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特許7529228コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤおよびコイル付き磁気センサ素子。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤおよびコイル付き磁気センサ素子。
(51)【国際特許分類】
   H01F 5/00 20060101AFI20240730BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20240730BHJP
   H01F 5/06 20060101ALI20240730BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20240730BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01F5/00 F
G01R33/02 D
H01F5/00 R
H01F5/06 H
H01F17/04 A
H01F17/04 F
H01F41/04 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024035572
(22)【出願日】2024-03-08
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】713000630
【氏名又は名称】マグネデザイン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 義信
(72)【発明者】
【氏名】本蔵 晋平
(72)【発明者】
【氏名】菊池 永喜
(72)【発明者】
【氏名】工藤 一恵
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-002055(JP,A)
【文献】実開平02-009406(JP,U)
【文献】特開2020-173230(JP,A)
【文献】特開2000-346920(JP,A)
【文献】特開平03-255380(JP,A)
【文献】特開平04-233483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00
G01R 33/02
H01F 5/06
H01F 17/04
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性ワイヤと前記磁性ワイヤに沿って多数個のコイル付き磁気センサ素子とからなるコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤにおいて、
前記磁性ワイヤは、直径5μm~1mmの導電性アモルファス材料にてその外周は膜厚2μm以下のガラス、樹脂または酸化物等の絶縁性材料が被覆された絶縁被膜付き磁性ワイヤからなり、
前記コイル付き磁気センサ素子は、前記絶縁被膜付き磁性ワイヤの上面にCu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料により形成されたコイルピッチ2μm~10μmのコイルおよび2個のコイル電極を備え、
かつ、前記磁性ワイヤに通電するための2個のワイヤ電極を備え、
前記コイル付き磁気センサ素子の外周は、前記コイル電極および前記ワイヤ電極の上部に形成された外部との接続用の4個のホールを除いて外部絶縁被膜が形成されている、
ことを特徴とするコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤ。
【請求項2】
請求項1において、
前記コイル電極と前記ワイヤ電極が同一線上に配置されていることを特徴とするコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記コイル付き磁気センサ素子は、1個の長さが1mmから10mmとなることを特徴とするコイル付き磁気センサ素子。
【請求項4】
コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤの製造方法は、
(1)絶縁被膜付き磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)の絶縁被膜内にワイヤ電極用のホールを形成し、
(2)前記ホールが形成された磁性ワイヤを蒸着装置の中に設置し、前記磁性ワイヤを回転子ながら、伝導性に優れた金属被膜をワイヤ表面に均一に蒸着し、
(3)続いて、金属被膜の上に一様なレジスト被膜を塗布し、
(4)一定速度で回転送りできるワイヤ送り装置を露光装置の中に取り付け、コイル露光用のスリットを有するマスクを使って、露光しながら前記磁性ワイヤを1回転し、その際の送り量は前記コイルのピッチ量とし、かつ露光時間は送り時間と一致させて露光を行ない、
