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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】投影露光装置及び投影露光方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
G03F9/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020153975
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047923
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 芳幸
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-135893(JP,A)
【文献】特開2000-147795(JP,A)
【文献】特開2013-21164(JP,A)
【文献】特開昭62-262426(JP,A)
【文献】特開平2-288324(JP,A)
【文献】特開平5-175097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクに露光光を照射して、該マスクに形成されたパターンを、投影レンズにより、ワークに投影して、該ワークに前記パターンを露光する投影露光装置であって、
前記露光光自体、又は前記露光光と実質的に同じ波長の光である第1のアライメント光を前記マスクのアライメントマークに照射可能なマスクマーク照明用光源と、
前記露光光と異なる波長の第2のアライメント光を前記ワークのアライメントマークに照射可能なワークマーク照明用光源と、
前記第1のアライメント光による前記マスクのアライメントマークの像と、前記ワークのアライメントマークとを取得する撮像装置と、前記マスクマーク照明用光源から出射され前記マスクおよび前記投影レンズを経た前記第1のアライメント光と前記ワークのアライメントマークからの光とを合成した合成光を前記撮像装置に向けて出射する合成光学素子を有し、前記マスクのアライメントマークの像と、前記ワークのアライメントマークを、前記撮像装置に画像として取得させるための撮像光学系と、を有するアライメントユニットと、
を備え、
前記撮像光学系は、前記合成光学素子から前記撮像装置までの第1のアライメント光の光路長が前記合成光学素子から前記撮像装置までの前記ワークのアライメントマークからの光の光路長よりも長くなるように、前記合成光学素子によって合成された前記第1のアライメント光と前記ワークのアライメントマークからの光から、前記第1のアライメント光を分岐且つ合流させる光路長変更光学系を有し、
前記撮像装置によって取得される前記マスクのアライメントマークの像は、前記光路長変更光学系の光路上で結像され、
前記撮像装置に対する前記ワークのアライメントマークと前記マスクのアライメントマークの像との光学的な位置関係が等しい、投影露光装置。
【請求項2】
前記合成光学素子は、前記投影レンズから出射される前記第1のアライメント光の光軸に対して45°傾斜した接合面がハーフミラー面を構成する一対のプリズムを有する第1のダイクロイックプリズムであり、
前記ワークと対向する前記プリズムにおいて、前記第1のアライメント光の光軸に直交する面は、前記第1のアライメント光を反射し、前記第2のアライメント光を透過させるダイクロイック面を構成する、請求項1に記載の投影露光装置。
【請求項3】
前記光路長変更光学系は、前記合成光学素子から出射される前記合成光の光軸に対してそれぞれ45°傾斜し、前記第1のアライメント光を反射し、前記第2のアライメント光を透過させるダイクロイック面を構成する2つの接合面が直交する、複数のプリズムからなる第2のダイクロイックプリズムと、
前記合成光学素子から出射される前記合成光の光軸から離れた位置にそれぞれ設けられ、前記第2のダイクロイックプリズムの一方の前記接合面で反射された前記第1のアライメント光を前記第2のダイクロイックプリズムの他方の前記接合面に入射させるように、互いの反射面が直交する一対の反射光学素子と、
を備える、請求項1又は2に記載の投影露光装置。
【請求項4】
前記アライメントユニットは、前記投影レンズと前記ワークとの間で、進退可能なように、水平に移動自在に設けられており、
前記ワークマーク照明用光源、及び前記一対の反射光学素子は、前記合成光学素子から出射される前記合成光の光軸を含む水平面上に配置される、請求項3に記載の投影露光装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の投影露光装置を備えた投影露光方法であって、
