(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】弾丸捕捉装置及び弾丸捕捉システム
(51)【国際特許分類】
F41J 13/00 20090101AFI20240730BHJP
F41J 11/00 20090101ALI20240730BHJP
【FI】
F41J13/00
F41J11/00
(21)【出願番号】P 2019208537
(22)【出願日】2019-11-19
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000106955
【氏名又は名称】シバタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【氏名又は名称】小林 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100206195
【氏名又は名称】山本 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100224650
【氏名又は名称】野口 晴加
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】西本 安志
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0292818(US,A1)
【文献】実開平02-077494(JP,U)
【文献】米国特許第04201385(US,A)
【文献】特開2006-343086(JP,A)
【文献】米国特許第04164901(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41J 13/00
F41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾丸捕捉装置であって、
輸送用コンテナより構成される本体部と、
前記本体部の少なくとも一つの壁の一部を覆うように配置される弾丸捕捉構造体とを備え、
前記弾丸捕捉構造体は、弾丸が貫通しない強度に形成された特殊鋼板と、
前記特殊鋼板の一方面を覆う捕捉弾性体とを備え、
前記弾丸捕捉構造体は、前記本体部の一方の壁の外面の少なくとも一部を覆うように、前記捕捉弾性体が前記本体部の外方を向いた状態で配置される、弾丸捕捉装置。
【請求項2】
弾丸捕捉装置であって、
輸送用コンテナより構成される本体部と、
前記本体部の少なくとも一つの壁の一部を覆うように配置される弾丸捕捉構造体とを備え、
前記弾丸捕捉構造体は、弾丸が貫通しない強度に形成された特殊鋼板と、
前記特殊鋼板の一方面を覆う捕捉弾性体とを備え、
前記弾丸捕捉構造体は、前記本体部の一方の壁の内面の少なくとも一部を覆うように、前記捕捉弾性体が前記本体部の内方を向いた状態で配置され、
前記一方の壁に対向する他方の壁の外面の少なくとも一部を覆うように衝撃吸収弾性体が配置される、弾丸捕捉装置。
【請求項3】
前記他方の壁及び前記衝撃吸収弾性体には、脱着自在であって前記他方の壁の外方と内方とを連通可能にする抜き取り箇所が少なくとも一つ形成され、
前記抜き取り箇所の形成位置と前記弾丸捕捉構造体との間には標的が配置される、請求項
2記載の弾丸捕捉装置。
【請求項4】
前記本体部は更に、外気を前記本体部の内方に給気すると共に、前記本体部の内部の空気を、フィルターを介して鉛を除去して前記本体部の外方に排気する給排気装置を備える、
請求項2又は請求項3に記載の弾丸捕捉装置。
【請求項5】
前記本体部の内部には、前記弾丸捕捉構造
体の補修部品が保管される、請求項1から請求項
4のいずれかに記載の弾丸捕捉装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載の弾丸捕捉装置を複数用いて構成される弾丸捕捉システムであって、
前記本体部の各々は、上下又は左右において連続して並べられる、弾丸捕捉システム。
【請求項7】
上下又は左右に隣接する前記本体部間の空隙を塞ぐ範囲に前記弾丸捕捉構造体からなる捕捉手段が設けられる、請求項
6記載の弾丸捕捉システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は弾丸捕捉装置及び弾丸捕捉システムに関し、特に屋外で行う射撃訓練に用いる訓練場で弾丸を捕捉する弾丸捕捉装置及び弾丸捕捉システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
