(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25D 7/00 20060101AFI20240730BHJP
A23L 3/36 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
F25D7/00 A
A23L3/36 Z
(21)【出願番号】P 2020114172
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591002212
【氏名又は名称】株式会社品川工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 隆士
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-218374(JP,A)
【文献】特開2006-051037(JP,A)
【文献】特開2020-046121(JP,A)
【文献】実開昭55-096378(JP,U)
【文献】実開昭56-166479(JP,U)
【文献】実開平02-040401(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 7/00
A23L 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を真空冷却する装置であって、
前記食品を格納する冷却庫と、
前記冷却庫内を減圧する減圧手段と、
前記冷却庫内に蒸気を供給する蒸気供給手段と、
前記冷却庫内
の内壁面を加熱する
、蒸気配管が収容された蒸気式プレートコイルを含む加熱手段と、
前記冷却庫内に供給された蒸気が、
前記冷却庫内で凝縮することなく、前記食品の内部で凝縮するように、前記減圧手段
によって前記冷却庫内を減圧するとともに、前記蒸気供給手段によって前記冷却庫内に蒸気を供給する前に
前記加熱手段
によって前記冷却庫内を加熱するように制御する制御手段と
を備える、真空冷却装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記冷却庫内に格納されている前記食品の内部の温度が前記食品の外部の温度より低くなるように、前記減圧手段および前記加熱手段を制御する、請求項1に記載の真空冷却装置。
【請求項3】
前記冷却庫内に外気を導入する外気導入手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記冷却庫内に蒸気が供給されている間、前記減圧手段による前記冷却庫内の圧力低下が抑制されるように、前記外気導入手段をさらに制御する、請求項1
また2に記載の真空冷却装置。
【請求項4】
前記減圧手段であって、複数の真空ポンプを含む減圧手段と、
前記減圧手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、第1の期間の間、前記複数の真空ポンプのうちの少なくとも第1の真空ポンプおよび第2の真空ポンプを動作させ、前記第1の期間に続く第2の期間の間、前記複数の真空ポンプのうちの前記第1の真空ポンプを含む少なくとも1つの真空ポンプの動作を停止させ、かつ、前記複数の真空ポンプのうちの前記第2の真空ポンプを含む少なくとも1つの真空ポンプの動作を継続させるように、前記複数の真空ポンプを制御する
、請求項1~3のいずれか一項に記載の真空冷却装置。
【請求項5】
前記真空冷却装置は、
前記冷却庫内の飽和状態を検出する検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記検出手段が前記冷却庫内の飽和状態を検出したことに応答して前記第1の期間から前記第2の期間に移行するように、前記複数の真空ポンプを制御する、請求項
4に記載の真空冷却装置。
【請求項6】
前記第2の真空ポンプは、凝縮した水を排出する排水機能を有し、
前記第1の真空ポンプは、凝縮した水の排水機能を有しない、請求項
4または
5に記載の真空冷却装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記蒸気の供給を前記冷却庫内の気圧が飽和蒸気圧を下回らないタイミングで行うように前記蒸気供給手段を制御するように構成されている、または前記冷却庫内の気圧が飽和蒸気圧より低下しないように前記減圧手段を制御するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の真空冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空冷却装置に関し、特に、食品を格納する冷却庫内への蒸気の供給、並びに冷却庫内の減圧に用いる複数の真空ポンプの駆動制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から真空冷却は、微妙な食品の味を損なわずに食品を冷却できる方式として知られている。
【0003】
このような真空冷却は、クロワッサン、デニッシュ、食パンなどのパン類の冷却に用いることで、時間のかかる送風冷却を用いる場合の品質や衛生面の問題を解消できる。
【0004】
なお、特許文献1には、真空冷却装置として水エゼクターあるいは水封式真空ポンプを有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述の真空冷却をパン類の冷却に用いた場合、パン内部での水分の沸騰により、歩留まり低下(具体的には、パンの体積当たりの重量の減少)、さらに水分蒸発によるクラスト部(例えば、食パンの耳部)の硬化が生ずるといった問題がある。
【0007】
本発明は、食品を真空冷却する際に食品の水分蒸発を抑制することができる真空冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の項目を提供する。