前記撮像装置によって取得された前記マスクのアライメントマークの像と、前記ワークのアライメントマークとに基づいて、前記マスクと前記ワークとをアライメントする工程と、
マスクに露光光を照射して、該マスクに形成されたパターンを、投影レンズにより、ワークに投影して、該ワークに前記パターンを露光する工程と、
を備える、投影露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影露光装置及び投影露光方法に関し、特に、小サイズの露光領域であっても高精度なアライメントが可能な投影露光装置及び投影露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィ技術を用いて、半導体ウエハや、プリント配線基板、液晶基板等を製造する際に、マスクのパターンを投影レンズによって基板に投影して該パターンを基板に転写する投影露光装置が使用されている。
【0003】
プリント配線基板等では、電子機器の高速化、多機能化、小型化に伴い、多層化、高密度化、微細化が求められている。このため、ワークにマスクのパターンを転写する場合、前に形成したパターンに対して次のパターンを正確にアライメントすることが重要である。また、投影露光装置では、投影レンズは、露光のための紫外線に対して収差が最も小さくなるように設計されている。したがって、アライメントに際して、マスクのアライメントマークを投影レンズを介してワークに形成するTTL(Through The Lens)アライメント方式においては、アライメント光として露光光を用いることが望ましい。一方、紫外線は、ワークのレジストを感光させてしまうことから、投影レンズを通過したアライメント光をワークに照射せずにアライメントすることが検討されている。
【0004】
特許文献1に記載の位置合わせ装置では、露光光照射装置より露光光をマスクに照射して、ワークステージ上のワーク固定領域と離れた位置に設けられた反射部材にマスクのアライメントマークを投影し、投影像を受像してその相対位置を記憶する。ついで、露光光の照射を停止して、ワークが載置されたワークステージを、マスクのアライメントマークがワーク上に投影される位置に移動させ、非露光光をワークのアライメントマークに照射し、ワークのアライメントマークを受像して、その相対位置を検出する。そして、両アライメントマークの位置が重なるようにワークおよび/またはマスクを移動させることで、マスクとワークを位置合わせしている。
【0005】
特許文献2には、レチクル側に配置されるレチクル整合マークに露光用照明光を照射する第1照明系と、ウエハ側に配置されるウエハ整合マークに、第1照明光より波長幅が広い第2照明光を照射する第2照明系とを備え、受光面に結像させたレチクル整合マーク及びウエハ整合マークの像を、受光面とは反対側に配置した検出装置により検出してレチクル整合マークとウエハ整合マークの相対位置関係に応じた信号を出力するようにした投影露光装置が開示されている。
【0006】
特許文献3に記載の露光装置では、露光光を用いたアライメント光をマスクのマスク側アライメントマークに照射可能なアライメント照明ユニットと、アライメント照明ユニットから出射されマスクおよび投影レンズを経たアライメント光を入射させるアライメントカメラユニットと、を備える。アライメントカメラユニットは、入射されたアライメント光におけるマスクに対する光学的な位置関係を、対象ワークとは異なる位置で対象ワークと等しくするダミーワーク領域にマスク側アライメントマーク像を形成する結像光学系と、撮像装置に対する対象ワークとダミーワーク領域との光学的な位置関係を等しくする撮像光学系と、を有し、極めて高いアライメントの精度を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-82615号公報
【文献】特開平11-251233号公報
【文献】特開2011-253864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の位置合わせ装置は、予め記憶させたマスクのアライメントマークを用いてアライメントが行われるため、両アライメントマークを取得する間に温度変化などの外乱が生じると、外乱による誤差を考慮することができず、高精度にアライメントが行われない虞がある。
また、特許文献2,3に開示されている露光装置では、マスクのアライメントマーク像が結像する受光面及びダミーワーク領域が、検出装置や撮像装置と反対側で、ワークの露光領域上に延出して設けられているので、複数のワークのアライメントマークが近づいていると、複数の受光面及びダミーワーク領域が干渉する可能性がある。とくに、近年、プリント配線基板等においては、さらなる微細化のため、露光領域の分割数を増やして高解像度で露光することが求められており、小サイズの露光領域でもアライメントが可能であることが望まれている。
