄積量は、温度、ガラス及びアルカリの濃度の増加と同時に増加した。ケイ素の最高濃度(414gL-1)は、1000gL-1 H2O/90℃/7.5M NaOHの処理で45時間後に見られた。液体ケイ酸ナトリウム相の固形物の回収率は、すべての処理において消化時間とともに増加し、32~65%の範囲であった。
【実施例】
【0061】
例 - 方法
廃ガラスの特性評価及び前処理
消費者からの混合廃ガラス(<1mm)は、オーストラリアのクレストミード(Crestmead)にあるOwens-Illinois(O-I) International(オーエンズ・イリノイ・インターナショナル)のカレットリサイクル施設から調達した。洗浄したガラスフラクションの化学分析を下記表1に示す。ガラスは、1)ガラスを水に浸し、2)溶液を撹拌してガラス粒子を浮遊させ、3)溶液を静置させ、4)表面に静置した余分な液体と有機物を除去することにより、脱イオン水で予備洗浄した。これを存在する有機物が最小限になるまで繰り返し、次いで、洗浄したガラスを60℃でオーブン乾燥した。
【0062】
表1は、実験に使用した廃ガラスの化学分析及び粒度分布のd(0.9)を示す。表1の中の値は、洗浄前処理後に採取した3つの試料の平均値であり、±95%の信頼区間を持つ。
図1は、各粒子サイズ範囲におけるガラスの重量百分率を示す。
【0063】
【0064】
反応器設計
反応器は、1.2Lのステンレ鋼製スビーカー(304グレード)にEVAフォームの蓋をして製造した。高速撹拌は、6mmのステンレス鋼シャフトでオーバーヘッドスターラー(IKA、中国)に取り付けた40mm×20mmの水平ステンレス鋼(304グレード)のスターラーブレードによって維持した。ポリプロピレン製のスリーブを発泡体の蓋に取り付け、蓋とスターラーシャフトの間の摩擦を減らし、反応器からの水の損失を最小限に抑えた。反応器は、温度を制御するための浸漬型ヒーター/サーキュレーター(Ratek(ラテック)、オーストラリア)を備えた水浴に置いた。24~48時間ごとに水槽に水を追加し、実験期間中に反応器の少なくとも4cmが浸かるようにした。
【0065】
表2は、例1~20についての反応条件をまとめる。
【0066】
【0067】
表3は、第2組の実験における抽出実験1~24の反応条件をまとめる。
【0068】
【0069】
無水のNaOH又はKOH(>99%)を、600mLのMilli-Q水とともにステンレス鋼製ビーカー中で、室温で穏やかに撹拌しながら溶解した。その後、水浴を運転温度に上げ、スターラーを400rpmで動作させながら、ガラスをこの溶液に加えた。
【0070】
第1の実験の組では、場合によっては遠心分離後に上澄みを得ることができなくなるまで、前述の条件で反応器を操作した。この時点で、50~150mLのMilli-Q水を反応器に加えて実験を続けた。*印の抽出物は、すべて90℃処理で、機器の不調(主に蓋の欠陥で水が蒸発してしまった)のために早期に介入する必要があった。これらの実験は可能な限り繰り返し、特段の記載がない限り、本明細書中では完全な実験を報告している。欠陥のある実験は、反応速度論に関する興味深い、他では実現されていない洞察をもたらしたので、これも含めている。
【0071】
第2の実験の組では、24時間後のサンプリングイベントまで、及びそれを含む消化を三連で行った。この時点で、並びに30時間及び45時間後に、反応器の内容物全体を40℃/3500rpmで2×3分間遠心分離して上澄みを回収することにより、反応器のうちの1つを破壊的に回収した。消化反応器が90℃で運転されていた処理の場合、固形物フラクションは、次いで、空の反応器に500mLのMilli-Q水を加えて再懸濁し、250rpmで15分間撹拌した。その後、このスラリーを40℃/3500rpmで2×3分間遠心分離し、上澄みと固形物フラクションを回収して保存した。ケイ酸塩溶液の密度は、室温で24時間放置した後の溶液100mLを秤量して、重量法で測定した。液相中の出発固形物の回収率は、最初の遠心分離物と500mLの水で1回「洗浄」した後の遠心分離物に含まれる初期固形物の割合(%)として算出した。
