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特許7529227マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 5/00 20060101AFI20240730BHJP
   H01F 5/04 20060101ALI20240730BHJP
   H01F 5/06 20060101ALI20240730BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01F5/00 Z
H01F5/04 B
H01F5/06 H
H01F5/00 E
H01F41/04 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024025020
(22)【出願日】2024-02-21
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】713000630
【氏名又は名称】マグネデザイン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 義信
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 晋平
(72)【発明者】
【氏名】菊池 永喜
(72)【発明者】
【氏名】工藤 一恵
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-002055(JP,A)
【文献】実開平02-009406(JP,U)
【文献】特開2020-173230(JP,A)
【文献】特開2000-346920(JP,A)
【文献】特開平03-255380(JP,A)
【文献】特開平04-233483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00
H01F 5/04
H01F 5/06
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被膜付き磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)と、前記磁性ワイヤの一方の端部にはコイル本体とその両端のコイル電極よりなる1個のコイルと、他方の端部には外部連結電極と、前記コイル電極から接続されている内部連結電極と前記外部連結電極とを連結して延伸する2本のコイル用配線と、前記コイル用配線を被覆する内部絶縁被膜と、前記コイルを被覆する外部絶縁被膜と、外部連結電極端子とを備えるマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤにおいて、
前記磁性ワイヤは、直径は5μm~1mm、長さは10cm~2mにて、有効透磁率は20以上の前記磁性ワイヤの外周には膜厚2μm以下のガラス、樹脂または酸化物等の絶縁性材料が被覆されており、
前記コイル用配線は、両端に前記外部連結電極および前記内部連結電極を備えてなり、前記磁性ワイヤを被覆する絶縁被膜の表面に両電極間に長く延伸してコイル用配線本体が形成され、幅は2μm~5μm、厚み0.2μm~3μm、長さは10cm~2mにて、Cu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料よりなり、
前記内部絶縁被膜は、前記コイル用配線の上部に形成される前記コイルを電気的に絶縁するために形成される絶縁被膜にて、膜厚は2μm~10μmよりなり、
前記コイルは、前記内部絶縁被膜の外周に形成された前記コイル本体と前記コイル本体の両端の前記コイル電極よりなり、前記コイル本体の長さは50μm~10mm、コイルピッチは2μm~10μmのCu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料よりなり、
前記外部絶縁被膜は、前記コイル用配線および前記コイルと外部とを電気絶縁するための被膜にて、かつ外部環境ダメージから前記保護する被膜で、膜厚100μm以下よりなり、
前記コイル用配線の前記外部連結電極および前記内部連結電極は、サイズは10μm~100μmにて厚みは0.2μm~3μmよりなり、
前記コイル電極および前記内部連結電極は、前記内部絶縁被膜のホールを介して接続され、
前記外部連結電極および前記外部連結電極端子は、前記内部絶縁被膜のホールまたは前記内部絶縁被膜および前記外部絶縁被膜のホールを介して接続されている、
ことを特徴とするマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤ。