続いて、コイル電極露光用のスリットを有するマスクを使って、コイル両端にコイル電極を露光し、
また、ワイヤ電極露光用のスリットを有するマスクを使って、ワイヤ電極を露光し、
(5)露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、前記磁性ワイヤの表面の絶縁被膜上に前記コイルおよび前記コイル電極を形成するとともに前記磁性ワイヤの金属表面上に前記ワイヤ電極を形成し、
(6)次に、前記コイルと外部との間を電気絶縁するための外部絶縁被膜を塗布し、
(7)前記外部絶縁被膜内に、前記コイル電極用のホールおよび前記ワイヤ電極用のホールを形成する、
ことを特徴とする第1ステップからなるコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤの製造方法。
【請求項5】
コイル付き磁気センサ素子の製造方法は、
請求項4に記載の第1ステップにより製造されたコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤを用いた第2ステップからなり、
(10)前記コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤについて、1個1個切断する個片化により作製する、
ことを特徴とするコイル付き磁気センサ素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性ワイヤ表面に直接半導体プロセスでマイクロコイルを形成するための技術に関するもので、特にコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤおよびコイル付き磁気センサ素子に関する
【背景技術】
【0002】
マイクロコイル部品は、磁気センサ、マイクロ電磁石、マイクロ発電機、インダクタンス部品などに広く使用されている。いずれもコイル巻き数あるいはコイルピッチ(単位長さ当たりのコイル巻き数密度)および磁性ワイヤの有効透磁率や体積によって、その性能は大きく左右される。マイクロコイルの場合、性能改善のためには、磁性ワイヤの体積が非常に小さいので、コイルピッチを微細化してコイル巻き数を増やすことが必要である。
【0003】
機械巻き式のマイクロコイルは、直径1mm以下の磁性ワイヤにその表面にボビンを取り付けてそこにマイクロコイルを機械的に巻き付けた場合、エナメル線の線径を考慮するとコイルピッチ10μmが限界である。さらにボビンが必要であることを考慮すると、磁性ワイヤ径に100μmから200μm程度は増加してしまい、マイクロサイズ化は困難である。
【0004】
半導体プロセスを使ったマイクロコイルは、特許文献1(特許第5747294号)に開示されている。現在コイルピッチ3μmが実現されており、コイルピッチ10μmが限界の機械式コイルよりも有望である。しかし、基板上にマイクロコイルを形成しているために、その基板サイズは、幅200μm、厚み200μmが必要で、全体としては大きなものとなっている。カテーテル、胃カメラなど生体内医療機器内で、磁気センサ、マイクロ発電機、マイクロ振動子、あるいはマイクロ電磁石として使用する場合には、装入される空間の広さが極めて狭いために基板を省略し、マイクロコイルを磁性ワイヤに直接取り付けることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5747294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体プロセスで形成したマイクロコイルの基板を省略するためには、マイクロコイルを直接絶縁被覆付きの磁性ワイヤの表面にマイクロコイルを形成する必要がある。半導体プロセスは、平面基板にマイクロ配線パターンを焼き付ける技術であるが、その技術を使って3次元の磁性ワイヤ表面にマイクロコイルを焼き付ける新技術を開発することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の技術課題を鋭意検討した結果、磁性ワイヤを横方向に送りながら回転露光すれば、マイクロコイルが形成できるという本発明の技術的思想に至った。
その考え方は、まず、絶縁被膜付きの磁性ワイヤ表面に導電性薄膜を積層し、その上にレジストを塗布し、それをワイヤ送りながら回転露光を行い、その後エッチング処理をした後、コイルに保護被膜を取り付けてコイル付き磁気センサ素子を形成するというものである。
【0008】
コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤは、
磁性ワイヤを磁心として、導電性コイルとコイル電極、磁性ワイヤに通電するコイル電極、コイル電極およびワイヤ電極から外部接続用のホールおよび外部絶縁被膜からなるコイル付き磁気センサ素子を、磁性ワイヤに沿って多数個配置している。