警察官や自衛官が射撃訓練を行う場合、弾丸の飛散を防止するために屋内型の専用施設を使うことが多い。しかし、屋内型の専用施設の建設には広大な土地が必要となり、離島等、建設用の土地の確保が困難な場所には屋内型の専用施設が建設できないという問題がある。
【0003】
一方、屋外での射撃訓練には保安距離の確保等の観点から適切に、弾丸の飛散防止のために標的背面にバックストップを設ける必要がある。バックストップとしては、土のう袋や、例えば特許文献1に示すようなフォークリフト等で運搬できる移動式の箱型の停弾装置が提案されている。
【0004】
図8は、そのような停弾装置の構成を示す斜視図である。
【0005】
図を参照して、停弾装置80は、第1鋼板81a及び81bと第2鋼板82とからなる筒状体83を有する。第1鋼板81a及び81bは弾丸84が大きな損傷なく貫通可能な強度に設定され、第2鋼板82は弾丸84が貫通しない強度に設定されている。第1鋼板81a及び81bの射手側の面は、粘弾性を有する被覆材85により覆われ、筒状体83には捕捉材86が充填される。尚、停弾装置80には、フォークリフトによる運搬を容易にするために、フォークリフトの爪部を挿入できる筒状の運搬用治具87a及び87bが底板の下端に備えられている。
【0006】
被覆材85及び第1鋼板81a又は81bを貫通して筒状体83内部に侵入した弾丸84の勢いは、捕捉材86の粘弾性から生じる抵抗により吸収され、弾丸84は筒状体83内部にて捕捉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような停弾装置80は、運搬及び設置のためにフォークリフトなどの特殊車両が必要となり、射撃訓練を行う場所に停弾装置80のみならず特殊車両の輸送も必要とするものであった。又、損傷した停弾装置80を補修するための補修部品を輸送するための車両なども別途に必要とし、任意の場所での使用に手間とコストがかかるものであった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、任意の場所への設置が容易となる弾丸捕捉装置及び弾丸捕捉システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、弾丸捕捉装置であって、輸送用コンテナより構成される本体部と、本体部の少なくとも一つの壁の一部を覆うように配置される弾丸捕捉構造体とを備え、弾丸捕捉構造体は、弾丸が貫通しない強度に形成された特殊鋼板と、特殊鋼板の一方面を覆う捕捉弾性体とを備え、弾丸捕捉構造体は、本体部の一方の壁の外面の少なくとも一部を覆うように、捕捉弾性体が本体部の外方を向いた状態で配置されるものである。
【0013】
このように構成すると、一方の壁にて弾丸が捕捉される。
【0014】
請求項2記載の発明は、弾丸捕捉装置であって、輸送用コンテナより構成される本体部と、本体部の少なくとも一つの壁の一部を覆うように配置される弾丸捕捉構造体とを備え、弾丸捕捉構造体は、弾丸が貫通しない強度に形成された特殊鋼板と、特殊鋼板の一方面を覆う捕捉弾性体とを備え、弾丸捕捉構造体は、本体部の一方の壁の内面の少なくとも一部を覆うように、捕捉弾性体が本体部の内方を向いた状態で配置され、一方の壁に対向する他方の壁の外面の少なくとも一部を覆うように衝撃吸収弾性体が配置されるものである。
【0015】
このように構成すると、弾丸が本体部の内部にて捕捉される。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、他方の壁及び衝撃吸収弾性体には、脱着自在であって他方の壁の外方と内方とを連通可能にする抜き取り箇所が少なくとも一つ形成され、抜き取り箇所の形成位置と弾丸捕捉構造体との間には標的が配置されるものである。
【0017】
このように構成すると、抜き取り箇所の除去により標的の設置が完了する。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明の構成において、本体部は更に、外気を本体部の内方に給気すると共に、本体部の内部の空気を、フィルターを介して鉛を除去して本体部の外方に排気する給排気装置を備えるものである。
【0019】