【請求項2】
マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤの製造方法は、
第1ステップは、コイル用配線本体と外部連結電極および内部連結電極とからなるコイル用配線を形成する工程よりなり、
(1)絶縁被膜付き磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤaという。)を蒸着装置の中に設置し、
(2)前記磁性ワイヤaを回転しながら、導電性に優れた金属被膜を磁性ワイヤa表面の長手方向に均一に蒸着し、
(3)続いて、前記金属被膜の上に一様なレジスト被膜を形成し、
(4)露光装置の中に取り付けられたワイヤ送り装置と前記コイル用配線の露光用スリットを有するマスクを使って、露光しながら磁性ワイヤaを送り、
続いて、前記外部連結電極および前記内部連結電極の作製に対応するマスクを使って前記コイル用配線の両端を露光し、
(5)露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、磁性ワイヤa表面に直接前記コイル用配線を形成し、
(6)次に、全長に渡って前記コイル用配線を電気絶縁するために内部絶縁被膜レジストを塗布し、
(7)再び、露光装置に設置して、前記外部接続電極および前記内部接続電極の位置にマスク露光して現像を行ない、ホールを形成してキュア処理を行なってレジストを硬化させ(この状態を磁性ワイヤbとする。)、
第2ステップは、コイル本体とその両端のコイル電極とからなるコイルを形成する工程よりなり、
(8)再び、前記コイル用配線を形成した前記磁性ワイヤbを蒸着装置の中に設置し、前記磁性ワイヤbを回転しながら、導電性に優れた金属被膜を前記磁性ワイヤbの前記コイルの位置の表面に均一に蒸着し、金属被膜は内部連結電極の位置のホールを埋めて、金属被膜と内部連結電極とを連結し、
(9)続いて、前記金属被膜の上に一様なレジスト被膜を形成し、
(10)露光装置の中に取り付けた一定速度で回転送りできるワイヤ送り装置と前記コイル本体の露光用スリットを有するマスクを使って、露光しながら前記磁性ワイヤbを1回転し、その際の送り量は前記コイル本体のピッチ量とし、かつ露光時間は送り時間と一致させて露光を行ない、
続いて、前記コイル電極の露光用スリットを有するマスクを使って、前記コイル本体の両端の前記コイル電極を露光し、
(11)露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、前記磁性ワイヤbの表面に直接前記コイル本体および前記コイル電極を形成し、
(12)次に、前記コイルおよび前記コイル用配線を外部から電気的絶縁するための外部絶縁被膜を塗布し、
第3ステップは、外部連結電極端子を形成する工程よりなり、
(13)外部接続電極の位置に開けられたホールを介して外部連結電極端子(パッド)を取り付けて外部配線との接続を容易にする、
3つのステップからなることを特徴とするマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ワイヤ表面に直接半導体プロセスでマイクロコイルを形成するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロコイル部品は、磁気センサ、マイクロ電磁石、マイクロ発電機、インダクタンス部品などに広く使用されている。いずれもコイル巻き数あるいはコイルピッチ(単位長さ当たりのコイル巻き数密度)および磁性ワイヤの有効透磁率や体積によって、その性能は大きく左右される。マイクロコイルの場合、性能改善のためには、磁性ワイヤの体積が非常に小さいので、コイルピッチを微細化してコイル巻き数を増やすことが必要である。
【0003】
機械巻き式のマイクロコイルは、直径1mm以下の磁性ワイヤにその表面にボビンを取り付けてそこにマイクロコイルを機械的に巻き付けた場合、エナメル線の線径を考慮するとコイルピッチ10μmが限界である。さらにボビンが必要であることを考慮すると、磁性ワイヤ径に100μmから200μm程度は増加してしまい、マイクロサイズ化は困難である。
【0004】