磁性ワイヤは、絶縁被覆付きで直径5μm~1mmで、長さは50mm~1000mである。導電性コイルは、コイルピッチ0.5μm~5μmのCu,Al、Auなど導電性に優れた導電性材料よりなる。1個1個切断されたコイル付き磁気センサ素子の長さは、コイルピッチとコイルの巻き数とから1mm~10mmである。
外部絶縁被膜は、コイルを外部との間の電気絶縁し、さらに環境ダメージから膜を保護するもので、膜厚100μm以下である。
【0009】
ホトリソグラフィ技術で大きな曲率凹凸のある磁性ワイヤ表面にマイクロコイル配線をパターニングする場合、ワイヤの頂点以外は曲率によりマスクとワイヤレジスト被膜との間には間隔が生じて、露光時露光不足となるので、ワイヤを回転することで、露光幅が一定となるように露光時間と回転の送り速度を調整する。例えば、送りピッチ5μmの場合、1回転の回転速度と送り量5μmを同期させ、送り時間を露光時間と一致させることで実現できることを見出した。
【0010】
ワイヤ表面へ金属皮膜の蒸着は、真空チャンバーの中で、表面にむらなく蒸着するために回転装置により回転しながら行った。次いで、金属被膜の上にレジスト塗布、露光後現像を行う。絶縁被膜の上の回転露光マスクにコイル単体の巻き数に対応したスリットを設け、このマスクを使って回転露光し、つぎに露光箇所以外のレジストをエッチングで取り除き、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することで実現できることを見出した。
【0011】
最終製品である多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤは、ボビンに巻き付けて取り扱いを容易な梱包形状とした。
【0012】
コイル付き磁気センサ素子はいずれも外部環境への漏電を阻止し、かつ外部環境からの機械的、熱的、化学的ダメージを回避するために、回転移動しながら外部絶縁被膜を取り付ける。絶縁被膜の厚さは100μm以下、磁性ワイヤの直径に応じて好ましくは10μm~50μmである。
【0013】
コイルと外部機器との電気配線については、コイル電極の上部のホール(外部絶縁被膜に形成)を介して接続され、またはコイル電極の上部のホールに形成された接続用の金属蒸着やメッキ、コイル端子を介して接続される。
ワイヤと外部機器との電気配線については、ワイヤ電極の上部のホール(磁性ワイヤを被覆している絶縁材料と外部絶縁被膜に形成)を介して接続され、またはワイヤ電極の上部のホールに形成された接続用の金属蒸着やメッキ、ワイヤ端子を介して接続される。
これにより、それぞれの電極から外部絶縁被膜(絶縁材料含む)に開口されている外部端子に外部からの引き込み線と接合し、絶縁処理を施すことによって、マイクロコイルの直径をほとんど変えることなく電気配線処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
半導体プロセスを活用することによって、直径10μmで、コイルピッチ2μm程度のコイル付き磁気センサ素子を直接磁性ワイヤに取り付けることが実現できる。これにより、極小のサイズで磁気変換率が高いコイル付き磁気センサ素子は、生体内で使用される磁気センサの機能を高める上で、極めて有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤを示す概念の斜視図である。
図2】1個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤを示す概念の斜視図である。
図3】多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤのA1-A2線における断面図である。
図4】多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤのB1-B2線における断面図である。
図5】多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤのC1-C2線における断面図である。
図6】多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤの、コイル電極およびワイヤ電極が一直線上であるD1-D2線における断面図である。
図7】多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤの、コイル電極またはワイヤ電極が一直線上であるD1-D2線における断面図である。
図8】コイル電極およびコイル電極から接続されている外部コイル電極とからなる断面図である。
図9】ワイヤ電極およびワイヤ電極から接続されている外部ワイヤ電極とからなる断面図である。
図10】コイル付き磁気センサ素子の形成の概略である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤは、
磁性ワイヤと前記磁性ワイヤに沿って多数個のコイル付き磁気センサ素子とからなるコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤにおいて、