【0072】
サンプリング及び分析-液体ケイ酸ナトリウム
第1の実験の組では、温度及び見かけの溶解速度に応じて、12~48時間ごとに試料を採取した。反応器から3~10mLのアリコートを15mLのファルコンチューブにピペッティングした。この15mLファルコンチューブを反応器と同じ温度の水浴に5分間入れた後、取り出してすぐに40℃/3500rpmで3分間遠心分離した。その後、1mLの上澄みを1.5mLのエッペンドルフチューブにピペッティングし、分析のために保管した。
【0073】
2組目の分解では、約4、6、20、24、30、45時間後に3~10mLのアリコートを採取し、各サンプリングイベントの正確な時間を記録した後、上記のように処理した。
【0074】
すべての試料を、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)(Perkin Elmer Optima 7300DV、ウォルサム(Waltham)、マサチューセッツ州、米国)を用いて、可溶性カチオン濃度(Si、Na、K、Al、B、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、S、Zn)を分析した。固形物試料及び高粘度の液体試料(ゲル)は、HF酸を用いたマイクロ波消化法で溶解し、ICP-OESを用いて測定した。
【0075】
液体ケイ酸塩の純度の決定-計算
試料の純度は、下式によって決定した。
【数1】
上記式中、純度%は、すべての金属酸化物の重量の合計の百分率としてのNa
2O+K
2O+SiO
2の重量(gL
-1)であり、MOは、Si、Na、K、Al、B、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、S及びZnの酸化物の合計である。
【0076】
液相中の固形物回収量の算出
液相中に存在する各元素の量(濃度×体積)を決定し、固形物換算に変換する(例えば、NaOH+Na2Oに対してはNa2O換算ベースで算出)ことにより算出し、液相中に回収された出発固形物の%として表した。
【0077】
回収率は、1回目及び2回目の遠心分離から回収された累積固形物と解釈したが、これには、商業的な設定において、固形物洗浄からの希釈液が商業的な仕様を満たさない場合は、その希釈液を、
1)新しいバッチ消化に追加すること、又は
2)連続反応器に再投入すること、又は
3)酸の添加により沈殿させること
が可能であるという理解がある。
【0078】
NaOHとして添加されたが、Na2O等価物として回収されたNaの回収が行われ、必要に応じてそのように表記した。
【0079】
報告した結果の用語法
商業的観点からは、SiO2:Na2O、溶液中のSiO2の純度及び最終濃度が最も重要な要素である。生成物の形成(例えばC-S-H)及び起こりうる蒸発損失により、実験中に溶液から水分が除去され、消化/溶解の尺度としての溶液中のイオンの濃度が歪められることが予想される。そのため、結果は液相中のSiO2の蓄積量としてgL-1の単位で表示している。
【0080】
結果
温度及び液相中のSiO
2の蓄積量
液相中のSiO
2の蓄積量は、温度が高くなるにつれて増加した(
図2)。70℃では27.6時間(565.5g SiO
2 L
-1)まで、90℃では101時間(460 SiO
2 L
-1)まで、すべての処理について濃度が直線的に増加し、50℃では実験の継続時間(236時間)にわたって濃度の直線的な増加が維持された。この初期の直線的な期間に対するフィッティングラインモデルを表4に示すが、液相中のSiO