このように構成すると、捕捉した弾丸及び煙から生じる鉛を、本体部の内部の空気から除去できる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、本体部の内部には、弾丸捕捉構造体の補修部品が保管されるものである。
【0021】
このように構成すると、弾丸捕捉装置と共に補修部品が移動する。
【0022】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の弾丸捕捉装置を複数用いて構成される弾丸捕捉システムであって、本体部の各々は、上下又は左右において連続して並べられるものである。
【0023】
このように構成すると、複数の本体部により大きな弾丸捕捉システムの形成が可能となる。
【0024】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の構成において、上下又は左右に隣接する本体部間の空隙を塞ぐ範囲に弾丸捕捉構造体からなる捕捉手段が設けられるものである。
【0025】
このように構成すると、空隙が捕捉手段により塞がれる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、トラック、トレーラー、クレーン等の一般的な車両で輸送及び設置が可能となるので、任意の場所への設置が容易となる。
【0027】
又、上記の効果に加えて、一方の壁にて弾丸が捕捉されるので、弾丸が飛散しにくくなる。
【0028】
請求項2記載の発明は、弾丸が本体部の内部にて捕捉されるので、弾丸が飛散しにくくなる。
【0029】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、抜き取り箇所の除去により標的の設置が完了するので、標的の設置が容易となり、又、標的の回収が不要となる。更に、抜き取り箇所の装着時には弾丸捕捉装置としても利用できる。
【0030】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の発明の効果に加えて、捕捉した弾丸及び煙から生じる鉛を、本体部の内部の空気から除去できるので、訓練終了後に本体部の内部に入る人に、鉛の影響が出ない。
【0031】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、弾丸捕捉装置と共に補修部品が移動するので、訓練現場での補修が可能となる。
【0032】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、複数の本体部により大きな弾丸捕捉システムの形成が可能となるので、弾丸がより飛散しにくくなる。又、弾丸捕捉システムのレイアウトの幅が広がる。
【0033】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の効果に加えて、空隙が捕捉手段により塞がれるので、空隙の通過による弾丸の飛散を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による弾丸捕捉装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1で示したII-IIラインの端面図である。
【
図3】この発明の第2の実施の形態による弾丸捕捉装置の概略構成を示す斜視図であって、第1の実施の形態の
図1に対応する図である。
【
図4】
図3で示したIV-IVラインの端面図である。
【
図5】この発明の第3の実施の形態による弾丸捕捉装置の概略構成を示す斜視図であって、第2の実施の形態の
図3に対応する図である。
【
図6】
図5で示したVI-VIラインの端面図である。
【
図7】この発明の第4の実施の形態による弾丸捕捉システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、この発明の第1の実施の形態による弾丸捕捉装置の概略構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1で示したII-IIラインの端面図である。
【0036】
