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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】クランプ
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/44 20060101AFI20240730BHJP
   F16B 2/18 20060101ALI20240730BHJP
   B66C 1/48 20060101ALI20240730BHJP
   B66C 1/62 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B66C1/44 N
F16B2/18 A
B66C1/48
B66C1/62 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020128186
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025396
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】520282487
【氏名又は名称】有限会社早津工業
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】早津 富士男
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-065290(JP,U)
【文献】実開平06-056353(JP,U)
【文献】実開昭51-023332(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00- 3/20
F16B 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物の被保持物を鉛直方向に沿う状態で挟み込み、前記鉛直方向上向きに吊り上げるためのクランプであって、
折り曲げ部と、前記折り曲げ部の両端から連続し対向する一対の側板部と、を有する本体と、
前記一対の側板部に渡された軸周りに回転可能に保持され、前記折り曲げ部との間に、前記鉛直方向に沿う前記被保持物を収容する収容空間を形成するロック部材と、を備え、
前記ロック部材は、
長手方向および短手方向を有する板状部材であり、前記軸が挿入される回転孔を有する前記長手方向の一端と、前記被保持物を吊り上げる紐状部材を通すための孔を有する前記一端と反対の前記長手方向の他端と、
前記折り曲げ部との距離を第一距離にし、前記被保持物を前記ロック部材と前記折り曲げ部とにより固定しないロック解除状態と、前記ロック解除状態からの回転に伴い前記折り曲げ部との距離を前記第一距離より小さい第二距離にし、前記被保持物を前記ロック部材と前記折り曲げ部との接触により固定するロック状態と、を有し、
前記ロック解除状態において、前記ロック部材の前記長手方向は前記鉛直方向に対して直交し、前記ロック状態において、前記ロック部材の前記長手方向は前記鉛直方向に対して平行となる、クランプ。
【請求項2】
前記折り曲げ部は、前記収容空間に向かって突出する凸部を有する、請求項1記載のクランプ。
【請求項3】
前記凸部は、前記被保持物の外周の凹凸形状と掛かり合いの関係をなす、請求項2記載のクランプ。
【請求項4】
前記一端は、
外周部が円弧状に形成され、
前記回転孔を前記外周部から等しい位置に有し、
前記ロック解除状態において前記ロック部材と前記折り曲げ部との距離を前記第一距離にする、前記外周部において切り欠かれて直線的に形成される直線部を有する、
請求項1から3のいずれか一項記載のクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被保持物を保持し吊り上げるクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場などにおいては、鉄筋や棒鋼などの長尺物を保持して吊り上げ、運搬するために、クランプが用いられる。例えば特許文献1には、クランプ本体と、内部に被保持物を固定する半円筒状の保持部材と、被保持物を保持部材に押圧する押圧部と、を有するクランプが開示されている。保持部材は、溶接などによりクランプ本体と一体に固定されている。押圧部は、ばね部材などの複数部品からなるカム構造により実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-051336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したクランプは、被保持物を保持するために、多数の部品点数からなる複雑な構造を有する。特に、押圧部を実現するために、カム構造を有するため、複数部品から構成されるとともに、複雑な構造を有する。