【0009】
(項目1)
食品を真空冷却する装置であって、
前記食品を格納する冷却庫と、
前記冷却庫内を減圧する減圧手段と、
前記冷却庫内に蒸気を供給する蒸気供給手段と、
前記冷却庫内を加熱する加熱手段と、
前記冷却庫内に供給された蒸気が、減圧された前記冷却庫内で凝縮することなく、前記食品の内部で凝縮するように、前記減圧手段および前記蒸気供給手段および前記加熱手段のうちの少なくとも1つを制御する制御手段と
を備えた、真空冷却装置。
【0010】
(項目2)
前記制御手段は、前記冷却庫内に格納されている前記食品の内部の温度が前記食品の外部の温度より低くなるように、前記減圧手段および前記加熱手段を制御する、項目1に記載の真空冷却装置。
【0011】
(項目3)
前記加熱手段は、板状部材の内部に蒸気配管が収容された蒸気式プレートコイルを含み、
前記蒸気式プレートコイルは、前記冷却庫内の壁面に取り付けられている、項目1または2に記載の真空冷却装置。
【0012】
(項目4)
前記冷却庫内に外気を導入する外気導入手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記冷却庫内に蒸気が供給されている間、前記減圧手段による前記冷却庫内の圧力低下が抑制されるように、前記外気導入手段をさらに制御する、項目1~3のいずれか一項に記載の真空冷却装置。
【0013】
(項目5)
食品を真空冷却する真空冷却装置であって、
前記食品を格納する冷却庫と、
前記冷却庫内を減圧する減圧手段であって、複数の真空ポンプを含む減圧手段と、
前記減圧手段を制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、第1の期間の間、前記複数の真空ポンプのうちの少なくとも第1の真空ポンプおよび第2の真空ポンプを動作させ、前記第1の期間に続く第2の期間の間、前記複数の真空ポンプのうちの前記第1の真空ポンプを含む少なくとも1つの真空ポンプの動作を停止させ、かつ、前記複数の真空ポンプのうちの前記第2の真空ポンプを含む少なくとも1つの真空ポンプの動作を継続させるように、前記複数の真空ポンプを制御する、真空冷却装置。
【0014】
(項目6)
前記真空冷却装置は、
前記冷却庫内の飽和状態を検出する検出手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記検出手段が前記冷却庫内の飽和状態を検出したことに応答して前記第1の期間から前記第2の期間に移行するように、前記複数の真空ポンプを制御する、項目5に記載の真空冷却装置。
【0015】
(項目7)
前記第2の真空ポンプは、凝縮した水を排出する排水機能を有し、
前記第1の真空ポンプは、凝縮した水の排水機能を有しない、項目5または6に記載の真空冷却装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、食品を真空冷却する際に食品の水分蒸発を抑制することができる真空冷却装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1の真空冷却装置100を実施形態1として説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の真空冷却装置200を実施形態2として説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の真空冷却装置を実施形態3として説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施形態3の真空冷却装置300で用いられる冷却庫の構造の一例(冷却庫110の構造)を具体的に説明するための平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態3の真空冷却装置300で用いられる冷却庫の構造の他の例(冷却庫110aの構造)を具体的に説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0019】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本発明の第1の真空冷却装置100を実施形態1として説明するための模式図である。
【0021】
実施形態1で説明する発明は、食品を真空冷却する際に食品内部での沸騰による水分蒸発を抑制することができる真空冷却装置を提供することを課題とし、
食品Fを真空冷却する装置100であって、
食品Fを格納する冷却庫110と、
冷却庫110内を減圧する減圧手段120と、
冷却庫内に蒸気を供給する蒸気供給手段130と、
冷却庫内を加熱する加熱手段140と、
冷却庫内に供給された蒸気が、減圧された冷却庫内で凝縮することなく、食品Fの内部で凝縮するように、減圧手段120および蒸気供給手段130および加熱手段140のうちの少なくとも1つを制御する制御手段160と
を備えた、真空冷却装置100を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0022】
従って、本発明の真空冷却装置100は、食品Fを冷却庫110内で真空冷却する際に、冷却庫110内に供給された蒸気を、減圧された冷却庫110内で凝縮させることなく、食品Fの内部で凝縮させるという機能を達成するものであれば、その他の構成は、特に限定されるものではなく、任意であり得る。
【0023】
すなわち、冷却庫110、減圧手段120、蒸気供給手段130、加熱手段140、および制御手段160はそれぞれ、種々の具体的な構成を採用することができる。
【0024】
(冷却庫110)