半導体プロセスを使ったマイクロコイルは、特許文献1(特許第5747294号)に開示されている。現在コイルピッチ3μmが実現されており、コイルピッチ10μmが限界の機械式コイルよりも有望である。しかし、基板上にマイクロコイルを形成しているために、その基板サイズは、幅200μm、厚み200μmが必要で、全体としては大きなものとなっている。カテーテル、胃カメラなど生体内医療機器内で、磁気センサ、マイクロ発電機、マイクロ振動子、あるいはマイクロ電磁石として使用する場合には、装入される空間の広さが極めて狭いために基板を省略し、マイクロコイルを磁性ワイヤに直接取り付けることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5747294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体プロセスで形成したマイクロコイルの基板を省略するためには、マイクロコイルを直接絶縁被覆付きの磁性ワイヤの表面に形成する必要がある。半導体プロセスは、平面基板にマイクロ配線パターンを焼き付ける技術であるが、その技術を使って3次元の磁性ワイヤ表面にマイクロコイルを焼き付ける新技術を開発することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の技術課題を鋭意検討した結果、磁性ワイヤを横方向に送りながら回転露光すれば、マイクロコイルが形成できるという本発明の技術的思想に至った。
その考え方は、まず、絶縁被膜付きの磁性ワイヤ表面に導電性薄膜を積層し、その上にレジストを塗布し、それをワイヤ送りながら回転露光を行い、その後エッチング処理をした後、コイルに保護被膜を取り付けてマイクロコイルを形成するというものである。
【0008】
マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤは、
磁性ワイヤを磁心として、導電性コイルと外部絶縁被膜とからなり、磁性ワイヤは、絶縁被覆付きで直径5μm~1mmで、長さは10cm~1mである。導電性コイルは、コイルピッチ2μm~200μmのCu,Al、Auなど導電性に優れた導電性材料よりなり、
外部絶縁被膜は、コイルを外部との間の電気絶縁し、さらに環境ダメージから膜を保護するもので、膜厚100μm以下である。
【0009】
ホトリソグラフィ技術で大きな曲率凹凸のある磁性ワイヤ表面にマイクロコイル配線をパターニングする場合、ワイヤの頂点以外は曲率によりマスクとワイヤレジスト被膜との間には間隔が生じて、露光時露光不足となるので、ワイヤを回転することで、露光幅が一定となるように露光時間と回転の送り速度を調整する。例えば、送りピッチ5μmの場合、1回転の回転速度と送り量5μmを同期させ、送り時間を露光時間と一致させることで実現できることを見出した。
【0010】
ワイヤ表面へ金属皮膜の蒸着は、真空チャンバーの中で、表面にむらなく蒸着するために回転装置により回転しながら行った。次いで、金属被膜の上にレジスト塗布、露光後現像を行う。絶縁被膜の上の回転露光マスクにコイル単体の巻き数に対応したスリットを設け、このマスクを使って回転露光し、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することで実現できることを見出した。
【0011】
最終製品であるマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤは、ボビンに巻き付けて取り扱いを容易な梱包形状とした。
【0012】
以上のマイクロコイルはいずれも外部環境への漏電を阻止し、かつ外部環境からの機械的、熱的、化学的ダメージを回避するために、回転移動しながら外部絶縁被膜を取り付ける。絶縁被膜の厚さは100μm以下、磁性ワイヤの直径に応じて好ましくは50μm~10μmである。
【0013】
マイクロコイルと、外部機器との電気配線については、外部絶縁被膜のコイルの開口されているパッド部の電極端子に、外部からの引き込み線と接合し、絶縁処理を施すことによって、マイクロコイルの直径をほとんど変えることなく電気配線処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
半導体プロセスを活用することによって、直径10μmで、コイルピッチ5μm程度のマイクロコイルを直接磁性ワイヤに取り付けることが実現できる。これにより、極小のサイズで磁気変換率が高いマイクロコイルは、生体内で使用される磁気センサ、マイクロ電磁石、マイクロ発電機、インダクタンス部品の機能を高める上で、極めて有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤを示す概念の斜視図である。
図2】マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤのコイル部A1-A2線における断面図である。
図3】マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤのコイル用配線部B1-B2線における断面図である。
図4】マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤの外部連結電極端子部C1-C2線における断面図である。