【0009】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小サイズの露光領域であっても高精度なアライメントが可能な投影露光装置及び投影露光方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) マスクに露光光を照射して、該マスクに形成されたパターンを、投影レンズにより、ワークに投影して、該ワークに前記パターンを露光する投影露光装置であって、
前記露光光自体、又は前記露光光と実質的に同じ波長の光である第1のアライメント光を前記マスクのアライメントマークに照射可能なマスクマーク照明用光源と、
前記露光光と異なる波長の第2のアライメント光を前記ワークのアライメントマークに照射可能なワークマーク照明用光源と、
前記第1のアライメント光による前記マスクのアライメントマークの像と、前記ワークのアライメントマークとを取得する撮像装置と、前記マスクマーク照明用光源から出射され前記マスクおよび前記投影レンズを経た前記第1のアライメント光と前記ワークのアライメントマークからの光とを合成した合成光を前記撮像装置に向けて出射する合成光学素子を有し、前記マスクのアライメントマークの像と、前記ワークのアライメントマークを、前記撮像装置に画像として取得させるための撮像光学系と、を有するアライメントユニットと、
を備え、
前記撮像光学系は、前記合成光学素子から前記撮像装置までの第1のアライメント光の光路長が前記合成光学素子から前記撮像装置までの前記ワークのアライメントマークからの光の光路長よりも長くなるように、前記合成光学素子によって合成された前記第1のアライメント光と前記ワークのアライメントマークからの光から、前記第1のアライメント光を分岐且つ合流させる光路長変更光学系を有し、
前記撮像装置によって取得される前記マスクのアライメントマークの像は、前記光路長変更光学系の光路上で結像され、
前記撮像装置に対する前記ワークのアライメントマークと前記マスクのアライメントマークの像との光学的な位置関係が等しい、投影露光装置。
(2) (1)に記載の投影露光装置を備えた投影露光方法であって、
前記撮像装置によって取得された前記マスクのアライメントマークの像と、前記ワークのアライメントマークとに基づいて、前記マスクと前記ワークとをアライメントする工程と、
マスクに露光光を照射して、該マスクに形成されたパターンを、投影レンズにより、ワークに投影して、該ワークに前記パターンを露光する工程と、
を備える、投影露光方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の投影露光装置及び投影露光方法によれば、複数のアライメントユニットを用いてアライメントを行う際に、小サイズの露光領域であっても、アライメントユニット同士が干渉することなく、高精度なアライメントが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る投影露光装置の構成を模式的に示す説明図である。
図2】露光光を用いたTTL方式でアライメント調整する状態を示す模式図である。
図3】(a)は、第1のダイクロイックプリズムの拡大図であり、(b)は、第2のダイクロイックプリズムの拡大図である。
図4】(a)は、マスクマーク照明用光源から出射され、投影レンズを通過した第1のアライメント光が、光路長変更光学系を含む撮像光学系を介して撮像装置に入射する状態を示す模式図であり、(b)は、ワークマーク照明用光源によって照明されるワークのアライメントマークからの光が、撮像光学系を介して撮像装置に入射する状態を示す模式図である。
図5】(a)は、大きな露光領域の4隅に設定された4個のワークのアライメントマークの配置をアライメントユニットと共に示す図であり、(b)は、(a)の露光領域を4分割した小サイズの露光領域の4隅に設定された4個のワークのアライメントマークの配置をアライメントユニットと共に示す図である。
図6】マスクマーク照明用光源として、露光光を用いる場合の変形例を示す要部拡大図である。
図7】(a)は、マスクマーク照明用光源として、露光光を用いる場合の他の変形例を示す要部拡大図であり、(b)は、複数の遮光板を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る投影露光装置及び投影露光方法の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1に示すように、投影露光装置10は、光源部11、バンドパスフィルタ12、インテグレータレンズ13、コリメータレンズ14、平面鏡15、マスクステージ16、補正光学系17、投影レンズ18、及び、ワークステージ19を備える。