冷却庫110は、食品Fを格納可能な筐体(冷却庫本体)を有し、食品Fを冷却庫本体内に出し入れ可能な構造であって、内部の減圧が可能な気密性を有するものであれば、その形状および材質は限定されない。例えば、冷却庫110は、中空の直方体、立方体、あるいは球体などの形状を有する冷却庫本体と、冷却庫本体に形成された開口を開閉する蓋体とを有していてもよい。
【0025】
また、冷却庫110は、冷却庫本体に食品Fを載せる棚が設けられたものでもよいし、食品Fを載せた移動式の搬入ラック40をそのまま冷却庫本体内に運び込むことが可能な構造でもよい。
【0026】
例えば、食品Fが食パンである場合、冷却庫110内の棚は、食パンを焼くときに用いるケース(食パン焼型)をそのまま載せることができるように複数段設けられていてもよいし、焼きあがった食パンを運ぶ移動式の搬入ラック40にも、食パン焼型を載せることができるように棚が複数段設設けられていてもよい。
【0027】
(減圧手段120)
減圧手段120は、冷却庫110内を減圧可能なものであれば具体的な構成は任意であり得る。例えば、減圧手段120は、冷却庫110内の空気Arの排気により冷却庫110内を減圧する減圧機121と、冷却庫110と減圧機121とを連結する配管(排気配管)123と、排気配管123の一部に設けられた開閉弁122とを有していてもよい。ここで、減圧機は、油式真空ポンプ、ドライ式真空ポンプ、水封式真空ポンプなどの真空ポンプでもよいし、水エゼクター、蒸気エゼクター、空気エゼクターなどの真空ポンプ以外の減圧機でもよい。排気配管123には、減圧機121が停止しても、減圧された冷却庫110へ気体が逆流しないように逆止弁が設けられていてもよい。この場合、必ずしも排気配管123に開閉弁122を設ける必要はない。減圧手段は1台であってもよいし、2台以上の複数設けていてもよい。
【0028】
(蒸気供給手段130)
蒸気供給手段130は、冷却庫110内に蒸気Stを供給可能なものであれば具体的な構成は任意であり得る。例えば、蒸気供給手段130は、蒸気発生源20と冷却庫110内とを連結する第1の蒸気配管131と、第1の蒸気配管131の一部に設けられた、制御手段160により制御される開閉弁132とを有していてもよい。あるいは、蒸気供給手段130は、蒸気発生源20を含むものでもよく、蒸気発生源は、ボイラーでもよいし、あるいは超音波で蒸気を発生するものでもよい。
【0029】
(加熱手段140)
加熱手段140は、冷却庫110内を加熱可能なものであればよく、具体的な構成は限定されるものではない。
【0030】
例えば、加熱手段140は、発熱体として蒸気式プレートコイルを有するものでもよいし、電熱ヒータを有するものでもよい。例えば、加熱手段140が蒸気式プレートコイル141を有する場合、加熱手段140と蒸気供給手段130とで蒸気発生源20を共用してもよい。この場合、加熱手段140は、蒸気式プレートコイル141と蒸気発生源20とを接続するは第2の蒸気配管143と、第2の蒸気配管143の一部に設けられた、制御手段160により制御される開閉弁142とを有していてもよい。あるいは、加熱手段140が電熱ヒータを有する場合は、加熱手段140は蒸気発生源20を利用せず、加熱ヒータへの通電が制御手段160によりオンオフされるようになっていてもよい。
【0031】
蒸気式プレートコイルは、板状部材の内部に蒸気配管が収容されたものであり、例えば、冷却庫110内の壁面に取り付けられ得る。また、冷却庫110内に食品Fを載せる棚を設けている場合には、棚に取り付けられていてもよい。
【0032】
(外気導入手段150)
さらに、真空冷却装置100は、冷却庫110内に外気Arを導入する外気導入手段150をさらに備えてもよい。この場合、制御手段160は、冷却庫110内に蒸気Stが供給されている間、減圧手段120による冷却庫110内の圧力低下が冷却庫110内への外気Arの導入により抑制されるように、外気導入手段150をさらに制御するものとしてもよい。この外気導入手段150の構成は限定されるものではく、任意であり得る。外気導入手段150は、例えば、外気を冷却庫110内に取り入れるための配管(リーク配管)151と、この配管151に取り付けられた開閉弁(リーク弁)152とを有するものであるが、これには限定されず、冷却庫110の一部に形成された孔を開閉蓋で開閉するようにしたものでもよい。
【0033】
(その他の構成)
本発明の真空冷却装置は、冷却庫110内の食品Fの温度を測定する温度センサおよび/または冷却庫110内の圧力を測定する圧力センサを有している。
【0034】
(制御手段160)
制御手段160は、冷却庫110内に供給された蒸気を、減圧された冷却庫110内で凝縮させないで食品Fの内部で凝縮させるという機能を達成することができる限り、3つの手段(減圧手段120、蒸気供給手段130、加熱手段140)をどのように制御するかは問わない。
【0035】
すなわち、上記のように蒸気の凝縮を制御する機能を達成するように3つの手段を制御すること、この機能を達成するように3つの手段のうちの任意の2つの手段を制御すること、この機能を達成するように3つの手段のうちの任意の1つの制御することのいずれもが本発明の範囲内であるというべきである。
【0036】
例えば、制御手段160は、冷却庫内に格納されている食品の内部の温度が食品の外部の温度より低くなるように、減圧手段および加熱手段を制御するものでもよい。
【0037】
なお、蒸気の凝縮を制御する機能を達成するように3つの手段を制御する具体的な方法は後述する実施形態3で詳しく説明する。
【0038】
また、制御手段160の回路構成は任意であり、特に限定されるものではない。例えば、制御手段160は、プロセッサを用いて構成されたものでもよいし、あるいは、タイマーとリレー回路を用いて構成されたものでもよい。
【0039】