これらの図を参照して、射撃目的となる、弾丸2が貫通可能な強度に形成された標的1a、1b及び1cの各々の後方に、弾丸捕捉装置10が設置されている。弾丸捕捉装置10は、輸送用コンテナより構成される本体部11と、標的1a、1b及び1cの各々に対向する本体部11の一方の壁12の外面の全面を覆うように配置される弾丸捕捉構造体13とを備える。弾丸捕捉構造体13は、弾丸2が貫通しない強度に形成された特殊鋼板14と、特殊鋼板14の一方面を覆う捕捉弾性体15とを備え、捕捉弾性体15が本体部11の外方を向いた状態で配置されている。本体部11となる輸送用コンテナは鋼鉄製であってISO規格の40フィートコンテナである。特殊鋼板14は例えば、厚さ8mm以上のスウェーデン鋼が用いられる。捕捉弾性体15は例えば、ゴムチップを接着剤等で固化させて厚さ5~10cmのシート状にしたものが用いられる。一方の壁12と弾丸捕捉構造体13(特殊鋼板14及び捕捉弾性体15)との各々は、図示しないボルト、接着、溶接等で互いが接した状態で固定されている。
【0037】
このように構成すると、
図2の一点鎖線及び破線で示したように、標的1bに向けて放たれた弾丸2が標的1bと捕捉弾性体15とを貫通して特殊鋼板14に着弾し、仮に跳弾したとしても捕捉弾性体15内で捕捉される。即ち、本体部11の一方の壁12の側にて弾丸2が捕捉されるので、弾丸2が飛散しにくくなる。又、本体部11が輸送用コンテナより構成されていることからトラック、トレーラー、クレーン等の一般的な車両で輸送及び設置が可能となるので、弾丸捕捉装置10の任意の場所への設置が容易となる。
【0038】
尚、本体部11の内部には捕捉弾性体15の補修部品19(ゴムチップ等)が保管されている。このように構成すると、弾丸捕捉装置10と共に補修部品19が移動するので、訓練現場での補修及び交換が可能となる。又、補修が可能になることにより長期の練習期間を設けることができる。
【0039】
図3は、この発明の第2の実施の形態による弾丸捕捉装置の概略構成を示す斜視図であって、第1の実施の形態の
図1に対応する図であり、
図4は、
図3で示したIV-IVラインの端面図である。
【0040】
これらの図を参照して、弾丸捕捉装置20は、本体部21と弾丸捕捉構造体23とを備え、弾丸捕捉構造体23は本体部21の一方の壁22の内面の全面を覆うように、捕捉弾性体25が本体部21の内方を向いた状態で配置され、一方の壁22に対向する他方の壁26の外面の全面を覆うように衝撃吸収弾性体27が配置されたものとなっている。衝撃吸収弾性体27は例えば、ゴムチップを接着剤等で固化させて厚さ3~5cmのシート状にしたものが用いられる。尚、弾丸捕捉装置20は、他方の壁26が標的1a、1b及び1cの各々と対向するように設置されている。又、本体部21は、給気口51より外気を本体部21の内方に給気すると共に、本体部21の内部の空気を、フィルター52を介して鉛を除去して本体部21の外方に排気する給排気装置50を備える。本体部21の内部には何も保管されていない。一方の壁22と弾丸捕捉構造体23(特殊鋼板24及び捕捉弾性体25)との各々、他方の壁26と衝撃吸収弾性体27との各々は、図示しないボルト、接着、溶接等で互いが接した状態で固定されている。その他の構成要素は第1の実施の形態による弾丸捕捉装置10と同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。
【0041】
このように構成すると、
図4の一点鎖線及び破線で示したように、標的1bに向けて放たれた弾丸2が標的1b、衝撃吸収弾性体27、他方の壁26及び捕捉弾性体25を貫通して特殊鋼板24に着弾し、仮に跳弾したとしても捕捉弾性体25内で捕捉される。即ち、弾丸2が本体部21の内部にて捕捉されるので、弾丸2が飛散しにくくなる。又、給排気装置50により、捕捉した弾丸2及び鉛を含んだ煙から拡散した鉛を、本体部21の内部の空気から除去できるので、訓練終了後に本体部21の内部に入る人に、鉛の影響が出ない。
【0042】
図5は、この発明の第3の実施の形態による弾丸捕捉装置の概略構成を示す斜視図であって、第2の実施の形態の
図3に対応する図であり、
図6は、
図5で示したVI-VIラインの端面図である。
【0043】