図5】長尺磁性ワイヤにコイル用配線、内部連結用電極および外部連結電極を形成した概念図である。
図6】マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤの製造フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤは、
絶縁被膜付き磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)と、前記磁性ワイヤの一方の端部にはコイル本体とその両端のコイル電極よりなる1個のコイルと、他方の端部には外部連結電極と、前記コイル電極から接続されている内部連結電極と前記外部連結用電極とを連結して延伸する2本のコイル用配線と、前記コイル用配線を被覆する内部絶縁被膜と、前記コイルを被覆する外部絶縁被膜と、を備えるマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤにおいて、
前記磁性ワイヤは、直径は5μm~1mm、長さは10cm~2mにて、有効透磁率は20以上の前記磁性ワイヤの外周には膜厚2μm以下のガラス、樹脂または酸化物等の絶縁性材料が被覆されており、
前記コイル用配線は、両端に前記外部連結電極および前記内部連結電極を備えてなり、前記磁性ワイヤを被覆する絶縁被膜の表面に両電極間に長く延伸してコイル用配線本体が形成され、幅は2μm~5μm、厚み0.2μm~3μm、長さは10cm~2mにて、Cu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料よりなり、
前記内部絶縁被膜は、前記コイル用配線の上部に形成される前記コイルを電気的に絶縁するために形成される絶縁被膜にて、膜厚は2μm~10μmよりなり、
前記コイルは、前記内部絶縁被膜の外周に形成された前記コイル本体と前記コイル本体の両端の前記コイル電極よりなり、前記コイル本体の長さは50μm~10mm、コイルピッチは2μm~10μmのCu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料よりなり、
前記外部絶縁被膜は、前記コイルおよび前記コイル用配線と外部とを電気絶縁するための被膜にて、かつ外部環境ダメージから前記保護する被膜で、膜厚100μm以下よりなり、
前記コイル用配線の前記外部連結電極および前記内部連結電極は、サイズは10μm~100μmにて厚みは0.2μm~3μmよりなり、
前記コイル電極および前記内部連結電極は、前記内部絶縁被膜のホールを介して接続され、
前記外部連結電極および外部連結電極端子は、前記内部絶縁被膜のホールまたは前記内部絶縁被膜および前記外部絶縁被膜のホールを介して接続されている、
ことを特徴とする。
【0017】
マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤの製造方法は、
第1ステップは、コイル用配線本体と外部連結電極および内部連結電極とからなるコイル用配線を形成する工程よりなり、
(1)絶縁被膜付き磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤaという。)を蒸着装置の中に設置し、
(2)前記磁性ワイヤaを回転しながら、導電性に優れた金属被膜を磁性ワイヤa表面の長手方向に均一に蒸着し、
(3)続いて、前記金属被膜の上に一様なレジスト被膜を形成し、
(4)露光装置の中に取り付けられたワイヤ送り装置と前記コイル用配線の露光用スリットを有するマスクを使って、露光しながら磁性ワイヤaを送り、
続いて、前記外部連結電極および前記内部連結電極の作製に対応するマスクを使って前記コイル用配線の両端を露光し、
(5)露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、磁性ワイヤa表面に直接前記コイル用配線を形成し、
(6)次に、全長に渡って前記コイル用配線を電気絶縁するために内部絶縁被膜レジストを塗布し、
(7)再び、露光装置に設置して、前記外部接続電極および前記内部接続電極の位置にマスク露光して現像を行ない、ホールを形成してキュア処理を行なってレジストを硬化させ(この状態を磁性ワイヤbとする。)、
第2ステップは、コイル本体とその両端のコイル電極とからなるコイルを形成する工程よりなり、
(8)再び、前記コイル用配線を形成した前記磁性ワイヤbを蒸着装置の中に設置し、前記磁性ワイヤbを回転しながら、導電性に優れた金属被膜を前記磁性ワイヤbの前記コイルの位置の表面に均一に蒸着し、金属被膜は内部連結電極の位置のホールを埋めて、金属被膜と内部連結電極とを連結し、