前記磁性ワイヤは、直径5μm~1mmの導電性アモルファス材料にてその外周は膜厚2μm以下のガラス、樹脂または酸化物等の絶縁性材料が被覆された絶縁被膜付き磁性ワイヤからなり、
前記コイル付き磁気センサ素子は、前記絶縁被膜付き磁性ワイヤの上面にCu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料により形成されたコイルピッチ2μm~10μmのコイルおよび2個のコイル電極を備え、
かつ、前記磁性ワイヤに通電するための2個のワイヤ電極を備え、
前記コイル付き磁気センサ素子の外周は、前記コイル電極および前記ワイヤ電極の上部に形成された外部との接続用の4個のホールを除いて外部絶縁被膜が形成されている、
ことを特徴とする。
【0017】
また、前記コイル電極と前記ワイヤ電極が同一線上に配置されていることを特徴とする。
【0018】
さらに、コイル付き磁気センサ素子は、前記コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤから、前記コイル付き磁気センサ素子を一個一個切り出して作製したことを特徴とする。
【0019】
コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤの製造方法は第1ステップよりなり、コイル付き磁気センサ素子の製造方法は第2ステップよりなる。
第1ステップは、コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤを形成する工程にて、
(1)絶縁被膜付き磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)の絶縁被膜内にワイヤ電極用のホールを形成し、
(2)前記ホールが形成された磁性ワイヤを蒸着装置の中に設置し、前記磁性ワイヤを回転子ながら、伝導性に優れた金属被膜をワイヤ表面に均一に蒸着し、
(3)続いて、金属被膜の上に一様なレジスト被膜を塗布し、
(4)一定速度で回転送りできるワイヤ送り装置を露光装置の中に取り付け、コイル露光用のスリットを有するマスクを使って、露光しながら前記磁性ワイヤを1回転し、その際の送り量は前記コイルのピッチ量とし、かつ露光時間は送り時間と一致させて露光を行ない、
続いて、コイル電極露光用のスリットを有するマスクを使って、コイル両端にコイル電極を露光し、
また、ワイヤ電極露光用のスリットを有するマスクを使って、ワイヤ電極を露光し、
(5)露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、前記磁性ワイヤの表面の絶縁被膜上に前記コイルおよび前記コイル電極を形成するとともに前記磁性ワイヤの金属表面上に前記ワイヤ電極を形成し、
(6)次に、前記コイルと外部との間を電気絶縁するための外部絶縁被膜を塗布し、
(7)前記外部絶縁被膜内に、前記コイル電極用のホールおよび前記ワイヤ電極用のホールを形成する、
ことを特徴とする。
【0020】
第2ステップは、第1ステップで作製したコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤを用いて、
(10)前記コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤについて、1個1個切断する個片化により作製する、
ことを特徴とする。
【0021】
以下、図1図9を用いて、詳細に説明する。
本発明の多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤ1は、図1に示すように、図2に示すコイル付き磁気センサ素子2(以下、磁気センサ素子という。)が多数個形成されている。ここで、多数個とは、コイルピッチとコイル巻き数によって決まる1個の磁気センサ素子2が数個~数万個からなることをいう。
図1図9に示すように、絶縁被膜付き磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)11(21~91を含む。)と磁性ワイヤ11と同心円状に螺旋巻回しているコイル12(22、42、62、72を含む。)とワイヤ電極111(211、511、611、914を含む。)とコイル電極121(221、321、721、821を含む。)と外部絶縁被膜33(43、53、63、83、93を含む。)から構成されている。
【0022】
<絶縁被膜付き磁性ワイヤ(磁性ワイヤ)>
絶縁被膜付き磁性ワイヤ11(21~91を含む。)は、磁性ワイヤ310(410~910を含む。)を磁心としてその外周に膜厚2mm以下のガラス、樹脂または酸化物等の絶縁性材料312(412~912を含む。)が被覆されている。絶縁性ガラスの場合は、0.5~1.5μmが好ましい。
磁性ワイヤ310の直径は5μm~1mmで、好ましくは10μm~100μmが好ましい。