2の蓄積量は、70℃及び50℃に比べて90℃ではそれぞれ4.48倍及び59.6倍に推定されている。70℃については、101時間~177時間の間に4つのデータポイントが欠けているが、これは試料の粘性が非常に高く分析できなかったためである。各処理で最高濃度に達したのは、90℃、70℃、50℃の処理でそれぞれ101.5時間(566.8g SiO
2 L
-1)後、240時間後(521.8g SiO
2 L
-1)、236時間(235.97g SiO
2 L
-1)後であった。
【0081】
【0082】
第1の実験の組の結果と同様に、第2の実験の組では、70℃から90℃への上昇は、液相中のSiO
2蓄積速度の5倍の増加をもたらし、90℃以上で沸点(公称105℃)未満の温度は、加圧システムに関連するエネルギー必要量と設備支出の増加を必要とせずに、反応速度論(反応の動態)に最適であった。2回目の組の抽出で最大シリカ含有量が低下したのは、1)反応器で使用したガラスの濃度が低下したこと、2)実験コントロールの改善により蒸発ロスが減少したこと、のいずれか又は両方に関連していると考えられる。それにもかかわらず、回収率は、混合物から取り出した液体の溶解した内容物を決定した。これらの結果を表5に示し、
図3にグラフで表す。
【0083】
【0084】
温度並びに溶液中のガラスの濃度及び液相中のSiO
2の蓄積量
図2の対になった処理の比較は、182~772.5gガラスL
-1 H
2Oの範囲の処理では、より高い開始ガラス濃度が、溶液中のSiO
2の蓄積速度の50%以上の上昇をもたらしたことを示す(表6)。772.5gL
-1/5M NaOH/70℃では101時間(456.0g SiO
2 L
-1)まで直線的な増加が記録されたことを除き、すべての処理で実験中に濃度の直線的な増加が見られた。この時点以降、いくつかの試料を採取したが、上述のような処理ができず、水を加えて上澄みを抽出した。より高い負荷(1000gガラスL
-1 H
2O)での処理を開始したが、機器の故障により結果は無効となった。それらから生成されたデータは、772.5gガラスL
-1 H
2Oと比較して、1000gガラスL
-1 H
2O処理に対する溶解速度に大きな違いがあることを示唆しなかったが、さらなる試験が実施される必要がある。
【0085】
【0086】
図5に示すように、直線的蓄積相における液相中のSiO2蓄積量は、ガラスの濃度にほぼ比例しており、250→500→750→1000gガラスL
-1 H
2Oの濃度上昇のそれぞれについて、5.1~6.1倍の増加が見られた。これまでの組の実験とは異なり、1000g/5M/90℃の処理は正常に終了し、液相中のSiO
2の蓄積速度が最も大きいことをともに示した。液相中のSiO
2の蓄積速度は、消化反応器の内容物を浮遊させ、よく混合する上で物理的な問題が発生するまで、増加し続けると予想される。後述するように、1000g/5M/90℃の処理で見られた固形物の回収率が比較的低いことは、これが商業的に関連する反応条件の上限である可能性が高いことを示す。
【0087】
アルカリ金属水酸化物添加の濃度及び種類並びに液相中のSiO
2の蓄積量
アルカリ源としてKOHではなくNaOHを用いた場合、液相中のSiO
2の蓄積は50%以上速くなった(
図6及び
図7、表7及び表8)。3.5Mの濃度では、50℃の実験の期間中、5Mよりもわずかに高い(NaOHとKOHでそれぞれ3.7%と10%)溶液中のSiO
2の蓄積率が得られた(
図4)。
【0088】
【0089】
【0090】
図8は、ガラス濃度とは異なり、液相中のSiO
2の蓄積速度は、アルカリ金属水酸化物の濃度の増加に比例して増加しないことを示す。むしろ、750/2.5M/90℃が発散する前の最初の6時間は、すべての処理でほぼ同じ蓄積速度があり、NaOH濃度が制限されていることを示している。対照的に、750/5M/90℃及び750/7.5M/90℃の処理では、蓄積速度がそれぞれy=15.422x及びy=16.279xとなり、発散が限られており、同様の最大濃度漸近線によって制限されているように見える。