これらの図を参照して、弾丸捕捉装置30において、鋼鉄よりなる他方の壁36及びゴムチップを接着剤等で固化させて厚さ3~5cmのシート状にしたものよりなる衝撃吸収弾性体37には、他方の壁36の外方と内方とを連通可能にする抜き取り箇所38a、38b及び38cが形成されている。尚、抜き取り箇所38a、38b及び38cはいずれも、他方の壁36及び衝撃吸収弾性体37に対して脱着自在に構成されている。又、抜き取り箇所38a、38b及び38cの形成位置(抜き取り箇所38bが除去されている部分においては窓部39b)と弾丸捕捉構造体33との間に標的1a、1b及び1cがそれぞれ配置されている。標的1a、1b及び1cの各々は抜き取り箇所38a、38b及び38cの各々を除去して窓部39a、39b及び39cの各々を出現させることにより弾丸捕捉装置30の外方からの視認が可能となる。標的1bに向けて放たれた弾丸2は、窓部39bを通過して標的1b及び捕捉弾性体35を貫通して特殊鋼板34に着弾し、捕捉弾性体35内で捕捉される。その他の構成要素は第2の実施の形態による弾丸捕捉装置20と同一であるため、ここでの説明は繰り返さない。
【0044】
このように構成すると、抜き取り箇所38a、38b及び39bの各々の除去により標的1a、1b及び1cの各々の設置が完了するため、標的1a、1b及び1cの各々の設置が容易となり、又、標的1a、1b及び1cの各々の回収が不要となる。更に、抜き取り箇所38a、38b及び39bの各々の装着時には第2の実施の形態による弾丸捕捉装置20としても利用できる。
【0045】
図7は、この発明の第4の実施の形態による弾丸捕捉システムの概略構成を示す模式図である。
【0046】
図1、
図3、
図5及び
図7を参照して、弾丸捕捉システム40は、第1の実施の形態による弾丸捕捉装置10a、10b、10c及び10dと、第2の実施の形態による弾丸捕捉装置20と、第3の実施の形態による弾丸捕捉装置30とを用いて構成される。尚、これらの弾丸捕捉装置10a、10b、10c、10d、20及び30の本体部11a、11b、11c、11d、21及び31はいずれも、上述したように輸送用コンテナより構成されていることから、上下又は左右において連続して並べられる。弾丸捕捉システム40の組み立ては、クレーンを用いて本体部11a、11b、11c、11d、21及び31の各々を設置及び載置して行われる。
【0047】
このように構成すると、複数の本体部11a、11b、11c、11d、21及び31により大きな弾丸捕捉システム40の形成が可能となるので、弾丸2がより飛散しにくくなる。又、弾丸捕捉システム40のレイアウトの幅が広がる。具体的に、弾丸捕捉システム40においては、弾丸捕捉装置10bの上に弾丸捕捉装置10aが、弾丸捕捉装置20の上に弾丸捕捉装置30が、弾丸捕捉装置10dの上に弾丸捕捉装置10cが、それぞれ重ねて並べられている。又、弾丸捕捉装置及20及び弾丸捕捉装置30の左右において弾丸捕捉装置10b及び弾丸捕捉装置10aと、弾丸捕捉装置10c及び10cとが成す標的1a、1b及び1cの角度がそれぞれ鈍角となるように、弾丸捕捉装置10b及び弾丸捕捉装置10aと、弾丸捕捉装置10d及び弾丸捕捉装置10cとが、それぞれ設置されている。
【0048】
本体部11a、11b、11c、11d、21及び31間の左右の空隙41a及び41cの全部を塞ぐ範囲には、捕捉手段として平板状に形成された弾丸捕捉構造体43a及び43bが配置される。弾丸捕捉構造体43aは弾丸が貫通しない強度に形成された特殊鋼板44aと、特殊鋼板44aの一方面を覆う捕捉弾性体45aとを備え、特殊鋼板44aが空隙41aの側を向いた状態で配置されている。弾丸捕捉構造体43bも特殊鋼板44b及び捕捉弾性体45bを備え、弾丸捕捉構造体43aと同様に空隙43bに対向して配置されている。特殊鋼板44a及び44bは例えば、厚さ8mm以上のスウェーデン鋼が用いられる。捕捉弾性体45a及び45bは例えば、ゴムチップを接着剤等で固化させて厚さ5~10cmのシート状にしたものが用いられる。弾丸捕捉装置10a、10b、20及び30と弾丸捕捉構造体43a(特殊鋼板44a及び捕捉弾性体45a)との各々、弾丸捕捉装置10c、10d、20及び30と弾丸捕捉構造体43b(特殊鋼板44b及び捕捉弾性体45b)との各々は、図示しないボルト、接着、溶接等で互いが接した状態で固定されている。このように構成すると、空隙41a及び41bが捕捉手段である弾丸捕捉構造体43a及び43bにより塞がれるので、空隙41a及び41bの通過による弾丸2の飛散を防止できる。
【0049】
尚、上記の各実施の形態では、弾丸捕捉構造体は一方の壁の外面又は内面の全面を覆うように配置されるものであったが、少なくとも一部を覆うものであればよく、又、覆う壁が複数に及んでもよい。
【0050】
又、上記の各実施の形態では、特殊鋼板は特定材質及び寸法のものとしていたが、同等の効果が得られるものであれば一般的な鋼板を厚くしたものや、重ね合わせて厚みを増したものでもよい。