長さは、1mm~1000mよりなる。有効透磁率は20以上で、好ましくは25~100である。
なお、膜厚2mm以下の絶縁性材料の被覆では不十分の場合には、この絶縁材料312の表面に樹脂等の絶縁材料を追加的に被覆し、その表面に導電性コイルを形成してもよい。
【0023】
<ワイヤ電極>
磁性ワイヤ11にパルス発振器からパルスを通電するために、導電性コイルの両端の外側には磁性ワイヤ11のワイヤ電極111が配置され、ワイヤ電極111はCu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料からなる。
ワイヤ電極611は、絶縁性材料512および外部絶縁被膜53に設けられたワイヤ電極用ホール51hを介して外部配線と直接接続される。
また、このワイヤ電極用ホール51hにメッキ等により導電性材料を充填してパッド915とし、このパッド915と外部配線とを接続してもよい。
ワイヤ電極のサイズは10μm~100μmとし、厚さは0.5μm~2μmとする。なお、ワイヤ電極用ホールのサイズはワイヤ電極のサイズにかかわらず外部配線との接続に応じて決められる。
【0024】
<導電性コイル(コイル)>
導電性コイル(コイル)12は、絶縁被覆付き磁性ワイヤ11を周回するコイル12とコイルの両端に配置されたコイル電極121とからなる。
また、導電性コイル12(32)は、コイルピッチは2μm~10μmのCu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料からなる。コイルピッチは微細なほど好ましいが、コイル抵抗を考慮して用途に応じて異なっている。コイル付き磁気センサ素子の用途には、コイルピッチは0.5μm~5μmが好ましい。
線幅はコイルピッチの略半分とし、線厚は0.5μm~2μmとする。
【0025】
<コイル電極>
コイル電極321は、コイル12と同じ導電性材料からなる。外部絶縁被膜33に設けられたコイル電極用ホール32hを介して外部配線と直接接続される。
また、このワイヤ電極用ホール32hにメッキ等により導電性材料を充填してパッド822とし、このパッド822と外部配線とを接続してもよい。
コイル電極のサイズは10μm~100μmとし、厚さは0.5μm~2μmとする。なお、コイル電極用ホールのサイズはコイル電極のサイズにかかわらず外部配線との接続に応じて決められる。
【0026】
ここで、磁性ワイヤ上のワイヤ電極およびコイル電極の位置関係は次のとおりである。
まず、コイルの両側にコイル電極を配置し、そのコイル電極の外側にそれぞれワイヤ電極が配置される。磁気検出素子の機能に基づくものである。
しかし、製造の観点からして、ワイヤ電極2個およびコイル電極2個はそれぞれ磁性ワイヤの長手方向の一直線上が好ましい(図7)。さらに、図1の直線10、図2の直線20、図6に示すように、4個の電極611、621はすべて一直線上が好ましい。
【0027】
<外部絶縁被膜>
外部絶縁被膜33は、導電性コイルを外部との間を電気絶縁し、さらに環境ダメージから導電性コイルおよび絶縁被膜自身を保護するもので、膜厚100μm以下とする。好ましくは、30μm~60μmである。
なお、外部絶縁被膜33には、ワイヤ電極用ホールおよびコイル電極用ホール、もしくはワイヤ電極用パッドおよびコイル電極用パッドの形成のために外部絶縁被膜は除かれている。
【0028】
<コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤおよび磁気センサ素子の製造方法>
図10のフロー図により、コイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤの製造方法を説明する。
製造方法は、ステップ1のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤを形成する工程、ステップ2のコイル付き磁気センサ素子を個片化する工程からなる。
【0029】
先ず、ステップ1のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤを形成する工程は次のとおりである。
(1)工程1001;
絶縁被膜付き磁性ワイヤ(以下、磁性ワイヤという。)に、コイル付き磁気センサ素子を構成するワイヤ電極用ホールを形成する。このホールにより、磁性ワイヤの金属表面が露出する。
絶縁被膜している絶縁性ガラスにホールを形成するため、フッ化水素ガスによる除去などを行なう。
【0030】
(2)工程1002;
ワイヤ電極用ホールが形成された磁性ワイヤを蒸着装置の中に設置する。
磁性ワイヤを回転しながら、磁性ワイヤを被覆している絶縁性ガラスの表面およびホール内の磁性ワイヤのワイヤ電極に対応する金属表面に導電性に優れた金属を均一に蒸着して金属被膜を形成する。導電性金属としてはCu、Al、Au等がある。
金属被膜の厚さは、0.5μm~2μmである。
【0031】
(3)工程1003;
続いて、前記金属被膜の上に一様なレジストを塗布してレジスト被膜を形成する。