【0091】
【0092】
アルカリ金属水酸化物添加の濃度及び種類並びに液相中のSiO
2:Na
2O+K
2O
予想通り、より低いNaOH又はKOHの開始添加量による処理は、SiO
2:Na
2O+K
2Oのより速い増加を示した(
図2)。対になる処理の間の相対的な差は、同じ実験のSiO
2蓄積量(表6)よりもモル比(表10)についてのほうが大きかった。
【0093】
【0094】
液相中のSiO
2の蓄積量、溶存固形物、及びSiO
2:Na
2O比
前述のように、SiO
2gL
-1は、最初の27.55時間にわたって直線的な蓄積を示す(y=19.67x、R
2=0.99)。その後、SiO
2gL
-1は横ばいになり、101.5時間~124.8時間の間で減少し、水を加えた後、125.0時間と144.0時間の最終サンプリングポイントで増加した。
図9は、SiO
2濃度が45.0~101.4時間の間で横ばいになる一方で、SiO
2:Na
2O比はこの期間にゆっくりではあるが増加し続け、101.5時間に3.76:1の局所的な最大値に達することを示す。101.5~124.75では、3.70:1にわずかに低下した後、125.0時間で水を加えると3.95:1に急上昇し、144.0時間では最終的に4.23:1となる。固形物含有量は、溶液中のSiO
2の蓄積量と同様のパターンを示し、27.6時間で42.4%に急速に増加した後、45.4時間で43.1%の最大値に達し、その後、SiO
2:Na
2Oの比率が高い溶液の総溶解度が低いことに伴い、125.0時間で37.3%に減少し、144時間で38.7%にわずかに増加した。
【0095】
液相中の溶存出発固形物の回収
固形物の回収率は、上述の方法を用いた処理の間で32~65%の範囲で増加変動した。各回収率は個々の処理(時間×反応条件)の収穫を表しているため、このデータについては誤差を測ることはできない。当該技術分野で公知の洗浄条件の最適化(数と手順の両方)は、液相中のケイ酸ナトリウムの回収率を高めることが期待される。
【0096】
【0097】
最終溶液の純度
第1の組の消化における最終液体フラクションの平均純度は、総溶存金属酸化物のSiO2+Na2O+K2Oの割合として測定し、これは95%信頼区間で99.41±0.14%であった。三連の完了した消化について、最終溶液の平均純度は98.95(±1.06)であった。一般的にケイ酸ナトリウムで最も問題となる不純物である鉄は、第1の組の消化では最大濃度が168ppm、第2の組の消化では最終溶液の平均値が59ppmであった。これは、砂の中に通常存在する約300ppmと比較される(Lagaly、2005)。
【0098】
アルミニウムは、溶液中に見られる最も一般的な元素であり、平均で金属酸化物換算ベースで溶存金属イオンの0.82%であった。
【0099】
SiO2及びNa2Oの量並びに比率の概要を表11Aに示す。
【0100】
【0101】
酸によるCSHの溶解
8.33gの湿ったCSHを50mLのファルコンチューブに加え、10mLのMilli-Q水に懸濁させた。これに5M HClを1mLピペットで2mL、2mLの間隔で滴下した。次いで懸濁液を遠心分離してpHを測定した後、さらに5mLのMilli-Q水を加えて撹拌を容易にした。その後、酸を以下の量で添加した:0.5mL、0.6mL、0.6mL、0.6mL、0.6mL、及び0.6mL。この試料を撹拌し、添加するたびに遠心分離を行い、pHを記録した。このプロセスの様々な段階で試料の写真を撮り、HClの添加量をpHに対してプロットして、CSHの緩衝能がいつ尽きたかを決定した。
【0102】