【0014】
光源部11は、例えば、複数のLED光源を二次元アレイ状に配列して構成され、露光光である紫外線を含む光を発光する。バンドパスフィルタ12は、紫外線(例えば、i線)以外の波長帯域の光をカットする。バンドパスフィルタ12を透過した光は、インテグレータレンズ13に入射される。インテグレータレンズ13は、入射した光の照度ムラを打ち消し、マスクMを均一な照度分布で照明するための光学系である。なお、インテグレータレンズ13の射出面には、開口絞りが配置されている。コリメータレンズ14は、インテグレータレンズ13から入射した光を平行光として出射する。そして、平行光とされた露光光は、平面鏡15で反射されて、マスクステージ16に保持されたマスクMに向けて出射される。マスクMを通過した露光光は、補正光学系17に入射される。
【0015】
マスクステージ16は、パターンが形成されたマスクMを、図示しないマスク駆動機構によって、露光光の光軸ELに直交する方向に移動可能に保持する。なお、マスクMには、パターンの周囲に、後述するワークWの4つのアライメントマークWMに対応して、4つのアライメントマークMMが形成されている(図2参照)。
【0016】
補正光学系17は、ワークWにおける歪みなどに応じて、ワークW上に形成されるマスクMのパターン像を変形させるものであり、例えば、光軸方向に複数枚のガラス板を並列し、各ガラス板を適宜湾曲させたり回転させたりすることで補正する。なお、補正光学系17は、マスクステージ16と投影レンズ18との間の他、投影レンズ18に固定して設けられてもよく、或いは、投影レンズ18とワークステージ19との間に配置されてもよい。
【0017】
投影レンズ18は、マスクMに形成されたパターンの像を適切に変倍してワークWの表面に形成する。また、投影レンズ18は、露光光として紫外線(i線)を用いることから、紫外線(i線)に対して収差が最も小さくなるように設計されている。このようにして、マスクMを透過した露光光が投影レンズ18に入射され、マスクMのパターン像が感光材料が塗布されたワークW上に形成される。
なお、露光光としては、i線(波長365nm)以外にも、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)、各線の組み合わせ、またはその間の波長も利用することができる。
【0018】
ワークWを保持するワークステージ19も、図示しないワーク駆動機構によって、露光光の光軸ELに直交する方向に移動可能である。特に、本実施形態では、ワークWは複数の露光領域を備えており、露光領域を移動させながら、複数回の露光を行うステップ露光が行われる。なお、ワークWとしては、シリコンウエハやガラス基板やプリント配線基板等が挙げられる。
【0019】
次に、マスクMのパターンをワークW上に露光転写する際、露光転写に先立って行われるマスクMとワークWとのアライメントについて図2を参照して説明する。
【0020】
投影露光装置10は、4つのマスクマーク照明ユニット20と、それぞれのマスクマーク照明ユニット20に対応する4つのアライメントユニット30とを備える。4つのマスクマーク照明ユニット20は、マスクMに形成された4つのアライメントマークMM(以下、単にマスクマークMMとも言う)に個別に対応して設けられ、4つのアライメントユニット30は、ワークWに形成された4つのアライメントマークWM(以下、単にワークマークWMとも言う)に個別に対応して設けられている。ここで、各マスクマーク照明ユニット20及び各アライメントユニット30は同一の構成を有するので、以下の説明では、1つのマスクマーク照明ユニット20及び1つのアライメントユニット30について、図2を参照して説明する。
【0021】
マスクマーク照明ユニット20は、マスクステージ16の上方に配置されている。マスクマーク照明ユニット20は、露光光と同じ波長の紫外線である第1のアライメント光(i線)L1を出射するLEDなどのマスクマーク照明用光源21と、コリメータレンズ22と、反射プリズム23と、を有する。コリメータレンズ22は、入射した光を平行光として出射し、反射プリズム23は、コリメータレンズ22により平行光とされた紫外線の進行方向を、マスクMに直交する方向に変換する。なお、反射プリズム23に代えて、反射ミラーを用いることもできる。また、反射プリズム23や反射ミラーを用いずにマスクマーク照明ユニット20を、その光軸がマスクMに対して直交するように配置してもよい。
【0022】
マスクマーク照明ユニット20は、対応するマスクマークMMに対して進退可能に設けられており、ワークWとのアライメント調整を行う際には、対応するマスクマークMMへ向けて第1のアライメント光L1を出射する。マスクMを通過した第1のアライメント光L1は、補正光学系17及び投影レンズ18に入射される。