この制御手段160は、
図1に示すように、真空冷却装置100の操作盤160a内に設けられていてもよいが、操作盤160aとは別に設けられていてもよい。例えば、操作盤160a内には、
図1に示すように、電源10からの電力を真空冷却装置100の各部に配電する配電部160bおよび操作者が操作する操作部160cがさらに設けられ、操作部160cから操作信号が制御手段160に出力されるようになっていてもよい。あるいは、操作盤の代わりに、操作部としてのキーボードおよび制御手段としての演算部を備えたコンピュータシステム(パーソナルコンピュータ)と、コンピュータシステムとは別に設けられた配電部とを用いてもよい。
【0040】
(実施形態2)
図2は、本発明の第2の真空冷却装置200を実施形態2として説明するための模式図である。
【0041】
実施形態2で説明する発明は、負圧タンクを用いずに真空冷却の初期に冷却庫210内を急激に減圧し、その後冷却庫210内をさらに減圧することができる真空冷却装置を提供することを課題とし、
食品Fを真空冷却する装置200であって、
食品を格納する冷却庫210と、
冷却庫内を減圧する減圧手段であって、複数の真空ポンプを含む減圧手段220と、
減圧手段220を制御する制御手段260と
を備え、
制御手段260は、第1の期間の間、複数の真空ポンプのうちの少なくとも第1の真空ポンプ221および第2の真空ポンプ222を動作させ、第1の期間に続く第2の期間の間、複数の真空ポンプのうちの第1の真空ポンプ221を含む少なくとも1つの真空ポンプの動作を停止させ、かつ、複数の真空ポンプのうちの第2の真空ポンプ222を含む少なくとも1つの真空ポンプの動作を継続させるように、複数の真空ポンプを制御する、真空冷却装置を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0042】
第1の期間から第2の期間へ移行するタイミングは、任意であり得る。例えば、所定の時間であってもよいし、冷却庫が所定の圧力になった時点であってもよいし、食品の温度が所定の温度になった時点であってもよいし、飽和状態になった時点であってもよい。好ましくは、飽和状態になった時点である。
【0043】
従って、本発明の真空冷却装置200は、食品Fを冷却庫110内で真空冷却する際に、第1の期間の間、複数の真空ポンプのうちの少なくとも第1の真空ポンプ221および第2の真空ポンプ222を動作させ、第1の期間に続く第2の期間の間、複数の真空ポンプのうちの少なくとも第1の真空ポンプ221の動作を停止させ、かつ、複数の真空ポンプのうちの少なくとも第2の真空ポンプ222の動作を継続させるように、制御手段260が複数の真空ポンプを制御するものであれば、その他の構成は、特に限定されるものではない。
【0044】
(冷却庫210)
冷却庫210は、
図1を用いて説明した真空冷却装置100の冷却庫110と同様、食品Fを出し入れ可能に格納できる構造であって、内部の減圧が可能な気密性を有するものであれば、その他の構成については任意であり得る。
【0045】
(減圧手段220)
減圧手段220は複数の真空ポンプを含むものであればその他の構成は限定されるものではなく、任意であり得る。
【0046】
例えば、減圧手段220では、第1の期間に続く第2の期間の間に停止させる第1の真空ポンプと第2の期間の間にも動作を継続させる第2の真空ポンプとは、異なる種類の真空ポンプでもよいし、同じ種類の真空ポンプでもよい。2台以上設けることにより、初期の排気速度を高めることが可能となる。
【0047】
例えば、第1の真空ポンプは、凝縮した水を冷却庫内から排出する排水機能を有さず、第2の真空ポンプは、この排水機能を有していてもよい。
【0048】
あるいは、第1の真空ポンプおよび第2の真空ポンプともに、凝縮した水を冷却庫内から排出する排水機能を有していてもよいし、あるいは、第1の真空ポンプおよび第2の真空ポンプのいずれもこの排水機能を有していなくてもよい。排水機能を有さないポンプのみを用いる場合には、凝縮した水を溜めるタンクを備える必要がある。
【0049】
好ましい実施形態において、第1の真空ポンプ221は、凝縮した水を冷却庫内から排出する排水機能を有さないドライ式真空ポンプあるいは油式真空ポンプであり、第2の真空ポンプ222は、凝縮した水を冷却庫内から排出する排水機能を有する水封式真空ポンプである。ドライ式真空ポンプは、凝縮した水を排水する機能を有していないが、水封式ドライポンプに比べて減圧能力が高いので早期に所望の減圧状態を達成することが可能であるため、第1の期間に用いる第1の真空ポンプとして有用である。それに対して、水封式真空ポンプは、ドライポンプに比べて減圧能力は劣るが、凝縮した水を排水する機能を有しているため、第2の期間も使用する第2の真空ポンプとして有用である。
【0050】
このように、凝縮水を排水する機能を有さない第1のポンプと凝縮水を排水する機能を有する第2のポンプとを共用することにより、排気作業を第1のポンプで行い、食材から発生した飽和蒸気が凝縮した水の排水作業を第2のポンプで行うことが可能となり、効率的な真空冷却が可能となる。
【0051】
なお、第1の真空ポンプ221および第2の真空ポンプ222と冷却庫210とをつなぐ配管には逆止弁221a、222aが設けられていることが好ましい。また、水封式真空ポンプ222には、これを駆動するための水を溜める貯水タンク222bが接続されている。
【0052】
なお、
図2中、
図1と同じ符号は、
図1の真空冷却装置100におけるものと同じものを示し、
図2における操作盤260a、配電部260b、操作部260c、配管223、弁222は、
図1における操作盤160a、配電部160b、操作部160c、配管123、弁122に相当するものである。
【0053】
(制御手段260)