最後の酸添加後にpHを測定し、上澄みを別の50mLファルコンチューブに移した。これに2M NaOHを以下の増分で加えた:5mL、2mL、2mL。最後の添加の後、追加のNaOH添加による更なる沈殿物はなく、試料を遠心分離し、遠心分離物を捨て、固形物フラクション試料は更なる分析のために保存した。
【0103】
図10に示すように、pHは対数pHスケールで直線的に低下し、安定した溶解の最初の目に見える兆候がpH7.79で発生した。この低下は、pH7.79から5.38までの酸の添加に伴って同じ直線的傾向を示し、酸を添加するたびにゲルの透明度が向上したが、この結果は写真よりも目で見て明らかだった。最適な透明度に達したのはpH3.26で、ゲルの明らかな曇りはなかった。この時点で添加した酸の量に対してpHが急速に低下したのは、CSH懸濁液の緩衝能が尽きたためと解釈した。
【0104】
【0105】
一連のさらなる実験では、850gL-1のガラスを600mLの3.5M NaOHに加え、三連で30時間消化することでCSHを調製した。30時間後、内容物を50mLのファルコンチューブに入れ、4500rpmで5分間遠心分離し、混合物を液体(ケイ酸ナトリウム)、消化されたもの(ケイ酸カルシウム水和物)、未消化/部分消化のフラクション(未溶解/部分溶解ガラス)に分画した。
【0106】
浸出実験に十分なCSHを生成するために、CSHを分離する前に、未溶解/部分溶解した固形物フラクションを400mLの3.5M NaOHにさらに24時間再懸濁した。その後、上記の残りの部分溶解/未溶解のフラクションを用いて、この工程をもう一度繰り返した。
【0107】
CSH固形物フラクションの純度を確保するために、CSHをゲル画分の重量の2倍に相当する水に再懸濁させてから、上記のように液体、C-S-H、及び部分溶解/未溶解フラクションを再び分離した。完了すると、すべてのCSHを完全に混合して組成の一貫性を確保した後、HDPEの密閉容器に保存した。
【0108】
CSHの酸浸出
実施したさらなる試験では、100gのCSHを250mLの水に懸濁させ、pHが8未満になるまで8mLずつ5M HClを添加した後、容器内のpHプローブを介してpHを測定した(
図11)。
【0109】
さらに4mLの5M HClを添加した後にpHを記録し、その後、pHが大きく低下した後にpH約7までゆっくりと回復したため(「遊離の」溶液アルカリ分の消耗と「結合した」固形物アルカリ分のより遅い放出とが原因であると仮定)、15分後にpHが安定して4未満になるまで、溶液を3.5から4.5の間に維持するためにHClを1mLずつ滴下して添加した。
【0110】
液体フラクション及び固形物フラクションを、4500rpmで5分間遠心分離によって分離し、遠心分離物を除去した。次いで、固形物フラクションを、固形物の湿重量の2倍の懸濁液を介して2回「洗浄」し、続いて4500rpmで5分間遠心分離した。各段階(遠心分離、洗浄1及び洗浄2)で液体試料を採取し、表11に示すような分析用に保管した。その後、すべての試料をICP-OESで分析し、固形物試料はHNO3、HCl、HFの酸を5:3:2の割合で使用してマイクロ波消化した。固形物の組成は、測定した元素酸化物(Na、Ca、Si、K、S、Mg、Al、Fe、P、Zn、P及びB)の換算重量%として算出する。
【0111】
【0112】
【0113】
結果は、上記で詳述した方法を用いてCSHの浸出を介して、約94.4%の純度のSiO2ゲルを生成できることを示す。洗浄2の非シリカ元素(すなわち、Na及びCa)の濃度、及び以前に洗浄によって達成された高純度レベル(>99% SiO2)を考慮すると、固形物のさらなる洗浄によって、より高いレベルの純度が容易に達成できることが期待される。
【0114】
同様に、CSHを生成するために使用した長時間の消化方法により、Na含有量は以前に測定されたものよりも高かった(約10%のCaO及び4%のNa2Oに対して、3.4%のCaO及び21.1%のNa2O)。