【0051】
更に、上記の各実施の形態では、捕捉弾性体及び衝撃吸収弾性体は特定材質及び寸法のものとしていたが、Regupol(登録商標)を用いたものや、同等の効果が得られるものであればその他のものであってもよい。
【0052】
更に、上記の各実施の形態では、本体部は特定寸法の輸送用コンテナより構成されるとしていたが、その他の寸法の輸送用コンテナより構成されてもよい。
【0053】
更に、上記の第2の実施の形態及び第3の実施の形態では、本体部の内部には何も保管されていなかったが、弾丸捕捉構造体及び衝撃吸収弾性体の補修部品や予備の標的などの消耗品が保管されていてもよい。尚、射撃訓練時には保管物は一旦本体部より取り出す。
【0054】
更に、上記の第2の実施の形態及び第3の実施の形態では、給排気装置は給気口とフィルターとを備えるものであったが、本体部内方の空気から鉛を除去して排気できるものであればどのような構成であってもよい。
【0055】
更に、上記の第2の実施の形態及び第3の実施の形態では、本体部は給排気装置を備えるものであったが、給排気装置が無くてもよい。
【0056】
更に、上記の第3の実施の形態では、抜き取り箇所が三つ形成されていたが、少なくとも一つ形成されていればよい。
【0057】
更に、上記の第4の実施の形態では、弾丸捕捉システムは特定のレイアウトで構成されていたが、2つ以上の弾丸捕捉装置を用いて上下又は左右において連続的に並べる他のレイアウトで構成されたものであってもよい。
【0058】
更に、上記の第4の実施の形態では、弾丸捕捉システムを構成する弾丸捕捉装置は異なる実施の形態のものを混合したものと
なっていたが、単一の実施の形態による弾丸捕捉装置のみで構成してもよい。又、いずれの実施の形態による弾丸捕捉装置を組み合わせたものであってもよい。
【0059】
更に、上記の第4の実施の形態では、捕捉手段は空隙の全部を塞ぐ範囲に配置されていたが、一部のみを塞ぐ範囲に配置されてもよい。又、捕捉手段を上下の弾丸捕捉装置の本体部の空隙を塞ぐ範囲に配置してもよい。
【0060】
更に、上記の第4の実施の形態では、弾丸捕捉システムは捕捉手段が設けられるものであったが、捕捉手段が無くてもよい。
【0061】
更に、上記の各実施の形態では、本体部は弾丸捕捉装置を構成するものであったが、弾丸捕捉装置として使わない時は、輸送用コンテナとして活用してもよい。
【0062】
更に、上記の各実施の形態では、弾丸捕捉装置は射撃訓練用の弾丸捕捉装置として利用されるものであったが、小銃に対する防護壁として利用することもできる。
【0063】
更に、上記の各実施の形態では、特殊鋼板と捕捉弾性体とは互いが接した状態で配置されていたが、例えば枠体を用いて特殊鋼板と捕捉弾性体との間に隙間を作った状態で配置されてもよい。このように構成すると弾丸は、捕捉弾性体内で捕捉される、又は、特殊鋼板と捕捉弾性体との隙間に残ることで捕捉される。
【0064】
更に、上記の各実施の形態では、本体部の各々の壁と弾丸捕捉構造体又は衝撃吸収弾性体とは互いが接した状態で配置されていたが、本体部の各々の壁と弾丸捕捉構造体又は衝撃吸収弾性体との間に隙間があってもよい。
【0065】
更に、上記の第4の実施の形態では、弾丸捕捉装置と弾丸捕捉構造体とは互いが接した状態で配置されていたが、弾丸捕捉装置と弾丸捕捉構造体との間に隙間があってもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…弾丸捕捉装置
11…本体部
12…一方の壁
13…弾丸捕捉構造体
14…特殊鋼板
15…捕捉弾性体
19…補修部品
20…弾丸捕捉装置
21…本体部
22…一方の壁
23…弾丸捕捉構造体
24…特殊鋼板
25…捕捉弾性体
26…他方の壁
27…衝撃吸収弾性体
30…弾丸捕捉装置
31…本体部
33…弾丸捕捉構造体
34…特殊鋼板
35…捕捉弾性体
36…他方の壁
37…衝撃吸収弾性体
38a、38b、38c…抜き取り箇所
39a、39b、39c…窓部
40…弾丸捕捉システム
41a、41b…空隙
43a、43b…弾丸捕捉構造体
44a、44b…特殊鋼板
45a、45b…捕捉弾性体
50…給排気装置
51…給気口
52…フィルター
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。