制御手段260は、上記のように複数の真空ポンプを制御するものであればその他の構成は限定されるものではなく、任意であり得る。
【0054】
例えば、制御手段260は、冷却庫内の飽和状態が検出されたことに応答して第1の期間から第2の期間に移行するように、複数の真空ポンプを制御するものでもよい。ここで、飽和状態は、冷却庫210内の圧力を検出する圧力センサ11と食品Fの芯温を測定する温度センサ12とを用いて検出してもよい。本発明において、「飽和状態」とは、冷却庫内が真空ポンプにて排気されるにつれて真空度が低下し、これにより沸点も低下することにより、その時点での食材の温度が冷却庫内の真空度での沸点よりも高い状況において、食材の水分が沸騰(飽和)する状態のことをいう。この状態において、食材から飽和蒸気が発生し、発生した飽和蒸気が、真空経路(冷却庫から減圧手段に至る経路)に排気され、その経路の途中に設けられているコンデンサ(凝縮用熱交換器)で凝縮される。従って、好ましい実施形態においては、その凝縮された凝縮水は、凝縮用熱交換器の下流側に設けられている水封式ポンプなど排水機能を有する真空ポンプで排水される。
【0055】
あるいは、制御手段260は、冷却庫内の温度あるいは圧力が所定値以下となったことに応答して第1の期間から第2の期間に移行するように、複数の真空ポンプを制御するものでもよい。あるいは、制御手段260は、冷却開始から所定時間が経過したときに第1の期間から第2の期間に移行するように、複数の真空ポンプを制御するものでもよい。
【0056】
さらに、制御手段260の回路構成は、上述した真空冷却装置100における制御手段160と同様に任意であり、特に限定されるものではない。
【0057】
ただし、以下のさらなる実施形態の説明では、実施形態3として、上述した
図1で説明した実施形態1の真空冷却装置の構成と
図2で説明した実施形態2の真空冷却装置の構成とを包含する真空冷却装置300を挙げ、この実施形態3の真空冷却装置300における減圧手段320は、減圧機として、蒸気エゼクター323、凝縮用熱交換器(コンデンサ)324、ドライ式真空ポンプ221、水封式真空ポンプ222を備えたものを挙げる。
【0058】
(実施形態3)
図3は、本発明の第3の真空冷却装置300を実施形態3として説明するための図であり、真空冷却装置300の具体的な構成を模式的に示している。
【0059】
この実施形態3の真空冷却装置300は、
図1に示す第1の真空冷却装置100および
図1に示す第2の真空冷却装置200の両方の構成を有するものである。
【0060】
この真空冷却装置300は、第1の真空冷却装置100における減圧手段120として、
図2に示す第2の真空冷却装置200における減圧手段220を備え、さらにこの減圧手段200を蒸気エゼクター323および凝縮用熱交換器324を有するものとしたものである。また、この真空冷却装置300の制御手段360は、真空冷却装置100の制御手段160を、冷却庫110内での蒸気の凝縮を制限する制御に加えて、真空冷却装置200の制御手段260における真空ポンプの動作を切り換える制御を行うようにしたものである。
【0061】
すなわち、この実施形態3の真空冷却装置300は、
図3に示すように、食品Fを真空冷却する装置であって、
図1で説明した冷却庫110、蒸気供給手段130,加熱手段140および外気導入手段150を備えている。また、この真空冷却装置300は、冷却庫110内の圧力を検出する圧力センサ11および食品Fの芯温を検出する温度センサ12を備えている。
【0062】
この真空冷却装置300は、減圧手段として、
図2で説明した減圧手段220に蒸気エゼクター323および凝縮用熱交換器324を組み合わせた減圧手段320を備え、真空冷却装置300での真空冷却を制御する制御手段として、
図1の真空冷却装置100と同様に冷却庫110内での蒸気の凝縮を抑制する制御と、
図2の真空冷却装置200と同様に複数の真空ポンプの動作を切り換える制御とを行う制御手段360を備えている。
【0063】
以下、実施形態3の真空冷却装置300における冷却庫110、減圧手段320、蒸気供給手段130、加熱手段140、外気導入手段150、および制御手段360を具体的に説明する。
【0064】
(冷却庫110)
図4は、実施形態3の真空冷却装置300で用いられる冷却庫の構造の一例(冷却庫110の構造)を具体的に説明するための平面図である。
【0065】
冷却庫110は、
図4に示すように、中空の筐体からなる冷却庫本体111と、冷却庫本体111の前面の開口111aを開閉する蓋部材(図示せず)とを有する。この冷却庫本体111の内壁面111bおよび天井内面111cには、上述した加熱手段140の発熱体としての蒸気式プレートコイル141が取り付けられており、真空冷却装置300の外部の蒸気供給源20で発生された蒸気が蒸気配管143を介して蒸気式プレートコイル141に供給されるようになっている。蒸気配管143には電磁弁142が取り付けられており、電磁弁142の開閉は制御手段360により制御されるようになっている。なお、蒸気式プレートコイル141に供給された蒸気は、蒸気式プレートコイル141内を内部配管の経路に沿って移動した後、排出配管144およびドレイン出口103を介して外部に排出されるようになっている。
【0066】
また、冷却庫本体111は、例えば、食品Fである食パンを収容したパン焼き型50を格納した移動可能な搬入ラック40が格納可能な構造となっている。この搬入ラック40には、パン焼き型50を載せる複数段の棚41が設けられている。なお、冷却庫110の構造は、
図4で説明した、パン焼き型50を搬入ラック40ごと冷却庫本体111に格納可能なものに限定されず、パン焼き型50毎に格納可能なものであってもよい。
【0067】