【0115】
様々な原料に対する本プロセスの有効性は、本プロセスが、アルカリ消化によってソーダ石灰ガラスから生成されることが可能な「ケイ酸カルシウム水和物」の範囲からシリカゲルを抽出する手段として好適であることを示す。
【0116】
考察
上記結果は、低エネルギーのアルカリ消化プロセスを用いて、廃ガラスを商業的に関連するケイ酸ナトリウム溶液とケイ酸カルシウム水和物ゲルに分離することが可能であることを、初めて実証する。さらに、溶液のSiO2:Na2Oは、保持時間及び出発ガラス:NaOHの比率の両方によって操作することができ、0~48%の固形物濃度(これより高い場合、試料は粘性が高すぎて処理できなかった)で0~4.2:1の範囲のケイ酸ナトリウム溶液を生成することができる。ケイ酸ナトリウムの価値が比較的高く、投入コストが最小限で、環境への影響が良好で、従来の製造ルートに比べてエネルギー必要量が低いことから、これはさらなる商業化試験のための魅力的なターゲットとなる。
【0117】
実験番号13の終わりに生成されたスラリーの300g試料に合計200mLの水を加えることによって実施したおおよその質量バランス浸出試験は、出発固形物(ガラス+NaOH)の約31%が溶解したNa2O又はSiO2として回収可能であることを示した。これは、コンクリートへのガラスの添加におけるポゾラン反応及びASR反応の改善という観点から異なるガラスタイプの溶解速度を調査した後で、溶解したSiの80%超が液相に存在し、残りはC-S-H等の固形物腐食生成物に分配されると推定したMaraghechiら(2016)の推定値と比較して、比較的低い。
【0118】
同じ時間点での遠心分離した試料(4.23:1)と比較して、質量バランスの浸出試料(1.57~1.80:1)のSiO2:Na2Oの比率が低いことも、水が過剰に添加された場合にNa2Oが優先的に浸出することを示した。これは、遠心分離が高いSiO2:Na2O比の溶液を収穫するための最適なプロセスである可能性が高いこと、一方で浸出が固形物フラクションからの溶解したNa及びSiの洗浄及び再循環によりよく適しているように見えることから、商業的な文脈で関連している。
【0119】
非晶質ケイ素の溶解及びC-S-Hの形成は、両方とも発熱反応であることが明らかにされており、それぞれ出発固形物1tあたり267MJ、及び水和鉱物の種類に応じて262~517MJを生成する(Gunnarsson及びArnorsson、2000、Stutzmanら、2011)。このプロセスのエンタルピーは、その新規性ゆえにまだ直接測定されていない。しかしながら、消化プロセスでのエネルギーの放出を控えめに見積もると、ガラス1tあたり267MJ、又は74.1kWhとなる(1,000Lの水の温度を64℃上げるのに必要なエネルギー量と同じ)。工業規模の消化反応器は、75%以上の効率で稼働する熱交換器と結合している可能性が高いため(Whitaker、2013)、このプロセスは、プロセスが開始されれば、加熱要求量を満たすのにほぼ自給自足できるはずである。
【0120】
ケイ酸ナトリウム製造の原料としてソーダ石灰ガラスを使用することは、ケイ酸ナトリウム製造及び廃ガラス処理のサプライチェーンに大きな混乱をもたらすであろう。
図7は、ガラスを製造し、水ガラスを製造するための現在の従来のプロセスの模式図を示す。
図12は、本発明の実施形態を用いて生じる可能性のある変化の模式図を提供する。
【0121】
図13及び
図14は、本発明の実施形態に関する可能なプロセスフロー図を示す。
図15は、本発明の実施形態に係る連続プロセスのプロセスフローシートを示す。