【0023】
投影レンズ18とワークWとの間には、アライメントユニット30が、投影レンズ18からワークWに向かう第1のアライメント光L1の光路に対して進退自在に設けられている。アライメントユニット30は、撮像装置32と、撮像光学系40と、ワークマーク照明用光源31と、を備える。
【0024】
撮像装置32は、少なくとも第1のアライメント光L1である紫外線(i線)の波長帯域と、可視光の波長帯域と、に感度を有しており、第1のアライメント光L1によるマスクMのマスクマークMMの像MMIと、ワークWのワークマークWMとを同時に取得可能である。撮像装置32は、光学カメラでもよいが、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子を有して、この撮像素子が受像した光を光電変換して電気信号として出力する装置が好ましい。
【0025】
撮像光学系40は、マスクマークMMの像MMIと、ワークマークWMとを、撮像装置32に画像として取得させるためのものであり、撮像装置32から近い順に、ハーフミラー34と結像レンズ35を内蔵する結像レンズユニット33、光路長変更光学系42、及び合成光学素子である第1のダイクロイックプリズム41を有する。
【0026】
第1のダイクロイックプリズム41は、マスクマーク照明用光源21から出射されマスクM及び投影レンズ18を経た第1のアライメント光L1と、ワークWのワークマークWMからの光とを合成した合成光を撮像装置32に向けて出射するための光学素子であり、投影レンズ18の下方において、第1のアライメント光L1が通過する位置に配置される。
【0027】
第1のダイクロイックプリズム41は、図3(a)も参照して、一対のプリズム43,44が、投影レンズ18から出射される第1のアライメント光L1の光軸に対して45°傾斜した接合面45で接合された構成を有する。接合面45は、所謂ハーフミラー面を構成する。また、接合面45の下方に配置されたプリズム44は、第1のアライメント光L1の光軸に直交する下面46が第1のアライメント光L1を反射し、第2のアライメント光L2を透過させるダイクロイック面を構成する。このダイクロイック面によって、紫外線である第1のアライメント光L1を用いたアライメントの際、該紫外線がワークWに照射されて感光材料が感光することを防止することができる。
【0028】
光路長変更光学系42は、第1のダイクロイックプリズム41によって合成された第1のアライメント光L1とワークマークWMからの光から、第1のアライメント光L1を分岐且つ合流させて第1のアライメント光L1の光路長を変更する光学系である。光路長変更光学系42は、第1のダイクロイックプリズム41の接合面45から出射される合成光の光軸LA上に配置された第2のダイクロイックプリズム48と、合成光の光軸LAを含む水平面上に配置され、合成光の光軸LA、即ち、第2のダイクロイックプリズム48から離れて、該光軸LAと平行に並んで配置された一対の反射光学素子49とを備える。
【0029】
第2のダイクロイックプリズム48は、図3(b)も参照して、複数(図に示す実施例では3個)のプリズム53,54,55が接合されてなる。各プリズム53,54,55間に形成される2つの直交する接合面51,52は、第1のダイクロイックプリズム41の接合面45から出射される合成光の光軸LAに対してそれぞれ45°傾斜し、ダイクロイック面を構成する。即ち、これら接合面51,52も、第1のアライメント光L1を反射し、第2のアライメント光L2を透過させる。
【0030】
一対の反射光学素子49は、一対のプリズム58,59から構成され、第2のダイクロイックプリズム48の接合面51と平行に配置された第1の反射面56と、第2のダイクロイックプリズム48の接合面52と平行に配置された第2の反射面57を有し、第1の反射面56と第2の反射面57とが互いに直交する。そして、第2のダイクロイックプリズム48の一方の接合面51で反射された第1のアライメント光L1が、第1の反射面56及び第2の反射面57で反射して第2のダイクロイックプリズム48の接合面52に入射する。これにより、第1のアライメント光L1の光路長が変更される。なお、一対のプリズム58,59は、一対のミラーであってもよい。
【0031】
ワークマーク照明用光源31は、例えば可視光などの露光光と異なる波長を有する第2のアライメント光L2を、結像レンズユニット33内に導入し、第2のアライメント光L2の光軸に対して45傾斜したハーフミラー面34で反射させて、合成光の光軸LAと同軸に出射して、第2のダイクロイックプリズム48及び第1のダイクロイックプリズム41を介してワークWのワークマークWMに照射して照明する。即ち、結像レンズユニット33から導入された第2のアライメント光L2は、合成光の光軸LA上に擬似的に配される同軸落射照明を構成している。