(9)続いて、前記金属被膜の上に一様なレジスト被膜を形成し、
(10)露光装置の中に取り付けた一定速度で回転送りできるワイヤ送り装置と前記コイル本体の露光用スリットを有するマスクを使って、露光しながら前記磁性ワイヤbを1回転し、その際の送り量は前記コイル本体のピッチ量とし、かつ露光時間は送り時間と一致させて露光を行ない、
続いて、前記コイル電極の露光用スリットを有するマスクを使って、前記コイル本体の両端の前記コイル電極を露光し、
(11)露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、前記磁性ワイヤbの表面に直接前記コイル本体および前記コイル電極を形成し、
(12)次に、前記コイルおよび前記コイル用配線を外部から電気的絶縁するための外部絶縁被膜を塗布し、
第3ステップは、外部連結電極端子を形成する工程よりなり、
(13)外部接続電極の位置に開けられたホールを介して外部連結電極端子(パッド)を取り付けて外部配線との接続を容易にする、
3つのステップからなることを特徴とする。
【0018】
以下、図1図5を用いて、詳細に説明する。
<絶縁被膜付き磁性ワイヤ(磁性ワイヤ)>
絶縁被膜付き磁性ワイヤ11(21、31、41)は、磁性ワイヤ211(311、411)を磁心としてその外周に膜厚2mm以下のガラス、樹脂または酸化物等の絶縁性材料212(312、412)が被覆されている。
磁性ワイヤ11(21、31、41)の直径は5μm~1mmで、マイクロ発電機、マイクロ振動子および電磁石の用途には100μm~500μmが好ましい。
長さは、10cm~2mよりなる。有効透磁率は20以上で、好ましくは25~100である。
【0019】
なお、膜厚2mm以下の絶縁性材料の被覆では不十分の場合には、この絶縁材料211の表面に樹脂等の絶縁材料を追加的に被覆し、その表面に導電性コイルを形成してもよい。
なお、絶縁性材料として絶縁性ガラスの場合は、0.5~1.5μmが好ましい。
【0020】
<導電性コイル(コイル)>
導電性コイル(コイル)12(22)は、絶縁被覆付き磁性ワイヤ11(21)を周回するコイル本体121(221)とコイル本体の両端に配置されたコイル電極122aおよび122bとからなる。
【0021】
また、導電性コイル12(22)は、コイルピッチは2μm~10μmのCu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料からなる。コイルピッチは微細なほど好ましいが、コイル抵抗を考慮して用途に応じて異なっている。マイクロ発電機、マイクロ振動子や電磁石の用途には、コイルピッチは3μm~6μmが好ましい。
線幅は、コイルピッチの略半分とする。線厚は、コイルピッチの略1/10が好ましい。
【0022】
コイル電極122aおよび122bは、両側のコイル端にコイル端子として接続する形で取り付けられており、そのサイズはコイル線幅の5~10倍を目安とする。
【0023】
<コイル用配線>
コイル用配線本体131a、131b(531a、531b)と両端には外部連結電極132a、132b(532a、532b)と内部連結電極533a、531bとからなり、Cu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料よりなりなる。
コイル用配線本体131a、131b(531a、531b)は、幅は2μm~5μm、厚み0.2μm~3μm、長さは10cm~2mである。なお、長さは磁性ワイヤの長さより短く、9.9cm~1.999mが好ましい。
外部連結電極132a、132b(532a、532b)および内部連結電極533a、531bは、サイズは10μm~100μmにて好ましくは16μm~50μmである。厚みは0.2μm~3μmよりなる。
【0024】
<内部絶縁被膜>
内部絶縁被膜24(34、44)は、コイル配線とコイルとを電気的に絶縁するために形成される絶縁被膜にて、コイル配線の上部に形成される膜厚は2μm~10μmよりなる。
【0025】
<外部絶縁被膜>
外部絶縁被膜25は、導電性コイルを外部との間を電気絶縁し、さらに環境ダメージから導電性コイルおよび絶縁被膜自身を保護するもので、膜厚100μm以下とする。好ましくは、50μm~10μmである。
また、図3および図4に示すように、コイルが形成されていないコイル用配線の内部絶縁被膜に加えて、内部絶縁被膜を保護するために厚い外部絶縁被膜(35、45)を形成する。
これにより、長尺磁性ワイヤの全長にわたって外部絶縁被膜が形成されることとなり、導電性コイルおよびコイル用配線が外部との間の電気的絶縁、環境からのダメージに対する保護などが十分に行われる。また、製造工程上、簡易化が可能となる。