塗布の方法は、磁性ワイヤにスプレーによる均一に塗布する方法や磁性ワイヤに塗布して回転により均一にする方法などがある。
【0032】
(4)工程1004;
露光装置の中に取り付けた一定速度で回転送りできるワイヤ送り装置とコイル露光用スリットを有するマスクを使って、露光しながら磁性ワイヤを1回転し、その際の送り量はコイルのピッチ量とし、かつ露光時間は送り時間と一致させてコイルを露光し、
続いて、コイル電極露光用スリットおよびワイヤ電極露光用スリットを有するマスクを使って、コイル電極およびワイヤ電極を露光する。
【0033】
(5)工程1005;
露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、絶縁性ガラスの表面にコイル、コイル電極を形成し、磁性ワイヤの所定の金属表面にワイヤ電極を形成する。
【0034】
(6)工程1006;
次に、全長に渡ってコイルを電気絶縁するために外部絶縁被膜用レジストを塗布する。
【0035】
(7)工程1007;
外部絶縁被膜内にコイル電極用ホールおよびワイヤ電極用ホールを各々2個形成する。
【0036】
(8)工程1008;
以上の工程により、多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤが形成される。
また、コイル電極用ホール内のコイル電極およびワイヤ電極用ホール内のワイヤ電極のそれぞれの上部のホール空隙に導電性材料をメッキ等により充填したパッドを形成したコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤとしてもよい。
【0037】
次に、ステップ2のコイル付き磁気センサ素子を個片化する工程は次のとおりである。
(9)工程1009;
多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤについて、1個1個切断する個片化をする。
【0038】
(10)工程1010;
個片化した素子をコイル付き磁気センサ素子とする。
【実施例
【0039】
[実施例1]
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例の多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤ1は図1に示し、磁気センサ素子を図2に示す。図3図9に断面図を示す。
【0040】
磁性ワイヤ11は、直径10μm、長さ100mの導電性アモルファス材料にてその外周は膜厚1.2μmの絶縁性ガラスが被覆されている。
【0041】
その磁性ワイヤ610の絶縁性ガラス被覆612の上面に導電性材料のAuによりコイルピッチ2μm、コイル巻き数400回のコイル62と2個のコイル電極621が形成されている。
そのコイル62の電気的絶縁と外部からの環境に対する保護のために厚さ30μmの絶縁性レジストを塗布した外部絶縁被膜63が形成されている。
【0042】
また、磁性ワイヤ11には、コイル62(コイル電極621)の外側に導電性材料のAuによりなるワイヤ電極611が計2個形成されている。
【0043】
コイル電極621およびワイヤ電極611はそれぞれ外部との接続のために外部絶縁被膜63にはコイル電極用ホール62hとワイヤ電極用のホール61hが形成されている。
すなわち、2個のコイル電極用ホール62hと2個のワイヤ電極用のホール61hの計4個のホールを除いて外部絶縁被膜63が形成されている。
【0044】
こうして、磁性ワイヤ11上に形成されたコイル12、コイル電極121、ワイヤ電極111よりなる1個のコイル付き磁気センサ素子2の長さは1mmとなり、1mの磁性ワイヤから切り出しにより100,000個のコイル付き磁気センサ素子2を得ることができた。
【0045】
[実施例2]
上記の実施例の多数個のコイル付き磁気センサとからなるコイル付き磁気センサを有する磁性ワイヤ1の製造方法について、図10図6および図1図5を用いて説明する。
磁性ワイヤ610は、直径10μm、長さ100mの導電性アモルファス材料にてその外周は膜厚1.2μmの絶縁性ガラスが被覆されている。
【0046】
まず、ワイヤ電極用のホールを形成する。
磁性ワイヤ610の金属と接合する2個のワイヤ用電極611を形成するために、磁性ワイヤを絶縁している絶縁被膜612にワイヤ用電極611用ホール61hを形成する。
【0047】
ホール61hが形成された磁性ワイヤを蒸着装置の中に設置し、磁性ワイヤを回転しながら、導電性に優れたAuをワイヤ表面に均一に蒸着し、膜厚は0.8μmにする。
続いて、Au被膜の上に塗布により一様なレジスト被膜を形成する。
【0048】
一定速度で回転送りできるワイヤ送り装置を露光装置の中に取り付け、コイル露光用のスリットを有するマスクを使って、露光しながら磁性ワイヤを1回転し、その際の送り量はコイルのピッチ量2μmとし、かつ露光時間は送り時間と一致させて露光を行なう。