これは、クランプの製造工程を複雑化すると同時に、使用時においても使用性やメンテナンス性を損ねる虞がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、製造性や使用性を向上できるクランプ提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクランプは、上述した課題を解決するために、長尺物の被保持物を鉛直方向に沿う状態で挟み込み、前記鉛直方向上向きに吊り上げるためのクランプであって、折り曲げ部と、前記折り曲げ部の両端から連続し対向する一対の側板部と、を有する本体と、前記一対の側板部に渡された軸周りに回転可能に保持され、前記折り曲げ部との間に、前記鉛直方向に沿う被保持物を収容する収容空間を形成するロック部材と、を備え、前記ロック部材は、長手方向および短手方向を有する板状部材であり、前記軸が挿入される回転孔を有する前記長手方向の一端と、前記被保持物を吊り上げる紐状部材を通すための孔を有する前記一端と反対の前記長手方向の他端と、前記折り曲げ部との距離を第一距離にし、前記被保持物を前記ロック部材と前記折り曲げ部とにより固定しないロック解除状態と、前記ロック解除状態からの回転に伴い前記折り曲げ部との距離を前記第一距離より小さい第二距離にし、前記被保持物を前記ロック部材と前記折り曲げ部との接触により固定するロック状態と、を有し、前記ロック解除状態において、前記ロック部材の前記長手方向は前記鉛直方向に対して直交し、前記ロック状態において、前記ロック部材の前記長手方向は前記被保持物の前記鉛直方向に対して平行となる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るクランプにおいては、製造性や使用性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るクランプの実施形態に係るクランプの使用状態を示す説明図。
図2】クランプを左方から示す構成図。
図3】クランプを後方から示す構成図。
図4図2のIV-IV線に沿う断面図。
図5】ロック部材がロック解除状態である場合の説明図。
図6】ロック部材がロック状態である場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るクランプの実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明に係るクランプの実施形態に係るクランプ1の使用状態を示す説明図である。
図2は、クランプ1を左方から示す構成図である。
図3は、クランプ1を後方から示す構成図である。
図4は、図2のIV-IV線に沿う断面図である。
【0011】
以下の説明において、「前」、「後」、「上」、「下」、「右」、及び「左」は、図1から図6における定義に従う。
【0012】
クランプ1は、例えば鉄筋や棒鋼などの長尺物を被保持物として、この被保持物を保持してクレーンなどで吊り上げるために用いられる。クランプ1は、本体10と、ロック部材20と、を主に有する。
【0013】
本体10は、上下方視略U字形状に形成された、一枚の板状部材からなる。本体10は、折り曲げ部11と、一対の側板部12と、を有する。
【0014】
折り曲げ部11は、U字形状に形成された本体10の曲線部分である。折り曲げ部11は、収容空間4(後述)に向かって突出する凸部15を内周面11aに有する。凸部15は、折り曲げ部11の両端11bの伸びる方向である上下方向に沿って複数箇所に均一に配置される。また、凸部15は、左右方向に2列(複数列)配置される。
【0015】
一対の側板部12は、折り曲げ部11の両端11b(曲面と平坦面との境界)から連続して前後方向に伸びた平坦面部分である。一対の側板部12は、左右方向に対向している。側板部12は、後方寄りの上下方向略中心位置に軸挿入孔13(図5図6)を有する。
【0016】
ロック部材20は、一対の側板部12の距離よりも小さい厚みを有する略小判型の板状部材であり、一端21と、一端21と反対の他端22と、を有する。ロック部材20は、一端21側に軸が挿入される回転孔24(図5図6)を有する。ロック部材20は、回転孔24の周縁に隆起部25を有する。隆起部25は、ロック部材20の厚みを一対の側板部12の距離と略等しくする部分であり、ロック部材20が一対の側板部12間で不要に移動することを防止する。ロック部材20は、他端22側に支持孔26を有する。支持孔26は、クランプ1の使用時においてクランプ1を吊り上げるワイヤーロープなどの紐状部材を通すための孔である。
【0017】
ロック部材20は、円弧状に形成された一端21に対して、回転孔24が略中心に形成される。すなわち、外周部20aと回転孔24との距離は、等しい。このような一端21において、ロック部材20は、直線部20bを有する。直線部20bは、円弧状に形成された一端21の外周部20aにおいて先端部分が切り欠かれて直線的に形成された部分である。直線部20bは、外周部20aと回転孔24との距離を、直線部20bがない場合に比べて小さくする。
【0018】