図15において、廃ガラスホッパー10は、廃ガラスを消化容器12に供給する。水酸化ナトリウム14が消化容器12に添加されて、ガラスの消化、ケイ酸ナトリウムの形成、CSHの形成が起こる。消化容器12からの生成物の混合物は、16で取り出され、固/液分離18に送られる。液体ケイ酸ナトリウム20は、さらなる処理、使用、又は貯蔵のために送られる。未消化のガラス及びCSHを含む固形物フラクション22は、固/固分離器24に送られ、ここで未消化のガラスが、粒子サイズ及び密度の差に基づいてCSHから分離される。未消化のガラス26は、消化容器12に戻される。
【0122】
CSHは容器30に送られ、そこで酸32と接触してSiO2を形成する。固形物のSiO2又はSiO2ゲルは34で除去される。SiO2の一部36は、さらなる処理、使用又は貯蔵のために送られる。SiO2の一部38は、消化容器12に戻される。溶存金属塩を含む液体流40は、容器30から取り出される。
【0123】
粒度分布は、反応性表面積と粒度(粒子サイズ)との間に逆の関係があることから、反応速度論に大きな影響を与えることが予想される。しかしながら、
消化に使用されるガラス砂は、追加の粉砕及び関連するコストなしに重要な商業的量で利用可能なガラスの最小のフラクションを表し、
商業的に関連するケイ酸ナトリウム溶液は、このフラクションから容易に得られたので、
粒度分布は、この消化又はその後の消化で検討するための緊急のパラメータではないと判断した。
【0124】
本発明の実施形態に係る低エネルギーアルカリ消化からの商業的なケイ酸ナトリウム溶液の製造は可能であり、この技術は、従来の製造ルートと比較して多くの経済的及び環境的な利点を有すると思われる。本発明の好ましい実施形態では、廃ガラス製品を供給材料として使用してもよく、このため、他の方法では埋立地に行くことになるこの廃材料の量を減らすことができる。さらに、本発明の実施形態に従って水ガラスを製造するために必要なエネルギーの量は、従来のプロセスと比較して低減される。本発明のプロセスの実施形態の経済性は、販売又は使用のためにケイ酸カルシウム水和物を回収することによって、さらに高められてもよい。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態では、SiO2:Na2O+K2Oを変化させたケイ酸ナトリウム溶液を、
(i)消化の滞留時間を変化させること、
(ii)ガラス:アルカリ:水の投入量の化学量論を変化させること、
(iii)抽出プロセスを変えること(例えば、フィルターベルト抽出中に水を加えると、遠心分離と比較して、異なる固形物%及びSiO2:Na2O+K2Oが得られる)
によって得ることができる。
【0126】
本発明の実施形態の製品の可能な用途としては、
・コンクリート高密度化剤/シーラー、
・石膏ボードの製造における成分としてのいずれかのフラクションの使用、
・農業用肥料、
・肥料ペレットのバインダー、
・さらなる精製とその後の使用により、沈殿したケイ素及びその関連製品を作ること、
・CSHの沈殿物を、農業用の改良剤や、ガラス製造等の工業プロセスの原料として使用すること
が挙げられ、
・上記水性ケイ酸ナトリウムフラクションは、水性ケイ酸ナトリウムを使用する現在のあらゆる用途に使用することができる。
【0127】
ソーダ石灰ガラス及びアルカリ金属水酸化物を混合して「アルカリ活性化ジオポリマー」を作ることについて広範な研究が行われてきたが、通常の大気圧でソーダ石灰ガラスから高純度で商業的に同等のケイ酸ナトリウム溶液を抽出することはまだ検討されていない。これまでの研究者は、普通ポルトランドセメント(OPC)の代替としてスラグ又はフライアッシュ等の材料のアルカリ活性化剤を作ることを目的として、標準大気圧でのガラスの溶解に注目していた。しかしながら、本発明者らの知る限り、本発明の実施形態は、市販のケイ酸ナトリウムの代替に適した高純度及び高濃度のケイ酸ナトリウムを廃ガラスから製造する低エネルギープロセスの初の開示を表す。
【0128】