図5は、実施形態3の真空冷却装置300で用いられる冷却庫の構造の他の例を説明するための図であり、
図5(a)は、冷却庫110aをその正面の開口側から見た正面図、
図5(b)は、冷却庫110aを側面側から見た構造を示す側面図である。
【0068】
この冷却庫110aでは、蒸気式プレートコイル141がパン焼き型50を個別に載せる棚112として複数段設けられている。従って、この冷却庫110aでは、食品(食パン)Fを収容したパン焼き型50を棚112である蒸気式プレートコイル141上に個別に収容することができる。なお、
図5中、112aは、蒸気配管143を蒸気式プレートコイル141に連結するための連結部分である。この蒸気配管143は、蒸気供給源20の蒸気吐出管21が加熱手段140側と減圧手段320(蒸気供給手段130)側とに分岐する分岐点Bp1より加熱手段140側に位置する部分の配管であり、蒸気吐出管21における分岐点Bp1と蒸気供給源20との間の部分には蒸気供給の元栓としての根元弁21が設けられている。根元弁21は制御手段360により制御されるようになっている。
【0069】
(減圧手段320)
この減圧手段320は、第1の真空ポンプとしてドライ式真空ポンプ221を備えるとともに、第2の真空ポンプとして水封式真空ポンプ222を備える。さらに、減圧手段320は蒸気エゼクター323を備えている。蒸気エゼクター323は排気配管123を介して冷却庫110に接続されており、排気配管123に設けられている開閉弁122の開閉により蒸気エゼクター323が冷却庫110内に繋がるようになっている。この開閉弁122は空気圧で駆動するものであり、エアー供給源30から電磁弁102を介して供給される圧縮空気により開閉するようになっている。蒸気エゼクター323の駆動蒸気の入り口323bには、蒸気発生源20から電磁弁323aを介して蒸気が供給されるようになっている。これらの電磁弁102および電磁弁323aは制御手段360により制御されるようになっている。
【0070】
なお、
図3中、太い点線は、真空冷却装置300における蒸気の経路を示すとともに、この経路に沿って設けられている蒸気供給用の配管を示す。太い一点鎖線は、真空冷却装置300におけるエアー供給源30から排気配管123に設けられている電磁弁122に駆動用圧縮空気を送る経路を示すとともに、この経路に沿って配置されている圧縮空気の供給用配管を示す。さらに、細い点線は、配管内での蒸気の経路を模式的に示し、細い一点鎖線は、凝縮用熱交換器324内での冷却水の経路を模式的に示す。
図3中、Bp1およびBp2は蒸気の経路の分岐点を示し、Jpは蒸気の経路の合流点を示す。
【0071】
この蒸気エゼクター323の下流側には、蒸気エゼクター323に流入した蒸気を凝縮させる凝縮用熱交換器324が接続されている。この凝縮用熱交換器324の気体排出口324aには、逆止弁221aを介してドライ式真空ポンプ221が接続されており、さらに、凝集用熱交換器324の底面排出口324bには水封式真空ポンプ222が逆止弁222aを介して接続されている。
【0072】
水封式真空ポンプ222には、その駆動に用いる水を溜める貯水タンク222bが接続されており、貯水タンク222bには、貯水量が一定量を超えないように排水するオーバーフロー配管222dが設けられており、さらに貯水タンク222bの水を抜くためのドレンコック222cが取り付けられている。
【0073】
なお、この実施形態の真空冷却装置300では、減圧手段320は、真空ポンプとして1つのドライ式真空ポンプ221と1つの水封式真空ポンプ222とを有しているが、真空ポンプとして2以上の水封式真空ポンプ222あるいは2以上のドライ式真空ポンプ221を有していてもよい。また、減圧手段320には、ドライ式真空ポンプ221および水封式真空ポンプ222の一方のものが、少なくとも1つのその他方のものとともに複数設けられていてもよい。
【0074】
さらに、減圧手段320は、必ずしも蒸気エゼクター323および凝縮用熱交換器324を有するものである必要はない。
【0075】
従って、減圧手段320は、初期の冷却庫110内の減圧の際に高い減圧能力を発揮でき、その後は減圧能力を落としてさらに冷却庫110内の減圧を徐々に行うことができるものであればよく、少なくとも2以上の真空ポンプを有するものであればよい。
【0076】
(蒸気供給手段130)
蒸気供給手段130は、蒸気発生源20から蒸気の分岐点Bp2から冷却庫110の蒸気入口111dに至る配管(第1の蒸気配管)131と、第1の蒸気配管131の一部に設けられた開閉弁132とを有し、蒸気発生源20で発生された蒸気が真空冷却装置300の冷却庫110に供給されるようになっている。この開閉弁132は制御手段360により制御されるようになっている。
【0077】
なお、この真空冷却装置300の蒸気供給手段130は、蒸気供給源を有するものではないが、蒸気供給手段130は蒸気供給源を有していてもよい。
【0078】
(加熱手段140)
加熱手段140は、冷却庫110内に発熱体として設けられた蒸気式プレートコイル141と、蒸気発生源20からの蒸気の分岐点Bp1から蒸気式プレートコイル141に至る配管(第2の蒸気配管)143と、第2の蒸気配管143の一部に設けられた開閉弁142とを有し、蒸気供給源20で発生された蒸気が蒸気式プレートコイル141に供給されて蒸気式プレートコイル141が発熱することにより、冷却庫110内が加熱されるように構成されている。この開閉弁142は制御手段360により制御されるようになっている。
【0079】
蒸気式プレートコイル141は、板状部材の内部に蒸気配管が収容されたものであり、
図4に示すように、冷却庫110内の天井内面および側壁内面に取り付けられている。なお、
図3では、説明の都合上、冷却庫110の天井内面に設けられている蒸気式プレートコイル141のみ図示している。