【0026】
<コイル電極と内部連結電極との接続>
コイル電極と内部連結電極との間は、内部絶縁被膜が形成されているのでホールを形成し、ホールを介して接続される。コイル形成のための内部絶縁被膜の上に蒸着する際に、予め内部絶縁被膜にホールを設け、ホール内も同時に蒸着する。
【0027】
<外部連結電極端子と外部連結電極との接続>
外部配線用の外部連結電極端子46bとコイル配線用の外部連結電極422bとは、内部絶縁被膜44のホールまたは内部絶縁被膜44および外部絶縁被膜45のホール47を介して、金属蒸着または金属メッキにより接続されている。
【0028】
<マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤの製造方法>
図6のフロー図により、マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤの製造方法を説明する。
製造方法は、ステップ1のコイル用配線部を形成する工程、ステップ2のコイル部を形成する工程およびステップ3の外部連結電極を形成する工程からなる。
【0029】
先ず、ステップ1のコイル用配線本体と外部連結電極および内部連結電極とからなるコイル用配線を形成する工程は次のとおりである。
(1)工程601;
絶縁被膜付き磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤaという。)を蒸着装置の中に設置する。
磁性ワイヤaの長さは、蒸着装置の内部の大きさ、コイルピッチとコイル巻き数およびコイル用配線の長さを加味して10cm~2mである。
磁性ワイヤaの絶縁被膜の厚みが、磁性ワイヤaの直径等を考慮して薄い場合には、予め絶縁被膜の上に絶縁樹脂等を被膜して厚くしてもよい。
【0030】
(2)工程602;
前記磁性ワイヤaを回転しながら、伝導性に優れた金属をワイヤ表面に均一に蒸着して金属被膜を形成する。
金属被膜の厚さは、0.5μm~2μmである。
【0031】
(3)工程603;
続いて、前記金属被膜の上に一様なレジストを塗布してレジスト被膜を形成する。
塗布の方法は、磁性ワイヤにスプレーによる均一に塗布する方法や磁性ワイヤaに塗布して回転により均一にする方法などがある。
【0032】
(4)工程604;
露光装置の中に取り付けられた(ワイヤ送り装置とコイル用配線の露光用スリットを有するマスクを使って、露光しながら磁性ワイヤaを送る。
続いて、外部連結電極および内部連結電極の作製に対応するマスクを使ってコイル用配線の両端を露光する。
【0033】
(5)工程605;
露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、磁性ワイヤa表面に直接コイル配線本体、外部連結電極および内部連結電極を形成する(図5)。
【0034】
(6)工程606;
次に、全長に渡ってコイル用配線を電気絶縁するために内部絶縁被膜用レジストを塗布する。
【0035】
(7)工程607;
再び、露光装置に設置して、外部接続電極および内部接続電極の位置にマスク露光して現像を行ない、ホールを形成してキュア処理を行なってレジストを硬化させる(この状態を磁性ワイヤbとする。)。
【0036】
次に、ステップ2のコイル用配線本体と外部連結電極および内部連結電極とからなるコイルを形成する工程は次のとおりである。
(8)工程608;
再び、コイル用配線を形成した磁性ワイヤbを蒸着装置の中に設置し、磁性ワイヤbを回転しながら、導電性に優れた金属被膜を磁性ワイヤbのコイル部の位置の表面に均一に蒸着し、金属被膜は内部連結電極の位置のホールを埋めて、金属被膜と内部連結電極とを連結する。
【0037】
(9)工程609;
続いて、前記金属被膜の上に一様なレジスト被膜を形成する。
【0038】
(10)工程610;
露光装置の中に取り付けた一定速度で回転送りできるワイヤ送り装置とコイル本体露光用スリットを有するマスクを使って、露光しながら磁性ワイヤbを1回転し、その際の送り量はコイル本体のピッチ量とし、かつ露光時間は送り時間と一致させて露光を行ない、
続いて、コイル電極露光用スリットを有するマスクを使って、コイル両端にコイル電極を露光する。
【0039】
(11)工程611;
露光後に現像を行ない、露光箇所以外のレジストを取り除き、続いてレジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、磁性ワイヤbの表面に直接コイル本体およびコイル電極を形成する。
【0040】
(12)工程612;