本発明のプロセスの主要な利点の1つは、その単純さにある。しかしながら、このことは、プロセスの構想中に行われた多くの非自明かつ発明的な工程を覆い隠している。これらは以下の通りである。
【0129】
ガラスは、一見したところ、水ガラス製造のための理想的なケイ素/ナトリウム供給原料ではない。これまでのアルカリ活性化ジオポリマーの研究では、最終的なセメント質材料の耐久性に重点が置かれていたため、一定時間枠内のケイ素の純度又は収率は重視されていなかった。これは主に、CaOが安定性及び不溶性を促進するためにソーダ石灰ガラスに特別に添加され、同時にソーダ石灰ガラスが、ケイ酸ナトリウムのための従来のSiO2原料(石英=約99%SiO2)と比較して、高度な混入物質(10~20%のNa2O又はSiO2でない材料)を含むためである。しかしながら、本発明の好ましい実施形態では、適切な反応条件の下で、固相中の混入物質の優先的な蓄積により、商業的に許容される製品である分離可能な液相が得られる。
【0130】
ジオポリマーアルカリ活性剤のための以前に報告された最適なガラス溶解条件は、80℃/6時間であり、この時点以降は限定的な溶解しか起こらないようであった。追加のガラスが同じ時間の間にSiO2の低い相対収率をもたらすことも、文献から明らかである。従って、以前の研究に比べてガラス濃度を複数倍にしたり、より大きな消化を可能にするために溶解時間を延長したりすることは、自明な工程ではない。
【0131】
本発明者らの知る限り、本プロセスに先立つすべての商業的な水ガラス製造技術は、経済的に実行可能なタイムスケール内で商業的なケイ酸ナトリウム溶液を形成するために、高温高圧(従来の水熱ルート)又は超高温(炉)の組み合わせの使用を必要としてきた。高温高圧を用いてさえも、SiO2:Na2Oの比が2:1を超えるケイ酸ナトリウムを直接形成する水熱プロセスの能力は珍しく、4:1を超える能力は前例がない。本発明者らは、反応速度論及び最終的な目的生成物を互いに最適化できる小さな窓があることを見出し、本発明の実施形態で使用されるような理想的なパラメータは、既存の文献に基づいて開始されたいくつもの失敗した試みの後にのみ推論された。このプロセスがケイ酸ナトリウム製造ルートの理解を再構築する程度を考えると、このプロセスが当業者にとって自明であった可能性はほとんどないだろう。
【0132】
酸添加の結果生じるCSHの完全かつ迅速な溶解は、驚くべき開発であるが、循環的な資源利用の可能性を大幅に高めるものである。モデルプラントの簡略化されたレイアウトが
図12に示されており、このプロセスによって可能となる価値ある製品を生み出す可能なルートを示している。
【0133】
本明細書及び請求項(もしあれば)において、「comprising(含む)」という言葉、並びに「comprises(含む)」及び「comprise(含む)」等のその派生語は、記載された整数のそれぞれを含むが、1つ以上のさらなる整数を含むことを排除しない。
【0134】
本明細書を通じて、「1つの実施形態」又は「一実施形態」という言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な場所で「1つの実施形態では」又は「一実施形態では」という語句が登場することは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、それらの特定の特徴、構造、又は特性は、任意の好適な方法で、1つ以上の組み合わせで組み合わされてもよい。
【0135】
法令に準拠して、本発明は、構造的又はプロセス的特徴に多かれ少なかれ特定の言語で記述されている。本明細書に記載された手段は、本発明を実施するための好ましい形態を含むため、本発明は、示された又は記載された特定の特徴に限定されないことを理解されたい。それゆえ、本発明は、当業者によって適切に解釈される添付の特許請求の範囲(もしあれば)の適正な範囲内で、その形態又は変形例のいずれかにおいて請求される。