ロック部材20は、回転孔24に挿入されるボルト30(軸)により、ボルト30周りに回転可能に本体10に支持される。ボルト30は、軸挿入孔13に挿入されて一対の側板部12に渡され、ナット31で一対の側板部12に固定される。ロック部材20は、折り曲げ部11(折り曲げ部11の内周面11a)との間に収容空間4を形成する。この収容空間4は、クランプ1の被保持物の一例である鉄筋2を保持する空間である。
【0019】
ロック部材20は、回転に伴い、ロック解除状態と、ロック状態と、を有する。
【0020】
ここで、図5は、ロック部材20がロック解除状態である場合の説明図である。
図6は、ロック部材20がロック状態である場合の説明図である。
図5および6においては、ボルト30の図示を省略する。
【0021】
ロック解除状態は、収容空間4に収容される鉄筋2がロック部材20と折り曲げ部11とで固定されていない状態である。ロック状態は、収容空間4に収容される鉄筋2がロック部材20と折り曲げ部11との接触により挟まれて固定されている状態である。
【0022】
ロック部材20は、折り曲げ部11との距離が可変であることにより、ロック状態と、ロック解除状態とをなしている。すなわち、折り曲げ部11との距離を第一距離にするロック解除状態と、ロック解除状態からの回転に伴い折り曲げ部11との距離を第一距離より小さい第二距離にするロック状態と、をなしている。
【0023】
具体的には、ロック部材20は、ロック解除状態としての、ロック部材20が前後方向に倒れた状態である(長手方向が前後方向に沿う)場合、他の部分よりも回転孔24からの距離が小さい直線部20bが、ロック部材20と折り曲げ部11との距離をなす部分となる。図5に示すように、ロック解除状態においては、直線部20bと鉄筋2との間に、隙間sが形成されている。
【0024】
また、ロック部材20は、ロック状態としての、ロック部材20がロック解除状態から時計回りに略90度(左方視)回転し、上下方向に起きた状態である(長手方向が上下方向に沿う)場合、直線部20bに比べて回転孔24からの距離が大きい直線部20b以外の外周部20aが、ロック部材20と折り曲げ部11との距離をなす部分となる。図6に示すように、ロック状態においては、外周部20aと鉄筋2との間には隙間がなく、密着している。
【0025】
なお、ロック状態である場合のロック部材20と折り曲げ部11との距離は、被保持物の断面形状(径)に応じて設定される。具体的には、ロック部材20と折り曲げ部11との距離が、被保持物を確実に挟み込み、落下することなく吊り上げ可能な距離に設定される。
【0026】
次に、クランプ1が鉄筋2を固定する際の流れについて説明する。
【0027】
ロック部材20がロック解除状態(図5)である状態で、収容空間4に上下方向に沿って鉄筋2が挿入される。このとき、ロック部材20における折り曲げ部11との距離は、直線部20bがなしており、ロック部材20と鉄筋2との間には隙間sが形成される。すなわち、鉄筋2は、収容空間4内において自由に移動可能である。
【0028】
次に、ロック部材20が作業者により略90度回転されることにより、ロック解除状態からロック状態(図6)に遷移する。このとき、ロック部材20における折り曲げ部11との距離は、直線部20bから直線部20b以外の外周部20aに変わり、小さくなる。これに伴い、ロック部材20は折り曲げ部11と共に鉄筋2を挟み込み、固定する。また、折り曲げ部11には凸部15が設けられているため、折り曲げ部11と鉄筋2外周とがより強固に接触関係をなす。また、凸部15は、配置によっては鉄筋2外周の凹凸形状と掛かり合いの関係をなすため、ロック部材20および折り曲げ部11は確実に鉄筋2を挟み込むことができる。
【0029】
この状態で支持孔26を介してクランプ1が吊り上げられるため、他端22側が常に鉛直方向上向きの状態が維持される。よって、ロック部材20がロック状態からロック解除状態に意図せず遷移してしまうことを抑制できる。
【0030】
このようなクランプ1は、主に本体10とロック部材20という少ない部品点数で被保持物を吊り上げるという目的を果たすことができるため、従来に比べて製造性や使用性を向上できる。すなわち、クランプ1は簡素な構造で実現できるため、各部品を製造する工程および各部品を組み立てる工程において作業性を格段に向上できる。また、クランプ1は機構が簡素であるため、メンテナンス性も向上できる。
【0031】
さらに、使用時においても、ロック部材20をロック状態に遷移するためには、ロック部材20を略90度回転するのみでよいため、優れた使用性を有することができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1 クランプ
2 鉄筋
4 収容空間
10 本体
11 折り曲げ部
11a 内周面
11b 両端
12 側板部
13 軸挿入孔
15 凸部
20 ロック部材
20a 外周部
20b 直線部
21 一端
22 他端
24 回転孔
25 隆起部
26 支持孔
30 ボルト
31 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6