次に、コイル用配線およびコイルと外部との電気的絶縁するための外部絶縁被膜を塗布する。すなわち、外部絶縁被膜は、磁性ワイヤbの全長に渡って塗布して、環境ダメージから導電性コイル、コイル用配線を保護するとともに外部絶縁被膜自身を保護するために100μm以下の厚みでもってレジストを塗布する。
【0041】
最後に、ステップ3の外部連結電極の接続する工程は次のとおりである。
(13)工程613;
外部接続電極の位置に開けられたホールに、外部連結電極端子(パッド)を取り付けて外部配線との接続を容易にする。
【実施例
【0042】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例のマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤ1は、図1図5に示す。
磁性ワイヤ11(21)を磁心として、導電性コイル12(22)、コイル用配線13(23)、内部絶縁被膜24、外部絶縁被膜23、および外部連結用電極端子46a、46bからなるマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤである。磁性ワイヤ211は、膜厚1.0μmのガラス絶縁材料212が被覆されている。
磁性ワイヤ211は、直径500μm、長さ50cmで、厚み1.5μmのガラスが被覆されている。
マイクロ発電機、マイクロ振動子や電磁石用途である。
【0043】
導電性コイル12のコイル本体121は、コイルピッチ10μmの導電性に優れた導電材料Auからなる。巻き数は2000回である。
【0044】
コイル電極122は、導電性コイル12の両側のコイル端に接続する形で取り付けられており、そのサイズは25μmとする。
【0045】
コイル用配線131a、131bは、その長さはそれぞれ478mm、488mmにて幅4μm、厚み0.5μmである。両端の電極(外部連結電極532a、532bおよび内部連結電極533a、533b)のサイズは25μmとする。
【0046】
内部絶縁被膜24は、コイル用配線を絶縁するために厚み5μmの絶縁性レジストを塗布した。
外部絶縁被膜25は、導電性コイル12(32)を外部との間を電気絶縁し、さらに環境ダメージから導電性コイルおよび絶縁被膜自身を保護するもので、膜厚30μmの絶縁性レジストを塗布した。
また、環境ダメージからコイル用配線131a、131bおよび内部絶縁被膜24を保護するために上記の膜厚30μmの絶縁性レジストを上記の塗布に併せて塗布して外部絶縁被膜25を形成した。
【0047】
コイル電極122a、122bと内部連結電極533a、533bとは、それぞれ内部絶縁被膜24に設けられたホールのAu蒸着を介して接続されている。外部連結電極432a、432bと外部連結電極端子46a、46bとは、それぞれ内部絶縁被膜44および外部絶縁被膜45に設けられたホール47のAu蒸着を介して接続されている。
【0048】
上記の実施例のマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤ1の製造方法について、図5および図1図4を用いて説明する。
先ず、コイル用配線を形成する。
直径500μm、長さ50cmで、厚み1.0μmのガラスが被覆されている磁性ワイヤに、厚み1.5μmの絶縁性レジストを塗布・乾燥した後(以下、磁性ワイヤaという。)、蒸着装置の中に設置する。
磁性ワイヤaを回転しながら、伝導性に優れた金属をワイヤ表面に均一に蒸着して厚さ0.5μmの金属被膜を形成する。
【0049】
前記金属被膜の上にスプレー法により一様なレジストを塗布してレジスト被膜を形成する。
露光装置の中に取り付けられた(ワイヤ送り装置とコイル用配線の露光用スリットを有するマスクを使って、露光しながら磁性ワイヤaを送る。
続いて、外部連結電極および内部連結電極の作製に対応するマスクを使ってコイル用配線の両端を露光する。
【0050】
露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、磁性ワイヤa表面に直接コイル配線本体531a、531b、外部連結電極532a、532bおよび内部連結電極533a、533bを形成する。
【0051】
次に、全長に渡ってコイル用配線を電気絶縁するために内部絶縁被膜レジスト34を塗布する。
【0052】
再び、露光装置に設置して、外部接続電極532a、532bおよび内部接続電極533a、533bの位置にマスク露光して現像を行ない、ホールを形成してキュア処理を行なってレジストを硬化させる(この状態を磁性ワイヤbとする。)。
【0053】
次に、コイルを形成する。