【0032】
なお、ワークマークWMは、ワークWに塗布される感光材料の種類により見え方が異なる場合がある。このため、感光材料の種類に合わせて、より見やすい波長の光に切り替え可能な図示しない光学フィルタをワークマーク照明用光源31に設けることもできる。
【0033】
また、光路の説明の都合上、ワークマーク照明用光源31及び反射光学素子49は、図2において上方に突出した状態で描かれているが、実際には、図2中、点線D内に配置される、ワークマーク照明用光源31、結像レンズユニット33、第2のダイクロイックプリズム48及び反射光学素子49は、合成光の光軸LAを中心として90°回転した状態で配置されている。即ち、ワークマーク照明用光源31及び反射光学素子49は、合成光の光軸LAを含む水平面上に配置されており、具体的に、上方から見て、ワークマーク照明用光源31は、結像レンズユニット33の側面に取付けられており、反射光学素子49は、第2のダイクロイックプリズム48の側方に配置されている。これにより、投影レンズ18とワークWとの間の空間内で、アライメントユニット30が投影レンズ18やワークWと干渉することなく進退可能となる。
【0034】
このような構成を有する撮像光学系40では、図4(a)に示すように、投影レンズ18を透過した第1のアライメント光L1は、第1のダイクロイックプリズム41のダイクロイック面を構成する下面46で反射した後、さらに接合面45で反射して第2のダイクロイックプリズム48に入射する。第2のダイクロイックプリズム48に入射した第1のアライメント光L1は、第2のダイクロイックプリズム48の接合面51で反射し、さらに反射光学素子49の第1の反射面56及び第2の反射面57で反射して第2のダイクロイックプリズム48の接合面52に入射する。接合面52で反射した第1のアライメント光L1は、結像レンズユニット33内のハーフミラー34及び結像レンズ35を通過して撮像装置32に至る。
【0035】
一方、図4(b)に示すように、第2のアライメント光L2で照明されたワークマークWMからの光は、第1のダイクロイックプリズム41の接合面45で反射した後、第2のダイクロイックプリズム48の接合面51、52及び結像レンズユニット33内のハーフミラー34及び結像レンズ35を通過して撮像装置32に至る。したがって、第2のダイクロイックプリズム48から撮像装置32までの光は、第1のアライメント光L1とワークマークWMからの光とが合流して、再び合成光となる。
【0036】
このように、第1のダイクロイックプリズム41と撮像装置32との間に、光路長変更光学系42(第2のダイクロイックプリズム48及び反射光学素子49)を配置することで、第1のダイクロイックプリズム41から撮像装置32までの第1のアライメント光L1の光路長を、第1のダイクロイックプリズム41から撮像装置32までのワークマークWMからの光の光路長よりも長くできる。そして、光路長変更光学系42の光路上において、マスクマークMMの像MMIが形成される。これにより、マスクマークMMの像MMIは、光路長変更光学系42の光路上の空中像となるので、異物付着等の虞が生じ難く、撮像装置32によって精度良く取得される。
【0037】
光路長変更光学系42は、図4(a)に示す、第1のアライメント光L1の光路上で結像するマスクマークMMの像MMIから撮像装置32(厳密には、撮像装置32の受像面)までの光路長L1Lと、図4(b)に示す、ワークマークWMから撮像装置32までの光路長L2Lが同じ長さとなるように設定され、撮像装置32に対するワークマークWMとマスクマークMMの像MMIとの光学的な位置関係が等しく設定することで、撮像装置32によりマスクマークMMの像MMIとワークW上に設けられたワークマークWMとを同一視野内に捉えることができる。
【0038】
そして、撮像装置32の視野内におけるマスクマークMMの像MMIとワークマークWMとの位置関係に基づいて、必要に応じてマスクMとワークWとの相対位置を移動すると共に、補正光学系17によりマスクマークMMの像MMIとワークマークWMとが一致するようにマスクマークMMの像MMIの位置及び形状を補正して、マスクMとワークWとをアライメントする。
【0039】
上記したアライメント作業は、1つの露光領域EAを露光する毎に行われるので、アライメント動作と露光動作との間の外乱による影響を大幅に抑制することができ、マスクMのパターンを高精度で露光転写することができる。
【0040】