続いて、コイル電極露光用のスリットを有するマスクを使って、コイル両端にコイル電極を露光し、
また、ワイヤ電極露光用のスリットを有するマスクを使って、ワイヤ電極を露光し、露光後に現像を行ない、パターン形成後、レジストが取り除かれた部位の金属を化学エッチングで除去することによって、磁性ワイヤの表面の絶縁被膜上にコイルおよびコイル電極を形成するとともに磁性ワイヤの金属表面上にワイヤ電極を形成する。
【0049】
次に、コイルと外部との間を電気絶縁するための外部絶縁被膜を塗布し、外部絶縁被膜内に、コイル電極用のホールおよびワイヤ電極用のホールを形成する、
【0050】
[実施例3]
本例は、実施例2にて、コイル電極用のホールおよびワイヤ電極用のホールを形成した多数個のコイル付き磁気センサ素子とからなるコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤについて、さらに次の工程を加える。
コイル電極用ホール内のコイル電極821およびワイヤ電極用ホール内のワイヤ電極914のそれぞれの上部のホール空隙にAuをメッキしたパッド822、915を形成する(図8図9)。
これにより、外部との接続にホールを経由することなく容易にすることができる。
【0051】
[実施例4]
実施例2および実施例3の後工程として、多数個のコイル付き磁気センサ素子よりなるコイル付き磁気センサ素子を有する長さ100mの磁性ワイヤから、コイル付き磁気センサ素子を1個1個切り出して個片化し、長さ1mmのコイル付き磁気センサ素子を作製した。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のコイル付き磁気センサ素子は、超小型で高性能な磁気センサ素子として、幅広い分野で適用を可能にするものである。
【符号の説明】
【0053】
1;多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤ
10;2個のワイヤ電極と2個のコイル電極を結ぶ同一線
11;絶縁被膜付き磁性ワイヤ
111;ワイヤ電極
12;導電性コイル(コイル)
121;コイル電極
2;コイル付き磁気センサ素子
20;2個のワイヤ電極と2個のコイル電極を結ぶ同一線
21;絶縁被膜付き磁性ワイヤ
211;ワイヤ電極
22;導電性コイル(コイル)
221;コイル電極
3;コイル付き磁気センサ素子(A1-A2断面)
31;絶縁被膜付き磁性ワイヤ
310;磁性ワイヤ
311;絶縁被膜(絶縁ガラス)
321;コイル電極
32h;コイル電極用ホール(ホール)
33;外部絶縁被膜
4;コイル付き磁気センサ素子(B1-B2断面)
41;磁性ワイヤ
410;磁性ワイヤ
412;絶縁被膜(絶縁ガラス)
42;コイル
43;外部絶縁被膜
5;コイル付き磁気センサ素子(C1-C2断面)
51;磁性ワイヤ
510;磁性ワイヤ
511;ワイヤ電極
51h;ワイヤ電極用ホール(ホール)
512;絶縁被膜(絶縁ガラス)
53;外部絶縁被膜
6;コイル付き磁気センサ素子(D1-D2断面)
61;磁性ワイヤ
610;磁性ワイヤ
611;ワイヤ電極
61h;ワイヤ電極用ホール(ホール)
612;絶縁被膜(絶縁ガラス)
62;コイル
621;コイル電極
62h;コイル電極用ホール(ホール)
63;外部絶縁被膜
7;コイル付き磁気センサ素子
71;磁性ワイヤ
710;磁性ワイヤ
711;ワイヤ電極
72;コイル
721;コイル電極
72h;コイル電極用ホール(ホール)
73;外部絶縁被膜
8;コイル付き磁気センサ素子
81;絶縁被膜付き磁性ワイヤ
810;磁性ワイヤ
812;絶縁被膜(絶縁ガラス)
821;コイル電極
822;コイル電極用パッド(パッド)
83;外部絶縁被膜
9;コイル付き磁気センサ素子
91;磁性ワイヤ
910;磁性ワイヤ
912;絶縁被膜(絶縁ガラス)
914;ワイヤ電極
915;ワイヤ電極用パッド(パッド)
93;外部絶縁被膜



【要約】      (修正有)
【課題】表面に直接半導体プロセスによりコイル付き磁気センサ素子を形成する磁性ワイヤ、その製造方法及びコイル付き磁気センサ素子を提供する。
【解決手段】磁性ワイヤに沿った多数個のコイル付き磁気センサ素子を有する磁性ワイヤ1において、磁性ワイヤは、直径5μm~1mmの導電性アモルファス材料にてその外周は膜厚2μm以下のガラス、樹脂または酸化物等の絶縁性材料が被覆された絶縁被膜付き磁性ワイヤ11からなり、コイル付き磁気センサ素子は、絶縁被膜付き磁性ワイヤの上面にCu、Al、Au等の導電性に優れた導電性材料により形成されたコイルピッチ2μm~10μmのコイル12及び2個のコイル電極121並びに磁性ワイヤに通電するための2個のワイヤ電極111を備え、外周には、コイル電極及びワイヤ電極の上部に形成される外部との接続用の4個のホールを除いて外部絶縁被膜が形成される。
【選択図】図1
図1
図2
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図9
図10