コイル用配線を形成した磁性ワイヤbを蒸着装置の中に設置し、磁性ワイヤbを回転しながら、導電性に優れた金属被膜を磁性ワイヤbのコイル部の位置の表面に均一に蒸着し、金属被膜は内部連結電極の位置のホールを埋めて、金属被膜と内部連結電極とを連結する。
続いて、前記金属被膜の上に一様なレジスト被膜を形成する。
【0054】
露光装置の中に取り付けた一定速度で回転送りできるワイヤ送り装置とコイル本体露光用スリットを有するマスクを使って、露光しながら磁性ワイヤbを1回転し、その際の送り量はコイル本体のピッチ量とし、かつ露光時間は送り時間と一致させて露光を行ない、
続いて、コイル電極露光用スリットを有するマスクを使って、コイル両端にコイル電極を露光する。
【0055】
露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、磁性ワイヤbの表面に直接コイル本体121およびコイル電極122a、122bを形成する。
【0056】
次に、コイル12と外部との電気的絶縁するため、およびコイル用配線の絶縁と保護のため外部絶縁被膜25を磁性ワイヤ11全長に渡って塗布する。
併せて、外部接続電極の位置にホールを開ける。
【0057】
最後に、外部連結電極を外部連結電極端子と接続する。
外部接続電極432a、432bの位置に開けられたホールの上部の外部絶縁被膜に、さらに前記ホールに接続するホールを形成し、両ホール47を介して外部連結電極端子(パッド)46a、46bを取り付けて外部配線との接続を容易にする。
【0058】
外部接続電極の位置に開けられたホール47に、Auめっきして、外部連結電極432a、432bと外部連結電極端子46a、46bとを接続する。
これにより、外部配線との接続を容易にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤは、超小型で高性能な電気磁気変換能を有しており、マイクロ発電機、マイクロ振動子、あるいはマイクロ電磁石など幅広い分野で適用を可能にするものである。
【符号の説明】
【0060】
1;マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤ
11;絶縁被膜付き長尺磁性ワイヤ
12;導電性コイル(コイル)
121;コイル本体
122a、122b;コイル電極
131a、131b;コイル用配線本体
132a、132b;外部連結電極
2;マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤ(A1-A2断面)
21;絶縁被膜付き磁性ワイヤ
211;磁性ワイヤ
212;絶縁被膜(絶縁ガラス)
22;導電性コイル(コイル)
23;コイル用配線
24;内部絶縁被膜
25;外部絶縁被膜
3;マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤ(B1-B2断面)
31;絶縁被膜付き磁性ワイヤ
311;磁性ワイヤ
312;絶縁被膜(絶縁ガラス)
33;コイル用配線
34;内部絶縁被膜
35;外部絶縁被膜
4;マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤ(B1-B2断面)
41;絶縁被膜付き磁性ワイヤ
411;磁性ワイヤ
412;絶縁被膜(絶縁ガラス)
432a;外部連結電極
432b;外部連結電極
44;内部絶縁被膜
45;外部絶縁被膜
46a;外部連結電極端子(パッド)
46b;外部連結電極端子(パッド)
47;ホール
5;コイル用配線
51;絶縁被膜付き磁性ワイヤ
531a;コイル用配線本体
531b;コイル用配線本体
532a;外部連結電極
532b;外部連結電極
533a;内部連結電極
533b;内部連結電極
【要約】      (修正有)
【課題】磁性ワイヤ表面に直接半導体プロセスでマイクロコイルを形成する方法及びマイクロコイル付き長尺磁性ワイヤを提供するものである。
【解決手段】マイクロコイル付き長尺磁性ワイヤ2において、絶縁被膜付き磁性ワイヤ21は、磁性ワイヤ211を磁心として、その外周が膜厚2mm以下のガラス、樹脂または酸化物等の絶縁性材料212で被覆されている。磁性ワイヤ21の直径は5μm~1mmで、マイクロ発電機、マイクロ振動子および電磁石の用途には100μm~500μmが好ましい。長さは、10cm~2mよりなる。有効透磁率は20以上で、好ましくは25~100である。なお、膜厚2mm以下の絶縁性材料の被覆では不十分の場合には、この絶縁材料211の表面に樹脂等の絶縁材料を追加的に被覆し、その表面に導電性コイルを形成してもよい。なお、絶縁性材料として絶縁性ガラスの場合は、0.5~1.5μmが好ましい。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6