【0080】
(外気導入手段150)
外気導入手段150は、外気を冷却庫110内に取り入れるための配管(リーク配管)151と、この配管151に取り付けられた開閉弁(リーク弁)152とを有するものである。このリーク弁152の開閉は制御手段360により制御されるようになっている。なお、外気導入手段150は、このような構成に限定されず、冷却庫110の一部に形成された孔を開閉蓋で開閉するようにしたものでもよい。
【0081】
(制御手段360)
制御手段360は、冷却庫内110に供給された蒸気を、減圧された冷却庫110内で凝縮させることなく、食品Fの内部で凝縮させるように、減圧手段320および蒸気供給手段130および加熱手段140および外気導入手段150を制御する。
【0082】
具体的には、制御手段360は、蒸気式プレートコイル141への蒸気の供給により蒸気式プレートコイル141が発熱して冷却庫110内が加熱されるように加熱手段140の制御を行う。なぜなら、冷却庫110内が加熱されることにより、冷却庫110内での蒸気の凝縮を抑制することが可能であるためである。
【0083】
また、制御手段360による減圧手段320の制御は、冷却庫110内での蒸気の凝縮が起こりやすくすることが可能である。なぜなら、冷却庫110内の減圧を行う際に、冷却庫110内の気圧が飽和蒸気圧より低下しないように減圧手段320を制御することで、食品Fで水分が蒸発しにくくなり、食品Fでの水分の減少が抑制されるからである。
【0084】
さらに、制御手段360による蒸気供給手段130の制御は、冷却庫110内での蒸気の凝縮が起こりやすくすることが可能である。
【0085】
なぜなら、冷却庫110への蒸気の供給が、冷却庫110内の気圧が飽和蒸気圧を下回らないタイミングで、つまり、冷却庫110内での蒸気の凝縮が起こりやすい状態で、行われるように蒸気供給手段130を制御することにより、供給された蒸気が食品Fで凝縮しやすくなり、食品Fでの水分の補給効果が得られるからである。
【0086】
なお、制御手段360による外気導入手段150の制御は、減圧手段320の制御と合わせて行う場合に冷却庫110内で蒸気が凝縮しやすくすることが可能である。
【0087】
さらに、制御手段360は、第1の期間の間、ドライ式真空ポンプ221および水封式真空ポンプ222を動作させ、第1の期間に続く第2の期間の間、ドライ式真空ポンプ221の動作を停止させ、かつ、水封式真空ポンプ222の動作を継続させるように、2台の真空ポンプを制御する。ここで、制御手段360は、検出手段が冷却庫内の飽和状態を検出したことに応答して第1の期間から第2の期間に移行するように、複数の真空ポンプを制御する。
【0088】
次に、本実施形態3の真空冷却装置300の動作を説明する。
【0089】
この真空冷却装置300の動作スイッチが操作者により操作盤360aにおいて操作されると、制御手段360は、減圧手段320の制御により冷却庫110内の減圧を行う前に、蒸気供給源20の根元弁21を開け、さらに、加熱手段140の制御により開閉弁142を開けて蒸気供給源20から蒸気を冷却庫110内の蒸気式プレートコイル141に導入することにより冷却庫110を加熱する。
【0090】
このように冷却庫110内が加熱された状態で冷却庫110内に食品Fが格納されると、制御手段360はさらなる操作者の操作に応答して減圧手段320の制御により、電磁弁102を開けて空気圧で作動する開閉弁122を動作させて開閉弁122による排気配管123の遮断状態を解除し、同時に減圧手段320における電磁弁323aを開けて蒸気エゼクター323を駆動させ、さらに、制御手段360は、ドライ式真空ポンプ221および水封式真空ポンプ222を駆動させる。
【0091】
そして、減圧の開始から予め食品Fの種類に応じて設定されている減圧開始からの所定時間が経過するか、冷却庫内の雰囲気が所定の圧力、所定の温度のいずれかに達すると、制御手段360は、蒸気供給手段130を制御することにより、蒸気配管131の開閉弁132を開けて冷却庫110内に蒸気を供給する。ここで、所定の時間、所定の圧力および所定の温度は冷却する食材の種類などに応じて任意に調整され得る。例えば、減圧開始1分程度から蒸気が供給される場合もあるし、繊細に時間をかけた冷却を行う場合においては減圧開始から5分以上経過した状況においても蒸気が供給され得る。
【0092】
このとき、冷却庫110内、特に、蒸気が凝縮しやすい冷却庫110内の内壁面が加熱手段140により加熱されているので、冷却庫110内に供給された蒸気が凝縮して減圧手段320により冷却庫110内から蒸気エゼクター323側に吸引されるのを抑制できる。また、冷却庫110の内壁面が加熱されているので、冷却庫110の内壁面から離れた食品Fの配置部分では、内壁面より温度が低くなっている。その結果、供給された蒸気は、冷却庫110の内壁面側で凝縮することなく、冷却庫110内の食品Fの届くことにより食品Fは水分が補給される状態となる。そのため、冷却庫110内の急速な減圧により生ずる沸騰により食品Fで水分が失われるのを効果的に抑制することが達成される。
【0093】
さらに、制御手段360は、蒸気供給手段130の制御と同時に、外気導入手段150の制御を行うことにより、リーク配管151のリーク弁152を開けて、減圧されている冷却庫110内に外気をリークさせて急激な減圧状態を緩和させる。これにより冷却庫110内に供給された蒸気の凝縮がさらに抑制されることとなる。
【0094】
その後、冷却庫110内の圧力および温度の少なくとも一方が、予め食品Fの種類に応じて設定されている範囲より低くなったときに、あるいは、予め食品Fの種類に応じて設定されている時間が経過したとき、制御手段360は、蒸気供給手段130の制御により開閉弁132を閉じることにより、冷却庫110内への蒸気の供給を停止する。このとき同時に、制御手段360は、外気導入手段150の制御によりリーク弁151を閉じることにより冷却庫110内への外気のリークを停止する。