ワークマークWMは、図5に示すように、ワークWに設定された露光領域EA毎に、露光領域EAの4隅にそれぞれ1つずつ、合計4個設けられている。4個のワークマークWMを撮像装置32で同時に捉えるためには、4台のアライメントユニット30を、それぞれワークマークWM上に位置させる必要がある。
【0041】
特に、図5(a)に示す露光領域EA1を4分割した、図5(b)に示す小サイズの露光領域EA2では、ワークマークWM同士の間隔も狭くなる。このようなワークマークWMが近接配置された露光領域EA2においても、アライメントユニット30は、第1のダイクロイックプリズム41に対して撮像装置32の反対側に光学系を有しないことから、複数のアライメントユニット30同士を近接させることができる。従って、小サイズの露光領域EAにも容易に対応可能となり、プリント配線基板等における微細化や高解像度での露光に大きく貢献する。
【0042】
以上述べたように、本実施形態の投影露光装置10では、小サイズの露光領域EAに対しても、露光光と同じ紫外線(i線)が投影レンズ18を透過するTTL方式のアライメントにより、極めて高精度でアライメントすることができる。
【0043】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上記の実施形態では、マスクのアライメントマーク及びワークのアライメントマークがそれぞれ4個ずつ設けられた例について説明したが、マスクのアライメントマーク及びワークのアライメントマークをそれぞれ3個ずつ設けて、マスクとワークとのアライメントを行うようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、アライメントの際にマスクのアライメントマークを照射するマスクマーク照明用光源として、光源部11と別に、露光光と実質的に同じ波長の光である第1のアライメント光L1を照射する光源を設けている。しかしながら、本発明は、これに限らず、例えば、光源部11から照射される露光光自体を第1のアライメント光L1として、マスクのアライメントマークに照射してもよい。即ち、光源部11がマスクマーク照明用光源として用いられてもよい。
【0045】
露光光をマスクMのアライメントマークMMに照射する場合には、図6に示す変形例のように、アライメントを行う際にマスクMの上方に進出可能な1枚の遮光板60が併せて使用される。例えば、観察箇所が4箇所あるとすると、遮光板60には、マスクMの各アライメントマークMMに対応する位置に4箇所の穴部61が形成される(図6では、2箇所の穴部のみ示す)。遮光板60は、アライメントを行う際に、マスクMの上方に進出して、露光領域に照射される露光光を遮光しつつ、4箇所の穴部61を介して各アライメントマークMMに向けて露光光を照射する。また、アライメント終了後、露光を行う際には、遮光板60は、マスクMの上方から退避する。
【0046】
また、図7に示す他の変形例のように、観察箇所が4箇所あるとすると、マスクMの各アライメントマークMMに対応する1箇所の穴部61をそれぞれ有し、マスクMの上方に進出可能な4枚の遮光板60A~60Dが併せて使用されてもよい。これにより、マスクMに応じて各アライメントマークMMの位置が変化する場合にも、各アライメントマークMMの位置に合わせて各遮光板60A~60Dの位置を移動させることで、遮光板60A~60Dを変えることなく対応することができる。
【0047】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) マスクに露光光を照射して、該マスクに形成されたパターンを、投影レンズにより、ワークに投影して、該ワークに前記パターンを露光する投影露光装置であって、
前期露光光自体、又は前記露光光と実質的に同じ波長の光である第1のアライメント光を前記マスクのアライメントマークに照射可能なマスクマーク照明用光源と、
前記露光光と異なる波長の第2のアライメント光を前記ワークのアライメントマークに照射可能なワークマーク照明用光源と、
前記第1のアライメント光による前記マスクのアライメントマークの像と、前記ワークのアライメントマークとを取得する撮像装置と、前記マスクマーク照明用光源から出射され前記マスクおよび前記投影レンズを経た前記第1のアライメント光と前記ワークのアライメントマークからの光とを合成した合成光を前記撮像装置に向けて出射する合成光学素子を有し、前記マスクのアライメントマークの像と、前記ワークのアライメントマークを、前記撮像装置に画像として取得させるための撮像光学系と、を有するアライメントユニットと、
を備え、
前記撮像光学系は、前記合成光学素子から前記撮像装置までの第1のアライメント光の光路長が前記合成光学素子から前記撮像装置までの前記ワークのアライメントマークからの光の光路長よりも長くなるように、前記合成光学素子によって合成された前記第1のアライメント光と前記ワークのアライメントマークからの光から、前記第1のアライメント光を分岐且つ合流させる光路長変更光学系を有し、