【0095】
さらに、制御手段360は、圧力センサ11および温度センサ12の検出出力に基づいて、冷却庫110内で蒸気が凝縮した凝縮水が再度沸騰する飽和状態に達したことを検出すると、減圧手段320の制御によりドライ式真空ポンプ221の動作を停止し、同時に、開閉弁323aを閉じて蒸気エゼクター323を停止し、水封式真空ポンプ222の動作のみを継続させる。
【0096】
これにより冷却庫110内で飽和状態により生じた凝縮水をドライ式真空ポンプ221に侵入させることなく、目標の冷却温度まで食品Fを真空冷却することができる。
【0097】
その後、食品Fが目標温度まで冷却されると、制御手段360は、減圧手段320の制御により水封式真空ポンプ222の動作を停止させ、冷却庫110内に外気導入手段150の制御により外気を導入して冷却庫110内の気圧を大気圧まで回復させる復圧動作を行う。
【0098】
そして、冷却庫110内の復圧が完了した時点で操作者は冷却庫110の扉を開けて格納してある食品Fを取り出す。
【0099】
このように本実施形態3の真空冷却装置300では、制御手段360は、冷却庫内110に供給された蒸気が、減圧された冷却庫110内で凝縮させることなく、食品Fの内部で凝縮されるように、減圧手段320および蒸気供給手段130および加熱手段140および外気導入手段150を制御する。
【0100】
その結果、本発明の真空冷却装置は、食品を真空冷却する際に食品内部での水分蒸発を抑制することができる。
【0101】
すなわち、制御手段360は、蒸気式プレートコイル141への蒸気の供給により蒸気式プレートコイル141が発熱して冷却庫110内が加熱されるように加熱手段140の制御を行うので、冷却庫110内での蒸気の凝縮が冷却庫110内の加熱により抑制されることとなる。
【0102】
また、制御手段360は、冷却庫110内の減圧を行う際に、冷却庫110内の気圧が飽和蒸気圧より低下しないように減圧手段320を制御することで、食品F内部での沸騰が抑制される。
【0103】
さらに、制御手段360は、冷却庫110への蒸気の供給が、冷却庫110内の気圧が飽和蒸気圧を下回らないタイミングで、つまり、冷却庫110内での蒸気の凝縮が起こりやすい状態で、行われるように蒸気供給手段130を制御するので、供給された蒸気が食品Fに到達しやすくなり、これにより食品Fでの水分の補給効果が得られる。
【0104】
さらに、制御手段360は、蒸気供給手段130の制御と同時に、減圧されている冷却庫110内に外気をリークさせて減圧状態が緩和するように外気導入手段150の制御を行うので、冷却庫110内に供給された蒸気の凝縮がさらにしやすくなる。
【0105】
さらに、制御手段360は、冷却開始後の第1の期間の間、ドライ式真空ポンプ221および水封式真空ポンプ222を動作させ、第1の期間に続く第2の期間の間、ドライ式真空ポンプ221の動作を停止させ、かつ、水封式真空ポンプ222の動作を継続させるように、2台の真空ポンプを制御する。ここで、制御手段360は、検出手段が冷却庫内の飽和状態を検出したことに応答して第1の期間から第2の期間に移行するように、複数の真空ポンプを制御する。第1の真空ポンプにドライ式真空ポンプを使用しているため、水封式真空ポンプよりも早く減圧することが可能である。また、第2の真空ポンプに水封式真空ポンプを使用しているため、飽和状態により発生した凝縮水を良好に排水することが可能となる。
【0106】
これにより、冷却庫110内が飽和状態するまでの初期の冷却期間(第1の期間)で急速に冷却を行うことができ、冷却庫110内が飽和状態に達した後は、凝縮水を空気と共に排出可能な水封式真空ポンプ222により真空ポンプの機能障害を引き起こすことなく目標の温度まで真空冷却を行うことができる。
【0107】
なお、上述した実施形態では、冷却庫110内に供給された蒸気を、減圧された冷却庫110内で凝縮させないで食品Fの内部で凝縮させるという機能を達成するように減圧手段120、蒸気供給手段130、加熱手段140を制御する実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0108】
上述したように冷却庫110内に供給された蒸気を、減圧された冷却庫110内で凝縮させないで食品Fの内部で凝縮させるという機能を達成することができる限り、3つの手段をどのように制御するかは問わない。
【0109】
例えば、冷却庫110内に供給された蒸気を、減圧された冷却庫110内で凝縮させないで食品Fの内部で凝縮させるという機能を達成するように3つの手段を制御すること、
上記の機能を達成するように3つの手段のうちの任意の2つの手段を制御すること、
上記の機能を達成するように3つの手段のうちの任意の1つの制御すること
のいずれもが本発明の範囲内であるというべきである。
【0110】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、真空冷却装置の分野において、食品を真空冷却する際に食品内部での沸騰による水分蒸発を抑制することができる真空冷却装置を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0112】
100、200、300 真空冷却装置
110、110a 冷却庫
120、220、320 減圧手段
221 ドライ式真空ポンプ(第1の真空ポンプ)
222 水封式真空ポンプ(第2の真空ポンプ)
130 蒸気供給手段
140 加熱手段
141 蒸気式プレートコイル
150 外気導入手段
160、260、360 制御手段