前記撮像装置によって取得される前記マスクのアライメントマークの像は、前記光路長変更光学系の光路上で結像され、
前記撮像装置に対する前記ワークのアライメントマークと前記マスクのアライメントマークの像との光学的な位置関係が等しい、投影露光装置。
この構成によれば、複数のアライメントユニットを用いてアライメントを行う際に、小サイズの露光領域であっても、アライメントユニット同士が干渉することなく、高精度なアライメントが可能となる。
【0048】
(2) 前記合成光学素子は、前記投影レンズから出射される前記第1のアライメント光の光軸に対して45°傾斜した接合面がハーフミラー面を構成する一対のプリズムを有する第1のダイクロイックプリズムであり、
前記ワークと対向する前記プリズムにおいて、前記第1のアライメント光の光軸に直交する面は、前記第1のアライメント光を反射し、前記第2のアライメント光を透過させるダイクロイック面を構成する、(1)に記載の投影露光装置。
この構成によれば、露光光と実質的に同じ波長を有する第1のアライメント光がワークに照射されるのを防止でき、また、第1のアライメント光と第2のアライメント光とを合成して合成光とすることができる。
【0049】
(3) 前記光路長変更光学系は、前記合成光学素子から出射される前記合成光の光軸に対してそれぞれ45°傾斜し、前記第1のアライメント光を反射し、前記第2のアライメント光を透過させるダイクロイック面を構成する2つの接合面が直交する、複数のプリズムからなる第2のダイクロイックプリズムと、
前記合成光学素子から出射される前記合成光の光軸から離れた位置にそれぞれ設けられ、前記第2のダイクロイックプリズムの一方の前記接合面で反射された前記第1のアライメント光を前記第2のダイクロイックプリズムの他方の前記接合面に入射させるように、互いの反射面が直交する一対の反射光学素子と、
を備える、(1)又は(2)に記載の投影露光装置。
この構成によれば、合成光学素子から出射される合成光から第1のアライメント光を分離して、第1のアライメント光の光路長を変更できる。
【0050】
(4) 前記アライメントユニットは、前記投影レンズと前記ワークとの間で、進退可能なように、水平に移動自在に設けられており、
前記ワークマーク照明用光源、及び前記一対の反射光学素子は、前記合成光学素子から出射される前記合成光の光軸を含む水平面上に配置される、(3)に記載の投影露光装置。
この構成によれば、アライメントユニットの高さ方向寸法を抑えることができ、これにより、アライメントユニットを投影レンズとワークとの間の空間内で、投影レンズやワークと干渉することなく移動させることができ、また、露光転写の際に、アライメントユニットを退避させることができる。
【0051】
(5) (1)~(4)のいずれかに記載の投影露光装置を備えた投影露光方法であって、
前記撮像装置によって取得された前記マスクのアライメントマークの像と、前記ワークのアライメントマークとに基づいて、前記マスクと前記ワークとをアライメントする工程と、
マスクに露光光を照射して、該マスクに形成されたパターンを、投影レンズにより、ワークに投影して、該ワークに前記パターンを露光する工程と、
を備える、投影露光方法。
この構成によれば、複数のアライメントユニットを用いてアライメントを行う際に、小サイズの露光領域であっても、アライメントユニット同士が干渉することなく、高精度なアライメントが可能となり、露光領域の分割数を増やした高解像度での露光が実現可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10 投影露光装置
18 投影レンズ
21 マスクマーク照明用光源
30 アライメントユニット
31 ワークマーク照明用光源
32 撮像装置
40 撮像光学系
41 第1のダイクロイックプリズム(合成光学素子)
42 光路長変更光学系
43,44 プリズム
45 接合面(ハーフミラー面)
46 下面(ダイクロイック面)
48 第2のダイクロイックプリズム
49 反射光学素子
51,52 接合面(ダイクロイック面)
53,54,55 プリズム
56 第1の反射面(反射面)
57 第2の反射面(反射面)
60、60A~60D 遮光板
L1 第1のアライメント光
L2 第2のアライメント光
LA 合成光の光軸
M マスク
MM マスクマーク(マスクのアライメントマーク)
MMI マスクのアライメントマークの像
W ワーク
WM ワークマーク(ワークのアライメントマーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7